- 1 -判決 主文 1 被告は、原告1に対し、33万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告2に対し、55万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告1と被告との間においてはこれを10分し、その9を原告1の負担とし、その余を被告の負担とし、原告2と被告との間においてはこれを6分し、その5を原告2の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件被告は、原告1に対し、330万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件被告は、原告2に対し、330万円及びこれに対する令和元年7月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告らが、街頭演説に対して路上等から「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられたり、長時間にわたって付きまとわれたりしたと主張して、被告(北海道)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金330万円及びこれに対する不法行為日である令和元年7月15日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合によ- 2 -る遅延損害金の支払を求める事案である。 被告は、警察官らの行為は、警察官職務執行法(以下「警職法」という。)2条1項、4条1項及び5条並びに警察法2条の規定に基づく適法な職務執行であったと主張して、これを争っている。 1 関係法令の定め別紙2「関 行為は、警察官職務執行法(以下「警職法」という。)2条1項、4条1項及び5条並びに警察法2条の規定に基づく適法な職務執行であったと主張して、これを争っている。 1 関係法令の定め別紙2「関係法令の定め」記載のとおり 2 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。なお、本判決において、令和元年7月15日の出来事は、原則として年月日の記載を省略する。また、地点の特定については、原告らの主張する地点と被告の主張する地点の中には必ずしも一致していないところもあるものの、全体としてみるとおおむね符合しており、細かな差異は結論に影響しないと解されるため、便宜上、被告の主張に従い、別紙3ないし6記載のとおり「地点1」などとして特定する。)(1) 当事者ア原告1は、令和元年7月当時、ソーシャルワーカーとして勤務していた男性である(弁論の全趣旨)。 イ原告2は、令和元年7月当時、大学に通学していた女性である(弁論の全趣旨)。 ウ被告は、北海道警察を設置する地方公共団体である。 (2) 街頭演説の実施安倍晋三内閣総理大臣・自由民主党総裁(当時。以下「安倍総裁」という。)は、令和元年7月15日、札幌市内において、参議院議員通常選挙の候補者を応援するため、街頭演説を実施することとした。 (3) 警察官らの原告1に対する行為(掲記した証拠はいずれも動画である。)ア安倍総裁は、JR札幌駅前の演説車両上で、街頭演説を行った。 原告1は、午後4時40分頃、別紙3の地点1から「安倍辞めろ」、「帰- 3 -れ」などと声を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、地点1において原告1の肩や腕をつかみ、そのまま少なくとも地点2の付近まで移動させた(以下、この警察官らの行為を「本件行為1(1)」という。)( を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、地点1において原告1の肩や腕をつかみ、そのまま少なくとも地点2の付近まで移動させた(以下、この警察官らの行為を「本件行為1(1)」という。)(甲3、23、45)。 イ原告1は、北5条手稲通の横断歩道を渡り、南側の歩道の手前付近から西方向に走り出した。 これに対し、周辺にいた警察官らは、別紙3の地点4で原告1を正面から抱き止めて制止した上、肩や腕をつかみ、そのまま地点5まで移動させた(以下、この警察官らの行為を「本件行為1(2)」という。)(甲5)。 ウその後、安倍総裁は、札幌三越前まで移動し、同所の演説車両上で街頭演説を行った。 原告1も、札幌三越前まで移動し、午後5時30分頃、別紙4の地点6から「安倍辞めろ」、「ばか野郎」などと声を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、地点6において原告1の肩や腕をつかみ、そのまま地点7まで移動させた(以下、この警察官らの行為を「本件行為1(3)」という。)(甲25)。 (4) 警察官らの原告2に対する行為(掲記した証拠はいずれも動画である。)ア原告2は、安倍総裁のJR札幌駅前での街頭演説(上記(3)ア)において、午後4時45分頃、別紙5の札幌駅南口広場の地点①から「増税反対」などと声を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、原告2の肩や腕などをつかみ、地点②を経て、少なくとも地点③まで移動させた(以下、この警察官らの行為を「本件行為2(1)」という。)(甲32、34、41の1)。 イ原告2は、その後、札幌駅南口広場から西に向かって移動し始めた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、原告2の両側からその両腕に手を回すなどした上、原告2が広場の南側の「聴衆エリア」(別紙5)には行- 4 -かない 幌駅南口広場から西に向かって移動し始めた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、原告2の両側からその両腕に手を回すなどした上、原告2が広場の南側の「聴衆エリア」(別紙5)には行- 4 -かないように、原告2を引き留めて制止した。 原告2は、札幌駅南口広場から、別紙6のTSUTAYA札幌駅西口店まで徒歩で移動したところ、警察官らは少なくとも同店の入口付近まで追従し、もって原告2に付きまとった(以下、これらの警察官ら行為を「本件行為2(2)」という。)。 ウ原告2は、TSUTAYA札幌駅西口店を出て、TSUTAYA札幌大通店付近まで徒歩で移動した。 これに対し、周辺にいた警察官らは、TSUTAYA札幌大通店付近まで追従し、もって原告2に付きまとったほか、その途中で、少なくとも原告2の腕に触れるなどの接触行為に及んだ(以下、これらの警察官らの行為を「本件行為2(3)」という。)(甲38)。 3 争点(1) 本件行為1(1)の適法性(2) 本件行為1(2)の適法性(3) 本件行為1(3)の適法性(4) 本件行為2(1)の適法性(5) 本件行為2(2)の適法性(6) 本件行為2(3)の適法性(7) 損害発生の有無及びその額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(本件行為1(1)の適法性)について(被告の主張)警察官らが原告1の肩や腕をつかんで地点1から地点2まで移動させた行為(本件行為1(1))は、以下のとおり、警職法4条1項及び5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であった。 (1) 警職法4条1項の要件充足性- 5 -当時、周囲の聴衆からは原告1に対する怒号が上がるなどしており、また、実際に、自撮り棒を持つ男性が原告1を拳で押していたのであって、原告1及び聴衆に対す 職法4条1項の要件充足性- 5 -当時、周囲の聴衆からは原告1に対する怒号が上がるなどしており、また、実際に、自撮り棒を持つ男性が原告1を拳で押していたのであって、原告1及び聴衆に対する「生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」があった。 そして、直ちに原告1を聴衆の中から避難させなければ、原告1及び聴衆に対する危害を回避することはできなかったのであるから、「特に急を要する場合」にもあった。 したがって、「危害を受ける虞のある者」である原告1に対し、必要最小限度の有形力を用いて、聴衆の中(地点1)から安全な場所(地点2)まで避難させた警察官らの措置は、警職法4条1項の要件を充足しており、適法であった。 (2) 警職法5条の要件充足性原告1は罵声を上げるために強硬な姿勢を示しており、また原告1と周囲の聴衆との間でもめ事が生じることも予想された。したがって、原告1がわずかな身体接触等を契機に暴行、傷害等の犯罪に及ぶ可能性が認められたのであって、警察官らは「犯罪がまさに行われようとするのを認めた」ものであった。 そして、原告1は警察官の警告を無視したものであり、直ちに原告1を制止しなければならない「急を要する場合」にもあった。 したがって、原告1による犯罪の制止を目的として、必要最小限度の有形力を用いて原告1を移動させた警察官らの措置は、警職法5条の要件を充足しており、適法であった。 (原告1の主張)以下のとおり、本件行為1(1)は、警職法4条1項及び5条の要件を充足しない。 (1) 警職法4条1項の要件充足性について- 6 -撮影された動画からも明らかなとおり、当時、周囲の聴衆から反発の声はなく、小競り合いもなかったのであって、犯罪行為が発生するような緊迫した状況にはなか 条1項の要件充足性について- 6 -撮影された動画からも明らかなとおり、当時、周囲の聴衆から反発の声はなく、小競り合いもなかったのであって、犯罪行為が発生するような緊迫した状況にはなかった。また、男性が原告1を拳で押したという事実は存在しなかった。 そして、原告1に危険な事態など発生しておらず、強制的措置を講じなければ危害を避けられないほどの「特に急を要する場合」にもなかった。 したがって、本件行為1(1)は、警職法4条1項の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 なお、仮に原告1が聴衆から危害を加えられそうな状況にあったのであれば、そのような聴衆に警告したり、間に割って入ったりすれば十分であって、警察官らのした行為は必要な限度の実力行使を超えるものであり、本件行為1(1)はこの点でも違法であった。 (2) 警職法5条の要件充足性について上記(1)のとおり、原告1は聴衆との小競り合いなど生じさせておらず、ただ声を上げていただけであって、聴衆の生命・身体に危険が及ぶという現実の危険性は全く生じていなかった。 したがって、本件行為1(1)は、警職法5条の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 なお、警察官らは、原告1に対し、何らの警告もせずに複数人で排除行為に及んだものであり、必要な限度の実力行使を超えるものであって、本件行為1(1)はこの点でも違法であった。 2 争点(2)(本件行為1(2)の適法性)について(被告の主張)原告1は、演説車両に向かって突進するという異常な行動を取ったものであって、警察官らは、このような原告1が安倍総裁や候補者などに危害を加え、又は車道に飛び出して演説車両付近の道路に立ち止まる可能性が高いと認めた。 - 7 -そして、「止まれ」と警告したにもかかわらず、原告 官らは、このような原告1が安倍総裁や候補者などに危害を加え、又は車道に飛び出して演説車両付近の道路に立ち止まる可能性が高いと認めた。 - 7 -そして、「止まれ」と警告したにもかかわらず、原告1は突進してきたのであるから、警察官らとしては、これを抱き止めて制止するほかなかった。また、演説車両への更なる接近や物の投てきなどによる危害を防止し、原告1を落ち着かせるためには、同人を演説車両から離れた場所まで移動させる必要があった。 