主文 1 被告は,原告に対し,360万7790円及び別紙3記載の年月欄の月に対応する,未払合計欄記載の各金員に対する起算日欄記載の日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決第1項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,756万9068円及び別紙1記載の各月の未払時間外賃金欄記載の各金員に対する支給日欄記載の日の翌日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案本件は,被告の元従業員であった原告が,時間外労働時間に係る未払い賃金及び同額の附加金並びにこれらに対する遅延損害金の支払を請求したのに対し,被告が,原告は労働基準法41条2号に該当する者であるなどと主張して,その支払義務を争っている事案である。 2 当事者間に争いのない事実(1) 被告は,Aの名称で,札幌市内に約20教室の学習塾を経営し,資本金が1000万円で,従業員として正社員28名,時間講師及びパート従業員約150名を擁する株式会社である。 (2) 原告は,平成7年8月ころ,被告に入社し,専任講師,教室長を歴任した後,平成10年ころ営業第3課長に就任し,平成12年6月25日に退社した。 (3) 被告における賃金は,毎月20日締めで,当月末日払いであった。なお,末日が金融機関の休日と重なる場合には,その直前の金融機関の営業日に賃金が支払われていた。 原告は,被告から,平成10年8月から平成12年6月までの間,毎月,基本給として20万円(平成10年8月から平成11年4月までの間),21万円(平成11年5月から平成12年4月までの間) た。 原告は,被告から,平成10年8月から平成12年6月までの間,毎月,基本給として20万円(平成10年8月から平成11年4月までの間),21万円(平成11年5月から平成12年4月までの間),21万7000円(平成12年5月及び6月),精勤手当として1万5000円,住宅手当として2万円を受け取っていた。 3 争点(1) 原告の平成10年8月から平成12年6月までの,労働基準法所定の時間外賃金及びその未払いの金額。 ア原告別紙1記載のとおりであり(勤務日の欄は,2か所記載のあるものは,左側の欄が勤務すべき日,右側の欄が実際の勤務日を示す。以下同じ。),未払いの額は合計378万4534円である。 原告の労働基準法上の法定労働時間は週40時間であり,この時間を基準にした年間の総労働時間は2085.71時間となり(小数点第2位以下切捨て),月の法定労働時間は171.42時間となる。原告の各月の実労働時間は別紙1の拘束時間欄記載のとおりであり,各月の法定労働時間及び実際の勤務日1日当たり1時間の休憩時間を控除した時間が各月の時間外労働時間となり,別紙1の時間外労働時間欄記載のとおりである。被告が支給していた住宅手当は,住宅に要する費用とは関係なく定額で月額2万円と定められていたから,平成11年10月の労働基準法施行規則21条の改正にかかわりなく,これを割増賃金の基礎となる賃金に算入すべきである。 イ被告別紙2記載のとおりであり,未払いの額は合計33万3187円にすぎない。 法定労働時間は,1年間を52週とし,週40時間労働とすると,年間労働時間は2080時間となり,これを1か月当たりにすると173.3時間(小数点第2位以下切捨て)となる。基本給,精勤手当は割増賃金単価算出の基礎となる賃金に 2週とし,週40時間労働とすると,年間労働時間は2080時間となり,これを1か月当たりにすると173.3時間(小数点第2位以下切捨て)となる。基本給,精勤手当は割増賃金単価算出の基礎となる賃金に算入するが,住宅手当は算入すべきではない。したがって,割増賃金算出の基礎となる賃金は,平成10年度が21万5000円,平成11年度が22万5000円,平成12年度が23万2000円となる。また,休憩時間として1日1時間,半日の場合は30分,また,業務前後における手待ち時間として,各勤務日につき,1時間をそれぞれ控除する。さらに,原告の主張する拘束時間は信用性に乏しく,同僚のそれと比較すると,その拘束時間は原告主張の8割と解するのが相当である。なお,課長手当名目の毎月4万円の額を充当している。 (2) 原告は,労働基準法にいう管理監督者に当たるか。 