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昭和39(く)3 勾留の裁判に対する抗告申立事件

裁判所

昭和39年2月15日 大阪高等裁判所

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2,823 文字

主文 昭和39年1月13日京都地方裁判所が為したAに対する勾留を取消す。理由 本件抗告の趣意は、被告人Aは昭和38年11月14日売春防止法第10条違反の公訴事実につき、京都地方裁判所に公訴を提起され、同裁判所は同年12月23日右事件に対する公判審理を終り、同39年1月13日午前10時過ぎ被告人を懲役8月に処する旨の判決言渡をしたところ、被告人は言渡後ただちに右判決に対する控訴の申立をした。しかるに同裁判所は控訴申立後である同日午後1時30分被告人に対し勾留状を発付して被告人を勾留した。しかしながら元来裁判所の被告人に対する勾留の権限は当該事件に関する終局判決の言渡と同時に失われると解すべきであるのみならず、本件の場合被告人の控訴により本案事件は上級審に移審しているのであるから、原裁判所に被告人を勾留する権限のないことは明白である。従つて前記勾留の裁判は違法であつて取消を免れないというのである。調査するにAに対する売春防止法違反被告事件は昭和38年11月14日京都地方裁判所に公訴を提起され右事件はその担当裁判官である渡辺常造により審理され、同年12月23日公判審理を終結し昭和39年1月13日午前10時過頃(10時10分頃)被告人を懲役8月に処する判決言渡がなされたこと。右判決言渡に立ち会つていた同被告人の弁護人石山豊太郎は予め必要事項を毛筆で記載して置いた控訴申立書(用紙)を判決言渡直後、法廷内において被告人に示した上これに署名指印させることにより右申立書を完成して直ちにこれを同裁判所刑事訟廷事務室受付係に提出し即刻受理されたこと。被告人は当時別個の犯罪により受刑服役中であつたので右判決言渡後京都刑務所へ帰所したが、同日正午頃検察官から裁判所に対しAに対する勾留請求が為されたので被告人は再び京都刑務所から 即刻受理されたこと。被告人は当時別個の犯罪により受刑服役中であつたので右判決言渡後京都刑務所へ帰所したが、同日正午頃検察官から裁判所に対しAに対する勾留請求が為されたので被告人は再び京都刑務所から裁判所まで護送され、同裁判所法廷において裁判官渡辺常造は被告人に対する勾留質問等刑事訴訟法61条所定の手続を行つた後、前記売春防止法違反被告事件の公訴事実を被疑事実として被告人に逃亡の虞れがあるという理由で勾留状を発付し、被告人は昭和39年1月21日に前記別件犯罪の刑期が満了した後も右勾留状の効力に基き身柄の拘束を受けていること。 判所に対しAに対する勾留請求が為されたので被告人は再び京都刑務所から裁判所まで護送され、同裁判所法廷において裁判官渡辺常造は被告人に対する勾留質問等刑事訴訟法61条所定の手続を行つた後、前記売春防止法違反被告事件の公訴事実を被疑事実として被告人に逃亡の虞れがあるという理由で勾留状を発付し、被告人は昭和39年1月21日に前記別件犯罪の刑期が満了した後も右勾留状の効力に基き身柄の拘束を受けていること。以上の事実は本案被告事件記録及び抗告事件記録並びに当裁判所の事実取調の結果を綜合して疏明が十分である。そこで右のように本案事件に関する判決言渡後、しかも右判決に対する控訴申立がなされた後、被告人を右事件につき新たに勾留することが許されるかどうかを考えて見る。刑事訴訟法97条1項は「上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないものについて勾留の期間を更新し、勾留を取消し又は保釈、若しくは勾留の執行停止をし若しくはこれを取り消すべき場合には原裁判所がその決定をしなければならない。」と規定し、同条2項は「上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて前項の決定をすべき裁判所は裁判所の規則の定めるところによる。」とし、刑事訴訟規則92条2項によれば、右刑事訴訟法97条2項の場合には、勾留の期間を更新し勾留を取消し又は保釈若しくは勾留の執行を停止し若しくはこれを取消すべき裁判所は原裁判所である旨規定している。上訴提起期間内でまだ上訴の提起のない事件の場合はしばらくおき、上訴の提起のあつた事件につき右のような規定の設けられた趣旨を考えて見ると、元来事件につき上訴の提起があつた場合には、事件はこれにより 上訴提起期間内でまだ上訴の提起のない事件の場合はしばらくおき、上訴の提起のあつた事件につき右のような規定の設けられた趣旨を考えて見ると、元来事件につき上訴の提起があつた場合には、事件はこれにより上訴審に移審し、上訴審に係属するに至るものであるから、原裁判所は理論上事件について何等の処分権限をもたないといわなければならないのであるが、上訴の提起のあつた時から事件記録が上訴審に送付され到達するまでに相当の日時を要するので、現に勾留状の発せられている被告人について右規則所定の如き処分を必要とする場合、未だ事件記録の送付されていない上訴審でこれを決定しなくてはならないとすると極めて不便でもあり、又被告人の利益にもそわぬところであるし、これ等の処分がすべて既になされている勾留に関する残務整理的または応急的措置にとどまるところから、事件記録が現存している原裁判所に特に決定権限を認め専ら実務上の便益をはかるためにこれ等の規定が設けられたものと解すべきである。 ついて右規則所定の如き処分を必要とする場合、未だ事件記録の送付されていない上訴審でこれを決定しなくてはならないとすると極めて不便でもあり、又被告人の利益にもそわぬところであるし、これ等の処分がすべて既になされている勾留に関する残務整理的または応急的措置にとどまるところから、事件記録が現存している原裁判所に特に決定権限を認め専ら実務上の便益をはかるためにこれ等の規定が設けられたものと解すべきである。従て原裁判所に認められる処分権限は右刑事訴訟法第97条2項、刑事訴訟規則92条2項に明文を以て定められている事項に限定さるべきことは当然のことであり、それ以外の処分事項はすべて上訴裁判所の権限に属し原裁判所には何等の権限はないものといわねばならない。原審において勾留されなかつた被告人を新しく勾留することも右法条にこれを許容する明文のない以上同様に解すべきは当然である。然るに原裁判所が本件につき判決言渡後被告人より控訴の提起があつた後、前示の如く被告人に対し勾留手続をとり新たに勾留処分に付したことは、前段説示の理由によりその失当なること明白であるから、被告人Aに対する本件勾留は取り消しをまぬがれない。よつて刑事訴訟法426条2項を適用し主文の如く決定する。(裁判長裁判官山田近之助裁 、前段説示の理由によりその失当なること明白であるから、被告人Aに対する本件勾留は取り消しをまぬがれない。よつて刑事訴訟法426条2項を適用し主文の如く決定する。(裁判長裁判官山田近之助裁判官石原武夫裁判官原田修)

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