令和5年5月10日宣告平成26年(わ)第1284号被告人両名に対する組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「看護師事件」という。)平成29年(わ)第115号被告人Aに対する殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(以下「乙事件」という。)平成29年(わ)第1080号被告人両名に対する殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(以下「丙事件」という。)平成29年(わ)第1293号被告人両名に対する殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(以下「自治会長事件」という。)平成30年(わ)第335号被告人Bに対する器物損壊被告事件(以下「器物損壊事件」という。 主文 被告人Aを無期懲役に、被告人Bを懲役14年に処する。 未決勾留日数中、被告人Aに対し1800日を、被告人Bに対し2100日を、それぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1【自治会長事件】被告人両名は、C、D、E、F及びGと共謀の上、 1 平成22年3月15日午後11時13分頃、北九州市a区内のB3方敷地内において、D若しくはEのいずれか又は両名が、B3方に在宅中の同人及びA3に対し、同人らを殺害することになってもやむを得ないと考え、回転弾倉式けん銃を使用して、B3方台所勝手口から家屋内に弾丸2発を発射して台所壁に着弾させ、さらに、同人方玄関先から家屋内に弾丸4発を発射し、玄関に接した8畳和室空間を通してB3ら2名が在室していたB3方1階6畳寝室のふすまを貫通させて同室押入に着弾させるなどしたが、前記弾丸がいずれもB 3らに命中せず、同人らを殺害するに至らなかった。 2 法定の除外事由がないのに、前記日時場所において、 6畳寝室のふすまを貫通させて同室押入に着弾させるなどしたが、前記弾丸がいずれもB 3らに命中せず、同人らを殺害するに至らなかった。 2 法定の除外事由がないのに、前記日時場所において、前記けん銃1丁を、これに適合する実包6発と共に携帯して所持した。 第2【丙事件】被告人両名は、H、I、F及びGと共謀の上、法定の除外事由がないのに、 1 平成23年2月9日午後7時12分頃、不特定又は多数の者の用に供される場所である北九州市b区c(以下省略)A5病院移転新築工事作業所2階事務所において、Iが、A4に対し、殺意をもって、所携の回転弾倉式けん銃で、弾丸3発を発射し、そのうち1発を同人の下腹部に命中させたが、同人に全治約23日間を要する下腹部挫創の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 2 前記1の日時場所において、前記けん銃1丁を、これに適合する実包3発と共に携帯して所持した。 第3【乙事件】被告人Aは、I、J、E、K、F、G及びLと共謀の上、法定の除外事由がないのに、 1 平成23年11月26日午後9時頃、不特定又は多数の者の用に供される場所である北九州市b区a1(以下省略)のM方前路上付近において、Kが、前記Mに対し、殺意をもって、所携の回転弾倉式けん銃で、同人の身体を目掛けて弾丸2発を発射し、うち1発を同人の頚部に命中させ、よって、同日午後10時3分頃、同市a区d(以下省略)のB5病院において、同人を右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血により死亡させて殺害した。 2 同日午後9時頃、前記M方前路上付近において、前記けん銃1丁を、これに適合するけん銃実包2発と共に携帯して所持した。 第4【看護師事件】平成25年1月28日当時、被告人Aは特定危険指定暴力団五代目A2會理 記M方前路上付近において、前記けん銃1丁を、これに適合するけん銃実包2発と共に携帯して所持した。 第4【看護師事件】平成25年1月28日当時、被告人Aは特定危険指定暴力団五代目A2會理 事長補佐兼A組組長、被告人BはA2會専務理事兼五代目B2組組長秘書、NはA2會総裁、OはA2會会長、PはA2會理事長兼B2組組長、IはA2會上席専務理事兼B2組若頭、EはA2會専務理事兼B2組組織委員長、JはA2會専務理事兼B2組風紀委員長、KはA2會専務理事兼B2組筆頭若頭補佐、QはA2會専務理事兼B2組若頭補佐、RはA2會専務理事兼B2組組長付、S及びTはA2會専務理事兼B2組組織委員、GはA2會常任理事兼A組組員であったものであるが、Nにおいて、自身が受診していたクリニックの担当看護師であるUの対応に強い不満を抱き、配下のA2會組員にUを襲撃させることを決意し、被告人両名は、N、O、P、I、E、J、K、Q、R、S、T及びGと共謀の上、A2會の活動として組織によりUを殺害することになってもやむを得ないと考え、同日午後7時4分頃、福岡市e区f(以下省略)のC5北側歩道上において、Nの意思決定及び命令に基づき、A2會の威信を維持する活動として、Kが実行指揮役、Qが実行役、RがQの送迎役、S及びTが行動確認役などあらかじめ定められた任務分担に従って、Qが、Uに対し、殺意をもって、所携の刃物で、左側頭部等を数回突き刺すなどし、もって団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが、Uに約3週間の入院及び通院加療を要する見込みの左眉毛上部挫創、顔面神経損傷、右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 第5【器物損壊事件】被告人Bは、平成29年11月27日午後2時54分頃、北九州市(以下省略)北九州 損傷、右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 第5【器物損壊事件】被告人Bは、平成29年11月27日午後2時54分頃、北九州市(以下省略)北九州医療刑務所内小倉拘置支所第7号取調室において、国が所有し、北九州医療刑務所長J1が管理する同取調室内の窓ガラス1枚及びガラスフィルム1枚を2回肘打ちして破損させ(損害見積額合計3万0200円相当)、もって他人の物を損壊した。 (証拠の標目)省略 (事実認定の補足説明)第1 前提事実 1 A2會の概要⑴ A2會は、北九州市内に拠点を置く暴力団組織であり、平成4年6月、福岡県公安委員会から、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に基づき、指定暴力団に指定され(当時の名称は二代目A2連合F2)、平成24年12月に特定危険指定暴力団にも指定され、以後、それぞれの指定を継続して受けている(公知の事実。)。 自治会長事件(判示第1)及び丙事件(判示第2)当時、A2會は、K1をA2會総裁、Nを同会長とする体制が布かれていた(この体制のA2會を「四代目A2會」と呼称する。)。 乙事件(判示第3)に先立って、平成23年7月、NをA2會総裁、Oを同会長とする体制(この体制のA2會を「五代目A2會」と呼称する。)が布かれ、平成25年1月の看護師事件(判示第4)の発生に至るまで維持されている。 ⑵ B2組は、A2會傘下の二次団体である。 自治会長事件及び丙事件当時、B2組は、Oを組長、Pを若頭とする体制が布かれていた(この体制のB2組を「四代目B2組」と呼称する。)。 五代目A2會への代替わりに当たり、平成23年6月から7月に、PがOからB2組組長を継承して五代目B2組が発足し、看護師事件の発生に至 かれていた(この体制のB2組を「四代目B2組」と呼称する。)。 五代目A2會への代替わりに当たり、平成23年6月から7月に、PがOからB2組組長を継承して五代目B2組が発足し、看護師事件の発生に至るまで維持されている。 2 被告人AとA2會の関係被告人Aは、自治会長事件及び丙事件の発生当時、四代目B2組本部長兼B2組内A組組長の地位にあった。 五代目A2會に代替わりするに当たり、A組はA2會の三次団体から二次団体へ昇格し、被告人AはA2會直若兼A組組長の地位に就き、乙事件当時は同 地位に(乙事件につき)、看護師事件当時はA2會理事長補佐兼A組組長の地位にあった(看護師事件につき)。 3 被告人BとA2會の関係被告人Bは、平成6年頃にA2會B2組内G2組の組員となり、平成12年頃から平成19年頃まで服役した後、四代目B2組の組員となった。平成23年6月、B2組の組長がPに代わり五代目B2組の体制が布かれるに伴い、被告人Bは組長秘書の地位に就き、以後、看護師事件が発生するに至るまで同地位にあった。 第2 自治会長事件について(以下、「第2」内にある、「本件バイク」「本件銭湯」等の略称は、自治会長事件に関するものを指す。) 1 争点自治会長事件の争点は、①殺人の実行行為該当性及び実行犯らの殺意、②被告人両名の本件への関与の有無、③被告人両名の故意及び共謀である。 2 認定事実⑴ 自治会長事件の概要平成22年3月15日午後11時13分頃(以下、「第2」において平成22年の記載は省略する。)、実行犯らが、北九州市a区(以下、断りのない限り、北九州市内の地名については、市の記載を省略する。)のB3方敷地内において、B3及びA3が在宅中のB3方内に向けて、所携のけん銃で弾丸合計 する。)、実行犯らが、北九州市a区(以下、断りのない限り、北九州市内の地名については、市の記載を省略する。)のB3方敷地内において、B3及びA3が在宅中のB3方内に向けて、所携のけん銃で弾丸合計6発を発射したが、いずれもB3らに命中しなかった。 ⑵ 各関係者の立場等ア 3月15日当時、被告人AはB2組本部長兼B2組内A組組長、被告人BはB2組組員、CはB2組組長代行兼B2組内C組組長、DはB2組若頭補佐、EはH2組若頭、G及びFはB2組組員兼A組組員の地位にあった。 イ当時、B3は、a区自治総連合会の会長を務めていた。 ⑶ a区内における暴力団追放運動3月5日、a区sにある邸宅の門扉に、「四代目A2會D5会館」と記載された看板が設置された(以下、この邸宅を「D5会館」という。)。 これを受け、同月10日、a区自治総連合会内の各自治連合会の会長や、小倉南警察署及び小倉南区役所の職員等が出席する会議が開催され、D5会館に向けた暴力団追放パレードを実施することとなった。同日及び翌日に発刊された新聞には、B3が同会議において「新しい事務所の設置で近隣住民の生活が心配されている。」「事務所の撤去、暴力団排除に向けて一致団結して取り組まなければならない。」旨述べたと記載されていた。 暴力団追放パレードは、同月12日に実施された。同パレードでは、約510名の参加者が、E5市民センターを出発し、暴力団追放の趣旨のシュプレヒコールを上げながらD5会館付近まで行進した。 ⑷ 犯行状況等3月15日の午後11時13分頃、D及びEが、B3方北側の門からB3方敷地内へ侵入し、両名又はいずれかが、コンクリートブロック片でB3方勝手口扉のガラスを割り、その直後に同勝手口扉から家屋内に向けてけん銃で弾丸2発 1時13分頃、D及びEが、B3方北側の門からB3方敷地内へ侵入し、両名又はいずれかが、コンクリートブロック片でB3方勝手口扉のガラスを割り、その直後に同勝手口扉から家屋内に向けてけん銃で弾丸2発を発射した。 さらに、D及びEは、B3方玄関先に回り込んで、両名又はいずれかが、閉じられていた同玄関引き戸に向けて家屋内方向にけん銃で弾丸4発を連続して発射した。弾丸4発は、いずれも玄関引き戸のアルミ格子及びガラスを貫通して屋内に入り、うち1発は、8畳和室の空間を通過した後、8畳和室と6畳寝室を隔てるふすまを貫通し、6畳寝室の押入内のハンガーに着弾して落下した。 3 殺人の実行行為該当性及び実行犯らの殺意(争点①)上記弾丸は、いずれも口径0.38インチ回転弾倉式けん銃用の実包の発射 弾丸、これらを発射した銃器は、口径0.38インチのスミスアンドウェッソン若しくはタウルス回転弾倉式けん銃又はその同等品であり、高い殺傷能力を有する真正けん銃である。 実行犯らは、このような真正けん銃を用いて、B3及びA3が居住し現に在宅中のB3方内に向けて合計6発の弾丸を発射した。犯行時刻は深夜帯であったとはいえ、B3方は一般住宅であるから、その住人であるB3らが家屋内のどこにいたとしても何ら意外ではない。現に発射された弾丸のうち1発はB3らがいた寝室にまで到達していたように、B3らの動向や弾丸の角度がわずかにでも異なれば、発射された弾丸がB3らに命中し、死に至らしめる危険性があった。とりわけ、玄関先における発射行為については、玄関戸が閉じられ家屋内の様子を把握できない状態で、直立した人体の上半身に相当する高さからほぼ水平方向に、B3方内に向け左右の角度を異にして弾丸4発を連続して発射しており、B3方内の住人に弾丸が命中し、死に至らしめる危険性 様子を把握できない状態で、直立した人体の上半身に相当する高さからほぼ水平方向に、B3方内に向け左右の角度を異にして弾丸4発を連続して発射しており、B3方内の住人に弾丸が命中し、死に至らしめる危険性が高いものであった。実行犯らにおいて、弾丸がB3方内の住人に命中しないよう配慮した形跡は一切伺われない。 以上によれば、前記銃撃行為は殺人の実行行為に該当すると認められ、実行犯らは、発射した弾丸がB3方内の住人に命中し、死亡させたとしてもやむを得ないものとして前記銃撃行為に及んだと認められるから、殺意が認められる。 4 被告人両名の本件への関与の有無(争点②)⑴ 認定事実証拠によれば、次の事実が認められる。 