ア被告(ア) 原告は,労働基準法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)であるから,被告には割増賃金を支払う義務はない。 行政解釈によれば,管理監督者とは,一般的には,部長,工場長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきものである。 そして,原告は,以下のとおり,社長直属の課長職にあり,人事・労務管理等において経営者と一体的立場にあり,出社退社について厳格な制限を受けておらず,賃金等の待遇面においても役付者の地位にふさわしい取扱がされていた。 (イ) 被告における組織は,社長の直属下に,所属長として営業第1ないし第4課長,教務事務課長,人事広報係,総務・経理係がおり,各課長及び人事広報係が経営企画会議(チーフミーティング)を構成し,会社の基本 被告における組織は,社長の直属下に,所属長として営業第1ないし第4課長,教務事務課長,人事広報係,総務・経理係がおり,各課長及び人事広報係が経営企画会議(チーフミーティング)を構成し,会社の基本方針を決定している。 各課長の配下には,市内4ないし6教室の各教室長が4ないし6名,さらに教室長の配下には時間講師6,7名がいる。 原告は,営業第3課長の立場にあった者であるが,営業課長としての会社経営及び管理監督者としての会社組織への関わりは,次のとおりである。 ① 被告では,週1回程度の経営企画会議(チーフミーティング)を開き,会社の営業方針の討議・決定,人事採用・育成方針の討議・決定,教室運営の討議・決定,教務方針の討議・決定,QC(職場改善)担当班からの職場改善提案,新商品開発案の討議・決定,報奨金等評価制度の討議・決定,社内規定等の討議・決定その他重要案件の討議・決定を行っており,原告は,営業第3課長として同会議に参加していた。 ② 原告は,営業第3課配下の教室に対し,経営企画会議で決定した方針に基づき,指示・伝達して管理監督する権限を有し,正社員登用の可否,正社員昇格(教室長登用等)の可否,正社員人事異動の可否,正社員賞与の評価・査定,正社員の勤怠管理,正社員の業務内容管理(日報チェック),時間講師人事異動の可否,時間講師採用の可否,時間講師昇格・昇級の可否,時間講師給与のチェック,月間講座内訳表・人件費率管理,週間履修状況・講座実績の管理,経費の管理,教室指導内容の管理,教室運営業務全般の管理,物品購入申請の許可,営業・教室運営経費申請の許可,新規教室開設業務の運営,課ミーティングの運営等の業務を行っていた。 ③ 営業課長の経営・組織上の職務区分は,人件費率計算表作成,休退塾書類の作成・提出,教室内外の環境管 業・教室運営経費申請の許可,新規教室開設業務の運営,課ミーティングの運営等の業務を行っていた。 ③ 営業課長の経営・組織上の職務区分は,人件費率計算表作成,休退塾書類の作成・提出,教室内外の環境管理,時間講師の育成と管理,時間講師の働きやすい環境作り,時間講師の募集申請及び昇級の申請,本部ミーティングでの積極的な発言等である。 (ウ) 原告の出社,退社については,毎週月曜日と金曜日は午前11時,午後1時を目安に開かれる本部でのミーティング終了後は,自己判断により本部に残って仕事をしても,各教室に行って仕事を行うのも自由であり,火,水,木曜日は,自己判断により直接教室へ行っても良いし,本部に行って仕事をしても良いことになっていて,時間管理が厳格でなく,各課長の自由裁量の範囲が広く,本部及び配下教室の鍵も各課長がおのおの所持していた。 (エ) 賃金等の待遇については,毎月4万円の課長手当が支給され,平成11年の原告の賞与・報償金は207万5000円であり,他に年間30万円の交際費・交通費(タクシー代)の使用が認められていた。 イ原告の主張(ア) 労働基準法41条2号にいう管理監督者とは,経営方針の決定に参画し,あるいは労務管理上の指揮権限を有する等,その実態から見て経営者と一体的な立場にあること,自己の勤務時間について自由裁量権を有する者であること及び労働者に管理監督者としての十分な待遇がされていることを要件とすべきものである。しかし,原告は,以下のとおり,いずれの要件も充足していない。 ① まず,原告は,課長として,チーフミーティングに出席し発言をしていたが,そもそもチーフミーティングで営業方針や日常の業務の改善について話し合われることはあったが,経営方針について話し合われることはなかった。