令和3(わ)1558 不正競争防止法違反

裁判年月日・裁判所
令和4年12月16日 名古屋地方裁判所
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判決文本文28,388 文字)

1主文 1 被告人株式会社αを罰金500万円に処する。 2 被告人βを懲役2年及び罰金300万円に処する。 被告人βにおいてその罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。 被告人βに対し、この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。 3 訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人株式会社α(以下「被告会社」という。)は、横浜市g区h町i丁目j番地kに本店を置き、日用品雑貨・衣料品・スポーツ用品等の売買及び輸出入業等を営むもの、被告人β(以下「被告人β」という。)は、被告会社の商品部責任者として同社の商品の仕入れや販売等に関する業務全般を統括していたものであるが、被告人βは、被告会社の業務に関し、不正の目的をもって、第1 別表1(省略)記載のとおり、令和2年4月10日から同年8月3日までの間、6回にわたり、株式会社Gほか1社から発注を受け、横浜市内又はその周辺から、その配達先として指定された愛知県海部郡l町mn丁目o番地pゲームセンターHに宛てて、株式会社I及び株式会社J管理のライセンスグループが販売する、漫画及びアニメ「KMT」関連グッズの商品等表示として、需要者の間に広く認識されている、「緑色と黒色の市松模様」、「ピンク色の麻の葉模様」、「黄色地に白色三角の鱗模様」、「赤錆色無地と黄色と緑色の亀甲柄の片身替模様」の各模様と類似した模様をそれぞれ表示するなどして使用したバスタオル36点等商品合計244点を発送し、同年4月11日から同年8月4日までの間、前記Hにおいて、同店従業員に受領させる方法により、代金合計12万3360円で販売譲渡し、 2第2 別表 スタオル36点等商品合計244点を発送し、同年4月11日から同年8月4日までの間、前記Hにおいて、同店従業員に受領させる方法により、代金合計12万3360円で販売譲渡し、 2第2 別表2(省略)記載のとおり、令和3年1月6日から同月20日までの間、4回にわたり、氏名不詳者に中華人民共和国内から発送させた、前記各模様並びに「白色と黄色と小豆色の炎模様」及び「白色と緑色とピンク色の模様」の各模様と類似した模様をそれぞれ表示するなどして使用したパーカー72点等商品合計556点を、千葉県成田市所在の成田国際空港に到着させ、同空港作業員にこれらを航空機の外に搬出させて日本国内に持ち込んだ上、同月7日から同月22日までの間、横浜税関長の輸入許可を得て輸入し、もって、前記ライセンスグループの商品と混同を生じさせて、それぞれ不正競争を行ったものである。 (訴訟法上の争点に対する判断)弁護人は、本件起訴状記載の公訴事実(訴因変更後のもの)について、「商品等表示」及び「被告人の付した商品等表示と同一又は類似の表示」の特定がないとして訴因の明示を欠く旨主張するが、「他人の商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)については、「株式会社I及び株式会社J管理のライセンスグループが販売する、漫画及びアニメ「KMT」関連グッズの商品等表示」として特定がなされており、「類似の商品等表示を使用し」たこと(同号)についても、別表1及び2による譲渡又は輸入行為により特定がなされているから、訴因の特定に欠けることはなく、弁護人の主張を採用することはできない。 (事実認定の補足説明)第1 判断の前提となる事実(括弧内掲記の証拠により認められる事実)1 「KMT」について⑴ 「KMT」は、株式会社Iの発行する雑誌「L」において、平成28年2月1 (事実認定の補足説明)第1 判断の前提となる事実(括弧内掲記の証拠により認められる事実)1 「KMT」について⑴ 「KMT」は、株式会社Iの発行する雑誌「L」において、平成28年2月15日から令和2年5月頃まで約4年にわたり連載されていた漫画である。 「L」は、「KMT」連載当時、紙面及び電子書籍で合計約200万部が発行されていた、世界的にも圧倒的に発行部数の多い雑誌であり、人気のない作品は10話で連載が終了するというルールがある。(証人丙) 3⑵ 「KMT」の作中には、「緑色と黒色の市松模様」(以下「本件模様A」という。)の羽織、「ピンク色の麻の葉模様」(以下「本件模様B」という。)の着物、「黄色地に白色三角の鱗模様」(以下「本件模様C」という。)の羽織、「赤錆色無地と黄色と緑色の亀甲柄の片身替模様」(以下「本件模様D」という。)の羽織、「白色と緑色とピンク色の模様」(以下「本件模様E」という。)の羽織、及び「白色と黄色と小豆色の炎模様」(以下「本件模様F」という。)の羽織を、それぞれ登場する場面のほぼ全てにおいて着用している各キャラクターが登場する(以下、本件模様AないしFを併せて「本件各模様」という。また、本件模様Aの柄の衣装を着用するキャラクターを「キャラクターa」といい、同様に、本件模様AないしFの衣装に対応する各キャラクターを、順次キャラクターaないしfと表記する。)。キャラクターa及びcないしfは、作中において同一の組織に属しており、同組織においては、構成員が背の部分に「M」の印字がされた黒地の服装を共通して着用しているところ、キャラクターa及びcないしfはその服装の上に羽織を着用しており、これらの羽織はキャラクターa及びcないしfの膝付近に裾が位置する着丈となっている。(甲59、80、証人丙)⑶ 用しているところ、キャラクターa及びcないしfはその服装の上に羽織を着用しており、これらの羽織はキャラクターa及びcないしfの膝付近に裾が位置する着丈となっている。(甲59、80、証人丙)⑶ 「KMT」は、アニメ化がされ、平成31年4月6日から令和元年9月28日まで、全21局(うち地上波19局)において、アニメ放送がされた。放送時間はほとんどの局において深夜帯であったが、テレビで放送された内容は、約2日後から各種動画配信サービスで視聴可能であった。(証人丁)アニメ「KMT」においては、キャラクターa、b、dは初回放送時点で、キャラクターcは令和元年6月、キャラクターeは同年7月、キャラクターfは同年8月の放送時点でそれぞれ登場しており、キャラクターf以外の5名については、アニメの中で主要な出番や活躍する場面があった。(証人丁)⑷ 「KMT」のアニメ化の効果として、コミックスの売上げ増加、初版発行部数及び発売済みのコミックスの重版部数の増加、Nの作品公式アカウントのフォロワー数の増加などが挙げられる。紙媒体のコミックスの初版発行部数 4が100万部を超えることは、いわゆる大ヒット作品の一つの基準とされるところ、同作品は、令和元年12月発売の第18巻から令和2年12月発売の第23巻(最終巻)までいずれも初版は100万部以上、第23巻は初版が約400万部であり、令和2年2月には、Oという媒体におけるコミックスの売上げランキングにおいて初めて4週連続でベスト10の作品すべてが「KMT」のコミックスで占められたことがあった。(証人丙、証人丁)また、令和元年7月、アニメ「KMT」のブルーレイ及びDVDの第1巻が発売された際、「KMT」と同時期に放送が開始された30ないし40作品のアニメについてもほぼ同じタイミングで第1巻が発売 人丁)また、令和元年7月、アニメ「KMT」のブルーレイ及びDVDの第1巻が発売された際、「KMT」と同時期に放送が開始された30ないし40作品のアニメについてもほぼ同じタイミングで第1巻が発売されたところ、その中で、第1位の売上げを記録した。(証人丁)さらに、令和元年9月26日(アニメのテレビ版最終話放送日)、同作品が映画化されることが一般に向けて発表され、映画は令和2年10月16日に公開された。この間も、「KMT」の人気はさらに上昇を続け、社会現象化していった。同映画のストーリーにおいて、上記6名のキャラクターのうち、主として活躍したのはキャラクターa、b、c及びfである。