平成13年(ワ)第109号損害賠償請求事件判決 主文 1 被告Aは,原告Bに対し,3156万6944円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Aは,原告Cに対し,1578万3472円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Aは,原告Dに対し,1578万3472円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告H保険株式会社は,原告Bに対し,原告Bの被告Aに対する第1項の判決が確定したときは,被告Aと連帯して,3156万6944円及びこれに対する同判決確定の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告H保険株式会社は,原告Cに対し,原告Cの被告Aに対する第2項の判決が確定したときは,被告Aと連帯して,1578万3472円及びこれに対する同判決確定の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告H保険株式会社は,原告Dに対し,原告Dの被告Aに対する第3項の判決が確定したときは,被告Aと連帯して,1578万3472円及びこれに対する同判決確定の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は,原告Bと被告らとの間においては,原告Bに生じた費用の2分の1を被告らの連帯負担,その余は各自の負担とし,原告Cと被告らとの間においては,原告Cに生じた費用の2分の1を被告らの連帯負担,その余は各自の負担とし,原告Dと被告らとの間においては,原告Dに生じた費用の2分の1を被告らの連帯負担,その余は各自の負担とする。 9 この判決は 告Cに生じた費用の2分の1を被告らの連帯負担,その余は各自の負担とし,原告Dと被告らとの間においては,原告Dに生じた費用の2分の1を被告らの連帯負担,その余は各自の負担とする。 9 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Aは,原告Bに対し,4676万3142円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Aは,原告Cに対し,2338万1571円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Aは,原告Dに対し,2338万1571円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告H保険株式会社は,原告Bに対し,原告Bの被告Aに対する第1項の判決が確定したときは,被告Aと連帯して,4676万3142円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告H保険株式会社は,原告Cに対し,原告Cの被告Aに対する第2項の判決が確定したときは,被告Aと連帯して,2338万1571円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告H保険株式会社は,原告Dに対し,原告Dの被告Aに対する第3項の判決が確定したときは,被告Aと連帯して,2338万1571円及びこれに対する平成12年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,自動車事故の被害者が,加害者に対し自動車損害賠償保障法3条に基づく損害賠償を求めるとともに,加害者が保険契約を締結していた保険会社に対しても,加害者に対する判決の確定を停止条件として,保険金の支払を求 事故の被害者が,加害者に対し自動車損害賠償保障法3条に基づく損害賠償を求めるとともに,加害者が保険契約を締結していた保険会社に対しても,加害者に対する判決の確定を停止条件として,保険金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実(1) E(昭和18年9月22日生以下「E」という。)は,昭和41年3月25日,金沢大学教育学部を卒業した後,昭和45年4月1日から富山県東砺波郡a町の職員として勤務していた者であり,下記のとおり経歴を重ねていた。なお,原告B(以下「原告B」という。)はEの妻,原告C(以下「原告C」という。)及び原告D(以下「原告D」という。)は,いずれもEの子である。 