令和5(ネ)10037 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月6日 知的財産高等裁判所 2部 判決 原判決変更 東京地方裁判所 平成30(ワ)28931
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判決文本文41,767 文字)

- 1 -令和6年3月6日判決言渡令和5年(ネ)第10037号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第28931号)口頭弁論終結日令和5年12月12日判決 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 (1) 被告は原告に対し、1億3684万円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合 による金員を支払え。 (2) 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 2 原告の当審における追加請求を棄却する。 3 被告の本件控訴を棄却する。 4 訴訟費用は第1、2審を通じ、これを10分し、その9を 原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、1項(1)に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従うものとし、その具体的な内容は別紙用語略称一覧表記載のとおりである。また、原判決 の引用部分(補正後のものも含む。)中の「別紙」のうち、特に指定のないものは全て「原判決別紙」を指す。 第1 控訴の趣旨 1 原告の控訴の趣旨(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 被告は、原判決別紙対象製品目録記載の各製品(各対象製品)を製造し、使 - 2 -用し、譲渡し、貸し渡し若しくは輸出し、又は、譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 (3) 被告は、原判決別紙対象製品目録記載の各製品(各対象製品)を廃棄せよ。 (4) 被告は、原告に対し、12億円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 別紙対象製品目録記載の各製品(各対象製品)を廃棄せよ。 (4) 被告は、原告に対し、12億円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 訴訟費用は第1、2審とも被告の負担とする。 (6) 仮執行宣言 2 被告の控訴の趣旨(1) 原判決中被告敗訴部分を取り消す。 (2) 上記部分に係る原告の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は、第1、2審とも原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、発明の名称を「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」とする本件特許(特許第4509578号)に係る本件特許権の特許権者である原告が、各対象製品は 本件特許に係る発明の技術的範囲に属しており、被告による各対象製品の製造、輸出等が本件特許権の侵害行為に当たると主張して、特許法100条1項及び2項に基づき、各対象製品の製造等の差止め及び廃棄を求めるとともに、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求の一部請求として、被告に対し、24億円及びうち21億円に対する不法行為の後の日である平成30年11月1日 から、うち3億円に対する不法行為の後の日である令和2年2月1日から支払済みまで平成29年法律第44号附則17条3項又は15条1項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における同法による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金の支払を求める事案である。 原判決は、被告による対象製品1(2)Bの製造、販売等が本件特許権の侵害に当た - 3 -るとして、原告の請求を、被告に対し、1億3116万1399円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による遅 (2)Bの製造、販売等が本件特許権の侵害に当た - 3 -るとして、原告の請求を、被告に対し、1億3116万1399円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認め、その余の請求をいずれも棄却した。 原告は、原判決中の原告敗訴部分(ただし、被告に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求のうち12億円を超える部分を棄却した部分を除く。)について控訴 し、被告も被告敗訴部分について控訴した。 原告は、当審において、損害賠償請求及び不当利得返還請求の対象期間を令和4年6月30日まで拡張し、同日における被告によるML300PlusX(対象製品1(2)A)1台の販売が不法行為又は不当利得行為であることを理由とする請求を追加した(ただし、請求額に変更はない。)。 なお、被告が、控訴理由書(1)、(4)及び(7)に記載した共同出願違反を理由とする無効の抗弁、乙223(国際公開第02/22301号)に基づく進歩性欠如を理由とする無効の抗弁は、いずれも、時機に後れた攻撃防御方法であるとして民事訴訟法297条、157条1項により却下されているため、当審における争点とはならない。 2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張当審における当事者の主張を踏まえ、以下のとおり原判決を補正し、後記3において当審における当事者の追加及び補充主張を補足するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決3頁19行目から46頁11行目まで)に記載するとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)(1) 4頁3行目の「本件特許権」の次に「(請求項の数14)」を加える。 (2) 7頁25行目の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● るから、これを引用する。 (原判決の補正)(1) 4頁3行目の「本件特許権」の次に「(請求項の数14)」を加える。 (2) 7頁25行目の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●● - 4 -(3) 8頁3行目の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●14行目の「原告の商号」を「「HAMAMATSU」」と、それぞれ改める。 (4) 9頁15・16行目の「ML300EX」を「ML300EXWH」と、21行目の「甲10」を「甲10の1・2」と、それぞれ改める。 (5) 10頁3行目の「●●台」を「●●台(本判決別紙各対象製品販売状況一覧の番号●●から番号●●までの●●台から番号●●及び番号●●を除いた●●台に令和4年6月30日に販売された1台を加えたもの)」と、7行目の「令和3年12月をもって」を「令和4年6月頃をもって」と、それぞれ改め、9行目の「乙126、131、132、」の次に「171、」を加え、23行目の「対象製品1」から 25行目末尾までを「対象製品1は、筐体、ステージ(X、Y、θ軸) 月頃をもって」と、それぞれ改め、9行目の「乙126、131、132、」の次に「171、」を加え、23行目の「対象製品1」から 25行目末尾までを「対象製品1は、筐体、ステージ(X、Y、θ軸)、搬送系及びSDエンジン等によって構成される。SDエンジンは、レーザ加工エンジンユニット、Z軸ステージ等からなる。」と改める。 (6) 13頁4行目の「終了した時点」を「終了した時点の位置」と改める。 (7) 15頁4行目の「平成29年11月13日」を「平成29年11月13日付 け通知書により」と改め、7・8行目の「上記特許ポートフォリオを侵害するなどとして」の次に「、本件特許権(請求項8)を含む15件の特許権を例示した上」を加え、8行目の「甲9」を「甲9の1」と改める。 (8) 15頁24行目の「令和4年9月5日」から26行目末尾までを「令和4年9月5日、控訴を棄却する旨の判決がされ(知的財産高等裁判所令和3年(ネ)第 10101号)、同判決は、令和5年6月7日、上告棄却及び上告不受理の決定によ - 5 -り確定した(最高裁令和5年(オ)第152号、同(受)第187号。甲127)。 また、東京地方裁判所は、別件訴訟2について、令和4年12月15日、原告の請求を一部認容する旨の判決をし(甲123)、その後、原告及び被告が控訴し、知的財産高等裁判所に係属中である(知的財産高等裁判所令和5年(ネ)第10052号)。 (本項につき、当裁判所に顕著な事実のほか、前掲各証拠、弁論の全趣旨)」と改める。 (9) 16頁3・4行目の「(知的財産高等裁判所令和4年(行ケ)第10099号)。」の次に、「知的財産高等裁判所は、令和5年7月6日、被告の請求を棄却する旨の判決をし、同判決は、その後確定した(当裁判所に顕著な事実)。」 の「(知的財産高等裁判所令和4年(行ケ)第10099号)。」の次に、「知的財産高等裁判所は、令和5年7月6日、被告の請求を棄却する旨の判決をし、同判決は、その後確定した(当裁判所に顕著な事実)。」を加える。 (10) 16頁10行目の「技術的範囲に属するか」の次に「(均等論を含む。)」を加え、19行目末尾に改行の上、次のとおり加える。 「⑩ 弁済の抗弁の成否」(11) 18頁6行目の「形状変動全体」を「形状変動のある部分の全体」と改める。 (12) 21頁25・26行目の「前記(2)(原告の主張)イ」を「前記(2)(原告の 主張)ウ」と、22頁25行目の「前記(2)(原告の主張)ウ」を「前記(2)(原告の主張)エ」と、それぞれ改める。 (13) 23頁4行目の末尾に「対象製品2が本件各発明の技術的範囲に属するとの原告の主張は争う。」を加え、15行目の「対象物にある」を「対象物の上にある」と改める。 (14) 24頁19・20行目の「前記(2)(被告の主張)イ」を「前記(2)(被告の主張)ウ」と改め、25頁16行目の冒頭に「対象製品1(2)Bの場合と同様に(前記(2)(被告の主張)エ参照)、」を加える。 (15) 26頁22行目の「改質領域が多光子吸収によってされる」を「改質領域が多光子吸収によって形成される」と改める。 (16) 28頁21・22行目の「被告が原告に対してした」を「原告が被告に対し - 6 -てした」と改める。 (17) 30頁11行目の末尾に「対象製品2についても、平成29年12月14日に開催された展示会においてパネル展示がされ、譲渡の申出がされた事実があるのであるから、差止請求は認められてしかるべきである。」を加え、16・17行目の「中止したから、将来、各 成29年12月14日に開催された展示会においてパネル展示がされ、譲渡の申出がされた事実があるのであるから、差止請求は認められてしかるべきである。」を加え、16・17行目の「中止したから、将来、各対象製品を製造等する可能性はない。」を「中止した。被 告は、全ての対象製品について、令和3年12月をもって製造・販売等を停止しており(乙263~269)、1年半以上が経過している。したがって、被告が、各対象製品を製造、販売するおそれはない。」と改める。 (18) 31頁18行目及び21行目の各「●●台」を「●●台」とそれぞれ改め、22行目から32頁5行目までを次のとおり改める。 「各対象製品のうち最後に販売された1台を除く●●台の限界利益の額は●●●●●●●●●●●●円であり、これに対するSDエンジンの貢献の割合は非常に高く、SD装置全体の75%を下らないから、各対象製品の限界利益のうち、SDエンジン相当部分の限界利益は●●●●●●●●●●●●円となり、同額が特許法102条2項の規定により原告が受けた損害額と推定される。