平成21(行ウ)59 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件(通称 大阪中央労基署長遺族補償等不支給処分取消)

裁判年月日・裁判所
平成23年10月26日 大阪地方裁判所
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判決文本文40,150 文字)

主文 1 Y労働基準監督署長が原告に対し,平成18年10月6日付けでなした遺族補償年金及び葬祭料についての不支給処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文1項同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 原告の夫であるA(昭和24年9月28日生。以下「亡A」という。)は,平成17年9月29日,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(以下「本件疾病」といい,同疾病の発症を「本件発症」という。)を発症し,同年10月9日,本件疾病により死亡したところ,原告は,平成18年4月21日,Y労働基準監督署長(以下「原処分庁」という。)に対し,亡Aの本件疾病による死亡が業務上の事由によるものであるとして,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づいて,遺族補償年金及び葬祭料の請求を行ったが,原処分庁は,同年10月6日,本件疾病は,業務上の事由に基づくものではないとして,不支給決定(以下「本件処分」という。)をした。 (2) 本件は,原告が被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。 (以下,平成17年の月日には特に断らない限り単に月日のみで記載する。) 2 前提事実(ただし,文章の末尾に証拠等を掲げた部分は証拠等によって認定した事実,その余は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告の夫である亡Aは,平成13年3月,乙株式会社(以下「本件会社」という。)に入社し,関西リージョナルマネージャー(大阪事務所長)として,東海及び西日本全域の通信ネットワークの構築・保守管理等の責任者としての業務を行っていた(以下,同会社の大阪事務所を「大阪事務所」という。)。 イ本件会社は,携帯電話等の 事務所長)として,東海及び西日本全域の通信ネットワークの構築・保守管理等の責任者としての業務を行っていた(以下,同会社の大阪事務所を「大阪事務所」という。)。 イ本件会社は,携帯電話等の通信機器の販売,通信ネットワークの構築についての世界的メーカーである乙社の日本法人であり,日本において,携帯電話の通信ネットワーク事業等を行っていた。 (2) 認定基準厚生労働省は,脳血管疾患及び虚血性心疾患(以下「脳・心臓疾患」という。)に係る業務起因性判断のため,「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」の検討結果(同検討会報告書〔乙7。以下「専門検討会報告書」という。〕)を踏まえて,平成13年12月12日付け「脳血管疾患及び虚血性心疾患(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」(乙5)と題する同省労働基準局長通達(基発第1063号)でその認定基準(以下「認定基準」という。)を定めた。 (3) くも膜下出血について頭蓋内血管の破綻により,脳のくも膜下腔内に出血する病態をくも膜下出血という。外傷を別とすると,くも膜下出血の最も多い原因は,脳動脈瘤の破裂であり,その中でも嚢状動脈瘤の破綻で起こることが多い。そして,脳動脈瘤は,高血圧や動脈硬化等の後天的な危険因子のない日常生活の下での自然的経過においても,局所的な血管壁の脆弱性と血行力学的要因があいまって発生し,数年から数十年の長期間をかけて成長し,臨界に達すれば,日常生活におけるあらゆる状況において破裂し得るものであるというのが今日の医学的知見である。 (4) 本件処分に至る経緯ア亡Aは,9月29日,本件会社本社(以下,単に「本社」という。)での会議終了後,接待先の居酒屋において,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(本件疾 。 (4) 本件処分に至る経緯ア亡Aは,9月29日,本件会社本社(以下,単に「本社」という。)での会議終了後,接待先の居酒屋において,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(本件疾病)を発症し,東京都目黒区所在のP病院に救急搬送されて入院し,開頭クリッピング手術等の治療を受けたが,10月9日,本件疾病により死亡した。亡Aには本件発症当時,複数の脳動脈瘤があり,脳動脈瘤破裂によりくも膜下出血を発症して死亡するに至ったものと判断される。 (乙14,19)イ原告は,平成18年4月21日,原処分庁に対し,亡Aの本件疾病による死亡が業務上の事由によるものであるとして,労災保険法16条に基づく遺族補償年金及び同法17条に基づく葬祭料の請求をしたところ,原処分庁は,同年10月6日,労災保険給付の不支給決定(本件処分)をなした。 (乙1ないし3)ウ原告は,本件処分を不服として,平成18年11月21日,O労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求を行ったが,同審査官は,平成19年9月5日,同審査請求を棄却する旨の決定を行った(乙3)。 エ原告は,同決定を不服として,平成19年10月29日,労働保険審査会に対し,再審査請求を行ったが,同審査会は,平成20年10月17日,同再審査請求を棄却する旨の裁決を行った(甲1,乙3)。 オ原告は,平成21年4月15日,本件処分の取消しを求める訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点本件発症ないし亡Aの死亡について業務起因性が認められるか否か。 4 争点に対する当事者の主張(原告)(1) 業務起因性の判断基準最高裁判所は,労災保険法における業務起因性の判断に当たって,具体的な事実として,以下の3つの要件を掲げて 4 争点に対する当事者の主張(原告)(1) 業務起因性の判断基準最高裁判所は,労災保険法における業務起因性の判断に当たって,具体的な事実として,以下の3つの要件を掲げているところ,多くの下級審判決の脳・心臓疾患に係る業務起因性の判断枠組みも,同要件に基づいてなされている。 ア被災労働者が従事した当該業務が同人の素因又は基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させる要因ともなり得るものと認められることイ被災労働者の素因又は基礎疾患があり,これが増悪して発症した場合,被災労働者の素因又は基礎疾患が当該業務に従事する以前に確たる発症因子がなくても自然経過により発症する寸前にまで進行していたと認められないことウ被災労働者の従事した当該業務以外に同人の素因又は基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させる要因となる確たる発症因子が認められないこと(2) 亡Aの本件発症前の長期間に亘る長時間労働ア亡Aの始業時刻亡Aの始業時刻は,亡Aの部下であるB(以下「B」という。)及びCの証言にあわせて,原告が亡Aから地下鉄に乗る直前の午前7時30分ころ毎朝電話を受けていたこと(原告)からして,遅くとも午前8時45分と推定すべきである。 イ亡Aの昼の休憩時間亡Aの昼の休憩時間は,会議が昼を挟んでいた場合,ランチミーティングを行う場合を問わず,30分とみるべきである。 ウ終業時刻(ア) 証人C及び同Bの証言,本件当時の携帯電話業界の状況(契約数が増加し,中継基地も大幅に増加していた。)にあわせて,亡Aの業務が多忙であったことからして,社外での接待等がなく,事務所で終業した場合における亡Aの終業時刻は,早くとも午後10時と認定すべきである。 中継基地も大幅に増加していた。)にあわせて,亡Aの業務が多忙であったことからして,社外での接待等がなく,事務所で終業した場合における亡Aの終業時刻は,早くとも午後10時と認定すべきである。 (イ) 被告は,社内における業務終了後に実施される飲食を伴う接待について,労働時間に含めるべきではない旨主張する。しかし,①亡Aは,接待を重要な業務の一環と位置付け,また,本件会社もそれを認めていたこと,接待の相手は,甲株式会社(以下「甲」という。)の役員,部・課長ら社員,同関連会社の役員,社員,更には大阪事務所や本社や他の地域事務所の社員らとのチームビルディング等,広範囲に及んでいること,②本件会社は,甲の取引を獲得ないし維持するため,協力会社に工期の短い工事等,無理な対応をお願いする立場であって,a,b,c,d等の協力会社に対する接待等が必要であったこと,また,顧客等の接待は,亡Aの重要な業務であり,それをもって本件会社の業績に貢献していたこと,③亡Aの後任であるCも接待が重要であると認識していること,④同接待の場は,甲等の関係者との間では,全体の公式の保全会議の中では議題しにくい個別の技術的な問題点をより具体的に議論できる場であったこと,また,甲関係者も,同接待の場について,技術的に詳しい亡Aから本音で込み入った技術的な話を聞く場として位置付けていたこと,⑤打合せ・接待は週に5回くらいあり,亡Aにとって,事務所を出た後の接待や打合せ業務の負担は相当なものであり,大阪事務所における接待費の月額枠は20万円であったが,実際の亡Aの接待は,これに収まるものではなく,それを超える額については,ケア(保全)やインプリ(建設)の経費処理を行っていたこと,本件会社は,亡Aの死亡後,原告に経費精算されていなかった200万円を超える交際費立替 これに収まるものではなく,それを超える額については,ケア(保全)やインプリ(建設)の経費処理を行っていたこと,本件会社は,亡Aの死亡後,原告に経費精算されていなかった200万円を超える交際費立替金を支払うなど,同会社も亡Aが多くの接待・会合を業務としてこなしていたことを認めている。 したがって,亡Aの同接待は,業務の延長というべきである。 ところで,亡Aが顧客である甲や協力会社の役員・社員への接待のため,大阪事務所を出る時刻は,接待相手の仕事が終わる時刻に合わせた午後8時から午後9時ころであった。同接待は,午後12時から午前1まで及ぶのが通常であったが,業務性を有する接待業務は,少なめにみても午後10時までなされていたというべきである。 (ウ) 亡Aは,出張等も多く,多忙であったため,大阪事務所の社員らと意見交換等が十分なされていないことを補うため,社内での業務の終了後,社外で飲食しながらの会合(チームビルディングと呼ばれていた。)を行い,チームワークを作り上げており,これについてもその費用は本件会社の承認の下,その負担でなされていた。 エ休日出勤亡Aは,少なくとも月2回は休日出勤をしていたが,その特定が困難である。そこで,亡Aの休日出勤の日ないし時間は,原処分庁の認めた日並びに時間にとどめる。 オ出張の移動時間について(ア) 亡Aは,本件会社の本社のある東京や各地の営業所等に出張するため,新幹線等で移動する車中において,パソコン作業や携帯での連絡業務を行っていた。したがって,本件における亡Aの出張のための移動時間は,少なくとも業務起因性(過重負荷)を判断するにあたって労働時間と認めるべきである(別紙1「A平均時間外労働時間」一覧表[以下「別紙1一覧表」とい たがって,本件における亡Aの出張のための移動時間は,少なくとも業務起因性(過重負荷)を判断するにあたって労働時間と認めるべきである(別紙1「A平均時間外労働時間」一覧表[以下「別紙1一覧表」という。]の「移動時間」欄参照)。 (イ) 出張における平均的な乗車時間は,以下のとおりである。 