昭和28(う)783 労働基準法違反業務上過失致死傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和30年12月19日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中、被告人A株式会社及び同Bに関する部分を破棄する。      被告人Bを禁錮五月に処する。      但し、同被告人に対し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予す

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主文 原判決中、被告人A株式会社及び同Bに関する部分を破棄する。 被告人Bを禁錮五月に処する。 但し、同被告人に対し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 被告人Cの本件控訴を棄却する。 原審訴訟費用中、証人D、E、Fに支給した各金員の二分の一、証人G、Hに支給した各金員の三分の一は、被告人Bの負担とし、当審訴訟費用中、鑑定人Iに支給の旅費日当鑑定れを除き、その余は全部被告人B、同Cの平等負担とする。 本件公訴事実中、被告人A株式会社及び同Bの各労働基準法違反の点については、同被告人等は各無罪。 理由 本件各控訴の趣意は、末尾添附の被害人等の弁護人大槻弘道、同片山三庫、同福地劔吉作成名義の各控訴趣意書並びに福地劔吉作成名義の控訴補充趣意書記載のとおりである。 弁護人等の控訴趣意中原判示第一の労働基準法違反事実に対する論旨について、先ず大槻弁護人の所論は、原判決は判示第一事実において、本件鉄橋上におけるペイント剥離作業を、女子年少者労働基準規則(昭和二二年労働省令第八号)策十三条第四十号にいわゆる「高さ五メートル以上の吊足場若しくは棒はりの上に準ずる高所における業務」である旨認定し、被告人A株式会社及び被告人Bに対し、各右規則第十四条第十号を適用処断しているのであるが、本件作業が如何なる点において吊足場若しくは棒はりの上に準ずる作業であるかについてはこれを知るに由がないから、原判決には判決に理由を附しない違法或いは証拠によらず事実を誤認し、法令の適用を誤つた違法があるというのであり、又片山及び福地弁護人の所論は、本件鉄橋士におけるペイント剥離作業は、全く安定していて動揺墜落の危険の少しもない鉄橋上での作業であるから、右規則第十三条第四 令の適用を誤つた違法があるというのであり、又片山及び福地弁護人の所論は、本件鉄橋士におけるペイント剥離作業は、全く安定していて動揺墜落の危険の少しもない鉄橋上での作業であるから、右規則第十三条第四十号にいわゆる「吊足場若しくは棒はりの上に準ずる高所作業には該当しない、従つてこれを同条に問擬した原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があるというのである。 <要旨>よつて、先ず右規則第十三条第四十号の意義について考えてみると、同条に「吊足場」若くは「棒はり」と</要旨>は、共に労務者が高所において建築、土木、塗装等の作業をする場合その作業を容易ならしめる目的で設けられた足場の一種であると解せられるのであつて、その内「吊足場」とは、高所から所要の下部まで鋼索等で作業床(すなわち、足場板)を懸垂し、この作業床に労務者が乗つて作業をする設備であつて、高所から作業床を懸垂しているえめその足場に安定性がなく、動揺転位による墜落又は懸垂用鋼索の強度如何による切断墜落の危険のあるものを云い(昭和二二年労働安全衛生規則第百八条、第百十条、第百十二条等参照)、又「棒はり」とは、普通の丸太足場すなわち、地上より必要の高度まで丸太材を順次組立て、これに水平に丸太数本を組合せて足場とする作条床を設け、これに労務者が地上から昇つて作業をする設備であつて、極めて足元の安定性を欠く墜落の危険の多いものを云うものと解せられるのである。