このように同項の規定 により推定される損害の額をSDエンジン相当部分の限界利益の額とした場合には、原告が販売しているのがSD装置そのものではなく、SDエンジンであることは、既に損害として推定される利益の算出に当たり考慮されているため、損害の推定に対する覆滅事由にはならない。なお、SD装置の製造・販売による利益の額をすべて同条2項の規定により原告が受けた損害額と推定し、原告がSDエンジンのみを 販売していることが覆滅事由になると考えた場合でも、覆滅割合は25%になるというべきであるから、計算結果は同じであり、原告は両者を選択的に主張する。 また、被告の侵害行為に対する弁護士費用相当額として、1億9446 が覆滅事由になると考えた場合でも、覆滅割合は25%になるというべきであるから、計算結果は同じであり、原告は両者を選択的に主張する。 また、被告の侵害行為に対する弁護士費用相当額として、1億9446万9269円が損害として認められるべきである。 そうすると、原告の損害額は●●●●●●●●●●●●円となりこれに控訴審に おいて追加した●●台目の対象製品の販売に係る損害額が加わる。原告は、このう - 7 -ち12億円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する。」(19) 32頁6行目から33頁9行目までを次のとおり改める。 「(イ) 前記(ア)のうち対象製品1(2)Bの製造、販売による原告の損害額a 売上額 被告は、平成28年3月から平成30年8月まで、原判決別紙「対象製品1(2)B売上一覧」記載のとおり、合計●●台の対象製品1(2)Bを製造・販売し、その売上額(RMモジュールを除く。)は、同記載番号1の製品(以下「番号1製品」という。)を含めると●●●●●●●●●●●●円、含めないと●●●●●●●●●●●●円である。 b 限界利益の額前記売上額から控除すべき経費は直接原価のみであり、限界利益の額は、本判決別紙「原告の主張(対象製品1(2)Bの限界利益)」に記載するとおり合計●●●●●●●●●●●●円である。 c 損害額 前記限界利益の額にSDエンジン相当分75%を乗じた額を特許法102条2項の規定により原告が受けた損害と推定した場合には覆滅事由はなく、同限界利益の額全体を同項の規定により原告が受けた損害と推定した場合には、覆滅事由があるものとして75%を乗ずることになるから、いずれにせよ、損害額は●●●●●●●●●●●●円 には覆滅事由はなく、同限界利益の額全体を同項の規定により原告が受けた損害と推定した場合には、覆滅事由があるものとして75%を乗ずることになるから、いずれにせよ、損害額は●●●●●●●●●●●●円(=●●●●●●●●●●●●円×0.75)である。 d 弁護士費用弁護士費用は、原告の控訴理由書(2)別紙5弁護士費用一覧表の「弁護士費用」欄記載の№●から№●●まで、№●●及び№●●の各費用の合計金額である(計算すると9978万0072円となる。)。 e 請求額 よって、対象製品1(2)Bの製造、販売に係る特許法102条2項に基づく原告の - 8 -請求額は、前記cの損害額に前記dの弁護士費用を合計した●●●●●●●●●●●●円(=●●●●●●●●●●●●円+9978万0072円)となる。」(20) 34頁5行目から10行目までを次のとおり改める。 「(ア) 各対象製品●●台の製造、販売による損害について被告による各対象製品●●台の販売により原告が受けた損害の額は●●●●●● ●●●●●●円であり、これに弁護士費用相当額1億9446万9269円を加えると、損害額の合計は●●●●●●●●●●●●円となり、これに●●台目についての損害が加わる。」(21) 36頁4行目から37頁6行目までを次のとおり改める。 「(ア) 各対象製品●●台の製造、販売による損害について 各対象製品●●台の売上額は●●●●●●●●●●●●円であり、本件特許の実施料相当額は売上額に対する5%を下らない。これに弁護士費用相当額1億9446万9269円を加え、更に●●台目についての損害が加わる。 特許侵害があったことを前提として合意する場合には必ずしも実施許諾契約と同様の水準で実施料率が定められるとはいえないこと、原告エン 6万9269円を加え、更に●●台目についての損害が加わる。 特許侵害があったことを前提として合意する場合には必ずしも実施許諾契約と同様の水準で実施料率が定められるとはいえないこと、原告エンジンの利益の割合が SD装置の販売額の●●%を下らないこと、本件各発明は、ステルスダイシング技術を実施する上で必須の技術であり、特にメモリの生産(GAL(GrindingAfterLaser)プロセス)は、本件各発明の実施がなければ成立しないこと、被告は故意に本件特許権を侵害しており、被告の侵害態様は、自己のダイシング事業継続に拘泥し知的財産権を尊重する姿勢を欠くものとして極めて悪質であり、社 会的信用を欠く行為であることに照らすと、本件における実施料率は、5%を下回ることはない。 (イ) 前記(ア)のうち対象製品1(2)Bの製造、販売による損害について原判決別紙「対象製品1(2)B売上一覧」記載の売上額(番号1製品を含めると●●●●●●●●●●●●円、含めないと●●●●●●●●●●●●円)に実施料5% を乗じるべきである。」 - 9 -(22) 37頁20行目から38頁6行目までを次のとおり改める。 「(ア) 各対象製品●●台の製造、販売による損害について原告の逸失利益は、特許法102条1項により算定される損害額●●●●●●●●●●●●円(前記イ(ア))及び実施料相当額1億4100万円(1台当たり300万円×●●台)の合計●●●●●●●●●●●●円であり、これに弁護士費用相当 額1億9446万9269円を加えると、損害額の合計は●●●●●●●●●●●●円となり、更に●●台目についての損害が加わる。 (イ) 前記(ア)のうち対象製品1⑵Bの製造、販売による損害について特許法102条1項により算 加えると、損害額の合計は●●●●●●●●●●●●円となり、更に●●台目についての損害が加わる。 (イ) 前記(ア)のうち対象製品1⑵Bの製造、販売による損害について特許法102条1項により算定される額に、1台当たり300万円の実施料相当額を加算した額が損害額である。」 (23) 38頁10行目から12行目までを次のとおり改める。 「不当利得の額は特許法102条3項により算定される額と同額である(前記ウ(ア)、(イ))。そして、被告は、民法704条の悪意の受益者であるから、不当利得金に対する改正前民法所定の利息金の支払を求める。」(24) 39頁22行目から40頁12行目までを次のとおり改める。 「そして、原判決別紙「対象製品1(2)B売上一覧」記載の番号1製品を除く対象製品1(2)Bの限界利益は合計●●●●●●●●●●●円であるから、そのうち被告エンジンBについての限界利益に相当する額は●●●●●●●●●●●●となる。 ●●●●●●●●●×●●%≒●●●●●●●●●(イ) 推定覆滅事由について 次の各事情を考慮すれば、被告エンジンBの限界利益に相当する額を算定の基礎として、その89%につき、特許法102条2項の推定が覆滅されるというべきである。 まず、対象製品1(2)BはSD装置であるのに対し、原告はSDエンジンである原告エンジンを製造・販売するにすぎず、その市場は同一ではない。」 (25) 41頁5行目から8行目までを次のとおり改める。 - 10 -「(ウ) 小括 ●●●●●●●●●円以上を前提にすると、特許法102条2項により、原告が受けた損害額として推定される額は、標記額である。 ●●●●●●●●●×11%≒●●●●●●●●」 ●●●●●●●●●円以上を前提にすると、特許法102条2項により、原告が受けた損害額として推定される額は、標記額である。 ●●●●●●●●●×11%≒●●●●●●●●」(26) 41頁21行目の「代替品であることはできず」を「代替品であるというこ とはできず」と、22・23行目の「各対象製品の販売等について」を「各対象製品の販売等による侵害について」と、それぞれ改める。 (27) 46頁11行目の末尾に改行して次のとおり加える。 「(10) 争点⑩(弁済の抗弁の成否)(被告の主張) 被告は、令和5年2月17日、原告に対し、原判決が請求を認容した額の全額を支払ったことから、予備的に弁済の抗弁を主張する。なお、被告は、同債務の存在を認めたものではなく、債務の不存在が確認された場合には、原告に対し、不当利得返還請求をする。 (原告の主張) 被告が、原告の銀行口座に、原判決の認容額の全額を振り込んだことは認める。 しかしながら、上記振込は、「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」(民事訴訟法260条2条)に該当し、被告が債務の存在を争っていることからしても、任意の弁済に当たるものではない。したがって、控訴審においては、その事実を考慮することなく請求の当否を判断すべきであり、被告による弁済の抗弁は、主張自 体失当である。」 3 当審における当事者の追加及び補充主張(1) 各対象製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点②③)(原告の主張)ア対象製品1(1)及び1(2)A(以下、併せて「被告新製品」ということがある。) の文言侵害 - 11 -被告新製品は、次のとおり、㋐「初期位置に」「レンズを保持する」ものであり、㋑「切断予定ラインの一端部 2)A(以下、併せて「被告新製品」ということがある。) の文言侵害 - 11 -被告新製品は、次のとおり、㋐「初期位置に」「レンズを保持する」ものであり、㋑「切断予定ラインの一端部」において改質領域を形成するものであるから、構成要件1G、1H及び2Aを充足し、構成要件2Cも充足する。 (ア) 「初期位置に」「レンズを保持する」について本件各発明の特許請求の範囲における「保持」の意味は、本件明細書に記載され た実施例における固定を含むものの、固定の上位概念としての用語であり、本件各発明の課題を解決し、その作用効果を奏するものであれば、固定のみならず、実質的な固定すなわち、シリコンウェハの端部において、対物レンズが変位しない場合、あるいは名目的な量の範囲でのみ変位する場合を含む。 被告新製品は、被告の低追従方式を採用しているものであるが、同方式の制御は、 形状変動の影響が大きな0~10mm区間(シリコンウェハの端からの距離(X軸座標)が0~10mmの区間)においては、実際には専ら上限値-0.2μmの制御指令値に固定されており、その結果、対物レンズの位置(ピエゾ現在位置)は、0~5mm区間では変位がなく、0~10mm区間でも僅かに約0.15μm上昇しているだけである。この変位は、「実質的に固定」されていると評価できるから、 「初期位置」に「保持」の要件を充足する。 また、被告新製品における実用的なエッジ処理区間(レンズが低追従により制御される区間)は現実のウェハのエッジ(端)から5mmであり、実用上、被告新製品のエッジ処理区間が5mm又は4mmに設定されていることは被告も認めている。 そして、被告新製品のエッジ処理区間を5mmに設定すると、同区間において集光 レンズ(対物レンズ)の高さは全く変動 品のエッジ処理区間が5mm又は4mmに設定されていることは被告も認めている。 そして、被告新製品のエッジ処理区間を5mmに設定すると、同区間において集光 レンズ(対物レンズ)の高さは全く変動しないから、集光レンズの高さを実質的に固定しているといえる。なお、被告新製品のうちML200EXWHの主要顧客であった●●●●社は、ウェハエッジ検出基準を光量基準と設定してGAL加工することがあり(甲128)、GAL加工をする際は、常に、エッジ処理区間を約5mmとしていたから、「WH」の製品でも本件各発明の機能が実施されていた。 またエッジ処理区間を10mmに設定したとしても0.15μmしか変位しない - 12 -のであり、これは誤差範囲と評価されるべきであって、集光レンズの高さを実質的に固定するものといえる。0~10mm区間において0.15μm変動することをもって、レンズが「保持」されていないとした原判決の判断は誤りである。 (イ) 「切断予定ラインの一端部」での改質領域の形成について加工対象物の主面の形状変動がある部分では、加工用レーザ光が加工対象物の主 面で屈折するため、改質領域は一定の加工の深さで水平に形成されることはない。 