したがって,原告が,チーフミーティング 席し発言をしていたが,そもそもチーフミーティングで営業方針や日常の業務の改善について話し合われることはあったが,経営方針について話し合われることはなかった。したがって,原告が,チーフミーティングに出席していたことから,経営方針の決定に参画していたということにはならない。 ② 次に,原告は,タイムカードにより労働時間の管理がされていた。そして,原告が始業時間を無視していた事実はないし,退勤時間も,特に原告の自由裁量は認められてはいなかった。 ③ さらに,原告は,月額4万円の課長手当を受給していたが,これを時間外手当として充当してもなお時間外未払い賃金は月額20万円を超えるのである。原告の平成10年度と平成11年度の収入を比較すると100万円以上の増額となっているが,原告は,平成10年7月に課長になっていたのであるから,その収入増を課長への昇進と結びつけることには無理がある。さらにこの増加分のうち70万円は報奨金であり,課長であるがゆえに貰えたものではないし,社長からは,課長個人ではなく課全体に支給するものであるから,課員全員に還元するような使い方をするようにとの指示を受け,原告はその指示どおりに費消している。 (イ) 原告の職務は,要するに,課内の各教室長が円滑に教室の運営ができるように相談に乗ったり,アドバイスをしたりして,サポートをすることである。原告は,時間講師を課内の教室間で異動させること等,人事に関する権限を一部有してはいたが,それはあくまで付随業務であった。 (ウ) 社員の勤怠管理については,正社員が作成提出した勤務動態表を,また,時間講師の給与については,教室長がタイムカードをもとに給与を計算し,原告が一括して本部に提出するだけであり,正社員の業務内容管理については,教室長の作成した日報に目をとおし,コメントを入れて社長 時間講師の給与については,教室長がタイムカードをもとに給与を計算し,原告が一括して本部に提出するだけであり,正社員の業務内容管理については,教室長の作成した日報に目をとおし,コメントを入れて社長に提出していただけである。時間講師の人事異動は原則としてないが,欠員が生じ,かつ新規採用の見通しが立たない場合,課内教室間で一時的に時間講師を異動させることはあるが,この場合,教室長の意見を聞き,社長に報告していた。時間講師の補充は本部に派遣を依頼し,本部が一括して時間講師の募集を行い,配属先の課(教室)が仮決定(仮採用)され,営業課長が時間講師の面接を行い,実地研修後本採用となる。時間講師の昇級(時給の昇級),昇格(平の時間講師からサブリーダー,リーダーへあがること)については,社長が決定権限を有していた。 月間講座内訳表,人件費率の管理,週間履修状況・講座実績の管理,教務指導内容の管理は,教室長が作成したものを,原告が目をとおして課内の教室の運営等について教室長と話し合うときの資料としていた。 (3) 原告に対する手当,報奨金,賞与が時間外手当といえるか。また,これらを時間外手当として控除すべきか。 ア被告の主張被告の就業規則では,時間外労働及び法定の休日の労働に対する賃金は,教室長は教室管理手当に,専任講師は職務手当に内在されるものとすると定められている。 原告は,その上の課長職であるから,時間外労働に対する賃金は当然課長職手当に内在されるものと解すべきである。 また,被告は,原告に対し,課長就任後は毎月課長手当として4万円を支給し,平成11年には報奨金として71万円,平成11年2月と平成12年1月には期末手当として合計37万円を給付しており,これらは,時間外手当として控除すべきである。 イ原告の主張被告主張の課長 ,平成11年には報奨金として71万円,平成11年2月と平成12年1月には期末手当として合計37万円を給付しており,これらは,時間外手当として控除すべきである。 イ原告の主張被告主張の課長手当,報奨金及び期末手当が支給されたことは認める。課長手当は時間外労働に対する賃金を内在しているものではないが,これを時間外割増賃金計算から控除することには異議はない(原告においてこれを控除して請求している。)。報奨金及び期末手当については,そのうち時間外労働に対する部分が明らかではなく,これを時間外労働に対する賃金から控除することは不当である。 (4) 附加金請求の当否第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) まず,労働時間について,被告の就業規則(甲第1)によれば,労働時間については1日の労働時間を8時間と定めるほかは,変形労働時間の定めがなく,また,前記のとおり,被告の給与は月額払いとされている。そこで,週40時間労働として,これを7日で除し,365日(閏年については366日)を乗じた上で,12で除すると,被告における毎月の法定労働時間は173.8時間(閏年は174. 2時間,小数点2位以下切捨て。)となる(被告の主張する労働時間はこれを下回るが,法の規定する労働時間の解釈に関する事実であるから,これに拘束されるものではない。)。 平成10年8月から平成12年6月までの間,原告が実際に勤務した日数及び勤務したとして報告された勤務時間が別紙1の勤務日欄記載の日数及び拘束時間欄記載の時間であることは当事者間に争いがない。そして,休憩時間については,1労働日当たり1時間とし,労働時間が6時間を超えない日は0時間として計算すると,別紙3の休憩時間欄記載の時間となる。 したがって,原告の実労働時間については,他に特段の立証のない本 時間については,1労働日当たり1時間とし,労働時間が6時間を超えない日は0時間として計算すると,別紙3の休憩時間欄記載の時間となる。 したがって,原告の実労働時間については,他に特段の立証のない本件においては,別紙3の実労働時間欄記載の労働時間と解するのが相当であり,これを法定労働時間から控除した別紙3の時間外労働時間欄記載の労働時間が,各月における時間外労働時間となる。被告は,原告の実際の勤務時間は,その報告された勤務時間の8割とすべきであり,また,手待時間を毎日1時間ずつ控除すべきであると主張するが,そのように解すべき根拠はない。 (2) 次に,原告の通常の労働日の賃金についてみると,①平成10年8月から平成11年4月までの基本給が月額20万円,②平成11年5月から平成12年4月までのそれが21万円,③平成12年5月及び6月のそれが21万7000円であること,原告にはこの間を通じて精勤手当が月額1万5000円,住宅手当が月額2万円給付されていたことは当事者間に争いがないから,これらを合計した金額(①の時期が23万5000円,②の時期が24万5000円,③の時期が25万2000円)を月の法定労働時間173.8時間(閏年は174.2時間)で除した金額が,原告の時間内労働に対する時間単価となり(①の時期が1352円,②の時期のうち平成11年中が1409円,②の時期のうち平成12年1月以降が1406円,③の時期が1446円,円未満切捨て。),これに2割5分を加算した金額が各月の最低の時間外労働に対する時間単価となる(①の時期が1690円,②の時期が1761円,1757円,③の時期が1807円,円未満切捨て。)。なお,被告は,住宅手当を原告の時間単価の計算の基礎に含めるべきではないと主張するが,被告の支給する住宅手当が住宅に要する費用に応 期が1761円,1757円,③の時期が1807円,円未満切捨て。)。なお,被告は,住宅手当を原告の時間単価の計算の基礎に含めるべきではないと主張するが,被告の支給する住宅手当が住宅に要する費用に応じて算定されたものと認め得る証拠のない本件においては,採用することができない。 (3) 以上により算定すると,別紙3の時間外賃金欄記載の額が原告のこの間の時間外賃金の額となる(ただし,円未満を切り捨てる。)。 2 争点(2)について(1) 労働基準法は,管理監督者に対しては,労働時間,休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めている(41条2号)が,その趣旨とするところは,管理監督者は,その職務の性質上,雇用主と一体なり,あるいはその意を体して,その権限の一部を行使する関係上,自らの労働時間を中心とした労働条件の決定等について相当な程度の裁量権を認められ,その地位に見合った相当な待遇を受けている者であるため,強行法規としての労働基準法所定の労働時間等に関する厳格な規制を及ぼす必要がなく,かつ,相当でもないとするところにあるものと解される。したがって,管理監督者に当たるかどうかを判断するに当たっては,その従業員が,雇用主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮監督権限を認められているかどうか,自己の出退勤を始めとする労働時間について一般の従業員と同程度の規制管理を受けているかどうか,賃金体系を中心とした処遇が,一般の従業員と比較して,その地位と職責にふさわしい厚遇といえるかどうかなどの具体的な勤務実態に即して判断すべきものである。