昭和45年4月1日 a町職員として採用建築課に配属昭和50年1月1日保健衛生課国民健康保険係長昭和52年4月1日水道課業務係長昭和54年5月9日自治大学校公営企業専門課程第21期生として派遣昭和54年5月10日から昭和54年6月6日まで昭和58年4月1日都市振興課課長補佐昭和60年4月1日砺波水道企業団工務課長昭和62年4月1日都市開発課主幹昭和63年4月1日教育委員会総務課長平成 3年4月1日税務課長平成10年4月1日総務課長(2) 平成12年1月19日午後11時04分ころ,Eは,富山県東砺波郡a町bde番地,f番地h付近先の,押ボタン式の信号機が設置された横断歩道を横断中,被告A(以下「被告A」という。)が運転する普通乗用自動車に跳ねられた(以下,この事故を「本件事故」という。)。 (3) Eは,本件事故により,脳幹挫傷,頭蓋底骨折の傷害を負い,砺波総合病院に入院して治療を受けたが,平成12年1月20日,上記傷害が原因で死亡した。 (4 下,この事故を「本件事故」という。)。 (3) Eは,本件事故により,脳幹挫傷,頭蓋底骨折の傷害を負い,砺波総合病院に入院して治療を受けたが,平成12年1月20日,上記傷害が原因で死亡した。 (4) 被告Aは,本件事故当時,被告H保険株式会社(以下「被告H」という。)との間で,被告Hを保険者とし,被告A運転の上記自動車を保険対象車両,保険期間を平成11年8月19日から平成12年8月19日まで,対人賠償保険金額を無制限とする対人賠償保険付自動車保険を締結していた。同契約の約款には,以下のような条項があり,被告Aは被保険者に該当する。 ① 対人事故によって被保険者の負担とする法律上の損害賠償請求権が発生した場合で,被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償の額について,被保険者と損害賠償請求権者との間で,判決が確定したとき又は裁判上の和解若しくは調停が成立したときに該当するときは,損害賠償請求権者は,保険者が被保険者に対して填補責任を負う限度において,保険者に対し損害賠償額の支払を請求することができる。 ② 保険者は,損害賠償請求権者から,前項の規定により損害賠償額の支払請求があったときは,被保険者に対して支払うべき保険金の額を限度として,損害賠償請求権者に対して損害賠償額を支払う。 (5) 本件事故後,本件事故による損害について,原告らは自動車損害賠償責任保険により3000万7000円の支払を受けたほか,被告Hから砺波総合病院へ,Eの治療費41万8390円が支払われた。 2 争点(1) 本件事故につき,Eに過失があったか。(過失相殺の有無,割合)(被告らの主張)Eは,酔余赤信号で幹線道路を横断したものであり,過失相殺率は70%が相当である。 (原告らの主張)Eは青信号で横断歩道を横断しており, (過失相殺の有無,割合)(被告らの主張)Eは,酔余赤信号で幹線道路を横断したものであり,過失相殺率は70%が相当である。 (原告らの主張)Eは青信号で横断歩道を横断しており,Eに過失はない。 (2) 本件事故によりEが被った損害。(被告らが賠償すべき金額)(原告らの主張)別紙1(省略)のとおりであり,被告らは,総額9352万6284円を賠償すべきである。 なお,Eは,将来a町の収入役となることが予定されていたから,逸失利益については,平成16年3月31日までは同町職員として勤務した後,同年4月1日から70歳になる平成25年9月22日まで同町の収入役として勤務したものとして算定すべきである。また,慰謝料については,Eが一家の支柱であって父,義母,祖母の3名の高齢者を扶養していたこと,これら3名は自ら訴訟を提起して損害賠償請求をすることが著しく困難であること,今後は原告らが上記3名を扶養していく必要があること,を考慮すべきである。 (被告らの主張)収入役の選任には議会の同意が必要であって,Eが収入役となることが確実とはいえないから,収入役になることを前提とした逸失利益の主張は根拠がない。逸失利益の算定は,定年時までは平成12年の収入951万5340円を基準に,その後は67歳時まで平成12年賃金センサス(平成12年産業計・企業規模計大卒60歳~64歳)による699万0900円を基準に,それぞれライプニッツ方式により中間利息を控除した上,生活費控除割合を40%として,次のとおり算定すべきであり,その総額は4243万0280円となる。また,慰謝料は2400万円を超えることはなく,葬儀費用は120万円が相当である。 定年退職時(平成16年3月31日)までの逸失利益9,515,3 243万0280円となる。また,慰謝料は2400万円を超えることはなく,葬儀費用は120万円が相当である。 定年退職時(平成16年3月31日)までの逸失利益9,515,340×(1-0.4)×3.5459=20,244,266(円)定年退職後満67歳までの逸失利益6,990,900×(1-0.4)×4.7605=19,968,107(円)退職金(平成16年3月)の逸失利益4,493,148×(1-0.4)×0.8227=2,217,907(円)第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 別紙2(省略)は,平成12年1月19日午後11時45分から同月20日午前0時55分まで,被告A立会のもとに行われた実況見分の結果を記録した実況見分調書添付の図面の写しである。