大阪-東京 3時間(新幹線)大阪-名古屋 1時間30分(新幹線)大阪-広島 2時間(新幹線)大阪-仙台 1時間45分(飛行機)名古屋-東京 2時間10分(新幹線)なお,出張のための移動には,自宅から新幹線の駅や空港までアクセスする時間や,駅や空港から本社等までのアクセス時間も必要となるが,これらは含んでいない。 (ウ) ところで,被告は,原告主張の移動時間について,実際の所要時間より30分長いと主張するが,新幹線の場合,新幹線にアクセスするまでの時間や待ち時間を考慮すれば,決して原告主張の時間が長いということはない。特に,飛行機の場合には飛行場までのアクセス時間,手続に要する時間等を考えると,原告の計算より実際には相当長いことは明らかである。 (エ) そうすると,亡Aの出張中の移動時間のうち,大阪と東京との間の往復(移動)は,本件発症前の移動にみられるように,始業時刻前になされているので,その移動の時間として少なくとも新幹線の乗車時間である2時間30分が労働時間として加算されるべきである。 カ休息時間のトラブル対応等についての労働時間亡Aは,勤務時間はもちろん,勤務終了後や休日も携帯電話を所持し,甲からショートメールや電話連絡で入る通信障害等のトラブル等への対応を行っていた。大阪事務所の担当地域外 ての労働時間亡Aは,勤務時間はもちろん,勤務終了後や休日も携帯電話を所持し,甲からショートメールや電話連絡で入る通信障害等のトラブル等への対応を行っていた。大阪事務所の担当地域外のトラブルについても,それぞれの地域の事務所長より亡Aの方がはるかに技術的に高いレベルを有していたため,亡Aに電話連絡が入っていた。通信障害についてのショートメールが送信されてきた場合,亡Aは,その状況を確認して,それが重大な障害か,軽微な障害かを確認した上で,その対応を指示,連絡し,重大な障害については住居(単身赴任中の住居)近くにある甲のネットワークセンターに出向くこともあった。ショートメールによる休息時間帯の連絡は,本件発症前1か月間にも度々生じている。 亡Aが上記所持していた携帯電話に入った連絡に対して即時対応が求められていた時間は,少なくとも過重性判断に当たっては,その対象となる労働時間として評価されるべきである。亡Aの休息時間におけるオンコール体制の下での対応の実態であるが,対応並びに検討時間数は必ずしも明らかではないが,休息時間も即時対応が求められていた負荷をあわせて考えると,過重性の評価にあたっては月10時間を下回ることはない負荷として評価すべきである。 キ亡Aに係る本件発症前1週間の労働時間数亡Aの本件発症直前の9月19日から同月29日までの間については,同人の秘書であったBがスケジュール表を作成し,原処分庁に提出しているから,同スケジュール表に基づいて,同期間における労働時間を算定すべきである。 ク亡Aに係る本件発症前6か月間の時間外・休日労働時間数別紙1一覧表記載のとおりである。 (3) 本件発症直前の過重業務ア本件発症直前の長時間 べきである。 ク亡Aに係る本件発症前6か月間の時間外・休日労働時間数別紙1一覧表記載のとおりである。 (3) 本件発症直前の過重業務ア本件発症直前の長時間労働と連続した出張業務(ア) 本件発症前1週間の出張状況は,以下のとおりである。 9月20日(火) 東京→大阪22日(木) 大阪→東京26日(月) 東京自宅→大阪27日(火) 大阪→東京28日(水) 東京→大阪29日(木) 大阪→東京(イ) 亡Aは,上記(ア)記載のとおり本件発症前1週間の間,連日出張が続き,その移動時間は,午前9時に出勤できるよう早朝の時間帯であった。 イ本件発症直前の会議による精神的負荷本件発症当日における会議は,甲という重大な顧客との間の会議であって,同会議に本件会社の担当責任者であるEらが欠席したこともあって同会社から責任ある回答ができず,そのクレームに真正面に対応できなかったため,亡Aが精神的に重い負荷を受けていた。 (4) 小括(業務の量的過重性の点)ア亡Aの本件疾病発症前6か月の時間外労働時間数は,以下のとおりである(別紙1一覧表参照)。 発症1か月前 110時間発症2か月前 99時間発症3か月前 141.30時間発症4か月前 122時間発症5か月前 83.45時間発症6か月前 99.30時間イ亡Aは,本件発症前の業務による長期間の過重負荷に加えて,発症前おおむね1週間において,従前にも増して過重な業務に従事していた。長期間の過重負荷に加え,発 発症6か月前 99.30時間イ亡Aは,本件発症前の業務による長期間の過重負荷に加えて,発症前おおむね1週間において,従前にも増して過重な業務に従事していた。長期間の過重負荷に加え,発症に近接したおおむね1週間の業務による負荷が引き金となって本件発症に至ったものである。 (5) 亡Aの業務の質的過重性ア亡Aの業務は,精神的緊張を伴う業務であること(ア) 亡Aは,トラブルや故障への対処のため,24時間オンコール体制で対応するとともに,本件会社が甲に約束した改善が期限通りにできず,かえって新たに発生するトラブルが増えていく状況下で,甲の担当者の本件会社の対処への不満が募り,険悪な雰囲気で行われる甲の担当者との会議の負荷は高く,本件会社は取引中止の危機にさえ瀕するというストレスの高い業務へ繋がっていった。 (イ) また,甲との取引を維持するためには,トラブル対応を適切に適時に行うことが絶対条件であり,亡Aが従事していた業務は,かかる要求度の高い業務であった。 (ウ) そして,トラブルの発生は,亡Aのコントロールの及ばない原因で生じたり,拡大するが,保全の責任者として,また,営業の責任者として顧客と向き合って,理解の薄い本件会社の親会社のフィンランド本社に理解させて対応させなければならず,困難な業務であった。 (エ) さらに,ソフトの投入は,甲の顧客に迷惑をかけない時間帯(深夜)に行うことからも,甲の都合を中心に行われ,亡Aのコントロールの及ぶところではなかった。以上のとおり,亡Aの従事していた業務は,コントロール度が低く,裁量度も狭かった。 (オ) 本件会社は,機器やソフトのトラブルの重要度を理解せず,また,甲の怒りやいらだちを全く理解してくれず,亡Aは,甲と本件会社との間で板 は,コントロール度が低く,裁量度も狭かった。 (オ) 本件会社は,機器やソフトのトラブルの重要度を理解せず,また,甲の怒りやいらだちを全く理解してくれず,亡Aは,甲と本件会社との間で板挟みにあっていた。本件会社のトラブル対応も不十分で,解決するより発生する方が多く,それらを減らす工夫もなく,亡Aが亡くなるまでの間,改善されることがなかった。亡Aが本件会社の各地の事務所長,さらには本社の営業等の業務を支援することはあっても,本社が亡Aを支援することはなかった。したがって,亡Aの業務は精神的に負荷の重いものであった。 イ 24時間オンコール体制下での不規則勤務(ア) 原処分庁自体も,亡Aの業務が不規則な勤務であることを認めている。また,専門検討報告書において,不規則な勤務は質的過重性の要素となることを示している(乙7の98頁)。 (イ) 本件会社が甲に納入した機器やソフトに不具合やトラブルが続出し,その対応がうまくいかなかった。同トラブル対応として24時間のコールセンターがあるにはあったが,技術的に非常にレベルが低かったため,機能しておらず,亡Aが甲関係者から24時間,直接携帯電話で連絡を受ける体制で対応する必要があった。 そこで,亡Aは,24時間オンコール体制をとらざるを得ず,勤務終了後や休日の休息中も常に携帯電話のコールや携帯メールに対応しなければならず,早朝深夜,休日を問わず,基地局等のトラブルの連絡が入り,それによって睡眠中であっても突然の睡眠の中断の可能性が常に存在し,現に同連絡による突然の睡眠中断が存在した。なお,携帯電話や携帯メールによって結果的には直ちに緊急対応しなくていい連絡であったとしても,連絡が入る時点ではその通信障害等のトラブルがどの程度のものに止まるのか不明であ 然の睡眠中断が存在した。なお,携帯電話や携帯メールによって結果的には直ちに緊急対応しなくていい連絡であったとしても,連絡が入る時点ではその通信障害等のトラブルがどの程度のものに止まるのか不明であるし,RNCの故障はどの地域もかなり頻繁にあったので,直ちに対応確認する必要がありつづけたことに変わりはなかった。その結果,就寝中の電話やメールによって中途覚醒を強いられ,その後満足な睡眠をとれなくなったり,少なくとも睡眠の質が悪化していた。なお,この点に関しては,実際に呼び出されなくとも,睡眠の質が低下することは実験室実験や研修医に対して行われた調査研究による知見及び平成18年度委託研究報告書にも示されている(甲8ないし10)。 ウ小括そうすると,亡Aの業務については,質的にも過重なものであったというべきである。 (6) 結論以上のとおり亡Aには本件発症前1か月ないし6か月のいずれの月においても100時間を超える時間外・休日労働が存在し,量的過重性のみをもってしても,業務起因性が認められ,それに各種精神的負荷を総合すると,その業務起因性はより一層明らかである。したがって,本件処分は直ちに取り消されるべきである。 (被告)(1) 業務起因性の意義及び判断枠組みア労働者の死亡等が業務上のものであるというためには,業務と当該死亡等との間に条件関係があるだけでは足りず,両者の間に法的にみて労災補償を認めるに相当とする関係(相当因果関係)があることが必要である。 そこで,同相当因果関係があるといえるためには,当該死亡等の結果が,当該業務に内在する危険が現実化したものであると認められることが必要である。 イところで,脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる基礎的病態(血管病変等)が,加齢や一般生活等におけ 等の結果が,当該業務に内在する危険が現実化したものであると認められることが必要である。 イところで,脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる基礎的病態(血管病変等)が,加齢や一般生活等における種々の要因によって,長い年月の間に徐々に進行・増悪し,発症に至るものがほとんどであり,医学的にみれば,血管病変等の形成に業務が直接的に関与するものではなく,一般的に,脳・心臓疾患は,私病が増悪した結果として発症する疾病であるとの特徴がある。その意味で,脳・心臓疾患の発症には,複数の原因が競合しており,その複数の原因が結果発生に対して絡み合っているのが通常であり,各原因の結果,発生への影響等も強弱様々である。しかし,他方,労災補償制度は業務が寄与した割合に応じて労災補償給付をすることは予定されておらず,業務上であるか否かを画一的に判断する制度であるため,発症に複数の原因が競合している場合において,業務と発症との間にどの程度のつながりがあれば,条件関係のみならず,相当因果関係があるのかという問題が顕在化する。 ウこのような観点から,脳・心臓疾患発症の業務起因性については,当該脳・心臓疾患の発症が当該業務に内在する危険の現実化であるといえるためには,①当該業務による負荷が,当該労働者と同程度の年齢・経験等を有し,通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者にとって,血管病変をその自然経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められること(危険性の要件),②当該業務による負荷が,その他の業務外の要因(当該労働者の私的リスクファクター等)に比して相対的に有力な原因となって,当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること(現実化の要件)が必要である。 エなお,厚生労働省は,従前から,脳・心臓疾患の発症が業務上か否 クファクター等)に比して相対的に有力な原因となって,当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること(現実化の要件)が必要である。 