令和1(行ケ)10086 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年11月26日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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令和元年11月26日判決言渡令和元年(行ケ)第10086号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和元年10月8日判決 原告株式会社R&MJaPan 訴訟代理人弁護士池田智洋 被告ルイスポールセンエイ/エス 訴訟代理人弁理士村木清司川端佳代子関口一秀 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が無効2017-890023号事件について令和元年5月13日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告は,別紙のとおりの構成からなる下記の立体商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1,2)。 登録番号商標登録第5825191号出願日平成25年12月13日登録審決日平成27年12月15日設定登録日平成28年2月12日指定商品第11類「ランプシェード」(2) 原告は,平成29年3月31日,本件商標について商標登録無効審判を請求した。 特許庁は,上記請求を無効2017-890023号事件として審理し,令和元年5月13日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月24日,原告に送達された。 (3) 原告は,令和元年6月 事件として審理し,令和元年5月13日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月24日,原告に送達された。 (3) 原告は,令和元年6月14日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。 その要旨は,ランプシェードの立体的形状である本件商標は,商標法3条1項3号に該当するが,本件商標に係る商品(以下「本件商品」という。)の形状として使用された結果,被請求人(被告)の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたといえるから,本件商標は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当し,同条2項の要件を具備するものであるから,商標登録を受けることができるものであり,また,本件商標は,同法4条1項11号,18号及び7号のいずれにも該当するものではなく,本件商標の商標登録は,同項の規定に違反してされたものではないから,同法46条1項の規定により無効とすることはできないというものである。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件商標の商標法3条2項該当性の判断の誤り)について(1) 原告の主張ア本件商標の周知性の判断の誤り本件商品は,デンマークのデザイナーであるポール・ヘニングセン(以下,特に断りのない限り,「ヘニングセン」という。)がデザインした商品(商品名「PH5」)として,宣伝され,評価され,販売されてきたものであるから,本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできな てきたものであるから,本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできない。 したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 イ被告とヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約の不存在等本件商標は,ヘニングセンがデザインしたPH5の立体的形状として周知であり,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権はヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない。 しかるところ,1978年4月6日付け基本ライセンス契約にとって代わるものとして2010年1月1月付けで有効となった旨の記載のある被告とヘニングセンの相続人A間のライセンス契約の英文翻訳書(甲10)には,契約書の原文が添付されていない上,許諾地域,許諾期間,ライセンス料などが示されていないこと,ヘニングセンが1978年に死亡した後,ヘニングセンの配偶者であるAが1996年6月12日に死亡しており,Aが2010年1月にライセンス契約の契約書を作成するのは不可能であったことなどに照らすと,上記英文翻訳書の内容は,信用することができず,被告とヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約の存在は証明されていない。この点に関し本件審決が,ヘニングセンの死後も, 被告とその相続人との間で照明器具の販売に関する契約が継続されていることに不自然な点はない旨判断したのは誤りである。 加えて,知的財産権の権利者が死亡したが,相続人が存在しない場合において,相続財産の清算のために選任された相続財産管理人によって,知的財産権が譲渡されなかったとき はない旨判断したのは誤りである。 加えて,知的財産権の権利者が死亡したが,相続人が存在しない場合において,相続財産の清算のために選任された相続財産管理人によって,知的財産権が譲渡されなかったとき,あるいは,権利者であった法人が権利を譲渡せずに解散した場合など,その権利を帰属させるべき者が存在しない場合は,当該知的財産権は,法定の保護期間満了を待つことなく消滅し,パブリックドメインとなるというべきである。 