従つて前記規則第十三条第四十号、第十四条第十号等が満十八歳未満の者及び満十八歳以上の女子に対し、高さ五メートル以上の吊足場若しくは棒はり上又はこれに基ずる高所における業務を禁止しているのは、これ等の者が一般成年男子に比し、その体力、経験、技能、注意力等において劣つているため、高さ及び作業場の足場等から考え、かかる場所における右未成年者及び女 基ずる高所における業務を禁止しているのは、これ等の者が一般成年男子に比し、その体力、経験、技能、注意力等において劣つているため、高さ及び作業場の足場等から考え、かかる場所における右未成年者及び女子の就労が一般に墜落等の危険があるものと見て、これを禁止する趣旨であると解すべきであるから、たとえ高さ五メートル以上の高所における作業であつても、吊足場若しくは棒はり上での作業に比較し、安定性があり、墜落の危険のない足元の安全な場所における作業は、右にいわゆる「これに準ずる高所における業務」に当らないものと解するを相当とする。ところで、本件につきこれを見るに、記録によると、本件の作業は日本国有鉄道舞鶴線J鉄橋K駅側、河床より約六メートル五〇センチの第一、二橋桁上における橋桁表面ペイントの剥離作業(すなわち天場うち作業)であるから、その作業の場所が高さ五メートル以上の高所である点については議論の余地はないが、右橋桁上の軌条は動揺のおそれのないことはもちろんでありしかもその下部には約四〇センチの間隔ごとに幅約二〇センチの枕木を配列し、又その下部には鉄の橋桁があるうえ、軌条間の歩み板も約一八センチの幅があつて、しかもそれは枕木に釘付けにされているのであるから、その足場はまことに堅牢ま無比真に安定度の高いものであり、又その作業自体も軌条に跨り、或いはその枕木や歩み板上に腰かけ、普通家庭で使用する金槌より軽量の小ハンマーをもつてコツコツ橋桁表面のペイントをたたき落す程度のものであるから、本件橋桁上における作業は吊足場若しくは棒はり上の高所における作業とは異り、動揺転位等による墜落等の危険の少しもない作業であつたと認めるのを相当とする。従つて、それはえとえ枕木の間隙から下方の河原が見え、河原から六メートル五〇センチの高所における作業であつたとしても、前記 動揺転位等による墜落等の危険の少しもない作業であつたと認めるのを相当とする。従つて、それはえとえ枕木の間隙から下方の河原が見え、河原から六メートル五〇センチの高所における作業であつたとしても、前記の規則第十四条第十号、第十三条第四十号に違反する作業には当らないものと解しみければならないのであつて、これを同条に問擬した原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があるものと云わなければならない。もつとも、本件の場合、それは軌道内における作業であるから列車による危険はもちろん考え得られるところではあるが、それは本件鉄橋の作業場附近には橋側歩道或いはトラスがなく、又本件事故発生当時にはその附近に橋側待避所の設置もなかつたから、列車の待避が容易でなかつえための危険であつて、本件橋桁上の作業場が地上より五メートル以上の高所であることにより生ずる足元の不安定に基く危険ではないから、この危険をもつて本件の作業を右規則第十三条第四十号、第十四条第十号の作業であるとすることの不当であることはいうまでもない。従つて、原判決の上記の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかなものであるから、弁護人等その余の控訴趣意についての判断をまつまでもなく論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。 弁護人等の控訴趣意中原判示第二の業務上過失致死傷の事実に対する論旨について、しかし、原判決挙示の各証拠を綜合すると、原判示第二の事実はこれを認めるに十分であつて、本件被害者等の致死傷の結果は、被告人B及びC等において各判示の如き業務上の注意義務をつくさなかつた過失の競合に基因するものであることが明らかである。 弁護人等の所論は、本件事故は専らK保線分区長であつたLが、昭和二十六年六月日本国有鉄道総裁達第三〇七号「安全確保に関する規程」に定める安全確保の義務、連絡の義 るものであることが明らかである。 