エなお,厚生労働省は,従前から,脳・心臓疾患の発症が業務上か否かを判断するための認定基準を行政通達の形で示しているところ,厚生労働省労働基準局長は,最新の医学的知見を踏まえて,平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(認定基準)を策定・発出している。 そこで,本件疾病の発症についても同基準に照らして業務起因性が認められるか否か判断されることとなる。 (2) 亡Aの業務の量的過重性の点についてア出勤管理本件会社においては,勤務時間は自己申告とされているが,亡Aは,管理職であったこと,まとめて勤務時間管理表を提出していたこと等から,出退勤時刻について,正確に申告していなかった。 この点,Bは,亡Aの始業・終業時刻,勤務状況等をすべて把握していた旨証言する。しかし,同人は,飽くまでも「プロジェクトアシスタント」で,自分以外は全員専門職であったのであり,それ以外で発生するオフィス業務,業者の対応,物品の購入等を取り扱う管理部門の一員という立場にあったにすぎない。したがって,同人の上記証言は,客観的な証拠に基づかないものであって,その中には憶測によるものが少なからず含まれていると考えられる上,亡Aの勤務に関する出来事を原告の主張に沿う内容で過度に一般化したり,強調する傾向もみられることから,採用することができない。 イ始業時刻亡Aの始業時刻は,本件会社の所定始業時刻である午前9時であるとするのが相当である。同時刻とする客観的な証拠はないが,亡Aの部下であったCは,聴取書 ができない。 イ始業時刻亡Aの始業時刻は,本件会社の所定始業時刻である午前9時であるとするのが相当である。同時刻とする客観的な証拠はないが,亡Aの部下であったCは,聴取書において,亡Aが午前8時50分ころ出勤し,午前9時ころ業務を開始していたと供述している。 ところで,原告は,亡Aの仕事開始時刻が午前8時45分であると主張し,Bは同主張に沿った証言をしている。しかし,Bは,上記したとおり亡Aの勤務状況をすべて把握できる立場にあったとはいえず,同証言は信用できない。 ウ休憩時間本件会社の所定休憩時間は,正午から午後1時までの1時間であるが,通常の場合,亡Aは,30分間の昼食休憩時間をとっていたというべきである。もっとも,会議を挟んだ場合には,1時間の昼食休憩時間が確保されていた。 ところで,原告は,会議を挟んだ場合の休憩時間についても30分であった旨主張する。しかし,本件発症当日,亡AがDの誘いを断って別の関係者と昼食を取っていたからといって,それだけをもって,会議が昼を挟んだ場合における1時間の昼食休憩時間に亡Aが業務を遂行していたとはいえない。 エ終業時刻本件会社の所定終業時刻は午後5時30分である。 ところで,亡Aは,日によって終業時刻が異なっていたところ,亡Aの部下であったCは,午後8時ころまでは,事務所で仕事をしていた旨供述していることからして,その終業時刻は,平均して午後8時と考えるのが相当である。もっとも,亡Aの手帳及びスケジュール帳等の記載から,亡Aが午後8時以前に,接待や懇親会等によって退勤したことが明らかな場合は,同時刻をもって終業時刻であるとすべきである。 オ休日(ア) 本件会社の所定休日 ュール帳等の記載から,亡Aが午後8時以前に,接待や懇親会等によって退勤したことが明らかな場合は,同時刻をもって終業時刻であるとすべきである。 オ休日(ア) 本件会社の所定休日は,土曜日及び日曜日が休日となる完全週休2日制で,国民の祝日,12月30日,同月31日,1月1日,同月2日及び同月3日が休日である。 亡Aは,毎週土曜日及び日曜日の所定休日をおおむね取得しており,本件発症1か月前である平成17年8月及び本件発症4か月前である同年5月には,いずれも,5日間前後の連続した休暇を取得している。 (イ) 原告は,亡Aが少なくとも月2回は休日も仕事を行っていた旨主張する。しかし,亡Aの本件発症1か月前から同6か月前までの休日出勤については,同人の手帳の土曜日の記載欄に出張業務後の移動を推認させる記述がわずかに認められるものを除き,具体的な業務内容が記載されたものは皆無であり,このほかに亡Aが休日出勤をしたことを裏付ける客観的証拠はない。 カ労働時間外に亡Aが受信したメール(ア) 4月1日から9月29日の間において,亡Aが所定労働時間外にメールを受信したのは,次のとおりである。 4月26日午前8時12分午前8時14分5月11日午後7時06分5月18日午前8時56分午前8時58分6月21日午後9時20分午後10時03分午後10時07分6月24日午前9時6月27日午前8時50分6月28日午前8時55分7月 5日午前8時53分7月 午後10時07分6月24日午前9時6月27日午前8時50分6月28日午前8時55分7月 5日午前8時53分7月11日午前8時40分8月 1日午前8時54分午前8時55分午前8時57分8月31日午後7時12分9月10日午前11時17分(イ) 上記メールのうち,労働時間外に発信したと認められる受信メールについては,携帯電話の発信メールと同様,1通当たり10分を時間外の労働時間として加算する(なお,移動を伴わない勤務日の午前9時以前のメールについては,メール受信後,引き続き勤務した可能性が高いが,その時間は僅かであり,一律,10分の加算とした。)。 キ早朝・深夜・休日における携帯電話のメール操作と障害対応等(ア) 亡Aの携帯電話に保存されている受信メールや携帯電話の着信履歴には,その発信者が原告家族,会社関係者等,様々なものがあり,その中には,早朝,深夜又は休日における甲の通信施設の障害発生を知らせるESSのシステム発信メールや会社関係者からの改修作業に関する報告メールも含まれている。しかし,これらに対して亡Aが常に出勤して対応していたとは認められない。 (イ) また,平成17年4月から同年9月までの間,関西エリアにおいては重大障害1件,要注意障害1件が発生しているところ,重大障害と要注意障害については,リジョーナルマネージャーも対応することとされていたため,亡Aは,出動して対応したと認められる。 したがって,それぞれについて障害が発生した時刻から復旧までの時間を出動・対応に要した時間とみて,同年4月2 ーナルマネージャーも対応することとされていたため,亡Aは,出動して対応したと認められる。 したがって,それぞれについて障害が発生した時刻から復旧までの時間を出動・対応に要した時間とみて,同年4月22日について20分,同年6月22日について1時間40分を労働時間と認めるのが相当である。そうすると,早朝・深夜及び休日における労働時間について,1か月10時間を下回ることはない旨の原告の主張は理由がないというべきである。 ク所定労働時間外の出張の移動時間原告は,出張の移動時間中もパソコン作業や携帯電話での業務連絡をしており,業務を行う時間となっていたとして,所定労働時間外の移動時間を労働時間と認めるべきであると主張する。 しかし,そもそも出張先への移動は,一般的には実作業を伴うわけではなく,また,会社から受ける拘束の程度も低いことから,通常の業務から受ける負荷と同一と評価することはできない。そのため,出張先への移動時間については,自ら乗用車を運転して移動する場合等,具体的に業務に従事している実態が明確に認められる場合を除き,労働時間とは認められない。亡Aが移動時間中にパソコン作業等をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はないから,所定労働時間外の移動時間を労働時間と認めることはできない。 ケ接待等の会食の時間(ア) 亡Aの顧客等に対する接待であるが,本件会社が申請の内容及び業務目的を確認し,業務と認めて費用負担しているものであれば,業務と評価して,これを労働時間として算入することができる。しかし,それ以外のものは会食の目的が明らかではなく,業務との関連性が不明であるため,労働時間に算入できない。 (イ) 亡Aの生前の経理部に提出された48回分の経費請求書の ことができる。しかし,それ以外のものは会食の目的が明らかではなく,業務との関連性が不明であるため,労働時間に算入できない。 (イ) 亡Aの生前の経理部に提出された48回分の経費請求書のうち,領収書がなく,亡Aの死亡により事実関係の詳細が確認できないものについても,本件会社が費用として支払ったものがあるが,これは,経理処理の便宜上,一応業務との関連性があった接待にかかった経費と推定して,遺族である原告に支払っただけにすぎず,業務との関連性は全く不明というべきである。したがって,当該支払に係る会食等について労働時間として認めることはできない。また,亡Aの死亡後に事務所の机の中から発見された52回分の領収書に係る支払についても,本件会社は,亡Aへの感謝を表す意図で清算を行っているが,同領収書には日付がなく,業務との関連性が全く不明である上,亡A自身が業務との関連性のあるものとして経費請求書を提出していない。したがって,当該支払に係る会食等についても労働時間として認めることはできない。 (ウ) 企業が,契約交渉の相手方や取引先との接待経費を支払うことと,そのために費やした接待の時間のすべてが労働時間に当たるかということとは,全く別次元の問題である。企業は,ある営業活動が新たな契約の獲得や継続的契約関係の維持等,円滑な商取引のために必要かつ有益であると判断したときには,将来に向けての投資であると位置付け,接待に要した経費を支払うにすぎない。そして,接待には懇親や親睦を深めるための要素も含まれる以上,そのために要した時間がすべて一律に労働時間になるわけではなく,それが労働時間であると認められるのは,合理的な範囲(開始からせいぜい2時間)に限定されるのが相当である。 コ適正な推計方法による亡Aの労働時間 べて一律に労働時間になるわけではなく,それが労働時間であると認められるのは,合理的な範囲(開始からせいぜい2時間)に限定されるのが相当である。 コ適正な推計方法による亡Aの労働時間亡Aの労働時間を客観的に明らかにする関係資料は現時点では存在しない。そのため,原処分庁及び裁決庁は,亡Aの労働時間について,原告や本件会社関係者の聴取書等を参考に,亡Aに最大限有利に推算した上で,業務起因性の検討を行っているが,不正確な点がある。そこで,亡Aの労働時間を再計算し,送受信メールの点も勘案した上で訂正も含めると,以下のとおりとなる(その内訳は,別紙2「労働時間集計表」記載のとおりである。)。 (ア) 本件発症当日の状況及び労働時間① 亡Aは,本件発症当日の9月29日午前,大阪の単身赴任先の住居から新幹線で東京の本社に出張し,午前9時から午後4時半までの間,顧客である甲と本件会社との会議(ケアミーティング)に出席した。同会議は,月1回,本件会社と甲の間で締結されていたW-CDMAネットワーク構築契約に基づく甲へのサービス提供の実情について検討する会議であり,本件会社の社員と甲の各地域ネットワークセンターの課長らが出席し,甲の各地区を統括する課長から契約内容の履行状況の問題,主に通信トラブルの解消に係る要求が出され,それに対して,本件会社がどのように対処するかを回答したり,協議したりするという会議であった。 本件発症当日の会議のメインスピーカーは,本社のケアチームであった。同チームの責任者は,ケアディレクターのEであり,ケアマネージャーのTとケアアシスタントマネージャーK(以下「K」という。)の3名が,会議の進行と顧客からの要求に対する回答を行う立場にあった。しかし,責任者のEと は,ケアディレクターのEであり,ケアマネージャーのTとケアアシスタントマネージャーK(以下「K」という。)の3名が,会議の進行と顧客からの要求に対する回答を行う立場にあった。しかし,責任者のEとKが会議に出席していなかったので,亡Aは,会議の冒頭に「何で,Eさん・Kさんがいないんだよー」と口にしていた。そこで,当日の会議は,ケアマネージャーのTが,メインスピーカーとして進行役を務めた。亡Aは,会議の出席者にすぎず,急遽,進行役となったわけでもなく,会議の責任を負う立場でもなかった。当日の会議では,顧客から要望やクレーム等が出され,その対応策について協議したが,責任者であるEが出席していなかったため,決定には至らず,問題の解決が後回しになり,いつもより少し早く終了した。