本件事故の態様は,概ね同図面に記載されたとおりであり,被告Aは,b方向からg町方向へ普通乗用自動車を運転して時速約50㎞で進行中,本件事故現場付近にさしかかり,②地点付近まで来たとき<ア>地点にEの姿を認めて急ブレーキをかけたが間に合わず,衝突し,さらにEを<イ>地点まで引きずった末に,③地点でようやく停止したものと認められる。なお,本件事故現場付近は時速40㎞に速度制限されていた。また,本件事故時の天候は雨であった。(乙1の4,30,31,37,38,被告A)(2) ところで,被告Aは,本件事故の際の進行方向前方の信号機の表示の点について,本件事故後行われた警察官や検察官の取調べに対し,「青色の表示だったように思います」(乙1の30),(衝突地点の3,40m手前では)「ぼんやりと丸い青色の光が前方にあるのが私の視界に入っていた感じでした」(乙1の37),(衝突地点の3,40m手前では)「 表示だったように思います」(乙1の30),(衝突地点の3,40m手前では)「ぼんやりと丸い青色の光が前方にあるのが私の視界に入っていた感じでした」(乙1の37),(衝突地点の3,40m手前では)「青色のような感じでした。」「青色表示ではなかったかと思います。」(乙1の38)などと供述しており,本訴訟の被告本人尋問においてもこれらとほぼ同様の供述をしている。しかし,(1)記載の事故態様から明らかなとおり,被告AはEを目前にするまで発見しておらず,前方を注視していなかったものと認められ,また,被告A自身,信号機の表示が青色だったと断定しているわけでもない。他方,Eは,几帳面な性格であり,a町の交通安全対策協議会の委員等を務めるなど,日ごろから交通安全に対して気をつける立場にあり(証人F,原告B),日ごろ信号無視をすることが多かったといった事情はうかがわれない。そうすると,この日Eが酒を飲んで帰宅中であり,Eの血液1ml中に1.5mgのアルコールの含有が認められたこと(乙1の15,16,25,証人F)を考慮しても,Eが赤信号で横断をしていたとの事実を認めることはできず,被告らの過失相殺の主張は認められない。なお,被告Aの過失は,上記のとおり前方不注視の事実があることから明らかである。 2 争点(2)について(1) 証拠等により,次のとおり算定する。 ア治療費 41万8390円(争いがない。)イ文書料 7000円(争いがない。)ウ葬儀費用 120万0000円(甲14ないし16及び原告Bによれば,広義の葬儀費用として250万円の支出がなされた事実が認められるが,うち135万3000円は香典返しの費用である(原告B)ところ,香典を損益相殺の対象としないこととの対比からも,一般に香典返しの費用を の葬儀費用として250万円の支出がなされた事実が認められるが,うち135万3000円は香典返しの費用である(原告B)ところ,香典を損益相殺の対象としないこととの対比からも,一般に香典返しの費用を事故による損害と認めることは相当とはいえず,250万円のほかにも葬儀のために支出された費用がある(原告B)ことを考慮しても,損害額として認めるべき金額は,120万円が相当である。)エ逸失利益 6093万3889円(ア) 地方自治法上,収入役の選任は普通地方公共団体の長が議会の同意を得て行うものとされている(地方自治法168条7項,162条)。しかし,a町においては,この30年近くの間で収入役となった者は,1名を除きすべて総務課長からの昇任であり,逆に総務課長を経験しながら収入役に就任できなかった者はEのほかにはない(甲11,証人F)。また,Eが総務課長として取り立てて問題があったわけでもない(原告B)。そうすると,Eは,本件事故に遭わなければ,少なくとも定年退職する直後の平成16年4月1日から平成20年3月31日までの1期4年間(地方自治法168条7項,163条)は,収入役を務めた可能性が高く,それを前提にEの逸失利益を算定するのが相当である。この点,現収入役の任期は平成14年3月19日までであり,再任されれば,平成18年3月19日までが次の任期となるから,上記のとおりEが定年退職後に収入役に選任されるとすると現収入役が任期途中で収入役から退くことになるが,過去の例をみても昭和57年に収入役になったG,昭和60年に収入役となったFは,いずれも任期途中に収入役から助役に昇任しており,収入役としての任期を全うしているわけではないから,上記認定が不合理とはいえない。