弁護人等の所論は、本件事故は専らK保線分区長であつたLが、昭和二十六年六月日本国有鉄道総裁達第三〇七号「安全確保に関する規程」に定める安全確保の義務、連絡の義務、運転時刻熟知の義務等に違反し、女子労務者による本件作業の事実を知りながら列車運転担当者にこれを連絡したいのみか、被告人Bに対し誤つた列車時刻表写を交付した過失と、九二四列車の機関士Dが、列車の遅延時間回復のため、当日現場附近が稀有の濃霧であり、鉄橋東方付近の線路が下り勾配のカーブを描き又右鉄橋が従来とても度々事故のあつた個所であるにもかかわらず、右規程に丸める濃霧連絡の義務、汽笛吹鳴の義務、信号視の義務、定速維持の義務つくさず、漫然列車を暴走せしめた過失に甚因するものであつて、被告人B、C等の過失によるものではたいと云うのである。 よつて、先ずLの過失の有無につき考えて見るに、記録によると、K保線分区長であつたLが女子労務者就労の事実を熟知しながら、これを列車運転担当者に連絡したかつたこと、昭和二十六年十二月二日頃同人が被告人Bから本件作業現場の両端駅であるM駅K駅間運行行列車の時刻表を求められた際、保線区保存の時刻表に基き自からこれを筆写して与えたが、その時刻表写にM駅発八時六分三十秒、K駅着八時十七分の上り九二四列車の列車時刻を脱漏し、被告人Nの脱漏に気付かなかつたし、又同人からこの列車時刻表写を渡された被告人Cにおいてもその正確さを信じ、列車待避の行動をとつたため列車の待避が著しく遅れ、本件事故の重大原因の一となつたことは所論のとおりである。しかし、それだからと云つて、本件事故の責任がすべてLの責任であり、被告人B、C等にはなんらの責任もないものとは認め難い。何となれば、原審第四回公判調書(供述)中の証人Oの供述記載、当信証人Pの 。しかし、それだからと云つて、本件事故の責任がすべてLの責任であり、被告人B、C等にはなんらの責任もないものとは認め難い。何となれば、原審第四回公判調書(供述)中の証人Oの供述記載、当信証人Pの証人尋問調書中の供述記載によると、K保線区は本件塗装工事についてはその仕事面での監督者ではあつても就労者の安全衛生面での監督者ではなく、又その直接の監督者はK保線区の土木助役の下僚である工事手であり、保線分区長のLでなかつたことが明らかであるのみならず、従来における鉄道の慣行から云つても、本件の如き民間会社による簡易なペイントの剥離作業につき保線区が特に運転担当名にその就労の事実を連絡したり、或いは会社に対し列車時刻を告知したりすることは、その本来の職務でも義務でもないことが認められるから、若し被告人等が現場監督者或いはその代行者として作業の絶対安全を期し、正確な列車時刻を知ろうとするならば、自から列車運行の直接の責任者であり、又日々の列車運転の正確な時刻を熟知する作業場両端駅の駅長につきこれを確めるべき当然の業務上の義務があつたものと云えるのである。従つて、かかる当然なすべき義務をつくさず、単に保線分区長に過ぎないLの処置や、同人の便宜筆写した時刻表写の正確さだけを期待軽信していた被告人等には、Lに過失の責任があると否とにかかわらず、その業務上過失の責任があることもちろんである。 次いで、機関士Dの過失の有無について考えるに、記録によると、本件事故当時現場附近では視野約六〇メートル程度の稀に見る濃霧であつたこと、当日M駅発八時六分三十秒、K駅着八時十七分の本件九二四列車が八時九分三十秒にM駅を発車し、定刻より三分遅発していたこと、本件鉄橋の東方約三〇メートル辺から北東に向い線路が半経約四〇〇メーールの曲線カーブを描き、鉄橋方面へ約一〇〇〇分 十七分の本件九二四列車が八時九分三十秒にM駅を発車し、定刻より三分遅発していたこと、本件鉄橋の東方約三〇メートル辺から北東に向い線路が半経約四〇〇メーールの曲線カーブを描き、鉄橋方面へ約一〇〇〇分の二〇程度の下り勾配をなしていること、右鉄橋はその東方附近の部落から綾部市内への近道に当るため、本件事故以前にも数度鉄道事故のあつた個所であること等はいずれも所論のとおりである。しかし、原審証人Qの原審第二回公判調書(供述)中の供述記載、原審証人Dの昭和二十七年五月十五日及び同年七月十九日附各証人尋問調書中の各供述記載、原審証人Eの昭和二十七年五月十七日附証人尋問調書中の供述記載を綜合すると、本件九二四列車はM駅を定刻より約三分遅発したものではあるが、その後機関士Dは同列車を平均時速四六・八キロ、最高時速六二・三キロ程度、事故現場北東下り勾配附近で時速約六一キロ程度の速度をもつて運転していたもので、この程度の速度はその区間における列車の通常の運転速度であつたものと認め得るのみならず、列車の遅延回復のためには鉄道管理局長の回復指令をまつて為すべきであるのに、当時福知山鉄道管理局長からはなんらかような指令は出ておらず又後続列車もなく、従つて、機関士たるDにはこの遅延をどうしても回復しなければならないと云う義務やその必要がなかつたことが明らかであるから、所論の如き同人による列車暴走の事実はこれを認め難い。