令和4(ワ)138 慰謝料請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月19日 津地方裁判所 四日市支部
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判決文本文11,269 文字)

判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和4年5月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、元外国籍である原告が、ゴルフ場の運営等を行う権利能力なき社団である被告に対して入会の申込みをしたところ、原告が元外国籍であることを理由に入会を拒否されたことにより精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、330万円(慰謝料300万円及び弁 護士費用30万円)の支払及びこれに対する不法行為の日より後の日である令和4年5月27日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等ア原告は、昭和49年生まれの日本人男性であり、一般廃棄物の収集、運搬等を目的とする有限会社a の代表取締役を務める者である。原告は、かつては韓国籍であったが、平成30年10月19日、日本に帰化した。原告は、日本で生まれ育ち、現在も日本で生活している。(争いのない事実、 甲4、5) イ被告は、昭和38年に設立された愛岐カントリークラブという名称のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)の運営等を行う権利能力なき社団である(争いのない事実、甲10)。 ⑵ 本件訴訟に至る経緯等ア原告 年に設立された愛岐カントリークラブという名称のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)の運営等を行う権利能力なき社団である(争いのない事実、甲10)。 ⑵ 本件訴訟に至る経緯等ア原告は、令和4年1月3日、被告のメンバーであるbの誘いを受け、本 件ゴルフ場のコースでプレーした(争いのない事実)。 イ原告は、令和4年2月11日、bとともに、本件ゴルフ場のコースでプレーし、同日、被告から入会に関する説明を受け、入会申込みの案内と提出すべき書類一式を手渡された(争いのない事実、甲1ないし3)。 ウ原告は、令和4年2月16日、b及びcとともに本件ゴルフ場のコース でプレーした。 原告は、同日、入会申込書、誓約書、戸籍抄本等(以下、これらを併せて「本件書類一式」という。)を被告に提出し、次のとおり法人会員の申込みを完了した(以下「本件入会申込み」という。)。 法人の名称有限会社a 代表者氏名原告登録者名原告紹介者 b原告は、この際、被告から、面談及び入会金等の支払の後、入会手続が完了する旨伝えられた。 (争いのない事実、甲2ないし4)エ原告は、遅くとも令和4年4月27日頃までに、被告への入会を拒否することを伝えられた(以下「本件入会拒否」という。)(争いのない事実)。 オ原告は、令和4年5月17日、津地方裁判所四日市支部に本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 ⑶ 弁護士会への人権救済申立て ア原告は、令和4年3月23日、三重県弁護士会に対し、本件入会拒否に関し、人権救済申立てをした(甲12)。 イ三重県弁護士会は、令和4年12月14日、被告に 会への人権救済申立て ア原告は、令和4年3月23日、三重県弁護士会に対し、本件入会拒否に関し、人権救済申立てをした(甲12)。 イ三重県弁護士会は、令和4年12月14日、被告に対し、原告からの本件入会拒否についての人権救済申立てに関し、原告からの申込みに対して「外国籍(元外国籍を含む)」の会員数の上限があることを理由に入会を認 めない対応をしたことは、申立人に対する人種差別(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約1条の「人種差別」)に該当する違法なものであり、元外国籍であることを理由とする入会拒否をしないよう勧告した(甲12)。 ⑷ 被告内部の取決め等 ア被告の会員規約(以下「本件会員規約」という。)には以下の定めがある(乙1)。 2条本クラブはゴルフを通じて会員の体位及び品格の向上を図り併せて内外人間の友誼と国際親善の増進を図るを以て目的とする。 