したがって、警察官らが、原告1を抱き止めて制止した上、肩や腕をつかんで地点4から地点5まで移動させた行為(本件行為1(2))は、警職法5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であった。 (原告1の主張)原告1は、地点4において、ただ声を上げていただけであって、安倍総裁及び聴衆の生命・身体に危険が及ぶような危険性は生じておらず、相当程度に具体的な犯罪が発生することが客観的に明らかというものでもなかった。また、原告1と警察官らとの間で小競り合いが生じていたわけでもなかった。 仮に、何らかの小競り合いが生じる可能性があったとしても、原告1は1名であったのに対し、警察官らは10名以上いたのであるから、原告1に警告を発したり、間に割って入ったりするなど、より制限的でない対応によって犯罪を防止することも十分可能であった。 なお、警察官らは、何らの警告もせずに複数人で排除行為に及んだものであり、必要な限度の実力行使を超えるものであって、本件行為1(2)はこの点でも違法であった。 したがって、いずれにせよ、警察官らによる本件行為1(2)は警職法5条の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 3 争点(3)(本件行為1(3)の適法性)について(被告の主張)原告1は、演説車両から約3mの位置で「安倍辞め よる本件行為1(2)は警職法5条の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 3 争点(3)(本件行為1(3)の適法性)について(被告の主張)原告1は、演説車両から約3mの位置で「安倍辞めろ」、「ばか野郎」などと罵声を上げ、安倍総裁に向かって右手を突き出して指さしたのであり、安倍総- 8 -裁を標的にしていたことは明らかであった。 そして、このような態様から、警察官らは、原告1が安倍総裁や候補者などに物を投げたり、液体や唾を掛けたり、光線を照射したり、大音響を鳴らしたり、爆発物を爆破させたり、ひいては演説車両に上って直接危害を加えたりするなどの犯罪行為に至る危険性が極めて高いと認めた。 しかも、原告1と演説車両との距離が近く、警告をしている時間的余裕がないほどに急を要する事態にあったのであるから、直ちに制止しなければならなかった。 したがって、警察官らが原告1の肩や腕をつかんで地点6から地点7まで移動させた行為(本件行為1(3))は、警職法5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であった。 (原告1の主張)原告1は、安倍総裁や候補者に危害を加える意思を一切有しておらず、このことは客観的にも明らかであった。原告1は両手に何も持っていなかったし、立入制限区域に侵入しようとする意図も存在しなかった。 そして、原告1の立ち位置と安倍総裁及び候補者との距離や、原告1が両手に何も持っていなかったことなどからすれば、警察官らにおいて警告をしている時間的余裕がないほど急を要する事態であるともいえなかった。 なお、警察官らは、原告1の進行方向に立ちふさがるという対応を超えて、原告1を強制排除するという行為に及んだものであって、必要な限度の実力行使を超えていた。 したがって、いずれにせよ、警察官らによる本件行為1(3)は警職 の進行方向に立ちふさがるという対応を超えて、原告1を強制排除するという行為に及んだものであって、必要な限度の実力行使を超えていた。 したがって、いずれにせよ、警察官らによる本件行為1(3)は警職法5条の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 4 争点(4)(本件行為2(1)の適法性)について(被告の主張)警察官らが原告2の腕などをつかんで地点①から地点③まで移動させた行為- 9 -(本件行為2(1))は、以下のとおり、警職法4条1項及び5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であった。 (1) 警職法4条1項の要件充足性当時、原告2は罵声を上げ続けていたため、周囲の聴衆は騒然となり、緊迫した状況となっていたのであって、原告2が聴衆の間でもめ事になるのは必至であった。しかるに原告2は、警察官の警告を無視して、興奮状態で絶叫し、聴衆に向かって前進したものであり、暴行、傷害等の犯罪が発生する危険が切迫し、「生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」があった。 そして、直ちに原告2を聴衆の中から避難させなければ、原告2及び聴衆に対する危害を回避することはできなかったのであるから、「特に急を要する場合」にもあった。 したがって、「危害を受ける虞のある者」である原告2に対し、必要な程度の有形力を用いて聴衆の中から避難させた警察官らの措置は、警職法4条1項の要件を充足しており、適法であった。 (2) 警職法5条の要件充足性原告2は興奮状態で絶叫しながら警察官の手を振りほどき、執拗に聴衆の中に向かおうとしていたのであって、原告2が密集した聴衆に体当たりしたり、聴衆を押し倒したりするなどの暴行、傷害等の犯罪行為に発展する可能性が認められ、警察官らにおいて「犯罪がまさに行われようとするのを認 かおうとしていたのであって、原告2が密集した聴衆に体当たりしたり、聴衆を押し倒したりするなどの暴行、傷害等の犯罪行為に発展する可能性が認められ、警察官らにおいて「犯罪がまさに行われようとするのを認めた」ものであった。 そして、原告2は興奮状態で警察官の警告を殊更に無視したものであり、直ちに原告2を制止しなければならない「急を要する場合」にもあった。 したがって、原告2による犯罪の制止を目的として、必要な程度の有形力を用いて原告2を移動させた警察官らの措置は、警職法5条の要件を充足しており、適法であった。 - 10 -(原告2の主張)以下のとおり、本件行為2(1)は、警職法4条1項及び5条の要件を充足しない。 (1) 警職法4条1項の要件充足性について撮影された動画からも明らかなとおり、当時、周囲の聴衆から批判的な声など出ておらず、現実に具体的な危険が生じていたとはいえない。また、警察官らにおいて、原告2の身体をつかむ前に警告を発したり、移動するよう説得したりした事実はないし、原告2も被告の主張するほどの興奮状態にはなかった。このように、本件においては、「危険な事態」など生じておらず、また「特に急を要する場合」にもなかった。 したがって、本件行為2(1)は警職法4条1項の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 なお、警察官らは、原告2の周りに立つという容易な対応でも可能であったにもかかわらず、必要最小限度を優に超える行為をしたものであって、本件行為2(1)はこの点でも違法である。 (2) 警職法5条の要件充足性について上記(1)のとおり、原告2において何らかの犯罪行為に及ぶ危険は存在していない。被告の主張は具体的根拠を欠く、抽象的不安感をいうものにすぎないのであって、「犯罪がまさに行われようと」していたもので 上記(1)のとおり、原告2において何らかの犯罪行為に及ぶ危険は存在していない。被告の主張は具体的根拠を欠く、抽象的不安感をいうものにすぎないのであって、「犯罪がまさに行われようと」していたものではなかった。 また、上記(1)のとおり、警察官らは警告をしていないし、原告2が警察官らの警告を殊更に無視した事実もないのであって、「急を要する場合」でもなかった。 したがって、本件行為2(1)は警職法5条の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 なお、上記(1)と同様に、警察官らは、原告2の周りに立つという容易な対応でも可能であったにもかかわらず、必要最小限度を優に超える行為をし- 11 -たものであって、本件行為2(1)はこの点でも違法であった。 5 争点(5)(本件行為2(2)の適法性)について(被告の主張)以下のとおり、本件行為2(2)のうち、①原告2が「聴衆エリア」(別紙5)に戻らないように原告2を引き留め制止した行為(制止行為)は、警職法4条1項及び5条の要件を充足するものであり、②原告2を説得するためにTSUTAYA札幌駅西口店まで追従した行為(追従行為)は、警察法2条所定の警察の責務を達成するため適法に行われた職務行為である。 (1) 制止行為の適法性-警職法4条1項及び5条争点(4)において主張するとおり、警察官らは、原告2の安全を確保するために「聴衆エリア」から避難させ、また原告2による犯罪行為を制止するために同所から移動させたのであるから、原告2がその現場に戻れば再び危険な事態が発生すると判断したのは当然であった。 そして、原告2は、地点⑤から西方向へ移動する際、「聴衆エリア」に体を向けて、警察官らに体を当ててきた。それゆえ警察官らは、原告2が「聴衆エリア」に戻らないように、手を原告2の腕に回して引 った。 そして、原告2は、地点⑤から西方向へ移動する際、「聴衆エリア」に体を向けて、警察官らに体を当ててきた。それゆえ警察官らは、原告2が「聴衆エリア」に戻らないように、手を原告2の腕に回して引き留め、制止したにすぎないのであって、警察官らの行為は必要な程度にとどまっていた。 したがって、「聴衆エリア」に戻ろうとした原告2を引き留め制止した警察官らの措置は、警職法4条1項及び5条の要件を充足しており、適法であった。 (2) 追従行為の適法性-警察法2条原告2は、警察官らに強度かつ執拗に抵抗するなど危険な行動に及んでいたのであるから、他の街頭演説の場所でも再び危険な行動に出て、聴衆との間でもめ事を惹起し、暴行等の犯罪に及ぶ可能性があった。 さらに、原告2は、安倍総裁への接近を示唆する一方で、その理由を答えなかったため、安倍総裁へ危害を加えるために接近を企図する可能性も認め- 12 -られた。 このような状況から、警察官らが原告2に対し、危険な行動を取らないように自制を促す必要性を認めたのは当然であった。 そして、原告2は自らTSUTAYA札幌駅西口店へ移動したのであるから、警察官らの措置は、原告2の自由な行動を阻害しておらず、心理的な圧迫の程度も低く、原告2を説得するために必要かつ相当な程度で行われたものであって、警察法2条に規定する警察の責務を達成するために、適法に行われた職務行為であった。 (原告2の主張)以下のとおり、本件行為2(2)のうち制止行為は警職法4条1項及び5条の要件を充足せず、また追従行為は警察法2条によっても適法とはならない。 (1) 制止行為の適法性について原告2は「増税反対」などと声を上げただけであり、周囲の聴衆もせいぜい原告2に目を向けていただけであって、原告2が危険な事態を発生させて ても適法とはならない。 (1) 制止行為の適法性について原告2は「増税反対」などと声を上げただけであり、周囲の聴衆もせいぜい原告2に目を向けていただけであって、原告2が危険な事態を発生させていたという前提自体がない。また、原告2は地点⑤付近から西方向に歩き始めただけであって、これは他人の生命・身体などに危害を加えることを予期させるものではない。なお、原告2が警察官らに体を当てた事実はない。 したがって、本件行為2(2)における警察官らの制止行為は、警職法4条1項及び5条の要件を充足しておらず、違法な行為であった。 (2) 追従行為の適法性について被告の主張する警察法は、警察組織について規定した組織法にすぎず、同法をもって権利侵害行為を伴う追従行為を適法とすることはできない。 そして、この点を措くとしても、上記(1)のとおり、原告2は何ら危険な行動に及んでいないのであって、被告のいう犯罪に及ぶ可能性というものは、いずれも具体的根拠を欠いた、警察官らの主観に基づく抽象的なものにすぎない。