令和2年12月28日、同映画が、日本で公開された全ての映画における歴代興行成績1位となったことが発表され、多数の様々な媒体で取り上げられた。(証人丁)また、アニメ及び映画の主題歌を歌唱した歌手が、令和元年末及び令和2年末放送のPに連続出場して、同アニメ又は映画の映像を背景に主題歌を歌唱し、その際、「KMT」が社会現象としてヒットした旨の紹介がなされた。(証人丁)2 「KMT」の商品化事業について⑴ 「KMT」のアニメは、株式会社I、Q有限会社及び株式会社J(以下「本件3社」という。)が製作委員会を構成し、本件3社が共同著作権を有しているところ、グッズの商品化に当たっては、ライセンスを希望する事業者が、商品化の窓口となる株式会社Jに対して、商品化のためのライセンス契約を申し込み、契約書作成の上、各商品を企画、申請し、本件3社の監修、許諾を経 5て販売に至る(以下、この過程を経て販売されたグッズを「公式グッズ」という。)。公式グッズが最初に販売されたのは、平成31年3月23日であり、令和2年4月の時点で、ライセンス契約を結んだ会社は少なくとも 売に至る(以下、この過程を経て販売されたグッズを「公式グッズ」という。)。公式グッズが最初に販売されたのは、平成31年3月23日であり、令和2年4月の時点で、ライセンス契約を結んだ会社は少なくとも70社存在し、公式グッズの種類としては少なくとも200種類存在した。(甲130、証人丙、証人丁)⑵ 公式グッズには、「KMT」の作品名が付されたロゴ(以下「公式ロゴ」という。)、🄫(コピーライト)マーク及び証紙(製作委員会が許諾を与えた商品に付されるマーク)(以下これらを併せて「公式ロゴ等」という。)が付されることが多いものの、商品のデザインやサイズによっては、付されない場合もある。このうち、商品のデザインとの関係では、いかにもアニメのグッズであることが一見して分かるようなグッズを敬遠する顧客が一定数存在することから、そのような顧客に向けて、公式ロゴや登場キャラクターそのものを付さない公式グッズ(衣装の柄が大部分を占めるグッズなど)も販売されており、公式グッズの中には、キャラクターaないしfの羽織又は着物の柄のみを用いた商品も存在する。令和元年12月までの間でも、キャラクターaないしdが中心ではあるが、衣装の柄が大部分を占める公式グッズとして、Tシャツ、シュシュ、バーキーチェーン、ハンカチ、がま口小銭入れ等が販売されている。(甲59、174、176、178、181、証人丁)⑶ 「KMT」の商品化においては、多くの場合、各商品につき、作品に登場するキャラクター又はキャラクターモチーフ(衣装の柄など)ごとのラインナップが存在する。(甲59、174、176、178、181、証人丁)3 被告会社、被告人β及び「Kγ」商品について⑴ 被告会社は、令和元年11月21日から、「Kγ」と称する商品群の販売を開始した。(甲62)この商品群に 4、176、178、181、証人丁)3 被告会社、被告人β及び「Kγ」商品について⑴ 被告会社は、令和元年11月21日から、「Kγ」と称する商品群の販売を開始した。(甲62)この商品群には、本件各模様に類似した模様が施された商品が存在し、それらは単体で販売されるものではなく、本件模様AないしD類似の模様の4種類又はこれらに本件模様E及びF類似の模様を加えた6種類をラインナップ 6として揃えており、これらはセット販売されることが多かった。(甲76、84ないし96、乙4、証人戊、証人己)⑵ 株式会社Jは、令和元年10月又は同年11月頃、「Kγ」商品について公式グッズと間違えて買ってしまったとのクレームを受け、初めて被告会社のことを認識した。その後、本件に至るまで、株式会社Jから被告会社に対して警告状を出すなどの対応をとったことはない。(証人丁)⑶ 令和3年6月3日、本件模様DないしFについて、株式会社Iの商標登録がなされた一方、本件模様AないしCについては、出願されたものの、特徴的な形態を有しているといえないこと等を理由に商標登録はされなかった。(甲104、弁12ないし14、証人丙)⑷ 株式会社Iにおいては、一般的に、税関から権利侵害の可能性について問合せがあった商品については、侵害品か否かを回答するというプロセスをとっているところ、これまで商標権侵害の疑いのある商品についての問合せについてはかなりの対応件数があった一方、不正競争防止法違反の疑いに関しては、税関から問合せを受けたことがない。(証人丙)また、「KMT」のアニメに関して、著作権侵害に関する事案については株式会社Jが、不正競争組成行為の事案については株式会社J及び株式会社Iが、それぞれ対応することとなっているところ、株式会社Jに対して、税関 KMT」のアニメに関して、著作権侵害に関する事案については株式会社Jが、不正競争組成行為の事案については株式会社J及び株式会社Iが、それぞれ対応することとなっているところ、株式会社Jに対して、税関から著作権侵害物品の疑いがあるとの問合せは以前にあった一方、「KMT」にとどまらず他のアニメを含めても、輸入品が、登場キャラクターの着衣の柄と同一又は類似であるかについて、税関から問い合わせを受けたことはない。 (証人丁)⑸ 被告人βは、著作権法違反及び商標法違反の罪により、平成18年12月26日に懲役3年及び罰金300万円(懲役刑について5年間執行猶予)の刑を言い渡され、同判決は平成19年1月10日に確定している。(乙17、18)第2 本件各模様(色、柄、それらの配置)及びこれらの組合せ(以下「本件模様等」という。)の「商品等表示」該当性の有無及び「周知性」の有無について 7不正競争防止法2条1項1号の趣旨は、周知な商品等表示の有する出所表示機能を保護するため、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止することにより、事業者間の公正な競争を確保することにある。そして、商品の形態は、商標等と異なり、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが、商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合もあるところ、そのような二次的意味を有して商品の形態が「商品等表示」として保護の対象となるためには、⑴商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、⑵その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するも (特別顕著性)、かつ、⑵その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要すると解するのが相当である(知財高裁平成24年(ネ)第10069号同年12月26日判決参照)。 以下、本件模様等が不正競争防止法2条1項1号の周知の「商品等表示」に該当するかについて検討する。 1 本件模様等の特別顕著性の有無⑴ 模様の特別顕著性を判断するに当たっては、模様を構成する単純な色彩や形状について、他者が使用する自由を阻害することにならないかどうかの点も含めて慎重に検討する必要がある(東京地裁平成17年(ワ)第785号平成18年5月25日判決参照)。 ⑵ 前記認定事実のとおり、本件各模様は、もともとは「KMT」の登場人物の代表的な衣類の模様であったが、「KMT」の公式グッズとして展開される様々な商品(衣類、雑貨等)に、本件各模様が商品の外形的、視覚的特徴の大部分を占める状態で又は本件各模様の衣装を着たキャラクターとともに付与されている模様となっている。また、前記認定事実のとおり、多くの場合、「KMT」のグッズ展開においては、たとえば、Tシャツやシュシュといった各商品につき、キャラクター又はキャラクターモチーフ(衣装の柄など)による複 8数のラインナップを揃えて商品化がされている。そうすると、「KMT」の商品化に当たっては、同作品に登場する多様なキャラクター、ひいては、それらのキャラクターの着用する羽織又は着物の柄とキャラクターとの結びつきを意識してグッズ展開がされているといえるのであるから、本件において特別顕著性の有無を判断するに当たっては、単一の商品の特徴のみならず、 ャラクターの着用する羽織又は着物の柄とキャラクターとの結びつきを意識してグッズ展開がされているといえるのであるから、本件において特別顕著性の有無を判断するに当たっては、単一の商品の特徴のみならず、このような商品展開がされていることを踏まえ、各商品のラインナップによる本件各模様の組合せについても併せて検討することが必要である。 ⑶ 以上を前提に、まず、本件模様AないしCについて検討すると、これらの各模様単体では、色の選択も単一色又は2色を選択するにとどまり、その配色も、市松模様、麻の葉模様、鱗文様(鱗文)といった伝統的柄模様ないし一般的に使用される装飾的図柄の上に配色されているにとどまり、特別顕著性を有するということはできない。 他方、本件模様DないしFについて検討すると、いずれも3色の色を選択している上、本件模様Dについては、それ自体が亀甲柄と無地とを組み合わせた模様であり、亀甲柄と無地それぞれに特定の2色と1色が配色されている特徴がある。本件模様Eについては、特定の3色のグラデーションとなっており、グラデーション内の色の特定の順序や、白色の配色部分が多いことも特徴として挙げられる。本件模様Fについては、3色の特定の順序及び黄色部分と小豆色部分の境界部分の形状によって炎の模様が表現されているという特徴がある。これらの特徴に加え、伝統的な日本の文様や着物の文様についての調査によっても本件模様DないしFに類似する模様が認められなかったこと(証人庚)、これらの模様単体で商標登録がされていることを併せ考えれば、本件模様DないしFについては、各模様単体でも特別顕著性を有すると認められる。 さらに、上記⑵のとおり、「KMT」のグッズ展開に当たっては、多種多様な商品が存在し、多くの場合、各商品ごとに複数のラインナップを揃えて商品化されるとい 単体でも特別顕著性を有すると認められる。 さらに、上記⑵のとおり、「KMT」のグッズ展開に当たっては、多種多様な商品が存在し、多くの場合、各商品ごとに複数のラインナップを揃えて商品化されるというのであるから、本件各模様を組み合わせるに当たり、単体では 9特別顕著性を有しない模様が含まれていたとしても、少なくとも本件模様AないしDの組合せにおいては、単体で特別顕著性を有する本件模様Dが含まれることに加え、本件模様AないしC各単体では単純な色と単純な柄を組み合わせた模様にすぎないとしても、そのような模様を任意に4種類組み合わせる方法は無数に存在するのであるから、その中から本件模様AないしDのみを任意に選出する可能性は限りなく低く、本件模様AないしDを組み合わせる場合には、色彩や形状について他者が使用する自由を制限することにはならないといえる。これらを併せ考えれば、本件模様AないしDの組合せは特別顕著性を有すると認められる。そうすると、これらに本件模様E及びFを加えた6種類の組合せについても、当然に特別顕著性を有すると認められる。 2 本件模様等の周知性の有無⑴ 前記第1記載のとおり、本件各模様は、「KMT」に登場するキャラクターaないしfの羽織又は着物の柄であり、「KMT」の作品中において、これらの羽織又は着物の柄は、主要登場人物である前記6名のキャラクターが登場する際に、一見して衣装の大部分を占める柄として需要者に認識される印象的なアイコンであるといえる。また、前記第1記載のとおり、「KMT」はアニメの放送により爆発的に人気が高まり、コミックスの発行部数ひいては売上げも伸び、いわゆる大ヒット作品となったことが認められる(なお、テレビの視聴率自体は必ずしも高くなかったものの、放送時間のほとんどが深夜帯である以上、コミックス り、コミックスの発行部数ひいては売上げも伸び、いわゆる大ヒット作品となったことが認められる(なお、テレビの視聴率自体は必ずしも高くなかったものの、放送時間のほとんどが深夜帯である以上、コミックスの販売部数等に照らすと、録画したものを後日視聴する方法や、動画配信サービスを利用して視聴する方法も相当程度あったと推認できるから、リアルタイムの視聴率が高くないとの一事をもって、周知性がないということはできない。)。さらに、映画の公開までの間にも人気は上昇し続けていたといえる。 そうすると、遅くとも、本件模様AないしEについては、アニメの放送が終了してコミックス最新巻(第18巻)の初版発行部数が100万部を突破し、アニメ主題歌を歌った歌手がPに出場した令和元年末の時点までに、本件模 10様Fについては、キャラクターfが活躍した映画が公開されて日本の歴代興行成績の最高記録を更新した後、前記歌手がPに前年に引き続いて出場して映画主題歌を歌唱した令和2年末の時点までに、それぞれ需要者において周知性を獲得していたことが認められる。 なお、「他人の商品等表示」に該当するといえるためには、他の出所とは区別された特定の出所からの商品であることを認識し得るような表示であれば十分であって、右特定の出所の具体的名称まで認識できなければならないものではない(東京高裁平成2年(ネ)第3264号平成3年11月28日判決参照)。また、「他人」には、特定の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者及び再使用権者のグループのように、同表示の持つ出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれるものと解するのが相当である(最高裁昭和56年(オ)第116 識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれるものと解するのが相当である(最高裁昭和56年(オ)第1166号昭和59年5月29日第三小法廷判決・民事判例集38巻7号920頁参照)。 そうすると、本件模様AないしDの4種類又はこれらに本件模様E及びFの2種類を加えた6種類の組合せの商品群がセットとして販売されている状況を目にした需要者の一般的な認識としては、上記のとおり認定した周知性に照らせば、当然に、これらの模様の衣装を着たキャラクターが登場する漫画又はアニメ作品としての「KMT」を連想し、(個々の商品の販売主体の正式名称までの認識が必ずしもないとしても)株式会社I及び株式会社J管理のライセンスグループに属する者が販売している、「KMT」のいわゆる公式グッズであるとの認識を抱くものと認められる。 ⑵ 弁護人は、出所表示機能を有するのはあくまでキャラクターにすぎず、着物や羽織の柄については出所表示機能を有しない旨も主張する。しかしながら、本件各模様は、衣装の限られた一部の柄や服飾品の一部にとどまらず、主要登場人物6名の各衣装の大部分を占める柄であり、各種宣伝等の中で視覚的に 11印象に残る衣装の柄を強く記憶している需要者も相当数存在すると考えられる。そうすると、本件各模様のみを付された商品を認識した需要者において、同作品の登場人物としてのキャラクターを連想せずとも、本件各模様のみをもって「KMT」を連想する場合も少なくないものといえる。そもそも、仮にキャラクター自体が出所表示機能を有するとしても、そのことによってキャラクターの衣装の柄が出所表示機能を有しなくなるとの関係にはないから、弁護人の主張を採用することはできない。 3 小括 、仮にキャラクター自体が出所表示機能を有するとしても、そのことによってキャラクターの衣装の柄が出所表示機能を有しなくなるとの関係にはないから、弁護人の主張を採用することはできない。 3 小括以上によれば、本件各模様AないしD又は本件各模様AないしFについて、本件模様等は、周知の商品等表示に該当すると認められる。 なお、弁護人は、公式ロゴ等が商品等表示に当たるのであるから、本件模様等は商品等表示に当たらない旨主張するが、前記第1記載のとおり、公式ロゴ等は、必ずしも公式グッズに表示や印字がされているわけではなく、商品のデザイン(見栄え)やサイズによって印字されないものもある上に、そもそも、一般的な需要者は、グッズ自体のデザインや用途に着目して当該グッズを購入するのであるから、公式ロゴ等の有無にかかわらず混同は生じ得るのであって、公式ロゴ等の有無によって、本件模様等の商品等表示該当性は左右されない。 第3 被告人βの不正の目的の有無1 被告会社内におけるやり取りについて⑴ 被告会社内におけるやり取り等括弧内掲記の証拠によれば以下の事実が認められる。 ア 戊は、令和元年10月3日、Sにおいて、被告人βに対し、「qの資料が来ていないのですが、どの商品ですか?」