しかるところ,PH5は,イギリスなどヨーロッパ諸国で,商標権のないものとして,レプリカが広く流通し,PH5のデザインは,世界中で,パブリックドメインとして認識されているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべきである。 ウ小括以上によれば,本件商標は,商標法3条2項の要件を具備するものといえないから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 (2) 被告の主張ア本件商標の周知性の判断の誤りの主張に対し被告とヘニングセンは,1925年(大正14年)から,共同で照明器具を製造販売し,本件商品は,1958年(昭和33年)に発表され,販売が開始された当初から被告が販売しており,日本でも,昭和51年頃から被告の商品として継続して販売されていること,本件商品の雑誌掲載記事等には,被告が販売元として記載されていることなどからすると,本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまらず,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして周知であることは明らかである。 イ被告とヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約の不存在等 の主張に対し原告は,本件商品(「PH5」)に係る商標権,著作権等の知的財産権はヘニングセンに帰属するから, イ被告とヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約の不存在等 の主張に対し原告は,本件商品(「PH5」)に係る商標権,著作権等の知的財産権はヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない,PH5のデザインは,外国において商標登録されておらず,知的財産権の権利者が死亡し,パブリックドメインとなっているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべきである旨主張する。 しかながら,商標法上,出願日前に生じた他人の著作権等と抵触する場合,登録商標を使用することができない旨を定めた規定(同法29条)は存在するが,商標登録を受けるために著作権等の利用契約が存在しなければならない旨を定めた規定は存在しないことに照らすと,原告の上記主張は,その主張自体,同法3条2項の要件といかなる関係があるのか不明である。 また,本件商標をいずれの国で登録するのかは,被告の選択に委ねられているから,外国において商標登録されていないからといって,日本において商標権を取得できないということにはならない。 したがって,原告の上記主張は失当である。 ウ小括以上によれば,本件商標が商標法3条2項の要件を具備するとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項18号該当性の判断の誤り)について(1) 原告の主張本件審決は,ランプシェードの形状は,シェードの枚数,形状,向き又はそれらの組合せなどにおいて複数の選択肢があり,本件商標も複数の選択肢 があるランプシェードの形状の一つであり,原告主張の「上記機能」(「周辺の ードの形状は,シェードの枚数,形状,向き又はそれらの組合せなどにおいて複数の選択肢があり,本件商標も複数の選択肢 があるランプシェードの形状の一つであり,原告主張の「上記機能」(「周辺の人の顔がはっきりと認識できる明るさを保ちつつ,光源のまぶしさによる不快感をほぼ完全に排除し,手元にも必要十分に明るくすることができるという機能」)を達成するためのランプシェードの構造が本件商標のみに限られることを認めるに足りる証拠はないから,本件商標は,商標法4条1項18号に該当するものではない旨判断した。 しかしながら,へニングセンは,照明器具のデザインを通じて,光をコントロールすることを生涯のテーマとし,特に,光のまぶしさ(グレア)による不快感に着目したこと,本件商品は,「対数螺旋」という曲線を持ったシェードを採用し,この「対数螺旋」により形作られた下3枚のシェードを組み合わせることで,光源のまぶしさ(グレア)から目を守り,さらに,最上部にシェードを1枚追加し,シェード内に小さな反射板を設けることで,シェードの隙間からの眩しさを遮り,できる限り電球のサイズや位置を問わない汎用性をもたせた結果,本件商品は,周辺の人の顔がはっきりと認識できる明るさを保ちつつ,光源のまぶしさ(グレア)による不快感をほぼ完全に排除し,かつ,手元にも必要十分に明るくすることができるようになっていることからすると,本件商標の立体的形状のうち,いずれの構成が欠けても,ランプシェードとしての最適な光のコントロールは得られないから,本件商標の立体的形状は,全ての構成が上記機能を発揮させるために不可欠である。 そうすると,本件商標は,本件商品が当然に備える特徴のみからなる商標であるといえるから,本件商標は,同号に該当する。 したがって,本件審決の上記判断は誤りで 発揮させるために不可欠である。 そうすると,本件商標は,本件商品が当然に備える特徴のみからなる商標であるといえるから,本件商標は,同号に該当する。 したがって,本件審決の上記判断は誤りである。 (2) 被告の主張原告が主張するランプシェードの機能を達成するためには,シェードの枚数,形状,向き又はそれらの組合せなどにおいて複数の選択肢があり,本件商標の立体的形状はその中の一つであるから,本件商標の立体的形状は,上 記機能を発揮させるために不可欠であるとはいえない。 