【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人若山資雄の上告理由について 原審は、(一) 被上告人の振出にかか
主文 原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人若山資雄の上告理由について原審は、(一) 被上告人の振出にかかり、上告人D支店を支払場所とする約束手形である本件手形が、その支払呈示期間内である昭和四五年八月一七日に所持人である訴外Eから取立委任を受けた訴外F銀行により名古屋手形交換所における手形交換の方法をもつて支払のため呈示されたこと、(二) 被上告人は、同日、上告人D支店の係員に対し、本件手形を不渡返還し、持出銀行たるF銀行から不渡届が出されればこれに対し異議申立をすることを委託し、同支店係員はこれを承諾したこと、(三) そこで、上告人は、本件手形に契約不履行を理由として支払を拒絶する旨の付箋を付し、右手形をF銀行に不渡返還したうえ、同月一九日午前一〇時までに右手形交換所に対し不渡事由を契約不履行とした異議申立書を提出したが、右申立書には当時の右手形交換所における慣行に従つて被上告人作成の理由書が添附されていたこと、(四) 同日、右手形交換所の職員は、上告人に対し、右理由書の記載内容は手形が詐取されたものであることを不渡事由とするものとみられるから、手形付箋、異議申立書及び理由書にそれぞれ記載された不渡事由を符合させるように取り計らつてほしい、そうでなければ異議申立を受理することができない旨を連絡したこと、(五) 上告人としては、手形交換所の右のような指示に対し、右異議申立が手形交換所規則所定の要件を充足するものであることを指摘してあくまでもその受理を求めるなり、あるいは右指示に従つて被上告人に前記理由書の内容を契約不履行に該当することが明確となるように書き直させるなり、適宜の措置をとることにより、異議申立の期限である同日午後三時までに異議申立が めるなり、あるいは右指示に従つて被上告人に前記理由書の内容を契約不履行に該当することが明確となるように書き直させるなり、適宜の措置をとることにより、異議申立の期限である同日午後三時までに異議申立が受理されるよう- 1 -取り計らうべきであつたところ、上告人の係員は、右指示の趣旨を不渡事由を手形詐取に改めるよう求められたものと誤解したため、そのように異議申立書を書き改め、これに伴い手形の付箋の不渡事由も改めようとして付箋の付け替えにつき持出銀行の了解を得ようとして奔走したが、その間に異議申立の期限が過ぎ、結局異議申立は受理されずに終つたこと、(六) そこで、被上告人は、銀行取引停止処分を免れるため、やむなく本件手形金相当額をF銀行に支払つたこと、以上の事実関係を確定したうえ、右事実関係に照らせば、上告人は前記異議申立手続をすることを内容とする被上告人との間の委託契約上の債務につき本旨に従つた履行をしたものとはいえず、右債務不履行の結果被上告人は手形金額相当の損害を被つたとして、被上告人の上告人に対する右金額の損害賠償請求を認容した。 上記の事実関係に関する原審認定は原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、また、右事実関係のもとにおいて上告人に前記委託契約上の債務の不履行があるとした原審の判断は相当であつて、これにつき所論の違法があるということはできない。 しかしながら、右のように被上告人が本件手形金相当額の持出銀行への支払によつて同金額相当の損害を被つたとされるためには、そもそも被上告人が右銀行を通じて手形金の支払を受けた手形所持人であるGに対して右手形金の支払義務を負つていなかつたことがその前提となるべきものといわなければならないところ、右Gが手形として形式上の要件を具え、かつ、裏書の連続のある手形の所持人である 手形所持人であるGに対して右手形金の支払義務を負つていなかつたことがその前提となるべきものといわなければならないところ、右Gが手形として形式上の要件を具え、かつ、裏書の連続のある手形の所持人であるとすれば(このことは被上告人の間接に自認するところである。)、それにもかかわらず被上告人において右Gに対し右手形金を支払うべき義務がなかつたとする特段の事由の存在が肯定されない限り、右の前提を欠くこととなり、被上告人は手形金相当額の損害を被つたものとして上告人に対しその賠償を請求することができない筋合である。しかるに、原審は、右の支払義務の存否につきなんら格別の判断を加- 2 -えることなく、被上告人が右Gに対して本件手形金相当額を支払つたことから直ちに上告人の債務不履行によつてこれと同額の損害を被つたものと結論しているのであつて、右は損害の発生に関する民法の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽、理由不備の違法を犯したものといわなければならない。論旨は、この点において理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、右の点について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官藤崎萬里裁判官団藤重光裁判官本山亭裁判官中村治朗裁判官谷口正孝- 3 - 裁判官谷口正孝
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