ア本件犯行の3、4日前、被告人Aは、Gに対して、バイクを用意するよう指示した。GとFが相談の上、FがA2會C2組の準構成員であるL1に連絡を取り、L1からバイク(以下「本件バイク」という。)を借りることとなった。翌日、Gは、被告人Aにバイクが用意できた旨伝えた。その上で、G及びFは、本件バイクが動かなくなった場合などに備えて、予備 となる車を盗むこととした。 イ本件犯行当日である3月15日の午前中、被告人Aは、Gに対し、指定の時刻までにFと共に本件バイクをa区tにある銭湯(以下「本件銭湯」という。)に持っていくよう指示した。Gは、A2會D2組の事務所当番に入っていたFに電話を掛け、事務所当番の交代を終えたら車を盗む道具を用意すること、Gを迎えに来ることを依頼した。 Fは、Vと連絡を取り、午後3時頃に合流し、Vが運転するフォルクスワーゲン・ゴルフ(以下「本件ゴルフ」という。)でb区gのホームセンターに向かった。Vは、Fから渡されたメモに記載された物をホームセンターで購入し、Fに渡した。この時、番線も購 が運転するフォルクスワーゲン・ゴルフ(以下「本件ゴルフ」という。)でb区gのホームセンターに向かった。Vは、Fから渡されたメモに記載された物をホームセンターで購入し、Fに渡した。この時、番線も購入するよう指示されていたが、ホームセンターでは販売されていなかったため、付近のフェンスの金属線をペンチで切り取りFに渡した。 その後、Fは、Vと共に本件ゴルフでb区uに向かい、Vと別れた後、午後4時10分頃、Gと合流した。F及びGは、本件ゴルフに乗りL1の家まで本件バイクを取りに行き、Gが本件バイクに、Fが本件ゴルフにそれぞれ乗って、本件銭湯の駐輪場まで行き、本件バイクを駐輪して施錠した。 Gは、Fが運転する本件ゴルフに乗り、b区vにあるv団地の駐車場に向かい、予備の車としてグロリア(以下「本件グロリア」という。)を窃取した。 Gは、午後7時14分ないし18分頃、電話でG1からガレージを借りる旨の了承を得て、本件グロリアに乗ってa区wにあるG1のガレージ(以下「本件ガレージ」という。)まで行き、本件グロリアを保管した。 その後、GはFと共に本件ゴルフに乗って本件銭湯まで行き、本件バイクの鍵を本件バイクの前輪のタイヤの上に置き、午後7時34分頃、被告人Aに報告するとともに、Fが運転する本件ゴルフに乗って本件銭湯を出 発し、自宅への帰路についた。 ウ被告人Bは、午後7時38分頃、Gに電話を掛け、本件バイクが動かないから本件銭湯に戻るよう伝えた。G及びFが帰路を引き返して本件銭湯へ戻る道中、本件ゴルフと、被告人Bが運転する車とが横並びになる形で停車した。被告人Bは、Gに対し、「ヘルメットを持ってくるように言われたので持ってきた。」旨述べた。また、Gは、被告人Bが乗る車が見覚えのない車 件ゴルフと、被告人Bが運転する車とが横並びになる形で停車した。被告人Bは、Gに対し、「ヘルメットを持ってくるように言われたので持ってきた。」旨述べた。また、Gは、被告人Bが乗る車が見覚えのない車であったため誰の車か尋ねたところ、被告人Bは、彼女の車だと答えた。 エ Gは、本件銭湯に到着して本件ゴルフから降り、本件バイクを押して動かそうとするEと会った。Gは、Eに代わってエンジンを掛ける作業をしたが、エンジンが掛からなかったため、Eに対し、予備の車も用意している旨伝えた。Eは、本件銭湯近くに停まっていたベンツに乗るCと相談した後、Gに対して、予備の車のところに案内するよう指示した。Gは、Fと共に、本件ゴルフでCらが乗るベンツを本件ガレージまで先導した。この道中、Gは、被告人Aに対し、本件バイクが動かなくなったためCらを予備の車のところまで連れていく旨電話で報告した。 本件ガレージに到着後、ベンツから降りたDとEが本件グロリアを確認し、DらがCと相談した結果、結局本件グロリアではなく本件ゴルフをDとEの事件現場への送迎に使用し、G及びFが運転手を務めることとなった。 オ本件ゴルフの運転席にF、助手席にG、後部座席にDとEが乗り、本件ガレージやその周辺で待機中、D又はEは、Fの携帯電話を使用して被告人Bと本件犯行に関する話などをしていた。その後、FはEの指示で犯行現場へ出発した。Gは、犯行現場付近までの道中において、D又はEの指示でコンクリートブロックを拾い、Dらに渡した。Fは、犯行現場付近で本件ゴルフを停め、D及びEは、本件ゴルフから降りて本件犯行に及んだ。 カ本件犯行後、Dらは本件ゴルフに乗り込み、あらかじめ話し合っていた経路で逃走し、h区のレンタルビデオ店に向かった。逃走中又は逃走後、D又はEは、Fの フから降りて本件犯行に及んだ。 カ本件犯行後、Dらは本件ゴルフに乗り込み、あらかじめ話し合っていた経路で逃走し、h区のレンタルビデオ店に向かった。逃走中又は逃走後、D又はEは、Fの携帯電話を使用して被告人Bと通話し、本件犯行に関する話をした。G、F、D及びEは、同レンタルビデオ店に到着し、本件ゴルフを同所に駐車して解散した。G及びFは、その付近に駐車してあった別の車で帰宅し、その道中、Gは被告人Aに電話を掛け、Dらを送迎したことや用意した車(本件グロリア)ではなくGらが乗っていた車(本件ゴルフ)を使用したことを報告した。 3月16日以降、Gは、Eと共に本件ゴルフを海中に投棄し、犯行に使用した作業着を燃やし、本件グロリアを路上に放置した。 ⑵ 認定事実に係る補足説明ア前記⑴の事実は、Gの供述、VのFの裁判時の供述、通話履歴等によって認定した。 イ Gの供述は、本件犯行の準備や実行犯の送迎に至るまでの経緯など、体験した者でなければ供述し得ない内容を含んでいる上、A、F及びG1の通話履歴や、本件ゴルフがGの案内に基づいて海から発見されていることとも整合する。DとEがコンクリートブロックを持って本件ゴルフから降り、しばらくして発砲音が聞こえ、その後本件ゴルフに戻って来た点については、2人以上の人物がB3方ガレージで話していた後発砲音が聞こえたとのF3の供述や、犯行後B3方勝手口付近にA3の関知しないコンクリートブロックが遺留されていた事実と整合し、本件犯行の態様を他の証拠と矛盾なく説明するものである。加えて、Gは、A2會の幹部であったCや、直接の上位者である被告人Aについても供述しており、自己の刑責の軽減を図るため殊更虚偽の供述をしているとは考え難い。 Vの供述は、上記通話履歴、gのホームセンターのジ 、A2會の幹部であったCや、直接の上位者である被告人Aについても供述しており、自己の刑責の軽減を図るため殊更虚偽の供述をしているとは考え難い。 Vの供述は、上記通話履歴、gのホームセンターのジャーナル、ホームセンター付近のフェンスの金属線が現に切り取られていた状況等と整合し ており、事件発生の約3か月後の時点から同旨の供述をしていることも相まって、高い信用性が認められる。GとVの供述は、整合する部分につき、相互に信用性を高め合っている。 他方で、Fは、本件犯行当日は午後9時頃までD2組の事務所当番に入っていたため、Vから車を盗む道具を受け取り、本件ゴルフを借り、Gと合流したのは午後9時頃以降である旨供述している。かかるFの供述は、買い物をした際Fと行動を共にし、直後に買った物をFに手渡し、本件ゴルフを貸したというVの供述と齟齬している。Vは平成22年6月中旬頃すなわち本件犯行の約3か月後という早期の時点で、警察官に対し自発的に供述していることによれば、Vが買った物を手渡した時間帯やFが買い物に同行したかどうかについて大きく記憶違いをし、又は事実と異なる供述をしている可能性は低い。Gは、Fと午後4時10分頃合流した旨供述しており、GとVの供述は相互に整合している。これに対し、Fは自身の公判に至るまで自治会長事件について供述しておらず、しかも、その時の供述と内容が異なる現在の供述をしたのは当公判廷が初めてであり、少なくとも記憶喚起や記憶保持の条件において、Vとは大きな差異がある。 そうすると、Fの供述によっても、G及びVの供述の信用性は否定されず、結局、Fと合流した時間帯等を含めG及びVの供述は信用できる。 ウ弁護人は、Gの供述のうち、被告人Bの関与に係る部分について、特にその信用性を争っている。Gの供述は、午後7時 信用性は否定されず、結局、Fと合流した時間帯等を含めG及びVの供述は信用できる。 ウ弁護人は、Gの供述のうち、被告人Bの関与に係る部分について、特にその信用性を争っている。Gの供述は、午後7時34分の前頃、Fと共に、本件バイクの鍵を本件銭湯に置き、帰りかけると、被告人Bから戻って来るよう電話で伝えられ、本件銭湯へ向かっている途中で被告人Bと出会ったというものである。当該部分につき、Gに部分的な記憶違い等がないかどうかを検討する。 本件バイクが犯行に使用されず、代わりに当初想定されていなかった本件ゴルフが使用されたという事実経過に照らせば、Gが本件銭湯に本件バ イク及び鍵を置いて去った後に、本件バイクが動かないことに気付いた共犯者がG又はFにその旨電話で連絡して呼び戻すことは、自然である。Gは、捜査当初、A、D、Eの誰かははっきりしないが、共犯者の誰かから呼び戻された旨供述していたところ、捜査の過程で通話履歴を確認し、呼び戻したのは被告人Bであるとの記憶を喚起し、その旨供述するに至ったことが認められ、共犯者の誰かから呼び戻されたこと自体は当初から一貫して供述している。そして、通話履歴によれば、この時間帯に被告人BとGとの間で複数回連絡が交わされているのに対し、判明している限りではあるが、C、D及びEとG又はFとの間の通話は存在せず、G又はFに対して電話を発信しているA2會組員は被告人Bだけである。これらの事実によれば、Gが午後7時38分頃の被告人Bからの電話で本件銭湯に呼び戻されたという供述の信用性は高いといえる。 Gが本件銭湯へ戻る道中、被告人Bとすれ違い会話したという点については、Gが供述する、被告人Bが「彼女の車」であるとして乗っていた車両の特徴が、被告人Bの当時の交際相手が実際に所有していた車両の特 Gが本件銭湯へ戻る道中、被告人Bとすれ違い会話したという点については、Gが供述する、被告人Bが「彼女の車」であるとして乗っていた車両の特徴が、被告人Bの当時の交際相手が実際に所有していた車両の特徴と合致したことから一定程度裏付けられている。また、ヘルメットを持ってきた旨の被告人Bの発言は、被告人Bが本件銭湯に赴きGに連絡するに至った経緯を説明する発言として不自然な点はない。 弁護人は、夜間、対向車線を走行する車両の運転手を識別することは不可能であると主張する。確かに、夜間に街灯のない道路で自動車がすれ違う際に、走行中の対向車の特徴を視認することは一般に相当に困難であり、ましてすれ違いの際に互いを認識して停止することは、一層困難であると考えられる。しかし、Gの供述する、呼び戻されてから本件銭湯までの道路状況をみると、その経路上には、交差点の付近など車両が減速又は停止し得る場所が含まれており、そうした場所でさほど速度を出さずに運転することも考えられる。加えて、交通量が少なく、複数回にわたる通話によ りお互いの位置を概ね知ることが可能であったことなどの事情も加味すれば、走行中に停止して対向車の運転手と会話を交わすことが可能な場面があっても不合理とはいえず、この点に関するGの供述がおよそ不可能なことを述べているということはできない。 以上によれば、Gの供述のうち、被告人Bの関与に係る供述は、G及びFが本件銭湯に呼び戻された経緯とその時間帯の通話履歴や、被告人Bの車両の特徴といった点で周辺事情と整合しており、その基本的信用性を高く評価できる一方で、弁護人の主張を検討してもその信用性は減殺されないので、結局信用できるというべきである。 エさらに、通話履歴によれば、被告人Bは、本件犯行前の午後7時53分頃から本件犯行 評価できる一方で、弁護人の主張を検討してもその信用性は減殺されないので、結局信用できるというべきである。 エさらに、通話履歴によれば、被告人Bは、本件犯行前の午後7時53分頃から本件犯行に至るまで複数回にわたりC及びFの携帯電話との間で通話し、本件犯行後である午後11時21分頃Cに電話を掛け通話し、午後11時37分頃、すなわち、Fらが犯行現場から逃走中ないしh区のレンタルビデオ店に着く前後頃、Fの携帯電話から被告人Bの携帯電話へ発信があり通話がされていることが認められる。この点に関連し、Gは、本件犯行前にD又はEがFの携帯電話を何度か借りていた旨供述している。 このような本件犯行前後の時間帯における複数の共犯者との間の繰り返しの通話が、本件犯行と無関係に行われたとは考え難く、被告人Bは進捗確認や共犯者間での情報共有の役割を担っていたと推認できる。 5 被告人両名の故意及び共謀(争点③) 被告人Aについて被告人Aは、本件犯行の3、4日前に、Gに対して犯行に使用するバイクを用意するよう指示し、本件犯行当日も、本件バイクを指定の時間までに本件銭湯に運ぶようG及びFに指示した上、本件バイクが動かなくなったためCらを予備の車のところへ案内することについてもGから報告を受け把握していた。また、被告人Aは、本件犯行後にも、GからG及びFが実際に果た した役割の報告を受けた。以上のとおり、被告人Aは、自らが組長を務めるA組の組員らに本件犯行への関与を指示し、Gから進捗状況や結果の報告を受けていたことからすると、少なくとも、本件バイクの使用が予定された何らかの犯罪行為がA2會により組織的に計画されていたことを知っていたと認められる。 そして、A2會組員らが過去に起こした事件として、平成10年にО1及びP1らが元漁 本件バイクの使用が予定された何らかの犯罪行為がA2會により組織的に計画されていたことを知っていたと認められる。 