6条本クラブの会員を分けて次の4種とする。 名誉会員、特別会員、正会員(個人会員・法人会員)、準会員(週日会員・週日法人会員・家族会員)会員の権利及び義務は規約に定めるものの外は細則に定めるところに よる。各会員の定数は理事会に於いて定める。 8条正会員又は準会員として本クラブに入会せんとする者は、正会員2名の紹介を得て入会の申込みをなし理事会の承認を得るものとする。 ただし、準会員は特別の承認のない限り日曜日及び一般の休日におい てプレーすることができない。 9条正会員並びに準会員は理事会の承認を得た後、入会金及び細則に定める負担金を納入したときに会員となる。 16条 プレーすることができない。 9条正会員並びに準会員は理事会の承認を得た後、入会金及び細則に定める負担金を納入したときに会員となる。 16条本クラブに次の役員を置き総会において正会員中より選任する。 理事 30名以内(内理事長1名、副理事長1名、常務理事2名以内)監事 3名以内 17条役員は総て名誉職とする。但し職務の為に要した費用は本クラブの負担とすることを妨げない。 尚理事長は理事会の承認を経て有給役員を置くこともできる。 イ被告の利用約款には、ビジターは会員の同伴又は紹介によってのみ、本件ゴルフ場の施設を利用することができるとされている(利用約款1条2項、乙1)。 ウ被告の理事会には、外国籍(元外国籍を含む)の会員数に上限を設け、 この枠に空きが出た場合にのみ新規の外国籍(元外国籍を含む)の者の入会を認めるという申合せ(以下「本件申合せ」という。)がある。本件申合せの内容は、本件会員規約に記載はなく、一般に公表されているものではない。(甲12、弁論の全趣旨) 3 争点 ⑴ 本件入会拒否の違法性(争点⑴)⑵ 原告の損害の有無及び損害額(争点⑵) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(本件入会拒否の違法性)について(原告の主張) ア本件入会拒否の理由 本件入会拒否は、原告が元外国籍(韓国籍)であることを唯一の理由とするものである。 原告は、令和4年2月20日、被告の従業員から電話連絡を受け、「元外国籍(韓国籍)であることから、入会が認められない」と明確に説明された。また、被告のd常務は、同月23日、原告に対し、電話連 原告は、令和4年2月20日、被告の従業員から電話連絡を受け、「元外国籍(韓国籍)であることから、入会が認められない」と明確に説明された。また、被告のd常務は、同月23日、原告に対し、電話連絡し、「今回 の募集で、5、6人はそういう方がみえるもんで、順番といえば、ものすごい先になってしまうということで、一つご理解ください。」「すいません。 本当に。原告eさんそれでね、申込書とか会社の抄本とか、個人の分ね、会社の方に送らせていただきます。」として、会話を締めくくったが、これらの会話内容からすれば、d常務が入会拒否を伝えたことは明らかである。 そして、同月25日、本件書類一式が原告の会社宛てに返送され、この返送によって、本件入会拒否は完結した。 被告は、令和4年2月の時点で原告の被告への入会を拒否したことはなく、同年4月の理事会において、同年3月22日付けで原告から代理人弁護士を通じて内容証明郵便による通知により慰謝料請求がされたことや、 新聞社から本件入会拒否について記事にするとの連絡や電話取材があったことを総合的に考慮して原告の入会を拒否することを決定した旨主張するが、上記の事情は入会拒否の理由となり得るものではない。したがって、本件入会拒否は同年2月25日の本件書類一式の返送によって完結しているのであり、上記理事会の決定は、既に完結している入会拒否を事後 的に承認したものにすぎない。よって、本件入会拒否は原告が元外国籍(韓国籍)であることを唯一の理由としてされたものである。 イ被告の性質等本件ゴルフ場では、昭和38年の設立以降、様々な有名な選手権競技が開催され、平成24年には国民体育大会のゴルフ競技(女子)も開催され ている。このように、全国規模かつ公的な大会も開催されているこ 件ゴルフ場では、昭和38年の設立以降、様々な有名な選手権競技が開催され、平成24年には国民体育大会のゴルフ競技(女子)も開催され ている。このように、全国規模かつ公的な大会も開催されていることから すれば、被告が小規模で閉鎖的なゴルフクラブにすぎないということはできない。また、今回の会員募集についても、理事や役員の知人友人にとどめるような小規模、閉鎖的な募集形態ではなく、広く、一般に募集されている。