主文 原判決を次のとおり変更する。 (1)被控訴人は,控訴人に対し,221万2370円及びこれに対する平成17年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)控訴人のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は,控訴人に対し,545万7370円及びこれに対する平成17年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要 本件は,平成15年5月下旬ころ,左大腿部に熱傷を負った控訴人が,その被害は当時使用していた携帯電話機の欠陥により生じたものであるとして,その製造業者である被控訴人に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づき,損害金545万7370円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成17年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審が控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が不服を申し立てた。 前提となる事実(1)当事者 ア控訴人は,昭和30年4月30日生まれの男性である。 イ被控訴人は,情報・通信機器等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,平成○○年○月○日に旧商号から現商号に商号変更した。 (2)本件携帯電話と本件リチウムイオン電池ア被控訴人は,平成13年9月,携帯電話機「C」(製造番号○○○○)を製造し(以下「本件携帯電話」という。),これを出荷した。 イ本件携帯電話には,被控訴人が同年8月に製 と本件リチウムイオン電池ア被控訴人は,平成13年9月,携帯電話機「C」(製造番号○○○○)を製造し(以下「本件携帯電話」という。),これを出荷した。 イ本件携帯電話には,被控訴人が同年8月に製造したリチウムイオン電池の電池パック(製造番号○○○)(以下「本件リチウムイオン電池」という。)が装備されていた。 (3)控訴人による本件携帯電話の使用控訴人は,平成14年1月6日,株式会社Dから本件携帯電話を購入し,平成15年5月下旬ころも,これを使用していた。 (4)控訴人の被害控訴人は,平成15年5月下旬ころ,その左大腿部に熱傷を負い,これにより同年6月5日,EクリニックのF医師から,病名「熱傷2度」,摘要「左大腿部に携帯電話の形に一致した熱傷による紅斑を認めます。」との診断を受けた(以下「本件熱傷」という。)。 争点と当事者の主張(1)控訴人の本件熱傷は,本件携帯電話に起因するか(争点1)ア控訴人の主張(ア)本件熱傷の受傷時期及びその原因等について控訴人は,平成15年5月20日午後8時30分から午後11時までの間(以下「本件時間帯」という。),本件携帯電話をズボン前面左側ポケット内に携帯してコタツで飲食していた。 控訴人は,翌21日午前1時から2時ころ,左大腿部の痛みで目を覚まし,そこにやけど跡(本件熱傷)を確認した。受傷状況の写真,やけ ど跡寸法を記載した図面,F医師の診断に係る各診断書及び照会に対する回答書によれば,本件熱傷がその形状,位置などから本件携帯電話によるものであることは明らかである。 (イ) 本件熱傷は,低温熱傷であること本件熱傷は,受傷状況の写真,F医師の診断に係る各診断書及び照会に対する回答書,診断時は熱傷による紅斑が認められる状況からみて低温熱傷というべきである。 (ウ)本件携帯電話 は,低温熱傷であること本件熱傷は,受傷状況の写真,F医師の診断に係る各診断書及び照会に対する回答書,診断時は熱傷による紅斑が認められる状況からみて低温熱傷というべきである。 (ウ)本件携帯電話は低温熱傷をもたらす程度に発熱することはあり得ること低温熱傷は,圧迫が存すれば42度の熱源でも生じ得るのであるから,被控訴人の実証実験を前提とした場合でも,一般に携帯電話機が低温熱傷をもたらすほどに発熱することがあり得るというべきである。また,リチウムイオン電池は,本来的に発熱の危険性を内包していることから,本件携帯電話に装備されている本件リチウムイオン電池が発熱したことも十分に考えられる。何よりも,携帯電話機について,現実に発熱事故が多数発生していることが明らかになってきていることから,本件携帯電話が低温熱傷をもたらすほどに発熱することは,十分にあり得るというべきである。なお,控訴人による温度実験調査では,本件携帯電話は,最高50.9度,51.0度,53.4度もの温度上昇を示した。 (エ)本件熱傷の原因が本件携帯電話のほかにはあり得ないこと控訴人には,本件熱傷のほかにアレルギー等の皮膚症状はみられず,また,受傷の前後を通じて取り立てて熱源に接していないのであるから,本件熱傷の原因は,本件携帯電話のほかにはあり得ない。 (オ)まとめ以上のように,控訴人は,本件時間帯にズボン前面左側ポケット内に本件携帯電話を入れており,本件時間帯に本件熱傷を負ったものである こと,本件熱傷が低温熱傷であること,本件携帯電話が一般に低温熱傷をもたらすほどに発熱すること(異常発熱)があること,本件では,ほかに本件熱傷の原因となる事由がないことを総合考慮すれば,控訴人が本件携帯電話に起因して本件熱傷を負ったことは明らかである。 イ被控訴人の主張(ア 発熱すること(異常発熱)があること,本件では,ほかに本件熱傷の原因となる事由がないことを総合考慮すれば,控訴人が本件携帯電話に起因して本件熱傷を負ったことは明らかである。 イ被控訴人の主張(ア)本件熱傷の時期,原因は不明であることそもそも,受傷時期に関する控訴人の主張は変遷を重ねており,信用性に乏しい。すなわち,控訴人は,平成15年9月24日付け被控訴人宛て「ご通知」と題する書面では,受傷時期について「同年5月19日午前7時50分ころから午後8時20分ころまでの間,」と記載しているところ,平成17年6月2日提訴に係る本件訴状では,「平成15年5月20日午前7時50分ころから午後8時20分ころまでの間,」と主張し,原審係属中の平成18年ころに至って,本件時間帯に主張を変更するようになったものである。 また,控訴人は,本件熱傷の受傷状況についての記憶も最初からあいまいであり,かつ,熱傷跡に気付いたときも,その原因について思い当たるところがなかったという。本件熱傷跡の写真も平成15年6月5日になってから撮影されたものであるし,Eクリニックを受診したのも同日であることから,受傷に気が付いてから相当期間が経過しているということができる。 本件熱傷の跡は,本件携帯電話の形状や構造,材質などからして,これを熱源とするものとは重要な点で異なっている。特に,本件携帯電話のアンテナ取付部分は,構造上空洞となっており,かつ,材質も樹脂であることから,その部分が熱傷被害を及ぼすほど加熱することは考えられない。 