そして、A2會組員らが過去に起こした事件として、平成10年にО1及びP1らが元漁協組合長をけん銃で射殺したという殺人事件や、平成19年にWらがA2會から絶縁されていた元組長をけん銃で射殺したという殺人事件などが存在するところ、被告人Aは、本件犯行以前から各射殺事件について認識しており、A2會はその組員がけん銃を含む凶器により対象者を殺害する事件を起こすことが十分あり得る組織であることを認識していたと認められる。 以上によれば、被告人Aは、上位者からの指示により本件犯行に関与するに当たって、本件犯行がけん銃を含む凶器を用いて加害行為に及ぶものであることや、場合によっては対象者を殺害する事態となることも一つの可能性として想定しつつ、そうなったとしてもやむを得ないとの認識を有していたと認められ、少なくとも殺人未遂、けん銃加重所持の未必的故意を有していたと認められる。 そして、被告人Aは、かかる認識の下、配下組員らに本件犯行への関与を指示し、進捗状況や結果の報告を受けていたのであって、果たした役割やA2會及びB2組内における当時の被告人Aの地位に照らせば、正犯性も認められる。 したがって、被告人Aには殺人未遂、けん銃加重所持罪についての故意及び他の共犯者らとの共謀が認められる。 被告人Bについて被告人Bは、ヘルメットをDらに渡すために本件銭湯に来た際に、本件バ イクが動かないことを知り、Gに連絡してGらを本件銭湯へ呼び戻した。本件銭湯を離れた後も、犯行前後にわたって、CやFの携帯電話を使用するD又はEと連絡を取り、進捗状況の確認等を行っていた。被告人Bが本件犯行計画につきどの程度知っていたか らを本件銭湯へ呼び戻した。本件銭湯を離れた後も、犯行前後にわたって、CやFの携帯電話を使用するD又はEと連絡を取り、進捗状況の確認等を行っていた。被告人Bが本件犯行計画につきどの程度知っていたかは必ずしも明らかではないものの、少なくとも、ヘルメットや本件バイクの使用が予定された何らかの犯罪行為がA2會により組織的に計画されていたことを知っていたと認められる。 そして、被告人Bは、本件犯行以前から、A2會組員らが過去に起こした前記各射殺事件がA2會により組織的に行われたものであることを認識していた。 以上によれば、被告人Bは、本件犯行に関与するに当たって、本件犯行がけん銃を含む凶器を用いて加害行為に及ぶものであることや、場合によっては対象者を殺害する事態となることも一つの可能性として想定しつつ、そうなったとしてもやむを得ないとの認識を有していたと認められ、少なくとも殺人未遂、けん銃加重所持の未必的故意を有していたと認められる。 また、被告人Bは、本件バイクが動かなくなった際にGらを呼び戻し、事態の対処に当たらせたのみならず、犯行前後にわたって他の共犯者らと連絡を取り合い、犯行の進捗状況の確認等を行ったものであって、A2會による組織的犯罪の性質を有する本件犯行において、A2會組員として軽視できない役割を果たしていることによれば、正犯性も認められる。 したがって、被告人Bには殺人未遂、けん銃加重所持罪についての故意及び他の共犯者らとの共謀が認められる。 6 自治会長事件の結論以上によれば、被告人A及び被告人Bは、自治会長事件について、殺人未遂、けん銃加重所持罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第3 丙事件について(以下、「第3」内にある、「本件バイク」「本件バッグ」等の略称は、丙事件 人Bは、自治会長事件について、殺人未遂、けん銃加重所持罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第3 丙事件について(以下、「第3」内にある、「本件バイク」「本件バッグ」等の略称は、丙事件 に関するものを指す。) 1 争点丙事件の争点は、①殺人の実行行為該当性及び実行犯の殺意、②被告人両名の本件への関与の有無、③被告人両名の故意及び共謀である。 2 認定事実⑴ 丙事件の概要平成23年2月9日午後7時12分頃(以下、「第3」において平成23年の記載は省略する。)、実行犯が、b区内の工事作業所2階事務所(以下「本件事務所」という。)において、A4に対し、所携のけん銃で弾丸3発を発射し、そのうち1発を同人の下腹部に命中させ、傷害を負わせた。 ⑵ 各関係者の立場等ア 2月9日当時、被告人AはB2組本部長兼B2組内A組組長、被告人BはB2組組員、HはB2組若頭補佐、IはB2組直若、G及びFはB2組組員兼A組組員の地位にあった。 イ当時、A4は、丙株式会社の従業員であり、同社が元請として受注したA5病院移転新築工事の工事長として現場責任者を務めていた。同社は、その方針として、暴力団を含む反社会的勢力とは一切関わらず、不当要求にも応じないこととしていた。 ⑶ 犯行状況等2月9日午後7時12分頃、実行犯は、本件事務所東側出入口から本件事務所内に立ち入り、同出入口付近から、本件事務所の自席で座って作業をしていたA4がいる方向にけん銃の銃口を向けて弾丸1発を発射した。A4が実行犯に気付いて椅子から立ち上がり両手を上げると、実行犯は、A4に近づき、数メートルの距離から、A4の方向にけん銃の銃口を向けて弾丸1発を発射した。同弾丸は、机上の書類束を貫通し、A4の腹部に命中し 行犯に気付いて椅子から立ち上がり両手を上げると、実行犯は、A4に近づき、数メートルの距離から、A4の方向にけん銃の銃口を向けて弾丸1発を発射した。同弾丸は、机上の書類束を貫通し、A4の腹部に命中した。A4が床に倒れ込み、机の影に隠れたところ、実行犯は、上記出入口方向に引 き返したが一旦立ち止まり、A4の方を振り返って、けん銃の銃口を下方に向けて、弾丸1発を発射した。 本件犯行により、A4は、全治約23日間を要する下腹部挫創の傷害を負った。 3 殺人の実行行為該当性及び実行犯の殺意(争点①)上記弾丸は、いずれも口径0.38インチスペシャル型回転弾倉式けん銃用実包の発射弾丸であり、これらを発射した銃器は、左回転6条の腔旋を有する口径0.38インチ回転弾倉式けん銃である。 実行犯は、このような高い殺傷能力を有する真正けん銃を用いて、事務所の室内で、合計3発の弾丸を発射した。最初の2発はA4がいる方向に向けられて発射され、そのうち1発が現にA4に命中しており、かかる行為は人を死亡させる危険性の高い行為である。また、3発目の際A4は机の影に隠れてはいたものの、概ねA4がいる方向に向けて発射されており、備品を貫通したり跳弾したりするなどして弾丸がA4に命中する可能性は十分にあったと認められる。 以上によれば、前記銃撃行為は殺人の実行行為に該当すると認められ、実行犯は、その行為の危険性を認識して犯行に及んだと認められるから、殺意が認められる。 4 被告人両名の本件への関与の有無(争点②)⑴ 認定事実証拠によれば次の事実が認められる。 ア Hは、本件犯行の約1週間前に、B2組内の上位者から、実行犯を送迎するためのバイクを運転するよう指示された。 イ被告人Aは、本件犯行の1週間から10日程前に、Gに の事実が認められる。 ア Hは、本件犯行の約1週間前に、B2組内の上位者から、実行犯を送迎するためのバイクを運転するよう指示された。 イ被告人Aは、本件犯行の1週間から10日程前に、Gに対し、バイクを用意するよう指示した。Gは、指示を受けたその日のうちにFに相談し、バイクを盗むこととした。G及びFは、本件犯行の約4、5日前に、h区 でバイクを窃取し(以下「本件バイク」という。)、Gの知り合いであるD4が営むバイク店の倉庫に運んだ。Gは、本件バイクを黒色に塗り、ナンバープレートを付け替え、b区xにある倉庫に移動させて保管した。 その後、Fは、GからGが使用するヘルメットが必要と相談を受け、Xに対しヘルメットを用意するよう依頼した。Xは、その日のうちにヘルメットを購入し、Gに渡した。 ウ Gは、本件バイクの窃取後本件犯行当日までに、被告人Aから、被告人Bと連絡を取って荷物を受け取るよう指示された。Gは被告人Bと連絡を取り、b区iにあるB2組事務所(以下、本判決を通じ「i事務所」という。)で荷物の受渡しをすることになった。 Gは、夜間、被告人Bとi事務所で落ち合い、「着替えが入っている。」旨告げられて黒いスポーツバッグを受け取った(以下「本件バッグ」という。)。Gは、本件バイクを用意していた経緯から、本件バッグ内の着替えは実行犯が着るものと理解した。 その後間もなく、Gは、本件バッグをFに渡すため、Fに電話をしてi事務所に来るよう依頼した。Fは、Xが使用するカペラ(以下「本件カペラ」という。)に乗って、Xを帯同してi事務所に向かった。Gは、i事務所に来たFに対し、「着替えが入ってるようなので保管していてくれ。」旨述べて本件バッグを渡した。 エ被告人Aは、本件犯行当日までに、b区の って、Xを帯同してi事務所に向かった。Gは、i事務所に来たFに対し、「着替えが入ってるようなので保管していてくれ。」旨述べて本件バッグを渡した。 エ被告人Aは、本件犯行当日までに、b区のF5病院に入院していたCをGと共に見舞いに行った帰りに、本件事務所が所在していた工事作業所を指さして、「ここの場所を覚えておけよ。」旨Gに述べた。また、被告人Aは、本件犯行当日までに、Gに対し、本件バイクを運んで人に渡し、その後Fの車で別の場所へ移動し、本件バイクが戻ってきたら隠すか処分するなどのGの犯行当日の行動を指示した。 オ本件犯行当日である2月9日、Fは、Xから本件カペラを借りた。同日、 Hは、集合場所において、被告人Aが運転しIが乗る本件カペラに乗り込み、本件カペラ内に置かれていた作業着、手袋、靴及びヘルメットを身に着けた。IはHが来た時点で、既に着替えを終えていた。 Gは、Fと落ち合って他人名義の携帯電話を受け取り、b区xの倉庫へ本件バイクを取りに行った。 Gは、被告人A又はFから連絡を受け、本件バイクをb区jのG5団地付近の道路へ運転して運んだ。同所には、被告人A、I及びHが乗った本件カペラとFが乗った軽自動車(アルト又はミニカ。以下「本件軽自動車」という。)が、順に並んで停まっていた。Gはその付近に本件バイクを停め、本件軽自動車に乗り込んだ。 I及びHが本件カペラから降りて本件バイクの方へ行き、Hが本件バイクの運転席に、Iがその後部座席に乗って発進した。被告人Aが本件カペラを発進させたのを受け、G及びFが本件軽自動車で本件カペラに追従し、b区yの線路沿いの道まで移動した。 カ I及びHは、本件バイクに乗ってF5病院西側の道路まで移動した。Iが本件バイクから降りて本件事務所まで走って移動し、本件犯 自動車で本件カペラに追従し、b区yの線路沿いの道まで移動した。 カ I及びHは、本件バイクに乗ってF5病院西側の道路まで移動した。Iが本件バイクから降りて本件事務所まで走って移動し、本件犯行を実行した。Hは、本件事務所南側のマンションの駐車場内で本件バイクを転回させてその入り口付近で待機し、本件犯行を終えて戻ってきたIを後部座席に乗せて前記線路沿いの道まで逃走した。 キ前記線路沿いの道において、I及びHは本件バイクを降り、Iは本件カペラに、Hは本件軽自動車にそれぞれ乗り込んだ。Gは、本件軽自動車から降りて本件バイクに乗り、b区z内の駐輪場まで本件バイクを移動させ、同所に置いた。 Fは、同所付近までGを迎えに行き、本件軽自動車に乗せ、h区にある焼き鳥店まで移動し、その店内で被告人A及びHと合流した。 焼き鳥店で食事をした後、被告人Aは、Fに対し、本件カペラの鍵を渡 すとともに、G及びFに対し、被告人A、G及びFが本件犯行で使用した他人名義の携帯電話、実行犯らが使用した着替え等を処分するよう指示した。G及びFは、本件カペラに載っていた黒いスポーツバッグに、本件カペラ及び本件軽自動車に載っていた2人分の着替え等を詰め込み、本件軽自動車に載せた。 G及びFは、本件カペラに乗って自宅への帰路につき、その道中、前記各携帯電話の電池パックを抜き取り、電池パック及び携帯電話本体を川や海に捨てた。 ク G及びFは、2月10日、本件バイクを海中に投棄し、同日及び翌11日、本件軽自動車に載せていた黒いスポーツバッグ及びその中に詰め込んでいた着替え等を焼却処分した。 ⑵ 認定事実に係る補足説明ア前記⑴の認定事実は、主としてGの供述によって認定した。 Gの供述は、被告人Aから指示さ ーツバッグ及びその中に詰め込んでいた着替え等を焼却処分した。 ⑵ 認定事実に係る補足説明ア前記⑴の認定事実は、主としてGの供述によって認定した。 Gの供述は、被告人Aから指示されて犯行に用いる本件バイクを用意し、本件バッグをFに預け、犯行当日本件バイクを待ち合わせ場所に届け、後日本件バイクや実行犯が着用した着替え等を処分したという、本件犯行への関与を自認するものであり、その内容に、犯行態様、経緯等につき他の客観的証拠と矛盾する点や、不自然、不合理な点は見られない。同供述のうち、Xにヘルメットの購入を依頼した点、i事務所でFに本件バッグを手渡した点、本件犯行にXの本件カペラが使用された点についてはXの供述と、本件バイクの色を塗り替えて他の倉庫で保管した点についてはD4の供述と、犯行当日の概要についてはHの供述とそれぞれ整合している。 Gには、殊更虚偽の供述をすることをうかがわせる事情は見当たらない。 以上によれば、Gの供述は全体として高い信用性を認めることができる。 イ被告人BがGに本件バッグを渡し、GがFにそれを渡した点について検討する。 弁護人は、本件犯行の数日前に、i事務所において、被告人BがGに対して着替え等が入ったバッグを渡したことはなく、FがGからバッグを受け取ったこともない旨主張し、被告人Bも同旨の供述をする。 これについて、Gは、本件犯行の数日前に、i事務所においてFに本件バッグを渡した旨供述するところ、同供述は、Fが事件の数日前にi事務所で誰かと会いバッグを受け取っていたというXの供述と整合している。 