したがって,本件商標が商標法4条1項18号に該当するものではないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について(1) 原告の主張ア前記1(1)アのとおり,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権はヘニングセンに帰属するから,PH5の立体的形状について,商標登録を取得できるのは,ヘニングセン及びその相続人のみであるところ,被告は,商標権の権利承継を証明していないから,被告による本件商標の商標登録出願は,いわば他人の商標の盗用であり,国際信義を著しく損なうものである。 また,PH5の立体的形状は,創作者であるデザイナーのへニングセン及びその相続人によってすら商標登録されておらず,PH5は,イギリスなどヨーロッパ諸国でレプリカが堂々と販売され,世界の市場で商標権のないものとして広く流通し,パブリックドメインとして認識されていることに照らすと,PH5の立体的形状は,国際社会において,商標権を取得できない立体的形状であるといえる。このような立体的形状について,日本のみで,しかも,デザイナーから権利承継もしていない被告の商標として商標登録が H5の立体的形状は,国際社会において,商標権を取得できない立体的形状であるといえる。このような立体的形状について,日本のみで,しかも,デザイナーから権利承継もしていない被告の商標として商標登録が認められることになると,輸入障壁により,健全な競争原理が働かなくなり,「正規品」を購入しなければならない日本国の消費者及び世界各国の事業者に不利益を被らせ,日本国の貿易及び知的財産権に対する信頼を著しく毀損し,国際信義に反する結果となる。 イ被告が指定商品を「照明用器具」から「ランプシェード」に自ら変更した本件商標の出願経過によれば,本件商標の商標権の効力は「ランプシェード」にのみ及び,「照明用器具」に及ばないと解すべきであるのに,被告は,原告及びその関連会社に対し,原告の製造に係る「照明用器具」の 商品等の輸入差止め等を行う目的で本件商標の商標登録を受けたものであるから,被告による本件商標の商標登録出願は,原告を害する目的でされたものである。 ウ以上によれば,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるといえるから,商標法4条1項7号に該当する。 したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 (2) 被告の主張前記1(1)イのとおり,被告とヘニングセンは,1925年(大正14年)から,共同で照明器具を製造販売し,ヘニングセンの死後もその相続人との間で照明器具の販売に関する契約が継続し,これまで被告とヘニングセンの相続人との間で争いとなったことはないから,原告が主張するような被告による本件商標の盗用の事実などない。 また,商標権の効力は,指定商品のみならず,指定商品に類似する商品についても及ぶところ(商標法37条1号),本件商標の指定商品「ランプシェード」は,「照明用器具」を構成する部品であ 事実などない。 また,商標権の効力は,指定商品のみならず,指定商品に類似する商品についても及ぶところ(商標法37条1号),本件商標の指定商品「ランプシェード」は,「照明用器具」を構成する部品であるから,「照明用器具」を類似する商品であり,本件商標の商標権の効力は「照明用器具」に及ぶものである。 したがって,本件商標が商標法4条1項7号に該当するものではないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件商標の商標法3条2項該当性の判断の誤り)について(1) 本件商標の商標法3条1項3号該当性について本件商標は,別紙のとおり,上部に小さな凸部を有する5層構造のランプシェードの立体的形状からなり,上から1層目の円筒状の形状と2層目から5層目が組み合わさった4枚のシェードの形状から構成されたものであり,本件商標の指定商品「ランプシェード」の形状を普通に用いられる方法で表 示したもののみからなる商標であるから,商標法3条1項3号に該当する。 (2) 商標法3条2項該当性についてア認定事実証拠(甲16の1ないし221)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (ア) 本件商品の販売状況被告は,電気器具,照明器具の製造販売等を営むデンマーク国法人である。 被告は,1958年(昭和33年)に,デンマークのデザイナーであるヘニングセンがデザインした商品の販売を開始し,各国の現地法人や販売代理店を通じて,本件商品(「PH5」)を含む,「PHランプ」又は「PHシリーズ」と称される照明用器具の販売を世界的に展開しており,日本においては,遅くとも1976年(昭和51年)頃から2014年(平成26年)までの約40年間にわたり,全国の家具店等で, 」又は「PHシリーズ」と称される照明用器具の販売を世界的に展開しており,日本においては,遅くとも1976年(昭和51年)頃から2014年(平成26年)までの約40年間にわたり,全国の家具店等で,本件商品を継続して販売していた。 1999年(平成11年)から2014年(平成26年)までの間の本件商品の販売台数は,合計7万4627台であり,最近の5年間の販売台数は,2010年(平成22年)が4458台,2011年(平成23年)が4920台,2012年(平成24年)が5062台,2013年(平成25年)が6858台,2014年(平成26年)が7006台である(甲16の217)。 (イ) 本件商品の広告宣伝a 被告の販売代理店の株式会社YAMAGIWA(旧商号「株式会社ヤマギワ」。以下「ヤマギワ」という。)又は被告の子会社のルイスポールセンジャパン株式会社(旧商号「タルジェッティポールセンジャパン株式会社」。以下「被告日本法人」という。)