そこで,以下検討する。 (2) 当事者間に争いのない事実及び証拠(甲第1,第3ないし第24,第27,第28,乙第1ないし第4,第5の1,2,第6の1ないし10,第7の1ないし3,第8の1ないし3,第9の1, 検討する。 (2) 当事者間に争いのない事実及び証拠(甲第1,第3ないし第24,第27,第28,乙第1ないし第4,第5の1,2,第6の1ないし10,第7の1ないし3,第8の1ないし3,第9の1,2,第10の1ないし4,第11,第12の1ないし3,第13の1ないし3,第14,第15の1,2,第16,第17,第18の1ないし3,証人B,原告本人,被告代表者)によれば,以下の事実が認められる。 ア被告は,Aの名称で,札幌市内で約20教室の学習塾を経営し,従業員として正社員28名,時間講師及びパート従業員約150名を擁する株式会社である。 被告の組織は,代表取締役である社長を頂点として,その下に,営業第1課ないし第4課と教務・事務課,人事・広報係,総務係,経理係が置かれている。 各営業課には長として営業課長がいて,各営業課はその配下にある4ないし6の学習塾教室の運営を担当しており,各教室には教室長がいて,その教室の事務を行っている。各教室にはそれぞれ正社員である専任講師のほか,常勤講師及び時間講師が併せて7,8名配置されている。時間講師は平の時間講師からサブリーダー,リーダーに分かれており,それぞれ手当を異にしている。 イ被告における決定事項は,原則としてすべて社長がこれを決裁し,決定しており,社長の決裁なしに,会社としての,各課としての,さらには,各教室としての方針を決めたり,新たに費用を出捐したり,社員を採用したり,社員の昇格・昇給・異動を行ったりすることはない(ただし,時間講師の欠員が生じてその欠員の補充ができない過渡的時期について,一時的に営業課長がその課内の教室間での時間講師の異動を決定し,社長に報告するということはある。)。時間講師の採用面接などは,営業課長が行い,その採否の決定に当たりその判断が尊重されるのが について,一時的に営業課長がその課内の教室間での時間講師の異動を決定し,社長に報告するということはある。)。時間講師の採用面接などは,営業課長が行い,その採否の決定に当たりその判断が尊重されるのが通例であるが,決定は社長の決裁を要する。各教室における人事考課,昇級・昇格,人事異動等の人事関係案件についても,各教室長の意見を踏まえた営業課長の意見が求められ,その意見が尊重されることが多いが,決定について社長の決裁が必要であることに変わりはない。 被告においては,毎週2回(時には3回),本部において,社長,各営業課長,教務事務課長及び人事広報係を構成員とするチーフミーティング(経営企画会議)が開催されていた。同会議においては,被告の学習塾の営業に関する事項(昇格,昇給等の人事事項を含む。)が報告され,出席者はそれぞれ意見を述べて討議が行われ,この討議に基づいて,あるいは,基づかずに,社長が最終決定を下し,各担当部局に指示伝達すべき事項が決定される。出席した各営業課長は,同会議での確認事項等について,それに引き続いて行われる各課のミーティングで,指示伝達をすることになっていた。このように,チーフミーティングは,会社としての決定機関ではなく,会社の営業に関する事項を協議する場ではあっても,会社の経営事項そのものを協議する場ではなく,もとより社長の決定権限を左右するような権限,あるいは社長からの委任に基づく何らかの権限をも有するものではなかった。 ウ営業課長の職務は,各課の配下にある各教室の運営管理であるが,具体的にみると,①社長が決定した方針に基づき,これを各課ミーティングを通じて配下の各教室長,専任講師,時間講師らに対して指示・伝達し,②各課の配下の教室における正社員登用の可否,正社員昇格(教室長登用等)の可否,正社員人事異動の可否 に基づき,これを各課ミーティングを通じて配下の各教室長,専任講師,時間講師らに対して指示・伝達し,②各課の配下の教室における正社員登用の可否,正社員昇格(教室長登用等)の可否,正社員人事異動の可否,正社員賞与の評価・査定,正社員の勤怠管理,正社員の業務内容管理(日報チェック),時間講師人事異動の可否,時間講師採用の可否,時間講師昇格・昇級の可否,教務指導内容の管理,教室運営業務全般の管理,物品購入申請の許可,教室運営経費申請の許可等の事項について,決裁権者である社長に対し,課の長としての意見を具申し,③休退塾者関係の書類の作成・提出をし,教室内外の環境管理,時間講師の育成と管理,時間講師の募集申請及び昇級の申請を行うことなどであった。 