Xは、平成23年11月の時点から同旨の供述をしており、虚偽供述や記憶違いを疑わせる事情も特段見当たらず、信用性は高く、このようなXの供述と整合するGの上記供述の信 たというXの供述と整合している。 Xは、平成23年11月の時点から同旨の供述をしており、虚偽供述や記憶違いを疑わせる事情も特段見当たらず、信用性は高く、このようなXの供述と整合するGの上記供述の信用性も高い。 i事務所において被告人Bから本件バッグを受け取ったというGの供述についても、Gにあえて被告人Bに関し事実と異なる供述をする理由は見当たらず、実際には別の人物から本件バッグを受け取ったのに被告人Bから受け取ったとの記憶違いを引き起こすような事情も見当たらない。 この点について、弁護人は、当時のi事務所周辺には、i事務所を常時監視する防犯カメラが2台設置されており、警察官も定期的に巡回していたことから、その付近はいつ職務質問をされるか分からない状況にあり、そのような場所で事件に関する物の授受をすることはないと主張し、被告人B及びFも同旨の供述をする。しかし、本件バッグを受け取ったり、自動車に積んだりすること自体に長時間を要するとは考えにくく、また、職務質問が行われたとしても、本件バッグに入っていると考えられる物は着替え等の日用品であると想定され、その物自体から何らかの犯行との関連性を疑うことはできず、警察官が一般的な質問以上の追及をすることは困難である。そうすると、i事務所の駐車場において本件バッグの受渡しをすることが不自然、不合理ということはできず、G及びXの供述の信用性は否定されない。 以上によれば、G及びXの供述は信用することができ、本件犯行の数日 前に、i事務所において、被告人Bが本件バッグをGに渡し、その後間もなく、GがFに本件バッグを渡したと認められる。 ウなお、検察官は、2月6日にXが購入し、Fに渡した3台のプリペイドカード式の携帯電話が、本件犯行の際に用いられた他 グをGに渡し、その後間もなく、GがFに本件バッグを渡したと認められる。 ウなお、検察官は、2月6日にXが購入し、Fに渡した3台のプリペイドカード式の携帯電話が、本件犯行の際に用いられた他人名義の携帯電話であると主張するが、Gにより本件犯行に用いられた携帯電話が川や海に捨てられた後である同月18日に、上記3台の携帯電話のうち1台に対し他の携帯電話から発信があることは不可解であり、また、A2會において他人名義の携帯電話を用意することが特段珍しいことではなかったことなどによれば、上記3台の携帯電話が本件犯行に用いられた携帯電話であるとまでは認められないと判断した。 ⑶ 本件バッグ及びその在中物が本件犯行に使用されたかア弁護人は、Gが被告人Bから受け取ったとされる本件バッグ及びその在中物が本件犯行に関係するものであることは証明されておらず、被告人Bが本件犯行に関与したことも証明されていない旨主張する。 そこで、本件バッグ及びその在中物が本件犯行に使用されたかどうかを検討する。 イ前記のとおり、Gは、本件犯行の数日前に、被告人Aから被告人Bと連絡を取って荷物を受け取るよう指示され、その指示に従い、i事務所において被告人Bから本件バッグを受け取り、その後間もなく、同所においてFに対し本件バッグを渡した。被告人Bは、Gに対して、本件バッグ内に着替え等が入っている旨発言し、Gは、被告人Bの発言に疑問を抱かず、本件バッグに着替え等が入っていると理解し、その前提で本件バッグをFへ手渡した。かかる事実によれば、AがGに受取りを指示した本件バッグの中には着替え等が入っていたことが認められる。 Fの供述によれば、Fは、本件犯行当日、被告人Aの指示で、作業着、靴及びヘルメット等が2組在中するバッグを本件カペラ内に載せ、指定の した本件バッグの中には着替え等が入っていたことが認められる。 Fの供述によれば、Fは、本件犯行当日、被告人Aの指示で、作業着、靴及びヘルメット等が2組在中するバッグを本件カペラ内に載せ、指定の 駐車場に本件カペラを停めたことが認められる。そして、Hの供述を踏まえると、このバッグの在中物がI及びHにより本件犯行に使用されたと認められる。 本件犯行に使用した着替え等には2人分の靴が含まれているが、サイズの合わない靴を履いて本件犯行を実行することは困難であるから、本件犯行に使用された着替え、靴等は、実行犯及び本件バイクの運転手が確定した後で準備されたと認められる。Hの供述によれば、Hが上位者から実行犯を送迎するためのバイクを運転するよう指示されたのは本件犯行の約1週間前である。本件バッグを除き、Fが、本件犯行から遡って約1週間以内に、本件犯行のために用意されたバッグを入手したことはうかがわれない。これに対し、本件バッグには、前記のとおり着替え等が入っていたと認められ、本件バッグを本件犯行に使用できなかったことを示唆する事情は何ら存在しない。 ウ以上のとおり、本件バッグは、被告人Aの指示により用意され、その中には着替え等が入っていた。本件バッグは、本件犯行の数日前、GからFへ手渡された。本件犯行当日、Fが用意した本件カペラ内に、作業着、I及びHのサイズに合う靴等が置かれており、これらはFが置いたものである。Fが当時保管していたバッグには、本件バッグを除き、本件犯行のために用意されたことをうかがわせるバッグはなく、本件バッグを使用できなかったことを示唆する事情もない。これらの諸事情によれば、Fが被告人Aの指示に基づき本件カペラに載せ、本件犯行に使用されたのは、本件犯行の数日前にGがFに渡した本件バッグ及びその在中物である できなかったことを示唆する事情もない。これらの諸事情によれば、Fが被告人Aの指示に基づき本件カペラに載せ、本件犯行に使用されたのは、本件犯行の数日前にGがFに渡した本件バッグ及びその在中物であると認められ、それ以外の可能性は否定できる。 5 被告人両名の故意及び共謀(争点③)被告人Aの故意及び共謀被告人Aは、本件犯行において、G及びFに対して本件バイクや本件バッ グ等犯行に使用する用具の準備を指示し、本件犯行当日の行動についても多岐にわたる指示を出すとともに、本件犯行直前、待ち合わせ場所で待機し、犯行後自ら実行犯であるIの逃走を援助した。果たした役割からして、被告人Aは、Iが従業員が出入りする本件事務所においてけん銃を用いて弾丸を発射するという本件犯行の全体像を把握していたと認められる。 以上によれば、被告人Aは、本件犯行が従業員のいる本件事務所内においてけん銃で弾丸を発射し、場合によっては対象者を殺害し得るものであることを認識した上で、本件犯行の実行指揮役として中心的な役割を果たしたと認められる。 したがって、被告人Aには殺人未遂、けん銃発射、けん銃加重所持についての故意及び他の共犯者らとの共謀が認められる。 被告人Bの故意及び共謀被告人Bは、本件犯行において、本件犯行に使用されたヘルメットや着替え等が入った本件バッグをGに渡した。被告人Bが自発的にこのような行動を取ったとは考え難く、被告人Bの上位者の指示による行動であると推認できる。 A2會組員による過去の発砲事件に係る被告人Bの認識や被告人B自身、自治会長事件において発砲事件に関与していたことからすると、被告人Bは、A2會内の上位者の指示によりGに渡した着替え等が入ったバッグが、いずれ何らかの犯罪に使用されること、その犯罪がけん銃 B自身、自治会長事件において発砲事件に関与していたことからすると、被告人Bは、A2會内の上位者の指示によりGに渡した着替え等が入ったバッグが、いずれ何らかの犯罪に使用されること、その犯罪がけん銃を用いて加害行為に及ぶものであり、対象者を殺害し得るものであることも一つの可能性として想定していたと認められ、少なくとも殺人未遂、けん銃発射、けん銃加重所持の未必的故意を有していたと認められる。 そして、本件犯行は暴力団組員が細分化された役割を各々果たすことにより初めて実現する組織的なものであり、被告人Bは、A2會組員として、本件バッグが将来的に組織的犯行に使用され得るものであることを想定した上 で、自らの役割を果たした。本件バッグ及びその在中物が実行犯であるI及びその送迎役であるHにより現に使用されたことからすると、被告人Bの行為は、暴力団組織による本件犯行に現に寄与し、その実行に不可欠なものであったと認められる。 したがって、被告人Bには殺人未遂、けん銃発射、けん銃加重所持についての故意及び他の共犯者らとの共謀が認められる。 6 丙事件の結論以上によれば、被告人A及び被告人Bは、丙事件について、殺人未遂罪、けん銃発射罪、けん銃加重所持罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第4 乙事件について(以下、「第4」内にある、「本件クラウン」「本件バイク」等の略称は、乙事件に関するものを指す。) 1 争点乙事件の争点は、①実行犯の殺意、②被告人Aの本件への関与の有無、③被告人Aの故意及び共謀である。 2 認定事実⑴ 乙事件の概要平成23年11月26日午後9時頃(以下、「第4」において平成23年の記載は省略する。)、実行犯が、b区a1のM方(以下「自宅」ということがある。) 2 認定事実⑴ 乙事件の概要平成23年11月26日午後9時頃(以下、「第4」において平成23年の記載は省略する。)、実行犯が、b区a1のM方(以下「自宅」ということがある。)前路上付近において、大相撲九州場所の観戦を終えて帰宅したMに対し、所携のけん銃で弾丸2発を発射し、うち1発を同人の頚部に命中させて死亡させた。 ⑵ 各関係者の立場等ア 11月26日当時、被告人AはA2會直若兼A組組長、IはB2組若頭、EはB2組組織委員長、JはB2組筆頭若頭補佐、KはB2組若頭補佐、F及びGはB2組組員兼A組組員、LはB2組組員であった。 イ当時、Mは、b区に本店を置くK5株式会社の取締役を務めていた。Mは、平素大相撲を愛好しており、毎年の大相撲九州場所の時期になると、15日分のチケットを手に入れて、ほぼ毎日、福岡市e区の福岡国際センターで大相撲を観戦する習慣があった。Mは、大相撲を観戦する際、「砂かぶり」と呼ばれる東の花道沿いの前から数列以内の席に座り、その場所は頻繁にテレビに映ることから、大相撲中継を見た者がMの姿を見つけることは容易であった。 Mは、11月13日から福岡国際センターで開催されていた大相撲九州場所を観戦するため、連日、自家用車、知人の車、新幹線等を利用して、自宅と福岡国際センターとを往復していた。 ⑶ 犯行準備状況等ア Iは、11月16日、B2組組員であるE1(E2と同一人物)から自動車を借りて、I1及びZと共に福岡国際センターへ行き、I1及びZに指示して、大相撲観戦のため同センターに来ていたMの顔を確認させた。 その後、I及びZは、同センターからバスで帰宅するMをe駅まで追跡した。 Iは、同月22日及び23日、Lに指示して自動車を運転させ、Mが乗車する車両の後 め同センターに来ていたMの顔を確認させた。 その後、I及びZは、同センターからバスで帰宅するMをe駅まで追跡した。 Iは、同月22日及び23日、Lに指示して自動車を運転させ、Mが乗車する車両の後を追従したり、福岡国際センターを見て回ったりするなどして、それぞれMの行動確認をした。 イ Iは、同年の大相撲九州場所開催中、B2組本部事務所の会議室において、J組組員であったYに対し、Mが映っている大相撲中継の録画映像を示し、Mの顔を覚えさせた上、同日の事務所当番中に大相撲中継を見て、Mの行動を確認し、Iに報告するよう指示した。後日、Jは、J組事務所において、Yに対し、大相撲中継を見るよう指示し、Mが大相撲中継に映っているか確認させた。 ⑷ 犯行日当日の関係者の行動等 Mは、本件犯行当日である11月26日午後2時半ないし午後3時頃、大相撲観戦のため、妻であるA1及び知人であるM1と共に、M1の運転する白色クラウン(以下「本件クラウン」という。)に乗車し、福岡国際センターに向けて自宅を出発した。M、A1及びM1は、同日午後6時頃、大相撲観戦を終え、福岡市内の飲食店に立ち寄り食事をした後、本件クラウンで自宅に向かった。 Lは、Iの指示に従い、同日午後6時頃からnインター付近の歩道上で待機し、同日午後8時50分頃、本件クラウンがnインターを通過するのを見て、あらかじめIに指示されていた番号に電話をかけ、その通話相手に報告した。 M及びA1は、同日午後9時頃、M1が運転する本件クラウンに乗って帰宅し、自宅玄関前の通路で同車から降りた。その後間もなく、I5神社の方向からバイクに乗る2人組の者が自宅玄関前の通路に到着し、実行犯がバイクの後部座席から降りた。実行犯は、自宅玄関前の通路上にいたMに接近し、Mに向かって、所携の 降りた。その後間もなく、I5神社の方向からバイクに乗る2人組の者が自宅玄関前の通路に到着し、実行犯がバイクの後部座席から降りた。実行犯は、自宅玄関前の通路上にいたMに接近し、Mに向かって、所携の回転弾倉式けん銃で弾丸2発を発射し、そのうち1発をMの頚部に命中させた。実行犯は、再び前記バイクの後部座席に乗り、b区b1の方向に逃走した。 Mは、病院に搬送されたが、その時点で既に心肺停止状態であり、同日午後10時3分に死亡が確認された。その死因は、頚部射創による右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血であった。 及びの事実は、Z、Y、L、A1、M1等の各供述、カメラ映像、高速道路の通行券及び指掌紋の鑑定結果等によって認定した。弁護人はこれらの証拠の信用性を争っているが、Z、Y、L等の供述は裏付けとなる証拠があり、又は他の者の供述と相互に整合していることから信用し得、A1及びM1の各供述も上記の限度では概ね相互に整合しており、信用性を疑うべき事情もないから信用し得る。