平成12(行コ)136 自動車取得税更正処分取消請求控訴事件(原審・水戸地方裁判所平成11年(行ウ)第11号)

裁判年月日・裁判所
平成12年8月31日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文5,683 文字)

主文 一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が、平成一一年一月二九日に原判決別紙目録記載の自動車についてした自動車取得税更正処分を取り消す。 3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二被控訴人本件控訴を棄却する。 第二事案の概要本件は、控訴人が、その所有に係る原判決別紙目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)について、被控訴人から、平成一一年一月二九日、自動車取得税更正処分(以下「本件更正処分」という。)を受けたため、本件更正処分が違法であるとしてその取消しを求めた事案であるが、原審裁判所は、本件更正処分に違法はないとして、請求を棄却する判決をしたため、控訴人がこれを不服として、控訴したものである。 一前提となる事実本件の前提となる事実(争いのない事実及び証拠により認められる事実)は、原判決書三頁一行目から同七頁四行目までに記載するとおりであるから、これを引用する。 二争点本件の主要な争点は、本件更正処分の適否であり、具体的には、(一) 本件自動車の新規登録について地方税法六九九条の三第三項後段のみなし規定の適用があるか(争点1)、(二) 本件更正処分は信義則に違反し違法であるか(争点2)、である。 三当事者双方の主張右争点についての当事者双方の主張は、争点1についての控訴人の当審における追加主張及びこれに対する被控訴人の答弁を以下のとおり付加するほかは、原判決書七頁一〇行目から同一六頁五行目までに記載するとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書八頁八行目の「六九九条の三第三項」の次に「後段」を加え、同一二頁二行目の「認容する」を「容認する」と改める。)。 から同一六頁五行目までに記載するとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書八頁八行目の「六九九条の三第三項」の次に「後段」を加え、同一二頁二行目の「認容する」を「容認する」と改める。)。 (控訴人の当審における追加主張)道路運送車両法七条の規定に基づいて、車両の新規登録をするためには、同条に記載されている書面を提出するほか、保管場所の確保を証する書面(以下「車庫証明書」という。)を提出し(自動車の保管場所の確保等に関する法律四条一項)、自動車損害倍償責任保険証明書を提示すること(自動車損害賠償保障法九条一項)が義務付けられているところ、控訴人は、本件新規登録の申請手続に当たって、車庫証明書を提出せず、また、自動車損害賠償責任保険に加入せず、その証明書を提示しなかった。しかるに、本件自動車の新規登録手続の申請を受けた陸運支局は、本件自動車が輸出済みであり、登録も直ちに抹消され、運行の用に供されることがあり得ないことを知っていたため、便宜的に右のような申請を受理し、本件新規登録をした。しかし、これは、前記の規定に違反する不適法な登録であり、その効力を有しないものである(自動車の保管場所の確保等に関する法律四条二項、自動車損害賠償保障法九条二項参照)。 このように、本件自動車については、適法な新規登録がされていないのであるから、これに地方税法六九九条の三第三項後段を適用することはできない。したがって、これを適用してした本件更正処分は違法であり、取消しを免れない。 (被控訴人の答弁)控訴人の主張は争う。本件新規登録は、控訴人の意思に基づいて適法にされたものである。また、本件抹消登録も、控訴人の意思又はその都合によりされたものであり、登録手続が無効あるいは不適法なため抹消されたものではない。 課税庁である被控訴人としては、課税 づいて適法にされたものである。また、本件抹消登録も、控訴人の意思又はその都合によりされたものであり、登録手続が無効あるいは不適法なため抹消されたものではない。 課税庁である被控訴人としては、課税法律主義に基づいて一律かつ公平な課税事務を執行する立場にあるのであり、新規登録所管庁が車両について新規登録をし、あるいはこれを無効として取り消すなどの判断をしていない以上、これを有効として課税事務を執行するほかないのである。 