しかも、複数の警察官らから執拗に追従されることによる心理的圧迫- 13 -の程度は大きく、原告2はやむを得ずTSUTAYA札幌駅西口店に避難したのであって、警察官らの追従行為の態様は最小限の手段を超えていた。 したがって、本件行為2(2)における警察官らの追従行為は、警職法1条2項に違反し、違法な行為であった。 6 争点(6)(本件行為2(3)の適法性)について(被告の主張)以下のとおり、本件行為2(3)のうち、①警察官らが原告2の腕に触れた行為(接触行為)は、職務質問に必要かつ相当な手段であって、警職法2条1項により許容され、②原告2を説得するためにTSUTAYA札幌大通店付近まで追従した行為(追従行為)は、警察法2条所定の警察の責 為(接触行為)は、職務質問に必要かつ相当な手段であって、警職法2条1項により許容され、②原告2を説得するためにTSUTAYA札幌大通店付近まで追従した行為(追従行為)は、警察法2条所定の警察の責務を達成するために適法に行われた職務行為である。 (1) 接触行為の適法性-警職法2条1項JR札幌駅前における原告2の危険な行動や、安倍総裁への接近を示唆していた状況からは、原告2は安倍総裁が次の街頭演説を行う札幌三越前に向かい、再び聴衆との間で危険な事態を発生させる可能性が高く、安倍総裁やその関係者に体当たりをしたり、物を投げつけたりなどの犯罪行為に及ぶ可能性が高かった。 そこで、警察官らは、原告2が「犯罪を……犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由の者」(警職法2条1項)であり、職務質問を行う高度の必要性と緊急性を認めたところ、原告2は猛然と約100mも走り、赤信号で停止したため、警察官らは原告2に追いつき、職務質問を開始した。 しかるに、原告2は、警察官らからの問いかけを無視し、職務質問に応じずに移動を開始したため、警察官らは一時的に手を原告2の腕に触れていたものである。そして、手で触れていたのは一時的にすぎず、その程度は軽微なものであって、原告2の身体の自由を制圧するようなものではなかったため、警察官らが原告2の腕に触れた行為は、職務質問を続行するために必要- 14 -かつ相当な手段であった。 (2) 追従行為の適法性-警察法2条上記(1)のとおり、警察官らは、原告2が安倍総裁の次の演説会場に移動するものと認め、犯罪を予防するために、これに追従しながら危険な行動を取らないように説得する必要があった。 そして、警察官らは説得していたものの、原告2は、自らの意思で進行方向を決め、TSUTAYA札幌大通店付近まで移動した るために、これに追従しながら危険な行動を取らないように説得する必要があった。 そして、警察官らは説得していたものの、原告2は、自らの意思で進行方向を決め、TSUTAYA札幌大通店付近まで移動した。また、原告2への説得は、私服警察官2名により必要な程度で行われたものであって、強制にわたらない任意の手段による行為であった。 したがって、警察官らが原告2に追従して再び危険な行動を取らないように説得した行為は、警察法2条に規定する警察の責務を達成するために、適法に行われた職務行為であった。 (原告2の主張)以下のとおり、本件行為2(3)のうち接触行為は警職法2条1項の職務質問として許容されるものではなく、また追従行為は警察法2条によっても適法とはならない。 (1) 接触行為の適法性について原告2において何らかの犯罪を犯そうとする具体的危険はなく、せいぜい警察官らの思い込みによる抽象的危険にすぎない。また、原告2は、警察官らに執拗に付きまとわれる中で、走り出すという行為をしただけであり、不審な行動はしていない。 そして、警察官らは原告2の腕をつかんだのであって、このような有形力を行使する公益上の必要性はなく、停止行為としても相当性を欠いていることは明白である。 したがって、本件行為2(3)において、警察官らが原告2の腕をつかんだ行為は、警職法2条1項により許容されるものではなく、違法な行為であっ- 15 -た。 (2) 追従行為の適法性について争点(5)でも主張したとおり、警察法をもって権利侵害行為を伴う追従行為を適法とすることはできない。 そして、この点を措くとしても、被告の主張は、これまでと同様に、客観的な裏付けのない具体的根拠を欠く、抽象的不安感の域を出るものではないのであって、警察官らには原告2を追従する必要 とはできない。 そして、この点を措くとしても、被告の主張は、これまでと同様に、客観的な裏付けのない具体的根拠を欠く、抽象的不安感の域を出るものではないのであって、警察官らには原告2を追従する必要性はなかった。現に、当時撮影された動画からも明らかなように、警察官らは単に原告2が安倍総裁の次の街頭演説の場へ行くことを足止めしようとしたものにすぎず、かかる目的を正当化することはできない。 さらに、争点(5)で主張したところと同様、警察官らの追従行為の態様は最小限の手段を超えていた。 したがって、本件行為2(3)における警察官らの追従行為は、警職法1条2項に違反し、違法な行為であった。 7 争点(7)(損害発生の有無及びその額)について(原告らの主張)(1) 表現の自由の侵害(原告1及び2)原告らは、いずれも警察官らによる違法な公権力の行使により、憲法により保障された表現の自由、とりわけ民主政の過程において重要な政治的表現の自由を制限された。 すなわち、原告らは、それぞれ僅か1人で安倍総裁に批判的な言葉を発しただけにもかかわらず、多数の警察官らによって身体をつかまれ、身体の自由を奪い取られて、その表現行為を封殺されたものである。 (2) 移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権の侵害(原告2)原告2は、演説会場を離れた後も、警察官らから長時間にわたって付きまとわれ、もって移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権を侵害された。 - 16 -(3) 原告らの損害額ア慰謝料各300万円原告らは、いずれも市民であれば当然に保障される各人権を警察権力から一方的に奪われたものである。また、原告1は、複数の警察官らによって実力をもって排除されたことに恐怖を感じ、原告2は、複数の警察官 原告らは、いずれも市民であれば当然に保障される各人権を警察権力から一方的に奪われたものである。また、原告1は、複数の警察官らによって実力をもって排除されたことに恐怖を感じ、原告2は、複数の警察官らによって執拗に追跡されたことに恐怖を感じたのであって、いずれも甚大な精神的苦痛を被ったものである。加えて、北海道警察は、本訴提起に至るまで、その行為の正当化根拠の説明すらしておらず、これにより原告らの精神的苦痛はより増加した。 これらの原告らの苦痛を慰謝するためには、それぞれ少なくとも300万円の慰謝料を要する。 イ弁護士費用各30万円原告らは、いずれも被告に対する本訴を提起するために弁護士に委任せざるを得なかったところ、その弁護士費用としては、それぞれ損害額の1割である30万円が相当である。 (被告の主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に当事者間に争いのない事実及び後掲各証拠等を併せると、以下の事実が認められる。 (1) 過去の安倍総裁の街頭演説安倍総裁は、平成29年7月1日、東京都内のJR秋葉原駅前で街頭演説を行った。その際、聴衆の中から「安倍辞めろ」などという声が上がったため、安倍総裁は「こんな人たちに負けるわけにはいかない。」と発言した。 安倍総裁のこの発言は、当時、広く報道された(証人A〔10頁〕、顕著- 17 -な事実)。 (2) 本件の街頭演説安倍総裁は、令和元年7月15日、第25回参議院議員通常選挙の候補者を応援するため、札幌市内で街頭演説を行うこととした。 北海道警察の警察官らは、その警護警備に当たることとなった。 なお、警察官らの一部は、今般の街頭演説においても、JR秋葉原駅前と同様の声を上げる者が出てくるかもしれな で街頭演説を行うこととした。 北海道警察の警察官らは、その警護警備に当たることとなった。 なお、警察官らの一部は、今般の街頭演説においても、JR秋葉原駅前と同様の声を上げる者が出てくるかもしれないと想定していた(証人A〔10頁〕)。 (3) 原告1に対する有形力の行使等ア JR札幌駅前での街頭演説安倍総裁は、JR札幌駅前の演説車両上で街頭演説を始めた。 安倍総裁の乗った演説車両は、別紙3のとおり、北5条手稲通の南側に位置していた。そして、聴衆は、北5条手稲通を挟んだ北側の歩道や、更にその北西側の札幌駅南口広場などで演説を聞いていた。 イ本件行為1(1)原告1は、午後4時40分頃、北5条手稲通の北側の歩道の地点1において、「安倍辞めろ」、「帰れ」などと声を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らのうち、少なくとも警察官ら2名が原告1の肩や腕をつかみ、更に警察官ら4、5名がこれを取り囲んで、原告1を地点2と地点3の中間付近(「S-18地下街出入口」の北側付近)まで移動させた。この間、原告1は、「安倍辞めろ」、「暴力で追放するのか」、「これが民主主義か」などと声を上げていた(甲3、23、45、証人A〔5頁〕、原告1本人〔5、6頁〕。なお、被告は地点2までしか移動させていない旨主張するが、撮影された動画〔甲45〕によれば、地点2を越えて「S-18地下街出入口」の北側付近まで移動させたことが明らかである。)。 - 18 -ウ本件行為1(2)原告1は、北5条手稲通の横断歩道を南に向かって渡り、南側の歩道の直前で、突然、安倍総裁の演説車両のある西方向に走り出した。 これに対し、周辺にいた警察官らは、地点4において原告1を正面から抱き止めて制止した上、肩や腕をつかみ、そのまま地点5まで移動させた。 この間、原告1は、「安 裁の演説車両のある西方向に走り出した。 これに対し、周辺にいた警察官らは、地点4において原告1を正面から抱き止めて制止した上、肩や腕をつかみ、そのまま地点5まで移動させた。 この間、原告1は、「安倍辞めろ」などと声を上げていた(甲5、証人A〔6、7頁〕、原告1本人〔9、10頁〕)。 エ札幌三越前までの移動本件行為1(2)の後、安倍総裁のJR札幌駅前での街頭演説が終了した。 原告1は、安倍総裁の次の街頭演説場所である札幌三越前まで移動することとし、休憩を挟みながら、当初は徒歩で、その後はタクシーを用いて札幌三越前に移動した(原告1本人〔16、17頁〕)。 オ札幌三越前での街頭演説安倍総裁は、札幌三越前の演説車両上で街頭演説を始めた。 安倍総裁の乗った選挙車両は、別紙4の「選挙車両」のとおり、札幌駅前通の西側に位置していた。そして、聴衆は、その背後の歩道や、札幌駅前通を挟んだ東側の歩道などで演説を聞いていた。 カ本件行為1(3)原告1は、午後5時30分頃、地点6から「安倍辞めろ」、「ばか野郎」などと声を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、原告1の右手を押さえて制止した上、原告1を取り囲んでその肩や腕をつかみ、そのまま地点7まで移動させた。この間、原告1は、「安倍辞めろ」などと声を上げていた。 警察官らは、原告1を地点7まで移動させた後、原告1に対し、「演説してるから、それ邪魔しちゃだめだよ。」、「選挙の自由妨害する。」などと発言していた(甲25、証人B〔3ないし8頁〕、原告1本人〔18ない- 19 -し22頁〕)。 (4) 原告2に対する有形力の行使等ア本件行為2(1)上記(3)アのとおり、安倍総裁がJR札幌駅前の演説車両上で街頭演説を始めたところ、警察官らが原告1を取り囲み、移動させるなどした 。 (4) 原告2に対する有形力の行使等ア本件行為2(1)上記(3)アのとおり、安倍総裁がJR札幌駅前の演説車両上で街頭演説を始めたところ、警察官らが原告1を取り囲み、移動させるなどした。 