また、指掌紋鑑定についても、各鑑定が依拠す る鑑定基準に不合理な点はなく、鑑定官であるB1の供述によれば、各鑑定は前記鑑定基準に則って正確に実施されたものと認められるから、信用し得る。 3 実行犯の殺意(争点①)バイクの後部座席から降りた実行犯は、至近距離でMに向けてけん銃を構えた直後、連続して2回弾丸を発射した。けん銃から発射された2発の弾丸のうち、Mに命中した弾丸は、まずMの右鎖骨上窩部の中部から体内に侵入して前斜め右側わずかに上方から後斜め左側わずかに下方へほぼ直線状に進んでおり、地面に当たった弾丸が跳弾してMに当たったとは考えられず、現に犯行現場周辺において跳弾痕は発見されていない。 至近距離から人の身体にけん銃を向けて弾丸を発射する行 かに下方へほぼ直線状に進んでおり、地面に当たった弾丸が跳弾してMに当たったとは考えられず、現に犯行現場周辺において跳弾痕は発見されていない。 至近距離から人の身体にけん銃を向けて弾丸を発射する行為が人を死に至らしめる危険性の高い行為であることは明らかであり、実行犯はそれと認識して本件犯行を実行したのであるから、殺意に欠けるところはない。 4 被告人Aの本件への関与の有無(争点②)⑴ G及びFに対する犯行への関与の指示等ア Gの供述要旨被告人Aの本件犯行への関与に関し、Gは、要旨次のとおり供述する。 11月17日の昼頃、Iから指示されて、被告人Aのランサーを運転してI及びKと共に福岡国際センターまで行き、大相撲の九州場所を観戦した。その後、Iの指示の下、c1インター付近から白いベンツを追い掛けた。途中で白いベンツを見失ったが、Iの指示に従いある家の駐車場まで行ったところ、白いベンツが停まっていた。私が逮捕された後、この家がM方であることを知った。 11月の初旬に被告人Aからバイクを用意するよう指示されていたので、同月18日から19日にかけての夜、Fと共にa区tで、回路を直結させてバイク(以下「本件バイク」という。)を盗み、知人のガレージに隠した。 その後、H1に依頼して本件バイクの修理をしてもらったり、本件バイクの車体を黒色に塗り替えたりした。 その後、別の日の昼頃、被告人Aから呼び出され、被告人Aが運転するランサーに乗ってM方付近の三差路(以下「三差路」という。)の手前まで行った。そこで、被告人Aから、当日、Fと2人で目立たない車に乗り、この場所で待機すること、バイクに乗った2人組が来るから、そのバイクを受け取り右へ行き、バイクを処分すること、Fは2人組を車に乗せて右へ行くこと、バイクを処分できない場 と2人で目立たない車に乗り、この場所で待機すること、バイクに乗った2人組が来るから、そのバイクを受け取り右へ行き、バイクを処分すること、Fは2人組を車に乗せて右へ行くこと、バイクを処分できない場合は一度隠して後日処分することなどを指示された。 Fが知人からワゴンRを借りて用意した(以下「本件ワゴンR」という。)。 本件犯行の数日前、前記ガレージから本件バイクを持ち出し、K、E、F及び私の4人で、I5神社付近に行った。この時、Eが本件バイクの試し乗りをしたが、Uターン時に転倒した。その後、解散するに際して、Eから本件バイクを前記ガレージではなくb区kにあるガレージ(以下「kのガレージ」という。)で保管するよう指示されたので、Eの案内で、K及びFと共にkのガレージまで行き、本件バイクを保管した。 本件犯行当日午後5時頃、Fと共に本件ワゴンRに乗って集合場所に行き、K及びEと合流した。本件ワゴンRで移動しながら待機し、K及びEは、本件ワゴンRの後部座席で、前もって用意していた衣服に着替えた。 その後、KかEに、最終的な位置につくよう電話で連絡が入ったので、私とFは、KとEをkのガレージに送った。私とFは三差路の手前付近まで本件ワゴンRで移動し、待機した。その後、KかEから指示があり、三差路の手前の路上に移動した。約10分後、本件ワゴンRの後方から本件バイクがやって来て真後ろに止まったので、本件ワゴンRから降りて本件バイクに近づいたところ、本件バイクの後部座席から人が降りてきて本件ワゴンRに乗り込んだ。その人物の顔は見ていないが、衣服や背格好から、 その人物はKだと思った。本件バイクの運転手の顔を見るとEだった。Eは本件バイクから降り、本件ワゴンRに乗った。私はEと本件バイクの運転手を替わり、あらかじめ決めていた隠し場所まで運 、 その人物はKだと思った。本件バイクの運転手の顔を見るとEだった。Eは本件バイクから降り、本件ワゴンRに乗った。私はEと本件バイクの運転手を替わり、あらかじめ決めていた隠し場所まで運転して本件バイクを隠した。 その後、Fが本件バイクの隠し場所付近まで本件ワゴンRで迎えに来てくれた。Fは、私に、三差路を左に行ったが人に見られたかもしれない、本件ワゴンRには着替えとけん銃が載っており、けん銃は2発発射されたが3発まだ弾が残ったままの状態で袋に入っていると述べた。けん銃の隠し場所を被告人Aに相談することになり、被告人Aに対し、携帯電話で、子供が家から2人出て行ったが、まだ3人家に残っていると隠語で話した。 被告人Aから持って来るよう指示されたことから、被告人Aと待ち合わせて上記袋を被告人Aに渡し、着替えは、被告人Aの実家の前の車に積み替えた。 翌日、Fと共に、本件バイクをl区のmに、本件ワゴンRをb区d1の海にそれぞれ捨てた。 イ Gの供述の信用性11月17日のMの行動確認については、携帯電話の通話履歴、高速道路通行券に付着したGの指紋及びETCの通行履歴、と整合する。本件バイクを窃取し、本件バイク及びFが知人から借りた本件ワゴンRを犯行に使用し、これらを海に捨てたなどの点については、本件バイクが現にa区tにおいて11月ないし12月頃窃取され、Gの供述と矛盾しない損傷がある本件バイクがmから、Gが供述する知人名義の本件ワゴンRがb区d1でそれぞれ発見され、N1が11月23日及び24日にEにkのガレージを貸したこととよく整合している。犯行後の逃走状況については、犯行現場周辺の防犯カメラ映像と矛盾なく説明できる。これに対して、Gの供述に反する証拠は見受けられない。 Gの供述には上記のとおり裏付けとなる 合している。犯行後の逃走状況については、犯行現場周辺の防犯カメラ映像と矛盾なく説明できる。これに対して、Gの供述に反する証拠は見受けられない。 Gの供述には上記のとおり裏付けとなる証拠が多数存在し、その供述内容は、G自身が、Mの行動確認、犯行に用いた本件バイクや本件ワゴンRの準備、実行犯の送迎と逃走援助、犯行用具の隠滅等を行ったという、自己の関与を自認するもので、その内容に疑問を抱かせる不自然、不合理な点はない。これらの事情によれば、Gの供述には全体として高い信用性を認めることができる。 そして、Gに対して犯行に関与するよう指示したのが被告人Aであるとする点についても、Gにとって被告人Aは自身の属していた組の組長であり、被告人Aが直属の配下であるGに指示するのは組織構成上自然である上、上位者が絶対的な存在である暴力団組織において、下位者であるGが被告人Aをあえて引き込むことは考え難いことによれば、信用性を認めることができる。 ウ小括信用できるGの前記供述によれば、被告人Aは、Gに対し、本件犯行に使用するバイクの準備並びにFと協力しての実行犯の逃走援助及び犯行に使用した物件の処分を指示したことが認められる。また、I及びKが被告人Aに断りなくGに被告人Aのランサーを運転させるとは考え難いことによれば、被告人Aは、I及びKに、Mの行動確認のために被告人Aのランサーを使用すること及び同車をGに運転させることを許諾していたと認められる。 なお、Gの前記供述及びA1の犯行目撃状況に係る供述によれば、本件犯行の実行犯はKであると認められる。 ⑵ 本件犯行当日におけるMの行動確認本件クラウンのETCの通行履歴及び各料金所設置の防犯カメラ映像によれば、本件クラウンは、本件犯行当日である 本件犯行の実行犯はKであると認められる。 ⑵ 本件犯行当日におけるMの行動確認本件クラウンのETCの通行履歴及び各料金所設置の防犯カメラ映像によれば、本件クラウンは、本件犯行当日である11月26日、往路において、午後2時56分47秒頃にn料金所を通過して一般道から九州自動車道に流 入し、午後3時32分27秒頃にp料金所を通過して九州自動車道から福岡都市高速に流入し、復路において、午後8時8分48秒頃にp料金所を通過して福岡都市高速から九州自動車道に流入したと認められる。 他方、同日の午後2時57分にn料金所で発券され、午後3時33分にp料金所で回収された高速道路通行券、及び、午後8時9分にp料金所で発券され、午後8時55分にo料金所で回収された高速道路通行券から、それぞれ被告人Aの指紋が検出されている。そして、各料金所設置の防犯カメラ映像及び証人C1の供述によれば、いずれもマツダ・デミオ2代目後期型の特徴を有する車両が、午後2時57分28秒頃にn料金所を、午後3時33分13秒頃にp料金所を、午後8時9分5秒頃にp料金所を、午後8時55分49秒頃にo料金所を、それぞれ通過したことが認められ、これ以外に上記各高速道路通行券と整合する車両は見当たらない。これらの指紋及び防犯カメラ映像によれば、上記各マツダ・デミオ2代目後期型の特徴を有する車両は、いずれも被告人Aが乗車した同一の車両であり、同車両は、本件クラウンが上記のとおりn料金所及びp料金所を通過する際、その直ぐ後方を走行していたと認められる。 前記に認定したとおり、被告人Aは、Gに対し本件犯行への関与を指示しているところ、本件犯行の当日、Mを乗せて自宅と福岡国際センターとの間を往復する本件クラウンの直ぐ後方を、複数地点で走行したことが、本件犯行と無 とおり、被告人Aは、Gに対し本件犯行への関与を指示しているところ、本件犯行の当日、Mを乗せて自宅と福岡国際センターとの間を往復する本件クラウンの直ぐ後方を、複数地点で走行したことが、本件犯行と無関係の偶然であったとは考えられない。 以上によれば、被告人Aは、本件犯行当日、Mが乗車し、自宅と福岡国際センターとを往復する本件クラウンを追従し、少なくとも帰宅途上の本件クラウンがp料金所を通過するまで、被害者の行動確認をしたと認められる。 弁護人は、指紋の鑑定結果の信用性を争うが、これを信用し得ることは前記2⑸で述べたのと同様である。また、弁護人は、証人C1の供述についてもその信用性を争うが、その供述は防犯カメラ映像に記録された各車両の特 徴を具体的に指摘する合理的なもので、上記で認定した限度で信用できる。 5 被告人Aの故意及び共謀(争点③)以上を前提に被告人Aの故意及び共謀を検討する。 被告人Aは、自らが組長を務めるA組の組員であるG及びFに対し、本件犯行に用いられるバイクの準備や犯行後の逃走援助といった本件犯行と密接に関係する行為を指示している。特に逃走援助の指示は、三差路付近で待機し、バイクに乗った2人組が来ると、Gはバイクを受け取ってこれを移動させ、Fは2人組を車に乗せて逃走させるというものであるが、実行犯が対象者を短時間で襲撃し、直ちに逃走するという本件犯行の全体像を知った上でなければ、このような指示を的確に行うことは著しく困難である。加えて、被告人Aは、Gが、本件犯行後、けん銃が入った袋の対処につき、子供が家から2人出て行ったが、まだ3人家に残っている旨隠語で相談すると、その意図を即座に理解し適切な指示を与えている。被告人AのA2會における当時の地位は、判明している乙事件の共犯者の中で最も高く、その地位に 人出て行ったが、まだ3人家に残っている旨隠語で相談すると、その意図を即座に理解し適切な指示を与えている。被告人AのA2會における当時の地位は、判明している乙事件の共犯者の中で最も高く、その地位に鑑みると、本件犯行の内容を知らずに関与することは想定し難い。 これらの事情に照らすと、被告人Aは、本件犯行がけん銃を用いてMを射殺するものであることを明確に認識した上で、これに関与したものと認められる。 したがって、被告人Aには殺人罪、けん銃発射罪及びけん銃加重所持罪の故意が認められる。 そして、このような故意を有して、前記4のとおり本件犯行に関与したのであるから、共謀も認められる。 6 以上によれば、被告人Aは、乙事件について、殺人罪、けん銃発射罪及びけん銃加重所持罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第5 看護師事件(以下、「第5」内にある、「本件刃物」等の略称は、看護師事件に関するものを指す。) 1 争点看護師事件の争点は、①殺人の実行行為該当性及び実行犯の殺意、②組織性、③被告人Aの故意及び共謀、④被告人Bの故意及び共謀であり、証拠に関しては、特にI及びKの使用する携帯電話についてされた通信傍受(以下「本件通信傍受」という。)に関連する証拠(以下「本件通信傍受関連証拠」という。)の証拠能力が争われている。 2 本件通信傍受関連証拠の証拠能力⑴ 弁護人の主張検察官が請求し、当裁判所が採用した本件通信傍受関連証拠について、弁護人は、要旨次のとおり主張して証拠能力を争う。 本件通信傍受は、平成24年4月に発生した、元警察官がa区の路上で銃撃されたという事件(以下「元警察官事件」という。)を被疑事実として発付された傍受令状に基づき実施されたものである。したがって、犯罪捜査のため は、平成24年4月に発生した、元警察官がa区の路上で銃撃されたという事件(以下「元警察官事件」という。)を被疑事実として発付された傍受令状に基づき実施されたものである。したがって、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成28年法律第54号による改正前のもの。 