もっとも,同会議のときだけではなく,以前から,ケアミーティングの際には,本件会社のサービス部門に対して,甲側から出される要求は,いつも厳しいものであった。 亡Aは,同会議終了後,会議に出席していた甲の社員であるDらとともに近くの居酒屋に赴き,会食中に本件疾病を発症したが,会食中,体調が急変するまでの亡Aの様子はごく普通であった。 ② 亡Aは,9月29日,本社で行われた会議に出席した。同会議は,午前9時から午後4時30分ころまで,1時間の休憩を挟んで開催された。したがって,本件発症当日の労働時間は,6時間40分であった(別紙2「労働時間集計表」参照)。 (イ) 本件発症前1週間の労働時間① 9月29日 6時間40分② 9月28日 8時間③ 9月27日 9時間④ 9月26日 9時間⑤ 9月25日~23日いずれも休日亡Aの所定労働時間は,午前9 ② 9月28日 8時間③ 9月27日 9時間④ 9月26日 9時間⑤ 9月25日~23日いずれも休日亡Aの所定労働時間は,午前9時から午後5時30分までの7時間30分(1時間の休憩時間を含む。)であるところ,亡Aの本件発症前1週間の労働時間は,上記のとおりであり,本件発症当日が6時間40分であり,本件発症前日が8時間であるから,所定労働時間に比較して,特に過度の長時間労働とはいえない。また,本件発症当日から本件発症日3日前までは,順に,6時間40分,8時間,9時間,9時間であり,本件発症日4日前から7日までは休日であるから,所定労働時間と比較して,特に過度の長時間労働とはいえないし,うち3日間は休日であったから,十分に休養がとれていたといえる。そうすると,亡Aは,本件発症直前から前日までの間の業務が特に過重であったとはいえないし,本件発症前おおむね1週間以内の業務が特に過重であったとも,それが継続していたともいえない。 (ウ) 本件発症前6か月の労働時間総労働時間時間外労働時間平均時間外労働時間① 本件発症前1週間 32時間40分 0時間00分② 本件発症前1か月 197時間10分 28時間30分③ 本件発症前2か月 175時間30分 28時間40分 28時間35分④ 本件発症前3か月 203時間10分 43時間10分 33時間26分⑤ 本件発症前4か月 236時間10分 60時間10分 40時間07分⑥ 本件発症前5か月 194時間40分 41時間40分 40時間26分⑦ 本件発症前6か月 199時間20分 41時間30分 40時間36分 分 60時間10分 40時間07分⑥ 本件発症前5か月 194時間40分 41時間40分 40時間26分⑦ 本件発症前6か月 199時間20分 41時間30分 40時間36分ところで,脳・心疾患発症前1か月間ないし6か月にわたって,1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は,業務と同疾患発症との関連性が弱いが,おおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど,業務と同疾患発症との関連性が徐々に強まると評価できる。また,同疾患発症前1か月間におおむね100時間又は発症2か月ないし6か月にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と同疾患発症との関連性が強いと評価できる。なお,ここでいう時間外労働時間数は,1週間当たり40時間を超えて労働した時間数であり,また,休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発症との関連性をより強めるものであり,逆に,休日が十分確保されている場合は,疲労は回復ないし回復傾向を示すものであるとされている。 そこで,亡Aの本件発症前1ないし6か月の労働時間であるが,上記したとおり,亡Aについては,業務と脳・心疾患発症との関連性が強いと評価される本件発症前1か月の時間外労働時間は28時間30分であり,おおむね100時間を超える時間外労働時間は認められず,同様に,業務と脳・心疾患発症との関連性が強い評価される本件発症前2か月ないし6か月にわたっても1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働は認められない。また,亡Aは,毎週土曜日及び日曜日の所定休日をおおむね取得しており,本件発症1か月前である平成17年8月及び本件発症4か月前である同年5月には,いずれも,5日間前後の連続した休暇を取得し,休日が十分確保されて 毎週土曜日及び日曜日の所定休日をおおむね取得しており,本件発症1か月前である平成17年8月及び本件発症4か月前である同年5月には,いずれも,5日間前後の連続した休暇を取得し,休日が十分確保されているといえる。したがって,亡Aにつき,業務から生じる疲労は回復ないし回復傾向にあったというべきである。亡Aの上記労働時間からすると,亡Aは,本件発症前おおむね6か月間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に従事していたとは認められない。 サ異常な出来事の不存在本件発症当日の会議における甲側の要求は普段と異なるところはなく,これに対する亡Aの様子も特段異なるところはなかった。また,亡Aは,顧客である甲からの納期遅れ等に関するクレームに対応する本件会社の姿勢に立腹し,これを正そうとするものと解される発言をしているが,それ以上に声を荒げたり,怒鳴ったりというような様子はなく,他に本件疾病発症直前から前日までの間に亡Aが異常な出来事に遭遇したことを窺わせる事実はない。 (3) 亡Aの業務の質的過重性についてア不規則な勤務の成否及びその内容について(ア) 不規則な勤務については,予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度,事前の通知状況,予測の度合い,業務内容の変更の程度等を勘案して検討し,評価するのが相当である。 (イ) 原告は,亡Aが,24時間オンコールの体制で,突然の睡眠の中断の可能性が常に存在するなど,不規則な勤務であった旨主張する。 ① 亡Aの携帯電話に保存されている受信メールや携帯電話の着信履歴には,その発信者が原告・家族・会社関係者等様々なものがあり,その中には,早朝,深夜又は休日における甲からの通信施設の障害発生を知らせるESSのシステム発信メ ている受信メールや携帯電話の着信履歴には,その発信者が原告・家族・会社関係者等様々なものがあり,その中には,早朝,深夜又は休日における甲からの通信施設の障害発生を知らせるESSのシステム発信メールや会社関係者からの改修作業に関する報告メールも含まれている。しかし,本件会社においては,保守作業や機器の入替作業は夜間に行われることが多く,作業プロセスとして,責任者である亡Aの携帯電話にメールで報告されるようになっていた。したがって,そのようなメールによる報告があったとしても,それによって,亡Aが出動して対応することはまれであった。 したがって,同報告に係るメール等が送信された際に,常に亡Aが出動していたとみることはできない。 ② また,亡Aは,早朝,深夜及び休日に受信したメールに対してメールによる返信をしたことは多くなく,早朝,深夜及び休日における同着信に対して常に折り返し電話をかけていたわけでもない。したがって,亡Aが上記メール等に対して常に対応していたとも認められない。 ③ そして,システムのバージョンアップ等の更新,改修作業に伴う障害の発生については,同更新作業等が事前に日程が組まれていることもあって,仮に同発生の連絡が早朝・深夜・休日であったとしても,事前に予測可能なものも多い。したがって,常にメール連絡があり得る状態の下で緊張を強いられていたということもできない。 ④ 亡Aが上記メール等によって出動して対応することはまれである上,メール等に対して常に対応しなければならなかったこともなく,また,事前に連絡が予測可能な場合も多かったことから,亡Aは,本件発症に近接した時期(本件発症前おおむね1週間)において,日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような「不規則な勤務」であっ 連絡が予測可能な場合も多かったことから,亡Aは,本件発症に近接した時期(本件発症前おおむね1週間)において,日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような「不規則な勤務」であったり,発症前の長期間(本件発症前おおむね6か月間)にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような「不規則な勤務」があったとはいえない。 イ出張業務について(ア) 出張については,出張中の業務内容,出張(特に時差のある海外出張)の頻度,交通手段,移動時間及び移動時間中の状況,宿泊の有無,宿泊施設の状況,出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況,主張による疲労の回復状況等の観点から検討し,評価するのが相当である。 (イ) 亡Aは,本件発症前1週間にかけて,9月26日から同月29日(本件発症当日)までの4日間,大阪・東京間を新幹線で移動している。 9月23日~25日休日9月26日東京自宅→大阪(通常業務)9月27日大阪→東京(会議出張)9月28日東京→大阪(通常業務)9月29日大阪→東京(会議出席)交通手段はいずれも新幹線であり,時差のある海外出張は含まれておらず,移動時間も片道約2時間半にすぎず,その間,ノートパソコン等を使用して車内で業務に従事していたと認めることはできず,自己の裁量で休息や仮眠を自由に行える環境にあったといえる。 また,いずれも同日中に往復しておらず,東京滞在中は東京の自宅で宿泊したものと推測され,疲労回復を図ることが可能であった。 したがって,亡Aは,本件発症前1週間において,日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような ,東京滞在中は東京の自宅で宿泊したものと推測され,疲労回復を図ることが可能であった。 したがって,亡Aは,本件発症前1週間において,日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような「出張の多い業務」を遂行していたとはいえない。 (ウ) 亡Aの平成17年4月から同月9月にかけての出張は,以下のとおりである(なお,出張が数日にわたる場合は出発日を基準とし,亡Aが東京の自宅に帰省している場合で業務による出張であると認められない場合を除く。)。 4月名古屋2回,東京1回,広島1回5月広島1回,名古屋1回,東京2回6月東京3回,名古屋4回,広島1回,仙台1回7月名古屋2回,東京1回8月広島1回,東京1回,名古屋1回9月広島2回,東京2回このように亡Aは,本件発症前1ないし6か月の間において,しばしば出張しているが,その回数が特に多いということはできない。 また,いずれも国内出張であり,さほど移動に時間を要するものではなく,いずれも交通至便で,かつ新幹線等の快適な交通手段が整備され,頻繁な乗り換えや待ち時間を必要としない大都市ばかりであった。そして,亡Aは,移動中にノートパソコン等を使用して車内で業務に従事していたと認めるに足りる証拠はなく,自己の裁量で休息や仮眠を自由に行える環境にあったといえる。さらに,上記出張のうち,東京出張で,宿泊を伴う場合には,東京の自宅で宿泊したものと推測され,疲労回復を図ることも可能であった。したがって,本件発症前の長期間(おおむね6か月間)にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な身体的精神的負荷を生じさせるような「出張の多い業務」に従事していたとはい 図ることも可能であった。したがって,本件発症前の長期間(おおむね6か月間)にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な身体的精神的負荷を生じさせるような「出張の多い業務」に従事していたとはいえない。 