令和6年(ネ)第1154号損害賠償等請求控訴事件令和7年1月23日大阪高等裁判所第10民事部判決 主文 1 原判決中、110万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求に関する部分を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人は、控訴人に対し、88万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 控訴人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、第1審、差戻し前の控訴審、上告審及び差戻し後の控訴審を通じて、これを25分し、その6を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 3 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中、110万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求に関する部分を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、110万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下、略称は、原判決の表記に従う。) 1 公の施設(地方自治法244条)である滋賀県立長寿社会福祉センター(本件事業場)の一部である滋賀県福祉用具センター(本件福祉用具センター)においては、福祉用具についてその展示及び普及、利用者からの相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等の業務を行うものとされており、本件福祉用具センターが開設されてから平成15年3月までは財団法人滋賀県レイカディア振興財団(レイカディア)が、同年4月以降はレイカディアの権利義務を承継した被控訴人が、指定管理者(同法244条の2第3項)等として上記業務 設されてから平成15年3月までは財団法人滋賀県レイカディア振興財団(レイカディア)が、同年4月以降はレイカディアの権利義務を承継した被控訴人が、指定管理者(同法244条の2第3項)等として上記業務を行って いた。 控訴人は、平成13年4月、本件福祉用具センターにおける上記の改造及び製作並びに技術の開発(以下「本件業務」という。)に係る技術職としてレイカディアに雇用されて以降、上記技術職として勤務していた。また、控訴人と被控訴人との間には、控訴人の職種及び業務内容を上記技術職に限定する旨の合意(本件合意)があった。 被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得ることなく、平成31年4月1日付けで総務課施設管理担当への配置転換を命じた(本件配転命令)。また、被控訴人は、新たな人事評価制度に基づく人事評価において、控訴人を5段階評価のうち最低ランクに位置付け、控訴人の基本給を月額3000円減額するという不利益変更を行った(本件不利益変更)。 本件は、控訴人が、被控訴人に対し、①安全性に重大な問題のある福祉用具(障害児向け入浴介助用具)について安全面を確保するため寸法の一部変更を行うよう提案したものの採用されず、従前の寸法で製作するよう求められたがこれを拒否したところ、被控訴人から業務命令拒否等を理由に訓戒書の交付を受けたこと等により、控訴人は精神疾患を発病して休職に至ったとして、労働契約上の安全配慮義務違反による損害賠償請求権に基づき、通院慰謝料184万円、弁護士費用18万4000円の合計202万4000円及びこれに対する平成22年6月23日(上記精神疾患の診断日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの、以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②平成25年2月1日に復職した後も、上司の控 月23日(上記精神疾患の診断日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの、以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②平成25年2月1日に復職した後も、上司の控訴人に対する言動がパワーハラスメントに該当するとして内部相談窓口に通報したにもかかわらず、被控訴人は、詳細な検討を行うことなく、パワーハラスメントに該当しないとの回答を繰り返すほか、本件配転命令を強行し、本件不利益変更を行ったことにより、控訴人は精神疾患を再発し、再び休職に至ったとして、労働契約上の安全配慮義務違反又は不法行為による損害賠償請求権に 基づき(選択的併合)、通院慰謝料52万円、弁護士費用5万2000円の合計57万2000円(一部請求)及びこれに対する令和元年8月21日(上記再発した精神疾患の診断日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、③本件配転命令は、当事者間の本件合意に反するなどとして、債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき(選択的併合)、慰謝料100万円、弁護士費用10万円の合計110万円及びこれに対する平成31年4月1日(本件配転命令に基づく異動日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(以下「本件損害賠償請求」という。)