- 1 -主文本件上告を棄却する。 理由 弁護人真木幸夫の上告趣意のうち,違憲をいう点は,実質は単なる法令違反の主張であり,その余は,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 所論にかんがみ,職権で判断する。 原判決の是認する第1審判決によれば,本件は,被告人が,窃盗7件と強姦未遂2件(窃盗のうち6件と強姦未遂のうち1件は住居侵入を伴うもの)等に及んだ事案である。 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)により窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役」から「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に変更され,同法は本件の第1審判決後で原判決前である平成18年5月28日から施行されたが,同法は上記改正部分につき経過規定を置いていない。 そうすると,上記各事実のうち窃盗罪については,原判決の時点で,刑訴法383条2号所定の「刑の変更」があったとみられる。そして,同法397条1項は同法383条所定の事由があるときは,第1審判決を破棄すべきものと定めている。 しかしながら,上記法改正の内容をみると,懲役刑の刑期には変更が加えられておらず,選択刑として50万円以下の罰金刑が追加されたにとどまるところ,その改正の趣旨は,従来,法定刑が懲役刑に限られていた窃盗罪について,罰金刑の選択を可能として,比較的軽微な事案に対しても適正な科刑の実現を図ることにあり,これまで懲役刑が科されてきた事案の処理に広く影響を与えることを意図する- 2 -ものとは解されない。このような法改正の内容,趣旨にかんがみると,当該窃盗罪の犯情,第1審判決が併せて認定した刑の変更のない他の犯罪の有無及びその内容等に照らし,上記法改正との関係からは第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかである場合には,刑訴法397条1項 の犯情,第1審判決が併せて認定した刑の変更のない他の犯罪の有無及びその内容等に照らし,上記法改正との関係からは第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかである場合には,刑訴法397条1項により破棄すべき「刑の変更」には当たらず,第1審判決を破棄する必要はないと解するのが相当である。 そうすると,本件は,第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかな事案であって,第1審判決を破棄する必要がない場合に当たるというべきであるから,刑訴法383条2号の刑の変更があったと認めつつ,第1審判決を破棄しなかった原判断の結論は相当である。 よって,同法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官那須弘平裁判官上田豊三裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男)
▼ クリックして全文を表示