平成15(わ)1352 傷害,器物損壊,出入国管理及び難民認定法違反,住居侵入,強盗致傷被告事件

裁判年月日・裁判所
平成17年1月17日 神戸地方裁判所
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判決文本文8,815 文字)

主文 被告人を懲役11年に処する。 未決勾留日数中280日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は第1 金品を強取しようと企て,氏名不詳者2名と共謀の上,平成15年8月19日午前1時20分ころ,神戸市a区bc丁目d番e号Af階のB方内に南側風呂場の東側窓から侵入し,就寝していたB(当時54歳)及びその長女であるC(当時26歳)に対し,その手足等を所携のガムテープで緊縛し,その顔面,頭部等を手拳等で殴打し,所携のナイフを突き付け,「お金,お金,全部出せ。」,「死にたくないだろう。」と語気鋭く申し向けるなどの暴行・脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,上記両名が所有する現金約171万円及び財布等121点(時価合計約8729万7000円相当)を強取し,その際,上記暴行により,Bに加療約4週間を要する右肩打撲等の傷害を,Cに加療約3週間を要する左上腕打撲等の傷害をそれぞれ負わせた第2 Dの客引きにより飲食店に赴いたところ,同人の客引き口上と上記飲食店の接客内容が異なるなどとして立腹し,同年11月5日午前3時18分ころ,同市g区hi丁目j番k号先路上において,同人(当時45歳)に対し,所携の特殊警棒(平成16年押第16号の1)でその頭部及び右手指を数回殴打する暴行を加え,よって,同人に全治約2か月間を要する右環指中節骨骨折,頭部外傷の傷害を負わせた第3 同日午前3時22分ころ,同市g区l町m丁目n番o号先路上に停車中のE株式会社(代表取締役社長F)所有に係るG運転の普通乗用自動車(タクシー)内において,同車左後部窓ガラス1枚を上記特殊警棒でたたいて割り(損害額7万1500円),もって,他人の物を損壊した第4 中華人 会社(代表取締役社長F)所有に係るG運転の普通乗用自動車(タクシー)内において,同車左後部窓ガラス1枚を上記特殊警棒でたたいて割り(損害額7万1500円),もって,他人の物を損壊した第4 中華人民共和国の国籍を有する外国人であり,有効な旅券又は乗員手帳を所持しないで,平成12年2月18日までに本邦に入国したものであるが,その後,平成12年2月18日から,引き続き,平成15年11月5日まで,神戸市内等に居住するなどし,もって,本邦に不法に在留したものである。 (証拠の標目)―括弧内は証拠等関係カードの検察官請求証拠甲乙の番号省略(弁護人の主張に対する判断) 1 弁護人は,判示第2の事実について,Dが特殊警棒で被告人の右膝及び左肩を殴打してきたのに対し,被告人が,自己の身体を守るために,Dから特殊警棒を奪い取って,被害者の頭部等を殴打したに過ぎないから,正当防衛が成立し,無罪である旨主張し,被告人もこれに沿う供述(公判調書中の供述部分を含む。)をするところ,当裁判所は,Dが特殊警棒で被告人を殴打したという事実はなく,そもそも急迫不正の侵害は存しなかったのであるから,正当防衛は成立しないと判断したので,以下,その理由について説明する。 2(1) 関係各証拠によれば,判示第2の日時・場所において,被告人が特殊警棒(平成16年押第16号の1,以下「本件警棒」という。)でDの頭部及び右手指を数回殴打し,判示の傷害を負わせた事実は,間違いがないと認められるところ,被告人が本件警棒でDを殴打した際の状況等については,Dと被告人の供述内容が相反するので,以下において,両者の供述の信用性を検討することとする。 (2) 第2回公判調書中の証人Dの供述部分(以下「D証言」という。)の概要は,以下のとおりである。 ① Dは,p付近の繁華街の辺 以下において,両者の供述の信用性を検討することとする。 (2) 第2回公判調書中の証人Dの供述部分(以下「D証言」という。)の概要は,以下のとおりである。 ① Dは,p付近の繁華街の辺りで客引きをしていて,被告人に対し,6000円で性的マッサージをする店に案内すると誘いをかけたところ,被告人がこれに応じたので,近くにある「H」という店に被告人を案内し,その際,被告人の支払った現金6000円のうちから5000円を紹介料として受け取ったが,被告人から現金5万円を受け取ったことはない。 ② Dは,その後しばらくして,同店付近路上で再び被告人に出くわしたところ,被告人が,「こら,待てえ。」などと言って,自分の方に向かって走ってきたので,同店で何かトラブルがあって,自分も何かされるのではないかと思い,走って逃げ出したが,被告人はなおも自分を追いかけてきた。 ③ Dは,被告人から逃げるために路地に入り込んだものの,被告人とばったり出くわしてしまい,被告人と向かい合わせのような状態になったところ,被告人がいきなり本件警棒を取り出し殴りかかってきたので,よけようとしたり,手を出して止めようとしたが,結局,前頭部と頭頂部の辺りや右手の薬指を本件警棒で5,6回殴打され,頭部の傷口からは顔面まで流れるほど血が出た。 本件警棒は自分が持っていたものではないし,これで被告人の右膝等を殴ったこともない。 ④ Dが被告人から本件警棒で殴られているところに,知人のIが現れて間に入ってくれたことから,被告人が逃げ出したので,被告人を捕まえようと思い,Iや知人のJとともに被告人を追いかけた。 ⑤ Dは,被告人を追いかけている途中,ブロックを拾い上げ,これを持って更に被告人を追跡し,その間,被告人が本件警棒を振り回してき 捕まえようと思い,Iや知人のJとともに被告人を追いかけた。 ⑤ Dは,被告人を追いかけている途中,ブロックを拾い上げ,これを持って更に被告人を追跡し,その間,被告人が本件警棒を振り回してきたので,これに対抗するため,被告人にブロックを見せつけるような仕草をしたことはあるが,ブロックが被告人に当たったことはないし,ブロックで被告人を殴りつけたこともない。 ⑥ 被告人は,その後も逃走を続け,結局,停車していたタクシー(判示第3の被害車両)の後部座席に乗り込んだが,タクシーがすぐには発進しなかったので,IとJがタクシーのドアを押さえるなどして,被告人が逃げ出さないようにしたことから,被告人は,本件警棒でタクシーの左後部ドアの窓ガラスを割り,そこから本件警棒を出して振り回したり,さらに,タクシーから出てきて本件警棒を振り回したりしたものの,I及びJら4,5人の人達が被告人の手足を押さえるなどして,被告人を取り押さえた。 Dが,その際,持っていたブロックで被告人を殴ったことはない。 (3) これに対し,第1回ないし第4回公判調書中の被告人の各供述部分並びに被告人の検察官調書(乙4,5)及び警察官調書(乙2,3)の概要(以下,併せて「被告人供述」という。)は,以下のとおりである。 ① 被告人は,p近辺をぶらぶらしていたところ,Dから5万円を払えばセックスができる店があるなどと誘われたので,Dに5万円を渡し,Dに案内された店で店員に更に6000円を渡したが,店員の説明から,その店ではセックスができないことが分かったので,すぐに店を出て,5万円を返してもらうため,Dを捜した。 ② 被告人は,しばらくDを捜していると,歩いてきたDと目が合ったが,Dがすぐさま逃げ出したので,「5万円返して。」と叫びながら追いか すぐに店を出て,5万円を返してもらうため,Dを捜した。 ② 被告人は,しばらくDを捜していると,歩いてきたDと目が合ったが,Dがすぐさま逃げ出したので,「5万円返して。」と叫びながら追いかけ,Dに追いついて後ろから襟首をつかんで捕まえようとしたところ,Dがいきなり本件警棒で自分の右膝の辺りを殴打し,更に自分の背中の辺りを殴打してきた。 ③ 被告人は,Dから,取り合いになったり,抵抗されたりすることもなく,一瞬のうちに本件警棒を取り上げ,下を向いてしゃがみ込むような格好になっていたDの背中に向けて本件警棒を2回振り下ろしたが,Dの頭部をねらって殴打したわけではなく,本件警棒がDの頭部に当たった理由は分からない。 ④ 被告人は,Dの仲間の者らがそこにやって来たので,その場から逃げ出し,結局,停車していたタクシー(判示第3の被害車両)の後部座席に乗り込んだが,Dの仲間2人がタクシーのドアを押さえるなどしてきたので,その2人をどけるため,本件警棒でタクシーのドアの窓ガラスを割り,そこから本件警棒を外に出して振り回したが,頭を窓の外に出したところ,Dからブロックで殴られて意識を失い,意識を取り戻したときには,両手を後ろ手にされて手錠をかけられ,体を押さえつけられていた。 (4) そこで,D証言と被告人供述のいずれが信用できるかについて,次にみてみることとする。 ① 被告人がDに現金5万円を渡したかどうかについては,被告人が店にも案内されないうちから,客引きであるDに5万円もの現金を渡したというのはにわかに信じ難いこと,Dがセックスをできる店に案内すると被告人を騙して5万円も受け取っておきながら,被告人に容易に見つかるような場所に留まっていたというのも,理解し難いこと,Dが本件当日(午前9時ころ)にK警察署で事情聴 がセックスをできる店に案内すると被告人を騙して5万円も受け取っておきながら,被告人に容易に見つかるような場所に留まっていたというのも,理解し難いこと,Dが本件当日(午前9時ころ)にK警察署で事情聴取を受けた際の所持金は3万5081円でしかなかったこと,そして,本件時からその事情聴取の時までの間に,Dが所持金の一部を隠匿等した様子も窺えないことなどからすると,この点については,D証言の方が被告人供述よりも信用性の高いことが明らかである。 ② 本件警棒を持っていたのが被告人かDか,また,Dが判示の傷害を負った際の状況がどのようなものであったのかについては,D証言では,被告人が取り出した本件警棒でいきなり殴られたというのであるから,うまくよけたり,止めたりできないまま,前頭部と頭頂部の辺りや右手の薬指を殴打され,判示の傷害を負ったことが合理的に説明できること,これに対し,被告人供述のいうように,Dと取り合いになったり,抵抗されたりすることもなく,Dから一瞬のうちに本件警棒を取り上げられたというのは,不自然である感を否めないこと,被告人供述のいうところでは,Dがどのようにして前頭部や頭頂部に傷害を負ったか,合理的に説明できないこと,被告人が右膝に打撲傷を負っていることは事実であるけれども,Dが本件警棒で被告人の顔や頭等の上半身でなく,殴りにくく,またあまり効果があるとも思われない足に殴りかかったというのも納得がいかない上,被告人がタクシーから出てきてIらに取り押さえられるなどした際にも,右膝を打撲した可能性が十分ありうること,しかも,第3回公判調書中の証人Iの供述部分(以下「I証言」という。)は,被告人が本件警棒の先端を路面にたたきつけて短くたたみ,また,その後,いったん短くした本件警棒を振って再び延ばすのを見た旨いうものであるとこ 判調書中の証人Iの供述部分(以下「I証言」という。)は,被告人が本件警棒の先端を路面にたたきつけて短くたたみ,また,その後,いったん短くした本件警棒を振って再び延ばすのを見た旨いうものであるところ,これは被告人が本件警棒を使い慣れていること,ひいては,本件警棒は被告人がもともと所持していたものであることを窺わせる事実であることなどを考え併せると,本件警棒を持っていたのが被告人かDか,また,Dが判示の傷害を負った際の状況がどのようなものであったのかの点についても,D証言の方が被告人供述よりも信用性の高いことが明らかである。 ③ もっとも,Dが被告人の頭部をブロックで殴打したことがあるかどうかについては,被告人供述は,被告人が本件直後に頭部に打撲裂創を負っていた事実と符合すること,D証言は,被告人が取り押さえられたときに,持っていたブロックで殴ってやろうとしたところ,Jから「もう止めとけ。警察が来るから。」と言って止められたというのであるが,Jが「もう止めとけ。」と言ったというのは,Dがその前に被告人をブロックで殴打していたことを窺わせること,Dは,その前に被告人から本件警棒で殴られていたのであるから,被告人に腹を立てていて,その頭部をブロックで殴打したとしても不思議はないことなどからすると,被告人以外にDが被告人の頭部をブロックで殴打したという者はいないこと,被告人の頭部打撲裂創は,被告人が乗り込んでいたタクシーの割れた窓に頭部が当たったり,被告人がIやJらに取り押さえられたりした際に生じた可能性も否定できないことなどを考慮しても,この点については,D証言の方が被告人供述よりも信用性が高いということはできず,被告人供述を排斥することはできない。 (5) 弁護人は,D証言について,被告人は,現金の返還を請求するためにDを追いか 点については,D証言の方が被告人供述よりも信用性が高いということはできず,被告人供述を排斥することはできない。 (5) 弁護人は,D証言について,被告人は,現金の返還を請求するためにDを追いかけていたのであるから,Dに現金の返還を請求しないうちに,本件警棒でいきなりDを殴打したというのは不合理であること,客とのトラブルが多いDが護身用に特殊警棒を携帯していないはずがないことなどを挙げ,D証言は信用できない旨主張する。 しかしながら,被告人は,Dの客引きを受けて案内された店では,客引き口上のような性的サービスを受けられないことが分かって立腹していたのであるから,本件警棒でいきなりDに殴りかかったとしても不合理ではないし,また,Dは,誇大なサービス内容を話して客引きをしていたため,客とのトラブルが多かったことは,I証言によっても認められるものの,それだからといって,Dが護身用に本件警棒を携帯していないはずがないというのは,飛躍があるといわざるを得ず,弁護人のいうところからは,D証言のうち,(4)の①②についていう部分の信用性に疑いを容れるには至らない。 (6) 以上をまとめると,本件警棒は被告人がもともと所持していたものであり,被告人は,Dに追いつくや,本件警棒でDの頭部等を5,6回殴打して判示の傷害を負わせ,その後,その場から逃げ,本件警棒でタクシーのドアの窓ガラスを割り,そこから頭を外に出したところ,Dからブロックで殴られ負傷したが,右膝についてはIらに取り押さえられた際に負傷したものと認めるのが相当である。 3 以上のとおりであって,Dが本件警棒で先に被告人を殴打した事実はなく,急迫不正の侵害は存しなかったのであるから,被告人の行為について正当防衛は成立せず,弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適用)省略 であって,Dが本件警棒で先に被告人を殴打した事実はなく,急迫不正の侵害は存しなかったのであるから,被告人の行為について正当防衛は成立せず,弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,中華人民共和国の国籍を有する被告人が,金品強取の目的で,氏名不詳者2名と共謀の上,被害者(B)の居宅に侵入した上,判示のような暴行・脅迫を加えて多額の金品を強取し,その際,被害者2名に判示の傷害を負わせたという住居侵入,強盗致傷(判示第1)のほか,前示のような経緯から所携の特殊警棒で殴打して被害者(D)に判示の傷害を負わせたという傷害(判示第2),その犯行後,逃走するため乗り込んだタクシーの窓ガラスを上記特殊警棒でたたき割ったという器物損壊(判示第3)及び有効な旅券等を所持しないで本邦に入国した後,不法に在留したという出入国管理及び難民認定法違反(判示第4)の事案である。 まず,判示第1の犯行についてみるに,被告人らは,金品強取の目的で犯行に及んだものであって,利欲的かつ自己中心的な動機に酌量の余地はないこと,被告人らは,被害者(B)が相当の資産を有し,女性だけで住んでいることに目をつけて,その居宅があるマンションの下見を重ねたり,犯行を容易に遂行するためガムテープやナイフ等を用意するなどの周到な準備をしていたものであって,計画性が高い犯行であること,被告人らは,男3名で,深夜,被害者2名が就寝しているところをねらってその居宅に侵入し,被害者2名に対し,ガムテープで緊縛し,その顔面,頭部等を殴打したり,ナイフを突き付けながら生命に危害を及ぼすかのような言葉を申し向けるなどの強度の暴行・脅迫を加え,被害者2名をして金品の所在場所に案内させるなどして,金品を強取したものであって,犯行態様は悪質かつ卑劣というほかないこと 