又上記の証拠によると列車機関士には長橋たからと云つて必ずしも汽笛吹鳴の義務があるわけではなく、ただ本件丁田良川鉄橋北東方踏切附近には列車吹鳴標があつて、そこでは汽笛の吹鳴を義務ずけられているのであるが、Dはその附近ではもちろん、そこを通過した鉄橋東端にかかる附近においても事実上汽笛を吹鳴したことが認められ、更らに、右証拠によると、濃霧の発生により こでは汽笛の吹鳴を義務ずけられているのであるが、Dはその附近ではもちろん、そこを通過した鉄橋東端にかかる附近においても事実上汽笛を吹鳴したことが認められ、更らに、右証拠によると、濃霧の発生により信号機確認距離が五〇メートル以下になつた場合、駅長よりこの旨鉄道管理局長に報告し、管理局長の濃霧運転指令により駅長が信号機外に職員を出し列車を誘導する等の措置を講ずることにはなつているが、本件事故当時には未だかような局長指令も出ておらたかつたから、Dとしては本件鉄橋西方約三〇〇メートルのR鉄橋とK駅との中間カーブ附近設置のK駅遠方信号機手前までに列車を停止し得る如く運転するだけで足り、又事実同人も本件鉄橋中央部附近で減速し、右信号機手前附近で停車し得る如く列車を運転していたことが認められる。従つて、同人にも所論の如き濃霧連絡、汽笛吹鳴、信号注視、定速維持等の諸義務に違反して列車を暴走せしめた過失のないことが明白であるから、本名事故が専らLやDの過失に基因し、被告人B、C等の過失によるものでないとする所論は到底これを採用し難い。 次いで、大槻弁護人及び福地弁護人等の所論は、原判決は、本件の作業が全長二二〇メートルの『鉄橋西端より順次同鉄橋の約中間まで遂行せしめるのであるが、…………鉄橋の西端堤防又は鉄橋の略中間に設置しある待避所まで待避するに手間取り云々』と判示しているが、本件事故発生当時における作業は、鉄橋西端の堤防から僅か六メートルないし二六・八メートルの区間の作業であつて、二六・八メートルの地点から鉄橋西端までは約六秒程度の時間で待避できるから、待避に手間取ることはなく、又それは簡単な列車時刻表を見るだけで足ることであると云うのである。しかし、記録によると、本件の作業は、鉄橋の橋桁上部ペイントを小ハンマーで打ち落すいわゆる天場打ちの作業 待避に手間取ることはなく、又それは簡単な列車時刻表を見るだけで足ることであると云うのである。しかし、記録によると、本件の作業は、鉄橋の橋桁上部ペイントを小ハンマーで打ち落すいわゆる天場打ちの作業であつて、その仕事も平易簡単であり、又被告人等をも含め八名の者か就労していたので刻々鉄橋中央部へ仕事の進渉して行くものてあるから、かかる場合、動作に敏捷を欠き、この種作業てついての経験にも乏しい女子労務者にとつては、列車時刻表の有無にかかわらず、待避にけ、その距離その他から見て、担当手間取ることは容易に想像のできることであるから、原判決の認定は三当であつて、原判示には少しも不合理の点はない。 更らに、大槻弁護人の所論は、原判決は、「若しそのようだ待避に十分余裕のないような事態が発生した場合には云々」と判示しているが、僅か六秒ないし十秒位で待避し得る本件においては、かかる事態は列車の汽筒吹鳴、信号注視、た速維持の諸義務違反の場合以外には考えられたいと云うのてある。しかし、本件の列車に右の如き義務違反の事実のたかつたことは既に前叙の如くであるのに、しかも本件のようた待避に十分余裕のない事態が発生し得たのであるから、原判決の認定は正当であり、所論はこれを採用し難い。 次いで、同弁護人は、原判決は、本件被害者たる婦女子が「本件作業前に未だ経験のない作笑に就労し云々」と判示しているが、同人等は既に十二月五日本件鉄橋西方のR鉄橋において同様な作業に従事した経験があり、又その作業自体も単純容易で、特に高度の経験を要するものではないと云うのである。