【DRY-RUN】主 文 原決定を取り消す。 債権者株式会社日刊スポーツ新聞社、債務者抗告人間の東京地方裁判所 昭和二十九年(ヨ)第一〇五六号不動産仮差押申請事件について同裁判所が昭和二 十九
主文 原決定を取り消す。 債権者株式会社日刊スポーツ新聞社、債務者抗告人間の東京地方裁判所昭和二十九年(ヨ)第一〇五六号不動産仮差押申請事件について同裁判所が昭和二十九年二月十三日にした仮差押決定にもとずき、横浜地方法務局同年三月一日受付第五八九六号をもつて、別紙目録記載の不動産に対してなされた仮差押の執行は、これを取り消す。 申立費用は原審及び抗告審とも相手方の負担とする。 理由 本件抗告理由は別紙抗告理由のとおりである。 債権者相手方、債務者抗告人間の東京地方裁判所昭和二十九年(ヨ)第一〇五六号不動産仮差押申請事件について、同裁判所が昭和二十九年二月十三日別紙目録記載の不動産に対する仮差押決定をし、債権者である相手方が前同日右決定正本の送達を受けたこと、しかるに右仮差押決定の執行としての登記簿記入は横浜地方法務局同年三月一日受附第五八九六号をもつてされたことは右不動産仮差押申請事件及び本件の各記録によつて明らかである。 抗告人は右仮差押の執行は法定の執行期間経過後のものであるから許されないと主張するところ、右執行は仮差押決定正本が債権者に送達せられた日から十四日の後である同年二月二十七日までになされなければたらないものであり、その期間の末日が一般の休日にあたらないことは明らかであるから、右登記は法定の期間経過後のものであることはまちがいない。 民事訴訟法に「仮差押命令ノ執行ハ命令ヲ言渡シ又ハ申立人ニ命令ヲ送達シタルヨリ十四日ノ期間ヲ徒過スルトキハ之ヲ為スコトヲ許サス」と定められる理由は、もともと仮差押というものは、さしせまつた必要があるときになされるものであることと、命令のあつたのち月日がたてば命令を出すについて基礎となつたところの事情も変動することがあるということ れる理由は、もともと仮差押というものは、さしせまつた必要があるときになされるものであることと、命令のあつたのち月日がたてば命令を出すについて基礎となつたところの事情も変動することがあるということとをにらみ合せて、債権者が仮差押命令を得たのに、さつそくその執行をしないのは、さしせまつた必要がなくなつたか、少くとも債権者がその必要を感じなくなつて執行を放棄もしくは猶予したと推測し得るものであつて、すでに仮差押制度による保護の必要がないものというべく、また債務者が仮差押命令のあつた当時と事情の変更した後になつてその執行を受けることは実質的に不当な結果<要旨(イ)>をもたらすこととなるというにあると解すべきである。しかし一般に執行は常にその着手から完了にいたるま</要旨(イ)>でなにほどかの時間を要するものであるから、前記十四日の法定期間は、必ずしもこの間に執行を完了するを要するというのではなく、この期間内に執行の着手と認められるべき行為がありさえすれば、これに続いて行われるべき執行行為の実施が、その当然の順序経過によつてなされるかぎり、この期間経過後になつても命令は執行力を失わないと解すべきである。 不動産仮差押の執行は仮差押の命令と登記簿に記入することによつてするものであり(民事訴訟法第七五一条第一項)、この登記は仮差押命令を発した裁判所が執行裁判所として、登記官吏にこれを嘱託すべく(同条第二項)、この嘱託は登記簿へ記入するための手段であつて、登記嘱託書を登記官吏にあてて適当な方法で発送すれば、執行の着手があつたと認めるのが相当である。前記仮差押申請事件の記録によれば、本件において管轄執行裁判所たる東京地方裁判所は、右仮差押命令を債権者に送達した日と同日の昭和二十九年二月十三日所轄登記官吏にあてた登記嘱託書を債権者代理人に交付し、これ 押申請事件の記録によれば、本件において管轄執行裁判所たる東京地方裁判所は、右仮差押命令を債権者に送達した日と同日の昭和二十九年二月十三日所轄登記官吏にあてた登記嘱託書を債権者代理人に交付し、これにもとずき前記登記がなされたものであることが明らかである。