したがって、被告に誰を入会させるかについては、公序良俗の観点から一定の制限が及ぶことは当然である。 ウ本件入会拒否の違法性原告が元外国籍(韓国籍)であることを理由とした本件入会拒否は、帰化前の国籍、すなわち、出自を理由とした不当な差別であり、法の下の平等を定める憲法14条1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「国際人権規約B規約」という。)26条の趣旨に反する公序良俗違反の 行為である。 また、被告は、本件入会拒否により原告が被る不利益はそれほど大きなものでない旨主張するが、充実したゴルフ生活を楽しむ利益は、人間の幸福追求や人格形成に資する重要な利益である。 さらに、本件入会拒否は、外国籍の者を差別するのみならず、日本に帰 化した歴とした日本人である原告をその出自を理由に差別するものである。 加えて、被告は、会員募集に際して本件申合せの存在を原告に一切伝えず、入会申込みをさせた上で突如入会拒否を伝えており、本件入会拒否は原告の期待を裏切るものであった。 以上のとおり、上記差別の不合理性、原告の被る不利益や本件入会拒否 が原告の期待を裏切る形で行われたこと等に鑑みれば、被告に私的自治が認められるとしても、本件入会拒否は、健全な社会常識に反し、社会的に おり、上記差別の不合理性、原告の被る不利益や本件入会拒否 が原告の期待を裏切る形で行われたこと等に鑑みれば、被告に私的自治が認められるとしても、本件入会拒否は、健全な社会常識に反し、社会的に許容し得る限度を超える違法なものである。 (被告の主張)ア本件入会拒否の理由 本件入会拒否は、原告が元外国籍であることを唯一の理由とするもので はない。 本件では、被告の従業員やd常務が、令和4年2月の時点で、本件入会申込みに関し、原告に対して電話連絡し、被告においては、元外国籍を含む外国籍の会員の人数を制限しており、その枠が空くまで入会を待ってほしい旨伝えたことはあるものの、理事会での審査を経ることなく原告の入 会を拒否すると伝えたことはない。本件入会拒否は、上記の電話でのやり取りの後、原告から代理人弁護士を通じて同年3月22日付け内容証明郵便をもって被告に対して300万円の慰謝料請求がされ、同年4月12日には被告に新聞社から原告が入会を断られた件について記事にすることを考えている旨の電話取材があるなどしたことを総合的に考慮し、同月24 日開催の理事会において決定をしたものである。同年2月のd常務と原告とのやり取りの後に本件書類一式を返送したことについても、その時点で枠に空きがないことを説明し、本件入会申込みを取り下げることに理解が得られたものとして返送したのであって、入会拒否であるとして書類を突き返したのではない。 以上のとおり、本件入会拒否は、原告が元外国籍であることだけでなく、令和4年2月に被告の従業員やd常務が原告に電話連絡した後の原告の対応等を総合的に考慮してされたものである。 イ被告の性質等被告は、「ゴルフを通じて会員の体位及品格の だけでなく、令和4年2月に被告の従業員やd常務が原告に電話連絡した後の原告の対応等を総合的に考慮してされたものである。 イ被告の性質等被告は、「ゴルフを通じて会員の体位及品格の向上を図り併せて内外人 間の友誼と国際親善の増進を図る」ことを目的(本件会員規約2条)とする会員制(預託金制)のゴルフクラブであり、権利能力なき社団である。 本件会員規約8条本文には「正会員または準会員として本クラブに入会せんとする者は、正会員2名の紹介を得て入会の申込をなし理事会の承認を得るものとする」と規定され、会員になるには理事会の承認が必要とされ ている。また、被告の現在の会員数は約1500名であり、正会員の中か ら選任された30名以内の理事と3名以内の監事が役員としてクラブの運営を行い、役員は原則として無報酬(名誉職)とされるなど、自主的な運営が行われている閉鎖的で私的な団体である。 会員資格については、規約及び細則上は正会員2名の紹介が必要な点以外は制限が明記されていないが、歴代の理事会において、外国籍の会員が 多くなると一般的に生活様式や行動様式、習慣、慣習等が日本人と異なることから、クラブを設立した当初の雰囲気が変わってくるため、そうしたことがないように、本件申合せが存在する。 ウ本件入会拒否の違法性前記イのとおり、被告は閉鎖的で私的なゴルフクラブであるところ、こ のような私的団体においては私的自治の原則が妥当し、誰を入会させるかについて自由な裁量によって決することができる。