本件各発明の「切断予定ラインの一端部」は、「対物レンズを初期位置に保持した状態で改質領域を形成した場合に改質領域が形成されることが予定されている部分」ではあるが、「改質領域が予定する加工の深さで水平(高さ方向の位置が一定)に形成されることが予定されている部分」と理解すべきではない。本件各発明でいう「切 断予定ラインの一端部」は、「レンズを目標どおりに移動させた場合に集光点がたどる線の一端部」を意味すると解するのが妥当である。なお、切断予定ラインの一端部に形成される改質領域の質は、全 「切 断予定ラインの一端部」は、「レンズを目標どおりに移動させた場合に集光点がたどる線の一端部」を意味すると解するのが妥当である。なお、切断予定ラインの一端部に形成される改質領域の質は、全体の切断加工に対する影響がほとんどないから、改質領域の質を議論する必要はない。 よって、被告新製品において、ベベル等の形状変動部分に形成される、深さ及び 鉛直方向の位置が一定でない改質領域も、本件各発明の「切断予定ラインの一端部において」形成される「改質領域」に該当する。 イ被告新製品の均等侵害(当審における追加主張)仮に被告新製品における低追従方式ではレンズが初期位置に「保持」されているといえないとして、前記ア(ア)の文言充足が認められないとしても、低追従方式は、 レンズを実質的に「固定」するものであって、少なくとも「初期位置」に「保持」している本件各発明と均等である。 本件各発明の本質的部分は、ステルスダイシング加工におけるAF追従と加工対象物の端部における形状変動に起因する集光レンズのずれの防止のための初期位置の保持であり、集光レンズの高さを初期位置に完全に固定する制御をするか、集光 レンズの高さの名目的な量の変位を許容する制御をするかは本件各発明の本質的部 - 13 -分ではない(第1要件)。被告の低追従方式の制御によっても、ピエゾ制御指令値は突入高さ(ピエゾ現在位置がシリコンウェハ内に突入したときのピエゾ現在位置)から僅かにずれた上限値に固定され、切断予定ラインの一端部に存在する形状変動をAF追従しないので、大きな非点収差信号を発生させる加工対象物端部の形状変動の影響によるレーザ光の集光点のズレを回避するという本件各発明と同一の作用 効果を奏する(第2要件)。被告は、原告が被告に対し、平成29 で、大きな非点収差信号を発生させる加工対象物端部の形状変動の影響によるレーザ光の集光点のズレを回避するという本件各発明と同一の作用 効果を奏する(第2要件)。被告は、原告が被告に対し、平成29年11月13日付け通知書(甲9の1)を送付してしばらく経過した後、対象製品1(2)B(以下「被告旧製品」ということがある。)で採用していたAF固定方式から低追従方式に設計変更したものであるが、当時、切断予定ラインの一端部における形状変動へのAF追従を抑止することにより形状変動の影響によるレーザ光の集光点のズレを回避す るという技術思想が知られていたから(甲17)、上記設計変更は当業者が容易に想到可能であった(第3要件)。また、設計変更後の被告新製品の構成は、本件特許の出願時の公知技術から容易推考ではなかったし(第4要件)、被告の低追従方式の制御が本件各発明の技術的範囲から意識的に除外されたという事情はない(第5要件)。 ウ被告の主張に対する反論 (ア) 被告旧製品及び被告新製品(以下併せて「被告製品」という。各対象製品から対象製品2を除いたもの。)はいずれも本件特許権を侵害するものであるから、後記(被告の主張)アのとおりに特定したとしても、充足性に係る結論に影響しない。 また、被告製品は、座標基準によりウェハエッジを検出する機能と、光量基準によりウェハエッジを検出する機能と、エッジオフ区間(端部においてレーザ加工を しない区間。非加工領域)について、0mmを含む任意の距離に設定できる機能と構成を有している点で同一であり、被告の主張する製品の区分は、加工条件の設定の違いを理由とするものにすぎない。被告製品は面取り部分があるシリコンウェハにも、面取り部分がないものにも使用できるし、ユーザは、GUIによりウェハエッジ検 告の主張する製品の区分は、加工条件の設定の違いを理由とするものにすぎない。被告製品は面取り部分があるシリコンウェハにも、面取り部分がないものにも使用できるし、ユーザは、GUIによりウェハエッジ検出方法を含め、「レシピ」(設定されたパラメータのセット)を変更すること ができるから、被告の主張するように5種類に分けて特定する理由はなく、被告旧 - 14 -製品(固定)と被告新製品(低追従)の2種類の分類で足りる。被告製品について本件各発明の機能を使用しないようなレシピが設定された場合であっても、例えば光量基準の機能を削除して出荷するなどということは考え難いことであるから、被告製品は全て本件各発明の技術的範囲に属するといえる。 (イ) 本件明細書の実施例の記載は、本件各発明の一実施形態を示したにすぎず、 本件各発明の技術的範囲が光量基準でウェハエッジを検出するものに限定されるものではない。 (ウ) 被告製品において実用的な値として設定されるエッジオフ区間は約1.5mmであり、実用的なエッジ処理区間(4~5mm)よりも短いから、レンズを初期位置に保持した状態で改質領域が形成される区間が存在し、当該区間は「切断予定 ラインの一端部」に該当する。 (エ) 被告は、控訴審において新たに実験結果(乙282)を提出したが、同実験は、「ベベル部分での反射光量」についてあえて実測値によらずに、実測値とは異なるシミュレーション値に基づいて作成された、被告に都合の良いデータのみを示すものである。下図のとおり、改質領域はエッジ検出前に形成され得る。 - 15 -原告は、上図よりも深い位置に改質領域を形成する実験を、原告エンジンを搭載した被告従来製品を用いて行った(甲123)。その結果、下図のとおり、閾値を主面 れ得る。 - 15 -原告は、上図よりも深い位置に改質領域を形成する実験を、原告エンジンを搭載した被告従来製品を用いて行った(甲123)。その結果、下図のとおり、閾値を主面中央での全光量電圧値(4.2V)の半分(2.1V)に設定しても、ベベル部分の改質領域の全部が、エッジ検出される前、すなわちAF固定制御された状態で加工された。 (被告の主張)ア被告製品の構成について被告製品は、個々のユーザの要求に合わせて製造する受注生産品であり、個々のユーザが採用する製造プロセスや加工対象物の形状に応じて、被告製品の仕様(構 成)も異なっており、仕様(構成)の違いは、被告製品の「機種名」に付された3つの符号「WH」、「FH」及び「RM」の相違に対応している。一覧にすると次のとおりであり、それぞれ区別して特定すべきである。「WH」の被告製品をGALプロセスでのレーザ加工に用いる場合には、必ず座標基準が用いられる。「RM」の被告製品で加工する加工対象物の主面にはベベルがない。「FH」の被告製品ではエッ ジオフ区間が設定されない。 - 16 - 被告製品は、所定の加工プロセスにおける、所定の加工対象物の加工のみに用いられるものであり、ユーザが設定変更することができるものではない。光量基準/座標基準の設定や、エッジ処理区間の設定を変更するには9ステップの操作が必要であり、かつ、載置台に加工対象物を手動で載せて行う亀裂進展量の調査を実施す るには、セーフティマニュアルにより禁止されている安全扉の解除等が必要であり、ユーザがこれらの設定変更をすることは不可能である。 イ被告製品の文言侵害(ア) 次の表のとおり、被告製品はいずれも本件各発明の構成要件を充足しない(また、同表の記載にかか 除等が必要であり、ユーザがこれらの設定変更をすることは不可能である。 イ被告製品の文言侵害(ア) 次の表のとおり、被告製品はいずれも本件各発明の構成要件を充足しない(また、同表の記載にかかわらず、後記(ウ)のとおり、被告新製品(同表の「被告製品(低 追従)」)はいずれも、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成されていない点においても非充足である。)。本件明細書には測距用レーザ光の反射光の光量に基づいて「保持」か「解除」される実施形態のみが記載されており、本件特許の出願日当時、ウェハエッジを検出する手段としては光量基準しか知られていなかった - 17 -から、座標基準によりウェハエッジを検出する構成は、本件各発明の技術的範囲に含まれない。 (イ) 「初期位置に」「レンズを保持する」について低追従の制御は、現実のウェハの主面の高さの値に応じてピエゾ制御指令値が定 まるため、現実のウェハの主面の高さの値に応じて対物レンズの位置が制御されることになるものであって、実質的に固定する制御がされているものではない。 5mmの区間(0~5mm区間)で対物レンズの高さの変位が生じていないという原告の主張は、事実に反する。被告による実験において、「低追従」では、5mm区間において約0.1μm、10mm区間(0~10mm区間)において約0.2 μm、15mm区間(0~15mm区間)において約0.3μm変位している。また、エッジ処理区間の長さは、どのような反りを端部に有するウェハを加工対象とするかにより決まり、現実に、5mmより長いものもある。 (ウ) 「切断予定ラインの一端部」での改質領域の形成について本件各発明の技術的意義を考慮すれば、本件各発明のレーザ加工装置により形成 される改質領域は、変質してい mより長いものもある。 (ウ) 「切断予定ラインの一端部」での改質領域の形成について本件各発明の技術的意義を考慮すれば、本件各発明のレーザ加工装置により形成 される改質領域は、変質していれば何でもよいというものではなく、レーザ光の集光点のずれを回避した結果として所望の位置に形成される、加工対象物の切断に資 - 18 -するものでなければならない。 本件明細書の記載を踏まえると、「レンズを保持した状態で・・切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し」(構成要件1G)は、初期位置にレンズを保持することにより、集光点がずれないように第一のレーザ光を照射しながら、制御手段が切断予定ラインの一端部において改質領域を形成することを意味するものである。 なお、切断予定ラインとは、加工を予定する部分を意味するものであり、結果として集光点がたどった線であるなどと理解することはできない。 低追従の被告新製品において、光量基準を設定し、かつエッジオフ機能をOFF(エッジオフ区間0mm)にして、ベベル部分にレーザ光を照射することは予定されていないが、仮にそのような設定をした場合、光量基準では現実のウェハエッジ を検出することができないから、ベベル部分の一部においてAF固定された状態でレーザ光が照射されることとなり、当該ベベル部分では、ウェハ加工対象物の表面の形状変動の影響を受けて、加工対象物内部の加工を予定する高さ方向の「所定の位置」に集光点が合わず、加工を予定した部分とは異なる位置に集光する。そのため、深い部分を「所定の位置」とした場合には、ベベル部分では、改質層が形成さ れない。 更に、被告の実験結果(乙282)により明らかになったとおり、低追従の被告新製品において、光量基準を設定し、エッジオフ機能をOFFに設定した 合には、ベベル部分では、改質層が形成さ れない。 更に、被告の実験結果(乙282)により明らかになったとおり、低追従の被告新製品において、光量基準を設定し、エッジオフ機能をOFFに設定した場合に、低追従の制御が開始する前に加工対象物の内部に加工痕が形成されることはない。 同実験結果におけるエッジ検出位置よりも手前にみられる加工痕はアブレーション (加工対象物の構成物質が爆発的に外部に放出された跡)であり、加工対象物の内部に改質領域が形成されているものではない。なお、被告の実験結果は、原告が控訴審において提出した実験結果(甲136)のうち被告製品を用いて行ったもの(甲136の③)ともおおむね整合している(原告の実験結果(甲136)のうち①②④は、原告エンジンを用いて行ったものであり、被告製品とは関係がない。)。 したがって、ベベルのある加工対象物について光量基準が設定され、エッジオフ - 19 -機能をOFFにした加工がなされたとしても、低追従の被告新製品は、本件各発明の技術的範囲に属さない。 