この状況や周囲の聴衆の反応を見た原告2は、午後4時45分頃、別紙5の地点①において、「増税反対」、「自民党反対です」などと声を上げた。 これに対し、周辺にいた警察官らが、原告2を取り囲み、その肩や腕をつかんだ上、そのまま地点②まで移動させた。 さらに、警察官らは、原告2を取り囲み、その肩や腕、背中などをつかんだ上、そのまま地点③まで移動させた。 この間、原告2は、「安倍辞めろ」、「原発反対」などと声を上げていた(甲32、34、41の1、証人C〔2ないし4頁〕、原告2本人〔2ないし8頁〕)。 イ本件行為2(2)原告2は、その後、札幌駅南口広場から西に向かって移動し始めた。 これに対し、周辺にいた警察官らは、原告2の両側からその両腕に手を回すなどした上、原告2が広場の南側の「聴衆エリア」(別紙5)には行かないように、原告2を引き留めて制止した(制止行為)。 原告2は、札幌駅南口広場から、JR札幌駅の西側高架下の建物(サツエキBridge)の2階にあるTSUTAYA札幌駅西口店まで徒歩で移動した。これに対し、警察官らは原告2を追従し、上記建物に入った上、少なくとも同店の入口付近まで原告2を追従し続けた(追従行為)。原告2が「ここ、店の中だから、付いてくるのはやめてほしい。」などと伝えたところ、追従した警察官らは外に出た。 なお、警察官らから追従されている間、原告2は、警察官らに対し、- 20 -「声を出しただけで囲まれるのって、おかしくないですか。」などと発言していた(証人C〔6ないし8頁〕、証人D〔8、9頁〕、原告2本人〔1 ら追従されている間、原告2は、警察官らに対し、- 20 -「声を出しただけで囲まれるのって、おかしくないですか。」などと発言していた(証人C〔6ないし8頁〕、証人D〔8、9頁〕、原告2本人〔13頁〕)。 ウ本件行為2(3)原告2は、TSUTAYA札幌駅西口店を出て、TSUTAYA札幌大通店に向かって徒歩で移動し始めた。 これに対し、建物外で待機していた警察官らが追従を再開し、結局、原告2がTSUTAYA札幌大通店付近でタクシーに乗車するまでこれを追従し、もって原告2に付きまとった(追従行為)。 この追従行為の際、原告2が「あそこで急にさ、取り押さえられて」などと言ったところ、警察官らは直ちに「だっていきなり声上げたじゃーん。」、「急に大声上げたじゃん。」などと答えた。 また、原告2が「だって公共の場でしょ。私有地じゃないわけでしょ。」と言ったところ、警察官らは「あのね、ここは道路使用許可っていう、公安条例で、許可を取ってやってるの。」、「法律に引っかかってるとかじゃなくて、みんなの……」、「みんな聞きたい人がいるからさ。聞きたい人にとって、大声出されたら聞きたいこと聞けなくなっちゃうっしょ、ね。」などと答えた。 さらに、原告2が「大声出したってなんの自由も侵害してないじゃん。」などと言ったところ、警察官らは「話を聞く自由を侵害してるっしょ。」などと答えた。 そして、警察官らは、原告2が大通方面に向かおうとしているのに対し、「だって、こっち〔大通方面〕行ったらさ、またなんか、あれやん。」、「なんか飲む? なんか飲む? 買うよ、買うよ、お金あるから。なんか飲まない? ジュース買ってあげる。」、「もうそっち〔大通方面〕行かないでほしいなあ。」などと言い、その後も「あっち行かないでほしいのさ- 21 -ー、お願い。」 、買うよ、お金あるから。なんか飲まない? ジュース買ってあげる。」、「もうそっち〔大通方面〕行かないでほしいなあ。」などと言い、その後も「あっち行かないでほしいのさ- 21 -ー、お願い。」、「飲み物、コーラですか、ジンジャーエールですか、ウーロン茶ですか。」、「今日はもう諦めてー。」などと言って、度々これを阻止しようとした。 なお、原告2は、途中で100m程度走り、これに対して警察官ら2名が追いかけ、少なくとも、それぞれ原告2の腕に触れるなどしたことがあった(接触行為)(甲38、47、証人C〔9ないし14頁〕、原告2本人〔14ないし19頁〕)。 2 争点(1)(本件行為1(1)の適法性)について上記認定のとおり、警察官らは、原告1の肩や腕をつかむなどして、原告1を地点1から地点2と地点3の中間付近まで移動させるという、本件行為1(1)に及んだものである。 この点につき被告は、本件行為1(1)は警職法4条1項及び5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であったと主張する。 そこで、以下、この被告の主張の当否について順次検討する。 (1) 警職法4条1項の要件充足性についてア警職法4条1項は、警察官は、「人の生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」があり、「特に急を要する」場合には、「危害を受ける虞のある者」に対し、必要な限度でこれを引き留め又は避難させることができる旨定める。 イ本件において被告は、当時、周囲の聴衆から原告1への怒号が上がるなどしており、実際に、自撮り棒を持つ男性が原告1を拳で押していたのであるから、「危害を受ける虞のある者」である原告1を安全な場所まで避難させたものであると主張する。 そして、現場に臨場していた警察官のA(以下「A警察官」という。)は、証人尋問において ていたのであるから、「危害を受ける虞のある者」である原告1を安全な場所まで避難させたものであると主張する。 そして、現場に臨場していた警察官のA(以下「A警察官」という。)は、証人尋問において、①聴衆の中から「お前が帰れ」、「うるさい」などの怒号が上がっており、原告1をにらみつける者もいて、聴衆と原告1と- 22 -の間でトラブルが起きる危険性を感じた(証人A〔2、3、13、17、25頁〕)、②原告1は非常に興奮したような状態であり、聴衆に危害を加える可能性もあった(同〔3、13、14頁〕)、③聴衆の中から拳の状態で腕が伸びて、原告1の左上腕付近を押し、その後再び原告1の左上腕付近を押した(証人A〔3、4、12、25、26頁〕)旨証言している。 ウそこで検討するに、まず、上記①の点については、当時の動画(甲3)上、原告1が「安倍辞めろ」などと声を上げてから、警察官らが原告1の肩や腕をつかむなどの行為に出るまでの間、「お前が帰れ」、「うるさい」などの発言は全く録音されていない(A警察官もこの点を認めている。証人A〔17頁〕)。そもそも「怒号」(証人A〔3頁〕)というからには、相当程度の声量があったはずであるのに、上記動画に全く録音されていないというのは不自然といわざるを得ない。なお、上記動画では、原告1の「安倍辞めろ」などの発言は極めて明瞭に録音されているのであって、録音状況に問題があったようにはうかがわれない。 また、原告1をにらみつける者もいたとの証言部分についても、単に原告1をにらみつける者がいるというだけで、直ちに原告1の「生命若しくは身体に危険」を及ぼすおそれのある「危険な事態」があり、「特に急を要する」というのには、疑問を差し挟まざるを得ないし、この点を措くとしても、上記動画を見る限りは、周囲の聴衆の中に、原告 生命若しくは身体に危険」を及ぼすおそれのある「危険な事態」があり、「特に急を要する」というのには、疑問を差し挟まざるを得ないし、この点を措くとしても、上記動画を見る限りは、周囲の聴衆の中に、原告1をにらみつけている者がいるようにもうかがわれない(被告も「けげんな表情で原告1を見ている者がいる」というにとどまる。乙126〔写真番号2〕)。 そもそも、上記動画によれば、原告1が「安倍辞めろ」と声を上げてから警察官らが動き出すまでにわずか数秒程度であり、実際に原告1の肩や腕をつかむまででも10秒程度であって、そのわずかな間、原告1と聴衆との間で騒然となったり、小競り合いが生じたりしたようにはうかがえない。なお、被告は、別の動画(甲45)の23秒時点では「怖いね」との- 23 -声が録音され、30秒時点では「こっちの方がうるせえ」との声が録音されている旨主張するが、これらはいずれも警察官らが原告1の肩や腕をつかんで強制的に移動させている時点のものであって、その前の時点のものではない。 以上に加え、原告1に同行していたEは、「お前が帰れ」、「うるさい」などの怒号はなく、原告1をにらみつける者もいなかったと証言しており(証人E〔4、9頁〕)、原告1自身も怒号はなかったと供述していること(原告1本人〔3頁〕)も併せると、A警察官の上記①の証言は、にわかに採用することができない。 エ次に、上記②の点については、当時の動画(甲3)を見ても、原告1は単に「安倍辞めろ」などと声を上げているのみであって、にわかに危険を感じるほどの興奮状態にあったようにはうかがわれない。 かえって、A警察官によっても、原告1は当時、聴衆に向かって何か発言することもなく、ただ演説車両の方を向き続けていたというのであって(証人A〔24、26頁〕)、原告1が聴衆に対 はうかがわれない。 かえって、A警察官によっても、原告1は当時、聴衆に向かって何か発言することもなく、ただ演説車両の方を向き続けていたというのであって(証人A〔24、26頁〕)、原告1が聴衆に対して何か敵対的な態度を取っていたというわけでもない(同〔25頁〕参照)。 なお、被告は、別の動画(甲45)の37秒時点において、原告1が中指を突き立てるなどの侮辱的なしぐさに及んでいる旨主張するが、これは既に警察官らが原告1を強制的に移動させ始めた後のものである。 したがって、A警察官の上記②の証言は、にわかに採用することができない。 オさらに、上記③の点については、確かに当時の動画(甲3)には、原告1の左上腕付近を誰かが押しているところが撮影されている(乙62。被告はこれが2回目に押した場面だとする。)。 しかし、これは、拳で押しているものではなく、手のひらで押しているにすぎない。しかも、被告は「自撮り棒を持つ男性」が拳で押していたと- 24 -主張するのに対し、A警察官は、自撮り棒を持つ男性の付近から腕が伸びてきただけであって、自撮り棒を持っていた男性と原告1を押していた人物とが同一かどうかは分からないと証言するにとどまっている(証人A〔12頁〕)。 加えて、A警察官は、その報告書(乙44)において、「拳が伸びてきた方向に向けて『あぶないですよ。やめてください』と警告した」と記載しているが(4枚目)、上記動画にはそのような発言は全く録音されていない。しかも、上記動画を見る限りは、臨場した警察官(A警察官)が原告1の左側(拳が伸びてきたとする方向)に体を向けたり、そちらの方向を見たりしたようにはうかがわれないし、A警察官自身、証人尋問において、原告1の左側の方向を見ていたのか何度も問われながらも、「周囲を全体的に確認しました たとする方向)に体を向けたり、そちらの方向を見たりしたようにはうかがわれないし、A警察官自身、証人尋問において、原告1の左側の方向を見ていたのか何度も問われながらも、「周囲を全体的に確認しました。」、「詳細までは分かりません。」、「明確に左側を見たかどうかは分かりません。」という曖昧な証言に終始している(証人A〔26頁〕)。 そもそも、上記動画によれば、原告1の左上腕付近が押されるかどうかという時点で、既に警察官らが原告1の肩や腕をつかんで移動させようと動き始めていたのであって、原告1が押されるか否か(被告によれば、2回目に押されるか否か)にかかわらず、警察官らは原告1を移動させることを既に決めていたようにうかがわれるところである。 以上に加え、原告1に同行していたEはそもそも自撮り棒を持った男性を見ていないと証言し(証人E〔2頁〕)、原告1も、自撮り棒を持った男性はいなかったと供述していること(原告1本人〔3頁〕)、動画(甲3)上も自撮り棒を持つ男性の存在を確認し得ないことを併せると、A警察官の上記③の証言は、にわかに採用することができない。 カ以上によれば、A警察官の証言内容は、客観証拠とにわかに整合せず、また不自然な点が見受けられるのであって、採用することができないもの- 25 -というべきである。 