と尋ね、その後、本件模様AないしD様の柄の上衣の画像が、「q」とのメッセージとともに被告人βから送信され、さらにその後、本件模様AないしD様の柄のパーカーの画像(うち1枚の画像の中央には「KMT」の公式ロゴ様のものが写っている)が、「r」とのメッセージとともに被告人βから送信された。戊は、「二つともKMを 12意識した広告にした方がいですか?それとも、和柄の羽織、和柄の服としてあまり意識させないような広告にしたほうがいいですか?」と送信し、被告 に被告人βから送信された。戊は、「二つともKMを 12意識した広告にした方がいですか?それとも、和柄の羽織、和柄の服としてあまり意識させないような広告にしたほうがいいですか?」と送信し、被告人βは、「KMで、2つとも」、「名前はKだけ」との文章メッセージ及び「名前はKMじゃなくて、K、たとえばKのパーカーとかそれだけでいいです」とのボイスメッセージを送信した。これに対し、戊が「Kだけつけると、K要素がどこにもなくて少し違和感があるので、名前は普通に和柄パーカー、和柄羽織、とするほうがいいと思います。」と送信すると、被告人βは「Kだけ、名前を、みんなわかるんで」とのボイスメッセージを送信した。 (甲52、53)イ 被告人βは、令和元年11月28日、自身の携帯電話に、「KMT」の公式グッズが表示されているウェブサイトの画像を保存した。(甲36、37、59)ウ 令和元年11月30日、Sにおいて、被告人βが戊に対し、「以上の柄はKMT工場側の新しい柄」という文章とともに、本件模様E及びF様の柄を含む複数の柄のパーカーの写真を送信し、最後に「人気の柄を教えてください」とのメッセージを送信したところ、戊は本件模様E及びF様の柄のパーカーを含む画像を選択して適宜示しながら、「この三つが人気だと思います」、「この柄も原作を読んでる人には人気があると思いますが、この柄の服を着ているキャラがアニメでは出てきてないので、みんながわかるかといわれるとうーんってかんじではあります」、「あとこの柄は原作のキャラそのままだし、無断で人のイラストを使っている可能性があるのでやめた方がいいです」とのメッセージを回答した。(甲52)エ 被告人βは、令和2年12月18日、被告人βほか3名によるSのグループチャットにおいて、「Uグッズ出す予定です、Kγ 可能性があるのでやめた方がいいです」とのメッセージを回答した。(甲52)エ 被告人βは、令和2年12月18日、被告人βほか3名によるSのグループチャットにおいて、「Uグッズ出す予定です、Kγみたいなα独自の商品名を作りますので、以下の商品名どちらがいい?特点:連想させる、ライセンス避けられる、覚えやすい、カコイイ s t u これ以上まだなにある?」と送信し、これに対して他の社員が「こんなに漫画アニメ見てるのに 13自社商品は物語すら知らないものばかり笑笑 出勤車内で勉強します~!」とか「電車で1巻をみました。面白いと思います。s。または、vなどはどうですか。」などと返信すると、被告人βは、「vはダメです、ライセス避けられない」などと返信している。(甲50)なお、「U」も、初版発行部数が100万部を超えたことのある漫画作品の1つである。(証人丙)⑵ 戊の供述要旨戊の供述要旨は以下のとおりである。 ア 平成30年6月頃から令和2年6月頃まで被告会社にデザイナーとして勤務していた。令和元年10月初め頃、後に「Kγ」商品として販売する商品の画像を被告人βから送付され、被告会社の業務として、上記商品の企業向けの商品案内等のデザイン及び日本における販売用商品名の考案をすることとなった。 イ 後の「Kγ」商品の画像を初めて見た際、その柄が、「KMT」の登場人物であるキャラクターaないしdの羽織又は着物の柄と全く一緒であり、中央に「KMT」のロゴの入った画像も一緒に送付されてきたため、「KMT」の「パクリ」商品であるとの印象を抱いた。 ウ かねてより「KMT」については漫画を読んで知っており、好きな作品でもあったことから、日本販売用商品名を考案するに当たっては、自分の好きな作品の「パクリ」商品を作るのが嫌だったという 抱いた。 ウ かねてより「KMT」については漫画を読んで知っており、好きな作品でもあったことから、日本販売用商品名を考案するに当たっては、自分の好きな作品の「パクリ」商品を作るのが嫌だったということと、著作権法に抵触するかもしれないと考え、令和元年10月3日、S上において、被告人βに対し、案内画像を「KMT」のイメージに寄せるか、和柄のイメージに寄せるかを尋ねたところ、被告人βは、①「KMT」のイメージに寄せる旨、②商品名に「K」という言葉をつけて欲しい旨を述べた。なお、この質問をする以前には、被告人βが「KM」という言葉を発するのを聞いたことはなく、また、上記質問に対して、被告人βが「KM」という言葉について何らかの質問をしてきたことはなかった。 14被告人βに対し、被告会社の販売する商品には「K」の要素がないから、商品名は「和柄」に寄せた方が良い旨を伝えたところ、被告人βは、「K」の単語を付けて欲しい旨述べた。 エ 令和元年10月4日、被告人βに対し、直接、KMのキャラの柄そのままだからやめた方が良いと思う旨を伝えたところ、被告人βは、和柄に著作権はないから大丈夫である旨答えた。私は、その回答に一応納得し、最終的に日本販売用商品名を「Kγ」と命名した。これは、被告人βの要望に沿って「K」という単語を用いた上で、「KMT」の作品内容になぞらえて「γ」という言葉を用いたものである。被告人βは、この「Kγ」という商品名について、「原作の題名と2文字かぶっていたら危なかったけど、これは1文字しかかぶっていないから、いい名前を付けてくれたね」などと反応した。 オ 令和元年11月又は12月頃、「Kγ」商品の柄の種類を増やす方針となり、被告人βから、S上に画像を数点送信して、どのキャラクターが人気かを尋ねられた。また、同時期 てくれたね」などと反応した。 オ 令和元年11月又は12月頃、「Kγ」商品の柄の種類を増やす方針となり、被告人βから、S上に画像を数点送信して、どのキャラクターが人気かを尋ねられた。また、同時期に、商品自体に「M」の文字を入れるよう、商品自体のデザインについて修正が指示されたこともあった。その頃、「KMT」のキャラクターのイラストや設定、衣服等について掲載されている公式の設定資料集を被告人βに貸したことがあった。この頃は、私も「Kγ」の商品開発に多少協力的な態度を取っていた。 カ 令和2年1、2月頃に開催されるギフトショーに向けて「Kγ」商品の取扱いが増えるにつれ、著作権法に抵触する懸念や好きな作品の「パクリ」商品を作ることへの罪悪感により、同年1月から3月までの間に少なくとも3回(1度目は軽い口調で、2度目はある商品について「K」と「M」の両方の文字が入っていることを指摘し、3度目は同僚の辛とともに)、被告人βに対し、再度、「Kγ」商品をやめないか提案した。これに対し、被告人βは、「いや、まだいける」などと答えていた。 キ 令和2年3月から6月までの間のいずれかの時点で、被告人βが「Kγ」という言葉の商標登録をしようとしたことに対し、「Kγ」商品は正規の商 15品ではないから、さすがにそれはまずいと思うと注意したことがあった。 ⑶ 戊供述の信用性上記のSにおける戊と被告人βとのやり取りに照らせば、戊は、被告人βに対し「KMT」という原作の存在を明示しつつ、当初「K」ではなく「和柄」の言葉を用いた商品名の命名にするよう促しており、「あとこの柄は原作のキャラそのままだし、無断で人のイラストを使っている可能性があるのでやめた方がいいです」などと、知的財産に関係する法律に抵触する可能性についても言及し、法律に抵触する行 ており、「あとこの柄は原作のキャラそのままだし、無断で人のイラストを使っている可能性があるのでやめた方がいいです」などと、知的財産に関係する法律に抵触する可能性についても言及し、法律に抵触する行為を避けるよう忠告していることが認められる。 これらのやり取りは、戊供述と非常によく整合するものである。