をそれぞれ求めるとともに、④本件不利益変更は、被控訴人による人事権の濫用に当たり、違法、無効であって、控訴人の賃金は、令和元年6月度支給分が9000円、同年7月度支給分が3000円の未払になるとして、労働契約による賃金請求権に基づき、上記未払賃金合計1万2000円及びうち9000円に対する令和元年6月22日(同年6月度賃金支給日の翌日)から、3000円に対する同年7月22日(同年7月度賃金支給日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年 賃金合計1万2000円及びうち9000円に対する令和元年6月22日(同年6月度賃金支給日の翌日)から、3000円に対する同年7月22日(同年7月度賃金支給日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 原審(第1審)は、控訴人の請求のうち上記④の請求を認容し、その余の請求をいずれも棄却する旨の判決をしたところ、控訴人及び被控訴人が、原判決中、各敗訴部分を不服としてそれぞれ控訴した。 差戻し前の控訴審は、控訴人及び被控訴人の各控訴をいずれも棄却する旨の判決をしたところ、控訴人が、差戻し前の控訴審判決中、本件損害賠償請求に関する部分を不服として上告受理の申立てをした。 最高裁判所は、上告審として事件を受理した上で、労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解されるところ、控訴人と被控訴人との間には、控訴人の職種及び業務内容を本件業務に係る技術職に限定する旨の本件合意が あったというのであるから、被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得ることなく総務課施設管理担当への配置転換を命ずる権限を有していなかったものというほかなく、そうすると、被控訴人が控訴人に対してその同意を得ることなくした本件配転命令につき、被控訴人が本件配転命令をする権限を有していたことを前提として、その濫用に当たらないとした差戻し前の控訴審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、差戻し前の控訴審判決のうち、本件損害賠償請求に関する部分を破棄し、本件配転命令について不法行為を構成すると認めるに足りる事情の有無や、被控訴人が控訴人の配置転換に が明らかな法令の違反があるとし、差戻し前の控訴審判決のうち、本件損害賠償請求に関する部分を破棄し、本件配転命令について不法行為を構成すると認めるに足りる事情の有無や、被控訴人が控訴人の配置転換に関し控訴人に対して負う雇用契約上の債務の内容及びその不履行の有無等について更に審理を尽くさせるため、本件を当審に差し戻す旨の判決をした。 したがって、当審(差戻し後の控訴審)における審判の対象は、本件損害賠償請求の当否である。 3 前提事実次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決4頁2行目の「労働契約」の次に「(以下「本件労働契約」という。)」を加え、5行目の「にて勤務し」から7行目末尾までを「において福祉用具の改造及び製作並びに技術の開発(本件業務)に係る技術職として勤務し、平成31年3月末まで、上記技術職(主任技師)として勤務していた。」と改める。 (2) 原判決4頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「ウ本件事業場は、高齢者や身体障害者に適合した福祉用具の普及を目的とする施設であり、施設内に展示室や福祉用具の改造・製作サービスを提供する工作室を備えている。(甲34、83)」(3) 原判決4頁11行目の「財団法人レイカディア振興財団」を「財団法人滋賀県レイカディア振興財団」と改め、18行目の「受け続けてきた(甲34)。」 の次に「本件福祉用具センターの指定管理者の管理業務内容は、福祉用具の展示及び普及、福祉用具に係る利用者からの相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等である。また、被控訴人は、滋賀県との間で、平成30年3月7日、滋賀県立長寿社会福祉センターの設置および管理に関する条例(甲75、以下「本件条例」という の相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等である。また、被控訴人は、滋賀県との間で、平成30年3月7日、滋賀県立長寿社会福祉センターの設置および管理に関する条例(甲75、以下「本件条例」という。)に基づき、本件事業場の福祉用具に係る業務につき、管理運営に関する基本協定(甲64、以下「本件基本協定」という。)を締結している。本件基本協定には、滋賀県は、本件条例に基づき、被控訴人に対し、福祉用具に係る利用者の相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発に関する業務等の管理業務を行わせる旨の規定があり(第3条(2))、被控訴人は、上記管理業務に関し、利用者からの相談を受け、福祉用具の改造及び製作に関わる技術者を必ず配置することが求められている(本件基本協定別紙1の6(3))。」を加える。 (4) 原判決5頁21行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「エなお、本件就業規則10条によれば、被控訴人は、業務の都合により、職員の就業する場所、若しくは従事する業務を変更し、関係団体等に出向を命ずることがあり(同条2項)、異動を命じられた職員は、正当な理由なくしてこれを拒むことはできないとされている(同条4項)。」