以下「通信傍受法」という。)25条3項にいう「傍受が行われた事件」とは元警察官事件を指し、元警察官事件に係る犯罪事実の存否の証明のために必要がある場合でなければ傍受の原記録の聴取、閲覧及び複製の作成は許されない。本件通信傍受に係る原記録の聴取等請求(平成25年10月29日付けのもの。以下「本件聴取等請求」という。)は、元警察官事件の指揮系統・指揮態様を解明する必要があるとの理由でされているが、これはまやかしにすぎず、実際には看護師事件の立証のために請求されたものである。したがって、これを許可する裁判は、憲法35条に反し違憲であるとともに、通信傍受法25条3項に違反し違法である。違憲、違法な裁判によって捜査機関が取得した証拠を立証に利用してよいという法理はあり得ない。 以上により、本件通信傍受関連証拠の証拠能力は否定されるべきである。 ⑵ 検討 ア本件通信傍受関連証拠の収集経緯本件通信傍受関連証拠の収集経緯は次のとおりである。 平成25年1月10日(以下、「第5」において、平成25年の記載は省略する。)、元警察官事件を被疑事実として、K及びIが使用する各携帯電話を対象とする傍受令状が発付され、同令状(延長決定を含む。)に基づき、1月16日以降、捜査機関により本件通信傍受が行われた。その傍受の期間中である1月28日、看護師事件が発生し、看護師事件に関するKと共犯者らとの間の通信が傍受され、傍受の原記録に記録された。 福岡県警察の司法警察員は、 により本件通信傍受が行われた。その傍受の期間中である1月28日、看護師事件が発生し、看護師事件に関するKと共犯者らとの間の通信が傍受され、傍受の原記録に記録された。 福岡県警察の司法警察員は、7月29日、福岡地方裁判所に対し、看護師事件の犯罪事実の存否の証明に必要があるとして、通信傍受法25条3項に基づき聴取等請求を行ったが、9月17日、同請求は却下された。同司法警察員は、平成26年1月9日、準抗告を申し立てたが、福岡地方裁判所は、同年3月31日、これを棄却した。 同司法警察員は、10月29日、福岡地方裁判所に対し、本件通信傍受により傍受された通信の中に、元警察官事件につきA2會が犯罪を実行する際の謀議、指示の状況等を証明するために必要な通信が含まれているとして、通信傍受法25条3項に基づき本件聴取等請求を行ったが、12月17日、同請求は却下された。同司法警察員は、平成26年1月9日、元警察官事件と看護師事件にはいずれもA2會による組織的殺人未遂事件という共通点があり、看護師事件の指揮系統を明らかにすることにより、元警察官事件の指揮系統を推認することができることなどを理由として、準抗告を申し立てた。福岡地方裁判所は、同年3月31日、これを容れて原裁判を取り消し、同年5月16日、傍受の原記録聴取許可決定をした。 本件通信傍受関連証拠は、いずれも、上記傍受の原記録聴取許可決定に基づき捜査機関が傍受の原記録を聴取した結果、作成されたものである。 イ憲法及び通信傍受法25条3項違反の主張について 本件聴取等請求が看護師事件の指揮系統等の立証をも意図して行われたことは、看護師事件の指揮系統を明らかにすることにより、元警察官事件の指揮系統を推認するという、同請求の論理構造から明らかである。そして、準抗告裁判所は 師事件の指揮系統等の立証をも意図して行われたことは、看護師事件の指揮系統を明らかにすることにより、元警察官事件の指揮系統を推認するという、同請求の論理構造から明らかである。そして、準抗告裁判所はかかる捜査機関の主張の当否を正面から検討した上で、原裁判を取り消す判断をした。 本件聴取等請求当時、元警察官事件及び看護師事件はいずれもA2會による組織的犯行であるとの疑いが強く、関与が疑われるA2會B2組幹部らが重複していたことから、その指揮系統等には共通点が多いと考えられた上、傍受対象に係る携帯電話を使用していたのは、両事件において中心的な役割を果たしたと強く疑われていたKであった。これらの事情からすると、看護師事件の指揮系統等の解明が元警察官事件の解明に資すると期待することには相応の合理性がある。 よって、福岡県警察の司法警察員が元警察官事件の犯罪事実の存否を証明するために必要があるとして本件聴取等請求をしたこと、及び、裁判所が同様の理由に基づきこれを許可したことは、いずれも何ら憲法及び通信傍受法25条3項に違反するものではない。 ウ結論以上のとおり、憲法及び通信傍受法25条3項違反の主張は採用できず、その余の弁護人の主張を検討しても、本件通信傍受関連証拠の収集手続に違憲性、違法性はなく、いずれも証拠能力が認められる。 3 認定事実⑴ 看護師事件の概要1月28日午後7時4分頃、B2組若頭補佐であるQが、福岡市e区の路上において、帰宅途中の看護師であるUを襲撃し、所携の刃物で左側頭部を突き刺し、右前腕を切り付けるなどして重傷を負わせた。 ⑵ 各関係者の立場等 ア当時、五代目A2會では、総裁であるNを頂点として、会長であるO、理事長兼B2組組長であるPの順で序列が続き 腕を切り付けるなどして重傷を負わせた。 ⑵ 各関係者の立場等 ア当時、五代目A2會では、総裁であるNを頂点として、会長であるO、理事長兼B2組組長であるPの順で序列が続き、理事長以下複数のA2會幹部組員による執行部が設けられていた。Nの命令がOを経由せずPに直接下されることはなく、またNやOの命令が、Pを経由せずPより下の者に直接下されることもなかった。 イ Uは、被害当時、北九州市内の美容形成皮膚科クリニック(以下「本件クリニック」という。)に勤務していた看護師であり、従前、A2會及びB2組と何ら関係を有していなかった。 ウ Nは、平成24年8月頃からUが勤務する本件クリニックを継続的に受診しており、A2會において唯一Uと面識があった。ただし、その関係は本件クリニックに通う患者と担当看護師であり、それ以外の関係は一切なかった。 両被告人を含むA2會関係者は、Nを除きいずれもUと全く面識がなかった。 ⑶ 看護師事件に至る経緯ア Nは、平成24年8月4日、本件クリニックを受診し、亀頭増大手術やレーザー脱毛の施術を受けた。Uは、担当看護師としてNの施術等に関与した。 Nは、翌日以降、患部の異常を訴えて本件クリニックへの問い合わせを繰り返し、これらについては、主に担当看護師であるUが対応した。Nは、同年10月18日、本件クリニックを訪れ、他の看護師に対し、施術及びUに対する不満を強く訴えた。Nは、同月20日、医師の診察を希望して本件クリニックを受診し、医師に対し、患部の状態について失敗ではないのかと述べた。 イ Kは、同年11月頃、Uの容貌を確認するため、Sを伴って本件クリニックへ行き、SにUの施術を受けさせ、その容貌を覚えさせた。その後、 Kは、S及びTに指示して、U いのかと述べた。 イ Kは、同年11月頃、Uの容貌を確認するため、Sを伴って本件クリニックへ行き、SにUの施術を受けさせ、その容貌を覚えさせた。その後、 Kは、S及びTに指示して、Uを尾行させ、その自宅の場所や帰宅経路を調べて自身に報告させた。Kは、同月中又は同年12月中にUの帰宅経路を自ら確認し、犯行現場付近を徘徊するなどして犯行の際の集合場所や待機場所を確定した。 Kは、その頃、Qに対し、ある女性の顔を切って尻を刺すよう指示し、1月中旬頃、Qに対し、犯行に使用する刃物(以下「本件刃物」という。)を渡した。Kは、その後、Q及びRを伴って、犯行現場や集合場所、待機場所等の下見をし、Rに対しては、Qをバイクで送迎することを指示した。 Kは、同月初旬頃、Gに対し、足のつかないバイクを用意するよう指示し、Gは、q区内でバイク1台を窃取してKに報告した。Kは、Gに上記待機場所付近の駐輪場を案内し、窃取したバイクを置くよう指示した。 Iは、同月中旬頃、Jに対し、事件を起こす旨を告げた上で、関係場所を案内し、そこである人物と合流すること、同人が乗ってきた自動車を運転して別の場所に送ること、犯行に使用された物を処分することを指示した。 ウ 1月24日夕方頃、J、Q及びRは犯行現場付近で待機し、SはJRr駅付近で、TはJRe駅付近で、それぞれUの行動を確認してKに報告し、Kはその旨をJらに連絡したが、犯行に用いる予定のバイクが見つからなかったため、襲撃は中止となった。 同月25日の朝、JとKが話し合った結果、KがJの代わりに現場指揮役を担うこととなり、Jは、Kに対し犯行現場付近に行くための自動車を貸し、犯行後、作業着等を処分することになった。 Kは、その頃、Sに対し、前もって管理させていたバイク1 代わりに現場指揮役を担うこととなり、Jは、Kに対し犯行現場付近に行くための自動車を貸し、犯行後、作業着等を処分することになった。 Kは、その頃、Sに対し、前もって管理させていたバイク1台をRに渡すよう指示し、SはRにこれを渡した。 同日、再度Uに対する襲撃が決行されることとなり、K、Q及びRが、同日夕方、犯行現場周辺に集合し、U襲撃のために待機したが、Uが早退 していたため、襲撃は再度中止となった。 Kは、同月26日、Gに対しバイクをもう1台用意するよう指示した。 Gは、同月27日から翌28日にかけての夜間、h区内でバイク1台を窃取し、Kの指示に従い、これをRに渡した。 Kは、同月26日、Eに対して、同月28日の本家(Nの自宅)当番にQに代わって入るよう依頼した。Eはこれを承諾し、同月28日にQの代わりに上記当番を担当した。 ⑷ 犯行状況等1月28日、再度Uに対する襲撃が決行されることとなり、K、Q及びRは、同日午後6時頃、犯行現場周辺に集合し、先立ってUの行動確認を行っていたSから連絡が来るまで待機した。 Uは、同日午後6時過ぎ頃本件クリニックを退勤し、JRr駅から新幹線でJRe駅に行き、バスに乗り換え、自宅近くのバス停で降車して、自宅に向かって歩き出した。 一方、Sは、同日午後6時11分頃、JRr駅構内で帰宅途中のUを追跡し、Kにその状況を伝え、その後、Q及びRは、Kから出発の指示を受け、Rが運転するバイクに乗って犯行現場付近まで移動し、Qはその場で待機してUを待った。 Qは、同日午後7時4分頃、歩いているUの背後から走って近づき、Uの左前方まで行って振り返り、左手でUの前頭部の髪の毛をつかみ、右手に持った本件刃物で、Uの左耳上部付近を突き刺し、動かした。Qは、更 Qは、同日午後7時4分頃、歩いているUの背後から走って近づき、Uの左前方まで行って振り返り、左手でUの前頭部の髪の毛をつかみ、右手に持った本件刃物で、Uの左耳上部付近を突き刺し、動かした。Qは、更に、Uの右前腕を切り付け、左殿部を突き刺した後、逃走した。 本件犯行により、Uは、約3週間の入院及び通院加療を要する見込みの左眉毛上部挫創、顔面神経損傷、右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負い、左側頭部の浅側頭動脈及び顔面神経が切断され、右前腕部の傷は筋層にまで達していた。 Uは、搬送された病院において、多量に出血したことによる出血性ショックに陥っていた。 ⑸ 犯行後の状況等ア Q及びRは、逃走後、あらかじめ決められていた集合場所に戻ってKと合流し、同所付近でKと共に犯行に使用されたバイクを海中に投棄し、QがKに対し犯行を終えたことを報告し、北九州市へ戻った。 Kは、Jに自動車を返すとともに、Q及びRが使用した作業着等が入ったバッグを引き渡した。 Jは、l区内で、Kから受け取った作業着等が入ったバッグを焼却した。 イ Kは、1月29日の昼頃、i事務所へ行き、Pに対して本件犯行の報告をするとともに、Pから本件犯行の報酬の分配をするよう指示を受けた。 その後、Kは、Tをi事務所に、Q、J、S及びGをb区e1にあるB2組本部事務所にそれぞれ呼び出して本件犯行の報酬を分配した後、Pに対して報酬の分配を終えた旨報告した。 ⑹ 認定事実の補足説明ア前記認定事実は、U及びD1の各供述、K、J、Q、R、S、G、F1及びE2(E1と同一人物)の各供述並びに本件通信傍受に係る通信内容等により認定した。 イ本件犯行翌日である1月29日の昼頃に本件犯行の報酬の分配が行われたと認定した Q、R、S、G、F1及びE2(E1と同一人物)の各供述並びに本件通信傍受に係る通信内容等により認定した。 イ本件犯行翌日である1月29日の昼頃に本件犯行の報酬の分配が行われたと認定した理由は次のとおりである。 証拠により次の事実が認められる。 午後1時43分頃、被告人BはKに電話をかけ、「iでお願いします。」と伝えた。 午後1時59分頃、PはKの携帯電話を用いて被告人Aに対して「G’とF’ですか。」などと述べた。 午後2時4分頃から午後2時7分頃にかけて、Kは、Tをi事務所に、 Q、J及びSをB2組本部事務所に、それぞれ呼び出した。 午後2時14分頃及び午後2時24分頃、Kは、Gに電話をかけ通話した。 午後2時29分頃、Kは、被告人Bに電話をかけ、「用事言われとったの終わったんよ。」「分配。」「時間差でバラバラであれしてから。」などと述べ、被告人Bから「おいしかったですか、分配。」と問われると、「俺はそんなにない。」「兄弟やるね、ちょっとやるね。小遣い。」と答え、さらに被告人Bから「電話してから、終わりましたち言ったらいいんやないですか。」と問われたのに対して、「いいんかね。」「うん。分かった。 ちょ、電話してみろう。」と答えた。 午後2時31分頃、KがPに電話をかけ、「終わりました。」と述べると、Pは、「はい。はい。分かった。」「そんなん電話で言うたらつまらんけな。」とKに告げた。 Gの供述によれば、前記KのGへの電話は、B2組本部事務所へ呼び出す内容であり、KはGに対し、B2組本部事務所の金庫を用いて本件犯行に関する報酬を交付したことが認められる。 