は,19 76年(昭和51年)以降,本件商品がその写真と共に掲載された商品カタログを定期的に作成し,被告の顧客リスト(甲16の157)掲載の全国の建築設計事務所,住宅リフォームメーカー,インテリアコーディネーター,家具・インテリアショップ,プレス等の約5000社(人)(同一法人の重複分を含む。)に配布した。これらの商品カタログの多くでは,本件商品の写真が大きく掲載され,「ルイスポールセン社とヤマギワとの40余年におよぶ世界のベスト&ロングセラー。デザインは名匠・故ポール・ヘニングセン。」(甲16の159),「louispoulsen 近代照明の父と呼ばれるポール・ヘニングセン。彼がデザインしたPHシリーズは,60年以上にわたって世界中で愛用されています。」(甲16の174 。」(甲16の159),「louispoulsen 近代照明の父と呼ばれるポール・ヘニングセン。彼がデザインしたPHシリーズは,60年以上にわたって世界中で愛用されています。」(甲16の174),「PHランプ5 デザイン:ポール・ヘニングセン 1958年発表以来,今日まで衰えない人気を保っているロングセラーで,ヘニングセンの傑作のひとつ」(甲16の184,188)等の記載がされ,本件商品はヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元である旨の説明がされている(甲16の158ないし216)。 b 本件商品の雑誌等の出版物への掲載本件商品は,1990年(平成2年)から2013年(平成25年)ころまでの間に,家具に関する書籍,照明に関する雑誌・カタログ,インテリア雑誌,ファッション雑誌,経済雑誌等の多数の出版物(甲16の2,4ないし63)で紹介されている。 これらの出版物においては,本件商品について,その商品の形態(立体的形状)が認識できるような写真が掲載されると共に,例えば,「PH5…PaulHenningsen/LouisPoulsenLighting,Denmark…PHシリーズ中,住宅用ペ ンダントライトとして最も普及した」(「CONFORTNo.1 04 2008.10」・甲16の2),「1958年 PH5 ルイスポールセン 1874年に創業したデンマークの照明器具メーカー,ルイスポールセンの定番として,世界で50万台を超すセールスを記録しているロングセラー商品。1920年代半ばから当社との協力関係を結んだ気鋭のデザイナー,ポール・ヘニングセンによるデザインで,58年に販売を開始。…以降の照明デザインの歴史を変えた名作とされており,世界中で数多く ー商品。1920年代半ばから当社との協力関係を結んだ気鋭のデザイナー,ポール・ヘニングセンによるデザインで,58年に販売を開始。…以降の照明デザインの歴史を変えた名作とされており,世界中で数多くの模倣品を生んだ。」(「週刊東洋経済 2008 1/12」・甲16の6),「ポール・ヘニングセンは,北欧のデザイナーとして最もよく知られる人物の一人だ。…ルイス・ポールセン社の「PH」と呼ばれる吊り下げ型の照明器具をデザインした。…ペンダント型の照明器具といえば,すぐにヘニングセンのデザインした一連の器具が想起されるほどに,彼のデザインは,世界中で最も長く使われてきている。」(柏木博著「家具のモダンデザイン」・甲16の8),「「近代照明の父」といわれる照明デザイナーの「ポール・ヘニングセン」と深いつながりがある「ルイスポールセン社」…」,「巨匠が到達した理想の光 PH5プラス…「ポール・ヘニングセン」の集大成といえる傑作。」(「最新輸入住宅のインテリアを楽しむ本」・甲16の20),「男の逸品館ルイスポールセン PH5/PH5PLUS…「PH5」は,半世紀近くにわたって家庭用照明の大定番品として,リビングやダイニングを暖かく優雅に照らし続けてきた。」(「特選街 2007.1」・甲16の38),「ルイスポールセン社の顔であり,20世紀を代表する傑作照明を手がけたデザイナーが,ポール・ヘニングセンである。…<PH5>は,まずデンマーク本国で人気を集め,国民的ランプと称されるようになった。そして今では,世界中で愛用されるようになっ たのだ。」(「Safari 2007.2」・甲16の40)などの説明がされていた。 (ウ) 受賞歴等a 本件商品のシリーズ商品「PH5プラス」は,「1958年に発表された同社PH5のコンセプト のだ。」(「Safari 2007.2」・甲16の40)などの説明がされていた。 (ウ) 受賞歴等a 本件商品のシリーズ商品「PH5プラス」は,「1958年に発表された同社PH5のコンセプトを受け継ぎ…開発されたライト。…名作といわれる器具の形を変えることなく内部構造の見直しを図り,より適応性の高い商品に仕上げたことが評価された」として,平成9年度通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞インテリア用品部門を受賞した(甲16の3)。 b 本件商品ないしそのシリーズ商品は,文部科学大臣が認可した教科書「美術2・3上生活の中に生きる美術」(平成24年1月15日発行。甲16の1)において,「時代の流れの中で変化するデザイン」の見出しの下に,PHランプの写真と共に,「1925 PHランプ…ポール・ヘニングセン」として,「高等学校芸術科工芸Ⅰ」(平成24年3月5日検定済。甲16の1)において,本件商品の写真と共に,「モダンデザインの代表的ペンダント PH5…ポール・ヘニングセン」として掲載された。 