ウ被告新製品の均等侵害原告の均等侵害の主張は、「低追従」の制御を行う同一の仕様の製品であるにもかかわらず、ユーザが設定するエッジ処理区間の長さに応じて、文言侵害が成立した り、均等侵害が成立したり、侵害とならなかったりするというものであり不合理である。 被告新製品において低追従となる構成が採用されているのは、高さ固定区間において一定の高さに保持した後に固定を解除した場合、シリコンウェハ表面との距離があるので、大きな値のピエゾ制御指令値が検出され、その結果、ピエゾ制御指令 値とピエゾ現在位置との差分も大きくなり、ピエゾが急激に大きく移動し、フォーカスずれ量が大きくなることから、これを回避するためである。 値のピエゾ制御指令値が検出され、その結果、ピエゾ制御指令 値とピエゾ現在位置との差分も大きくなり、ピエゾが急激に大きく移動し、フォーカスずれ量が大きくなることから、これを回避するためである。すなわち、被告新製品が解決しようとする課題は、切断予定ラインの一端部における形状変動ではなく、固定を解除したときのフォーカスずれであるから、本件各発明と被告新製品における低追従の構成とでは、解決しようとする課題が異なり、本件各発明と被告新 製品の解決原理が異なることは当然であって均等の第1要件を充足せず、作用効果も異なるので第2要件も充足しない。更に、被告新製品のAF低追従の構成について被告は特許登録を得ており、置換容易性がないから第3要件を充足しない。したがって、均等侵害は成立しない。 (2) 原告が被告に対し被告旧製品の製造等につき許諾を与えたか(争点⑤) (被告の主張)ア本件許諾原告は、被告に対し、平成26年10月8日に行われた打合せ(10月8日打合せ)において、本件許諾をした。このことは、上記打合せの後、原告及び被告の従業員らが、本件許諾がされたことを前提として行動していたことや、各種報告書の 記載、例えば、平成27年3月25日の原告担当者が被告担当者と面談した内容を - 20 -記載した面談報告書(乙276)に、本件許諾があることを前提とした記載があることからなども裏付けられる。また、実施許諾の対象がサムスン社向け製品に限られないことは、被告が原告に提示した平成27年3月25日付け資料(乙116)に記載がある。 イ予備的主張(当審における追加主張) 仮に本件許諾をしたことが認められないとしても、少なくとも、本件業務提携契約が終了し、そのような共同開発に係る装置の商品化が行われる可能 記載がある。 イ予備的主張(当審における追加主張) 仮に本件許諾をしたことが認められないとしても、少なくとも、本件業務提携契約が終了し、そのような共同開発に係る装置の商品化が行われる可能性が事実上なくなるまでは、本件各発明の実施許諾がなされていたと解すべきである。そうすると、本件業務提携契約が終了した平成29年9月18日までに受注した原判決別紙「対象製品1(2)B売上一覧」記載番号1から23までの製造・販売については、実 施許諾がされていた。 また、仮に本件許諾をしたことが認められず、10月8日議事録の「顧客」がサムスン社を指すと理解した場合であっても、少なくとも、サムスン社向けに販売した製品については、実施許諾がされていたと解すべきである。そうすると、原判決別紙「対象製品1(2)B売上一覧」においてユーザ名がサムスン社とされている17 台(番号1製品を含む。)については、実施許諾がされていた。 (原告の主張)本件許諾の存否については、別件訴訟1において主張立証が尽くされた上で、被告の主張が排斥された判決が既に確定している(甲127)のであるから、被告の主張は、審理を蒸し返すものであって主張自体が信義則に反する。 また、本件業務提携契約の前提となる極めて重要な内容に反する合意を、走り書きのメモ(10月8日議事録)で合意することなど、一部上場企業同士の契約としてあり得ない。原告は、サムスン社への試作機1台の紹介を認めただけであるから、被告の予備的主張は理由がない。被告が、控訴審において予備的主張を新たに追加するなどして主張を変遷させていること自体が、10月8日打合せにおいて実施許 諾に係る合意が成立したなどという主張に理由がないことを示すものといえる。 - 21 -(3) 原告の 加するなどして主張を変遷させていること自体が、10月8日打合せにおいて実施許 諾に係る合意が成立したなどという主張に理由がないことを示すものといえる。 - 21 -(3) 原告の損害額(争点⑧⑨)(原告の主張)ア特許法102条2項の適用(ア) 原告は、ステルスダイシング技術を開発し、これに関して日本だけでも●●件の特許を取得し、韓国や中国及び米国等でも同様に特許を取得した。SD装置は、 高性能で利益率が高いものであるが、原告のライセンスを受けなければ、日本企業のみならず外国企業も、これを製造・販売することは困難であった。 原告は、SD装置のメーカーである被告やディスコ社と業務提携契約を締結し、ステルスダイシング技術に関する多数の特許を実施許諾する条件として、原告製のSDエンジンを購入することを義務付けている。なお、原告の利益は原告エンジン の販売によるものが主であり、業務提携契約で定めている●%や●●●%のロイヤリティは補完的な利益にすぎない。 上記の状況を踏まえると、被告による侵害行為(各対象製品の製造・販売行為)がなければ、原告は、業務提携契約に基づきディスコ社及び被告に原告エンジンを販売し、ディスコ社及び被告は、原告エンジンを搭載したSD装置の製造・販売を 継続していたはずであり、サムスン社やTI社は、ディスコ社又は被告から、原告エンジンを搭載したSD装置を購入したはずである。 (イ) 本件のように、特許権者が部品を販売し、侵害者が完成品を販売している場合であっても、特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろう事情が存在する場合には、特許法102条2項は適用される。本件 では、被告による侵害行為がなければ、原告は、ディスコ社のみならず、 害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろう事情が存在する場合には、特許法102条2項は適用される。本件 では、被告による侵害行為がなければ、原告は、ディスコ社のみならず、原告との本件業務提携契約(被告の特許権侵害行為がなければ継続していたはずである。)に基づき被告に対し、原告エンジンを販売することができたのであり、これにより利益を得られたとの客観的状況にあった。したがって、本件には、特許法102条2項が適用される。 なお、前記補正の上引用した原判決における原告の主張のとおり、特許権者であ - 22 -る原告がSDエンジンという部品を販売していることについては、①利益の額の算定において考慮するか、又は、②推定覆滅事由として考慮すれば足りる。 イ被告旧製品の限界利益(ア) 被告の主張する経費のうち、侵害品の製造・販売に直接関連して追加的に必要となったと認められるのは、①直接原価のみであり、②販売手数料、③販売変動 費-1、④販売変動費-2、⑤試作費製造・改良費は、以下に述べるとおり、控除すべき経費には当たらない。 (イ) ②販売手数料、③販売変動費-1及び④販売変動費-2については、侵害品の製造・販売に直接関連して追加的に必要となったものであることの立証がない。 ④販売変動費-2のうち「販売促進費」はデモ機や試作品についての費用、「サービ ス費」は、被告製品の販売後に支出される費用であって侵害品の製造・販売に直接関連して追加的に必要となったものではない。また、⑤試作品製造・改良費については、侵害品(被告旧製品)は既に開発が完了したものであるから、その販売に当たって試作品製造・改良費を必要とする理由がない。 (ウ) 被告旧製品全体(●●台分)の限界利益は、本判決別紙「原告の主張( ては、侵害品(被告旧製品)は既に開発が完了したものであるから、その販売に当たって試作品製造・改良費を必要とする理由がない。 (ウ) 被告旧製品全体(●●台分)の限界利益は、本判決別紙「原告の主張(対象 製品1(2)Bの限界利益)」記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円である。 ウ限界利益(前記イ)に対する覆滅割合(ア) SD装置とステルスダイシング技術を用いないブレード装置との間に、定価において7倍、売価において3倍~4倍以上のもの価格差が存在すること、SD装置全体に占めるSDエンジンの価格はプラットフォームに比して高額であるだけで なく、SD装置全体の付加価値を高めていること、本件各発明はステルスダイシング技術の実施において重要かつ必須のものであることを総合的に考慮すれば、本件各発明が実施されたSDエンジン(被告エンジンB)相当部分の限界利益は、SD装置全体の限界利益の75%を下回ることはない。 したがって、前記イで計算される限界利益額の75%(●●●●●●●●●●● ●円)が、特許法102条2項により算定される損害額となる。 - 23 -なお、被告は原告エンジンの価格が●●●●●円であると主張するが、この額で原告エンジンが販売された実績は全くない一方で(甲144)、本件特許権侵害の開始時期において原告から被告に現に販売された原告エンジンの価格が●●●●●円であったのであるから(甲144等)、損害の算定においてはこの価格を考慮すべきである。 (イ) 前記(ア)は、利益の額の算定において原告の販売する製品がSD装置全体ではなく部品(SDエンジン)であることを考慮したものであるが、このような考慮をしない場合には、この点は推定覆滅事由として考慮することとなり、その場合の推定覆滅割合は 告の販売する製品がSD装置全体ではなく部品(SDエンジン)であることを考慮したものであるが、このような考慮をしない場合には、この点は推定覆滅事由として考慮することとなり、その場合の推定覆滅割合は25%であり、結果として前記(ア)と同額となる。 エ被告の主張に対する反論 被告は、本件特許と965特許(別件訴訟2の対象特許)に係る各発明が実質的に同一であるとした上で、それぞれの訴訟で、認定される損害を2分の1とするのが相当であるなどと主張するが、そもそも上記各特許は実質的に同一ではない上、965特許については本件の審理の対象とはなっておらず、裁判所が侵害を認定するか否かは未確定であることからしても、裁判実務を無視した独自の見解というほ かない。特許権侵害訴訟において、裁判所により侵害が認定された場合は、各特許の価値に応じ、それぞれに損害額が認定されるべきである。 標準必須特許の場合には、標準必須特許全体の実施料率に基づいて個々の実施料率を算定することが妥当であるとしても、それ以外の特許については通常の特許権侵害訴訟の実務に基づいて判断されるべきである。 (被告の主張)ア特許法102条2項の適用特許法102条2項は、特許権者等の売上減少等による逸失利益を推定する規定であり、侵害者が侵害行為をして利益を得ていなければ、特許権者が、自身の製品を販売して、侵害者が得た利益と同額ないし同質の利益を得られたであろうという 一応の経験則が成り立ち、侵害者の得た利益の全額を、特許権者の逸失利益の額と - 24 -推定することが正当化される場合に適用されるものである。具体的には、知的財産高等裁判所令和4年10月20日特別部判決(同裁判所令和2年(ネ)第10024号。以下「令和4年特別部判決」という。) -推定することが正当化される場合に適用されるものである。具体的には、知的財産高等裁判所令和4年10月20日特別部判決(同裁判所令和2年(ネ)第10024号。以下「令和4年特別部判決」という。)が判示するように、特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の競合品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品を販売してい た場合に上記推定が正当化される。 ところが、本件のように、特許権者が部品のみを販売している場合、特許権者に逸失利益が発生するとしても、特許権者に生じる当該逸失利益は、侵害者が侵害行為によって得た利益と等しくなることはないから、同項適用の基礎となる経験則の最低限の前提条件がない。また、SDエンジンの需要者は半導体製造装置の製造業 者(ディスコ社、EO社、中国企業)であるのに対し、SD装置の需要者は半導体製造業者(サムスン社、TI社等)であるから、需要者が異なり、SDエンジンとSD装置は「同種の競合品」でもない。したがって、本件に、同項を適用することはできない。 