また,控訴人が受傷後何時間も気がつかないとは考え難いし,熱傷を 負いながら入浴しても気付かないということも考え難い。 結局のところ,控訴人の本件受傷の時期はもちろん,その原因についても不明というべきである。 (イ)本件熱傷について,低温 考え難いし,熱傷を 負いながら入浴しても気付かないということも考え難い。 結局のところ,控訴人の本件受傷の時期はもちろん,その原因についても不明というべきである。 (イ)本件熱傷について,低温熱傷であることの立証はないことF医師の診断に係る上記各診断書及び回答書にはこれが低温熱傷であるとの記載はなく,ほかに本件熱傷が低温熱傷であることを裏付ける証拠はない。 (ウ)本件携帯電話が低温熱傷をもたらすほどに発熱することはあり得ないこと被控訴人は,本件携帯電話と同機種の複数の携帯電話機を用いて,その使用時における温度上昇の程度,部位を確認するための実証実験を行ったが,音声通話状態の最大送信出力時に41.8度程度に至る場合はあったものの,42度を上回ることはなく,この程度では異常発熱とまではいえないし,低温熱傷をもたらすほどに発熱することはなかったものである。低温熱傷が発生するためには,少なくとも44度程度の熱源が長時間にわたって皮膚に触れる状況が必要であるところ,控訴人は,上記状況の存在について立証していないというべきである。 加えて,異常発熱した携帯電話機ならば,その後,使用不能になるはずのところ,本件携帯電話は,本件熱傷事故発生の前後を通じて,控訴人によって通話等に利用されていたことは控訴人も認めるところであり,正常に機能していたことが通話料記録などからも認められるから,その期間中に異常発熱の事実が介在していないことは明らかである。 (エ)本件熱傷の発生源が,本件携帯電話のほかにもあり得ること仮に,控訴人が本件時間帯に本件熱傷を負い,かつ,それが低温熱傷であったとしても,本件熱傷の跡は,本件携帯電話の形状や構造,材質などからして,これを熱源とするものとは重要な点で異なっている。ま た,控訴人が本件時間帯に利用していたコタツの つ,それが低温熱傷であったとしても,本件熱傷の跡は,本件携帯電話の形状や構造,材質などからして,これを熱源とするものとは重要な点で異なっている。ま た,控訴人が本件時間帯に利用していたコタツの熱量等の事情を考慮すると,コタツの発熱のみによって熱傷を負ったなど,本件熱傷の原因がほかにも考え得るところである。 (オ)まとめ上記のとおり,控訴人の本件受傷の経緯は極めてあいまいであり,本件携帯電話が本件熱傷発生後も控訴人によって正常に使用されていたことからもわかるように,本件時間帯に本件携帯電話の電話機本体であれ,本件リチウムイオン電池であれ,異常発熱した形跡はなく,本件熱傷は,本件携帯電話又は本件リチウムイオン電池の発熱を原因として生じたものではないし,本件熱傷の発生源が本件携帯電話であるとは断定できないから,本件熱傷は,本件携帯電話又は本件リチウムイオン電池の発熱を原因として生じたものではない。 (2)被控訴人の製造に係る本件携帯電話に欠陥ないし過失はあるか(争点2)ア控訴人の主張控訴人は,本件携帯電話をポケット内に収納して携帯するという通常の方法で使用していたにもかかわらず,本件携帯電話が携帯使用中に異常発熱したことにより,本件熱傷を負ったものであるから,本件携帯電話には,携帯使用中に異常発熱するという設計上又は製造上の欠陥があることは明らかである。なお,本件時間帯に本件携帯電話の電話機本体又は本件リチウムイオン電池が異常発熱したものと考えられるが,製造物責任法においては,控訴人がその欠陥の部位,具体的原因を主張・立証するまでの責任はない。 イ被控訴人の主張本件携帯電話の異常発熱の事実が認められない以上,本件携帯電話に本件熱傷を生じさせる設計上又は製造上の欠陥はない。そして,本件携帯電話に何ら欠陥がない以上,被控訴人 任はない。 イ被控訴人の主張本件携帯電話の異常発熱の事実が認められない以上,本件携帯電話に本件熱傷を生じさせる設計上又は製造上の欠陥はない。そして,本件携帯電話に何ら欠陥がない以上,被控訴人がこれを製造,出荷したことについて 不法行為法上の過失もない。 (3)本件携帯電話に警告表示上の欠陥はあるか(争点3)ア控訴人の主張仮に,本件熱傷がコタツの輻射熱又は対流熱の影響により本件携帯電話のきょう体が加熱されて生じたものならば,製造者としては,本件携帯電話の使用に際してポケット内に収納したままコタツに入れば熱傷被害を生じ得ることを製品の使用者に対し警告する義務を負っていたと解すべきところ,本件携帯電話及びその取扱説明書には,特にズボンのポケット内に携帯する用法を注意・禁止する旨の記載がなく,購入時にもその旨の説明はなかったから,警告表示上の欠陥があるというべきである。 イ被控訴人の主張本件携帯電話の異常発熱の事実が認められない以上,本件携帯電話をポケット内に携帯する用法について注意・禁止する説明などがなかったとしても,警告表示上の欠陥はない。また,仮に,コタツの輻射熱又は対流熱の影響により本件携帯電話のきょう体が加熱されて低温熱傷が生じ得るとしても,待ち受け状態の携帯電話機は,他の同様の形状の物体と変わるところがないから,このような物体すべてについてポケットに収納してコタツに入ってはならない旨の警告表示が必要とは解されない。さらに,本件携帯電話の取扱説明書には,本件携帯電話を高温の熱源に近づけないようにという警告表示があるところ,コタツの熱源は,まさに高温の熱源であるから,同警告表示は,単体としてであれ,ポケットに入れた状態であれ,コタツの熱源に近づけないようにとの趣旨も含むものであって,通常人の理解が一般的に可能である コタツの熱源は,まさに高温の熱源であるから,同警告表示は,単体としてであれ,ポケットに入れた状態であれ,コタツの熱源に近づけないようにとの趣旨も含むものであって,通常人の理解が一般的に可能であるところから,警告表示上の欠陥はないというべきである。 (4)控訴人の損害(争点4)ア控訴人の主張 本件事故によって控訴人が被った損害は,治療費1万2370円,調査費用150万円,慰謝料300万円及び弁護士費用94万5000円の合計545万7370円である。 イ被控訴人の主張争う。 第3当裁判所の判断 本件に関する事実関係前記前提となる事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,本件に関する事実関係として,以下の事実を認めることができる。 (1)控訴人の職業等ア控訴人は,地方公務員であり,平成15年5月当時,K課に所属し,設計業務やその業者への発注と現場立会監督業務などを担当していた。 イ控訴人は,肩書住居地から上記勤務先まで自動車を運転して通勤し,帰宅後,居間のコタツで晩酌をしながら約2時間くらい夕食を取ることにしていたが,時折そのままうたた寝をすることもあった。 (2) 本件携帯電話ア本件携帯電話は,平成13年9月に被控訴人が製造(製造番号○○○○)したC型折りたたみ式携帯電話機で,引出式のアンテナが付いており,これに被控訴人が同年8月に製造(製造番号○○)したリチウムイオン電池の電池パック(本件リチウムイオン電池)が装備されている。 