エ被告の就業規則によれば,教室長及び専任講師の労働時間は午後1時から午後10時まで,事務職員の労働時間は午前10時から午後7時までとされているが,課長については,特別の規定はない。 オ原告は,営業課長として,市内に点在する5教室の事務を担当しており,毎日,各教室を回って,各教室の責任者である教室長と打合せを行い,時に講師と打合せをし,教室長が毎日作成する日報を点検して,社長宅に日報のファクシミリを送付することが日課であった。原告の机は,本部にのみあって,チーフミーティングがある日は,その開催時間に合わせて午前10時半ころまでに本部に出勤するが,それ以外の日は,本部に出勤してから各教室を回ることもあれば,本部に出勤することなく終日各教室を回って過ごすこともあり,各労働日の勤務の場所及び方法をどのようにするかについては,その裁量に委ねられていた。原告は,平日は,早いときは午前10時以前に,遅いときでも午後1時までに本部ないしは各教室に出勤して,配下の各教室の運営管理業務に従事し,各教室長が作 うにするかについては,その裁量に委ねられていた。原告は,平日は,早いときは午前10時以前に,遅いときでも午後1時までに本部ないしは各教室に出勤して,配下の各教室の運営管理業務に従事し,各教室長が作成するその日の日報を点検して,社長に日報を送付することを日課としていたため,早いときで午後7時前,遅いときには午後11時過ぎまで,本部ないしは配下のいずれかの教室で執務していた。原告は,配下の教室の鍵については,持っているところと持っていないところとがあった。 原告は,他の社員と同様にタイムカードに出退勤の記録をすることが求められており,公休日,半休日の届出は厳格にされていて,勤務日に本部あるいはいずれかの教室に出勤しないという日はなかった。なお,原告は,本部及び配下の各教室間を移動して職務を行うという,事業場所が複数ある関係もあって,職務を終了して帰宅する時間を最終的に報告するため,本部ないしいずれかの教室でのタイムカードに退勤の時間を一部手書きとする運用も行われていた。とはいえ,その勤怠管理,特に労働時間それ自体の把握,全休,半休,有給休暇の把握については,他の社員と分け隔てなく行われており(ただし,遅刻,タイムカード押し忘れのチェックからは除外。),毎月の実質勤務日数,勤務時間は,他の従業員と同様に,きちんと管理されていた。 カ原告の給与等の待遇をみると,まず,原告の賃金は,定額の基本給,精勤手当,住宅手当,燃料手当(冬季),交通費,課長手当(月額4万円)のほか,年2回の賞与及び年1回の期末手当(平成9年は18万円,平成10年は10万円,平成11年は20万円,平成12年は17万円)が支給されたほか,管理職として部下及び配下の教室の円滑な運営のために用いるという使途の限定された年間24万円の交際費と年間6万円の交通費が支給された ,平成11年は20万円,平成12年は17万円)が支給されたほか,管理職として部下及び配下の教室の円滑な運営のために用いるという使途の限定された年間24万円の交際費と年間6万円の交通費が支給された。また,平成11年4月には報奨金1万円が,また,同年5月には,平成10年5月から平成11年4月までの業績評価に基づき,課長に対する報奨金が支給されており,原告は,70万円を支給されたが,被告代表者から,課としての業績評価による報奨金であるから,教室への還元も考慮するよう示唆されたため,大部分を部下との交際費や課での仕事に要りような図書購入費用に充てた。平成12年には原告に対する課長報奨金の支給はなかった。 原告の基本給については,平成8年4月,5月に昇給し,その後は,平成9年4月,平成10年4月,平成11年5月にそれぞれ昇給した。手当は,平成10年5月から課長手当として月額4万円が支給されているが,他方,それ以前の教室長のときには,月によって不定ではあったものの,平成8年9月以降,管理手当として月額2万円ないし3万円(ただし,平成9年4月は1万円,同年5月は1万5000円,平成10年4月はゼロ),平成9年10月以降主任手当として月額1万5000円ないし2万5000円(ただし,平成10年1月及び同年2月はゼロ)が支給されていた。