昭和44(う)100 北海道海面漁業調整規則違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和44年11月6日 札幌高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。          理    由  本件控訴の趣意は、札幌高等検察庁検察官隈井光提出にかかる控訴趣意書記載の とおりであり、これに対する答弁は、弁護人福岡定

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判決文本文7,986 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、札幌高等検察庁検察官隈井光提出にかかる控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人福岡定吉作成名義の答弁書記載のとおりであるから、それぞれこれを引用する。 検察官の所論は要するに、北海道海面漁業調整規則五五条一項一号、三六条の罪が原則としてわが国の領海および公海においてなざれた漁業についてのみ成立するとした原判決は法令の解釈適用を誤つたものであるというのであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。 北海道海面漁業調整規則(以下、「本規則」という。)は、その前文および一条からも明らかなように、漁業法六五条一項および水産資源保護法四条一項の規定に基づき、右両法律の委任により、海面についての水産資源の保護培養およびその維持ならびに漁業調整を目的として制定されたものであつて、本規則五五条一項一号、三六条四号は、これらの法律の右各条項の各一号にいう「水産動植物の採捕」「に関する制限又は禁止」に関する規定である。したがつて、本規則五五条一項一号、三六条四号が規制する海面の範囲を決定するには、まず、その根拠法則である漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場所的適用範囲について考察しなければならない。そして、漁業法および水産資源保護法がともに、場所的には公共用水面又はこれと連接一体をなす非公共用水面につき適用されることは、漁業法三条、四条および水産資源保護法二条、三条によつて明らかであるが、右の公共用水面又はこれと連接一体をなす非公共用水面の意義ないし範囲は必ずしも明らかでないから、右両法中のある条項の適用の可否を問題とするに際しては、右両法全体および当該条項の目的、趣旨等を勘案して右の意義ないし範囲を決すべきであ なす非公共用水面の意義ないし範囲は必ずしも明らかでないから、右両法中のある条項の適用の可否を問題とするに際しては、右両法全体および当該条項の目的、趣旨等を勘案して右の意義ないし範囲を決すべきであるとともに、本件のように、適用の可否が問題となる条項が罰則であるときは、右の公共用水面又はこれと連接一体をなす非公共用水面は場所的規制範囲を限定する構成要件要素として理解しなければならない。本件においては、この観点から、まず漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号における公共用水面又はこれと連接一体をなす非公共用水面の意義ないし範囲が―構成要件上場所的規制範囲を限定するものとして―問われることとなる。この点、原判決は、右両法条の場所的適用範囲は、前記の漁業法三条、四条および水産資源保護法二条、三条の規定とかかわりなく、右両法全体の目的性格と前記両法条の内容に照らして決せられるべきであるとし、当裁判所と見解を異にするが、両者の見解の差は、前記両法条の場所的適用範囲を論ずるに当つて、漁業法三条、四条および水産資源保護法二条、三条の「公共用水面又はこれと連接一体をなす非公共用水面」なる観念を介在させるかどうかの点の差にすぎないから、重要なものではない。 ところで、まず、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号は、いずれも主務(農林)大臣又は都道府県知事に、水産動植物の採捕等に関する制限又は禁止についての命令を定める権限を与えたものである。右両法条の目的を、前者については、「漁業取締その他漁業調整のため」という要件が、また後者については「水産資源の保護培養のため」という要件が付されていることと、漁業法一条および水産資源保護法一条に掲げられている右両法全体の目的とを併せ勘案して考えると、それは、前者については、限られた資源と漁場 は「水産資源の保護培養のため」という要件が付されていることと、漁業法一条および水産資源保護法一条に掲げられている右両法全体の目的とを併せ勘案して考えると、それは、前者については、限られた資源と漁場のもとで漁法、漁具、船舶等の面で進歩著しい漁業技術の駆使を、事業規模や資力に格差のある漁業者の自由な競争に委ね放任することによる不幸な事態を防ぐため、乱獲を押えて水産資源の適正な利用ないし保護培養を図るとともに、自由競争を制限して、漁業に頼らざるを得ない多くの中小規模の漁民の事業と生活を保護することにあり、後者については、右のうち、特に水産資源の適正な利用ないし保護培養という面に主眼をおいているといえよう。