生命に危害を及ぼすかのような言葉を申し向けるなどの強度の暴行・脅迫を加え,被害者2名をして金品の所在場所に案内させるなどして,金品を強取したものであって,犯行態様は悪質かつ卑劣というほかないこと,その犯行による財産的損害は,現金が約171万円,物品が財布等121点(時価合計約8729万7000円相当)にのぼっており,極めて多額であるところ,全く被害回復はなされておらず,また,被害者2名の負った傷害の程度も軽くはないなど,結果は重大であること,被告人は,少なくとも2度にわたり上記マンションを下見し,犯行においても,自ら被害者2名に暴行・脅迫を加えたり,金品の所在場所に案内させるなどしているのであって,主体的かつ積極的に関与していたといえること,被害者2名は,最も安心できる場所であるはずの自宅において就寝中,突然に本件被害に遭ったものであって,両名の受けた精神的衝撃,肉体的苦痛は大きく,その処罰感情には非常に厳しいものがあること,被告人からは,これまで被害弁償等の慰謝の措置は何ら講じられておらず,将来的にも十分な被害弁償等がなされる見込みは乏しいこと,被告人は,捜査段階において,犯行時にはまだ日本にいなかったとの弁解を繰り返して,終始犯行への関与を否認し,自己の刑事責任を免れようとしていたこと,被告人は,公判廷では犯行への関与を認めているものの,共犯者2名の役割等をことさら強調するなどしており,その供述態度からは,真摯な反省よりも,自己の刑事責任を少しでも軽減したいという姿勢が強く窺われることなどを考え併せると,判示第1の犯行の刑事責任は相当に重いといわざるを得ない。 次に,判示第2及び第3の各犯行についてみるに,判示第2の犯行は,所携の特殊警棒で被害者の頭部等を数回にわたり殴打したものであって,その犯行態様は悪質かつ危険であること, 重いといわざるを得ない。 次に,判示第2及び第3の各犯行についてみるに,判示第2の犯行は,所携の特殊警棒で被害者の頭部等を数回にわたり殴打したものであって,その犯行態様は悪質かつ危険であること,被害者は全治約2か月間を要する右環指中節骨骨折,頭部外傷の傷害を負っており,その傷害の程度は軽くないこと,被告人は,捜査段階から一貫して,被害者が先に特殊警棒で殴りつけてきたなどと,不合理な弁解をしており,反省の態度が窺われないこと,被告人は,判示第2の被害者らの追跡から逃走を図ろうとする中で,判示第3の犯行に及んだものであって,犯行に至る経緯やその動機に酌むべき点はないこと,判示第3の犯行による財産的損害は軽微なものとはいえず,被害会社のタクシー運行の業務にまで支障が及んでいることなどを考え併せると,判示第2及び第3の各犯行の刑事責任も軽くはないというべきである。 そして,判示第4の犯行についてみるに,被告人は,密入国の方法により本邦に上陸し,不法に在留したものであって,犯行に至る経緯に酌むべき点はないこと,被告人は,約3年8か月の長期間にわたり本邦に不法に在留していたものであって,我が国の外国人の適正な出入国管理を害した程度は小さくないこと,被告人は,その間に,判示第1のような重大犯罪にも及んでいたものであって,在留期間中の行状も良いものではなかったこと,被告人は,本邦に入国した時期等について,公判段階の途中まで虚偽の供述をしていたことなどを考え併せると,判示第4の犯行の刑事責任もまた軽くはないというべきである。 してみると,判示第1の犯行については,被告人は,公判廷では犯行への関与を認めて,被害者2名に対する謝罪の言葉を述べていること,判示第2の犯行については,被害者の客引き口上と接客内容とが異なっていたことに端を発したものであって いては,被告人は,公判廷では犯行への関与を認めて,被害者2名に対する謝罪の言葉を述べていること,判示第2の犯行については,被害者の客引き口上と接客内容とが異なっていたことに端を発したものであって,被害者にも責められるべき点があること,判示第3の犯行については,被告人は,捜査段階から事実を認めており,被害会社に現金8万円を支払って示談を成立させていること,被告人には本邦における前科がないこと,被告人は,本件で1年2か月以上の期間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ないから,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役13年)よって,主文のとおり判決する。 平成17年1月17日神戸地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官森岡安廣裁判官川上宏 裁判官酒井孝之

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