(5) 原判決6頁8行目から9行目にかけての「センチメートル」を「ミリメートル」と、8頁10行目から11行目にかけての「異議申立」を「異議申立て」とそれぞれ改める。 (6) 原判決12頁10行目から11行目にかけての「滋賀県立長寿社会福祉センターの設置および管理に関する条例(甲75)」を「本件条例」と改める。 (7) 原判決14頁20行目の「同月」を「同年8月」と改める。 4 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件配転命令は違法か次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案 の概要」の2 「同月」を「同年8月」と改める。 4 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件配転命令は違法か次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案 の概要」の2(1)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決15頁8行目の「したがって」から9行目末尾までを「そうすると、まず、本件労働契約には職種限定合意が存在するから、被控訴人には、職種限定合意に従って、控訴人の意に反して職種変更を伴う本件配転命令自体を行うべきでない労働契約上の義務があり、被控訴人が、その義務に違背した点で違法である。したがって、本件配転命令は、その事実のみで不法行為を構成する違法性が認められる。」と改める。 イ原判決15頁10行目冒頭から16頁末行末尾までを次のとおり改める。 「イ加えて、本件配転命令は、技術職の職種廃止を伴うものであるところ、職種廃止を理由とする解雇は、労働者側に生じた何らかの落ち度が解雇理由とされるものではなく、専ら使用者側の事情を理由とするものであるから、整理解雇法理が適用されることになる。そうすると、職種限定合意のある労働者に対し、職種廃止を理由に配置転換又は解雇を行おうとする場合、まず、職種廃止自体の必要性・合理性があり(①人員削減の必要性)、職種廃止自体の必要性・合理性を真摯に労働者に説明し、当該労働者の従前のキャリアを踏まえた異動先の希望を聞いた上で、職種変更を伴う配置転換の同意を求め(②解雇回避努力及び④説明義務)、それらを尽くした結果、当該労働者が配置転換に同意すれば、それで問題は解決するが、それらを尽くしても当該労働者が同意しないときには、職種廃止自体の必要性・合理性があり、当該労働者がその職種に限定された労働者である以上、③解雇対象選定基準の合理性も満たされ、解雇できると するが、それらを尽くしても当該労働者が同意しないときには、職種廃止自体の必要性・合理性があり、当該労働者がその職種に限定された労働者である以上、③解雇対象選定基準の合理性も満たされ、解雇できるというのが論理的帰結である。 本件においては、被控訴人において技術職の職種廃止の必要性・合理性は認められず、被控訴人は、控訴人に対し、職種変更を伴う配転命令への同意を求める努力の履行もせず、また、説明義務の履行もしていないのであるから、本件配転命令は違法・無効であり、その違法性が極め て重大である。 後記のとおり、被控訴人は、平成30年10月26日及び平成31年3月12日の控訴人との面談で、被控訴人では改造製作業務を行わないことを前提に、控訴人に意見を求めたと主張するが、上記面談において、被控訴人が、控訴人に対して、改造製作業務を廃止することを説明して意見を求めたことはない(甲106から108まで)。 ウ以上によれば、被控訴人は、控訴人に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。」ウ原判決17頁9行目冒頭から18頁6行目末尾までを次のとおり改める。 「イ被控訴人においては、既存の福祉用具を改造する需要が激減しており、年間数件の改造製作業務のため、高給(月収約35万円)の控訴人を専属として配置することに経営上の合理性もない。 また、被控訴人は、令和元年度以降、福祉用具に関して知識・経験を有する職員2名を兼務で配置しており、本件条例等に違反していないし、被控訴人に専任の技術者を配置しない事業計画の変更については、事後的ではあるものの滋賀県から承認を得ており、滋賀県は、行政指導としても技術者の専任配置を被控訴人に求めていない。 本件配転命令当時、総務担当者が病気で急遽退職したため、総務課が欠員状態となったので総務担 るものの滋賀県から承認を得ており、滋賀県は、行政指導としても技術者の専任配置を被控訴人に求めていない。 本件配転命令当時、総務担当者が病気で急遽退職したため、総務課が欠員状態となったので総務担当者を補填する必要が生じた。被控訴人は、平成30年10月26日及び平成31年3月12日にそれぞれ控訴人の面談を実施しており、その際、被控訴人における改造製作業務を行わないことを前提として控訴人に意見を求めたところ、控訴人は、改造製作業務の廃止についてもバスチェアの話に終始しており、職種の廃止については、控訴人の同意が見込めなかったので平成31年3月の年度末に改造製作業務を廃止して、控訴人を総務課へ異動させた(本件配転命令)。 本件配転命令は、改造製作業務の廃止と総務課の欠員に伴う配置転換で あるから、不当な動機や目的はない。 控訴人は、総務課では、来館者の対応や館内の鍵の開閉という仕事を行っていたが、本件配転命令前にも行っていた業務であるし、館内情報の書き換えや館内の電気消費の報告が新しく覚えるのに苦労した仕事であるというが、いずれも簡易な作業であって負荷はなく、特別な技能の習得など新しい対応に多大な労力を要する業務でもないため、甘受すべき程度を超える不利益ではない。控訴人には慰謝料によって填補しなければならないほどの精神的苦痛が生じたとはいえない。 