さらに、戊の同僚であった己も、戊が「Kγ」商品販売以前から「KMT」の作品を好きであったこと、戊が「Kγ」の販売について「KMT」という作品が好きなので複雑である旨話していたこと、「Kγ」商品について(同商品の販売に対する発言か、商標登録に対する発言かは定かでないものの)、戊がいずれかの者に対し「やめた方がいい」と発言したこと、また、「Kγ」を商標登録する話が出た際、戊が「炎上するからやめた方がいい」と言ったことについて供述している(証人己)。己の供述も、戊が「Kγ」商品の販売に消極的な態度を取っていた点において、戊供述と整合するものである。 この点について、弁護人らは、戊と職場における席が近かった己が、戊が被告人βに対して、「Kγ」商品の販売をやめるように直接述べた場面を明確に記憶していないから、戊の証言の信用性がないと主張するが、己が、当時、「Kγ」商品が知的財産関連法に抵触するか否かについて関心が希薄だったことはその供述から明らかであり、戊の忠告を重視していたとは考えにくいことから、己が戊の発言について記憶していなかったからといって戊供述の信用性は左右されない。また、弁護人らは、戊の退職前、被告人βが戊のミスについてしつこく叱責した事実を指摘した上、戊の供述が客観性、中立性に欠けるとか、記憶に曖昧な点が多いなどと指摘する。しかしながら、戊は、記憶の曖昧な点については区別して供述しており、前記のとおり、客観的なSのやり取 16り した上、戊の供述が客観性、中立性に欠けるとか、記憶に曖昧な点が多いなどと指摘する。しかしながら、戊は、記憶の曖昧な点については区別して供述しており、前記のとおり、客観的なSのやり取 16りとの整合性等に鑑みれば、戊供述の信用性を覆すに足りる事情とはいえない。 よって、戊の供述は信用することができる。 ⑷ 被告人βの供述の信用性ア 被告人βは、「KMT」について初めて知ったのは令和2年夏頃であり、株式会社Iや株式会社Jの会社名を知ったのは令和2年12月頃である旨、日本における商品の流通状況については、インターネットサイト等で勉強し、気になった商品を携帯で写真を撮ったりするが、写真に撮った商品を真似することはないし、保存した後はほとんど見ることはなく、自分で撮った商品の写真の中に公式ロゴの写真が含まれていたことには気付かなかった旨などを供述する。 イ しかしながら、被告人βの供述を信用することはできない。理由は以下のとおりである。 まず、被告人βの供述は、客観的な証拠と明らかに矛盾する。上記⑴において認められるSのやり取りに照らせば、戊から「原作」の存在や、各商品の柄の由来となるキャラクターの衣装の存在が明示されていること、これらの戊の指摘に対して、被告人βが何ら疑問を呈することなく戊とのやり取りが成立しており、かつ、被告人β自身が「KM」という言葉を用いていること、「K」という言葉だけを商品名につけることにより「みんなわかる」と述べていることなどに照らせば、被告人βが、令和元年10月3日の時点で、「KMT」という作品の存在を明確に認識した上で、後の「Kγ」商品を「KMT」のイメージに近づけようとしていたことが認められる(なお、弁護人は、ボイスメッセージ上の被告人βの発音が「KM」ではなく「K′M」であったから「K を明確に認識した上で、後の「Kγ」商品を「KMT」のイメージに近づけようとしていたことが認められる(なお、弁護人は、ボイスメッセージ上の被告人βの発音が「KM」ではなく「K′M」であったから「KMT」に寄せるような指示をしていないなどと主張するが、発音がいずれであっても、原作の存在が明示されている戊とのやり取りの中で何の疑問もなくされた発言であることに変わりはなく、弁護人の指摘は上記判断を左右しない。)。 17また、被告人βは、「Kγ」商品について、中国の仕入元が独自にデザインしたもので、既に「Kγ」との命名もされており、中国国内でライセンスを得ている商品として、令和元年7月頃に中国からパーカーの画像が送付され、同年8月末から9月頭頃に日本に直接営業活動があった後、同年11月下旬に最初の「Kγ」商品を仕入れ、日本の取引先に流通させたものである旨、「Kγ」商品の柄については、特に由来のない一般的な普通の柄と思っていた旨、「Kγ」という言葉は中国語で「悪いことをなくす」という意味になるが、柄と「Kγ」という商品名の関係については聞いたことはなく、特に違和感も感じたことはなかった旨なども供述する。しかしながら、柄は一般的な普通の柄として認識しており、それらの柄と「Kγ」という商品名との関係も不明であったというにもかかわらず、独自のデザインであるという仕入元の発言に疑問を持たないことはそもそも不自然である。また、仮に独自のデザインであると信じていたとすれば、「K」という言葉を商品名に使うことで、顧客において「Kγ」の商品であることを分かってもらえると思ったとか(乙12)、S上のやり取りにおいて、「K」という言葉を使うことで「みんなわかる」と述べていることなどの説明がつかない。このように、被告人βの供述自体にも不自然な点が多く存在 てもらえると思ったとか(乙12)、S上のやり取りにおいて、「K」という言葉を使うことで「みんなわかる」と述べていることなどの説明がつかない。このように、被告人βの供述自体にも不自然な点が多く存在する。 さらに、被告人βの携帯電話には、令和元年11月28日に公式グッズの画像が保存されており、当該画像は公式サイト上の画像であることが強く推認されるものであるところ、画像自体からも、公式ロゴが表示されているなど、原作の存在は明らかにうかがわれるものであることに加え、日本での商品流通状況を調査する際に気になる商品として画像を保存しておきながら、その後その画像はほとんど見ることがないなどという被告人βの供述は矛盾しており、商品の仕入れ担当者としても明らかに不合理であって、信用することができない。 そもそも前記第2の1において説示したとおり、特定の色と特定の単純な柄を組み合わせた模様1つを選択するのであればともかく、さらにこれ 18らの模様を4種類以上組み合わせる場合には無数の選択肢が存在するところ、本件模様AないしD又は本件模様AないしFに類似した模様4種類又は6種類を選択すること自体、「KMT」の作品を知った上で意図的に選択しなければまず起こり得ないものである(なお、被告人βは、これらの組合せで販売することを決定したのは中国本国の者であるなどと供述するが、日本における販売状況を見て発注の判断をするのは被告会社であり、上記Sのやり取りに鑑みれば、少なくとも被告人βにおいては、本件模様AないしD又は本件模様AないしFに類似した模様4種類又は6種類の選択によって、需要者において「KMT」公式グッズとの混同が惹起されるおそれを認識していたことは明らかである。)。 ウ したがって、被告人βの供述は信用することができない。 ⑸ 小括以上 類の選択によって、需要者において「KMT」公式グッズとの混同が惹起されるおそれを認識していたことは明らかである。)。 ウ したがって、被告人βの供述は信用することができない。 ⑸ 小括以上によれば、被告人βは、「Kγ」商品の販売開始時点で既に「KMT」の存在を認識しており、権利者から何ら許諾を得ることなくして「KMT」の人気に便乗する目的で、本件模様等に類似した模様の商品を組み合わせて販売しようとしていたことが認められる。 2 税関における手続について弁護人らは、被告会社が、①Vを通じて、「Kγ」商品についての画像を税関に持参し、法的に問題がないことを事前に確認してもらっていたこと、②令和2年12月27日又は28日頃、知的財産特別審査官であるWから、「M」の印字のない「Kγ」商品について輸入できるか確認するために、船によるコンテナでの通関よりも審査の厳しい飛行機での通関により、横浜税関山下分庁舎(以下「本関」という。)に輸入申告して、試行的に少量を輸入してみてはどうかという趣旨の助言を受けたこと、③各輸入申告において「Kγ」商品の画像を添付し、税関長の輸入許可を受けて「Kγ」商品を輸入していること(令和3年1月7日及び15日には税関において開封検査も行われている)などを指摘し、不正の目的がなかったことを主張する。 19なお、②の経緯については、証拠上以下の事実が認められる。 被告会社が令和2年12月24日に輸入申告した「Kγ」商品であるクッション及びマスクにつき、「M」の文字が商品に印字されていたため、株式会社Iの有する商標権を侵害するおそれがあるとして、令和3年1月12日、横浜税関本牧埠頭出張所(以下「本牧」という。)