イ検討前記アの認定事実を総合すると,ヘニングセンがデザインした本件商品の立体的形状は,被告による本件商品の販売が日本で開始された1976年(昭和51年)当時,独自の特徴を有しており,しかも,本件商品が上記販売開始後本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において継続して販売され,この間本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰 り返し行われた結果,本件商標の登録出願時までには,本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具, 告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰 り返し行われた結果,本件商標の登録出願時までには,本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリアの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,本件商品の立体的形状は,周知著名となり,自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。 そうすると,本件商品の立体的形状である本件商標が本件商品に長年使用された結果,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録審決日・平成27年12月15日)において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,本件商標は,商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するものと認められる。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件商品(「PH5」)は,デンマークのデザイナーであるヘニングセンがデザインした商品として,宣伝され,評価され,販売されてきたものであるから,PH5の立体的形状である本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできない旨主張する。 しかしながら,前記(2)イ認定のとおり,被告は1976年(昭和51年)から本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において本件商品を継続して販売し,その間,本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり ら本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において本件商品を継続して販売し,その間,本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰 り返し行われてきたことに照らすと,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権は,ヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない,PH5のデザインは,外国において商標登録されておらず,知的財産権の権利者が死亡し,パブリックドメインとなっているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべきである旨主張する。 しかしながら,商標法3条2項は,同条1項3号から5号までに該当する商標であっても,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については,商標登録を受けることができる旨を定めたものであるところ,原告の上記主張は,同条2項の文言の解釈に基づかないものであるから,その主張自体理由がないというべきである。 (4) 小括以上によれば,本件商標が商標法3条2項の要件を具備するものであるとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商 きである。 (4) 小括以上によれば,本件商標が商標法3条2項の要件を具備するものであるとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項18号該当性の判断の誤り)について(1) 原告は,本件商標の立体的形状のうち,いずれの構成が欠けても,ランプシェードとしての最適な光のコントロールは得られないから,本件商標の立体的形状は,全ての構成がランプシェードの機能(「周辺の人の顔がはっきりと認識できる明るさを保ちつつ,光源のまぶしさによる不快感をほぼ完全 に排除し,手元にも必要十分に明るくすることができるという機能」)を発揮させるために不可欠であることからすると,本件商標は,本件商品が当然に備える特徴のみからなる商標であるといえるから,本件商標は,商標法4条1項18号に該当する旨主張する。 しかしながら,本件商標は,別紙のとおり,上部に小さな凸部を有する5層構造のランプシェードの立体的形状からなり,上から1層目の円筒状の形状と2層目から5層目が組み合わさった4枚のシェードの形状から構成されたものであるところ,原告主張の上記機能を発揮するためのランプシェードの立体的形状は,シェードの枚数,形状,向き又はそれらの組合せなどにおいて本件商標の立体的形状以外にも様々な構成を採り得ることは明らかであるから,本件商標の立体的形状は,上記機能を発揮させるために不可欠な形状であると認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (2) 以上によれば,本件商標が商標法4条1項18号に該当するものではないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について 標が商標法4条1項18号に該当するものではないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について(1) 