イ本件携帯電話は,被控訴人から携帯電話に係る電気通信事業者である株式会社Lに出荷され,その系列会社である株式会社Dで販売された。 ウ控訴人は,平成14年1月6日,株式会社Dから本件携帯電話を購入し,併せてその取扱説明書を受け取った。 (3) 控訴人による本件携帯電話の使用状況ア その系列会社である株式会社Dで販売された。 ウ控訴人は,平成14年1月6日,株式会社Dから本件携帯電話を購入し,併せてその取扱説明書を受け取った。 (3) 控訴人による本件携帯電話の使用状況ア控訴人は,平成15年5月当時,本件携帯電話について,私用のほか, 職務上,現場立会監督業務などのため現場に赴くこともあったことから,その際の連絡用に使用することもあった。なお,当時,控訴人が使用していた携帯電話機は,本件携帯電話のみである。 イ本件携帯電話の使用状況は,原判決9頁4行目から同10頁3行目までに記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。 ウ本件携帯電話の使用に伴う利用料金のうち,平成15年2月利用分から平成16年3月利用分に係るダイヤル通話料及びパケット通信料の課金状況については,前記認定のとおりであるところ,平成15年2月利用分から同年8月利用分にかけて,毎月2460円から6000円のダイヤル通話料が課せられているが,他方,パケット通信料については,平成15年2月利用分,同年6月利用分は0円となっているほか,多い月でも1791円にとどまっている。また,同年9月以降の利用状況を見ると,ダイヤル通話料については同年9月,10月利用分がいずれも0円だが,同年11月以降平成16年3月利用分まで,毎月276円から1836円が課せられ,翌4月以降平成18年5月利用分に至るまで,いずれも0円となっている。パケット通信料については,平成15年9月利用分以降平成18年5月利用分に至るまで,いずれも0円となっている。 エ控訴人は,平成16年3月7日,新しく携帯電話機を購入し,その後は本件携帯電話について日常の使用をしなくなったものの,契約は継続している。 (4)平成15年5月20日の控訴人の行動ア控訴人は,平成15年5月20日午 月7日,新しく携帯電話機を購入し,その後は本件携帯電話について日常の使用をしなくなったものの,契約は継続している。 (4)平成15年5月20日の控訴人の行動ア控訴人は,平成15年5月20日午前7時50分ころ,肩書住所地を出て自動車で勤務先に向かったが,その際に本件携帯電話をズボン前面左側ポケットに入れた。 イ控訴人は,同日午前8時30分ころ,○○○に出勤し,その後現場立会監督業務などのため2か所の現場に赴いた後,設計業務に従事した。平成 15年5月当時は,翌月4日締切の設計業務など設計及び設計変更業務にも従事し,多忙であった。 ウ控訴人は,5月20日の業務中,現場への連絡用のため2,3回程度本件携帯電話を使用したが,支障なく連絡は済ませたし,現場作業や運転中,事務所でデスクワークをしている間においても,本件携帯電話をズボン前面左側ポケットに入れたままにしていたが,特に異変は感じなかった。 エ控訴人は,同日午後7時30分ころ,勤務を終え,午後8時過ぎに帰宅し,仕事用の服装のままコタツに入り,午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯),居間のコタツで晩酌(焼酎400cc程度をロックで飲酒)をしながら夕食を取った。この間,控訴人は,コタツの中で足を伸ばしたり,胡座をかくなどしていたが,疲れていたこともあってコタツを出ることはなかったし,酔って居眠りをしてしまったときもあった。その間,控訴人は本件携帯電話を同ポケットに入れたままであった。 オ控訴人は,その後,入浴の上,同日午後11時10分ころ就寝した。その際,本件携帯電話は,机の上に置いたACアダプタで充電中で,控訴人の身体には接触した状態ではなかった。 (5)控訴人の被害発見状況ア控訴人は,平成15年5月21日午前1時ないし2時ころ,就寝中,ひりひりして痛 は,机の上に置いたACアダプタで充電中で,控訴人の身体には接触した状態ではなかった。 (5)控訴人の被害発見状況ア控訴人は,平成15年5月21日午前1時ないし2時ころ,就寝中,ひりひりして痛い感じがして目が覚めた。見ると控訴人の左大腿部にみみず腫れがあり,これを妻と確認し,本件熱傷に気が付いた。翌朝になってから見ると,水ぶくれになっていた。昨日着用していた作業ズボンには支障はなかった。 イ控訴人は,ほかにみみず腫れや水ぶくれの原因として思い当たることがなく,熱傷の熱傷部分が携帯電話機程度の大きさで,左大腿部がズボン前面左側ポケットに対応することから,同ポケットに入れていた本件携帯電話と関係があることを疑ったが,当時,前記のとおり納期の迫る設計業務 を抱えていたこともあって,医療機関を受診するなどの特段の対応を取らなかった。 (6)低温熱傷の概念及び発症条件ア低温熱傷の概念及び発症条件については,原判決4頁26行目から同8頁5行目までに記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。 イ上記認定事実によれば,人間の場合,皮膚に熱傷を起こす最低表面温度は44度程度であり,接触時間,接触圧や皮膚の血流状態等によっては,より低温の42度程度でも低温熱傷を発症し得るものであり,熱傷の程度が軽傷にみえても,その治癒,治療には長時間を要することがあることが認められる。 (7)控訴人による問合わせア控訴人は,平成15年5月31日,本件携帯電話を持参して株式会社Dの岩沼店を訪れ,調査を依頼した。控訴人の申告内容は,「先週(5月19日の週),本件携帯電話をズボンの前ポケットに入れていたら低温やけどをした。熱いという感じはなかったが,携帯の形でやけどの痕が残った。 夜中に足(腿)が痛くなり目が覚めた。なぜこうなったかを知りたい。」など ,本件携帯電話をズボンの前ポケットに入れていたら低温やけどをした。熱いという感じはなかったが,携帯の形でやけどの痕が残った。 夜中に足(腿)が痛くなり目が覚めた。なぜこうなったかを知りたい。」などというものであった。株式会社Dは,控訴人から本件携帯電話を預かり,代替機を渡した。 イ株式会社Dの宮城支店のM主査は,平成15年6月3日,電話で控訴人から事情を聴いたところ,控訴人は,発生日時は「5月19日の週」ということで日時は特定しなかったものの,被害発見時の状況については,5月31日の説明時と同様の事実を具体的に話し,本件熱傷の現状については,「直りかけてきている。水ぶくれが乾いてきて,現在かさかさ状態。」,原因については,「昼間の現場作業中や運転中,事務所にいる間,ズボンの前ポケットに入れ使っているが,なんともなかった。ポケットには車のキーと一緒に入れている場合があるがそれが原因とは思えない。」と前回 と同様の内容を答えた。 