ウ精神的緊張を伴う業務であったかについて(ア) 亡Aが遂行していた業務は,大阪事務所長として,管轄下の社員を管理するとともに,西日本における本件会社の業務を統括し,通信障害の対処,各種会議への出席と対応,各地域の甲ネットワークセンターの担当責任者のフォロー等を行うというものであったところ,これらの業務は,高度な通信技術・通信機器についての専門的知識を必要とするものであったり,また,大阪事務所長としての責任も軽いものではなかった。 しかし,亡Aは,本件会社に入社する前,長年にわたって通信事業に従事してきており,メカニカルエンジニアや携帯電話の営業を担当したほか,海外での通信事業参画の経験も有していた(乙3の76頁,乙9の①④)ところ,亡Aの大阪事務所での業務は,これらの経験を活用できるものであり,入社以来約4年半にわたって業務を遂行してきていた。また,亡Aは,業務遂行に際して相当程度の裁量を有していた上,自らすべての業務を行っていたものではなく,大阪事務所の社員約60名を率いて,その裁量の範囲内でこれを自由に差配し,組織的な対応が可能な人的資源を与えられており,他方,本社には亡Aをサポートする責任者もいた。したがって,亡Aが遂行していた業務は,相当程度の困難を伴い,かつ,相当程度の責任を伴うものであったとしても,亡Aの経験・適応能力・会社の支援等からすると,亡Aにつき発症に近接した時期(本件発症前おおむね1週間)において,日常業務に比較して特に過重な身体的精神的負荷を生じさせるような「精 あったとしても,亡Aの経験・適応能力・会社の支援等からすると,亡Aにつき発症に近接した時期(本件発症前おおむね1週間)において,日常業務に比較して特に過重な身体的精神的負荷を生じさせるような「精神的緊張を伴う業務」を遂行していたとか,本件発症前の長期間(おおむね6か月間)にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な身体的精神的負荷を生じさせるような「精神的緊張を伴う業務」を遂行していたことはない。 (イ) 原告が引用する電子メールへの対応は,飽くまでも通常の業務の範囲を超えるものではない。したがって,同業務が日常業務に比較して特に過重な身体的精神的負荷を生じさせる「精神的緊張を伴う業務」であったとはいえない。 (4) 結論上記(1)ないし(3)の事実からして,亡Aの本件疾病(脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血)は,同人の先天的な素因による基礎血管病変の自然経過として発症したものというべきである。したがって,本件疾病の発症には業務起因性が認められないため,本件処分は適法というべきである。 第3 当裁判所の判断 1 業務起因性の意義及びその判断基準等について(1) 業務起因性被災労働者が労災保険法に基づいて療養補償給付ないし休業補償給付を受給するためには,当該労働者の疾病が「業務上」のものであること(労災保険法7条1項1号,12条の8第1項,2項,労働基準法75条,76条)を要し,本件では,労働基準法施行規則35条に基づき別表第1の2第9号「その他業務に起因することの明らかな疾病」により本件疾病が発症したことが要件となる。 そこで,労災保険制度が業務に内在ないし随伴する各種の危険が現実化して労働者に疾病の発症等の損失をもたらした場合に使用者の過失の有無を問わずに被 より本件疾病が発症したことが要件となる。 そこで,労災保険制度が業務に内在ないし随伴する各種の危険が現実化して労働者に疾病の発症等の損失をもたらした場合に使用者の過失の有無を問わずに被災者の損失を填補する制度であることを踏まえると,労働者が発症した疾病等が「業務上」のものというためには,当該労働者が当該業務に従事しなければ当該結果(発症等)は生じなかったという条件関係が認められるだけでは足りず,両者の間に相当因果関係,すなわち業務起因性があることを要すると解するのが相当である。 (2) 脳・心臓疾患と業務起因性脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる動脈硬化等による血管病変又は動脈瘤,心筋変性等の基礎的病態(以下「血管病変等」という。)が加齢や一般生活等における通常の負荷ないし種々の要因によって長い年月の間に徐々に血管病変等が形成・進行・増悪する経過(自然経過)を経て発症に至るものであり,本来,業務に特有の疾病ではない(乙7)。 しかし,脳・心臓疾患が発症に至る過程において,労働者が従事した業務の負荷が過重であったため,同疾患発症の基礎となる血管病変等がその自然経過を超えて増悪し,その結果,同疾患が発症した場合は,業務に内在する危険が現実化して同疾患等の疾病が発症したとして,業務起因性(相当因果関係)を認めることができる。 ところで,認定基準は,同基準設定当時における医学的知見を集約した専門検討会報告書(乙7)に基づくものであり,一応の合理性を有している。 また,同報告書に示された医学的知見自体も,一定の医学的経験則に基づいたものであって,参酌すべきものである(乙7)。しかし,同報告書によっても,脳・心臓疾患の発症機序が未だ十分解明されていない部分もあることは明らかである(乙7)上,認定基準が行 医学的経験則に基づいたものであって,参酌すべきものである(乙7)。しかし,同報告書によっても,脳・心臓疾患の発症機序が未だ十分解明されていない部分もあることは明らかである(乙7)上,認定基準が行政機関におけるその判断の統一を図るための内部指針として設定されたという特質からしても,認定基準ないしそれ自体の判断枠組みは裁判所の判断を拘束するものではないというべきである。 2 認定事実上記前提事実並びに証拠(甲3ないし6,16の①②,17,18,乙3,7,9の①ないし④,11,12,13の①ないし④,14,15,19ないし21,証人D,証人C,証人B,原告)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (1) 本件会社の業務概要本件会社は,モバイル・フォン事業部,マルチメディア事業部,ネットラークス事業部(インフラ事業),エンタープライズ・ソリューションズ事業部,カスタマー&マーケット・オペレーショングループ,テクノロジー・プラットフォームグループ,乙・リサーチセンターからなっていた。そのうち,ネットワークス事業部は,通信事業者へのネットワーク・インフラストラクチャー,サービス提供プラットフォーム及び関連サービスを提供する事業部であり,甲との間でW-CDMAネットワーク構築契約を結んでいた。 (乙12,弁論の全趣旨)(2) 大阪事務所の概要ア大阪事務所は,大阪市×区×ビル6階にあり,大阪市営地下鉄×線の×駅から徒歩数分の距離にあった。大阪事務所は,ネットワーク事業部のみであり,亡Aが本件発症した9月29日当時,亡Aを責任者とする従業員62名で構成されていた。 (乙3の91頁)イ大阪事務所の業務内容の概要は,関西地区の甲ネットワークセンター(大阪市a区所在) 亡Aが本件発症した9月29日当時,亡Aを責任者とする従業員62名で構成されていた。 (乙3の91頁)イ大阪事務所の業務内容の概要は,関西地区の甲ネットワークセンター(大阪市a区所在)における「ケア」(甲携帯電話の通話にかかる不具合[通話が途切れる,架からないなどの通信障害]に対する対処,基盤交換,ソフトバージョンアンプサービスの実施)及びプロジェクト(甲携帯電話の通話にかかる無線基地局の設置工事の発注・計画・進捗管理)並びに西日本における「ケア」及び「プロジェクト」業務の統括であった。 (乙3の29頁,71頁,9の③)(3) 亡Aの本件会社における地位等ア亡Aは,平成13年3月1日,本件会社に雇用され,大阪事務所長として大阪事務所に赴任した(乙3の68頁,76頁)。 イ亡Aは,9月29日(本件発症日)当時,ネットワークス事業部(インフラ事業)大阪事務所長の地位にあり,携帯電話事業を行う甲の第3世代携帯電話の名古屋と関西以西を中心とするインフラ整備等(通信施設の供給,設置,維持管理)の責任者であった。 (乙3の91頁)ウ亡Aは,昭和60年から本件会社に入社する平成13年3月1日までの間,携帯電話の営業業務を業とするS株式会社で同営業業務に従事していたところ,本件会社に勤務するようになってからは,S勤務中に培った甲との人脈に基づいて,甲の通信基地向けの建設,保守管理について契約を進め,大阪府下のみでも6000局,全国的には1万2000局余りの基地局についての契約を得てきた。 (乙3の106頁)エ亡Aは,妻が居住していた自宅が東京にあったため,大阪事務所長として赴任した当初から本件疾病を発症した当時まで大阪市中央区西心斎橋所在の賃貸マンションに単身で (乙3の106頁)エ亡Aは,妻が居住していた自宅が東京にあったため,大阪事務所長として赴任した当初から本件疾病を発症した当時まで大阪市中央区西心斎橋所在の賃貸マンションに単身で居住していた。同マンションは,大阪市営地下鉄御堂筋線なんば駅及び同地下鉄千日前線なんば駅から徒歩4,5分の距離にあり,大阪事務所への通勤には片道約30分を要した。 なお,亡Aは,同単身赴任中の居住場所の選定に当たっては,同居住場所近くに甲のネットワークセンターがあったこともその要因であった。 (甲16の①②,17,18,乙3の68頁,弁論の全趣旨)(4) 本件当時における携帯電話業界の状況及び大阪事務所の状況等ア本件当時(平成17年4月から9月ころ)の携帯電話業界の事業状況でるが,甲を含めて携帯電話会社は,契約数を大きく伸ばしており,それに伴って携帯電話の中継基地数も大幅に増加していた。なお,当時は,携帯電話業界自体が2G(デジタル通信)から3G(世界標準の新しいシステム)への移行期であった。 本件会社は,2Gから3Gの移行に乗じて,甲との間でbとcに加えて新たに食い込むことに成功し,甲から業務を受注することになり,携帯電話技術の進展や受注に伴って,その仕事量は大幅に伸びていった。 (証人D,同C,弁論の全趣旨)イ本件当時,携帯電話の導入時期であったところ,本件会社は,bのような日本メーカーとは異なり,100パーセント近い商品(機器やソフト)を市場に投入するのではなく,80パーセント程度の完成度で市場に投入し,その後問題点に対処しながら100パーセントに近づけていくというやり方を取っていたこともあって,初期トラブルが多かった。そのため,保全も担当し,かつ,営業も担当し セント程度の完成度で市場に投入し,その後問題点に対処しながら100パーセントに近づけていくというやり方を取っていたこともあって,初期トラブルが多かった。そのため,保全も担当し,かつ,営業も担当し甲との折衝をする立場にあった亡Aのトラブル対応の負担は重く,このトラブル対応は亡Aの生前中終わることなく続き,トラブルに対応し完了する項目より新たに発生するトラブルの方が多いという状態が続いていた。亡Aは,問題点やトラブルが解決するまで対応し続ける必要があり,生前そのような対応をとり続けていた。 (乙3の156頁,証人D,弁論の全趣旨)ウ大阪事務所は,新たな機能を加えたソフトを新規導入するに当たっての検証場所(FOA=ファーストオフィスアクセプタンス)となっていたところ,その検証により問題やトラブルがないことが確認できると新規ソフトを全国へと展開していた。そのため,ソフト導入時の初期トラブルも多く発生し,その対応も求められていた。なお,携帯電話に関するトラブル対応は,大規模な通信障害に繋がる危険等があり,その性質上,即座に対応しなければならなかった。 (証人C,弁論の全趣旨)(5) 亡Aの業務内容ア亡Aは,大阪事務所長として同事務所勤務の部下社員に対する管理監督を行い,また,各種会議への出席と対応,名古屋,広島,高松の各地域の甲ネットワークセンターの担当責任者へのフォロー等を行っていた。 (乙3の71頁,9の③)イ亡Aは,部下社員等に対する業務上の指示のほとんどをメールで行い,部下社員等からの報告のほとんどをメール及び電話で受けていた。