しかし、たとえ本件婦女子に右のような経験があり、又その作業自体が簡単容易なものであつたとしても、それは高い鉄橋上での作業であり、又体力に劣り動作に敏捷を欠く婦女子のことであるから、ただ一日だけの就労をもつてその経 婦女子に右のような経験があり、又その作業自体が簡単容易なものであつたとしても、それは高い鉄橋上での作業であり、又体力に劣り動作に敏捷を欠く婦女子のことであるから、ただ一日だけの就労をもつてその経験が十分であるとは云い難い。 この点についても原判決の認定は正当である。 次いで、大槻及び福地弁護人の所論は、原判決は、「冬季にあつては同地方は朝間一時的た濃霧が発止することが多い故、その濃霧の程度に応じてその間列車の見張を強化するか或いは婦女子をして一時作業を停止せしめる等の臨機の措置を講じ云々」と判示しているが、たとえ濃霧であつても、列車機関士には汽笛吹鳴、定速維持等の諸義務があり、同人がこれら諸義務をつくす限り事故は避け得るから、被告人には右の如き見張強化や作業停止の義務はないと云うのである。しかし、機関士において右の如き諸義務をつくしていたことは既に前叙の如くでめるのに、しかも、本件事故は起り得たのであるから、現場監督者としては、かかる万一の事態に備え、特にその作業が濃霧下、鉄橋上における婦女子の天場打ち作業であって、列車ばく進の響や、汽笛吹鳴の音が、自からのハンマーの音や、霧の濃度のため打消され、妨げられて聴取り難い場合のあることを思い、その時の状況に応じて列車の見張の強化あるいは作業の一時停止の臨機の処置をとるべき義務のあつたことはもちろんであると云わたければならない。原判決の認定は正当である。 次いで、福地弁護人の所論は、原判決は、「又は少くとも予め該作業現場通過の各列車の時刻を正確に調査知悉し、これに基いて各列車の通過予定時刻切迫の際は特に警戎を厳重にして作業従事者を安全た個所に待避させるこ十分た余裕を置いて待避させる等…………万全の措置を請じ云々」と判示しているのであるが、被告人Bは態々保線分区長のLに列車時刻を確め、同人自 特に警戎を厳重にして作業従事者を安全た個所に待避させるこ十分た余裕を置いて待避させる等…………万全の措置を請じ云々」と判示しているのであるが、被告人Bは態々保線分区長のLに列車時刻を確め、同人自筆の列車時刻表写を交付されていたのであるから、これ以上正確な時刻表はなく、又就労者こも列車待避の場所を教えていたのであると云うのである。しかし、列車の正確な時刻は、作業現場両端駅の駅長に確めるべきであつて、単に保線分区長であるLから時刻表写を貰つたからと云つて、これをもつて正確な列車時刻を十分調査したものと云い難いこと前叙のとおりであり又記録によると被告人が本件就労者に対し、列車待避についての教育を具体的に施していたとも認められないから、原判示は正当である。 次いで、同弁護人は、原判決は、「万一自己(被告人B)が直接作業現場に臨んで以上のような諸々の措置を採ることが出来ない場合は、その代行者の選任に特に留意し、叙上の如き諸措置を十分採り得ることができる適任者を選任すべきは勿論その代行者に対しては叙上の諸措置を怠らないよう十分の指示注意を与える等…………之が注意義務を怠り、昭和二十六年十二月六日夕刻所用のため丹後由良方面へ旅行するに当り、未だ現場監督員としての指名を受けておらず、且つ監督者としての能力が十分伴つていない相被告人Cに対し叙上の如き諸注意を具体的に指示することなく漫然後事を託し云々」と判示しているが、被告人Cは現場監督員としての指名こそ受けていないが、既に塗装工としては相当の経験者であるから、Bの代行者としては適任者であり、又退避せしめる能力は単純簡単なものであるから、同人がかかる能力を有する者であることも又疑いを容れない、しかもBは、その選任し際し同人に必要程度の待避措置をも示しているのであるから、原判決の認んは誤であると云うの 力は単純簡単なものであるから、同人がかかる能力を有する者であることも又疑いを容れない、しかもBは、その選任し際し同人に必要程度の待避措置をも示しているのであるから、原判決の認んは誤であると云うのである。