ウMは,同年6月5日,控訴人の勤務先を訪れ,控訴人からやけど跡(本件熱傷)を写した写真をACアダプタと共に受け取り,状況を尋ねた。Mは,控訴人から本件熱傷の現状について,「直りかけてきてかさぶたが取れ始めてきた。痛みは特にない。」との回答を得るとともに,調査を行う必要があることから,診断書を提出するよう依頼した。 (8)診断結果ア控訴人は,平成15年6月5日,Eクリニックで本件熱傷について診察を受け,F医師から,病名「熱傷2度」,摘要「左大腿部に携帯電話の形に一致した熱傷による紅斑を認めます。」との診断を受けた。その際の治療費は,診断書料2000円を含めて7670円である。 イMは,同月9日,控訴人の勤務先を訪問し,上記診断書を受領した。 (9)本件携帯電話の解析ア宮城支店から報告を受けた株式 た。その際の治療費は,診断書料2000円を含めて7670円である。 イMは,同月9日,控訴人の勤務先を訪問し,上記診断書を受領した。 (9)本件携帯電話の解析ア宮城支店から報告を受けた株式会社DのPL対策責任者は,株式会社Lに対し,本件携帯電話,本件リチウムイオン電池,ACアダプタを「PLお客様情報シート」と共に送付して,調査を依頼した。なお,上記シートの「想定される事故原因等」欄には,「株式会社DS受付時低温やけどと言う申告ですが,低温やけど以外に液体による皮膚かぶれの可能性についても,検証をお願いいたします。」との記載がある。 イ株式会社Lは,同年6月上旬ころ,被控訴人に対し,本件携帯電話等の解析を依頼した。 ウ被控訴人は,そのN製品審査グループ部品審査チームに本件携帯電話の解析を行わせた。同部署は,被控訴人において,市場に出荷された製品について,品質に関わるクレームがあった場合に,それに対処することも担当していた。 エ本件携帯電話の解析結果は,原判決8頁7行目から同9頁3行目までに 記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。 オ解析結果は,要するに,本件携帯電話,本件リチウムイオン電池,ACアダプタのいずれも正常に動作し,また,温度上昇確認において通常品と差異がなく,異常発熱の痕跡は見られないというものであった。もっとも,本件リチウムイオン電池に係る電池パック下部のコネクタカバーが喪失しているため,接点部付近に多量のホコリが付着していた。 カ被控訴人は,株式会社Lに対し,平成15年6月16日付け「C発熱・火傷申告品解析報告」と題する書面により,上記の解析結果を報告し,株式会社Lは,株式会社Dに対し,同月17日付け「CPL調査報告書」により,調査結果を報告した。なお,上記「C発熱・火傷申告品解析報告 告品解析報告」と題する書面により,上記の解析結果を報告し,株式会社Lは,株式会社Dに対し,同月17日付け「CPL調査報告書」により,調査結果を報告した。なお,上記「C発熱・火傷申告品解析報告」の「3.原因」欄には,「今回の不具合は当該携帯機が原因ではなく何らかの別原因で火傷と考えられる皮膚疾患に至ったものと推定します。」,控訴人が行った使用状況の申告から「昼間の使用中に異常な熱感は無かったものと考えられます。このことから,当該携帯機の異常発熱は無かったものと判断します。」,「送付された写真から,火傷の皮膚疾患部位以外にお客様の手の甲,親指も赤色に変色しているように見えることから,単純な局部火傷ではなく,アレルギー等の別原因による可能性も考えられますが,皮膚の特徴は個々人に違いがあるため,原因の特定は不可能と判断します。」との記載がある。 (10)控訴人に対する報告ア株式会社DのMは,平成15年6月23日,上司のO課長と共に控訴人をその勤務先に尋ね,株式会社D宮城支店長名の控訴人宛て同日付け「Cの調査報告について」と題する書面を交付した上,上記「C発熱・火傷申告品解析報告」の写真部分を示しながら説明し,調査・解析の結果,本件携帯電話に温度上昇等の異常が確認されなかったので携帯電話機が原因のやけどではない,別の原因だと思われる旨を伝えるとともに,診断書作 成代金を支払うので診断書に係る領収書の用意を依頼した。その際,控訴人から,本件熱傷の現状について,「今,傷は大分治りかけてきているよ。」とのその後の経過を聞くとともに,ズボンを脱いで左内股を見せられたところ,かさぶたは取れていた。 イ控訴人は,同年7月8日,株式会社D岩沼店を訪れ,代替機を返却し,本件携帯電話を受け取った。 (11)その後の交渉経過控訴人は,Mらと 脱いで左内股を見せられたところ,かさぶたは取れていた。 イ控訴人は,同年7月8日,株式会社D岩沼店を訪れ,代替機を返却し,本件携帯電話を受け取った。 (11)その後の交渉経過控訴人は,Mらとの間で,本件熱傷の原因について話し合いを重ねたが,納得のいく回答を得られなかった。また,控訴人は,控訴人代理人弁護士に委任して,被控訴人に対し,本件熱傷の原因分析,報告を求めたが,被控訴人からは,本件携帯電話が本件熱傷の原因とは考えられないとの回答がなされた。 (12)本件熱傷のその後の状況ア控訴人は,平成16年1月14日,F医師から,病名「熱傷後色素沈着」,摘要「左大腿に熱傷治ゆ後の色素沈着を認めます。」との診断を受けた(甲4)。その際の治療費は,診断書料2000円を含めて4700円であった。 イF医師は,控訴人代理人からの弁護士会照会に対し,平成17年1月11日,本件熱傷について,受診時は紅斑とりんせつ(鱗屑)となっており,熱傷2度・浅層が治癒してきている状態と判断した,患者(控訴人)の携帯電話機が当たってひりひりしたという話と,携帯電話機に一致した紅斑であることから,携帯電話機が原因の熱傷と診断した,受診時には今回の症状以外の皮膚症状はみられなかった,他のアレルギー等の症状はみられなかった,今回の症状は境界鮮明な症状で携帯電話機の形に一致していることから,原因として携帯電話機が最も考えられる,上記診断書にいう色素沈着は症状治癒後の色素沈着のことで,固定された状態であり,徐々に 改善すると思うが,特に治療は必要なく,年単位でみていけば薄くなってくると思う旨回答した。 (13)被控訴人による実証実験ア被控訴人は,本訴提起後の平成17年8月5日,平成18年2月20日,同年6月27日及び同年7月10日,本件携帯電話機と同機 ば薄くなってくると思う旨回答した。 (13)被控訴人による実証実験ア被控訴人は,本訴提起後の平成17年8月5日,平成18年2月20日,同年6月27日及び同年7月10日,本件携帯電話機と同機種の正常に作動する携帯電話機を用いて実証実験を行った。 イこの本件携帯電話と同機種の携帯電話機に係る正常作動時における温度上昇に関する実証実験の概要及び結果については,原判決13頁15行目から同21頁末尾までに記載のとおりであるから,ここにこれを引用する。 (14)独立行政法人国民生活センターにおける本件携帯電話操作時の状況ア控訴人代理人は,原審において,平成18年1月13日付け調査嘱託申立書により,独立行政法人国民生活センター(商品テスト部)に対し,本件携帯電話の発熱状況に関する調査の嘱託を申し立てるとともに,同年2月3日,その準備のために本件携帯電話を当時控訴人が着用していたズボンと共に同センターに預けた。 