平成13(う)98 殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告

裁判年月日・裁判所
平成13年11月22日 仙台高等裁判所
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判決文本文2,645 文字)

○暴力団幹部による殺人等事件につき懲役16年が言い渡された事例判決平成13年11月22日仙台高等裁判所平成13年(う)第98号殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(原審仙台地方裁判所平成11年(わ)第483号・平成13年5月22日判決) 主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役16年に処する。 原審における未決勾留日数中500日をその刑に算入する。 理由 第1 本件控訴の趣意は,弁護人大森勇一及び同狩野直樹連名の控訴趣意書に記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴の趣意は,量刑不当の主張であり,要するに,被告人は,原判決後,到底真実を隠し通せるものではないと心から反省し,本件犯行を全面的に認めるに至ったこと,被告人は,共犯者であるAに対し殺人の方法としてけん銃を用いることや殺害の実行場所等について具体的な指示をしたことはなく,その選定はAの判断によるものであること,被告人は,報酬目当てに被害者殺害の依頼を受けたものの,主体的,積極的にその実行を意図していたものではなく,被害者と共犯者である女性は内縁の夫婦であり,いずれは夫婦関係が修復されるものと考えていたところ,予想以上に同女性の殺害実行の意思が固く,その強硬な態度に押し切られて殺害に至ったものであること,被告人は,原判決後,暴力団を脱退し,けん銃の隠し場所の情報を捜査機関に提供するなど更生を決意していること,他の共犯者らの量刑との均衡などを考慮すると,被告人を懲役18年に処し こと,被告人は,原判決後,暴力団を脱退し,けん銃の隠し場所の情報を捜査機関に提供するなど更生を決意していること,他の共犯者らの量刑との均衡などを考慮すると,被告人を懲役18年に処した原判決の量刑は重すぎて不当である,というのである。 第2 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討する。 本件は,暴力団幹部であった被告人が,闇金融をしていた被害者の債権取立等に苦しめられていた食肉解体業を営む者とともに,被害者を殺害してその有する貸金債権を横取りするとともに,内縁の夫である被害者の不貞行為に嫉妬心を募らせていた女性に,被害者殺害と引き換えに多額の報酬を支払わせようと企て,同女性の嫉妬心を煽って被害者殺害の企てに参加させて,多額の報酬を支払わせる一方,殺害の実行をかねて知り合いの暴力団員に巧みに引き受けさせ,あるいは自己の配下にある暴力団員を連絡役に使い,これらの者と共謀して被害者をけん銃で殺害し,同時にその殺害に使用したけん銃を適合実包とともに所持した,という事案である。 本件は,被告人をはじめ5名の共犯者らが,物欲やねたみ等からそれぞれ殺人の実行のため策略をめぐらし,着々と計画を進めて,周到にそれを実行したものであって,その謀略性,計画性,態様,結果いずれの点からしても,類い希な人命を軽視すること甚だしい凶悪な殺人事犯というべきである。そして,被告人は,全くの金銭欲から,見も知らない被害者の命を奪うことを企て,その内妻の嫉妬心を煽って,殺害の報酬として多額の現金を手にするとともに,知り合いの暴力団員の心理を巧みに操って殺害の実行役をやらせ,自らは ない被害者の命を奪うことを企て,その内妻の嫉妬心を煽って,殺害の報酬として多額の現金を手にするとともに,知り合いの暴力団員の心理を巧みに操って殺害の実行役をやらせ,自らは手を汚さず,却って責任逃れを図ったものであり,自己の欲望のためには人の命を奪うことに何ら痛痒を感じない冷酷非情な点がうかがわれ,共犯者らを引き込んだり策略をめぐらすなど,本件の実現について中心的役割を果たしており,その上,利得の大部分を占めていながら,責任を他の共犯者に押しつける態度を取るなどしており,その刑事責任は極めて重いというべきである。 なお,控訴趣意において,殺人の方法としてけん銃を用いることについて,実行者である共犯者と謀議をしていない旨主張するが,被告人が同共犯者にけん銃の使用を勧めていることは明らかであり,また,けん銃を使用することを承知していた以上,付近住民をはじめ地域社会に対して大きな不安を与え,大きな社会的影響をもたらしたことについては,被告人も責任を負うのは当然というべきである。さらに,殺人の実行に至るについての被告人の役割や経過に関しては,上記のとおりであって,控訴趣意の主張は採るを得ない。 そうすると,被告人は,昭和50年ころに暴力団組員となり,これまで多数の前科により何度も服役しており,その反社会性,犯罪性向は著しいこと,原審においては本件殺人への関与を否認する理不尽な弁解をしていたことを併せ考慮すると,他の共犯者らの量刑と比較しても,被告人に対する懲役18年の原判決の量刑が,その判決言渡し当時において重すぎるということはない。 しかしながら,当審における事実取調べの と,他の共犯者らの量刑と比較しても,被告人に対する懲役18年の原判決の量刑が,その判決言渡し当時において重すぎるということはない。 しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,被告人は,当審に至って本件犯行を素直に認め,全面的に原判決の認定を受け入れる旨の意思を表明し,暴力団幹部としての地位を放棄して暴力団を脱退し,その決意の表れとして,自己が所持していたけん銃の所在に関する情報を捜査機関に提供するなど,反省悔悟の情を示し,更生を決意していること,妻が今後の被告人の更生に協力する旨誓約していることが認められ,これら原判決後の被告人のために酌むべき事情を考慮すると,原判決の量刑は,現時点においては刑期をいささか減じるのが相当と考えられる。 第3 よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,被告事件について更に次のとおり判決する。 原判決が認定した事実に原判決と同一の法令を適用し(罰条,刑種の選択,累犯加重,併合罪の処理に関して),その所定刑期の範囲内で被告人を懲役16年に処し,原審における未決勾留日数の算入につき刑法21条を,原審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき刑訴法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 平成13年11月22日仙台高等裁判所第1刑事部裁判長裁判官松浦繁裁判官卯木誠裁判官春名郁子 繁裁判官 卯木誠 裁判官 春名郁子

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