この管理手当及び主任手当の合計の過去1年間(平成9年5月から平成10年4月)の平均をとると,月額2万8000円余となるが,課長手当が支給された平成10年5月以降はその支給はされなくなっているから,課長手当受給による役職手当の実質的増収は月額1万2000円程度ということになる。 次に,原告に対する平成9年の賃金の支給総額は434万0167円,平成10年の支給総額は434万3500円,平成11年の支給総額は542万30 実質的増収は月額1万2000円程度ということになる。 次に,原告に対する平成9年の賃金の支給総額は434万0167円,平成10年の支給総額は434万3500円,平成11年の支給総額は542万3000円である。原告が教室長であった平成9年と課長に昇進した年である平成10年とでは,明らかな差はない。一方,平成10年と平成11年とでは100万円近くの差があるが,その差の大部分は課長報奨金の70万円と賞与等の増加分約17万円が占めている。原告に対する賞与の月額給料総額に対する割合をみると,平成10年が32.7パーセント,平成11年が35.6パーセント(被告作成の年末調整一覧表(乙第9の2)によれば,課長報奨金は給料の科目に入っているが,これを便宜除いた場合。逆に,給料台帳(乙第8の2)のように課長報奨金を賞与に含めると,55.7パーセントとなる。)である。被告の他の従業員と比較すると,原告よりも低い賞与率の者も多いけれども,平成10年では36.8パーセントの事務職員(C),31.3パーセントの教室長(D),平成11年では35.0パーセントの事務職員(E)など,原告に匹敵する率の賞与を支給されている一般職員もいる。 (3) 以上認定の事実によれば,なるほど,原告は,第3営業課長として,その課に属する5教室の人事管理を含むその運営に関する管理業務全般の事務を担当していたものであるが,それらの業務全般を通じて,形式的にも実質的にも裁量的な権限は認められておらず,急場の穴埋のような臨時の異動を除いては何の決定権限も有してはいなかった。 また,原告は,営業課長として,社長及び他の営業課長ら及び事務局とで構成するチーフミーティングに出席し,被告の営業に関する事項についての協議に参加する資格を有していたが,そのミーティング自体が,いわば社長の決定に当 業課長として,社長及び他の営業課長ら及び事務局とで構成するチーフミーティングに出席し,被告の営業に関する事項についての協議に参加する資格を有していたが,そのミーティング自体が,いわば社長の決定に当たっての諮問機関の域を出ないものであって,それへの参加が何らかの決定権限や経営への参画を示すものではない。 さらに,原告は,その勤務形態として,本部に詰めるか,あるいはまた,いつどの教室で執務をするかしないかについては,毎週本部で開かれるチーフミーティングに出席する場合を除いてその裁量に委ねられていたけれども,それは,市内に点在する5教室の管理を任されている関係上,いつどこの教室を回って,どのようにその管理業務を行うかについての裁量があるというに過ぎず,本部及び各教室における出退勤についてはタイムカードへの記録が求められていて,その勤怠管理自体は他の従業員と同様にきちんと行われており,各教室の状況について社長に日報で報告することが例とされているというその業務態様に照らしても,事業場に出勤をするかどうかの自由が認められていたなどということはないし,現に原告は,公休日を除いて毎日事業場には出勤をしていた。 そして,原告が課長に昇進してからは,課長手当が支給されることになり,それまでの手当よりも月額で1万2000円ほど手当が上がったため,月額支給額が上がり,賞与も多少増額となり,接待費及び交通費として年間30万円の支出が認められ,また,業績に応じて平成11年に1度だけとはいえ,課長報奨金として70万円が支給されるなど,給与面等での待遇が上がっていることは確かであるが,賞与の支給率も,他の事務職員や教室長と比べ,総じて高いとはいえ,原告に匹敵する一般従業員もいることからすると,それは,その役職にふさわしい高率のものであるともいえない。もっとも とは確かであるが,賞与の支給率も,他の事務職員や教室長と比べ,総じて高いとはいえ,原告に匹敵する一般従業員もいることからすると,それは,その役職にふさわしい高率のものであるともいえない。