イ同センターの担当者が本件携帯電話を操作しようとしたところ,同年2月3日には充電可能だったものの,充電完了後,充電用ACアダプタを取り外してもなお,充電ランプが赤色に点灯せず充電作用を継続する,上記赤色ランプ点滅時にキー操作を受け付けない,バッテリーを外すと上記赤色ランプがようやく消灯する,という事象を確認した。本件携帯電話は,同月6日及び7日もキー操作を受け付けず,同月8日及び同月13日には,電源も入らなかった。その後,電源が入り,キー操作を受け付けるようになったが,同月15日,サブディスプレイの表示が消えていて,キー操作も受け付けず,電源も入らない状態になった。 ウそこで,同センターでは,本件携帯電話を用いて温度調査を行うことは不可能と判断し,同月28日,本件携帯電話等を控訴人代理人に返還した。 争点1(本件熱傷 ず,電源も入らない状態になった。 ウそこで,同センターでは,本件携帯電話を用いて温度調査を行うことは不可能と判断し,同月28日,本件携帯電話等を控訴人代理人に返還した。 争点1(本件熱傷は本件携帯電話に起因するか)について(1)本件熱傷の受傷時期及びその原因等についてア前記認定の事実によれば,控訴人は,平成15年5月20日の日中には大腿部の異変は感じておらず,同年6月3日に電話で事情を聴取した株式会社DのMに対しても,「昼間の現場作業中や運転中,事務所にいる間,ズボンの前ポケットに入れ使っているが,なんともなかった。」旨を伝えている。ところが,上記認定のとおり,20日の夜,就寝後に,ひりひりして痛い感じがして目が覚め,左大腿部にみみず腫れを確認し,翌朝,水ぶくれを発見したというものであるところ,控訴人が自動車を運転して帰宅したのが同日午後8時過ぎであること,控訴人が入浴の上就寝したのが同日午後11時10分過ぎころであること,入浴及び就寝中に熱傷の原因となり得る事象が存在した形跡がないことからみて,控訴人が本件熱傷を負ったのは,同日帰宅後,入浴前のことと推認するのが相当である。そうすると,本件熱傷の受傷時期は,控訴人所論のとおり,平成15年5月20日午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯)であると認められる。 イまた,受傷状況の写真,やけど跡の寸法を記載した図面によれば,本件熱傷の位置,形状が控訴人の主張する本件時間帯に本件携帯電話を収納していた場所にほぼ一致すること,前記認定のとおり,F医師の診断に係る各診断書及び照会に対する回答書によれば,控訴人を診断した医師が,本件熱傷の症状は,境界鮮明な症状で携帯電話機の形に一致していることから,原因としては,携帯電話機が最も考えられるとしていること(診断時に 書及び照会に対する回答書によれば,控訴人を診断した医師が,本件熱傷の症状は,境界鮮明な症状で携帯電話機の形に一致していることから,原因としては,携帯電話機が最も考えられるとしていること(診断時に,控訴人が医師に対し,ことさら虚偽の説明をしたことをうかがわせる証拠はない。)などによれば,本件熱傷は,本件時間帯に,本件携帯電話に関連して生じたものと推認するのが自然である。 ウこれに対し,被控訴人は,受傷時期に関する控訴人の主張が変遷を重ね たことを理由に,その主張の信用性に疑いがあると主張するが,後記のとおり,本件熱傷が低温熱傷であることからすれば,その受傷に係る事象(熱傷事故)が被傷者に直ちに明確に意識される形で出現するとはいい難く,また,このことから,控訴人が受傷時期について明確な記憶を有しないこともまた,当然というべきであるから,上記主張の変遷もまた,その結果ということもできるのであって,そのことをもって控訴人の主張が信用性を欠くとまでは断定することはできない。 エまた,被控訴人は,受傷後の最初に株式会社Dにおいて事情を説明した際にも,その内容が「5月19日の週」であったなどとあいまいなものに終始し,時間帯はもちろん,日にちさえ特定しなかったこと,やけど跡に気付いたときに直ちに診察に行かなかったことから,控訴人の供述に信用性が乏しく,結局のところ受傷時期は不明というべきであると主張する。 しかしながら,控訴人にとっては,就寝中に本件熱傷に気付いたこととその原因として本件携帯電話のほか思い当たる節がないことが重要な事柄として記憶され,これを株式会社Dに申告したものと推察されるのであるから,受傷日についてややあいまいであったとしても,さほど説明内容の信用性に疑問を抱かせる事情とはならないものというべきである。 また,控訴人が熱傷 これを株式会社Dに申告したものと推察されるのであるから,受傷日についてややあいまいであったとしても,さほど説明内容の信用性に疑問を抱かせる事情とはならないものというべきである。 また,控訴人が熱傷跡に気付いた直後に医療機関を受診しなかった事実は認められるものの,本件熱傷の状況や痛みの程度が至急診察に赴くことを必要と感じさせるほどのものでなかったと思われることや,控訴人が当時,同年6月4日締切の設計業務など設計及び設計変更業務にも従事し,多忙であったことなどから,直ちに医療機関へ受診に赴くことができなかったものと推察される上,控訴人は,同年5月31日には株式会社Dに被害を申告し,調査のため本件携帯電話を預けた上,同年6月5日にはF医師の診察を受けているのであるから,直後に医療機関を受診しなかったことをもって,控訴人の供述に信用性が乏しいということはできない。むし ろ,控訴人が株式会社DのMに本件熱傷の現状についてその都度説明した「直りかけてきている。水ぶくれが乾いてきて,現在かさかさ状態。」(同年6月3日),「直りかけてきてかさぶたが取れ始めてきた。痛みは特にない。」(同月5日),「今,傷は大分治りかけてきているよ。」(同月23日)との各回答の内容及び同日,ズボンを脱いで見せた左大腿部では,かさぶたが取れた状況になっていたこと等の事情を総合考慮すると,控訴人が本件熱傷を受傷したのが同年5月20日であるとの推定がこれによっても裏付けられるものというべきである。 オさらに,被控訴人は,本件熱傷の痕跡が本件携帯電話の形状や構造,材質,特にアンテナ取付部分は構造上熱傷被害を起こし得ないことなどからして,これを熱源とするものではないと主張する。 しかしながら,被控訴人の実験においても,アンテナ取付部分は環境温度に対して約10度の温度上昇が テナ取付部分は構造上熱傷被害を起こし得ないことなどからして,これを熱源とするものではないと主張する。 しかしながら,被控訴人の実験においても,アンテナ取付部分は環境温度に対して約10度の温度上昇が認められること,同部分にも熱伝導物質である金属は内蔵されており,熱伝導は十分あり得ること,実際,アンテナの形に低温熱傷を負ったという報告もあることなどが認められるのであるから,本件熱傷の痕跡が本件携帯電話によるものであることと矛盾するものではない。 また,被控訴人は,控訴人が受傷後何時間も気付かないことや,熱傷を負いながら入浴しても気付かないことはあり得ないと主張する。