において、認定手続開始通知がされ、その結果、輸入された商品のうち、「M」の字が入った商 有する商標権を侵害するおそれがあるとして、令和3年1月12日、横浜税関本牧埠頭出張所(以下「本牧」という。)において、認定手続開始通知がされ、その結果、輸入された商品のうち、「M」の字が入った商品については滅却しなければならない旨をWがVに伝え、結果的に、「M」の字が入っていない商品についても、被告会社は仕分けをせず、同月22日、滅却(廃棄)承認申請書を税関長宛に提出した。(弁58、59、証人V、証人W)⑴ 弁護人の主張①についてア 税関手続に関するXの供述要旨輸入貨物の中に知的財産に関する侵害物品があると思われる場合には、横浜税関業務部の実務上、知的財産調査官の判断により、関税法69条の12に基づく認定手続が執られることとなるが、「Kγ」商品については、令和2年12月に輸入申告のあったものについて、令和3年1月に本牧において、同手続が執られたことがある。認定手続を開始するかどうかについては、関税法のコンメンタールに基づき、知的財産侵害物品の「相当程度の蓋然性」がある場合に認定手続を開始する運用とされている。 また、権利者による輸入差止めの申立ての制度もあるものの、不正競争行為組成物品に対する申立ての場合には、商標や特許のような登録機関が存在せず、税関において客観的な基準がない中で判断することが困難であることから、商標権や著作権の侵害物品に対する輸入差止め申立ての場合と異なり、主管庁である経済産業大臣の認定書又は意見書が必要とされている。なお、「Kγ」商品について権利者から輸入差止申立てがされたことはない。また、輸入差止申立てによらない職権による取締りの制度も存在はするものの、件数としては、権利者による申立てに基づいて取締りを行うものが全体の9割程度を占めている。さらに、職権による取締りの中で 20 輸入差止申立てによらない職権による取締りの制度も存在はするものの、件数としては、権利者による申立てに基づいて取締りを行うものが全体の9割程度を占めている。さらに、職権による取締りの中で 20も、商標権、意匠権、著作権、特許権といった他の法律に関する侵害物品と比較した場合、不正競争防止法違反の組成物品については、上記のとおり、税関が独自で侵害の有無を判断することが困難であるため、取締件数は相対的に極端に少ない。 輸入を予定する者が輸入申告をするに当たり、横浜税関に対して、事前に相談したい内容がある場合の対応については、輸入通関手続の全般的、基本的事項に関する相談については相談官が対応し、更なる専門的な相談内容であれば、相談官が各専門部門へ案内し、そこで対応するという流れとなり、知的財産関係の相談内容であれば、知的財産調査官のもとへ案内され、そこで対応することとなっている。もっとも、知的財産関係については、権利の発生と消滅の状況がその時々で変わるという知的財産の性質上、事前教示制度の対象とされていないことから、知的財産調査官においては、その旨を説明した上で回答できない旨を伝えるという運用となっている。 仮に、知的財産調査官以外の職員に対し、知的財産関係の事前相談がされた場合であっても、当該職員の専門分野以外の分野については回答することはない。 イ X供述の信用性X供述の信用性につき検討すると、まず、Xは、令和2年7月から令和4年6月までの2年間、本関の業務部知的財産調査官に上席調査官として勤務していた者であり、専門的な手続に関する一般的な供述については信用することができる。そして、不正競争防止法違反に関する認定手続や取締りが非常に少ない旨の供述については、知的財産関連法の中でも不正競争防止法については、登録制度のような る一般的な供述については信用することができる。そして、不正競争防止法違反に関する認定手続や取締りが非常に少ない旨の供述については、知的財産関連法の中でも不正競争防止法については、登録制度のような明確な基準がなく、主管庁ではない税関が独自の判断で不正競争防止法の侵害物品であるかどうかを判断することは、権利者からの申立てが存在する等の一定の判断基準がない限り困難であると認められることに照らせば、供述内容それ自体が合理的である。加えて、丁が、税関による輸入差止めの認識について、著作権侵害の認定も従前 21かなり厳しく、近年にようやく認めてもらえるようになったものである旨、不正競争防止法に基づくものに至っては、まず受けてくれないだろうという経験に基づく判断があり差止めの申立ては行わなかった旨を供述していることとも整合的である。また、知的財産関係について事前教示制度の対象でないため、事前に相談があった場合には、回答できない旨を伝えることになる旨の供述についても、知的財産の性質上、そのような回答とならざるを得ない点は首肯でき、供述は合理的である。 以上によれば、税関手続に関するXの供述は信用することができる。 ウ Vの供述についてこの点について、Vは、被告会社の前身となる会社や被告人βが過去に知的財産関係の罪に問われたことを知っていたから、輸入する物品が他人の権利を侵害しないか税関において確認していたとか、被告会社が初めて輸入しようとする商品については、相談課に直接訪れ、税番や税率、他法令に反するかどうか、権利侵害があるかないかを確認していたなどと供述する一方で、「Kγ」商品については、令和元年11月頃から本関の事前相談官に相談に赴いていたが、当初は知的財産部門に確認に行ったことはなく、被告会社に警察の捜索が入ったことを受け していたなどと供述する一方で、「Kγ」商品については、令和元年11月頃から本関の事前相談官に相談に赴いていたが、当初は知的財産部門に確認に行ったことはなく、被告会社に警察の捜索が入ったことを受けて被告人βから再度侵害に当たらないかどうかを確認するように言われ、令和3年4月20日、「Kγ」商品のちらしを持参して本関のX及び本牧のWを訪れたのが最初であり、同年1月や2月下旬ないし3月には知的財産部門を訪れていないとも供述している。 確かに、「Kγ」商品のちらしに、関税鑑査官等に相談した際のものと思われる、税関職員の役職、所在及び氏名と思われる記載、貨物の品目の分類を示すと思われる4桁2桁4桁の組み合わせからなる数字群、関税率と思われる数字、基本税率やWTOの協定税率を指すと思われる「基」や「協」の字、申告数量に関する記載と思われる「NO」(ナンバー)や「DZ」(ダース)の記載、重さを示す記載と思われる「KG」の記載、無税(フリー) 22を示すと思われる「F」や「フリ」の記載が残っていることから、Vが品目や税率等の相談に訪れていたことが認められる(弁35、証人X)。しかしながら、上記ちらしには、知的財産関係の相談内容又は回答内容についての記載はないから、Vが「Kγ」商品の輸入に際し、知的財産権に関する法律に抵触しない旨を事前に確認した事実は認められない。Vの供述を前提としても、「Kγ」商品にはキャラクター自体が付されていないので侵害には当たらないとの認識だったのであり、「他法令」に抵触する可能性があるかと抽象的に尋ねたのみで、知的財産関連法については何ら言及していないし、「KMT」に関する資料も提供していないとも述べているのであるから、事前相談官においても、知的財産権に関していかなる示唆も与えたことにはならない。また、知的財産 連法については何ら言及していないし、「KMT」に関する資料も提供していないとも述べているのであるから、事前相談官においても、知的財産権に関していかなる示唆も与えたことにはならない。また、知的財産権に抵触する可能性に関して質問者から何ら言及がない以上、事前相談官が自発的に知的財産部門に案内することは困難であり(したがって、Vや被告人βが供述するような税関窓口の運用、すなわち、知的財産に関する問題があればその旨を明示的に相談せずとも事前相談官が知的財産部門に誘導してくれるといった運用は認められない。)、知的財産部門に案内しなかったとしてもかかる対応に問題があるともいえない。 なお、Vが知的財産調査官の下に訪れた時期の点について、Vは令和3年4月20日が初めてと述べる一方、Xは、Vであると思われる毎回同じ被告会社の関係者が令和3年1月頃から知的財産調査官のところに相談に来て、輸入しようとする物品のちらしのようなものを持参していた旨、X自身が対応したのは2、3回という記憶で、いずれの対応時も反応は全く同じような感じで強い印象が残っていないので、「お答えできません」との回答に納得していたと思う旨供述している。