そして、水産資源の適正な利用ないし保護培養という見地からは、操業の事実上可能なおよそ全海域を規制範囲とし、また漁民保護の立場からも―それには抜け駆け的な漁獲競争も抑止されるべきであるから―同様におよそ事実上操業可能な全海域を規制の範囲に含めるというのが最も目的に適うことになる。 したがつて、この行政目的を強調し、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場所的適用範囲を事実上操業可能なおよそ全海域とし、少なくとも、右の海域中そこでの操業がわが国における水産資源の適正利用ないし保護培養と漁民保護とに相当な影響を有する場合をこれに含ませるとすることにも、一応の理由があるといわなければならない。 しかし、このように解するならば、右の両法条の委任命令に違反する操業を行なつた場合は、その場所のいかんを問わず現実に操業した以上事実上操業可能な海域で操業をなしたとされる公算が大きく、かくては具体的適用の場において、右両法条の場所的適用範囲を論ずる実益はほとんど失なわれることになろう。漁業法および水産資源保護法が一切の水域を規制対象とし属人的 で操業をなしたとされる公算が大きく、かくては具体的適用の場において、右両法条の場所的適用範囲を論ずる実益はほとんど失なわれることになろう。漁業法および水産資源保護法が一切の水域を規制対象とし属人的に効力を持たせる法律であるならば格別、前述したように、それは、漁業法についてはその三条、四条、水産資源保護法についてはその二条、三条によつて場所的適用範囲の限定を予想していると解される以上、前記の見解を是認し得るか否かについては、さらに慎重な検討が加えられなければならない。そして、漁業法および水産資源保護法が、何といつても、漁業および水産資源保護に関する一般法であり、漁業法三条、四条および水産資源保護法二条、三条も特殊の限定された水域を規制範囲として予定しているとは解されないところであるから、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場所的適用範囲を論ずるに当つて、前述した操業可能な海域であるかどうかの観点から考察を進めるとしても、それはやはり一般的に操業可能な海域といえるかどうかを問題にすべきであろう。 右の見地から考えると、まず、わが国の領海において一般的に事実上操業が可能なことはあらためていうまでもなく、また公海は、国際法上あらゆる国の人が航行、通商、漁業等のために原則として自由に使用できるのであつて、現実にもわが国の漁民は広く世界各地の公海で漁業を営んでいるところであるから、やはりそこでは一般的に操業が事実上可能であるといつてよいであろう。しかし、外国の領海についてはこれと同一には論じ得ない。すなわち、原判決も指摘しているように、外国の領海は国際法上当該外国の属地的統治に委ねられ、他の国は無害航行等特別の場合を除いては自由に使用できないのであつて、漁業についても、当該外国はその領海につき排他的権利を有するのである。したが 外国の領海は国際法上当該外国の属地的統治に委ねられ、他の国は無害航行等特別の場合を除いては自由に使用できないのであつて、漁業についても、当該外国はその領海につき排他的権利を有するのである。したがつて、国際法上わが国の漁業者は外国領海において漁業を行なうことはできなく、またもしこれを行なえば、当該外国により領海侵犯等の理由で取締りを受け処罰されてもやむを得ないところであるから、実際にもわが国の漁業者は外国の領海に立ち入つてまで操業することをさし控えるのが通例である。したがつて、外国の領海は、わが国と当該外国間の条約等の合意によりそこでのわが国の漁業が許されている場合を除き、一般的に操業が事実上可能な水域とはいえないというべきである。 以上みたとおり漁業法六五条一項一号および水産資源法四条一項一号の目的、趣旨と漁業法および水産資源保護法の性格とを併せ考えると、右両法条による規制の場所的範囲は原則として領海(内水をも含む。)および公海に限られ、外国領海については、わが国と当該外国間の条約等の合意により、そこにおけるわが国の漁業が承認されている場合を除きこれに含まれないと解するのが相当である。原判決は、この点につき、問題となる水域において漁業調整上の各種規制が必要かつ効果を挙げ得るかどうかという観点から論義を進め、外国の領海における漁業にまで漁業調整上の規制を一般的に及ぼす必要があるか否かはすこぶる疑問であるとし、結局当裁判所と同じ結論に到達しているが、ある範囲の水域に漁業調整上の規制を(一般的に)及ぼす必要があるかということとそこにおいて(一般的に)操業が事実上可能かどうかということは表裏一体の関係にあるから、両者は同じ趣旨を観点を変えて述べたにすぎないものといい得よう。 