他方,Eが4年を超えて収入役を務めたとすることも,過去の ったFは,いずれも任期途中に収入役から助役に昇任しており,収入役としての任期を全うしているわけではないから,上記認定が不合理とはいえない。他方,Eが4年を超えて収入役を務めたとすることも,過去の例からいってもそのような可能性が高いとはいえず(昭和53年に収入役となったIは1期4年間しか務めておらず,その後昭和57年に収入役となったGは1期目の任期途中で助役に昇任している。),認められない。 なお,本件事故に遭わなかった場合の平成12年1月21日から同年3月31日までの分の給与を100万6702円(当時の1か月分の給与を46万9600円,平成12年1月分の給与として既に受け取った分を40万2098円として算定。),平成12年4月1日から平成16年3月31日まで総務課長として務めた場合の収入を年額959万1720円,平成16年4月1日から平成20年3月31日まで収入役として務めた場合の収入を年額1056万4800円,平成16年3月31日に課長を定年退職した場合の退職金を2913万3060円,本件事故により死亡したために実際に受け取った退職金を2463万9912円,平成20年3月31日に収入役を退いた場合の退職金を620万円(620,000×250/100×4)と認め(甲11,弁論の全趣旨),この間の生活費控除割合については,後述のとおり,Eが3人の高齢者も扶養していたことを考えると,30%にとどめるのが相当である。 (イ) また,Eは,平成20年4月1日以降も,3年間は,被告が主張する年間699万0900円程度の収入を得ることができたと考えられ,生活費控除割合はこの間についても30%とするのが相当である。 (ウ) 以上を前提に,Eの逸失利益についてライプニッツ方式により年5分の割合による中間利息を控除して死亡時における現価として算 られ,生活費控除割合はこの間についても30%とするのが相当である。 (ウ) 以上を前提に,Eの逸失利益についてライプニッツ方式により年5分の割合による中間利息を控除して死亡時における現価として算定すると,次のとおり,総額6093万3889円となる。 a 平成12年1月21日~同年3月31日100万6702円(469,600×3-402,098)b 平成12年4月1日~平成16年3月31日2380万7895円(9,591,720×3.5459×0.7)c 平成16年4月1日~平成20年3月31日2157万4483円(10,564,800×(6.4632-3.5459)×0.7)d 平成20年4月1日~平成23年3月31日901万9938円(6,990,900×(8.3064-6.4632)×0.7)e 総務課長を定年退職した場合の退職金差額258万7559円((29,133,060-24,639,912)×0.8227×0.7)f 収入役を務めた場合の退職金293万7312円(6,200,000×0.6768×0.7)オ慰謝料 2600万円本件事故当時,Eは,デイケアに通う父と軽い知的障害のあるその後妻,老人保健施設に入っていた祖母の3名を扶養していた事実並びにEの死後は,原告ら特に原告B及び原告Cが上記3名の扶養をしていく必要がある事実が認められる(甲3,4,6ないし8,11,原告B)。 しかし,かかる事実をもって,E自身の慰謝料を算定するに際しこれを増額すべき事由として格別重視するこ 告Cが上記3名の扶養をしていく必要がある事実が認められる(甲3,4,6ないし8,11,原告B)。 しかし,かかる事実をもって,E自身の慰謝料を算定するに際しこれを増額すべき事由として格別重視することは相当でない。 カ以上の総額(ア+イ+ウ+エ+オ) 8855万9279円キ既払額 3042万5390円(30,007,000+418,390)ク既払額控除後の残額(カ-キ) 5813万3889円ケ弁護士費用 500万円本件事案の内容及び弁護士費用以外の認容額を考慮して算定。 コ被告AがEに対して負うべき損害賠償額総額(ク+ケ)6313万3889円サ相続により原告らが請求し得る金額原告B 3156万6944円原告C 1578万3472円原告D 1578万3472円第4 結論以上のとおりであるから,被告Aに対しては,原告Bは3156万6944円及び本件事故によりEが死亡した平成12年1月20日以降民法所定の年5分の割合による遅延損害金,原告C及び原告Dは各1578万3472円及び上記同様の遅延損害金の支払を求めることができる。また,原告らは,被告Hに対しても,被告Aに対する判決の確定を停止条件として,上記同様の各金額の支払を求めることができるが,遅延損害金の起算日は,被告Aに対する判決が確定する日(その前日が経過することにより判決が確定する日)となる。 富山地方裁判所高岡支部裁判官村瀬賢裕
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