Xの供述は、Vと思われる人物が知的財産調査官の下に確認に来始めた時期が、被告会社が「M」の字の入った商品についての認定手続を受けることになった時期と一致する上、ちらしを持参していた点でもV自身の述べる事前確認時の態様と一致し、かつ、供述 23内容についても、当時は窓口に来ても名乗らないので個人名で呼んだ記憶はなかったが、質問してくる被告会社の担当者は毎回同じ人物であったと述べるなど、記憶している限度で具体的に述べていることから、Xの供述は信用することができる。そうすると、Vは、令和3年1月以降、少なくとも2、3回、「Kγ」商品 会社の担当者は毎回同じ人物であったと述べるなど、記憶している限度で具体的に述べていることから、Xの供述は信用することができる。そうすると、Vは、令和3年1月以降、少なくとも2、3回、「Kγ」商品のちらしを持参して知的財産調査官の下を訪れ質問していたこと自体は認められ、この点についてのVの供述は信用することができない。そうすると、Vは、知的財産調査官から「回答できない」旨の回答を複数回聞いていたことになる。 エ 小括以上の検討によれば、税関において事前に法的に問題がない旨を回答することはない(そもそも知的財産の性質上不可能である)旨のXの供述は信用することができるから、弁護人の主張を採用することはできない。 ⑵ 弁護人の主張②についてア V及びWの供述要旨Vは、Wから、「M」の字が入っていない商品については輸入可能であり、柄だけであれば問題ないと言われたが、被告人βと相談の上、仕分作業にかかる費用に鑑み、全商品の滅却を選択した旨、また、「M」の字の入っていない柄だけのものであれば良いとWから言われた後、Vが「M」の字が入っていないものは法律上だめですかと尋ねたところ、Wは、心配であれば取りあえず少量を本関で輸入申請してみてはどうか(以下「本件提案」という。)と述べた旨などを供述した。 これに対して、Wは、認定手続開始通知前の令和2年12月下旬に、認定手続を執る分の商品についてVと話す機会があった旨、Vは、年が明けてからは週1、2回の頻度で本牧に通関手続のために来ていたが、通関手続終了後にWのところへ来たことが2、3回あり、侵害貨物の廃棄日程調整についての話をした旨、「M」の字が入っていない商品について、滅却しなくて良いという趣旨の話はしていないし、本件提案もしていない旨供述した。 24イ 検討 回あり、侵害貨物の廃棄日程調整についての話をした旨、「M」の字が入っていない商品について、滅却しなくて良いという趣旨の話はしていないし、本件提案もしていない旨供述した。 24イ 検討上記⑴で検討したとおり、税関職員が知的財産権侵害の有無について問題がない旨を事前に回答することは考え難いことからすれば、ましてや、Wが、横浜税関の本関の税関検査で問題がなければ他でも問題がないかのような趣旨の本件提案をすることはおよそ考え難い。また、仮に本件提案があったとすれば、Vの供述によれば、Vは、事前確認の都度商品のちらしを持参し、確認した日付や相手方等をメモするほど周到に法令違反の有無を確認していたのであるから、本件提案についてもメモを残していたとしてもおかしくないところ、そのような証拠はない。さらに、Vの供述によれば、Wの本件提案は、W自身が「M」の字が入っていない柄だけの商品は問題ないと発言した後の会話の中でされたものということになるが、税関職員であるWとの間で「M」の字が入っていない商品については「問題ない」ことが確認できたにもかかわらず、さらに本件提案の話題になることは文脈上不自然であり、Wの立場からしても、「M」の字が入っていない商品について問題ないと発言しつつさらに本件提案をする必要性がない。 以上の検討によれば、本件提案に関するVの供述を信用することはできず、Wが本件提案をした事実は認められないから、本件提案を前提とする弁護人の主張は採用することができない。 ⑶ その他のVの供述についてVは、被告会社に対する警察の捜索差押えがあったことにより、被告人βから、もう一度税関に対して扱っている商品が侵害に当たるかどうか聞いてくるよう指示を受け、令和3年4月20日、本関のX及び本牧のWを訪ねたところ、いずれからも、今 差押えがあったことにより、被告人βから、もう一度税関に対して扱っている商品が侵害に当たるかどうか聞いてくるよう指示を受け、令和3年4月20日、本関のX及び本牧のWを訪ねたところ、いずれからも、今日までは大丈夫、今日までは法律上問題はないが今度来るときは大丈夫かどうかもう一度確認してくださいなどと言われた旨、同日、両名に確認したことを被告人βに報告するために、持参したちらし(弁36)に同日の日付やX及びWの名前や所属を記載し、それを撮影して画像を被告人βに送信した旨を供述する。 25しかしながら、「今日までは大丈夫」などの発言については、そもそも仮に本件各犯行後にそのような発言があったとしても犯行当時の被告人βの主観に影響を与えるものではないことを措いても、X供述のとおり、知的財産権侵害の有無に関するものについては、不正競争防止法に関しては明確な基準がないことやその他の知的財産権に関しても登録状況が変化するものであることに鑑みれば、知的財産権に関する質問があったとしても、当該質問が事前の確認であると事後の確認であるとを問わず、法律上問題があるかどうかを回答すること、ましてや直ちに回答すること自体が考え難い上に、「大丈夫」などという抽象的に過ぎる回答をすること自体に相当の疑義がある。Vがちらしに残したメモ(弁36)においても、X及びWの氏名と役職が日付とともに記載されているのみで、両名から聞いたとする内容そのものについての記載はない。これらの事情を併せ考えれば、令和3年4月20日にX又はWがVに対して、被告会社の商品が法律に違反しない旨の言質を与えた事実は何ら認められない。 ⑷ 弁護人の主張③についてア 被告人βの税関手続等に関する供述の信用性について被告人βは、過去に著作権法及び商標法に関する事件で懲役3年執行猶 旨の言質を与えた事実は何ら認められない。 ⑷ 弁護人の主張③についてア 被告人βの税関手続等に関する供述の信用性について被告人βは、過去に著作権法及び商標法に関する事件で懲役3年執行猶予5年の判決を受けたため、その後は、キャラクター関係のものはやらない、新商品の場合には逐一税関等の公的機関に確認する、商標などについて確認するなどの注意をするようになった旨、新商品を仕入れる際には必ずVに商品のちらしを税関窓口に持参させて確認させていた旨などを供述する一方、通関手続についてはVに一任していたと述べており、その理由について、以前に事件を起こした自分では信用がないから、Vに代わりに行ってもらっていたとか、Vの方が逐一税関に確認してくれるから通関士よりも信用することができる旨を述べる。しかしながら、過去に知的財産に関する罪に問われたことがあるのであれば、他人を介して確認するよりも、自ら専門機関に対し法律違反がないように直接確認に赴いたり、国家 26資格を有する通関士に通関手続を依頼したりする方が、法を遵守するために確実であるのは明らかであるにもかかわらず、国家資格である通関士の資格を持たず、特に知的財産関係の法令に詳しいわけでもないVに、確認を一任すること自体不合理である。加えて、被告人βは、Vが税関に対してどのような尋ね方で確認しているのかは詳しくは分からないと述べ、Vに対して知的財産部門に行って確認するようにとの具体的指示もしていないというのであるから、知的財産の関係で法令に違反しないように心がけていたというにしては非常に疑問のある対応といえる(被告人βは、Vに指示しなくとも、Vは知的財産調査部門の座席の写真を送ってきていたので、Vは知的財産部門に確認に行っていたと思っていた旨も述べるが、当該写真の送られてきた時期に のある対応といえる(被告人βは、Vに指示しなくとも、Vは知的財産調査部門の座席の写真を送ってきていたので、Vは知的財産部門に確認に行っていたと思っていた旨も述べるが、当該写真の送られてきた時期については令和3年内とも述べており、被告人βの供述は時系列に明らかな矛盾がある。)。 