また,亡Aが出席した顧客や協力会社を交えた定例会議においては,議題に対する協議や問題点の報告・指示が行われていた。 (乙9の②,証人C) の報告のほとんどをメール及び電話で受けていた。また,亡Aが出席した顧客や協力会社を交えた定例会議においては,議題に対する協議や問題点の報告・指示が行われていた。 (乙9の②,証人C)ウ亡Aは,定例会議等の後やその他の機会も含めて甲関係者,無線基地工事関連の協力会社,大阪事務所勤務の部下社員等と飲酒を伴う会食を日常的に行っていた(乙3の71頁,106頁,乙9の②,証人C)。 エ亡Aは,新幹線あるいは飛行機を利用して本社等で行われる会議に出席していた。同人が出席していた会議は,プログレス会議(社内の最高会議,月例開催,開催場所は本社),ケア会議(ケアミーティング,月例開催,開催場所は甲の各地区),NI会議(ネットワークインプレメント,月例開催,開催場所は本社),地域ケア会議(月例開催,開催場所は各地域),全国ロールアウト会議・全国R&R会議(月例開催,開催場所は本社),地域ロールアウト会議(地域ごとに月例あるいは週例開催,開催場所は各地域)等であった。その他,亡Aは,甲の地域ネットワークセンターを訪れ,ソフトウェアのバージョンアップ作業立会や緊急連絡による顧客対応もしていた。 (乙9の①,証人C,弁論の全趣旨)(6) 亡Aの出退勤時間等ア出退勤管理(ア) 本件会社においては,亡Aを含む従業員の勤務時間に関しては,自己申告制を採用していた。もっとも,亡Aは,管理職であり,まとめて勤務時間管理表を提出していた。 (乙3の76頁,弁論の全趣旨)(ただし,本件全証拠によるも,亡Aが同申告に当たって,正確な出退勤時刻を申告していたと認めることはできない。)(イ) 亡Aは,スケジュール表(乙3の89頁,90頁)及び手帳(乙3の48頁ないし56頁) 証拠によるも,亡Aが同申告に当たって,正確な出退勤時刻を申告していたと認めることはできない。)(イ) 亡Aは,スケジュール表(乙3の89頁,90頁)及び手帳(乙3の48頁ないし56頁)に会議,出張,接待,懇親会等について記載していた。 イ亡Aの出退勤等の時刻(ア) 出勤時刻本件会社の始業時刻は,午前9時であったが,亡Aは,おおむね午前8時45分ころに出勤していた(乙3の75頁,76頁,証人B,原告)。 (ただし,被告は,亡Aの始業時刻が午前9時であると主張する。しかし,亡Aは,単身で大阪に居住していたこと,同居住先から大阪事務所までの通勤時間は約30分程度であったことにあわせて,原告が毎朝午前7時30分ころ,亡Aから地下鉄に乗る直前に電話を受けていたこと,Bが午前8時50分ころ出勤した時には亡Aは出勤していたこと,Bが出勤すると,亡Aは,メールチャックや電話で話をしていたこと(証人B,原告)があり,以上の事実を踏まえると,亡Aは,おおむね遅くとも午前8時45分には出勤し,そのころから業務を開始していたと認められ,同認定を覆すに足りる証拠はない。)(イ) 休憩時間本件会社の所定休憩時間は,正午から午後1時までの1時間であったところ,亡Aは,約30分間で昼食をすませた後すぐに仕事にとりかかっていた。 (乙3の70頁ないし72頁,75頁,証人B)(ただし,被告は,昼食を挟んで会議が行われた場合の休憩時間については1時間とみるべきであると主張する。しかし,証拠〔乙3の70頁ないし72頁,証人C,同B〕によれば,会議を挟んだ昼食時間についても,亡Aは,日頃の業務において甲等の取引先等との間でトラブルが発生しないように心がけ であると主張する。しかし,証拠〔乙3の70頁ないし72頁,証人C,同B〕によれば,会議を挟んだ昼食時間についても,亡Aは,日頃の業務において甲等の取引先等との間でトラブルが発生しないように心がけ,また,トラブルが発生したとしてもこれを迅速適正に処理しようとしていたこと,亡Aは,昼休み時間も関連会社の従業員と飲食を伴う接待を頻繁に行っていたことが認められるところ,以上の事実を踏まえると,亡Aは,会議に参加している関連会社の者と昼食を共にし,業務を円滑に行うために昼食の機会を利用していたことが推認できる。そうすると,昼食をはさんで会議が行われた場合であっても,亡Aが1時間の休憩をとっていたとまでは認め難い。したがって,亡Aの昼の休憩時間は,昼食を挟んで会議が行われた場合を含めて,おおむね30分とするのが相当である。)(ウ) 終業時刻本件会社の所定終業時刻は,午後5時30分であったところ,亡Aは,大阪事務所において,おおむね午後8時ないし午後10時ころまで仕事をしていた。そして,午後8時以前に同事務所を出る場合であっても,その後,甲関係者や関連会社の役員等と飲酒を伴う接待に赴いたり,同事務所社員との懇親会(チームビルディングと呼ばれていた。)に出席したりしていた。 (乙3の71頁,75頁,乙9の④,証人D,証人C,証人B,弁論の全趣旨)(エ) 休日本件会社の所定休日は,土曜日,日曜日,国民の祝日及び年末年始(12月30日から1月3日まで)であったところ,本件発症前1か月ないし6か月間において,亡Aは,所定休日とおりの休日を取得していた。 (乙3の48頁ないし56頁,75頁,11,弁論の全趣旨)なお,9月10日(土)は,少なくとも所定労働時 し6か月間において,亡Aは,所定休日とおりの休日を取得していた。 (乙3の48頁ないし56頁,75頁,11,弁論の全趣旨)なお,9月10日(土)は,少なくとも所定労働時間である午前9時から午後5時30分まで労働した。 (ただし,9月10日の労働時間であるが,同月9日(金)の携帯メールに「来週月,火,水の3日間台湾携帯事業社が大阪に来るので土曜はその資料作成をします残念」と記載していること〔甲3〕,9月10日午前11時17分,亡Aは,Fに対して,「FW:RNC中国709LBS走行試験in尾道駅試験結果9/9」と題するメール〔添付ファイル付き〕を送信していること〔乙13の③〕があるところ,以上の事実を踏まえると,亡Aは,同月10日,広島出張から大阪に戻って,大阪事務所において,翌週の準備のために資料作成等の業務に従事していたことが推認される。もっとも,同日の具体的な就労時間は不明であるため,所定労働時間である午前9時から午後5時30分と認定するのが相当である。)(7) 亡Aの出張の状況等ア亡Aの出張における平均的な交通手段及び乗車時間は,以下のとおりである。 大阪-東京 3時間(新幹線)大阪-名古屋 1時間30分(新幹線)大阪-広島 2時間(新幹線)大阪-仙台 1時間45分(飛行機)名古屋-東京 2時間10分(新幹線)イ平成17年4月から同月9月の間における亡Aの出張状況等については,36頁ないし39頁,51頁ないし56頁,弁論の全趣旨)。 (8) 甲関係者等との会食・接待ア亡Aは,大阪事務所での業務や会議終了後,甲関係者,無線基地工事関連の協力会社,大阪事務所勤務の部下社員等と ,51頁ないし56頁,弁論の全趣旨)。 (8) 甲関係者等との会食・接待ア亡Aは,大阪事務所での業務や会議終了後,甲関係者,無線基地工事関連の協力会社,大阪事務所勤務の部下社員等との会食を行っていた。甲関係者らとの会食の場では,主として,技術的なことが話題にのぼっていた。 (乙3の86頁,87頁,114頁ないし140頁,証人D,同C)イ亡Aは,同接待等に伴う飲食費用について,現金やクレジットカードで支払,そのうち,本件会社が負担すべき費用については,後日精算してもらっていた。亡Aが大阪事務所で使用できた接待費の月額枠は20万円であったが,亡Aによる接待はこれに収まるものではなく,それを超える額に上ることが多々あり,その際には,ケア(保全)やインプリ(建設)の経費処理でその処理を行っていた。 なお,亡Aの死亡後,本件会社は原告に対し,接待等として経費精算されていない200万円を超える交際費を支払った。 (乙3の114頁ないし140頁,原告,弁論の全趣旨)(9) 24時間オンコール体制ア本件会社が甲に納入した機器やソフトに不具合やトラブルが続出し,その対応がうまくいかなかったが,本件会社が設けた24時間のコールセンターは,技術的な面でレベルが高くなく,必ずしも円滑に機能していなかった。ところで,本件会社による保守作業や機器の入替作業は夜中に行われることが多かったことから,亡Aは,甲関係者等から24時間直接携帯電話で連絡を受ける体制(24時間オンコール体制)をとらざるを得なかった。 (乙3の111頁,証人D,証人C,証人B,原告,弁論の全趣旨)イ亡Aは,通信障害についてのショートメールの送信を受けた際,その状況を確認して,それが重大な障害 を得なかった。 (乙3の111頁,証人D,証人C,証人B,原告,弁論の全趣旨)イ亡Aは,通信障害についてのショートメールの送信を受けた際,その状況を確認して,それが重大な障害か,軽微な障害かを確認した上,その対応が必要な場合には指示,連絡し,重大な障害の場合には自宅近くにある甲のネットワークセンターに出向くこともあった。なお平成17年4月から同年9月までの間,関西エリアにおいては重大障害1件(6月22日),要注意障害1件(4月22日)が発生しているが,その際には,亡Aは,出動し,対応にあたった(具体的には,4月22日については午前8時40分に障害が発生し,午前9時45分に復旧した。また,6月22日については,午前3時08分に重大障害が発生し,午前4時46分に復旧した。)。 もっとも,亡Aは,メールによる報告があったとしても,それによって,常に出動していたわけではなく,また,早朝,深夜及び休日におけるメールに対して常にメールによる返信をしたわけでもない。 (甲3,乙3の141頁ないし143頁,証人C,証人B,原告,弁論の全趣旨)ウ本件発症前1か月ないし6か月間において,亡Aが時間外に受信したメールの状況は,別紙3「早朝及び夜間等のメールの送受信」一覧表記載のとおりである(乙3の141頁ないし143頁)。 (10) 本件発症前日亡Aは,本件発症前日の9月28日午前中,東京の自宅から新幹線で帰阪し,大阪事務所に出勤して業務に従事した後,午後7時ころから顧客の送別会に出席した(乙3,弁論の全趣旨)。 (11) 本件発症当日の状況ア亡Aは,本件発症当日の9月29日午前,大阪の単身赴任先の住居から新幹線で東京の本社に出張し,午前10時から午後4時30分ころまで の全趣旨)。 (11) 本件発症当日の状況ア亡Aは,本件発症当日の9月29日午前,大阪の単身赴任先の住居から新幹線で東京の本社に出張し,午前10時から午後4時30分ころまで,顧客である甲と本件会社との会議(ケアミーティング)に出席した,同会議は,月1回,本件会社と甲の間で締結されていたW-CDMAネットワーク構築契約に基づく甲へのサービス提供の実情について検討する会議であり,本件会社の社員と甲の各地域ネットワークセンターの課長らが出席し,甲の各地区を統括する課長から契約内容の履行状況の問題,主に通信トラブルの解消に係る要求が出され,それに対して,本件会社がどのように対処するかを回答したり,協議したりするという会議であった。 イ本件発症当日の会議のメインスピーカーは,本社のケアチームであった。 同チームの責任者はケアディレクターのEであり,ケアマネージャーのTとケアアシスタントマネージャーKの3名が,会議の進行と顧客からの要求に対する回答を行う立場にあった。しかし,責任者のEとKが会議に出席していなかったので,亡Aは,会議の冒頭に「何で,Eさん・Kさんがいないんだよー」と口にしていた。そこで,当日の会議は,ケアマネージャーのTが,メインスピーカーとして進行役を務めた。亡Aは,会議の出席者にすぎず,急遽,進行役となったわけでもなく,会議の責任を負う立場でもなかった。当日の会議では,顧客から要望やクレーム等が出され,その対応策について協議したが,責任者であるEが出席していなかったため,協議事項等について決定には至らず,問題の解決が後回しになり,いつもより少し早く終了した。もっとも,同会議のときだけではなく,以前から,ケアミーティングの際には,本件会社のサービス部門に対して,甲側から出される要求は,いつも厳 ず,問題の解決が後回しになり,いつもより少し早く終了した。