仮に同項の適用が認められると、SD装置全体の限界利益の額をもって原告が得 られたであろう利益の額と推定されることになり、過剰に推定された額から、適切な覆滅がなされるべき具体的事情について被告が主張立証責任を負うこととなって不合理である。 なお、本件では、SD装置を製造・販売する他の企業であるEO社や中国企業等が存在するから、各対象製品の販売がなければ、原告エンジンを搭載したディスコ 社のSD装置が販売できたという因果関係は立証されていない。また、原告は、EO社等の海外企業は、原告の特許権を侵害することなくSD装置を製造・販売することは困難であると主張するが、被告が販売している低追従 D装置が販売できたという因果関係は立証されていない。また、原告は、EO社等の海外企業は、原告の特許権を侵害することなくSD装置を製造・販売することは困難であると主張するが、被告が販売している低追従のSD装置は本件特許権を侵害するものではないから、国内外の外国企業は、本件特許権を侵害することなくSD装置を販売することができたのであって、原告の上記主張は事実に反する。 イ被告旧製品の限界利益 - 25 -(ア) 被告旧製品(番号1製品を除く。以下、被告の主張における被告旧製品については同じ。)の売上高から、経費である①直接原価、②販売手数料、③販売変動費-1、④販売変動費-2、⑤試作品製造・改良費を控除すると、限界利益の額は、合計●●●●●●●●●●●円である(乙163、287)。 (イ) 経費について 上記経費は、いずれも被告旧製品の販売に直接関連して必要となった費用である(乙131)。各経費(乙164)のうち、②販売手数料は、海外現地法人による販促、顧客への納品・設置等のサポートに対する対価として、個々の製品ごとに、所定のレートにより算出して支払われるものである。③販売変動費-1は、各対象製品の運賃や梱包に関するものであり、被告旧製品の販売に当たり直接必要となる経 費を売上配賦により算出したものである。④販売変動費-2は、広告費、販売促進費、サービス費からなるもので、被告旧製品に対応する売上配賦により算出したものである。被告は、販促活動として主としてセミコンジャパン等の展示会への出展をしたが、展示会では被告が販売する他の製品の展示等も行っているから、売上配賦により限定した額で費用を計上した。⑤試作品製造・改良費は、各対象製品の試 作品の製造及び改良に要した費用を売上配賦により算出したものであ 告が販売する他の製品の展示等も行っているから、売上配賦により限定した額で費用を計上した。⑤試作品製造・改良費は、各対象製品の試 作品の製造及び改良に要した費用を売上配賦により算出したものである。継続的に同一の仕様の各対象製品を販売している時期であっても、顧客の求める品質・オプション機能の開発や改良の必要がないとはいえず、被告は、常時、費用を投じて試作品の製造と評価を繰り返すことで、顧客の求めるレベルを達成しているのであるから、試作品製造・改良費は、被告旧製品の製造・販売に直接関連して必要となる 費用である。 ウ限界利益(前記イ)に対する覆滅割合(ア) 特許法102条2項が適用されるとしても、特許権者が完成品に組み込まれる前の部品を販売することにより得られたはずの利益の範囲で推定を受けるに留まる。本件では、被告旧製品の平均販売価格は1台当たり約●億円であり、原告の販 売するSDエンジンの販売価格は1台当たり●●●●●円(乙142、292)で - 26 -あるから、被告旧製品の限界利益に●●%を乗ずるべきである。 なお、被告旧製品の変動経費におけるSDエンジンの原価の割合は●●●●%であり(乙105、287)、製造原価全体に占めるSDエンジンの原価の割合は決して高くない。 (イ) 競業他社の存在、被告の営業努力、被告旧製品における他の技術的特長、他 の特許の存在を考慮すれば、推定覆滅割合は89%を下らない。 (ウ) したがって、原告の損害額は●●●●●●●●●円(=●●●●●●●●●●●円×●●●●×0.11)である。 エ別件訴訟2(965特許)の考慮本件各発明と、別件訴訟2の発明2(965特許)とは、それぞれの明細書の記 載から把握される発明の内容が実質的に同一であるから、仮に 0.11)である。 エ別件訴訟2(965特許)の考慮本件各発明と、別件訴訟2の発明2(965特許)とは、それぞれの明細書の記 載から把握される発明の内容が実質的に同一であるから、仮に同一の訴訟で侵害が主張されていれば、いずれか1つを侵害する場合と、両方を侵害する場合とで、異なる実施料率が認定されることはない。したがって、本件と別件訴訟2において、それぞれの特許に対して認定される損害額を2分の1とするのが相当である。 第3 当裁判所の判断 1 本件特許権侵害の成否(争点①から⑤まで)当裁判所も、各対象製品のうち、被告旧製品は本件各発明の技術的範囲に属し、本件各発明に係る特許に無効理由はなく、番号1製品の製造・販売に係る原告の許諾があったことは認められるが、本件許諾がされたとは認められないから、被告による被告旧製品(番号1製品を除く。)の製造、販売等につき本件特許権の侵害が成 立する一方、対象製品2は存在の立証がなく、被告新製品は本件各発明の技術的範囲に属するものとは認められないと判断する。その理由は、以下のとおり原判決を補正し、後記2において当審における当事者の追加及び補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」(以下「原判決の第3」という。)の1から6まで(原判決46頁13行目から106頁15行 目まで)に記載するとおりであるから、これを引用する。なお、引用文中の「C1」、 - 27 -「Cn」、「Q1」、「X1」、「X2」は、いずれも、それぞれ「C1」、「Cn」、「Q1」、「X1」、「X2」と改めるものとする。 (原判決の補正)(1) 64頁5行目から21行目までを次のとおり改める。 「従来のレーザ加工技術においては、加工対象物を加工する 、「Cn」、「Q1」、「X1」、「X2」と改めるものとする。 (原判決の補正)(1) 64頁5行目から21行目までを次のとおり改める。 「従来のレーザ加工技術においては、加工対象物を加工するための集光レンズと、 主面高さを測定する測定手段を所定の間隔をもって並設させて、測定をしながら加工をするものがあるが、この技術では、加工対象物の外側の位置からレーザ光の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていくことになるところ、測定によって得られた主面の高さの測定値に基づ いて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があるという問題がある(【0002】、【0004】)。すなわち、加工対象物の外側から測定を開始した場合、集光レンズは加工対象物を検出した時点で上昇するが、この間もレーザ光と加工対象物のその主面に沿った移動は継続していることから、集光レンズが所定の位置に上昇し、切断予定ラインにレーザ光の集光点が合 うまでにはタイムラグが発生し、また、集光レンズを所定の位置に合わせるための信号が大きく振られることによってもレーザ光の集光点がずれるため、レーザ光の焦点が切断予定ラインに合って安定状態になるまでの間は、切断予定ラインではない部分が加工されることになるという問題がある(【0008】~【0014】)。また、主面に凹凸がある加工対象物を加工する技術としては、加工を施す全ての平面 度を平面度測定手段によって測定した後、測定した平面度に基づいて加工するというものがあるが、この技術では、時間がかかり加工効率が低下するという問題がある(【0003】、【0005】)。このような問 度を平面度測定手段によって測定した後、測定した平面度に基づいて加工するというものがあるが、この技術では、時間がかかり加工効率が低下するという問題がある(【0003】、【0005】)。このような問題点に対し、本件各発明は、加工対象物の端部における処理に着目し、加工対象物の端部におけるレーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工装置を提 供することを目的とする(【0006】、【0014】)。」 - 28 -(2) 67頁12行目の「1(5)ウ」を「1(4)ウ」と改める。 (3) 69頁23・24行目の「範囲においても、」を「範囲において、レーザ光を照射することなく、」と、25行目の「【0033】【0059】」を「【0033】、【0053】、【0059】、【図3】、【図4】、【図6】」と、それぞれ改める。 (4) 70頁26行目の「終了した時点」を「終了した時点の位置」と改める。 (5) 71頁26行目・72頁1行目の「シリコンウェハにおいて、」を「シリコンウェハの端部においては、レンズが、加工を予定するラインに対応する所定の位置とは異なる位置に存することとなるために、」と改める。 (6) 80頁22行目の「レンズを実質的に固定する」を「レンズの鉛直方向の位置を固定する」と、81頁2行目の「前記(1)ウ」を「前記(1)イ」と、6・7行目 の「対物レンズを特定の位置に実質的に固定するよう保持しているとはいえない」を「対物レンズの鉛直方向の位置を固定するよう保持しているとはいえない」と、22・23行目の「対物レンズが特定の位置に固定される」を「対物レンズの鉛直方向の位置が固定される」と、82頁1行目の「対物レンズを特定の位置に実質的に固定する制御」を「対物レンズの鉛直方向の位 、22・23行目の「対物レンズが特定の位置に固定される」を「対物レンズの鉛直方向の位置が固定される」と、82頁1行目の「対物レンズを特定の位置に実質的に固定する制御」を「対物レンズの鉛直方向の位置を固定する制御」と、それぞれ 改める。 (7) 82頁26行目から85頁2行目までを次のとおり改める。 「(4) 切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について本判決後記2「当事者の当審における追加及び補充主張に対する判断(争点①か ら⑤まで)」(2)のとおり、対象製品1(1)及び1(2)Aは「切断予定ラインの一端部」において改質領域を形成するものとは認められないから、構成要件1G、1H及び2Aを充足しない。」(8) 85頁16行目の「本件明細書の」から19行目の「されているといえる。」までを「本件明細書の記載から、当業者は、改質領域が多光子吸収により形成され るか否かにかかわらず、レーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射する - 29 -ことによって改質領域を形成する構成とすることで、本件各発明の課題が解決されるものと理解することができる。」と、86頁14行目の「ここで、加工対象物」から17行目の「場合であっても」までを「ところで、加工対象物の現実の端からレーザ加工を行うか否かにかかわらず」と、87頁18行目の「レンズ」から19行目の「形成される部分」までを「対物レンズを鉛直方向に一定の位置(初期位置) に保持した状態で加工した場合に、改質領域が形成される部分」と、20行目の「前記3(3)ア」を「前記3(4)ア」と、それぞれ改める。 (9) 88頁21行目の「前記(1)イ」を「前記(1)ア」と、89頁7行目の「レンズ」から9行目の「部分」まで及び15行目の「レ 行目の「前記3(3)ア」を「前記3(4)ア」と、それぞれ改める。 (9) 88頁21行目の「前記(1)イ」を「前記(1)ア」と、89頁7行目の「レンズ」から9行目の「部分」まで及び15行目の「レンズ」から17行目の「部分」までをいずれも「対物レンズを鉛直方向に一定の位置に保持した状態で加工した場 合に、改質領域が形成される部分」と、10行目の「前記3(3)ア」を「前記3(4)ア」と、それぞれ改める。 (10) 90頁12行目の「原告」を「乙(判決注:原告)」と、20行目の「乙(判決注:原告)」を「乙」と、26行目の「本件業務提携準備契約の締結時点」を「本件契約締結時点」と、91頁9行目の「●%以内」を「最終販売価格の●%以内」 と、92頁3行目の「製造及び販売」を「製造及び販売)」と、8行目の「基準期」を「基準機」と、それぞれ改める。 (11) 94頁25行目の「D及びEら」を「Eら」と、95頁6行目の「甲29、30、乙17、18」を「甲29、乙17」と、96頁25行目の「被告は」を「被告のF某は」と、97頁1行目の「甲31、乙19」を「甲31」と、2行目の「原 告を訪問し」を「原告のE及びGの訪問を受け(乙20)」と、3行目の「原告は」を「原告のGは」と、20行目の「甲32」を「甲32、乙116、276」と、98頁8行目の「その旨」を「試作機をサムスン社(温陽工場)に出荷し、今後、搬入・評価予定である旨」と、99頁12行目の「疑問」を「疑念」と、100頁2行目の「H某」を「H」と、5行目の「原告が」を「原告のGが」と、それぞれ 改める。 - 30 -(12) 102頁2行目の「甲8」を「甲8、乙75」と、23行目の「Iは」を「Iは、別件訴訟1の控訴審において行われた代表者尋問において」と、103頁 れぞれ 改める。 - 30 -(12) 102頁2行目の「甲8」を「甲8、乙75」と、23行目の「Iは」を「Iは、別件訴訟1の控訴審において行われた代表者尋問において」と、103頁8行目の「同コ」を「前記(1)コ」と、13行目の「原告による」から14行目末尾までを「原告による許諾の条件や期間に係る記載はなく、」と、それぞれ改める。 (13) 105頁6行目の「Eは」を「Eは、別件訴訟1の控訴審において行われた 証人尋問において」と改める。 2 当事者の当審における追加及び補充主張に対する判断(争点②③⑤関係)(1) 被告製品の特定について(争点②③)被告は、被告製品は、ユーザの要望に合わせて仕様が異なるから、5種に分けて検討すべきであると主張するが、被告の主張する「仕様」は、納品した被告製品に ついてそのように設定したというにすぎず、GUIにより光量基準にするか座標基準にするか、また、エッジオフ区間を設定するか否かという点について変更することが可能であるものと認められるから(甲128、弁論の全趣旨)、その操作が9ステップあることを踏まえてもなお、納品された被告製品の設定ないしレシピ別に区分して検討するべきとはいえない。被告製品を、被告エンジンBを搭載した製品で あるAF固定のもの(被告旧製品。対象製品1(2)B)と、AF低追従のもの(被告新製品。対象製品1(1)及び1(2)A)とに分けて充足性を検討することは相当であり、被告の上記主張は採用することができない。 (2) 被告新製品における切断予定ラインの一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について(争点③関係) ア本件各発明では、レンズを初期位置に保持した状態で、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成され 一端部における改質領域の形成(構成要件1G、1H及び2A)について(争点③関係) ア本件各発明では、レンズを初期位置に保持した状態で、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成されるものであるが(構成要件1H、2A)、補正の上引用した原判決の第3の4(3)(原判決79頁10行目から82頁25行目まで)のとおり、AF低追従の制御がされているときは、「初期位置に」「レンズを保持」されているとは認められない。 イ被告新製品において、加工対象物の検出に光量基準を用い、エッジオフ区間 - 31 -を0mmとし、面取り(ベベル)のあるシリコンウェハを加工する場合には、検出される光量が、ユーザの設定する閾値を超えた地点、すなわち、シリコンウェハの端ではなく、一定の厚みを有するに至った位置においてエッジが検出されたものと判定されることになるから、シリコンウェハの端とエッジ検出位置は同一ではない。 そうすると、加工対象物であるシリコンウェハの端からエッジ検出位置までの区間 において、レンズ位置が鉛直方向に固定されることとなり、被告新製品は、「初期位置に」「レンズを保持する」ことになる。 ウしかしながら、次のとおり、上記のレンズ位置が保持される区間において改質領域が形成されるとは認められない。 (ア) 原告の実験結果(甲136)によると、原告は、4種類の実験を行っている ものの、そのうち被告製品に係るものは1つのみであり、かつ、当該製品は、NS900を搭載した被告旧製品であって、その余の実験は原告製のSDエンジンを用いていることから、被告新製品の充足性を裏付けるものとはいえない。そして、被告旧製品を用いた実験の結果は下図のとおりであり、浅い位置で加工されたものについてはエッジ検出位置よりも左側に黒い跡があるもの ていることから、被告新製品の充足性を裏付けるものとはいえない。そして、被告旧製品を用いた実験の結果は下図のとおりであり、浅い位置で加工されたものについてはエッジ検出位置よりも左側に黒い跡があるもののこれが改質領域であるか 否かは必ずしも明らかではない。また、深い位置で加工されたものについては、エッジ検出位置よりも左側には加工の痕はみられず、改質領域が形成されていない。 - 32 - (イ) 被告の実験結果(乙282)は次のとおりであり、光量基準を用いて、エッ ジオフ区間を0mmとし、深さ60μ及び680μmにおいて加工したところ、深さ680μmで加工した場合には端部に改質領域は形成されない。 - 33 - そして、被告のシミュレーション結果によると、上図の加工痕は全てエッジ検出位置(現実のウェハエッジから250μmの位置)よりも右側に位置している(乙282)。 また、被告の上記実験結果を原告の実験結果と重ね合わせると次のとおりとなり、これによると、深さ60μmで加工した場合、エッジ検出位置よりも左側に黒い跡がみられるものの、エッジ検出位置よりも右側の加工痕(改質領域)とはやや性質が異なる痕であるようにもみえる。この点、被告は、エッジ検出位置よりも左側の加工痕は、アブレーションであると主張しているところ、アブレーションとは、固 体の表面にレーザ光を照射したときに、プラズマの発生とともに固体表面の構成物質が爆発的に放出される現象をいい(乙206)、上記深さ60μmで加工した場合にエッジ検出位置よりも左側にみられる黒い跡がアブレーションによるものと考えて矛盾しない。 - 34 - そうすると、被告新製品において、「初期位置に」「レンズを保持」した状態で、「改質領域が 出位置よりも左側にみられる黒い跡がアブレーションによるものと考えて矛盾しない。 - 34 - そうすると、被告新製品において、「初期位置に」「レンズを保持」した状態で、「改質領域が形成」されると認めるに足りる証拠がないというほかない。 - 35 -したがって、被告新製品は、構成要件1G、1H及び2Aを充足するとは認められない。 (3) 均等侵害の成否(争点③関係)原告は、被告新製品がAF固定に替えてAF低追従を採用していることについて、均等侵害が成立すると主張する。 本件各発明は、初期位置にレンズを保持した状態(AF固定の状態)で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成した後に、レンズを保持した状態を解除することで、加工対象物の端部における形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成するというものであり(補正の上引用した原判決の第3の1(2)参照)、切断予定ラインの一端部に改質領域を形成する際に、レンズを初期位置に保持すること は、本件各発明の本質的部分に当たる。ところが、被告新製品におけるAF低追従は、①想定位置の値(想定ピエゾ現在位置)、②現実のシリコンウェハの主面の高さの値及び③現実のピエゾアクチュエータの位置の値という3つのパラメータから算出した変動値である制御信号を用いて、レンズと主面との間隔を調整する制御をするというものであって、レンズを初期位置に保持していない。そうすると、原告の 主張する本件各発明の構成と被告新製品の構成の異なる部分は、発明の本質的部分であるから、均等の第一要件(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決参照)を満たさない。 また、AF低追従に係る技術は、レンズの固定を解除したときのフォーカスずれを回避しようとするものであって 要件(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決参照)を満たさない。 また、AF低追従に係る技術は、レンズの固定を解除したときのフォーカスずれを回避しようとするものであって(乙60【0008】、【0010】、乙61【00 08】、【0010】)、本件各発明を前提としつつも、本件各発明とは異なる技術思想を有する別個の特許権の対象となる技術である。AF低追従とAF固定は解決しようとする課題が異なっており、AF低追従が解決しようとする課題は、AF固定によりレンズを固定したことにより生ずるものであるから、被告新製品の製造時に、AF固定をAF低追従へと置き換えることについて、当業者が容易に想到すること ができたと認めることはできない。よって、被告新製品は均等の第3要件も充足し - 36 -ない。 したがって、その余の点につき検討するまでもなく、被告新製品について均等侵害は成立しない。 (4) 被告旧製品の製造等に対する実施許諾の有無に係る被告の予備的主張について(争点⑤関係) 補正の上引用した原判決の第3の6(2)(原判決102頁10行目から106頁15行目まで)のとおり、原告が被告に対し、番号1製品の製造、販売についての許諾をしたことが認められるものの、それを超えて、本件業務提携契約が終了するまでの間に被告が製造、販売等する被告旧製品についての実施許諾をしていたと認めるに足りる証拠はなく、また、サムスン社向けの被告旧製品の製造、販売等の全 てについて実施許諾をしていたと認めるに足りる証拠もない。したがって、被告の予備的主張は採用することができない。 なお、原告は、各対象製品の製造等について実施許諾があったという被告の主張について、紛争の蒸し返しであり、信義則違反であると主張するが、 。したがって、被告の予備的主張は採用することができない。 なお、原告は、各対象製品の製造等について実施許諾があったという被告の主張について、紛争の蒸し返しであり、信義則違反であると主張するが、別件訴訟1の判決が確定したのは令和5年6月7日であり、それ以前に上記被告の主張がされて いたことからすると、信義則に違反するとまではいえない。 3 差止及び廃棄請求について(争点⑥⑦関係)(1) 原判決の第3の7(106頁16行目から107頁4行目まで)に記載するとおりであるからこれを引用する。ただし、107頁3行目の「認められず」から4行目までを「認められない。また、被告が被告旧製品を販売等するために所持し ていることを認めるに足りる証拠がないから、原告の被告旧製品に係る廃棄請求にも理由がない。」と改める。 (2) 対象製品2については、製品自体が存在したことが認められず、その構成が明らかではないことから本件特許権を侵害するものであると認めるに足りない。そうすると、対象製品2についての差止及び廃棄請求には理由がない。 4 原告の損害の発生及びその額について(争点⑧から⑩まで) - 37 -(1) 認定事実以下のとおり原判決を補正するほかは、原判決の第3の8(1)(原判決107頁7行目から111頁15行目まで)に記載するとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)ア 107頁13行目から15行目までを削り、25行目の「アラインメント」 を「アライメント」と、108頁4・5行目の「Z軸ステージ及びソフトウェア設計」を「Z軸ステージ等」と、109頁14行目の「乙95~97、128、129」を「乙95~97、127~129、139」と、それぞれ改める。 イ 109頁24行目から26行目を びソフトウェア設計」を「Z軸ステージ等」と、109頁14行目の「乙95~97、128、129」を「乙95~97、127~129、139」と、それぞれ改める。 イ 109頁24行目から26行目を次のとおり改める。 「被告は、平成30年3月から令和4年6月までの間に、いずれも海外の法人で あるサムスン社、TI社、スマートに対し合計●●台の被告新製品(対象製品1(1)及び1(2)A)を販売し、日本法人であるTDK株式会社に対し●台の対象製品1(1)を販売した。」ウ 111頁5・6行目の「原告の特許ポートフォリオを侵害する」を「原告の有する15件の特許権(本件特許権(請求項8)を含む。)を侵害する」と改め、6 行目の「乙74」の前に「甲9、」を加える。 (2) 特許法102条2項の適用についてア特許権者が特許権侵害を理由に民法709条の不法行為に基づく損害賠償を請求する場合には、特許権者において、侵害者の故意又は過失、自己の損害の発生、侵害行為と損害との間の因果関係及び損害額を立証する必要があるところ、特許法 102条2項は、特許権者が故意又は過失により自己の特許権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者が受けた損害の額と推定すると規定している。 イこの規定の趣旨は、特許権者による損害額の立証等には困難が伴い、その結 果、妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者 - 38 -が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定し、これにより立証の困難性の軽減を図ったものであり、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかった - 38 -が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定し、これにより立証の困難性の軽減を図ったものであり、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許権者がその侵害行為により損害を受けたものとして、特許法102条2項の適用が認められると解すべきである(知的財産高等裁判所平成25年 2月1日特別部判決(同裁判所平成24年(ネ)第10015号)、同裁判所令和元年6月7日特別部判決(同裁判所平成30年(ネ)第10063号)、令和4年特別部判決参照)。 ウこれを本件について、前記(1)の認定事実を前提として検討すると、本件では、原告のSDエンジンは、SD装置が本件各発明を含むステルスダイシング技術を用 いたレーザ加工機能を実現するために必須となる部品であって枢要な機能を担うものであり、被告による被告旧製品(侵害品)の製造及び輸出・販売行為がなかったならば、原告は自らのSDエンジンを被告又は他のSD装置の製造者に販売することにより、輸出・販売された被告旧製品に対応する利益が得られたであろうということはできる。しかしながら、原告はSDエンジンを販売していたものであって、 侵害品と同種の製品であるSD装置を製造・販売していたものではない。また、原告において自らSD装置を製造する能力があり、具体的にSD装置を製造・販売する予定があったことを認めるに足りる証拠もない。原告の逸失利益はあくまでもSDエンジンの売上喪失によるものであって、SD装置の売上喪失によるものではない。そして、SD装置とSDエンジンとは需要者及び市場を異にし、同一市場にお いて競合しているわけではない。したがって、SD装置の売上げに係る被告の利益全体を D装置の売上喪失によるものではない。そして、SD装置とSDエンジンとは需要者及び市場を異にし、同一市場にお いて競合しているわけではない。したがって、SD装置の売上げに係る被告の利益全体をもって、原告の喪失したSDエンジンの売上利益(原告の損害)と推定する合理的事情はない。 エこの点、原告は、被告旧製品の限界利益のうち、SDエンジン相当部分の限界利益が原告の損害と推定されるべきであるとも主張する。しかし、SDエンジン は、SD装置の一部を構成する部品であって、その対価は製造原価を構成する多数 - 39 -の項目の一つにすぎない。そして、本件において、SD装置の限界利益のうちのどの程度の部分が、それぞれの部品に由来するものであるかを特定するに足りる事情はなく、「SDエンジン」に由来する部分を特定することは困難というほかないのであって、「SDエンジン相当部分」の限界利益を一義的に特定することはできない。 仮にこれを算出する場合にも、確立した算出方法があるわけではなく、どのような 要素を考慮し、どのような論理操作を行うかによって様々な結論を導くことが可能であるから、このように算出された限界利益の「SDエンジン相当部分」をもって本件における原告の損害を推定し、覆滅事由の主張立証責任を転換するための合理的な基礎とすることはできないというべきである。したがって、原告の前記主張は採用することができない。 オ以上によれば、本件において、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情があるとして特許法102条2項の規定の適用が認められるとはいえるものの、SDエンジン相当部分の限界利益を特定することができないから、同項の推定規定により本件における原告の損害を認定することはできない。前記各知的 法102条2項の規定の適用が認められるとはいえるものの、SDエンジン相当部分の限界利益を特定することができないから、同項の推定規定により本件における原告の損害を認定することはできない。前記各知的財産高等裁判所特別部の判決は、いずれも特許権者等にお いて特許実施品又は侵害品と市場及び需要者を共通にする製品を販売等していたという事情が存在する事案について判断したものであるから、本件について、上記のように解することと矛盾するものではない。原告は、知的財産高等裁判所令和4年8月8日判決(同裁判所平成31年(ネ)第10007号)も引用するが、同判決の事案は、特許権者が完成品を販売し、侵害者が間接侵害品である部品を販売して いた事案であって、本件のような完成品の限界利益中の当該部品に相当する部分の特定が問題になった事案ではないから、同項の適用に関する前記結論を左右するに足りるものではない。 そうすると、本件における原告の損害の認定は、特許法102条2項の推定規定の適用以外の方法で行うのが相当である。 (3) 別件訴訟2(965特許)の考慮について - 40 -被告は、別件訴訟2の対象特許である965特許による侵害を考慮し、本件と別件訴訟2において損害額を2分の1とするのが相当であると主張するが、各対象製品の製造・販売等が965特許を侵害するものであるか否かという点は、本件訴訟の審理対象となっているものではなく、仮に本件において原告に生じた損害のうち、965特許の侵害による損害と重なる部分があるとしても、本件において965特 許の侵害が成立することを前提として損害額を算定することは相当ではないから、損害の算定方法にかかわらず、被告の上記主張は採用することができない。 (4) 特許法102条1項(令和元年法律第3 許の侵害が成立することを前提として損害額を算定することは相当ではないから、損害の算定方法にかかわらず、被告の上記主張は採用することができない。 (4) 特許法102条1項(令和元年法律第3号による改正後のもの。本件は改正法の施行日(令和2年4月1日)前の事案であるが、経過規定は設けられていないから、以下においては、改正後の条文を適用する。)による損害額の算定 ア特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり、侵害者の譲渡した物の数量(譲渡数量)に特許権者がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を、特許権者の実施の能力の限度で損害額とするが、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者が販売するこ とができないとする事情を侵害者が立証したときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものと規定して、侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより、より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である(知的財産高等裁判所令和2年2月28日特別部判決(同裁判所平成31年(ネ)第10003号)参照)。 特許法102条1項の文言及び上記趣旨に照らせば、特許権者が「侵害の行為がなければ販売することができた物」(同項1号)とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者の製品であれば足り、特許権者が特許実施品又は専ら特許実施品の生産のために用いる物(部品)を販売しており、侵害行為がなければ、特許権者は自らの製品を販売することができたという関係にある場合には、特許権 者は、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける製品を販売していたというこ - ており、侵害行為がなければ、特許権者は自らの製品を販売することができたという関係にある場合には、特許権 者は、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける製品を販売していたというこ - 41 -とができるから、同項の適用が是認される。 そして、本件では、前記(2)のとおり、被告の侵害行為がなければ、原告はその製造する原告エンジンを販売することができ、これにより利益を得ることができたものと推認され、原告は、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける製品である原告エンジンを販売していたということができるから、同項を適用することができ る。 イ限界利益原告は、原告エンジンの限界利益について●●●●●●●●●円であると主張するが、前記認定事実のとおり、原告は被告に対し、●●●●●円で原告エンジンを販売していたのであるから、上記の限界利益額をそのまま採用することはできない。 そして、原告従業員の陳述書(甲73)によると、被告旧製品(対象製品1(2)B)のSDエンジンの競合品である原告エンジン(800DS一式)の原価は●●●●●円(1万円未満切り捨て)であり、これを前提とすると、原告エンジンの一台当たりの限界利益は●●●●●円(=●●●●●円-●●●●●円)、●●台分の限界利益は4億1280万円となる。 なお、LDモジュールは侵害行為がなければ特許権者である原告が販売できた物であると認めるに足りないから、LDモジュールに係る部分は考慮しない。 ウ推定の覆滅本件各発明は、ステルスダイシング機能そのものに係るものではなく、同機能を用いて加工対象物をレーザ加工する際の端部の処理に関するものであること、本件 各発明に係る技術については、AF低追従を用いるという代替技術や、端部においてはレー のに係るものではなく、同機能を用いて加工対象物をレーザ加工する際の端部の処理に関するものであること、本件 各発明に係る技術については、AF低追従を用いるという代替技術や、端部においてはレーザ加工をしないという手法(エッジオフ)が存在し、現に、被告がAF低追従を用い、エッジオフ機能を有する被告新製品を販売していることからすると、本件各発明自体の顧客吸引力が高いとは認められないこと、原告エンジンを組み込んだ被告又はディスコ社のSD装置が被告旧製品と全く同じ性能や機能を有するも のではないこと、被告が個々のユーザの製造プロセスや加工対象物の形状に応じて - 42 -SD装置の仕様を変更し、モジュールを開発して提供するなどして被告製品を販売していたこと等、本件に表われた事情を総合すると、特許法102条1項1号の「特許権者が販売することができないとする事情」に相当する数量は、7割であると認めるのが相当である。 エ損害額 以上によると、特許法102条1項により算定される損害額は、1億2384万円(=4億1280万円×(1-0.7))であり、同条3項により算定される損害額(後記(5)イ)を上回る。 なお、原告は、同条1項による損害額の算定においては、原告エンジン一台当たりの限界利益額に侵害品の販売台数を乗じた金額に、1台当たり300万円の実施 料相当額を加算すべきであると主張し、同項2号の規定は、同項1号の実施相応数量を超える数量又は特定数量がある場合において、一定の条件で実施料相当額の損害を加算することを認めている。しかし、前記ウで認定した「特許権者が販売することができないとする事情」に相当する数量は、その性質上、特許権者が実施許諾をし得たものとは認められないから、本件では、同項2号の規定を適用して、実施 。