次に、前述したように、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四 に)操業が事実上可能かどうかということは表裏一体の関係にあるから、両者は同じ趣旨を観点を変えて述べたにすぎないものといい得よう。 次に、前述したように、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号は、いずれも主務(農林)大臣又は都道府県知事に水産動植物の採捕等に関する制限又は禁止についての命令を定める権限を与えたものであるが、水産資源保護法九条等の規定によれば、右命令における禁止は、反面、特定の場合において命令権者の許可又は免許による解除があることを予定していると解しなければならない。 本件で問題になつているさけ刺し網漁業についても、本規則三六条によると、これを営んではならないが、漁業権又は入漁権にもとづいてする場合はこのかぎりではないとされている。漁業権は、都道府県知事の免許によつて設定され(漁業法一〇条)、入漁権は漁業権に基礎をおいている(同法七条)から、このよらな漁業は結局都道府県知事の免許を前提としていることになる。ところで、この免許は、漁業権の設定を目的としたものであるから、いわゆる特許にあたり、いわゆる許可から区別して理解されるべきかもしれない。しかし、罰則の適用の関係で考察すると(特に本規則においては、その三六条、五五条の規定の形式自体からも明らかなように、)、さけ刺し網漁業は一般的に禁止され、それに違反したものは処罰の対象とされ、ただ漁業権又は入漁権にもとづいてする場合にかぎつて処罰の対象とされないのであるから、一般的禁止が許可によつて解除されないかぎり処罰の対象とされる場合と異なるところはない。つまり、本規則三六条は、右にのべたような、一般的禁止と、それが行政庁の許可又は免許によつて解除される場合があることを規定しているものとみてよいであろう。そして、このような場合においては、右の禁止の場所的範囲は許可等の 、右にのべたような、一般的禁止と、それが行政庁の許可又は免許によつて解除される場合があることを規定しているものとみてよいであろう。そして、このような場合においては、右の禁止の場所的範囲は許可等の性質、範囲という観点からも考察されなければならない。もつとも、一般的にいつて禁止の範囲と許可等の可能な範囲が常に一致しなければならないということはなく、それは場所的範囲についても例外ではないということはいえるかもしれない。しかし、前記のように許可等による解除が留保されている場合における漁業の禁止についての違反は、やはり許可等を受けないで禁止に背き漁業を営んだ場合を指し、許可等の可能であることを前提としていると解するのが相当であり、この場合の禁止が許可等のおよそあり得ない水域における漁業をも規制の対象として含んでいると解することは困難である。したがつて、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号に基づく命令における禁止の場所的適用範囲は、少なくとも右命令において許可等による解除が留保されている場合においては、右の許可等の可能な場所的範囲と一致して考えられるべきものである。しかるところ、主務(農林)大臣又は都道府県知事が外国の領海について漁業に関する許可等を与えるということは、当該外国との条約上の取り決め等により、外国がそこにおけるわが国の漁業を承認し、その結果漁業調整の必要が生ずる場合のほかは国際法上考えられないところであり(特に漁業権は、特定の水面において漁業を営む権利であり、かつ、土地に関する規定を準用される物権とみなされる権利(漁業法二三条一項)であるが、外国の領域に属する地域についてまでこのような権利を設定できるとすることはとうてい考えがたいところである。)、この点からも漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場 三条一項)であるが、外国の領域に属する地域についてまでこのような権利を設定できるとすることはとうてい考えがたいところである。)、この点からも漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場所的適用範囲は―少なくとも許可等による解除が留保されている本規則三六条のような規定の適用が問題となる場合においては―、原則として外国の領海に及ばないと解するのが相当である。 また、原判決も指摘するように、漁業法はその一三四条において、主務大臣又は都道府県知事は、漁業調整のため必要な場合には、当該官吏、吏員をして漁場、船舶等に臨んで状況、物件等の検査をさせ得る旨規定しており、これは漁業法六五条一項一号に関しても例外てはないと認められるが、前述したとおり、外国領海は国際法上はわが国の行政権の実力を正当に及ぼし得ない地域であり、したがつてわが国は外国領海に立ち入つてまで、右の検査を含む漁業取締の実力を行使し得ないものというべきであり、このことも漁業法六五条一項一号の場所的適用範囲に関して前記のように解することの一つの根拠となるであろう。 