原告は,①PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権はヘニングセンに帰属するから,PH5の立体的形状について,商標登録を取得できるのは,ヘニングセン及びその相続人のみであるところ,被告は,商標権の権利承継を証明していないから,被告による本件商標の商標登録出願は,いわば他人の商標の盗用であり,国際信義を著しく損なうものであること,②PH5の立体的形状は,創作者であるデザイナーのへニングセン及びその相続人によってすら商標登録されておらず,PH5は,イギリスなどヨーロッパ諸国でレプリカが堂々と販売され,世界の市場で商標権のないものとして広く流通し,パブリックドメインとして認識されていることに照らすと,PH5の立 体的形状は,国際社会において,商標権を取得できない立体的形状であるといえるのに,このような立体的形状について,日本のみで,しかも,デザイナーから権利承継もしていない被告の商標として商標登録が認められることになると,輸入障壁により,健全な競争原理が働かなくなり,「正規品」を購入しなければならない日本国の消費者及び世界各国の事業者に不利益を被らせ,日本国の貿易及び知的財産権に対する信頼を著しく毀損し,国際信義に反する結果となること,③被告が指定商品を「照明用器具」から「ランプシェード」に自ら変更した本件商標の出願経過によれば,本件商標の商標権の効力は「ランプシェード」にのみ及び,「照明用器具」に及ばないと解すべきであるのに,被告は,原告及びその関連会社に対し,原告の製造に係る「照明用器具」の商品等の輸入差止め等を行う目的で本 の商標権の効力は「ランプシェード」にのみ及び,「照明用器具」に及ばないと解すべきであるのに,被告は,原告及びその関連会社に対し,原告の製造に係る「照明用器具」の商品等の輸入差止め等を行う目的で本件商標の商標登録を受けたものであるから,被告による本件商標の商標登録出願は,原告を害する目的でされたものであること,以上の①ないし③によれば,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるといえるから,商標法4条1項7号に該当する旨主張する。 しかしながら,商標法上,他人の著作権と抵触する商標について,商標登録を受けることができない旨を定めた規定は存在しない。一方で,商標権と著作権が抵触する場合の規律に関し,同法29条は,商標権者は,指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願前に生じた他人の著作権又は著作隣接権と抵触するときは,指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により使用することができない旨を定めており,同条の規定は,他人の著作権と登録商標が抵触する場合があることを前提とするものであるから,商標法上,他人の著作物について商標登録出願を行うことを禁止するものではないものと解される。 そうすると,仮にPH5の立体的形状について本件商標の登録出願日前にヘニングセンの著作権が成立していたとしても,商標法上,PH5の立体的 形状についてヘニングセン以外の第三者が商標登録出願を行うことが禁止されるものではないから,PH5の立体的形状について商標登録を取得できるのは,ヘニングセン及びその相続人のみであることを前提とする原告の上記①及び②の主張は,その前提において,採用することができない。 また,仮にPH5の立体的形状が外国で商標登録されていないとしても,外国で ニングセン及びその相続人のみであることを前提とする原告の上記①及び②の主張は,その前提において,採用することができない。 また,仮にPH5の立体的形状が外国で商標登録されていないとしても,外国で商標登録されていない立体的形状について,日本において商標登録出願をし,その商標登録を受けることが直ちに国際信義に反するものとはいえないから,この点においても,原告の上記②の主張は理由がない。 さらに,指定商品に類似する商品についての登録商標又はこれに類似する商標の使用は,当該登録商標の商標権の侵害とみなされ(同法37条1号),指定商品に類似する商品についても商標権の禁止権が及ぶこと,被告は,被告の業務を表示するものとして周知著名な商品等表示に当たるものと自ら認識していた本件商品の立体的形状(本件商標)について商標登録出願をし,本件商標の商標登録を受けた後,平成28年9月2日付けで,関税法69条の13第1項に基づき,東京税関長に対し,「侵害すると認める物品」を本件商標又はこれに類似する商標を付した電球及び照明用器具類,「予想される輸入者」を原告として,輸入差止めの申立てをしたこと(甲7,19)に照らすと,本件商標の出願経過において,被告が指定商品を「ランプシェード」に補正した経過があること(甲15)を勘案しても,被告が原告の製造に係る「照明用器具」の商品等の輸入差止め等を行う目的で本件商標の商標登録出願を行ったことは,社会的相当性を欠くものとはいえないから,原告の上記③の主張は理由がない。 以上のとおり,原告の上記①ないし③の主張はいずれも理由がないから,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるとの原告の主張は採用することができない。 (2) 以上によれば,本件商標が商標法4条1項7号に該当するものではないと いから,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるとの原告の主張は採用することができない。以上によれば,本件商標が商標法4条1項7号に該当するものではないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は理由がない。 4 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官國分隆文 裁判官筈井卓矢 (別紙) 第1/6図 第2/6図 第3/6図 第4/6図 第5/6図 第6/6図

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