そもそも、もしA警察官及びその他の警察官らにおいて、周囲の聴衆が原告1に危害を加えるおそれを感じ、もって警職法4条1項の要件が充足されていると判断したのであれば、端的にそのような聴衆に警告したり、聴衆と原告1との間に割って入ったりするだけで足りるようにうかがわれる。しかるに警察官らは、そのようなことをせず、むしろ被害者であるはずの原告1の肩や腕をつかみ、地点2と地点3の中間付近まで強制的に移動させたものであって、移動 たりするだけで足りるようにうかがわれる。しかるに警察官らは、そのようなことをせず、むしろ被害者であるはずの原告1の肩や腕をつかみ、地点2と地点3の中間付近まで強制的に移動させたものであって、移動後に原告1を気遣ったり、原告1と聴衆との間の具体的なトラブルの有無を確認したりもしていないし、原告1を拳で押したとする人物を特定することすらしていない。 結局のところ、動画(甲3)を見る限りは、聴衆の大多数が演説に耳を傾けていたところ(被告もこの点は自認している。被告第4準備書面〔3頁〕)、原告1が1人で「安倍辞めろ」などと声を上げ始めたというにすぎず、そこからわずか数秒程度で警察官らが動き出し、10秒程度で原告1の肩や腕をつかみ始めたのであって、原告1の左上腕付近を誰かが手のひらで押していたこと(乙62)を考慮に入れても、「人の生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」があり、「特に急を要する」場合にあったようには、およそうかがわれないところである。 キしたがって、他に被告の主張する事実を認めるに足りる的確な証拠もない以上、本件行為1(1)が警職法4条1項の要件を充足するものということはできないのであって、この点についての被告の主張は理由がない。 (2) 警職法5条の要件充足性についてア警職法5条は、警察官において「犯罪がまさに行われようとする」のを認め、その行為により「人の生命若しくは身体」に危険が及ぶおそれがあって、「急を要する」場合には、その行為を制止することができる旨定める。 - 26 -イ本件において被告は、当時の状況からすれば、原告1がわずかな身体接触等を契機に暴行、傷害等の犯罪に及ぶ可能性が認められたなどとして、警察官らの措置は警職法5条の要件を充足するものであったと主張する。 しかし、被告 は、当時の状況からすれば、原告1がわずかな身体接触等を契機に暴行、傷害等の犯罪に及ぶ可能性が認められたなどとして、警察官らの措置は警職法5条の要件を充足するものであったと主張する。 しかし、被告がその主張の根拠とするのは、①聴衆の中から「お前が帰れ」、「うるさい」などの怒号が上がっており、原告1をにらみつける者もいて、聴衆と原告1との間でトラブルが起きる危険性を感じた、②原告1は非常に興奮したような状態であり、聴衆に危害を加える可能性もあった、③聴衆の中から拳の状態で腕が伸びて、原告1の左上腕付近を押し、その後再び原告1の左上腕付近を押した旨のA警察官の証言であるところ、上記(1)において認定判断したとおり、A警察官の上記証言は、いずれも採用することができない。 そして、他に被告の主張する事実を認めるに足りる的確な証拠もない以上、本件行為1(1)が警職法5条の要件を充足するものということはできないのであって、この点についての被告の主張は理由がない。 (3) 小括以上のとおり、警察官らによる本件行為1(1)は、警職法4条1項及び5条の要件を充足しないのであって、かかる有形力の行使は、国家賠償法1条1項の適用上、違法といわざるを得ない。 3 争点(2)(本件行為1(2)の適法性)について(1) 上記認定のとおり、警察官らは、地点4において原告1を正面から抱き止めて制止した上、肩や腕をつかみ、地点5まで移動させるという、本件行為1(2)に及んだものである。 この点につき被告は、本件行為1(2)は警職法5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であったと主張する。 (2) そこで検討するに、上記認定のとおり、原告1は、北5条手稲通の横断歩道を南に向かって渡り、南側の歩道の直前で、安倍総裁のいる演説車両に向- 27 -か 法な職務執行であったと主張する。 (2) そこで検討するに、上記認定のとおり、原告1は、北5条手稲通の横断歩道を南に向かって渡り、南側の歩道の直前で、安倍総裁のいる演説車両に向- 27 -かって突然走り出したものである。原告1のかかる行為は、単に歩道上で立ち止まって声を上げるなどといったこれまでの行為とは異なり、演説車両に接近するという物理的な動作を伴い、なおかつこれに向かって突進するというものであって、これを現認した警察官らにおいて、原告1が演説車両の周囲にいる関係者に体当たりやその他の暴行をしたり、演説車両上の安倍総裁その他の関係者に物を投てきしたりするおそれを抱いたとしても、特段不自然、不合理というものではない。 実際に、当時の動画(甲5)によれば、警察官らは、本件行為1(2)の際、原告1に対して「走ったら危ないから」、「危ないよ」、「どうして走ったの」などと声掛けをしていたのであって(原告1本人〔11頁〕も同旨)、これらの声掛けは、上記のようなおそれを抱いていたことと符合する。 そして、原告1自身も、「街宣車のほうに近づいてやじを飛ばすため」に横断歩道を渡り(原告1本人〔8頁〕)、「街宣車にというか、安倍さんの方向に近いところで、声を届けるために近づこうと思って」いたとして(同〔9頁〕)、演説車両に近づこうとしていたことを自認している。しかも、原告1は、札幌地方検察庁において、「状況を知らない人が選挙カーの方に走って近づく私を見れば、私のことを不審者だと思うのではないかと思いました」とも述べていたところである(乙128〔別添3頁〕、原告1本人〔36頁〕)。 加えて、警察官らによる有形力の行使も、原告1を地点4から地点5まで移動させ、もって演説車両から離れさせるというものにとどまっている。 (3) 以上によれば、本件 頁〕、原告1本人〔36頁〕)。 加えて、警察官らによる有形力の行使も、原告1を地点4から地点5まで移動させ、もって演説車両から離れさせるというものにとどまっている。 (3) 以上によれば、本件行為1(2)は、警察官らにおいて、「犯罪がまさに行われようとする」のを認め、その行為により「人の生命若しくは身体」に危険が及ぶおそれがあって、「急を要する」場合において、必要な限度で有形力を行使したものというべきである。 したがって、本件行為1(2)は、警職法5条の要件を充足するものであり、- 28 -適法な職務執行であったということができる。 4 争点(3)(本件行為1(3)の適法性)について上記認定のとおり、警察官らは、原告1の肩や腕をつかむなどして、地点6から地点7まで移動させるという、本件行為1(3)に及んだものである。 この点につき被告は、本件行為1(3)は警職法5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であったと主張する。 そこで、以下、この被告の主張の当否について検討する。 (1) 被告は、原告1が演説車両から約3mの位置で「安倍辞めろ」、「ばか野郎」などと罵声を上げ、安倍総裁に向かって右手を突き出して指さしたことなどから、警察官らは、原告1が物を投げたり、演説車両に上って直接危害を加えたりするなどの犯罪行為に至る危険性が極めて高いものと認めた旨主張する。 そして、現場に臨場していた警察官のB(以下「B警察官」という。)は、証人尋問において、①原告1が「安倍辞めろ」、「ばか野郎」などと声を上げただけでは、警職法5条の要件は満たしていなかった、②その後、原告1が安倍総裁に向かって突き出していた右手を一旦下ろした時点、ないし、その右手を再び上げようとした時点で危険性を感じ、警職法5条の要件が満たされたと証言している は満たしていなかった、②その後、原告1が安倍総裁に向かって突き出していた右手を一旦下ろした時点、ないし、その右手を再び上げようとした時点で危険性を感じ、警職法5条の要件が満たされたと証言している(証人B〔16ないし18頁〕)。 (2) しかし、上記認定のとおり、警察官らは原告1を地点7まで移動させた後、原告1に対し、「演説してるから、それ邪魔しちゃだめだよ。」、「選挙の自由妨害する。」などと発言していたものである(上記1(3)カ)。 これらの発言からは、警察官らは、原告1が物を投げたり、直接危害を加えたりする危険性を感じたために原告1を地点7まで移動させたのではなく、単に、原告1の発言が演説の「邪魔」になり、「選挙の自由」を「妨害する」ものであると考えたために、街頭演説の現場から排除しようと移動させたのではないかと疑わざるを得ない。 - 29 -したがって、この点で既に、被告の上記主張は疑問なしとし得ない。 (3) そして、B警察官の上記証言についても、B警察官がなにゆえ原告1が右手を一旦下ろした時点、ないし、その右手を再び上げようとした時点で危険性を感じたというのか、その証言をみても必ずしも判然としない。 すなわち、B警察官は、原告1が「ポケットやバッグなどから投てき物を取り出し、安倍前総理に向かって投げつけたり、更には、刃物やナイフなどの凶器を取り出す危険性というものを認めました。」と証言しているものの(証人B〔4、5頁〕。同〔19、29頁〕も同旨)、原告1はポケットに手を入れたり、バッグに手を伸ばしたりなどしておらず(被告も明らかに争わない。)、単に右手を一旦下ろし、それから上げようとしていたにすぎないし、B警察官自身、この点について「〔原告1は〕凶器を取り出すかのような、そう見えるような行動はしていませんね。」と問わ かに争わない。)、単に右手を一旦下ろし、それから上げようとしていたにすぎないし、B警察官自身、この点について「〔原告1は〕凶器を取り出すかのような、そう見えるような行動はしていませんね。」と問われても、「取り出す可能性、投げる可能性というものも含めて、その危害を遠ざけるために移動させました。」という曖昧な証言にとどまっている(同〔21頁〕)。 しかも、B警察官は、上記のとおり「〔右手で〕凶器を取り出す危険性というものを認めました。」と証言しておきながら、その場で即座に原告1の右手を確認したのかを問われると、「確認するいとまはありませんでした。」としてこれを否定しているし(同〔19頁〕)、上記動画からも確認していたようにはうかがわれない。なお、B警察官は後に、「確認はしています。」と証言を翻しているが(同〔20頁〕)、証言を翻した合理的な理由は見当たらない。 結局のところ、B警察官その他の警察官らは、原告1がポケットやバッグなどから投てき物を取り出し、これを投げつけたりする危険性を感じたために原告1を地点7まで移動させたのではなく、やはり、単に原告1が安倍総裁の演説車両の近くで「安倍辞めろ」などと声を上げたために移動させたのではないかと疑わざるを得ないのであって、B警察官の上記証言はにわかに- 30 -採用することができない。 (4) なお、上記3で認定判断したとおり、原告1は、JR札幌駅前において、安倍総裁のいる演説車両に向かって突然走り出していたものであるが、B警察官はこの事実を知らないまま本件行為1(3)に及んだのであって(被告第4準備書面〔26頁〕。「警察官H」とあるのがB警察官である。)、B警察官による本件行為1(3)の当否を判断するに当たり、上記事実を考慮することはできない。 (5) 以上の点に加え、原告1は、 第4準備書面〔26頁〕。「警察官H」とあるのがB警察官である。)、B警察官による本件行為1(3)の当否を判断するに当たり、上記事実を考慮することはできない。 (5) 以上の点に加え、原告1は、飽くまでも通行が許されている歩道上で声を上げたにすぎず、そこから演説車両周辺の立入制限区域(別紙4)に侵入したというわけでもないことなどを併せ考慮すると、本件行為1(3)が警職法5条の要件を充足するとの被告の上記主張は採用することができない。 