令和6(わ)288 嘱託殺人

裁判年月日・裁判所
令和6年8月2日 前橋地方裁判所
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判決文本文1,660 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、群馬県伊勢崎市所在の被告人方(以下「被告人方」という。)において、脳梗塞とパーキンソン病を患っていた実母のA(以下「被害者」という。)及び被告人の姉と同居していたところ、被害者は、令和6年3月下旬頃から、パーキンソン病の症状が悪化し、一人で歩くことができなくなった上、常に体の痛みを訴えるようになった。被告人は、被害者の体をさすったり、毎回トイレの介助をしていたが、被害者は、被告人に対し、体の痛みを訴えるとともに、「殺してくれ。」「首を絞めてくれれば良い。」などと言うようになった。 被告人は、令和6年4月25日昼食後、被害者の頼みに応じて、足などをさすっていた際、被害者が、更に体の痛みを訴えると共に、「首でも絞めてくれればいいんだ」と言った。被告人は、被害者を病気の苦しみから解放してあげるためには、殺すしかないと思い、被害者を殺して、被告人とその姉も一緒に死のうと決意した。 (罪となるべき事実)被告人は、令和6年4月25日午後1時30分頃、被告人方において、被害者(当時79歳)に対し、その嘱託を受け、殺意をもって、同人の頸部を両手で締め付け、よって、同月26日午前1時18分頃、群馬県伊勢崎市内の病院において、同人を頸部圧迫による多臓器不全により死亡させて殺害した。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)罰条刑法202条後段刑種の選択懲役刑を選択 刑の執行猶予刑法25条1項保護観察刑法 刑法202条後段刑種の選択懲役刑を選択 刑の執行猶予刑法25条1項保護観察刑法25条の2第1項前段訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人は、高齢の実母の頸部を強い力で締め付けて同人を殺害したのであって、強固な殺意に基づく犯行であるといえ、その結果、被害者の生命が奪われるという重大な結果が生じている。 また、被告人は、被害者の病状や生活環境を改善させるために、医師に相談したり、介護サービスを受けたりすることができたにもかかわらず、それらは経済的に難しいと安易に考え、被害者からの「殺してくれ。」という発言に対しても、そのような悲観的な発言をしないよう声をかけることもせず、短絡的に被害者の殺害を決意したもので、その意思決定は相応の非難を免れない。しかし、前記犯行に至る経緯で述べたとおり、被害者は、令和6年3月下旬頃から、パーキンソン病の症状が悪化し、歩行困難となり、常に体の痛みも訴え、被告人に自身の殺害を求める発言もするようになり、犯行当日も体の痛みを訴え、被告人がさするなどしたが、それでもなお痛みを訴えたことが認められる。被告人が、このような被害者の状況を見て、被害者を早く楽にしてあげるほかないと考え、本件犯行に至り、その後、被告人及びその姉も心中しようと計画していたという経緯や動機には同情できる余地がないとはいえない。 以上の犯情に照らせば、被告人の刑事責任を軽くみることはできないが、被告人が事実を認め、反省の態度を示していること、前科がないこと、被害者遺族である被告人の姉が、介護をしてきた被告人を責めるつもりはない旨証言していることなど被告人のために酌む ることはできないが、被告人が事実を認め、反省の態度を示していること、前科がないこと、被害者遺族である被告人の姉が、介護をしてきた被告人を責めるつもりはない旨証言していることなど被告人のために酌むべき事情も認められるので、本件については、被告人に対し、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えることとした。もっとも、被告人の生活の状況等にかんがみると、猶予の期間中保護観察に付し、社会内での改善更生を支援するのが相当であると判断した。 (求刑・懲役5年)令和6年8月2日前橋地方裁判所刑事第2部裁判官黒田真紀

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