もっとも,上記の課長報奨金を賞与として取り込んでみると,その待遇は一般の職員のそれを凌駕するものであって,相当な待遇と評価することもできるようであるが,平成11年に一度だけ業績に応じて支給されたに過ぎない(平成12年には支給されていない。)という実態に照らすと,課長報奨金の存在が営業課長の待遇の手厚さを示すものであるとまではいい難いところである。 上記の課長手当増額分,接待費交通費,課長報奨金,賞与増額分の合計が約130万円となるが,これを平成11年における原告の時間外労働に対する割増賃金額と比べても,これに見合うような額でもない。そうしてみると,原告の課長としての給与等の面からみても,管理監督者にふさわしい待遇であったともいい難いところである。 以上の認定判断によれば,原告は,被告の営業課長として,その業務に関する管理者としての職務の一部を行っていたとはいえ,その勤務実態から見ても,いまだ管理監督者に当たると解することはできない。 3 争点(3)について(1) 被告の就業規則(甲第1)には,被告の主張するような規定があるけれども,課長に関する規定自体がないから,当然に課長に対してもその規定を推し及ぼすべきものとはいえない。また,原告に対する課長手当が,その時間外労働に対応して増減するわけではないし,現実の原告の時間外労働時間から見ても,その支給があるからといって,時間外労働に見合う手当が支給されているなどとは解することはできない。したがって,原告に対する課長手当の支給は,時間外労働に対する給与の一部として算定することができるにとどまる。 (2) いって,時間外労働に見合う手当が支給されているなどとは解することはできない。したがって,原告に対する課長手当の支給は,時間外労働に対する給与の一部として算定することができるにとどまる。 (2) 次に,賞与及び期末手当について,他の一般従業員と比較して,原告に対して明らかに高率な賞与が支給されているとまではいい難く,時間外労働に対して支給された部分があると認め得る証拠もなく,また,期末手当は教室長時代から支給されていて,年度に応じて高低があり,特にその職種や時間外労働時間に応じて算定されて給付されたとも認め難いから,その全部又は一部を時間外労働に対する給付として控除することは相当ではない。 (3) また,各種の報奨金について,まず,平成11年4月に支給された報奨金1万円及び同年5月に支給された課長報奨金については,臨時の支給であることからすると,賞与と同様の業績評価報酬と考えられ,後者は課長職にある者に限って支給されたものであるとはいえ,課長手当のように課長職にあることだけで支給されたものではないし,その支給に当たり課の職員らへの還元を示唆されるような支給目的からみても,時間外労働に対して給付された部分があるとはいい難いのであって,これらを時間外労働に対する給与の一部として算定することは相当ではないというべきである。 (4) 以上によれば,各月に支払われた4万円の課長手当は,各月の時間外賃金の一部に充当される。その計算は別紙3のとおりであり,原告が被告に対して請求し得る時間外手当は,別紙3の小計欄の金額から円未満を切り捨てた未払合計欄の金額のとおりであり,その総計は,別紙3の未払合計の合計欄記載のとおり,360万7790円となり,未払合計欄記載の各月の未払額に対する起算日欄の日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金 とおりであり,その総計は,別紙3の未払合計の合計欄記載のとおり,360万7790円となり,未払合計欄記載の各月の未払額に対する起算日欄の日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払うべきものである。 4 争点(4)について上記のとおり,原告の職務は,管理者としての側面を有するものであって,原告を管理監督者として処遇してきたという被告の主張にも一面聴くべき点があり,また,原告に対しては,課長手当や各種報奨金の支給等,それなりの手当等が支給されていたという実態もある。こうした点を考慮すると,被告に対して,未払いの時間外賃金のほかに附加金の支払を命ずることは相当ではないと判断する。 札幌地方裁判所民事第5部判事佐藤陽一
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