従来東京地方裁判所は仮差押登記の嘱託にあたり嘱託書を自ら登記官吏にあてて送付することなく、これを債権者に交付し債権者を使者としてこれを登記官吏のもとに持参提出せしめる方法をとることを実務上の慣行としていることは当裁判所に顕著である。この慣行は嘱託書送付に要する日数の節約、登記に要する登録税の決定等の現実の必要から生じたものであり、あえて違法というべきではなく、登記嘱託書送付の方法として最善ではなくとも、次善というべき程度では「適当な方法」であると認めるのほかない。この方法によつて登記が完了するには、裁判所による嘱託書の債権者への交付、債権者の登記官吏に対する書類の提出、登記官吏の受附及び登記簿への記入という数段階を経るものであつて、前記期間内にはじめられたこれらの手続が当然の順序経過をたどつてなされるかぎり、その執行の完了が期間経過後になつても、なんら違法とするにあたらないことは前記説明からおのずから明らかである。 ところで東京地方裁判所から債権者を使者として発送された嘱託書が横浜地方法務局提出されるには幾日を要すべきかというに、東京及び横浜の地理的関係、交通機関の情況にてらしてみれば、早ければ発送即日、普通は翌日、多少のさしさわりがあつた場合でも三日目には提出され得べきことは明らかである。本件の登記嘱託書が横浜地方法務局で受附けられたのは昭和二十九年三月一日であることは記録上明らかであるから、嘱<要旨(ロ)>託書は当日提出されたものと認めるべきである(不動産登記法第二五条、第四七条 件の登記嘱託書が横浜地方法務局で受附けられたのは昭和二十九年三月一日であることは記録上明らかであるから、嘱<要旨(ロ)>託書は当日提出されたものと認めるべきである(不動産登記法第二五条、第四七条参照)。しかるに債権者代</要旨(ロ)>理人が登記嘱託書の交付を受けたのは同年二月十三日であるから、その間十六日かかつているという計算になる。天候の異変、交通機関の故障等の不可抗力によるとかその他特別の事情のみるべきもののない本件では、これは当然の順序経過によつたものでないことは明らかである。かような場合は執行の着手が十四日の期間内にあつただけではたりず、期間内に執行を完了しないかぎり、違法な執行すなわち執行力を失つた仮差押命令の執行であるとしなければならない。もともと債権者もしくはその代理人は執行裁判所の使者として嘱託書の交付を受けこれを登記官吏に提出するのであるから、その間に自己の意思を介在せしめるべきではないのである。しかるに現実には債権者は嘱託書の交付を受けた後は自由にその提出の時期を選ぶことができるわけである。この場合もし執行裁判所が仮差押登記の嘱託書を交付することにより法定期間内に執行の着手がある以上登記簿記入が期間経過後になされたものであつても、なおつねに必ずこれを許すべきものとするときは、仮差押の執行が本来登記によつてなされることの趣旨に遠ざかるのみでなく、債権者は、自由にその登記の時期をおくらせることができることとなつて、そもそも執行期間を法律上限定した意義は全く失われることとなるのである。 しからば本件仮差押の執行は違法であり、右執行はこれを取り消すべきものである。 よつてこれと異なる原決定は失当であるからこれを取り消し、申立費用の負担につき民事訴訟法第九十六条第八十九条を適用して、主文のとおり決定する。 (裁判長判事 執行はこれを取り消すべきものである。 よつてこれと異なる原決定は失当であるからこれを取り消し、申立費用の負担につき民事訴訟法第九十六条第八十九条を適用して、主文のとおり決定する。 (裁判長判事藤江忠二郎判事原宸判事浅沼武)(別紙目録省略)
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