しかし、記録こよると、被告人Bは、Cが現場監督員としての指名もなく、又その経験も十分でない者であるてもかかわらず、ただ脱漏のある列車時刻表写と時計とを同人に渡しただけて後事を託し、列車の待避その他易易監督員として心得うべき諸注意事項については少しも教示しないで現場を離れたことが明らかであつて、又待避せしめる能力は、気象状況や土地の状態、作業場の模様、それと行近所との距離や関係、作業の進行程度や就労者の人数等によつて、細心臨機の処置を要する相当高度な能力を必要とするものであると思われるのに、被告人Cにはかかる能力の欠如していたこともまた明らかであるから、原判決の認定は正当である。 次いで、弁護人等は、原判決は、「且つその際同人に対しその内容が果して正確であるや否や全然検討を加えていない右現場通過列車の時刻表写をその由も告げずただ単に交付したままで右現場を離れ云々」と判示しているが、被告人BはCに対し保線分区長から渡された列車時刻表写と時計とを渡し現場を離れたものでその時刻表写の正確さについては、それが保線分区長の自から筆写交付したものである点から見て、更らに検討の余地がなかつたものであると云うのである。しかし、たとえ保線分区長が自から筆写交付した列車時刻表の写であつたとしても、Bにはその内容の正確さについては、自から作業場の両端駅の駅長につきこれを確めるべき義務のあつたことは既に前叙の如くであるから、右主張もこれを採用し難く、原判示は正当である。 次いで、福地及び片山弁護人は、原判決は、「かような場合においていやしくも現場の監督者た れを確めるべき義務のあつたことは既に前叙の如くであるから、右主張もこれを採用し難く、原判示は正当である。 次いで、福地及び片山弁護人は、原判決は、「かような場合においていやしくも現場の監督者たることを引受けた以上…………昭和二十六年十二月七日午前八時頃から右現場において作業に着手するに当り、前記有業に従事する前記S外五名の婦人労務者に対し就労前何等安全保持上の特別な教育も施さず且恰も当時は同地方特有の濃霧が発生したため……婦人労務者をして一時作業を停止せしめる措置もとらず、又特別の見張も置かず云々」と判示しているが、本件の場合安全保持上の特別な教育とは、事前早目に鉄橋西端の堤防へ待避させることだけであつて、これは被告人Cもしており又その際一再作業を停止したり又特別の見張を置いたりする義務はないと云うのである。しかし、記録によると、被碧人Cは女子労務者の就労前、かかる簡単な待避教育すら同人等に対し行つてはおらず、列車が突然はく進して来たことに驚き、あわてて待避を命じたが既に時機を失していたことが明らかであるのみならず、本件の如き農務時非常の事態に備え、一時その作業を停止したり又特別の見張を置いたりすることは現場監督員としての義務であると認めるを祖当とするから、所論は採用し難く、原判示は正当である。 更らに、福地弁護人は、原判決は、「正確な時計を所持して絶えず時刻表と比較照合して…………作業前において所持する時計を正確な時計に合さなかつたため二分三十秒も遅れていたことに気付かず、且つ当日以前の作業日中既に同現場で上り九二四列車が同場所を午前八時十五、六分頃通過していて、同被告人も同列車の通過時刻は午前八時過ぎでめることを認識していたのであるから、その際時計により正確な通過時刻を把握して置けば前日Bから交付された時刻表写には上り九二四列 時十五、六分頃通過していて、同被告人も同列車の通過時刻は午前八時過ぎでめることを認識していたのであるから、その際時計により正確な通過時刻を把握して置けば前日Bから交付された時刻表写には上り九二四列車が記載漏れとなつていたことが一見して容易に観取することが出来たにかかわらずその措置もとらず云々」と判示しているが、本件はたとえ時計が合つていなかつたとしても、そのための事故ではたく、又本件九二四列車は、被告人Cが事故当日初めて知つた列車であつて、同人はそれまで右列車の存在を知らなかつたと云うのである。しかし、本件において最も遠い場所で就労していたHの作業位置でさえ、鉄橋西端の堤防から僅か二六・八メートルの距離であり、そこから堤防までの十数秒の早い待避が、十分本件事故の発生を防止し得たことを思えば、被告人の判示の如き時計についての無関心さは、十分現場監督員としての義務をつくさない過失と云えるのである。 