さらに、漁業法および水産資源保護法は、右両法の各一条に掲げられた行政目的を達成するために定められた、いわゆる行政法規に属するが、原判決も述べるように、一般に行政法規はこれを制定する機関の権限の及ぶ全地域に効力を有すると同時に、その地域に限界を有するのが原則であるとされていることが留意されなければならない。これを国会の制定する法律についていえば、それはわが国の全領土および領海にわたつて効力を有するとともにそこに限界を有するのが原則なのである。もとより、これはあくまでも原則であつて、行政法規の目的ないし性格のいかんによつては、これを制定する機関の権限の及ぶ地域を越えて属人的にその効力を及ぼさせることも不可能ではない のが原則なのである。もとより、これはあくまでも原則であつて、行政法規の目的ないし性格のいかんによつては、これを制定する機関の権限の及ぶ地域を越えて属人的にその効力を及ぼさせることも不可能ではないであろう。たとえば、国外において旅券の発給を受けようとする場合に関する旅券法の規定がそれである。ただ、この場合はあくまでも例外なのであるから、そのよらに認めうれるためには、当該行政法規にその旨の明文が存するか又は当該法規の目的ないし性格から明確にその趣旨が導かれることを要するというべきである。しかるところ、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場所的適用範囲が外国領海に及ぶことの明文はないし、また同法の目的、性格からその趣旨が明確であるともいえないことは、前述したところにより自ら明らかであろう。 <要旨第一>以上を総合していえば、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号の場所的適用範囲、すな</要旨第一>わち、右各条項における公共用水面又はこれと連接一体をなす非公共用水面の範囲、したがつてまた本規則五五条一項一号、三六条四号の場所的適用範囲は原則としてわが国の領海および公海に限られると解するのが相当ということになる。なお、本規則については、さらに、その制定権者が北海道知事であるところから、右の適用範囲はさらに制約を受け、北海道における水産資源の保護培養およびその維持ならびに漁業調整を行なう必要がある海域で、かつ北海道知事が事実上取締を行なうことが可能な範囲に限定されるのではないかという問題があるが(昭和一二年一二月二日大審院判決、昭和三五年一二月六日最高裁判所判決参照)、本件においてはこの点を論ずる必要はない(ちなみに、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号、さらに本規則五五条一項一号、三六条四号の 院判決、昭和三五年一二月六日最高裁判所判決参照)、本件においてはこの点を論ずる必要はない(ちなみに、漁業法六五条一項一号および水産資源保護法四条一項一号、さらに本規則五五条一項一号、三六条四号の場所的適用範囲を右のように解することは、わが国に近接する外国の領海、特にわが沿岸漁業等の漁場として適する海域にわが国の漁船がひそかに侵入して操業する行為を放任することとなり、このことは行政目的という観点からは好ましくないものといえよう。しかし、刑罰法規はおよそその目的に反するあらゆる行為を処罰の対象とするのではなく、そこには自ら当該法規の性格、文理等から導かれる合理的な限界が存するというべきであつて、すでに検討を加えたところによれば、右のような行為の禁遏は現行漁業法および水産資源保護法、さらには本規則のわく外のものであり、その趣旨を明示した新たな立法措置に委ねられるべきものと考える。)。そして、記録によれば、本件公訴事実記載の被告人の操業の地点がクナシリ島沿岸から三海里を越えた海域であつたことは証拠上明らかでなく、所論もこれを争わないところ、<要旨第二>原判決が説くような理由によつて、クナシリ島およびその領海は、領土的な帰属はともかくとして、現在ソヴ</要旨第二>イエト社会主義共和国連邦が属地的に統治し、わが国が統治権の実力を行使し得ない点で一般の外国領海と同一視することができ、それ故クナシリ島沖三海里以内の海域は、外国の領海と同様、漁業法六五条一項一号、水産資源保護法四条一項一号、さらには本規則五五条一項一号、三六条四号の規制の対象とされていない場所とみるべきであるから、被告人の本件操業地点が右場所であることの可能性がある以上、結局本件公訴事実は犯罪の証明がないことに帰する。したがつて、これと結論を同じくする原判決には何ら所論のよらな法令の 所とみるべきであるから、被告人の本件操業地点が右場所であることの可能性がある以上、結局本件公訴事実は犯罪の証明がないことに帰する。したがつて、これと結論を同じくする原判決には何ら所論のよらな法令の解釈適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 よつて、本件控訴はその理由がないから、刑事訴訟法三九六条によりこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官深谷真也裁判官小林充裁判官岨野悌介)

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