しかし,低温熱傷のケースであれば,熱源から離れてから数時間後に水疱が生じたり,被害者がはじめて被害に気がつくこともあり得るとの知見がある上,控訴人は当時,飲酒して酔って居眠りをしてしまったこともあったのであるから,このような事態が存在したとしても,あながち不自然ではない。 (2)本件熱傷は,低温熱傷か低温熱傷の概念及び発症条件については前記認定のとおりであるところ,本件熱傷について,受傷状況の写真,やけど跡寸法を記載した図面,F医師 作成に係る各診断書及び弁護士会照会に対する回答書及び控訴人本人尋問の結果によれば,控訴人は,就寝中にひりひりして痛い感じがして目が覚め,見るとみみず腫れを確認し,翌朝水ぶくれを発見したこと,F医師が診察した際には,控訴人の左大腿部に熱傷による紅斑が認められ,その程度は熱傷2度であること,控訴人にとって受傷の前後を通じて取り立てて熱源に接した自覚がないという状況,就寝前には風呂に入ったという状況(高温熱傷であれば,その段階で気付くはずである。)及び控訴人が株式会社DのMに交渉の都度伝えた熱傷跡の治癒状況等の事情からみて,本件熱傷は,低温熱傷 いという状況,就寝前には風呂に入ったという状況(高温熱傷であれば,その段階で気付くはずである。)及び控訴人が株式会社DのMに交渉の都度伝えた熱傷跡の治癒状況等の事情からみて,本件熱傷は,低温熱傷と認められる。 (3)本件携帯電話は低温熱傷をもたらす程度に発熱することはあり得るかア携帯電話とは,無線通信を利用した電話機端末を携帯する形の移動型の電気通信システムのことをいい,基地局と呼ばれる有線ネットワークとの中継点と電話機が無線で通信し,さまざまな通信サービスを移動しながらにして受けられるものである。上記電話機端末(携帯電話機)は,アンテナ,スピーカー,マイクとこれらを制御する電子回路,入力のためのボタン及び電源(電池)から成っているところ,小さな容量の中にこれら部品を積み込んだ上,電子回路で結び,外部の電話機等と受信・発信するところから,携帯電話機が正常に作動している場合であっても,その動作状態に応じて機能を発揮するために電力を消費することにより発熱することや,電池内の内部抵抗によっても発熱することから,機器本体の温度が上昇することがあるのは,被控訴人も認めるところである。 前記認定事実によれば,被控訴人が行った本件各実証実験の結果においても,本件携帯電話と同機種の正常な携帯電話機について,自由空間において周囲温度に比しての温度上昇は,連続通話状態で8.0度,待ち受け状態で0.2度,アプリケーションソフト動作状態で3.9度であり,ズボン収納時においては,連続通話状態で4.2度ないし5.3度,待ち受 け状態で0.1度,アプリケーションソフト動作状態で1.4度となっている。 そして,本件各実証実験は,基本的に常温と考えられる25度を周囲温度として試みられているところ,周囲温度がより高い環境であれば,当該周囲温度に上記温度上昇分 ソフト動作状態で1.4度となっている。 そして,本件各実証実験は,基本的に常温と考えられる25度を周囲温度として試みられているところ,周囲温度がより高い環境であれば,当該周囲温度に上記温度上昇分が加算されることになる。 イ上記のとおり,携帯電話機は,一般に温度上昇しやすい性質を有している上,その構造上,電池を除いた電話機本体の内部でも回線の短絡(ショート)による不具合が起こることによって発熱する可能性もあり,また,電池自体にも構成部材が損傷することや外部から微粒子が入ることにより短絡することによって発熱する可能性もあり,電話機本体と電池との関係による不具合によって発熱する可能性もあるのであって,発熱の可能性を本来的に有する製品と認められる。 ウまた,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,製造業者である被控訴人は,上記の理由等による発熱の危険を防ぐため,携帯電話機の内部にヒューズ等の安全装置を具備していること,電池には外部短絡等による過電流や過放電を防止するための保護回路を設けていること,リチウムイオン電池の特性から外部短絡等により過度に電流が流れることによる発熱を防ぐため,温度を感知して電流を遮断するPTCという電流制限素子を内蔵していることが認められるところ,他方,PTC素子が作動するのは,大体3.6アンペア以上の電流が流れた場合として設計してあり,電話機本体が,常温と考えられる25度の環境で,60度くらい又は90度くらいに温度が上昇した場合を想定していることから,低温熱傷が問題となるような44度程度では上記PTCは作動しないことが認められる。 エ他方,携帯電話機ないし携帯電話機用電池については,それが被控訴人の製造に係るものであるかはともかくとして,使用者から独立行政法人国民生活センターや独立行政法人製品評価技術基盤機構(NI れる。 エ他方,携帯電話機ないし携帯電話機用電池については,それが被控訴人の製造に係るものであるかはともかくとして,使用者から独立行政法人国民生活センターや独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)及び経 済産業省などに対し,携帯電話機使用中に異常発熱したという申告が多数みられるほか,海外においても同様の事故事例が多数報告されているところである。また,被控訴人が納入したリチウムイオン電池で破裂やひび割れ,異常発熱などの事故事例も生じている。 オそこで,本件携帯電話について検討すると,前記のとおり,本件携帯電話は,被控訴人が平成13年9月(本件リチウム電池については同年8月)に製造し,控訴人が平成14年1月6日に購入して以後使用していたものであるところ,本件熱傷が発生した平成15年5月30日まで,製造から約1年8か月(本件リチウム電池については約1年9か月),購入から約1年5か月経過していることが認められる。購入後の使用状況については,詳細は不明であるが,前記認定に係る利用料金及び使用状況からみて,通常の使用程度・態様であったことが推認され,取り立てて異常な使用態様をもって使用された形跡はない。 本件熱傷発生後の申告に基づいて,被控訴人が本件携帯電話を解析した際には,本件携帯電話,本件リチウムイオン電池,ACアダプタのいずれも正常に動作し,また,温度上昇確認において通常品と差異がなく,異常発熱の痕跡は見られなかったことは前記認定のとおりであるが,他方,本件リチウムイオン電池に係る電池パック下部のコネクタカバーが何らかの理由により喪失していたため,その接点部付近に多量のホコリが付着していた事実が認められるところ,上記コネクタカバーの喪失によって,電池パック下部がむき出しになっていたことから,ホコリがその表面の接点部付近に 喪失していたため,その接点部付近に多量のホコリが付着していた事実が認められるところ,上記コネクタカバーの喪失によって,電池パック下部がむき出しになっていたことから,ホコリがその表面の接点部付近に止まらず,電池パック内部に混入した可能性も否定できないところである。 