個人の基本的な自由や平等を不当に害することがあってはならないが、私人間ではそれが私的自治の原則を逸脱し社会的に許容し得ない不合理な取扱いといえない限り、公序良俗に反し無効となるものではない。そして、 の基本的な自由や平等を不当に害することがあってはならないが、私人間ではそれが私的自治の原則を逸脱し社会的に許容し得ない不合理な取扱いといえない限り、公序良俗に反し無効となるものではない。そして、被告は、あくまでゴル フをプレーする環境を提供することを目的として設立された団体であり、会員の中から選ばれる役員が無報酬でクラブの運営に当たることが求められているように、それらの役員や理事会が自主的に運営する団体である。 このような私的かつ自主的な団体が、誰をどの程度の割合で入会させるかについても自主的に選択できるのは当然である。また、被告の会員となる ことが何らかの公的な意味合いを有するものではなく、被告の会員たる資格は純粋に私的なものであるから、これが認められないことによって何らかの公的な不利益を被ることはない。したがって、被告が外国籍の会員数に上限を設けそれに帰化した元外国籍の者まで含めていることについても、被告の自主的な選択の範囲内であり、社会的に許容し得ない不合理な取扱 いということはできない。 エよって、本件入会拒否は違法ではない。 ⑵ 争点⑵(原告の損害の有無及び損害額)について(原告の主張)原告は、本件入会拒否により筆舌に尽くし難い精神的苦痛を被った。また、原告が本件入会申込みをする前に本件申合せについて知らされることはなく、 本件入会拒否は原告の期待を裏切る形で行われたものであり、原告は、bやcに対し、本件入会拒否の理由について、自らが反社会勢力や犯罪歴がある者であるからではなく、単に元外国籍(韓国籍)であることが理由であるとの説明を余儀なくされた。このように、原告は、本来あえて伝える必要のない自らの出自について紹介者らに説明する必要が生じ、原告の精神的損害は なく、単に元外国籍(韓国籍)であることが理由であるとの説明を余儀なくされた。このように、原告は、本来あえて伝える必要のない自らの出自について紹介者らに説明する必要が生じ、原告の精神的損害は 拡大した。 以上の原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は300万円を下らない。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 本件入会拒否に至る経緯等ア原告が本件入会申込みをした後の令和4年2月20日、被告の従業員で あるfは、原告に電話を掛け、その時点では、本件申合せにより元外国籍を含む外国籍の会員の枠に空きがないため、原告が直ちに入会することはできない旨伝えた(乙4、原告本人(同人の陳述書(甲11)を含む。以下、同じ。))。 イ原告は、前記アの被告従業員の説明に納得しなかったことから、d常務 から再度説明を受けることとなり、d常務は、令和4年2月23日、原告 に対し、原告の入会が認められない理由や本件申合せについて電話で説明した。その際のd常務と原告のやり取りの一部は以下のとおりである。(甲7の1・2、原告本人)d常務「そこは、ひとつぐっと抑えてください。申し訳ない本当に。すいません。まあ、うちの理事会の長いこと、そういうことでやっています ので、これは私が言っても、順番・・・。決して、まったくだめだというわけではないんです。」(甲7の2・4頁)原告「それは分かっています。」(甲7の2・4頁)d常務「今回の募集で、5、6人はそういう方がみえるもんで、順番といえば、ものすごい先になってしまうということで、一つご理解ください。」 (甲7の2・4頁)原告「う 」(甲7の2・4頁)d常務「今回の募集で、5、6人はそういう方がみえるもんで、順番といえば、ものすごい先になってしまうということで、一つご理解ください。」 (甲7の2・4頁)原告「うーん。正直、納得はしていないですが、これ以上言っても仕方がないのは分かっているので、せっかくこうして時間を作っていただいて、困らせても仕方がないので分かっています。」(甲7の2・4頁)d常務「すいません。本当に。原告eさんそれでね、申込書とか会社の 抄本とか、個人の分ね、会社の方に送らせていただきます。」(甲7の2・4頁)原告「よろしくお願いします。」(甲7の2・5頁)ウ被告は、令和4年2月25日頃、本件書類一式を原告に返送した(争いのない事実)。 