したがって、本件行為1(3)における有形力の行使は、国家賠償法1条1項の適用上、違法といわざるを得ない。 5 争点(4)(本件行為2(1)の適法性)について上記認定のとおり、警察官らは、原告2を取り囲み、その肩や腕をつかむなどして、原告2を地点①から地点②を経て地点③まで移動させるという、本件行為2(1)に及んだものである。 この点につき被告は、本件行為2(1)は警職法4条1項及び5条の要件を充足するものであり、適法な職務執行であったと主張する。 そこで、以下、この被告の主張の当否について順次検討する。 (1) 警職法4条1項の要件充足性についてア被告は、本件においては暴行、傷害等の犯罪が発生する危険が切迫していたと主張する。そして被告は、その根拠として、原告2の罵声によって周囲の聴衆は騒然となり、もめ事になるのは必至であったこと、しかるに原告2は、警察官の警告も無視して興奮状態で絶叫し続け、聴衆に向かって前進したことなどを主張する。 - 31 -そして、現場に臨場していた警察官のC(以下「C警察官」という。)は、証人尋問において、①原告2が「増税反対」などと声を上げたことにより、周囲の聴衆が原告2から離れたり、原告2をにらみつけたりしていた、②そこで原告2に「どうしたの」、「落ち着い 察官」という。)は、証人尋問において、①原告2が「増税反対」などと声を上げたことにより、周囲の聴衆が原告2から離れたり、原告2をにらみつけたりしていた、②そこで原告2に「どうしたの」、「落ち着いて」と声を掛けたところ、原告2はこれを無視し、全身を震わせながら聴衆に向かって前進したと証言する(証人C〔2頁〕)。 イしかし、上記認定のとおり、警察官らは後に、原告2から「あそこで急にさ、取り押さえられて」などと言われた際、直ちに「だっていきなり声上げたじゃーん。」、「急に大声上げたじゃん。」と発言し、もって原告2が声を上げたために原告2をつかんで移動させたと述べていたものである。 しかも、警察官らは、「法律に引っかかってるとかじゃなくて、みんなの……」、「みんな聞きたい人がいるからさ。聞きたい人にとって、大声出されたら聞きたいこと聞けなくなっちゃうっしょ、ね。」などと発言し、もって、原告2の行為は法律に抵触するものではなく、ただ原告2の大声により周囲の聴衆が演説を聞けないことになるとして、その行為を正当化していたものである(上記1(4)ウ)。 これらの発言からは、警察官らは、暴行、傷害等の犯罪が発生する危険を認めて原告2の肩や腕をつかんで移動させたのではなく、単に、原告2が街頭演説に際して大声を上げ、もって聴衆が「聞きたいこと聞けなくなっちゃう」ために、原告2を街頭演説の現場から排除したにすぎないのではないかと疑わざるを得ない。 したがって、この点で既に、被告の上記主張は疑問なしとし得ない。 ウそして、C警察官の証言をみても、そもそも同人自身も、被告が主張するような、「周囲の聴衆が騒然と」なっていたなどとは証言していないし、同人作成の報告書(乙54)や陳述書(乙144)にもそのような記載はない。 - 32 -念のため、当 人自身も、被告が主張するような、「周囲の聴衆が騒然と」なっていたなどとは証言していないし、同人作成の報告書(乙54)や陳述書(乙144)にもそのような記載はない。 - 32 -念のため、当時の動画(甲32)を見ても、原告2が声を上げた時点においては、聴衆の多くは単に演説に耳を傾けていたようにうかがわれるのであって、騒然とした状況にあるようには特段うかがわれない。 なお、C警察官の証言には、「〔聴衆から〕何らかの声が上がっていたと思うんですけれども」とする部分があるが、これも結局、「はっきりと周りからそのような怒号のようなものが、何かはっきりした声が上がっていたかは、記憶にありませんけれども、何か声が上がっていたと記憶しております。」という、曖昧な証言で終わっている(証人C〔20頁〕)。 したがって、この点においても、被告の上記主張には疑問を差し挟まざるを得ない。 エまた、C警察官の上記①の証言についても、そもそも周囲の聴衆が原告2から離れることにより、なにゆえ「危険な事態」(警職法4条1項)があるといえるのか、必ずしも判然としない。そして、この点を措くとしても、上記動画を見る限りは、周囲の聴衆が原告2から離れたり、原告2をにらみつけたりしている様子は特段うかがわれない。 なお、この点につき被告は、マスクをした男性が原告2をにらみつけていたと主張するが(乙111)、単に原告2の方を見ているようにしかうかがわれない上、そもそもこれは原告2が警察官らによって取り囲まれた後の時点のものであって、C警察官の上記証言を裏付けるものとはならない。 オさらに、C警察官の上記②の証言についても、上記動画には「どうしたの」、「落ち着いて」などといった声は録音されていない。なお、上記動画では、原告2の「増税反対」などの発言は極めて明瞭に い。 オさらに、C警察官の上記②の証言についても、上記動画には「どうしたの」、「落ち着いて」などといった声は録音されていない。なお、上記動画では、原告2の「増税反対」などの発言は極めて明瞭に録音されているのであって、録音状況に問題があったようにはうかがわれない。 そして、原告2が聴衆に向かって前進したとの点についても、当時の動画(甲32)ではそのような原告2の様子はうかがわれず、むしろ、原告- 33 -2が最初に撮影された26秒時点から29秒時点までの間、原告2は前進していない。そして、その間の28秒時点において、臨場した警察官(C警察官)が原告2の右手首付近をつかみ、後方へ移動させようとしていたものであって、このような本件行為2(1)の着手よりも前に、原告2が前進していたようにはうかがわれない。 なお、上記動画の37秒時点以降においては、原告2が前進しようとしているところが撮影されているが、これは既に本件行為2(1)の着手後であるし、しかも、原告2によれば、強制的に後方移動させられていたため、これに抵抗していたにすぎないというのである。 カ以上によれば、C警察官の証言内容は、にわかに採用することができない。 そもそも、もしC警察官及びその他の警察官らにおいて、周囲の聴衆が原告2に危害を加えるおそれを感じ、もって警職法4条1項の要件が充足されていると判断したのであれば、端的にそのような聴衆に警告したり、聴衆と原告2との間に割って入ったりするだけで足りるようにうかがわれる。しかるに警察官らは、そのようなことをせず、むしろ被害者であるはずの原告2の肩や腕をつかみ、そのまま強制的に移動させたのであって、原告2と聴衆との間の具体的なトラブルの有無を確認したりもしていない。 のみならず、本件行為2(1)においては、原告1の本件 であるはずの原告2の肩や腕をつかみ、そのまま強制的に移動させたのであって、原告2と聴衆との間の具体的なトラブルの有無を確認したりもしていない。 のみならず、本件行為2(1)においては、原告1の本件行為1(1)の場合とは異なり、原告2が聴衆から拳で押されたなどといった主張すらしていない。 結局のところ、動画(甲32)を見る限りは、聴衆の大多数が演説に耳を傾けていたところ、原告2が1人で「増税反対」などと声を上げ始めたというにすぎず、聴衆の中には原告2の方を向く者もいたものの、特段騒然とした状況にあったようにもうかがわれない。しかるに、警察官らはそこからわずか数秒程度で動き出し、10秒程度で原告2の右手首付近をつ- 34 -かんで移動させようとしたのであって、原告2の「生命若しくは身体」に危険を及ぼすおそれのある「危険な事態」があり、「特に急を要する」場合にあったようには、およそうかがわれないところである。 キしたがって、他に被告の主張する事実を認めるに足りる的確な証拠もない以上、本件行為2(1)が警職法4条1項の要件を充足するものということはできないのであって、この点についての被告の主張は理由がない。 (2) 警職法5条の要件充足性について被告は、原告2が聴衆に対して暴行、傷害等の犯罪に及ぶ可能性が認められたなどとして、警察官らの措置は警職法5条の要件を充足するものであったと主張する。 しかし、被告がその主張の根拠とするのは、①原告2が「増税反対」などと声を上げたことにより、周囲の聴衆が原告2から離れたり、原告2をにらみつけたりしていた、②そこで原告2に「どうしたの」、「落ち着いて」と声を掛けたところ、原告2はこれを無視し、全身を震わせながら聴衆に向かって前進したとのC警察官の証言であるところ、上記(1)において認定判断 していた、②そこで原告2に「どうしたの」、「落ち着いて」と声を掛けたところ、原告2はこれを無視し、全身を震わせながら聴衆に向かって前進したとのC警察官の証言であるところ、上記(1)において認定判断したとおり、C警察官の上記証言は、いずれも採用することができない。しかも、C警察官自身、証人尋問において、「〔本件行為2(1)の直後に〕何か物を投げるとか、そういった危険性というのは感じましたか。」と問われたのに対し、「現場の状況から見て、何か危険な状況に及ぶ、危険な行為に及ぶ可能性はあるというふうには感じておりました。」(証人C〔26頁〕)、「何かはっきり物を投げるというような具体的な事例に関しては、私はお答えできませんけれども、何か危険な行為に及ぶ可能性はあるというふうには感じておりました。」(同〔27頁〕)などという曖昧な証言に終始しているのであって、C警察官の証言を前提にしたとしても、何か具体的な危険性があったようにはうかがわれない。 そして、他に被告の主張する事実を認めるに足りる的確な証拠もない以上、- 35 -本件行為2(1)が警職法5条の要件を充足するものということはできないのであって、この点についての被告の主張は理由がない。 (3) 小括以上のとおり、警察官らによる本件行為2(1)は、警職法4条1項及び5条の要件を充足しないのであって、かかる有形力の行使は、国家賠償法1条1項の適用上、違法といわざるを得ない。 6 争点(5)(本件行為2(2)の適法性)について上記認定のとおり、警察官らは、①原告2の両側からその両腕に手を回すなどした上、原告2が広場の南側の「聴衆エリア」(別紙6)には行かないように、原告2を引き留めて制止し(制止行為)、また、②原告2がTSUTAYA札幌駅西口店まで徒歩で移動したところ、警察官ら 回すなどした上、原告2が広場の南側の「聴衆エリア」(別紙6)には行かないように、原告2を引き留めて制止し(制止行為)、また、②原告2がTSUTAYA札幌駅西口店まで徒歩で移動したところ、警察官らは少なくとも同店の入口付近まで追従し、もって原告2に付きまとう(追従行為)という、本件行為2(2)に及んだものである。 この点につき被告は、上記①の制止行為は警職法4条1項及び5条の要件を充足するものであり、上記②の追従行為は警察法2条所定の警察の責務を達成するため適法に行われた職務行為であったと主張する。 そこで、以下、この被告の主張の当否について順次検討する。 (1) 制止行為の適法性について(警職法4条1項及び5条)被告は、警察官らは、本件行為2(1)においては、原告2の安全を確保するために原告2を避難させ(警職法4条1項)、また原告2による犯罪行為を制止するために移動させたのであるから(同法5条)、原告2がその現場に戻れば再び危険な事態が発生すると判断したのは当然であるとして、本件行為2(2)のうち制止行為についても警職法4条1項及び5条の要件を充足すると主張する。 しかし、上記5において認定判断したとおり、警察官らによる本件行為2(1)は警職法4条1項及び5条の要件を充足しないのであるから、被告の上- 36 -記主張は、その前提を欠くものというべきである。 したがって、警察官らによる本件行為2(2)のうち制止行為についても、警職法4条1項及び5条の要件を充足しないのであって、かかる有形力の行使は、国家賠償法1条1項の適用上、違法といわざるを得ない。 (2) 追従行為の適法性について(警察法2条)ア警察法2条1項は、「個人の生命、身体及び財産の保護」を警察の責務として定めている。 この規定に照らすと、当該責務の遂行 といわざるを得ない。 (2) 追従行為の適法性について(警察法2条)ア警察法2条1項は、「個人の生命、身体及び財産の保護」を警察の責務として定めている。 この規定に照らすと、当該責務の遂行に必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利・自由の干渉にわたるおそれのある事項に関わる場合には、任意手段によるからといって無制限に許されるものではなく、必要かつ相当な手段と評価される範囲でのみ適法と認められる(最高裁昭和55年9月22日第三小法廷決定・刑集34巻5号272頁参照)。 イ本件において被告は、①原告2は、他の街頭演説の場所でも再び危険な行動に出て、聴衆との間でもめ事を起こし、暴行等の犯罪に及ぶ可能性があった、②原告2は、安倍総裁への接近を示唆する一方で、その理由を答えなかったため、安倍総裁へ危害を加えるために接近を企図する可能性も認められたと主張する。 その上で被告は、警察官らの追従行為は、原告2を説得するために必要かつ相当な程度で行われたものであるから、警職法2条の責務を達成するために適法に行われた職務行為であったと主張する。 ウしかし、上記5(2)において認定判断したところに照らせば、原告2において暴行等の犯罪に及ぶ可能性(上記①)があったとはいえないのであって、被告の主張は、そもそもその前提を欠くものといわざるを得ない。 そして、念のため、上記②の主張についてみても、原告2を追従していたC警察官は、原告2が「安倍元総理への接近を企図して」いた旨証言す- 37 -るものの(証人C〔6頁〕)、その証言全体をみても、なにゆえそのように企図していたと考えたのか、判然としない。なお、C警察官の証言の中には、原告2が「総理に直接言いたいんだ」と発言してい 37 -るものの(証人C〔6頁〕)、その証言全体をみても、なにゆえそのように企図していたと考えたのか、判然としない。なお、C警察官の証言の中には、原告2が「総理に直接言いたいんだ」と発言していたとする部分があるが(同〔4頁〕)、原告2はこれを否認している上、仮にこのような発言があったとしても、これにより原告2が安倍総裁への接近を企図していたとみるのには、飛躍があるようにも思われるところである。 したがって、警察官らの追従行為が、原告2を説得するために必要であったとの被告の主張は、いずれにせよその前提を欠くものというほかない。 エさらに、追従行為の程度についてみても、警察官らは、札幌駅南口広場を離れた後も、なお原告2の両腕に手を回しながら追従したものであり、被告の主張によっても、別紙5の地点⑥に至るまでの間は両腕に手を回し続け、同地点に至ってようやく手を離したというのである。 そして、上記認定のとおり、原告2は警察官らに追従されている間、「声を出しただけで囲まれるのって、おかしくないですか。」などと発言し、もって追従行為に拒否的な態度を示していたところである(上記1(4)イ)。 しかも、警察官らは、原告2がJR札幌駅の西側高架下の建物(サツエキBridge)に入った後も、同建物に入って追従を続けたものである(上記1(4)イ)。 加えて、原告2は、本人尋問において、同建物2階のTSUTAYA札幌駅西口店の店内に入ったところ、警察官らは出入口の防犯ゲートを越えて付いてきたと供述しており(原告2本人〔13頁〕)、この供述内容自体に特段不自然、不合理な点も見当たらない。なお、これに対して被告は、警察官らは「出入口に設置された防犯ゲートまで至った」ところ、店内までついてくるのかと言われて「店から出て待機した」として、あたかも出入口 自然、不合理な点も見当たらない。なお、これに対して被告は、警察官らは「出入口に設置された防犯ゲートまで至った」ところ、店内までついてくるのかと言われて「店から出て待機した」として、あたかも出入口の防犯ゲートを越えてはいないかのような主張をするが(被告第3準- 38 -備書面〔16頁〕)、当該警察官らのうち1名については証人尋問を申し出たものの、後に事情によりこれを撤回しており、その余の警察官らについては申出すら行っていないのであって、被告の上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。 以上に加え、原告2を追従していた距離及び時間は、被告の主張によっても約300m、5ないし10分に及んでいたこと(被告第11準備書面)などを併せると、本件行為2(2)における警察官らの追従行為について、これが必要かつ相当な程度で行われたとの被告の主張には、疑問を差し挟まざるを得ない。 オしたがって、警察官らによる本件行為2(2)のうち追従行為についても、警察法2条所定の警察の責務を達成するため適法に行われた職務行為ということはできないのであって、国家賠償法1条1項の適用上、違法といわざるを得ない。 7 争点(6)(本件行為2(3)の適法性)について上記認定のとおり、警察官らは、TSUTAYA札幌駅西口店を出た原告2を再び追従し始め、①途中で、少なくとも原告2の腕に触れるなどの接触行為をし(接触行為)、②結局、TSUTAYA札幌大通店付近まで原告2を追従し、もって原告2に付きまとう(追従行為)という、本件行為2(3)に及んだものである。 この点につき被告は、上記①の接触行為は、職務質問に必要かつ相当な手段であって警職法2条1項により許容され、上記②の追従行為は、警察法2条所定の警察の責務を達成するため適法に行われた職務行為であると主張する。 被告は、上記①の接触行為は、職務質問に必要かつ相当な手段であって警職法2条1項により許容され、上記②の追従行為は、警察法2条所定の警察の責務を達成するため適法に行われた職務行為であると主張する。 そこで、以下、この被告の主張の当否について検討する。 (1) 追従行為の適法性について(警察法2条)事案に鑑み、まず追従行為の適法性について検討する。 ア被告は、本件行為2(3)における警察官らの追従行為は、犯罪を予防す- 39 -るという目的で、原告2を説得するために必要かつ相当な程度で行われたものであるから、警察法2条の責務を達成するために適法に行われた職務行為であったと主張する。 しかし、上記6(2)において認定判断したとおり、警察官らの追従行為が原告2を説得するために必要であったとの被告の主張は、その前提を欠くものというほかない。 イそもそも、前述したとおり、警察法2条1項の責務を達成するための警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り一般的に許容されるべきものであり、しかも、任意手段によるからといって無制限に許されるものではなく、必要かつ相当な手段と評価される範囲でのみ適法と認められるものである。 しかるに、本件行為2(3)における警察官らの追従行為は、TSUTAYA札幌駅西口店からTSUTAYA札幌大通店付近まで徒歩で移動する間、複数の警察官らでずっと追従し続けるというものであり、追従していた距離は被告の主張によっても約1.9kmという長距離に及び、追従していた時間は被告の主張によっても40ないし50分という長時間に及んでいたものである(被告第11準備書面)。 しかも、警察官らはこの間、何度も原告2の前に立ちふさがったりして(例として、甲38の2分34秒ないし7分08秒の時点や、8分20秒の時点)、そ 間に及んでいたものである(被告第11準備書面)。 しかも、警察官らはこの間、何度も原告2の前に立ちふさがったりして(例として、甲38の2分34秒ないし7分08秒の時点や、8分20秒の時点)、その移動を物理的に妨げていたものである。実際、原告2は、警察官らに対し「動きようがない。」、「自由にしたいのに。」、「私の移動の自由を侵害している。」、「私の行きたいところに行きたいよ。」などと発言し(甲38、47)、その移動の自由を妨げられることを伝え続けていたのであり、警察官ら自身、自らの追従行為が原告2の移動の自由を妨げていたことは十分理解していたものというべきである。 このような追従行為の態様等に照らせば、本件行為2(3)における警察- 40 -官らの追従行為は、もはや警察法2条1項の趣旨から認められる必要かつ相当な手段を超えていたものといわざるを得ない。 ウそもそも、警察官らは、追従行為の間、原告2に対し、①「だっていきなり声上げたじゃーん。」、「急に大声上げたじゃん。」などと発言して、原告2が大声を上げたことを指摘し、②「みんな聞きたい人がいるからさ。 聞きたい人にとって、大声出されたら聞きたいこと聞けなくなっちゃうっしょ、ね。」、「話を聞く自由を侵害してるっしょ。」などと発言して、原告2の大声により周囲の聴衆が演説を聞けないことになることを指摘し、③「だって、こっち〔大通方面〕行ったらさ、またなんか、あれやん。」、「もうそっち〔大通方面〕行かないでほしいなあ。」などと発言し、また「ジュース買ってあげる。」などと提案して、原告2を次の演説場所の札幌三越前に行かせないようにしていたものである(上記1(4)ウ)。 これらの発言からすれば、警察官らは、犯罪を予防するために原告2を追従していたのではなく、単に、原告2が街頭演説に際し 演説場所の札幌三越前に行かせないようにしていたものである(上記1(4)ウ)。 これらの発言からすれば、警察官らは、犯罪を予防するために原告2を追従していたのではなく、単に、原告2が街頭演説に際して再び声を上げ、もって「聞きたいこと聞けなくなっちゃう」状態になるのを阻止したかっただけではないかと疑わざるを得ない。 エ以上によれば、警察官らによる本件行為2(3)のうち追従行為については、警察法2条所定の警察の責務を達成するため適法に行われた職務行為ということはできないのであって、国家賠償法1条1項の適用上、明らかに違法といわざるを得ない。 (2) 接触行為の適法性について(警職法2条1項)ア上記(1)によれば、警察官らによるTSUTAYA札幌駅西口店からTSUTAYA札幌大通店付近までの追従行為については、その全体が違法となるものというべきである。 イところで、被告は、警察官らが追従に際して原告2の腕に触れた接触行為は、警職法2条1項の職務質問に必要かつ相当な手段であって、同項に- 41 -より許容されると主張する。 しかし、警察官らが原告2の腕に触れたのは、TSUTAYA札幌駅西口店からTSUTAYA札幌大通店付近までの追従行為の最中であり、しかも被告によれば一時的なものにすぎないというのであるから、被告のいう接触行為は追従行為の一部を構成するものにすぎないというべきものである。 そして、仮に、追従行為全体について違法ということができないのであれば、そのうちの一部である接触行為についてなお違法か否かを判断する必要性はあるものの、上記のとおり、追従行為全体が明らかに違法であるものと判断される以上、その一部である接触行為のみを取り出し、重ねて違法か否かを判断するというのは、もはやその必要性を欠くものといわざるを得な ものの、上記のとおり、追従行為全体が明らかに違法であるものと判断される以上、その一部である接触行為のみを取り出し、重ねて違法か否かを判断するというのは、もはやその必要性を欠くものといわざるを得ない。 したがって、被告の上記主張については、判断を要しない。 8 争点(7)(損害発生の有無及びその額)についてこれまで判断したとおり、警察官らによる、①原告1の肩や腕をつかんで地点1から地点2と地点3の中間付近まで移動させた行為(本件行為1(1))、②原告1の肩や腕をつかんで地点6から地点7まで移動させた行為(本件行為1(3))、③原告2の肩や腕などをつかんで地点①から地点③まで移動させた行為(本件行為2(1))、④原告2の両腕に手を回すなどして引き留めて制止し、また札幌駅南口広場からTSUTAYA札幌駅西口店まで追従して付きまとった行為(本件行為2(2))、⑤原告2をTSUTAYA札幌駅西口店からTSUTAYA札幌大通店付近まで追従して付きまとった行為(本件行為2(3))は、いずれも国家賠償法1条1項の適用上、違法というべきものである。 