第三当裁判所の判断一争点1(地方税法六九九条の三第三項後段の適用の有無)について 1 自動車取得税は、主として市町村の道路に関する整備費用に充てるため創設されたものであり、最初から特定の目的に充てることが予定されている目的税である。また、自動車取得税は、自動車の取得の際に、その取得の事実に担税力を見出して、その取得者に課税する流通税である。その課税客体は自動車の取得であり、納税義務者は自動車の取得者であるが、右のように、自動車取得税は道路目的財源たる性格を有するため、自動車取得税における自動車の取得には、自動車製造業者の製造による取得、自動車販売業者の販売のための取得等の場合には、その取得によって通常道路運行が行われないことから、これを課税客体に含めないこととしている(地方税法六九九条の二第二項)(甲八参照)。しかし、このような自動車販売業者等(以下「販売業者等」という。)であっても、その所有目的を変更して、自動車を道路の運行の用に供した場合は、その運行の用に供することを「自動車の取得」とみなして、その販売業者等を「自動車の取得者」とみなして、販売業者等に自動車取得税を課するものとしている(地方税法六九九条の三第三項前段)。そして、課税実務上、販売業者等が自動車をいつ運行の用に供したかを捕捉することは不可能であるため 得者」とみなして、販売業者等に自動車取得税を課するものとしている(地方税法六九九条の三第三項前段)。そして、課税実務上、販売業者等が自動車をいつ運行の用に供したかを捕捉することは不可能であるため、販売業者等が、課税対象とされていない自動車について、道路運送車両法七条の規定による登録を受けた場合等には、その登録等を「運行の用に供する」ものとみなして、自動車取得税を課するものとしている(地方税法六九九条の三第三項後段)。なお、地方税法は、自動車取得税が道路目的財源としての性格を有することにかんがみ、道路を使用する自動車については等しくその負担を求めるべきであるとの考え方から、自動車の用途による免税は設けていないが、公共法人の取得と形式的な所有権の移転の場合については、これを非課税とする規定を設けている(地方税法六九九条の四第一項、第二項)。 右のような自動車取得税の趣旨、規定の仕方等にかんがみると、地方税法六九九条の三第三項後段のみなす旨の規定及び同項前段のみなす旨の規定は、その文言どおりにみなすべき規定と解すべきであって、右みなし規定の効果を争う者が反証を挙げてこれを覆すことは許されないものと解するのが相当である。 したがって、本件の場合、控訴人が、本件自動車について、平成一〇年一二月二五日に道路運送車両法七条の規定による新規登録を行ったことは当事者間に争いがないから、地方税法六九九条の三第三項後段により、右新規登録の事実から本件自動車につき同項前段の「運行の用に供すること」があったとみなされ、さらには同項前段により、地方税法六九九条の二第一項の「自動車の取得」があったものとみなされ、適法に自動車取得税を課税されることになったものというべきである。 2 控訴人は、自動車取得税は道路損傷に対する補修整備のための負担金的性格を持つところ 一項の「自動車の取得」があったものとみなされ、適法に自動車取得税を課税されることになったものというべきである。 2 控訴人は、自動車取得税は道路損傷に対する補修整備のための負担金的性格を持つところの目的税であるから、本件のように新規登録を受ける前に海外に輸出され、国内の道路上において運行の用に供されることのないことが登録前に確定していた場合に、地方税法六九九条の三第三項後段のみなし規定を適用することは、自動車取得税の右のような目的税である趣旨に反するものであると主張する。なるほど、自動車取得税は、自動車の使用と道路損傷との密接な関連に着目し、その税収入をすべて道路整備に要する費用に充てるものとして、自動車の使用による道路の使用を課税の基因とする受益者負担金的性格をあわせもっている(甲八参照)。しかし、これが受益者負担金としてではなく、税として徴収することとされたのは、関係者が極めて広範にわたり、受益ないし損傷の程度も個々に特定できないなどの理由によるのであり、そのような理由から、これを税という形にして、一定の要件の下に一律かつ公平に徴収することとされたのである(甲七参照)。したがって、原因作出の有無、程度について個々に反証を許さないこととしたとしても、不合理であるということはできない。