Kが呼び出したT、Q、J及びSがいずれも本件犯行の関与者 本部事務所へ呼び出す内容であり、KはGに対し、B2組本部事務所の金庫を用いて本件犯行に関する報酬を交付したことが認められる。 Kが呼び出したT、Q、J及びSがいずれも本件犯行の関与者であることや、呼び出した時間帯が本件犯行に関する報酬の分配のためにGを呼び出した直前であること、その後のKと被告人Bの会話内容からすると、Kは、Gのほか、T、Q、J及びSをそれぞれ呼び出して本件犯行の報酬を分配したと認められる。 そして、Kは、報酬の分配が行われる直前に、被告人Bを介してPからi事務所に呼び出されており、報酬の分配を終えた直後、被告人Bの勧めでPに対して終了を報告し、これに対してPが電話での報告をとがめる発言をしていることからすると、Kによる上記報酬の分配は、Pの指示によるものであったと認められる。 4 殺人の実行行為該当性及び実行犯の殺意(争点①)⑴ 前記のとおり、Uの左側頭部の傷害につき浅側頭動脈及び顔面神経が切断されており、右前腕部の傷害は筋層まで達していた。本件刃物が、少なくとも、これらの負傷を負わせるに足りる形状を備えていたことは明らかである。 さらに、Uの治療に当たった医師の供述によると、Uが負った傷害は一つの線状の傷痕であったと認められ、こうした傷害の形状も併せ考えると、上記各傷害はいずれも比較的鋭利な刃物で形成されたと認められる。 以上によれば、本件刃物は、少なくとも、人体の皮下組織にある動脈、神経、筋組織等をわずかな時間で切断するに足りる鋭利さを備えており、人に対する殺傷能力を十分に有していたと認められる。 ⑵ このような刃物を用いて、左側頭部を突き刺す行為は、その皮膚の直下を走行している動脈を切断して短時間のうちに大量出血を引き起こすおそれがあり、現にUは搬送された病院 に有していたと認められる。 ⑵ このような刃物を用いて、左側頭部を突き刺す行為は、その皮膚の直下を走行している動脈を切断して短時間のうちに大量出血を引き起こすおそれがあり、現にUは搬送された病院において出血性ショックに陥っている。Qの行為は、人の生命に危険を生じさせる現実的危険性を有し、殺人の実行行為に該当すると認められる。 このような人の生命に危険を生じさせる行為を、それと認識しつつ実行したQについて、少なくとも殺人の未必的故意が認められる。 ⑶ 以上によれば、Qの行為は殺人の実行行為であり、かつQに殺意も認められる。 5 組織性(争点②)前記認定事実によれば、看護師事件は、B2組筆頭若頭補佐であるKが実行指揮役となって、実行犯であるQを始めとする配下の組員に対し、事前の行動確認や逃走援助、証拠隠滅等、それぞれ役割を分担させて敢行された組織的犯行であると認められる。 そして、A2會総裁であるNを除いては、A2會及びB2組とUとの間に接点が全く存在せず、K、QらA2會及びB2組組員においてUを襲撃する理由 が組織的にも個人的にも皆無であることからすると、看護師事件は、Uの対応に強い不満を抱いたNの意思決定及び命令に基づいて敢行されたと考える以外、その発生をおよそ合理的に説明することができない。 A2會内において、Nの命令がOを経由せずPに直接下されることはなく、NやOの命令がPを経由せずPより下の者に直接下されることもないことからすると、看護師事件に係るNの命令は、O、Pの順に経由して、Kを始めとする本件犯行の関与者に下されたと認められる。 以上によれば、看護師事件は、A2會総裁であるNの意思決定に基づき、Uを組織的に襲撃することによって、N、ひいてはA2會の威信を維持するとともに、その結束を固めるという 者に下されたと認められる。 以上によれば、看護師事件は、A2會総裁であるNの意思決定に基づき、Uを組織的に襲撃することによって、N、ひいてはA2會の威信を維持するとともに、その結束を固めるという効果又は利益をA2會に帰属させるものであり、団体の活動として行われたと認められる。 本件犯行は、A2會及びB2組の序列に従い、順次下位者に対して指示、伝達が行われた上、多数の組員がそれぞれ細分化された役割を果たすことにより、準備、遂行されたものであり、A2會組織により行われたものと認められる。 6 被告人Aの故意及び共謀(争点③)⑴ 被告人Aの本件犯行への関与ア本件犯行に使用されたバイクは、KがGに指示して調達させ、実行犯の送迎役であるRに渡させたものであるところ、Kが、自分より地位が上の被告人Aに無断で、一般市民への襲撃事件という重大犯罪にA組組員であるGを関与させるとは考えにくい。Kは、少なくとも、何らかの犯罪に使用するバイクをGに調達させることの了承を被告人Aから得ていたと推認できる。 イ本件犯行後の1月28日午後10時15分頃、Kは、Qに電話をかけ、「自分が明日。」「多分親分から朝呼ばれて。」「言われると思うんですよ。」「で、そこで。」「言うやないですか。」「だいたいAオジキに言うて、Aオジキから親分に報告してもらうのが筋なんやけど。」「多分逆になると思う んですよ。」「何もなかったら、自分はもう朝9時頃本家行って。」「オジキに、言うて。」などと述べた。 本件犯行から約3時間後の会話であり、会話相手が本件犯行の実行犯であるQであることを踏まえると、上記報告事項とは、本件犯行の経過や結果であると認められる。 したがって、Kは、本件犯行の経過や結果を、本来は、自身が直接Pに報告するのではなく、まずは被 の実行犯であるQであることを踏まえると、上記報告事項とは、本件犯行の経過や結果であると認められる。 したがって、Kは、本件犯行の経過や結果を、本来は、自身が直接Pに報告するのではなく、まずは被告人Aに報告し、被告人AからPへ報告すべきものであると認識していたと認められる。被告人Aが本件犯行に関与していないのであれば、Kが上記のように認識することはあり得ず、被告人Aは、Kの上位者として本件犯行の内容を認識し、かつこれに一定の関与をしていたと推認できる。 そして、配下の者に犯行を命ずるPと実行指揮役であるKの中間という本件犯行に係る被告人Aの地位、A2會内における組織上の地位、及びPに対し的確な報告をするためには一定の前提知識が不可欠であることによれば、少なくとも、A2會組員が組織的に特定の人物を襲撃するという本件犯行の中核部分は認識していたと認められる。 ウ本件犯行翌日である1月29日午後1時59分頃、Pが、Kの携帯電話を使用して、被告人Aに対して「G’とF’ですか。」「二人がしたですか。」と問い、これに対して被告人Aは「G’だけ。G’だけです。」と返答した(通信番号75)。 前記認定事実のとおり、この頃PがKから本件犯行の報告を受け、Gを含む本件犯行の関与者への報酬の分配をKに指示したことによれば、上記の通話は、Pが報酬の分配のために被告人Aに対して本件犯行に関与したA組組員がGとFの2人であるかどうかを確認したものと認められる。 そして、被告人Aは、Pからの簡潔な質問につきその趣旨を確認することなく、本件犯行に関する質問であると理解した上で、即座に「G’だけ。 G’だけです。」として、本件犯行に関与したのがGだけであると返答したと認められる。これは、被告人Aが本件犯行を事前に認識し、か 件犯行に関する質問であると理解した上で、即座に「G’だけ。 G’だけです。」として、本件犯行に関与したのがGだけであると返答したと認められる。これは、被告人Aが本件犯行を事前に認識し、かつ前記アのとおりGにバイクを調達させることを了承していたことを裏付けるものである。 ⑵ 被告人Aの故意及び共謀以上によれば、被告人Aは、少なくとも、Pの命令によりA2會組員が組織的に特定の人物を襲撃するという本件犯行の中核部分を認識し、Pの下位者、Kの上位者として本件犯行に関与し、具体的な関与の一環としてKがGに指示してバイクを調達させることを了承したと認められる。被告人Aの了承により、KはA2會組織内においてGへの指示が可能となったことや、本件犯行に係る被告人Aの地位によれば、被告人Aの関与の程度は軽いものとはいえず、正犯性を肯定することができる。 そして、被告人Aが看護師事件に先立つ乙事件において自らGに指示して犯行に用いるバイクを調達させた経験を有していたことからすると、被告人Aは、少なくとも、Pの指示に基づきA2會組員が組織的に特定の人物を襲撃する本件犯行が、人の生命を奪いかねないものであることをも一つの可能性として想定していたと認められる。 したがって、被告人Aについて、組織的殺人未遂罪の故意及び共謀が認められる。 7 被告人Bの故意及び共謀(争点④)⑴ 被告人Bの本件への関与ア被告人Bは、当時、B2組の組長秘書を務めていた。被告人Bの供述によると、組長秘書は1日の大半をB2組組長であるPと共に過ごしており、伝言を伝えるなどの役割を担い、B2組の組員がPに連絡するときは、被告人B又は組長付に連絡をすることが多かったが、KがPに連絡を取りたい場合には、Kは組長付ではなく被告人Bに連絡をすることが おり、伝言を伝えるなどの役割を担い、B2組の組員がPに連絡するときは、被告人B又は組長付に連絡をすることが多かったが、KがPに連絡を取りたい場合には、Kは組長付ではなく被告人Bに連絡をすることが通常であっ たことが認められる。 前記認定事実のとおり、1月24日の襲撃は犯行に用いるバイクを発見できなかったため中止となったところ、Kは、同日午後6時57分頃に、被告人Bに対し電話をかけ、前置きなく「ちょっと微妙、微妙な感じやけ。」と述べ、これに対して被告人Bは即座に「腹九分くらいですか。」と返し、「一応報告しときますね。」とKに言った。同日午後7時19分頃、PはKを呼び出した。同日午後7時37分頃、Kは、A2會組員に電話をかけ、翌日のQの会長警備当番の交代を依頼し、同日午後7時44分頃、Tに電話をかけ、翌日再度決行することになった旨述べた。 襲撃が失敗した直後に、「微妙」であったとして被告人Bを介してPに報告しなければならない事柄は、当該襲撃の結果以外には考えられない。被告人Bは、Kから、何の前置きもなく、当該襲撃につき「微妙な感じ」とのみ言われたのに対して、即座にその真意を理解し、より具体的に事態を把握しようとして、「腹九分ぐらいですか。」と隠語で質問し、Kの言葉をPに報告する旨述べたものと認められる。これによれば、被告人Bは、KがPの指示で何らかの任務に従事していることを認識していたと認められる。 その上で、被告人Bは、Kからその結果を「微妙」とPに報告するよう依頼され、その旨Pに報告し、これを受けたPがKを呼び出し、そこで翌1月25日に再度襲撃を実施する方針を決め、Kがその方針に従い、実施に向けた調整を行ったことが認められる。 イ Kは、2回目の襲撃が中止となった1月25日の午後7時59分頃及び午後8時 、そこで翌1月25日に再度襲撃を実施する方針を決め、Kがその方針に従い、実施に向けた調整を行ったことが認められる。 イ Kは、2回目の襲撃が中止となった1月25日の午後7時59分頃及び午後8時3分頃、被告人Bに電話をかけ、「前に」いるかどうかを尋ね、被告人Bがこれを肯定しiにいる旨返答すると、Kはそちらに向かう旨述べた。そして、同日午後8時27分頃、KはSに電話をかけ、F及びGを他の仕事から外すことなどを指示し、1月26日午前10時33分頃、A2 會組員に電話をかけ、用事が入ったため1月28日の当番を代わってもらえないかと相談した。 Kが被告人Bに対し所在を確認する人物は、Pと認められる。Kは、1月25日の襲撃が中止になった後、Pに報告すべく、被告人Bに連絡してPの所在を確認し、P及び被告人Bのいるi事務所へ行き、同所でPに対し報告し、Pが1月28日に襲撃を実施する方針を決め、Kがその方針に従い、実施に向けた調整や準備を行ったことが認められる。 ウ Kは、本件犯行後の1月28日午後8時25分頃、被告人Bに電話をかけ、「お腹一杯っち言っとって。」と述べ、同日午後8時28分頃の被告人Bからの電話に対し、「言うた。俺のこと。」などと聞き、更に「なんちゅうた。ほんなら。」と尋ねたのに対し、Bは「みんなが、おるけ。」と詳細な会話を断った(通信番号66、67)。 KがPに対して字義どおり「お腹一杯」であることを報告するつもりであったとはおよそ考え難く、前記アのとおり、被告人Bが任務の結果を腹具合で確認していたことからすれば、Kの発言は、被告人Bに対し、本件犯行が完了した旨Pに報告してほしいと依頼する趣旨のものと認められる。 被告人Bは、かかるKの意図を即座に理解してPに報告し、その内容が第三者の前で話すべきこと れば、Kの発言は、被告人Bに対し、本件犯行が完了した旨Pに報告してほしいと依頼する趣旨のものと認められる。 被告人Bは、かかるKの意図を即座に理解してPに報告し、その内容が第三者の前で話すべきことでないことも認識していたと認められる。 エ本件犯行翌日である1月29日午後1時43分頃、被告人BがKに対して「iでお願いします。」と伝えた後、前記認定事実のとおりKはPの指示を受けて看護師事件の関与者へ報酬の分配を行った。その直後、被告人Bは、Kから「分配」が終わった旨を告げられるや、「も終わったですか。」「おいしかったですか、分配。」とKに聞いたり、「分配」が終わったことをPに電話で報告するよう勧めたりした。 上記のKと被告人Bとの間の会話によれば、被告人Bは、KがPの指示で報酬の分配を行うことを知っていたか、少なくともKが任務を遂行した ことに伴う必然的な行為として推察していたと認められる。 ⑵ 被告人Bの故意及び共謀以上によれば、被告人Bは、PやKからどこまで具体的な説明を受けていたかは明らかではないものの、少なくとも、1月24日の時点で、KがPの指示を受けてA2會及びB2組組員として組の任務に従事していることを確実に認識しており、それまでの経験によれば、その任務が組織的に特定の人物を襲撃するものであることも未必的に認識していたと認められる。 