ウ本件において、黙示の職種限定合意が認められ、被控訴人が控訴人に対して総務課への配置転換を命ずる権限がなかったとしても、本件配転命令は控訴人が通常甘受すべき程度を超える不利益を負わせるものではなく、控訴人には慰謝料によって填補しなければならない精神的苦痛が生じたとまではいえない。 したがって、本件配転命令により控訴人の慰謝料請求権は発生しないか、仮に慰謝料が認められる場合でも ではなく、控訴人には慰謝料によって填補しなければならない精神的苦痛が生じたとまではいえない。 したがって、本件配転命令により控訴人の慰謝料請求権は発生しないか、仮に慰謝料が認められる場合でも、その額は一般的な慰謝料額よりも低額にとどまる。」(2) 控訴人が被った損害及びその額(控訴人の主張)ア慰謝料本件配転命令の違法性は極めて重大であり、これにより、控訴人には、少なくとも、慰謝料として金銭に見積もっても、100万円以上の精神的損害が生じている。 イ弁護士費用上記慰謝料を請求するためには、少なくともその1割である10万円の弁護士費用相当の損害が生じている。 (被控訴人の主張) 否認又は争う。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、控訴人の本件損害賠償請求は88万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がないと判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 認定事実次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1(1)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決36頁14行目の「36、」の次に「37、38、」を、同行の「56、」の次に「57、85、106ないし108、」を、同行の「13、」の次に「14、」をそれぞれ加える。 (2) 原判決37頁4行目の「技術者」を「技術職」と、7行目の「技術者」を「技術職(主任技師)」とそれぞれ改める。 (3) 原判決37頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「平成30年度事務分掌によれば、本件福祉用具センターにおける控訴人を主任とする分掌事務は、福祉用具センター見学者の受け入れに関すること、福祉用具等の 頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「平成30年度事務分掌によれば、本件福祉用具センターにおける控訴人を主任とする分掌事務は、福祉用具センター見学者の受け入れに関すること、福祉用具等の評価に関すること、福祉用具の改造・製作に関すること、福祉用具等の技術開発に関すること、自助具製作グループとの連携及び技術指導に関すること、自助具製作グループ等ボランティア活動の支援に関すること、福祉用具改造・製作業務に関わる安全衛生に関すること、工具・機械・改造製作材料の管理に関することであった。」(4) 原判決38頁6行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「控訴人は、平成31年1月21日、被控訴人の内部相談窓口であるMに対し、L課長の上記発言は、控訴人の業務を否定することであり、精神的苦痛を与えられ、パワーハラスメントに該当すると通報した。被控訴人は、同月 28日付けで控訴人が訴えた内容はパワーハラスメントに該当しないと認定したと回答した。これに対し、控訴人は、同日、異議を申し立てたが、被控訴人は、同年2月8日付けでその異議を認めないと判断した旨伝えた。」(5) 原判決38頁12行目の「原告は」を次のとおり改める。 「被控訴人は、平成30年10月26日及び平成31年3月12日、控訴人の職員自己申告面談を実施した(以下「本件面談」という。)。本件面談は、職員が提出した職員自己申告書を踏まえ、その内容や職員からの要望などについて意見交換を行うものである。控訴人は、職員自己申告書の「異動についての希望」欄の「今の仕事を続けたい」に丸印を付けて本件面談を受けた。 その際、被控訴人側のK事務局長及びN事務局次長は、控訴人に対し、本件業務に係る技術職を廃止する旨の説明もしておらず、上記技術職以外の職種へ変更することの同意を得るための働 付けて本件面談を受けた。 その際、被控訴人側のK事務局長及びN事務局次長は、控訴人に対し、本件業務に係る技術職を廃止する旨の説明もしておらず、上記技術職以外の職種へ変更することの同意を得るための働き掛けもしていなかった。 控訴人は、平成31年3月25日、被控訴人から事前の打診もなく、本件配転命令の内示を受け、同年4月1日付けで」 3 争点(1)(本件配転命令は違法か)について次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1(2)から(6)までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決39頁20行目冒頭から22行目の「ない。」までを次のとおり改める。 「(2) 職種限定合意の存否について労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解される。 これを本件についてみると、確かに、控訴人と被控訴人との間には、控訴人の職種及び業務内容を本件業務に係る技術職に限定する旨の書面に よる明示の合意は存在しない。」(2) 原判決39頁25行目から末行にかけての「福祉用具の改造・製作、技術開発を行う技術者」を「本件業務に係る技術職」と、40頁5行目の「機械技術者」を「本件業務に係る技術職」とそれぞれ改める。 (3) 原判決40頁7行目の「被告が」から9行目末尾までを次のとおり改める。 「控訴人の職種及び業務内容を本件業務に係る技術職に限定する旨の黙示の合意(以下「本件合意」という。)があったと認められる。」(4) 原判決40頁10行目冒頭から41頁14行目末尾までを次のとおり改める。 「(3) 本件配転命令が不法行為を構成す する旨の黙示の合意(以下「本件合意」という。)があったと認められる。」(4) 原判決40頁10行目冒頭から41頁14行目末尾までを次のとおり改める。 「(3) 本件配転命令が不法行為を構成するかについて上記(2)のとおり、控訴人と被控訴人との間には、控訴人の職種及び業務内容を本件業務に係る技術職に限定する旨の本件合意があったというのであるから、被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得ることなく総務課施設管理担当への配置転換を命ずる権限をそもそも有していなかったものというほかない。にもかかわらず、被控訴人は、本件合意に反して本件配転命令を行ったものであって、同命令は違法というべきである。 しかも、前記(2)で述べたとおり、被控訴人は、控訴人を本件業務に係る技術職以外の職種に就かせることを想定していなかった上、控訴人においても、本件配転命令の発令前に、被控訴人に対し、本件面談を通じて、本件業務に係る技術職を続けたい旨を訴えていたのであるし、L課長が控訴人の前で改造・製作業務をやめるという趣旨の発言をしたときも、被控訴人の内部相談窓口に対し、控訴人の業務を否定することであり、パワーハラスメントに該当するとの通報をしているなど、本件合意の存在をうかがわせる対応をしており、被控訴人としては、本件合意の存在を容易に認識できたというべきであるから、被控訴人には本件配転命令を行ったことについて過失が認められる。 したがって、被控訴人による本件配転命令は、控訴人に対する関係で、不法行為を構成するというべきである。 (4) この点、被控訴人は、本件面談の際、被控訴人における改造製作業務を行わないことを前提として控訴人に意見を求めたところ、控訴人は、改造製作業務の廃止についてもバスチェアの話に終始しており、職種の廃止について 被控訴人は、本件面談の際、被控訴人における改造製作業務を行わないことを前提として控訴人に意見を求めたところ、控訴人は、改造製作業務の廃止についてもバスチェアの話に終始しており、職種の廃止については、控訴人の同意が見込めなかったので平成31年3月の年度末に改造製作業務を廃止して、控訴人を総務課へ異動させたと主張する。 しかし、本件面談の録音記録(甲108)とその録音反訳(甲106、107)によっても、本件面談の際に、被控訴人が、控訴人に対し、改造製作業務を廃止することを説明して意見を求めたと認められないし、控訴人は、今後も本件業務に係る技術職を続けることを前提に、自己の意見を述べていることが認められるから、被控訴人の主張は採用できない。」 4 争点(2)(控訴人が被った損害及びその額)について(1) 慰謝料前記のとおり、被控訴人は、本件合意があったにもかかわらず、控訴人に対してその同意を得ることなく違法な本件配転命令を行ったものであり、しかも、被控訴人は、事前に本件面談において、控訴人に対し、同人が長年従事していた本件業務に係る技術職を廃止する旨の説明をしたり、他の職種へ変更することの同意を得るための働き掛けをするなど、違法な配転命令を回避するために信義則上尽くすべき手続もとっていないこと、控訴人は、これにより、長年従事していた本件業務に係る技術職以外の職種へ変更することを余儀なくされ、相当程度の精神的苦痛を受けたこと、その他、本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、本件配転命令によって控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料の額は80万円とするのが相当である。 (2) 弁護士費用本件事案の難易、審理の経過、認容額等に照らすと、被控訴人による本件 配転命令と相当因果関係のある弁護士費用は8万円とするのが相当で 80万円とするのが相当である。 (2) 弁護士費用本件事案の難易、審理の経過、認容額等に照らすと、被控訴人による本件 配転命令と相当因果関係のある弁護士費用は8万円とするのが相当である。 (3) 以上によれば、被控訴人は、控訴人に対し、不法行為による損害賠償として88万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 なお、控訴人は、被控訴人に対し、債務不履行による損害賠償も請求しているところ、この場合、控訴人に認められる損害額は、上記金額を上回るものではないから、選択的併合のうち、不法行為による損害賠償請求について判断することとし、債務不履行による損害賠償請求については判断しない。 5 その他、控訴人の当審における主張及び立証を勘案しても、上記認定判断を左右するに足りない。 6 そうすると、控訴人の本件損害賠償請求は88万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却すべきである。 よって、これと一部結論を異にする原判決は相当でないから、控訴人の本件控訴に基づき、原判決中、本件損害賠償請求に関する部分を上記のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官中垣内健治裁判官髙橋伸幸裁判官竹添明夫)
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