しかし、前記ウで認定した「特許権者が販売することができないとする事情」に相当する数量は、その性質上、特許権者が実施許諾をし得たものとは認められないから、本件では、同項2号の規定を適用して、実施 料相当額を加算することはできない。したがって、原告の主張は採用することができない。 (5) 特許法102条3項による損害額の算定ア以下のとおり原判決を補正するほかは、原判決の第3の8(4)アからオまで(原判決116頁8行目から120頁20行目まで)に記載するとおりであるから これを引用する。 (原判決の補正)(ア) 117頁3行目の「定められたものいえる」を「定められたものといえる」と、118頁2行目の「主張がある、」を「主張があり、」と、8行目の「付随するもの」から12行目末尾までを「付随するものであり、本件プレートそれ自体に、 原告エンジンを内蔵することを表示するものであることを離れ、別個の価値がある - 43 -と認めることはできない。」と、それぞれ改める。 (イ) 119頁13行目の「(前記(1)オ)」を「(なお、本件特許の出願前であり、●●件の特許権に本件特許権は含まれていない。前記認定事実)」と改める。 (ウ) 120頁13行目の「これらを考慮し、」を「これらに加え、本件特許権侵害があったことを前提として原告が合意するであろう本件各発明の実施の対価を考慮 すると、」と改める。 イ前記アによると、特許法102条3項により算定される損害額は、●●●●●●●●●●●円(=●●●●●●●●●●●●円×0.05)であり、同条1項により算定される損害額(前記(4)エ)を下回る。 (6) 民法709条による損害及び原告の過失の考慮 前記(1)ないし(5)のとおり、被告が原告の許 ●●●円×0.05)であり、同条1項により算定される損害額(前記(4)エ)を下回る。 (6) 民法709条による損害及び原告の過失の考慮 前記(1)ないし(5)のとおり、被告が原告の許諾を受けることなく被告旧製品(対象製品1(2)B)を製造、輸出・販売したという本件特許権侵害の不法行為により、原告に損害が生じたことが認められるが、原告の主張する諸事情を考慮しても、その損害の額が、前記(4)で推定される額を超えるものと認めるに足りない。 また、補正の上引用した原判決の第3の6(1)(原判決90頁3行目から102頁 9行目まで)の事実経緯に照らすと、被告が、10月8日打合せにおいて、サムスン社用の一台(番号1製品)についての実施許諾を得たのみならず、その後に製造、販売等するものについてまで原告から本件各発明の実施許諾を得たものと認識していたとすれば、それは、被告側の過失によるものというほかなく、同打合せ及びその後の原告の態度をもって、過失相殺をすべき理由となるものと認めることはでき ない。 (7) 損害額以上のとおり、被告が被告旧製品(対象製品1(2)B)を製造、輸出・販売したことにより原告に生じた損害の額は、1億2384万円である。 そして、本件事案の性質・内容、本件の認容額、原審及び当審の審理経過等諸般 の事情を斟酌すると、被告の本件特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護 - 44 -士費用相当額は、1300万円と認めるのが相当である。 したがって、原告の損害額は合計1億3684万円である。 (8) 弁済の抗弁被告が、仮執行宣言付判決に対して上訴を提起し、その判決によって履行を命じられた債務の存否を争いながら、同判決で命じられた債務につきその弁済としてし た給付は、それが (8) 弁済の抗弁被告が、仮執行宣言付判決に対して上訴を提起し、その判決によって履行を命じられた債務の存否を争いながら、同判決で命じられた債務につきその弁済としてし た給付は、それが全くの任意弁済であると認めうる特別の事情のないかぎり、民事訴訟法260条2項にいう「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」に当たると解するのが相当であるところ(最高裁昭和44年(オ)第993号同47年6月15日第一小法廷判決・民集26巻5号1000頁参照)、本件において、被告は、仮執行宣言付きの原判決に対して控訴し、その債務の存否を争いながら、原判決の 命じた債務の弁済として給付をしたのであり、被告が債務の不存在が確認された場合には不当利得返還請求をする旨述べていることからして上記弁済が全くの任意弁済ではないことは明らかである。したがって、本件における原告の請求の当否について当該弁済の事実を斟酌すべきではないから、被告の弁済の抗弁には理由がない。 (9) 不当利得返還請求 原告は、不法行為に基づく損害賠償請求と選択的に不当利得返還請求をしているが、不当利得額は実施料相当額であって前記(5)の額と同額であり、不法行為に基づく損害賠償請求により認められる額(前記(7))を超えない。 (10) 小括したがって、原告は、被告に対し、本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償 として、1億3684万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成30年11月1日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 5 結論以上の次第で、原告の請求は、被告に対し、1億3684万円及びこれに対する 平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限 - ることができる。 結論以上の次第で、原告の請求は、被告に対し、1億3684万円及びこれに対する平成30年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり、その余の請求にはいずれも理由がないところ、これと異なる原判決は一部不当であるから原告の控訴に基づき原判決を変更し、原告の当審における追加請求には理由がないからこれを棄却し、被告の本件控訴には理由がないからこれを棄却し、被告の申立てによる仮執行免脱の宣言は相当でないから、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 清水響 裁判官 浅井憲 裁判官 勝又来未子 別紙当事者目録 控訴人兼被控訴人(一審原告)浜松ホトニクス株式会社(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士設樂隆一尾関孝彰松本直樹大澤恒夫河合哲志同訴訟復代理人弁護士高林 直樹 大澤恒夫河合哲志同訴訟復代理人弁護士高林龍同訴訟代理人弁理士柴田昌聰同補佐人弁理士小曳満昭 被控訴人兼控訴人(一審被告) 株式会社東京精密(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士服部誠 中村閑岩間智女同訴訟代理人弁理士黒川恵加藤志麻子同補佐人弁理士相田義明 山下崇 - 47 -別紙用語略称一覧表 用語・略称意味原判決頁10月23日議事録平成26年10月23日の打合せについて被告が作成した議事録甲31 10月8日打合せ平成26年10月8日、D及びEが被告を訪問し、被告の相談役J、被告の代表取締役半導体社社長であるIと行った打合せ 10月8日議事録10月8日打合せについてIが手書きで作成した議事録乙18 本件備忘録10月8日打合せについてEが作成した備忘録甲30 108特許原告が有する特許第3867108号の特許権 188特許原告が有する特許第3935188号の特許権 711特許原告が有する特許第3990711号の特許権 965特許原告が有する特許第4601965号の特許権 号の特許権 特許原告が有する特許第3935188号の特許権 特許原告が有する特許第3990711号の特許権 特許原告が有する特許第4601965号の特許権 原告の第6製造部長であるE 原告の電子管事業本部長であるD 被告の代表取締役半導体社社長であるI 被告の代表取締役社長であるJ 原告の常務取締役電子管事業部長であるK SKハイニックス株式会社 テキサスインスツルメント 三星電子株式会社 株式会社ディスコ AF固定AF追従を停止して対物レンズを固定すること AF追従オートフォーカス追従 SDエンジンステルスダイシングに用いるエンジン SD装置SDエンジンを搭載したステルスダイシング装置 各対象製品原判決別紙対象製品目録記載の各製品 各別件訴訟別件訴訟1及び別件訴訟2を併せたもの 原告エンジン原告が製造したSDエンジン 構成要件本件各発明を分説したもの 制御指令値想定位置の値及び現実のシリコンウェハの主面の高さと現実のピエゾアクチュエータとの距離の測定値に一定の係数(0.8)を乗じた値〔具体的には、想定位置の値+(現実のシリコンウェハの主面の高さの値-現実のピエゾアクチュエータの位置)×0.8〕に基づく所定の上限値の範囲内の値 走査開始待機位置シリコンウェハの外側の走査開始の待機位置 想定位置シリコンウェハの形状計測結果等を基に算出した想定されるシリコンウェハの端部突入時のピエゾアクチュエータの位置 注)原判決頁欄に記載がないものは、本判決で定義する用語・略称である。 対象製品1対象製品1 されるシリコンウェハの端部突入時のピエゾアクチュエータの位置 注)原判決頁欄に記載がないものは、本判決で定義する用語・略称である。 - 48 - 対象製品1対象製品1(1)、1(2)A及び1(2)Bを併せたもの 対象製品1(1)原判決別紙対象製品目録記載1(1)の製品 対象製品1(2)A原判決別紙対象製品目録記載1(2)Aの製品 対象製品1(2)B原判決別紙対象製品目録記載1(2)Bの製品 対象製品2原判決別紙対象製品目録記載2の製品被告新製品対象製品1(1)及び1(2)A被告旧製品対象製品1(2)B被告製品被告新製品と旧製品を併せたもの番号1製品原判決別紙「対象製品1(2)B売上一覧」記載番号1の製品低追従緩やかなAF追従 低追従領域対物レンズを低追従の状態で走査する範囲 非加工領域レーザ加工を行わないシリコンウェハの端部から一定の範囲 被告エンジンA被告が被告エンジンBとは別に開発したSDエンジン被告新製品に搭載。 被告エンジンB被告が平成27年頃から独自に開発したSDエンジン被告旧製品に搭載。 別件訴訟1188特許及び711特許の侵害を理由とする原告の訴え(東京地方裁判所平成30年(ワ)第28929号 別件訴訟2108特許及び965特許の侵害を理由とする原告の訴え(東京地方裁判所平成30年(ワ)第28930号) 本件覚書平成19年9月18日、原告の常務取締役電子管事業部長であるK、被告の半導体社執行役員専務であるLにおいて作成した本件業務提携契約及び本件売買基本契約を修正することを目的とする覚書 本件回答原告のGが平成27年3月30日に被告のF某に対し電子メールで行った回答 本件各発明本件発明1及び2 本件業務 業務提携契約及び本件売買基本契約を修正することを目的とする覚書 本件回答原告のGが平成27年3月30日に被告のF某に対し電子メールで行った回答 本件各発明本件発明1及び2 本件業務提携契約原告と被告との間で平成15年9月18日に締結された業務提携に関する契約甲6の2 本件許諾対象製品1(2)Bを被告が製造販売することについて原告が平成26年10月8日に与えた旨被告が主張している許諾 本件試作機被告が平成27年5月頃サムスン社に対し提供した被告エンジンBを搭載したSD装置 本件特許権原告の有する特許第4509578号の特許権甲1 本件特許本件特許権に係る特許 本件売買基本契約平成18年6月8日、原告と被告との間で締結された原告エンジンの一括売買に関する売買基本契約乙14 本件発明1請求項8に係る発明 本件発明2請求項11に係る発明 本件プレートHAMAMATSU、SDE、StealhDicingEngineInside!との文字等が記載されているSDEプレート 本件報告書平成27年3月25日に被告が原告の訪問を受け、被告が製造するエンジンの展開について説明した内容について、原告のGが作成した社内的な報告書甲32、乙276 本件明細書本件特許の願書に添付した明細書及び図面甲2 - 49 -別紙各対象製品販売状況一覧 (省略) - 50 -別紙原告の主張(対象製品1(2)Bの限界利益) (省略) 申し訳ありませんが、整形するテキストが提供されていません。整形したいテキストをお送りいただければ、対応いたします。

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