また、被告人βは、「Kγ」商品を流通させるに当たっては、類似の商品が日本にないかどうかについて、店頭やネット通販サイト等の確認、特許庁のホームページの検索等の調査、己に依頼して知的財産関係の調査等を行ったが、同じような商品はなく、己からも特に指摘はなかった旨、被告会社に対する警察の捜索差押えがあった直後の令和3年4月20日頃にも、己に頼んで不正競争防止法の所管官庁がどこかということを調べてもらい、特許庁ということが分かり、特許庁に対して自ら確認したところ、税関に確認するように言われたので、Vに頼んで税関に確認に行ってもらった旨も供述する。しかしながら、権利侵害にならないよう公的機関への確認を徹底していたと述べる一方で、前記のとおり、税関への確認は全て通関士の資格をもたず、知的財産関係に詳しいわけでもないVに一任し、自ら確認することはほとんどしていない。さらに、商標権に抵触しないかの確認は己にしてもらったと述べながら、知的財産関係で法律に抵触しないかどうかについて、被告会社の顧問弁護士に相談することもしていないし、何より「KMT」の存在を認識していることは前記第3の1のとおり明ら 27かである。これらの事情に加え、戊に対して「Kγ」の商品名について「原作の題名と2文字かぶっていたら危なかった」旨発言していること、戊から複数回「Kγ」商品をやめる旨の提案を受けながら「まだいける」などと答えて忠告に耳を傾けなかったこと、Sでの社内のやり取りにおいて、「U」 と2文字かぶっていたら危なかった」旨発言していること、戊から複数回「Kγ」商品をやめる旨の提案を受けながら「まだいける」などと答えて忠告に耳を傾けなかったこと、Sでの社内のやり取りにおいて、「U」についても同様にライセンスへの抵触を避けるべく、作品名と似て非なる独自の商品名を従業員から募っている様子を併せ考えれば、被告人βはむしろ、商標権など知的財産権の中でも相対的に基準の明確な権利については侵害しないよう徹底する一方で、不正競争防止法における他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為のように、一見しただけでは権利侵害かどうか直ちに明らかとはいえないものについては、商品名などを通じて、「Kγ」商品のイメージを「KMT」の作品に近付けようとする明確な意図があったことが認められる(なお、「U」に関して被告人βが送信したとされるメッセージにつき、被告人βは、営業課のYが作成した文章を転送した旨述べるが、営業課の従業員で構成されるチャットにはY自身が参加していることが明らかであり、わざわざ被告人βにメッセージを転送させる手間をかける必要がないから被告人βの供述は信用することができない。)。 以上のとおり、被告人βの供述は信用することができない。 イ 弁護人の主張について弁護人らは、輸入申告の際、被告会社が輸入申告書に毎回商品の画像を添付していたことをもって、被告人βに不正の目的がないことの証左である旨を主張するけれども、S等の客観的な証拠に照らせば、上記認定のとおり、被告人βには、「Kγ」商品のイメージを「KMT」の作品に近付けようとする明確な意図があったと認められる。そして、知的財産権の性質上、税関において水際対策が徹底できず、事前教示を求められても「回答できない」と答えるしかないという実情についても、上記2⑴ウのとおり、Vが税関を 意図があったと認められる。そして、知的財産権の性質上、税関において水際対策が徹底できず、事前教示を求められても「回答できない」と答えるしかないという実情についても、上記2⑴ウのとおり、Vが税関を訪れた際、複数回にわたり知的財産調査官が「回答できない」旨回答するのを聞いていた事実が認められることからすると、当然被告人もそのよ 28うな実情についてはVを通じて知っていたことが認められる。これらを併せ考えれば、被告人βは、知的財産に関連する権利の侵害の有無について税関職員が事前に回答できないことや、知的財産関係に問題がある可能性のある物品であっても、必ずしも輸入が差止められるわけではないことについて把握した上、これらを逆手に取り、自身の弁明に利用するために画像を輸入申告書に添付する行為を繰り返していたものと認められる。 さらに、弁護人らは、Wの試行的に少量を本関に空輸してみてはどうかとの趣旨の本件提案があったからこそ、わざわざコストの高い空輸手続をとった旨も主張するけれども、これも上記同様に、本関に空輸した場合であっても、必ずしも輸入が禁止されないことを逆手にとって、自身の弁明に利用する目的であったものと認められる。 よって、弁護人らの上記各主張を採用することはできない。 3 まとめ以上によれば、弁護人の主張はいずれも採用することができず、被告人βは不正の目的を有していたことが認められる。 第4 被告人βの故意の有無これまでに検討したとおり、被告人βは、本件模様等が「KMT」の商品等表示として需要者の間に広く認識されていることを認識しつつ、これと類似した模様の組合せを使用した「Kγ」商品を販売するなどして、需要者に対して公式グッズとの混同を生じさせて利益を得ようとする不正の目的があったことが認められるから、故意についても 識しつつ、これと類似した模様の組合せを使用した「Kγ」商品を販売するなどして、需要者に対して公式グッズとの混同を生じさせて利益を得ようとする不正の目的があったことが認められるから、故意についても認められ、違法性の意識もあったことも認められる。 第5 違法性阻却事由(先使用の抗弁)の存否弁護人は、被告人の行為につき先使用の抗弁(不正競争防止法19条1項3号)が成立する旨を主張するが、前記認定及び説示のとおり、被告人βによる本件模様等と類似の商品等表示の使用においては不正の目的が認められるから、先使用の抗弁については成立しない。 29よって、弁護人の主張を採用することはできない。 (量刑の理由)本件犯行は、被告人βが、被告会社の仕入れ担当者として、本件模様等が「KMT」の商品等表示として需要者の間に広く認識されていることを理解しつつ、これと類似した模様の組合せを使用した「Kγ」商品を、被告会社が中華人民共和国から輸入し日本国内で販売譲渡するなどして、需要者に対して公式グッズとの混同を生じさせて利益を得るという、常習的、職業的な権利侵害を繰り返す中で及んだものであって、悪質である。そして、「Kγ」商品の流通、ひいては、本件犯行に至るまでの経緯について見ても、侵害行為に該当することが明らかな商標権侵害行為等についてはこれらを避けようとする一方で、一見して明白な基準がなく、税関においても取締りが容易でない本件のような不正競争防止法違反行為を狙って、取締りが容易でないという実情を奇貨として、「KMT」の人気に便乗して被告会社の売上げを伸ばそうとする極めて巧妙かつ狡猾な手口といえる。本件犯行が行われた期間、回数、商品数をみると、犯行により株式会社I及び株式会社J管理のライセンスグループの被った信用の低下は、被告会社 社の売上げを伸ばそうとする極めて巧妙かつ狡猾な手口といえる。本件犯行が行われた期間、回数、商品数をみると、犯行により株式会社I及び株式会社J管理のライセンスグループの被った信用の低下は、被告会社が結果的に得た純利益の多寡にかかわらず、無視できないものになることがうかがわれる。加えて、自身の弁明に利用するべく、税関における手続を逆手にとり、輸入実績を積み上げようとしていた点でも犯情は悪い。 さらに、被告人βは、不合理な弁明に終始し、反省の態度が見られない上、同種前科があるにもかかわらず、知的財産権を軽視する態度が甚だしく、再犯のおそれも否定できない。もっとも、同種の前刑の猶予期間満了から起算しても、被告会社による「Kγ」商品の販売開始までは8年弱の期間が経過していることは一定程度被告人βに有利に考慮し得る。 そこで、被告人らに対し、主文掲記の刑を量定し、被告人βについては、懲役刑については、最長の猶予期間にした上でその執行を猶予することとした。 (求刑-被告会社に対し罰金500万円、被告人βに対し懲役2年及び罰金300万円) 30令和4年12月19日名古屋地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官 宮本 聡 裁判官 西 前 征 志 裁判官 井 筒 土 筆

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