そして、被告人Bは、このような認識を有した上で、B2組組長秘書として、B2組組長であり配下の者に犯行を指示するPと、実行指揮役であるKとをつなぐ連絡役を担い、組織的犯行である本件犯行の円滑な実行に現実に寄与したものと認められる。とりわけPは、事件との関連性を推測させる話を電話で行わないよう意を払っているが、これはPが自身の関与の形跡をできるだけ残さないようにするため 本件犯行の円滑な実行に現実に寄与したものと認められる。とりわけPは、事件との関連性を推測させる話を電話で行わないよう意を払っているが、これはPが自身の関与の形跡をできるだけ残さないようにするためであったと推認できる。このように、Pが関与の形跡をできるだけ残すことなくKと連絡を取り、同人から報告を受け、A2會及びB2組が団体の活動として組織により本件犯行を円滑に実行するためには、連絡役としての被告人Bの存在が不可欠かつ重要であった。 この点につき、弁護人は、被告人Bの行為は組長秘書としての日常的な行為の一環にすぎない旨主張している。被告人Bが、当時、組長秘書として、本件犯行と関連性がない事項を含め、一般的にPとその他の者を取り次ぐ行為を担当しており、本件犯行に関する行為が組長秘書としての行為の一環の側面を有していたことは認められるが、その行為が、本件犯行との関係では、PとKとをつなぐ連絡行為の意味を有し、本件犯行の円滑な実行に現実に寄与している以上、共犯関係を肯定すべき実質を十分に備えていると認められる。 本件犯行はUの生命をも奪いかねない危険な態様で実行されたところ、これはQがKの指示どおりに行ったものであって襲撃計画上意外な事態ではな く、被告人Bも、本件犯行により対象者を殺害する事態が生じ得ることを少なくとも未必的には認識していたと認められる。 したがって、被告人Bは、本件犯行により対象者を殺害し得ることを認識した上で、PとKとをつなぐ連絡役として不可欠かつ重要な役割を果たし、A2會組織の一員として、他の共犯者と一体となって本件犯行を実行したものといえ、組織的殺人未遂罪の故意及び共謀が認められる。 8 看護師事件の結論以上によれば、被告人A及び被告人Bは、看護師事件について、組織的殺人未遂罪の共 となって本件犯行を実行したものといえ、組織的殺人未遂罪の故意及び共謀が認められる。 8 看護師事件の結論以上によれば、被告人A及び被告人Bは、看護師事件について、組織的殺人未遂罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第6 器物損壊事件弁護人は、本件犯行による損害額は、被告人Bが国からの告知に基づいて弁償した金額である1万0640円を上回らない旨主張する。 実際の修繕費用が被告人Bが弁償した金額内に収まったのは、保安上や費用軽減の観点から、材料をポリカーボネート樹脂板に変更するとともに、施工工事を小倉拘置支所営繕係受刑者に実施させたからであり、同金額をもって損害額を特定するのは相当でない。証拠によれば、窓ガラス及びガラスフィルムを使用した通常の原状回復の見積額は3万0200円と認められ、これをもって損害額を特定するのが相当と認められる。 (累犯前科)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)第1 各犯行の犯情 1 自治会長事件について自治会長事件は、暴力団組織に属していた被告人両名及び共犯者らが共謀の 上、a区自治総連合会の会長であったB3の自宅内に向けて、殺意をもって、けん銃を発砲したという殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。 その犯行態様は、B3及びその妻であるA3が在宅中のB3方内に向けて、真正けん銃で弾丸合計6発を撃ち込んだというものであり、弾丸がB3及びA3がいた寝室にまで到達していることによれば、同人らの生命を奪う危険性が高かったものと認められる。 発射された弾丸はいずれもB3らに命中しなかったものの、最も安心できるはずの自宅内にけん銃で弾丸を撃ち込まれたことによるB3らの精神的衝撃は多大であったと推察される。 当時、B3が地域の自治総連合会会 された弾丸はいずれもB3らに命中しなかったものの、最も安心できるはずの自宅内にけん銃で弾丸を撃ち込まれたことによるB3らの精神的衝撃は多大であったと推察される。 当時、B3が地域の自治総連合会会長として暴力団追放運動に取り組んでいたことからすれば、自治会長事件は、暴力団追放運動を行う者を一般市民であっても容赦なく襲撃して暴力団追放運動を封殺し、A2會の威力を社会に誇示することを目的に敢行されたものと認められる。A2會特有の暴力的な発想に基づく反社会性の高い犯行である。 被告人Aは、配下組員に対して犯行への関与を指示して、犯行の円滑な遂行に多大な寄与をしたものであって、その刑事責任は、首謀者、被告人Aに役割を指示した上位者、実行犯に次いで重い。 被告人Bは、犯行に使用する予定のバイクが動かなくなった際に共犯者を呼び戻したほか、犯行の前後にわたって他の共犯者らと連絡を取り合っており、周辺的な役割ではあるが犯行の円滑な遂行に相当程度寄与したものである。 2 丙事件について丙事件は、暴力団組織に属していた被告人両名及び共犯者らが、丙株式会社の従業員であった被害者に対し、殺意をもって、けん銃で弾丸を発射して被害者に傷害を負わせたという殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。 多数の従業員が出入りする作業所において、被害者から数メートルの距離で 同人に向けて複数回弾丸を発射し、うち1発の弾丸が実際に被害者の下腹部に当たり、下腹部挫創の傷害を負わせていることによれば、被害者の生命を奪う危険性が非常に高かったと認められる。 被害者は全治約23日間を要する下腹部挫創を負っており、職場において予期せぬ銃撃に遭い傷害を負ったことによる精神的苦痛も多大なものであり、犯行結果は重い。 当時、丙株式会社が暴力団を含む反社会的勢 被害者は全治約23日間を要する下腹部挫創を負っており、職場において予期せぬ銃撃に遭い傷害を負ったことによる精神的苦痛も多大なものであり、犯行結果は重い。 当時、丙株式会社が暴力団を含む反社会的勢力との関係を持たない方針を採っていたことからすれば、丙事件は、A2會の意に沿わない企業に対する報復、威嚇、見せしめを目的に敢行されたものと推認され、反社会性の著しい犯行である。 被告人Aは、実行指揮役として中心的な役割を果たしており、その刑事責任は首謀者、被告人Aに役割を指示した上位者に次いで重い。 被告人Bは、実行犯及び実行犯の運搬役が着用するヘルメットや着替えが入ったバッグの準備に携わり、周辺的な役割ではあるが犯行の遂行に物理的に寄与した。 3 乙事件について乙事件は、暴力団組織に属していた被告人A及び共犯者らが共謀の上、建設会社の取締役であった被害者に対し、殺意をもって、けん銃で弾丸を発射して被害者を殺害したという殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。 その犯行態様は、被害者を目掛けて真正けん銃で弾丸2発を発射し、うち1発を頚部に命中させるという凶悪なものであり、これにより被害者の死亡という取り返しのつかない極めて重大な結果を招いた。突如生命を奪われた被害者の無念は言葉に尽くし難く、理由も分からないまま眼前で夫が射殺された妻が犯人への厳罰を望むのも当然である。 被告人A及び共犯者らが被害者を殺害した理由の詳細は不明であるが、本件が暴力団組織に属する者らによる組織的・計画的犯行であり、建設会社の取締 役である被害者が暴力団との縁を切ろうとしていたとみられることからすると、いずれにしても暴力団特有の論理に基づく反社会的な犯行であることは疑いない。反社会的な価値観と論理に基づき、意に沿わない者を 役である被害者が暴力団との縁を切ろうとしていたとみられることからすると、いずれにしても暴力団特有の論理に基づく反社会的な犯行であることは疑いない。反社会的な価値観と論理に基づき、意に沿わない者を組織を挙げて抹殺するという、社会においておよそ許容される余地のない犯行であり、その犯情の悪質さは、殺人事件の中でも際立っている。 被告人Aは、犯行当日の被害者の行動確認を行ったのみならず、直属の配下組員に対して、実行犯2人組に犯行に使用するバイクを供与すること、犯行直後に実行犯2人組を自動車に乗せて逃走させることなどを指示したものであり、犯行の遂行に多大な寄与をした。その刑事責任は、首謀者、被告人Aに役割を指示した上位者に次いで重く、実行犯に劣るものではない。 4 看護師事件について看護師事件は、暴力団組織に属していた被告人両名及び共犯者らが、組織として、共謀の上、殺意をもって、看護師に対して、刃物で襲撃して重傷を負わせたという組織的殺人未遂の事案である。 夜間、帰宅途上の被害者の背後から突然襲い掛かり、鋭利な刃物で頭部を切り付けるなどした犯行態様は、生命を奪う危険性の高い非常に凶悪なものである。被害者は犯行により出血性ショックに陥り、切り付けられた右手は現在でもしびれが続く状態であるなど、著しい肉体的・精神的苦痛を被った。 看護師事件は、A2會総裁であるNが、自らの担当看護師であった被害者の言動に不満を抱いて報復を決意し、そのようなNの意思及び命令を受けて、被告人両名を含む配下組員が組織的に被害者を襲撃したものである。取るに足らない理由で一般市民を襲い、その生命すら脅かした、極めて理不尽な犯行である。 被告人Aは、配下組員に犯行を命じたPの下位者、実行指揮役であるKの上位者として犯行に関与し、具体的 。取るに足らない理由で一般市民を襲い、その生命すら脅かした、極めて理不尽な犯行である。 被告人Aは、配下組員に犯行を命じたPの下位者、実行指揮役であるKの上位者として犯行に関与し、具体的には犯行に用いるバイクの準備に関与し犯行実現に寄与したものであって、その地位に応じた刑事責任が認められる。 被告人Bは、B2組組長秘書として、PとKとをつなぐ連絡役を担っており、暴力団がこの種の組織的犯罪を遂行するに当たって欠くことのできない役割を果たした。 第2 被告人Aの量刑判断被告人Aは、A2會組員が組織的に実行した自治会長事件、丙事件、乙事件及び看護師事件に関与した。とりわけ、暴力団組織が組織的・計画的に一般市民である被害者をけん銃で射殺した乙事件に、A2會直若兼A組組長の立場で配下組員への指示役として関与したことによる刑事責任は極めて重く、乙事件への関与のみでも無期懲役刑を選択するに値する。これに加え、被告人Aは、けん銃を用いた殺人未遂事件である自治会長事件及び丙事件においても配下組員への指示役又は実行指揮役として各犯行に関与しており、被害者に重傷を負わせた看護師事件でも実行指揮役の上位者として関与し犯行実現に寄与している。被告人Aが各犯行に関与したのは上位者からの指示によるものと認められ、被告人A自身に犯行動機があったわけではないことを考慮しても、刑事責任の重大さは揺らがない。 看護師事件の被害者に共犯者から賠償金の一部が支払われていることなどの被告人Aに有利な事情を最大限考慮しても、被告人Aの行為責任の重大さからすると、有期懲役刑を選択することはできず、被告人Aを無期懲役刑に処するのが相当と判断した。 第3 被告人Bの量刑判断被告人Bは、A2會組員が組織的に実行した自治会長事件、丙事件、看護師事件 らすると、有期懲役刑を選択することはできず、被告人Aを無期懲役刑に処するのが相当と判断した。 第3 被告人Bの量刑判断被告人Bは、A2會組員が組織的に実行した自治会長事件、丙事件、看護師事件に関与したものであり、指示役や実行役などと比較すると関与の度合いは相当程度落ちるものの、犯行準備段階での問題発生時の対処や共犯者間の連絡役(自治会長事件)、実行犯及び運搬役が着用する着替え等の準備(丙事件)、指示役と実行指揮役とをつなぐ連絡役(看護師事件)など、重大犯罪である各犯行の円滑な遂行に当たり一定の役割を果たした。 被告人Bが上記3事件に関与したのは、A2會における地位を前提としたものであって、被告人B自身の主体的な判断によるものではないが、自らの判断でA2會に所属し続けて上記役割を果たした以上、その役割に見合う刑事責任を免れない。加えて、被告人Bは、犯行関与の根本的原因であるA2會との関係について、今は裁判のことで頭がいっぱいで考えられないなどと述べてその関係を維持したままであり、暴力団組員としての地位や考え方を保持している。 以上によれば、器物損壊事件について事実を認めて弁償がされていることや看護師事件の被害者に共犯者から賠償金の一部が支払われていることなどの有利に斟酌できる事情を考慮しても、被告人Bの責任は重大であり、主文の刑に処するのが相当である。 (求刑被告人Aにつき無期懲役、被告人Bにつき懲役16年)令和5年5月11日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官神原浩 裁判官細川英仁 裁判官絹川宥樹は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官神原浩 浩 裁判官細川英仁 裁判官絹川宥樹は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官神原浩
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