もっとも,同会議のときだけではなく,以前から,ケアミーティングの際には,本件会社のサービス部門に対して,甲側から出される要求は,いつも厳しいものであった。 ウ亡Aは,同会議終了後,会議に出席していたDらとともに近くの居酒屋に赴き,会食中に本件疾病を発症するに至った。 (以上について,乙3,乙9の④,証人D,弁論の全趣旨)(12) 亡Aの健康状態等ア亡Aは,1日20本程度の喫煙習慣があった(ただし,喫煙年数は不明である。)。また,1週間に3日以上,ビール1本程度の飲酒量であった。 (乙9の④,14の109頁)イ亡Aの本件発症前の本件会社における健康診断時の際の血圧は以下のとおりであった。 (ア) 平成17年3月収縮期血圧120mmHg 拡張期血圧68mmHg(イ) 平成15年11月収縮期血圧120mmHg,拡張期血圧72mmHgいずれも正常範囲内にあり,基礎疾患としての高血圧症は認められない。 (乙3の18頁,26頁)(13) 亡Aの死因に関する医師の意見ア Y労働局地方労災医員であるG医師の平成18年10月3日付け意見書(乙3の98頁)同医師は,同意見書において,亡Aの本件疾病と業務との関係について,被災者の死因が脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血であったことを前提として,「被災者には脳血管造影にて,左中大動脈,前大脳動脈に動脈瘤が認められており,先天的に存在した脳動脈壁脆弱性が次第に膨隆して動脈瘤を形成して遂に破裂に至ったものと推測される,被災者は所長職であったため,タイムカードはなく,実労働時間の把握は困難であったが,職 められており,先天的に存在した脳動脈壁脆弱性が次第に膨隆して動脈瘤を形成して遂に破裂に至ったものと推測される,被災者は所長職であったため,タイムカードはなく,実労働時間の把握は困難であったが,職員の話を総合して推計したところでは,最長でもほとんどの月で50時間以内の超過勤務であった。単身赴任で出張,接待が多かったが,高コレステロール,高尿酸血症が認められるものの,血圧は正常値に保たれていた,また,発症は出張,接待中に生じたが,異常な出来事は見出されていない。 以上,本件は出張中に発症したくも膜下出血であるが,その原因は主として先天的素因によるもので,業務との関連性には乏しいと考える。」と述べる。 イ I大学病院病理部長H医師の意見書(乙20)同医師は,同意見書において,動脈瘤は,一般的に「脳動脈の分岐部の先天的な中膜欠損部位近傍から瘤化が生じることから,先天的要因が一因としてあげられる。」が「さらに好発年齢が中年以後に生じること等から後天性要因も重要と考えられ,とくに血行力学的要因が重視されており,中でも高血圧は重要な危険因子とみなされている。」「一般的に,脳動脈瘤形成及び破裂の三大危険因子として,高血圧,喫煙,過度の飲酒が指摘されてい」ると述べた上,亡Aについては,「高血圧が指摘されておらず,業務上の過労によるストレスが高血圧を介して発症に影響したという機序は証明できない。これに対して,医学的に通説とされているくも膜下出血の危険因子となりうる脳動脈硬化の危険因子が健診において指摘されていたことなどより,これらの複数の要因が重なり,より強い危険因子として作用し,発症に至ったとみなされる。」と述べる。 ウ j病院付属j記念病院K医師の意見書(乙21)同医師は,同意見書において,「亡Aは,年齢的 要因が重なり,より強い危険因子として作用し,発症に至ったとみなされる。」と述べる。 ウ j病院付属j記念病院K医師の意見書(乙21)同医師は,同意見書において,「亡Aは,年齢的にくも膜下出血の好発年齢であったこと,さらには喫煙習慣と定期的な飲酒を行っていたという2つの私的リスク要因が存在していた。大阪事務所長としての相当程度の責任を伴う業務であったことを考慮に入れても,すでに入社以来4年半同職での勤務を行っていたことから,精神的緊張の程度は発症前6ヶ月間,さらには発症前日から直前に限って特に著しかったとは医学的には認め難い。また,発症約半年前の健康診断での血圧は,収縮期血圧120mmHg,拡張期血圧68mmHgといずれも正常範囲内であったことから,基礎疾患としていわゆる高血圧は認められず,過重労働によるストレスから来る血圧への慢性的な影響も否定的である。平成17年9月29日にA氏に発症したくも膜下出血は発症,症状経過ともに脳動脈瘤破裂の典型的症例である。脳血管撮影の結果,右中大動脈瘤(これが破裂したものと考えられる。),右前大脳動脈瘤,左前大動脈瘤と計3個の多発性脳動脈瘤の存在が確認されており,脳動脈分枝部血管壁の脆弱性という動脈瘤発生を来しやすい先天的因子が強くあったことを示唆している。したがって,以上すべてを勘案し,自然経過により脳動脈瘤が発生し形成され破裂に至り,くも膜下出血を発症したと考えるのが妥当であると考える。」と述べて,本件疾病の業務起因性を否定している。 3 時間外労働時間に係る事実認定に関する補足説明(1) 接待等の業務性及び業務終了時間の点ア被告は,亡Aが行っていた接待について,その業務性を否定し,労働時間に含まれない旨主張する。 確かに,一般的には,接待につ (1) 接待等の業務性及び業務終了時間の点ア被告は,亡Aが行っていた接待について,その業務性を否定し,労働時間に含まれない旨主張する。 確かに,一般的には,接待について,業務との関連性が不明であることが多く,直ちに業務性を肯定することは困難である。しかし,亡Aが行っていた顧客等との接待は,①顧客との良好な関係を築く手段として行われており,本件会社もその必要性から,その業務性を承認して亡Aの裁量に任せて行わせていたこと(乙3の92頁),②本件会社が協力会社に甲の取引を獲得ないし維持するため,工期の短い工事等の無理な対応をお願いする立場であったため,a,b,c,d等の協力会社に対してその必要性があったこと,③亡Aが前職当時から付き合いのある人脈を利用して営業の情報を収集したり,根回しをし,そのために顧客とコミュニケーションをとることによって問題の解決に当たっていたこと(乙9の①),④亡Aが大阪事務所長として必要と判断したものであって,本件会社にとって有益で,必要な業務の一部であったこと,⑤亡Aの後任であるCもその職責を全うするため重要であると認識していたこと,⑥会議終了後等に行われる場合,取引先(甲)関係者との間で,全体の保全会議では議題にしにくい個別の技術的な問題点をより具体的に議論する場であったこと(乙9の④,証人D),⑦甲関係者にとって,技術的に詳しい亡Aから本音で込み入った技術的な話を聞く場として,会議終了後の会合を位置付けていたこと(証人D),⑧亡Aにとって,得意ではなく,酒も飲めないため,会食や接待が苦手であったところ,業務の必要があると判断して,周囲に気付かれないように接待や会合に参加していたこと(原告),⑨その費用を本件会社が負担していたところ,大阪事務所の接待費の月額枠は20万円で 待が苦手であったところ,業務の必要があると判断して,周囲に気付かれないように接待や会合に参加していたこと(原告),⑨その費用を本件会社が負担していたところ,大阪事務所の接待費の月額枠は20万円であったが,実際の亡Aの接待はこれに収まるものではなく,それを超える額についてもケア(保全)やインプリ(建設)の経費処理を行っていたこと,⑩週に5回くらいあり,平成17年に亡Aから本件会社経理部に対して請求された交際関係のレシートは9か月間で48回分に及んでおり(乙3の115頁ないし140頁),亡A死亡後,更に52枚のレシートが発見されたことから,本件会社は原告に対して200万円を超える金員を交際費として会社経費で清算していることがある。以上の事実を踏まえると,亡Aが甲の関係者等との飲食は,そのほとんどの部分が業務の延長であったと推認でき,同認定を覆すに足りる証拠はない。 また,亡Aは,上記認定したとおり出張等が多かったところ,大阪事務所の社員らと意見交換等が十分なされていないことを補うため,社内での業務終了後,社外で飲食しながらの会合(チームビルディングと呼ばれていた。)を行っていた。同会合は,親睦を深めるという目的があったとはいえ,費用は本件会社の承認の下,その負担でなされていた。以上の事実を踏まえると,同社員との会合も顧客との接待と同様,大阪事務所長としての業務の延長であると推認され,同認定を覆すに足りる証拠はない。 イところで,上記アで認定した接待等について,その終了時間は,必ずしも正確な時間を算出できるに足りる的確な証拠は見出し難い。しかし,亡Aは,上記顧客先や協力会社等との接待等について,接待先の業務が終了する時間(午後8時ころ)に合わせていたところ,同接待に際しては飲食だけではなく飲酒も伴っていた。以上の事実に亡Aと い。しかし,亡Aは,上記顧客先や協力会社等との接待等について,接待先の業務が終了する時間(午後8時ころ)に合わせていたところ,同接待に際しては飲食だけではなく飲酒も伴っていた。以上の事実に亡Aと多数回飲食と共にした甲の営業課長であるDが,亡Aとの飲食の時間について,2時間くらいか,多く飲んでも3時間以内であると供述していること(乙9の④),亡Aの部下であったCが同接待について,夜12時から1時までの長時間に及ぶのが通常であったと述べていること(証人C),亡Aの接待を含む業務を把握していたBが24時ぐらいまでかかるときが多かったと証言していることをも総合すると,同接待は,少なくとも午後10時ころまでは行われていたと推認することができる。 (2) 出張に伴う移動時間の労働時間性の点について原告は,亡Aが,出張のため,本社のある東京や各地の営業所等に新幹線等で移動する車中においても,パソコン作業や携帯での連絡業務を行っていたことから,本件における亡Aの出張のための移動時間については,少なくとも業務起因性(過重負荷)を判断するにあたって労働時間と認められるべきである旨主張する。 ア確かに,亡Aは,出張にパソコンを持ち歩いていたこと,亡Aが死亡した後大阪事務所長となったCは,同出張の際,メールを読んだり,その返事や技術レポートの作成をしたりすることもあること(証人C)からすると,亡Aもまた,平日における出張に係る移動中,同Cと同様具体的な業務に従事していたこともあったことが窺われる。しかし,出張時における公共交通機関の使用を含めた移動時間は,通常,その時間を如何に過ごすか,労働者の自由に任されているところ,本件全証拠によるも亡Aが出張時の移動時間にどのように過ごしていたのか,具体的に何らかの業務に従事していたの 使用を含めた移動時間は,通常,その時間を如何に過ごすか,労働者の自由に任されているところ,本件全証拠によるも亡Aが出張時の移動時間にどのように過ごしていたのか,具体的に何らかの業務に従事していたのかを認めることができない。また,出張に伴う土曜日の移動時間についても,翌日が日曜日であり,また,東京の自宅に戻っている場合も含めて,上記平日の場合と同様,これを労働時間に含めることはできない。 イそうすると,亡Aに係る出張に伴う移動時間は,業務それ自体とは関連性があり,一定の時間的拘束を含めた負荷が伴うものであって,それは当該業務の過重性を検討すべき際にはその考慮の要因の一つとして考えるべきではあるものの,それ自体を労働時間そのものとして認定することはできないといわざるを得ない。 (3) 休息時間中のトラブル対応等について亡Aは,休息時間においても携帯電話の携帯を義務づけられ(24時間オンコール体制),かつ連絡が入ったときはこれに対する即時対応することが求められ,実際に,早朝,深夜,休日にも,甲からショートメールや電話連絡で入る通信障害等のトラブル等への対応を行っていた。もっとも,その対応及び検討時間数は,連絡等の内容や通信障害の程度によって様々であることから,正確な時間を算定することが困難である(したがって,原告が1か月10時間とすべきであるとの主張も具体的な根拠がなく採用できない。)が,業務の過重性を判断するに当たっては,十分に考慮する必要がある。 (4) 休日出勤の点原告は,亡Aが,少なくとも月2回程度休日出勤をしていた旨主張する。 