しかして、又被告人Cの原審第四回公判調書(供述)中の供述記載によると、同被告人は十二月五日午前八時頃本件事故現場より程近いR鉄橋において同様作業に従事しており、従つて本件九二四列車の存在や時刻表写の脱漏は既にその時知り得たはずであることが明らかでわるから、これらの点においても原判決は正当であつて、その判示て誤はたい。 更らに、同弁護人は、原判決は、「又少くとも前記の如き時刻の認識があり、その上少しの任意を用うれば右時刻表の記載漏れに疑念を起しそれを調査することこより直ちこその誤を発見することを得たのにその点を事前に調査することを怠り、不用意にも特に…………午前八時二十四分K発下り列車の記載を前記M発上りK行九二四列車のことだと軽信し云々」と判示しているが、被告人CがBから渡された列車時刻表写の正確さを信用していたことは無理のないことであり、 …………午前八時二十四分K発下り列車の記載を前記M発上りK行九二四列車のことだと軽信し云々」と判示しているが、被告人CがBから渡された列車時刻表写の正確さを信用していたことは無理のないことであり、又同人には判示の如き列車取違えの事実はないと云うのである。しかし記録によると、列車時刻表は時には臨時列車もあつて、作業場両端駅の駅長につきこれを確めなければその正確を期し難いのであるから、Bから渡された時刻表写を漫然軽信し、判示の如くにしてその誤に少しも気付かず又疑念も懐かなかつたこと自体が既に過失であり、又同人が判示の如く列車を取違えていた事実を十分認め得るから、原判示には少しも誤の点はない。 更らに、大槻弁護人の所論は、原判決は、本件事故が被告人B及びC等の過夫のみにより発生したものの如く認定しているが、本件の事故は、D及びLの過失の外に、被害者等がその待避に敏捷を欠きろうばいの結果その行動を誤つた過失にも基因すると云うのである。しかし、本件の場合H、G等が致死の災厄を免れ得たのは、全く同人等がぎようこうをかち得たものであり、又C、Tが難を免れ得たのは、同人等が男子であつて、かかる事態に処する経験と勇気とを有していたことによるものと認められるから、かかる例をとらえ、被害者の待避行動の過失を云為する主張は到底これを採用し難い。 更らに、福地弁護人は、原判決は、被告人等の業務上過失と被害者等の死傷との因果関係及び被告人等が過失責任を負うべき根拠を示しておらず、又その摘記する注意義務の内容も妥当を欠き、真実にも反すると云うのである。しかし、所論の因果関係や帰責の根拠はその判文自体及び判示証拠に照らし十分認め得られ、又右証拠によればその摘示する注意義務の内容も適切妥当であり、真実にも合致するから、原判決の認定は正当である。 従つて、原判示第 果関係や帰責の根拠はその判文自体及び判示証拠に照らし十分認め得られ、又右証拠によればその摘示する注意義務の内容も適切妥当であり、真実にも合致するから、原判決の認定は正当である。 従つて、原判示第二の事実認定には、所論のような違法はないから、論旨は理由がない。 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条により原判決中被告人A株式会社及び同Bに関する部分を破棄し、同法第三百九十六条第百八十一条第一項本文により被告人Cの本件控訴を棄却し、かつ主文第五項掲記の如く同人の訴訟費用の負担を定め、右破棄した部分については同法第四百条但し書に従い、更らに次のとおり判決する。 原判決がその挙示の証拠により認定した原判示第二の事実中、被告人Bに関する事実にその摘示の各法条を適用して同被告人を禁錮五月に処し、情状により刑法第二十五条第一項に従い本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予し、なお、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い主文第五項掲記の如く同人の訴訟費用の負担を定める。 なお、本件公訴事実中、被告人A株式会社及び被告人Bの各労働基準法違反の点については、その事実自体が罪とならないから、刑事訴訟法第四百四条第三百三十六条て従い同人等を各無罪とする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長判事松本圭三判事山崎薫判事西尾貢一)

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