そこで、以下、これらの各行為による損害発生の有無及びその額について検討する。 (1) 表現の自由の侵害(原告1及び2)- 42 -ア主権が国民に属する民主制国家は、その構成員である国民がおよそ一切の主義主張等を表明するとともに、これらの情報を相互に受領することができ、その中から自由な意思をもって自己が正当と信ずるものを採用することにより多数意見が形成され、かかる過程を通じて国政が決定されることをその存立の基礎としている。 したがって、憲法21条1項により保障される表現の自由は、立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利であり、とりわけ公 をその存立の基礎としている。 したがって、憲法21条1項により保障される表現の自由は、立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利であり、とりわけ公共的・政治的事項に関する表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならない(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁、最高裁令和4年2月15日第三小法廷判決・裁判所時報1785号6頁参照)。 イ本件においてこれをみるに、原告らはいずれも「安倍辞めろ」、「増税反対」などと声を上げていたところ、これらは、その対象者を呼び捨てにするなど、いささか上品さに欠けるきらいはあるものの、いずれも公共的・政治的事項に関する表現行為であることは論をまたない。 しかるに、原告らは、このような表現行為を開始してわずか10秒程度で、警察官らによって肩や腕をつかまれて移動させられ(原告1及び2)、また相当程度の距離及び時間にわたって付きまとわれたものである(原告2)。そして、これまでみてきたとおり、これらの警察官らの行為が警職法4条1項、5条等の要件を充足するものではない以上、警察官らの行為は、原告らの表現行為の内容ないし態様が安倍総裁の街頭演説の場にそぐわないものと判断して、当該表現行為そのものを制限し、また制限しようとしたものと推認せざるを得ない。このことは、警察官ら自らが、原告らに対し、「演説してるから、それ邪魔しちゃだめだよ。」、「選挙の自由妨害する。」(上記1(3)カ)、「だっていきなり声上げたじゃーん。」、「急に大声上げたじゃん。」、「聞きたいこと聞けなくなっちゃうっしょ、ね。」(上記- 43 -1(4)ウ)などと発言していたことからも明らかである。 したがって、警察官らの行為は、原告らの表現の自由を制限したも じゃん。」、「聞きたいこと聞けなくなっちゃうっしょ、ね。」(上記- 43 -1(4)ウ)などと発言していたことからも明らかである。 したがって、警察官らの行為は、原告らの表現の自由を制限したものというべきである。 ウもっとも、表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けるものである。 しかし、この点につき被告は、原告らの表現行為自体が、例えば安倍総裁及びその関係者らの選挙活動をする自由を侵害しているとか、聴衆において街頭演説を聞く自由を侵害しているなどといった特段の主張はしておらず、ただ警察官らの行為が警職法4条1項、5条等の要件を充足するとの主張をしているにすぎないし、しかも、これまでみてきたとおり、かかる主張はいずれも採用することができない。 念のために検討しても、原告らの表現行為の内容及び態様は、殊更に特定の人種又は民族に属する者に対する差別の意識、憎悪等を誘発し若しくは助長するようなものや、生命、身体等に危害を加えるといった犯罪行為を扇動するようなものではなく(前掲・最高裁令和4年2月15日第三小法廷判決参照)、選挙演説自体を事実上不可能にさせるものでもないのであって(最高裁昭和23年6月29日第三小法廷判決・刑集2巻7号752頁参照)、原告らの受けた制限が、公共の福祉による合理的で必要やむを得ないものであったなどと解することは困難である。 エそして、表現の自由に関して被告が他に特段の主張をしていない以上、原告らの表現の自由は、警察官らによって侵害されたものというべきである。 (2) 移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権の侵害(原告2)ア移動・行動の自由について本件において、警察官らは、徒歩で移動していた原告2に対し、札幌駅南口広場 というべきである。 (2) 移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権の侵害(原告2)ア移動・行動の自由について本件において、警察官らは、徒歩で移動していた原告2に対し、札幌駅南口広場からTSUTAYA札幌駅西口店まで追従して付きまとい、さら- 44 -に同店からTSUTAYA札幌大通店付近まで追従して付きまとったものであって、その距離は被告の主張によっても合計約2.2km、その時間は被告の主張によっても合計40ないし60分にも及んでいたものである。 そして、その間、警察官らは、原告2の両腕に手を回したり、何度も原告2の前に立ちふさがったりしたほか、原告2に話しかけ続けていたのであって(甲38、47)、実際、原告2は警察官らに「動きようがない。」、「自由にしたいのに。」、「私の移動の自由を侵害している。」、「私の行きたいところに行きたいよ。」などと発言していたところである(上記7(1)イ)。 したがって、警察官らは、原告2の移動・行動の自由を制限していたものであり、この点につき被告が他に特段の主張をしていない以上、原告2の移動・行動の自由は、警察官らによって侵害されたものというべきである。 イ名誉権について上記のとおり、警察官らは相当程度の距離、時間にわたって原告2に付きまとい、原告2に話しかけ続けていたものである。 そして、警察官らが話しかけていた内容に加え、①警察官らが付きまとっていたのは、JR札幌駅南口付近の路上や札幌駅前通など、人通りの比較的多い場所であったこと(別紙6)、②警察官らは比較的大きくてよく通る声で原告2に話しかけ続けていたこと(甲38)、③「嫌われ者だからね、警察官」、「さっきも警察の法律の話したけれども、公共の安全とか」などと、自らが警察官である旨を明らかにしていたこと(甲38、47 声で原告2に話しかけ続けていたこと(甲38)、③「嫌われ者だからね、警察官」、「さっきも警察の法律の話したけれども、公共の安全とか」などと、自らが警察官である旨を明らかにしていたこと(甲38、47)、などを併せると、警察官らの付きまとい行為は、通行人らに対し、原告2が何らかの犯罪を犯そうとする不審者であり、警察官らに追従されて説得を受けているとの印象を与えるものであって、原告2の社会的評価を低下させるものといわざるを得ない。 - 45 -そして、この点につき被告が他に特段の主張をしていない以上、原告2の名誉権は、警察官らによって侵害されたものというべきである。 ウプライバシー権についてさらに、原告2は、警察官らにより行動を把握されることにより、プライバシー権を侵害されたと主張する。 上記のとおり、警察官らは相当程度の距離、時間にわたって原告2に付きまとい、その際、JR札幌駅の西側高架下の建物に入り、更にTSUTAYA札幌駅西口店の入口付近まで入っていくなどしたものであり(上記1(4)イ)、このような行為は、単なる公道にとどまらない領域を含めて、原告2の行動を長時間にわたり継続的に把握することとなるものであって、原告2の社会生活上の受忍限度を超えるものというべきである。 そして、この点につき被告が他に特段の主張をしていない以上、原告2のプライバシー権は、警察官らによって侵害されたものというべきである。 (3) 原告らの損害額ア慰謝料上記のとおり、原告らはいずれも表現の自由を侵害されたものであるところ、その態様は、公共的・政治的事項に関する表現行為を開始してわずか10秒程度で、警察官らによって肩や腕をつかまれて移動させられるなどという暴力的なものであり、また原告2については表現行為を理由に相当程度の距離及び時間に 政治的事項に関する表現行為を開始してわずか10秒程度で、警察官らによって肩や腕をつかまれて移動させられるなどという暴力的なものであり、また原告2については表現行為を理由に相当程度の距離及び時間にわたって付きまとわれるという理不尽なものである。そして、原告2については更に移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権を侵害されたものであって、これらに加え、他に証拠上認められる一切の事情を考慮すると、警察官らの行為によって生じた原告らの精神的苦痛に対する慰謝料としては、原告1につき30万円、原告2につき50万円を認めるのが相当である。 イ弁護士費用- 46 -弁論の全趣旨によれば、原告らはいずれも警察官らの行為による損害賠償を請求するため、本訴の提起を余儀なくされ、その追行を原告訴訟代理人弁護士らに委任したことが認められるところ、警察官らの行為と相当因果関係にある弁護士費用として、原告1につき3万円、原告2につき5万円を認めるのが相当である。 ウ小括以上によれば、原告1の損害額の合計は33万円となり、原告2の損害額の合計は55万円となる。 第5 結論よって、原告らの請求は、①原告1については33万円及びこれに対する不法行為日である令和元年7月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、②原告2については55万円及びこれに対する上記①と同旨の遅延損害金の支払を求める限度であるから、いずれもその限度で認容し、その余は理由がないからいずれも棄却し、なお仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官瀬 孝 裁判官河野文彦 裁判官佐藤克郎- からこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官瀬 孝 裁判官河野文彦 裁判官佐藤克郎- 47 -(別紙2)関係法令の定め ○警察官職務執行法(昭和23年法律第136号) (この法律の目的)第1条 (略) 2 この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない。 (質問)第2条警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。 2ないし4 (略) (避難等の措置)第4条警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認- 48 -められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。 2 (略) (犯罪の予防及び制止)第5条警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告 をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。 2 (略) (犯罪の予防及び制止)第5条警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があって、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。 ○警察法(昭和29年法律第162号) (警察の責務)第2条警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。 2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。
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