しかし,同主張を認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,亡Aの手帳の記載内容(乙3の48ないし56)からすると,亡Aは休日に出勤していたとは認められない。もっとも,上 勤をしていた旨主張する。 しかし,同主張を認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,亡Aの手帳の記載内容(乙3の48ないし56)からすると,亡Aは休日に出勤していたとは認められない。もっとも,上記認定したとおり,9月10日については,広島からの出張に伴う移動時間を除いて,午後5時30分まで労働していたと認めるのが相当である。 (5) 別紙1一覧表に係るその他の修正点原告は,9月22日,午後9時30分まで大阪事務所で就労した旨主張する(別紙1一覧表)。しかし,翌日から3連休であったこと,連休明けの同月26日は,朝,東京の自宅から大阪事務所に出勤していること,原告も同月22日夜に東京に戻った旨認める旨主張していること(平成21年9月29日原告第1準備書面添付の一覧表)からすると,亡Aは,9月22日の夜,仕事を終えた後,東京へ戻っていると認められる。そうすると,東京行きの新幹線の最終便発車時刻からして,少なくとも午後8時には退社したと推認される。したがって,同日の終業時刻は,午後8時であると認めるのが相当である。 (6) 小括亡Aに係る労働時間は上記認定したとおり休日出勤の点(ただし,9月10日を除く。),原告主張に係る出張に伴う移動時間の点及び休息時間中のトラブル対応等についての労働時間の点(1か月10時間),同月22日の終業時刻の点を除いた時間であると認定するのが相当であるところ,本件発症前1か月から6か月前の時間外労働時間数は,以下のとおりとなる。 ア本件発症前1か月 73時間(別紙1一覧表の時間外労働時間数から,9月の出張に伴う移動時間〔23時間〕,9月22日の1時間30分〔亡Aは,当日夜東京へ戻っているため,東京行きの新幹線の最終便発車時刻からして,少なくとも午後8時には退 覧表の時間外労働時間数から,9月の出張に伴う移動時間〔23時間〕,9月22日の1時間30分〔亡Aは,当日夜東京へ戻っているため,東京行きの新幹線の最終便発車時刻からして,少なくとも午後8時には退社したと推認される。〕,同月10日の午後5時30分以降の時間〔2時間30分〕及び休息時間中のトラブル対応等の10時間を除いた時間。)イ本件発症前2か月 69時間(別紙1一覧表の時間外労働時間数から,8月の出張に伴う移動時間[7時間],8月28日の13時間及び休息時間中のトラブル対応等の10時間を除いた時間。)ウ本件発症前3か月 81時間15分(別紙1一覧表の時間外労働時間数から,7月の出張に伴う移動時間[計6時間],31日の12時間45分,23日・16日・2日の各1日分の労働時間数10時間30分[計31時間30分],休息時間中のトラブル対応等10時間を除いた時間。)エ本件発症前4か月 77時間55分(別紙1一覧表の時間外労働時間数から,6月の出張に伴う移動時間[計34時間05分],休息時間中のトラブル対応等10時間を除いた時間。)オ本件発症前5か月 63時間05分(別紙1一覧表の時間外労働時間数から,5月の出張に伴う移動時間〔計10時間40分〕,休息時間中のトラブル対応等10時間を除いた時間。)カ本件発症前6か月 75時間50分(別紙1一覧表の時間外労働時間数から,4月の出張に伴う移動時間[計13時間40分],休息時間中のトラブル対応等10時間を除いた時間。) 4 本件疾病に係る業務起因性の有無上記2,3で認定した事実を踏まえて,亡Aの本件疾病の発症ないし死亡と業務との間に相当因果関係があるか否 時間中のトラブル対応等10時間を除いた時間。) 4 本件疾病に係る業務起因性の有無上記2,3で認定した事実を踏まえて,亡Aの本件疾病の発症ないし死亡と業務との間に相当因果関係があるか否か(業務起因性の有無)検討する。 (1) 亡Aの業務の量的過重性について上記3(6)で認定説示した亡Aの時間外労働時間数を踏まえると,亡Aの業務が量的に過重であったことは明らかであって,被告が主張する認定基準に沿って考えたとしても,亡Aの業務と本件疾病発症ないし同人の死亡との間には強い関連性があることになる。 (2) 亡Aの業務の質的過重性についてア不規則な勤務の点について(ア) 被告は,亡Aが,上記メール等によって出動して対応することはまれである上,メール等に対して常に対応しなければならなかったとも認められず,また,事前に連絡が予測可能な場合も多いから,亡Aにつき,発症に近接した時期(本件発症前おおむね1週間)において,日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような「不規則な勤務」であったり,発症前の長期間(本件発症前おおむね6か月間)にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせるような「不規則な勤務」があったとは認められない旨主張する。 確かに,亡Aは,上記認定したとおり連絡や報告のメール等に対して全件返信したり出動していたことはない。しかし,①亡Aは24時間携帯電話の電源をオンにすること(24時間オンコール勤務)が求められており,同勤務状況の下においては,結果的にコールに対応しなくてすんだとしても,24時間いつでも対応しなければならない状態に置かれていたといわざるを得ないこと,②実際,亡Aは,メール等の受送信をしている,特に平 状況の下においては,結果的にコールに対応しなくてすんだとしても,24時間いつでも対応しなければならない状態に置かれていたといわざるを得ないこと,②実際,亡Aは,メール等の受送信をしている,特に平成17年4月から9月までの間において,同年6月22日午前3時08分に重大障害が発生し,出動して対応に当たっていること,また,8月23日(火)は,東京の自宅で夏休みを取得していた亡Aのところに,同日午前3時17分及び同4時16分にそれぞれ通信障害のメールが送信され,亡Aは,同4時31分に返信のメールを送信していること(亡Aは,休暇中であっても,就寝中であっても携帯電話をオンにしており,夜中でも電話等で連絡が入れば,その都度対応していたこと),③亡Aは,単身赴任先である大阪での住居について,顧客であるボーダホーンのネットワークセンターに比較的近いところを選定していたことがある。以上の事実を踏まえると,亡Aは寝ることができず対応に追われる場合には睡眠時間が奪われ,そうでないとしても,就寝中の電話やメールによって中途覚醒を強いられ,その後満足な睡眠をとれなくなったり,少なくとも睡眠の質が悪化していたことが推認される。そうすると,亡Aは,24時間オンコール体制下において不規則な勤務状態にあったと評価するのが相当である。したがって,被告の上記主張は理由がない。 (イ) 被告は,亡Aが,本件会社入社前にも,長年にわたって通信事業に従事してきたこと,メカニカルエンジニアや通信設備の営業を担当したほか,海外での通信関連事業参画の経験を有していたことを取り上げて,亡Aの業務は質的過重性があるとはいえない旨主張する。 確かに,亡Aは,本件会社入社前に通信関連業務に従事していた。 しかし,本件会社における業務は,上記認定したとおり,大阪事務所 げて,亡Aの業務は質的過重性があるとはいえない旨主張する。 確かに,亡Aは,本件会社入社前に通信関連業務に従事していた。 しかし,本件会社における業務は,上記認定したとおり,大阪事務所長として同事務所社員の管理監督のほか,顧客である甲との円滑な関係を構築することなど,通信技術に関する面ばかりではなかった。そうすると,本件会社入社前に通信関連事業に関与していたことをもって,亡Aに質的な過重性がなかったとまではいえない。したがって,この点に関する被告の上記主張は理由がない。 イ出張が多い業務の点について被告は,①本件発症前1ないし6か月の間における亡Aの出張回数が特に多いということはできないこと,②同出張は,いずれも国内出張であり,さほど移動に時間を要するものではなく,いずれも交通至便で,かつ新幹線等の快適な交通手段が整備され,頻繁な乗り換えや待ち時間を必要としない大都市ばかりであったこと,③亡Aは,移動中にノートパソコン等を使用して車内で業務に従事していたと認めるに足りる証拠はなく,自己の裁量で休息や仮眠を自由に行える環境にあったといえること,④同出張のうち,東京出張で,宿泊を伴う場合には,東京の自宅で宿泊したものと推測され,疲労回復を図ることも可能であったことからすると,本件発症前の長期間(おおむね6か月間)にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な身体的精神的負荷を生じさせるような「出張の多い業務」に従事していたとはいえない旨主張する。 確かに,亡Aの出張は,比較的交通の至便のよい大都市ばかりの国内出張ばかりであった。しかし,上記認定説示したとおり,亡Aは,出張の車中において業務に従事していたことが窺え,出張先での会議終了後も,会議に参加していた甲関係者や関連会社の従業員と飲食を伴 りの国内出張ばかりであった。しかし,上記認定説示したとおり,亡Aは,出張の車中において業務に従事していたことが窺え,出張先での会議終了後も,会議に参加していた甲関係者や関連会社の従業員と飲食を伴う接待を行っていたこと,出張先での会議においては,甲からの厳しい注文等を受けていた。以上の事実を踏まえると,亡Aの出張回数は著しく多いとまではいえないものの同出張による精神的な負荷は大きかったと評価するのが相当である。 (3) 亡Aに係るリスクファクターの点について被告は,亡Aには,喫煙習慣及び飲酒,くも膜下出血の好発年齢であることから,私的リスクファクターが存在する旨主張し,各医師も,各意見書において,同ファクターの存在を指摘している。 確かに,上記認定したとおり,亡Aには,1日20本程度の喫煙習慣があったこと,1週間に3日以上,ビール1本程度の飲酒量であったこと,亡Aは,本件疾病発症当時の年齢がくも膜下出血の好発年齢である56歳であった。しかし,上記認定説示したとおり,亡Aの業務は量的にも質的にも過重であったと認められること,亡Aは高血圧症ではないこと,飲酒量及び喫煙量ともに著しく多量であるとはいえないことを総合すると,被告が主張する私的リスクファクターをもって,本件発症と業務との間の相当因果関係を妨げるに足りるものであるとは認められない。そうすると,被告の上記主張は理由がない。 (4) 各医師の意見について上記2(13)で認定したとおり,複数の医師が本件疾病を業務との相当因果関係について消極的な意見を述べている。しかし,これらの各意見の前提となる事実(特に,業務の量的過重性の点)は,上記認定説示した場合と相違するため,同各意見をもって,業務起因性を否定する根拠とすることはできない。 (5) ている。しかし,これらの各意見の前提となる事実(特に,業務の量的過重性の点)は,上記認定説示した場合と相違するため,同各意見をもって,業務起因性を否定する根拠とすることはできない。 (5) 小括上記(1)ないし(4)で認定説示したことを踏まえると,亡Aの本件疾病発症ないし同人の死亡は,業務上の過重負荷により,亡Aに係る血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪した結果発症し,同疾病により死亡したものであって,亡Aの業務に内在する危険性が現実化したものと評価することができる。したがって,本件疾病ないしそれによる亡Aの死亡と亡Aの業務との間には相当因果関係が存在すると認めるのが相当である。 5 結論以上の次第で,本件処分は,業務起因性の判断を誤った違法なものであり,取消しを免れない。したがって,原告の本件請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判官内藤裕之 裁判官峯金容子 裁判長裁判官中村哲は,差し支えのため署名押印することができない。 裁判官内藤裕之

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