もしこれを、控訴人の主張するように、当該自動車を運行の用に供したか否かについて、個々の反証を許し、運行の用に供していないと認められる場合には自動車取得税を課さないものとする扱いにするとすれば、税の徴収に困難をもたらす結果となり、右のような規定が設けられた趣旨に反する結果となり、相当でない。控訴人の右主張は採用することができない。 なお、控訴人は、本件自動車は新規登録の時点で輸出済みのものであり、運行の用に供されていないと主張するが、本件自動車は、横浜港 する結果となり、相当でない。控訴人の右主張は採用することができない。 なお、控訴人は、本件自動車は新規登録の時点で輸出済みのものであり、運行の用に供されていないと主張するが、本件自動車は、横浜港で船積みされ、輸出されているのであって、通常であれば、控訴人の下から車両輸送用の貨物自動車に載せる際、あるいは、港において船積みする際、運行の用に供されているはずであって、本件自動車が輸出済みの自動車であるからといって、直ちに、運行の用に供されていないということはできないといわなければならず、控訴人の右主張も採用することができない。 3 次に、控訴人の当審における新主張について判断するに、控訴人は、本件のように輸出された自動車については、車庫証明書の提出及び自動車損害賠償責任保険証書の提示がないまま新規登録がされており、適法な新規登録がされたとはいえないから、このような自動車について、地方税法六九九条の三第三項後段を適用することはできないと主張する。 しかし、前示のとおり、本件自動車は、新規登録の時点で既に海外に輸出されていたのであるから、このような自動車について、車庫証明書の提出や自動車損害賠償責任保険証書の提示を要求することは無意味であり、このような場合にまで、車庫証明書の提出や自動車損害賠償責任保険証書の提示が要求されているものとは解されない。したがって、本件新規登録が、これら証明書の提出等がないままされたとしても、違法ということはできないから、本件新規登録が不適法であることを前提として、地方税法六九九条の三第三項後段の規定の適用がないとする控訴人の右主張は採用することができない。 4 以上によれば、本件更正処分は適法であり、そこに控訴人の主張するような違法はないものというべきである。 二争点2(信義則違反の有無)について当裁判所 控訴人の右主張は採用することができない。 4 以上によれば、本件更正処分は適法であり、そこに控訴人の主張するような違法はないものというべきである。 二争点2(信義則違反の有無)について当裁判所も、本件更正処分が信義則に違反する旨の控訴人の主張は採用することができないものと判断する。その理由は、原判決書二二頁末行から同二五頁六行目までに記載するところと同旨であるから、これを引用する(ただし、原判決書二四頁末行の「認容した」を「容認した」と改める。)。なお、控訴人の控訴理由にかんがみ、当裁判所の判断を以下のとおり付加しておくこととする。 控訴人は、茨城県水戸県税事務所の徴収係の職員が通知書の「県税受付印」欄に経由印を押して控訴人に交付していたことをもって、自動車取得税の不納付を容認したものであるとか、長年の間自動車取得税を納めていないまま、本件に至るまで更正処分を受けていないのは、被控訴人ないしその職員が、明示ないし黙示に、本件について、自動車取得税を課さない旨の公的見解を表示したものであるとして、本件更正処分が信義則に違反する旨主張する。しかし、右「県税受付印」は、その表示からも明らかなように、単に自動車取得税の申告がされたことを証明する趣旨のものにすぎず、自動車取得税の不納付を容認したものと認めることができるものではないし、本件において、長年の間自動車取得税を納付しないまま、更正処分を受けていないからといって、これにより課税庁が明示ないし黙示に自動車取得税を課さない旨の公的見解を表示したものと認めることはできない。したがって、被控訴人が控訴人の本件自動車取得税の不納付を容認したとか、長期間課税されなかったことが自動車取得税を課さない旨の公的見解を表示したものとして、本件更正処分が信義則に違反する旨をいう控訴人の右主張は採用すること 訴人の本件自動車取得税の不納付を容認したとか、長期間課税されなかったことが自動車取得税を課さない旨の公的見解を表示したものとして、本件更正処分が信義則に違反する旨をいう控訴人の右主張は採用することができない。 三結論そうすると、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第一四民事部裁判長裁判官小川英明裁判官近藤壽邦裁判官川口代志子

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