【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理 由 弁護人平田半の控訴趣意は記録中の同人提出にかゝる控訴趣意書の通りであるか らこゝに之を引用する。
主文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理由 弁護人平田半の控訴趣意は記録中の同人提出にかゝる控訴趣意書の通りであるからこゝに之を引用する。 其第一点について。 原判示事実は、被告人は昭和二十五年四月二十五日………………居宅に於て………………の債務のため……………………福島地方裁判所執行吏Aのため、其所有にかゝる製縄機三台、一馬力モーター一台竝びにBより借受け使用中の桜井式製縄機一台を差し押えられ保管を命ぜられたが、右差押に標目公示を施さなかつたのに乗し、(一)、同年五月頃…………差押されたことの情を知らないCに…………前記…………製縄機四台及び再製機一台を見返りとして金策方を依頼するとともに物件の搬出方を依頼し、同人を通し同年七月頃右製縄機四台及び再製機一台をほしいまゝに…………居宅内より同郡a村字bc番地D方に搬出させてこれを横領し、(二)、同年七月中Eに対し、前記…………一馬力モーター一台を、ほしいまゝに同人に対する金一万円の貸金債務の担保として提供することを承諾した上、…………差押されたことの情を知らない同人をして前記一馬力モーター一台を被告人の居宅内より同郡d村大字e字fg番地なる同人方に搬出させて之を横領したものである、となつて居り、被告人の此所為に刑法第二百五十二条が適用されて居る(是は勿論刑法第二百五十二条第二項を適用した趣旨であろう)。此判示事実に依れば其判示差押は債務者(即ち被告人)の占有中に在る有体動産の差押として民事訴訟法第五百六十六条以下の規定の適用を<要旨>受くべきものに該当することは明である。ところで右民事訴訟法第五百六十六条第一項第二項に依れば、債務</要旨>者の占有中に在る有体動産を差し押えるにつき、執行吏は之を債務者の保管に任ずることは許さ 受くべきものに該当することは明である。ところで右民事訴訟法第五百六十六条第一項第二項に依れば、債務</要旨>者の占有中に在る有体動産を差し押えるにつき、執行吏は之を債務者の保管に任ずることは許される(一定の条件の下に)が、其場合には封印其他の方法を以て差押を明白にするときに限り差押が効力を生ずるのであつて、執行吏が差押を明白にすべき何等の措置をも講じないときには差押は効力を生じないもの、従つて差押の目的物の占有は執行吏に移らないものと解するのが相当である(大審院判決、大正十年(れ)第一一〇〇号、同年十月四日宣告)。然るに原判示事実には、「被告人は…………を差し押えられ保管を命ぜられたが、右差押に標目公示を施さなかつたのに乗じ…………」とあつて、執行吏が差押の目的物たる原判示五箇の有体動産に「差押を明白にする」措置を講じたのではないことが原判示夫自体に於て既に明である。(本件の証拠上、差押を明白にする措置が講ぜられたことを認め得るかどうかについては後記に譲る)。従つて原判示事実に依れば、原判示差押は効力を生ぜず、差押の目的物たる五箇の有体動産の占有は執行吏に移らないことになる。然らば被告人は右五箇の動産を原判示(一)、(二)、の様に他に処分したとて刑法第二百五十二条第二項の横領罪に問擬される謂われなきものと謂はねばならぬ。然るに原判示は原判示被告人の所為を右法条に問擬して居るのであるがら、原判決は罪となることのない事実を摘示して其上に有罪の法令を適用したのであり、摘示事実と適用法令との間にくいちがいがあるのであつて、此意味に於て原判決は破棄を免れない。論旨は結局理由がある。 仍て控訴趣意の他の点に対する判断をなすまでもなく、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十八条第四号に則り原判決を破棄し同法第四百条但書に従い当裁判所は更に次の通り れない。論旨は結局理由がある。 仍て控訴趣意の他の点に対する判断をなすまでもなく、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十八条第四号に則り原判決を破棄し同法第四百条但書に従い当裁判所は更に次の通り判決ずる。 (当裁判所の自判)本件公訴事実は、被告人は昭和二十五年四月二十五日自己の所有する一馬力モーター一台、製繩機三台、繩再製機一台、ベルト四本竝Bより借受使用中の桜井式製縄機一台を福島地方裁判所執行吏Aより債権者Fの為差押を受け、福島県北会津郡d村大字hの自宅に於て引続き之を占有保管中の処、一、 同年七月上旬Cに対し右物件中製縄機四台縄再製機一台を他に売却方又は之を担保に入れ金融を受くべきことを委嘱し、其頃同人をして右物件を右自宅より同県同郡a村字b、D方に前記趣旨の下に搬出せしめ、二、 同年七月頃右自宅に於て、Eに対し、前示一馬力モーター一台を同人に対する債務の担保に供する趣旨で交付し、以て夫々横領したものである。 と謂うに在る。 仍て案ずるに、記録に現はれた総ての資料に依るも、公訴事実に曰う「差押」に際し、執行吏Aが民事訴訟法第五百六十六条第二項に所謂「差押を明白にする」措置を講じたことを認めることが出来ないから、公訴事実に日う「差押」は其効力を生じたものとは解されず、差押の目的物たる敍上動産の占有は債務者即ち被告人から同執行吏に移つたとは見られない。従つて右差押の目的物を被告人が公訴事実一、二に曰う様に他に処分したことがあつたとしてもそれは公訴事実にいうところの犯罪を構成するものではない。畢竟公訴事実はその証明がないことに帰するのであるから刑事訴訟法第三百三十六条に則り被告人に対し無罪の言渡をする。 仍て主文の通り判決する。 (裁判長裁判官鈴木禎次郎裁判官高橋雄一裁判官佐々木次雄) 主文 に帰するのであるから刑事訴訟法第三百三十六条に則り被告人に対し無罪の言渡をする。 仍て主文の通り判決する。 (裁判長裁判官鈴木禎次郎裁判官高橋雄一裁判官佐々木次雄)
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