エ原告は、代理人弁護士を通じて、被告に対し、令和4年3月22日付けの内容証明郵便による通知書により、原告の入会を拒否したことについて正式な謝罪を求めるとともに、上記入会拒否により精神的苦痛を被ったとして、慰謝料300万円を請求した(乙2)。 オ被告は、令和4年4月12日頃、新聞社から、原告が入会を断られた件 について記事にすることを考えているとの電話取材を受けた(弁論の全趣 旨)。 カ被告は、原告に対し、代理人弁護士を通じて、令和4年4月27日付け回答書をもって、前記エの通知書に関して、同月24日に開催した理事会において原告の入会を不許可とする決定に至ったこと、本件入会拒否は国籍によるいわれなき差別には当たらない旨を回答した(乙3)。 ⑵ 被告の概要ア被告は、「ゴルフを通じて会員の体位及び品格の向上を図り併せて内外人間の友誼と国際親善の増進を図る」ことを目的とする会員制(預託金制)のゴルフクラブである(前提事実⑷ア、弁論の の概要ア被告は、「ゴルフを通じて会員の体位及び品格の向上を図り併せて内外人間の友誼と国際親善の増進を図る」ことを目的とする会員制(預託金制)のゴルフクラブである(前提事実⑷ア、弁論の全趣旨)。 イ被告の会員となるためには正会員2名の紹介を得て入会の申込みをした 上で理事会の承認を得る必要がある(前提事実⑷ア)。 ウ被告の現在の会員数は約1500名である(弁論の全趣旨)。 エ被告の役員は正会員の中から選任され、30名以内の理事と3名以内の監事で構成され、役員は全て名誉職とされている(前提事実⑷ア及び)。 オ本件ゴルフ場においては、平成24年には第67回国民体育大会のゴル フ競技(女子)が開催された。その他にも、中部地方の選手権競技を中心に、複数の選手権競技が開催されている。(甲10) 2 争点⑴(本件入会拒否の違法性)について原告は、本件入会拒否は憲法14条1項及び国際人権規約B規約26条の趣旨に反し、公序良俗に反する違法なものである旨主張するので、以下検討する。 ⑴ 憲法上の基本権保障規定の定める個人の自由や平等は、国や公共団体の統治行動に関する関係においては侵されることのない権利として保障されるべき性質のものであるが、憲法14条1項の規定は、私人相互の関係を直接規律するものではない。国際人権規約B規約26条も同様に私人間の関係を直接規律するものではない。そして、私人間の関係においては、各人の有する 自由と平等の権利自体が具体的場合に相互に矛盾、対立する可能性があり、 このような場合におけるその対立の調整は、原則として私的自治に委ねられ、ただ、一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容し得る限度を超える場合にのみ、法がこれに する可能性があり、 このような場合におけるその対立の調整は、原則として私的自治に委ねられ、ただ、一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容し得る限度を超える場合にのみ、法がこれに介入しその調整を図ることが許されるというべきである。 したがって、団体を結成する者及び結成された団体は、どのような目的の 下にどのような構成員によって団体を結成し、あるいはどのような者について新たな構成員として団体への加入を認め、さらには、どのような条件でその加入を認めるかについては、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができ、特定の団体が、その団体に構成員として加入することを希望する者について、その者の現在又は過去の国籍 によって、構成員となることを制限したとしても、そのことが直ちに公の秩序に反するものではなく、その行為を直ちに民法上の不法行為に当たる違法な行為であると評価することはできない。そして、私人である団体は、結社の自由が保障されており、それにもかかわらず、新たな構成員の加入を拒否する行為を民法709条の不法行為に当たるとすることは、国家が、その権 力によって私人間の関係に介入し、個別的な救済を行うことになるのであるから、このようなことが許される場合は、結社の自由を制限してまでも相手方の平等の権利を保護しなければならないほどに、相手方の平等の権利に対して重大な侵害がされ、その侵害の態様、程度が憲法の規定の趣旨に照らして社会的に許容し得る限界を超えるといえるような例外的な場合に限られる ものと解するのが相当である。 以下、本件について検討する。 ⑵ 被告は、本件入会拒否は、専ら原告が元外国籍であることを理由とするものではなく、令和4年2月に被告の従業員やd常務が ものと解するのが相当である。 以下、本件について検討する。 ⑵ 被告は、本件入会拒否は、専ら原告が元外国籍であることを理由とするものではなく、令和4年2月に被告の従業員やd常務が原告に電話連絡した後の一連の事情を総合的に考慮して決定したものである旨主張する。 しかしながら、前記認定事実⑴イ及びウによれば、令和4年2月23日に d常務が原告に対して本件申合せにより元外国籍である原告が直ちに入会することはできないことを説明し、本件入会申込みが認められないことについて「一つご理解ください」と発言した上、同月25日頃には本件書類一式を原告に返送していることが認められる。これらの事情によれば、正式な理事会での決定は出されていないとしても、本件書類一式を返送した時点で原告 の入会を不許可とすることが確定的に決定されていたといえる。そうすると、本件入会拒否は専ら原告が元外国籍であることを理由とするものというべきである。 ⑶ 次に、本件入会拒否は専ら原告が元外国籍であることを理由とするものであることを前提として、本件入会拒否が社会的に許容し得る限界を超えるも のであるか否かを検討する。 前記認定事実⑵ウ及びオによれば、被告の会員数は約1500名に及び、本件ゴルフ場では全国規模の大会も開催されていることが認められるものの、前記認定事実⑵イ及びエのとおり、被告においては、会員となるためには正会員2名の紹介を得て入会の申込みをした上で理事会の承認を得る必要があ り、被告の役員は基本的には無報酬の名誉職であることからすれば、被告は会員同士の人的つながりが強く、会員による自主的な運営が行われている閉鎖的かつ私的な団体ということができる。一方、被告が会員となれない場合でも、会員の同伴又 報酬の名誉職であることからすれば、被告は会員同士の人的つながりが強く、会員による自主的な運営が行われている閉鎖的かつ私的な団体ということができる。一方、被告が会員となれない場合でも、会員の同伴又は紹介があればプレーできるのであり(前提事実⑷イ)、また、原告に関しては、他のゴルフ場の会員でもあり(甲2、原告本人)、本 件ゴルフ場でプレーしなければならない特別な理由もない。さらに、ゴルフは一般的なスポーツであり、人間の幸福追求や人格形成に資する面があることは否定できないものの、社会生活を営むに当たって必要不可欠なものとはいえない。 証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば、本件申合せの目的は、被告の 設立当初の雰囲気を維持することにあると解されるところ、日本で生まれ育 ち、日本で長年社会生活を営んでいる上、日本国籍も取得している原告との関係では、原告が元外国籍であることを理由としてその入会を制限することに合理的な理由があるかには疑念もある。しかしながら、上記の閉鎖的で私的な団体であるという被告の性質、会員として入会を認める否かの決定は最終的には理事会の裁量に委ねられていること、本件入会拒否によって原告が 被る不利益の程度等を総合的に考慮すると、原告の平等の権利への侵害の態様、程度が憲法の規定の趣旨に照らして社会的に許容し得る限界を超えるものとまでは認められない。したがって、本件入会拒否が違法なものとは認められない。 また、本件においては、原告は、本件入会申込みの際に本件申合せの存在 を知らされておらず、本件入会拒否は、被告に入会できるであろうとの原告の期待を裏切るものであったが、そもそも、被告への入会には会員の紹介によって申込みをしただけでは足りず、理事会の承認が必要なのであり、外国籍 おらず、本件入会拒否は、被告に入会できるであろうとの原告の期待を裏切るものであったが、そもそも、被告への入会には会員の紹介によって申込みをしただけでは足りず、理事会の承認が必要なのであり、外国籍(元外国籍)であるか否かにかかわらず、入会が認められるか否かは理事会の裁量に委ねられているのであるから、本件申合せの存在を申込みの時点 で知らされていなかったことは上記の結論を左右しない。 3 結論以上によれば、本件入会拒否の違法性は認められないから、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 津地方裁判所四日市支部 裁判長裁判官升川智道 裁判官岩尾悠矢 裁判官川内真里

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