電池の内部に微少な物質が混入することによって,電池内部の電流が短絡(ショート)し,原因物質が融解して消滅するまで温度が上昇して,発熱する可能性も指摘されているところであるから,上記のようにホコリが 電池内部に混入した場合でも,電池が発熱する可能性があるというべきである。 カ他方,前記認定のとおり,本件各実証実験によれば,自由空間において周囲温度に比しての温度上昇は,本件携帯電話と同機種の正常な携帯電話機について行った場合でも,連続通話状態では8.0度の上昇を示す事実が認められるところ,実証実験は,基本的に常温と考えられる25度を周囲温度として試みられているところ,周囲温度がより高い環境であれば,当該周囲温度に上記温度上昇分が加算されることになることから,コタツ内の温度が37度であるならば,37度に上記温度上昇分8度が加算されて,45度前後になるのであるから,本件携帯電話と同機種の正常な携帯電話機をコタツ内において連続通話状態にした場合には,本件携帯電話と同機種の正常な携帯電話機の温度が45度前後に達する可能性もまた,否定できないものというべきである。 キまた,加熱により電池が短絡状態を惹起して発火したとも考えられる携帯電話機の爆発事故や何らかの外部熱源の接近又は接触により電池破裂に至ったものと考えられる携帯電話機の発煙事故も報告されているところである。 クそこで,本件時間帯における本件携帯電話の状況についてみるに,前記認定事実によれば,控訴人は,本件携帯電話をズ 池破裂に至ったものと考えられる携帯電話機の発煙事故も報告されているところである。 クそこで,本件時間帯における本件携帯電話の状況についてみるに,前記認定事実によれば,控訴人は,本件携帯電話をズボンの前面左側ポケットに入れたままコタツに入り,そのまま約2時間30分の間,過ごしたものであるところ,コタツ内では,コタツによる熱が加えられるところから,これが外部熱源となって本件リチウムイオン電池に作用し,熱暴走を引き起こし異常発熱につながった可能性もまた,否定できない。 ケそして,本件携帯電話が何らかの原因により温度上昇を来した結果,約44度かそれを上回る程度に達し,それが相当時間持続したことは十分にあり得るものというべきである。 コ被控訴人は,本件携帯電話が本件熱傷発生後も控訴人によって正常に使用されており,また,解析の結果においても,本件携帯電話の電話機本体であれ,本件リチウムイオン電池であれ,異常発熱した形跡はない旨主張するが,携帯電話機の温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時間持続する事象が発生したとしても,これにより当該携帯電話機がその後に必然的に使用不能になることを認めるに足りる証拠はなく,かえって,携帯電話機が50度ないし70度になっても電話機本体の機能が損傷することはなく,電池に何らかの短絡があっても,それがソフトショートに止まる場合はその後の使用が可能なこともあるところから,上記温度上昇の可能性の指摘は,本件携帯電話が,その後においても使用可能であった事実と矛盾するものではないというべきである。 サ以上に検討した結果によれば,本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度に発熱することは,控訴人所論のとおり,合理的に考えて十分あり得るものと認められる。 (4)本件熱傷の発生源が本件携帯電話のほかに 以上に検討した結果によれば,本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度に発熱することは,控訴人所論のとおり,合理的に考えて十分あり得るものと認められる。 (4)本件熱傷の発生源が本件携帯電話のほかにもあり得るかア控訴人が最初に受診した際に,本件熱傷以外の皮膚症状はみられなかったこと及び他のアレルギー症状もみられなかったことは,前記認定のとおりである。そして,本件熱傷の発生源が本件携帯電話のほかに存したことをうかがわせる証拠はない。 イこれに対し,被控訴人は,仮に,控訴人が本件時間帯に本件熱傷を負い,かつ,それが低温熱傷であったとしても,控訴人が本件時間帯に利用していたコタツの熱量等の事情を考慮すると,コタツの発熱のみによって熱傷を負ったなど,本件熱傷の原因がほかにも考え得る旨主張する。 ウそこで,検討するに,証拠及び弁論の全趣旨によれば,控訴人が本件時間帯に利用していたコタツは,その本体部分は15年以上前に購入したもので,その熱源部分は平成7年ころに交換したものであること,熱源部分 は,温度調節の方式が可変式(低,中,高の3段階),定格電圧100V,定格表消費電力500w,温度ヒューズ172℃であること,控訴人方では,毎年冬期間にはコタツに加えてファンヒータや石油ストーブも併用して暖を取り,4月から梅雨にかけての時期にはコタツのみを使用し,夕食はコタツで取ることが日常化していたこと,控訴人が平成18年9月10日にコタツ内に本件携帯電話を置いて温度を実験したところによると,室温31度に対し,体温36.3度,コタツ内温度37度であったこと,以上の事実が認められる。他方,コタツに何らかの異常が存在していたことはうかがえず,また,これまで,コタツ自体の熱によって控訴人又はその妻が熱傷を負う事故が発生した形跡はない。 エ本件時間帯に ,以上の事実が認められる。他方,コタツに何らかの異常が存在していたことはうかがえず,また,これまで,コタツ自体の熱によって控訴人又はその妻が熱傷を負う事故が発生した形跡はない。 エ本件時間帯における温度調節の段階は明確ではないものの,当時は5月下旬であるところから,相当に高温にする必要性は一般的には乏しく,控訴人が推定するように,「中」程度の段階であったものと思われる。また,本件時間帯に夕食を取りながら暖を取るためにコタツを使用したのであるから,本件時間帯におけるコタツ内温度は,上記実験結果の37度より高温度であったことも考えられるものの,冬期間よりもコタツの熱量が大きいとは考えにくいところである。 オそうすると,これまで熱傷を負う事故もなく推移してきたにもかかわらず,本件時間帯に限り,コタツの発熱により控訴人が熱傷を負ったとは考え難いところである上,コタツ自体の熱源が本件熱傷の原因と仮定すると,その傷痕の位置が大腿部のやや内側にあるのは不自然であるし,その形態も熱源であるヒーター部分と必ずしも符合せず,その大きさも控訴人の熱傷跡程度に止まるものかは,はなはだ疑問であることなどを併せ考慮すると,被控訴人所論のように,控訴人がコタツの発熱のみによって熱傷を負ったものと推認することはできないものというほかない。 カほかに本件熱傷の原因となる事由(他原因)について,被控訴人の具体 的な主張はなく,また,これをうかがわせるに足りる事情も認め難い。したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 (5)まとめ控訴人が平成15年6月5日時点において本件熱傷を負っていたことは,動かし難い事実であるところ,以上認定の事実によれば,控訴人は平成15年5月20日午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯)において,そのズ 5日時点において本件熱傷を負っていたことは,動かし難い事実であるところ,以上認定の事実によれば,控訴人は平成15年5月20日午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯)において,そのズボン前面左側ポケットに本件携帯電話を入れ,被害部位である控訴人の左大腿部と接触する状況にあったこと,本件携帯電話の位置,形状と本件熱傷の位置,形状はほぼ一致すること,本件熱傷は低温熱傷であること,本件携帯電話の温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時間持続すること,すなわち低温熱傷をもたらす程度に発熱する状態(異常発熱)になることは十分あり得ること,ほかに本件熱傷の原因となり得る事由は見当たらないことなどの諸事情が認められ,これらを総合考慮すれば,本件熱傷は,本件時間帯において,本件携帯電話が低温熱傷をもらたす程度に異常発熱したために生じたもの(本件熱傷が本件携帯電話に起因すること)と推認することができる。 争点2(欠陥ないし過失の有無)について(1)本件は,控訴人がその左大腿部に熱傷を負い,その原因は当時使用していた本件携帯電話の欠陥にあるとして,本件携帯電話の製造業者である被控訴人に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づき,損害賠償を請求するものであるところ,被控訴人は,控訴人の熱傷が本件携帯電話から発生したという製品起因性について否認するとともに,本件携帯電話の欠陥の存在についてもこれを否認している。 このような場合には,製造物責任法の趣旨,本件で問題とされる製造物である携帯電話機の特性及びその通常予見される使用形態からして,製造物責任を追及する控訴人としては,本件携帯電話について通常の用法に従って使 用していたにもかかわらず,身体・財産に被害を及ぼす異常が発生したことを主張・立証することで,欠 使用形態からして,製造物責任を追及する控訴人としては,本件携帯電話について通常の用法に従って使 用していたにもかかわらず,身体・財産に被害を及ぼす異常が発生したことを主張・立証することで,欠陥の主張・立証としては足りるというべきであり,それ以上に,具体的欠陥等を特定した上で,欠陥を生じた原因,欠陥の科学的機序まで主張立証責任を負うものではないと解すべきである。すなわち,本件では,欠陥の箇所,欠陥を生じた原因,その科学的機序についてはいまだ解明されないものであっても,本件携帯電話が本件熱傷の発生源であり,本件携帯電話が通常予定される方法により使用されていた間に本件熱傷が生じたことさえ,控訴人が立証すれば,携帯電話機使用中に使用者に熱傷を負わせるような携帯電話機は,通信手段として通常有すべき安全性を欠いており,明らかに欠陥があるということができるから,欠陥に関する具体化の要請も十分に満たすものといえる。 (2)これを本件についてみるに,携帯電話は,前記のとおり,無線通信を利用した電話機端末(携帯電話機)を携帯する形の移動型の電気通信システムのことをいい,その特性から,携帯電話機を衣服等に収納した上,身辺において所持しつつ移動でき,至る所で,居ながらにして電気通信システムを利用できることにその利便性や利用価値があるのであるから,これをズボンのポケットに収納することは当然通常の利用方法であるし,その状態のままコタツで暖を取ることも,その通常予想される使用形態というべきである。ちなみに,被控訴人も,ズボンのポケットに収納したままコタツで暖を取ることを取扱説明書において禁止したり,危険を警告する表示をしてないところである。 なお,被控訴人は,取扱説明書の本件携帯電話を高温の熱源に近づけないようにという警告表示がこれに当たるかのような主張 ことを取扱説明書において禁止したり,危険を警告する表示をしてないところである。 なお,被控訴人は,取扱説明書の本件携帯電話を高温の熱源に近づけないようにという警告表示がこれに当たるかのような主張をするが,コタツがそこにいう「高温の熱源」に当たるとは直ちにはいい難いし,上記警告表示が,携帯電話機をことさらコタツの熱源に接触させるような行為はともかくとして,これをズボンのポケットに収納した状態のままコタツで暖を取るという 日常的行為を対象にしているとは到底解されない(仮に,そのような日常的行為の禁止をも含む趣旨であるとしたならば,表示内容としては極めて不十分な記載であり,警告表示上の欠陥があるというべきである。)。 (3)そうすると,控訴人は,本件携帯電話をズボンのポケット内に収納して携帯するという,携帯電話機の性質上,通常の方法で使用していたにもかかわらず,その温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時間持続する事象が発生し,これにより本件熱傷という被害を被ったのであるから,本件携帯電話は,当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているといわざるを得ず,本件携帯電話には,携帯使用中に温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時間持続する(異常発熱する)という設計上又は製造上の欠陥があることが認められる。 (4)その原因として,具体的には,①前記のとおり,本件リチウムイオン電池に係る電池パック下部のコネクタカバーが喪失していたため,電池パック下部がむき出しになっていたことから,ホコリが電池パック内部に混入し,電池の内部に微少な物質が混入することによって,電池内部の電流が短絡(ショート)し,原因物質が融解して消滅するまで温度が上昇して,異常発熱した可能性が考えられるところ,ほかにも,②何らかの理由で本件リ 池の内部に微少な物質が混入することによって,電池内部の電流が短絡(ショート)し,原因物質が融解して消滅するまで温度が上昇して,異常発熱した可能性が考えられるところ,ほかにも,②何らかの理由で本件リチウムイオン電池に外部から力が加わった結果,電池内部に微細な損傷が生じ,その後の充放電の繰り返しにおいて損傷が拡大して電池の内部で短絡(ショート)が発生し,これにより本件リチウムイオン電池が異常発熱した可能性(独立行政法人製品評価技術基盤機構に対する平成21年1月20日付け調査嘱託の結果に類似と考えられる事例が報告されている。),③本件携帯電話が何らかの理由により,本件時間帯において待ち受け状態から通話状態に切り替わり,それが持続したことに加えて,コタツ内にあったことから周囲温度が37度以上となり,これに連続通話状態における8.0度程度の温度上昇が加わった結果,本件携帯電話の温度が45度前後に達し,これが本件時間帯 において持続した可能性(本件携帯電話を独立行政法人国民生活センターで調査した際,キー操作の異常があり,温度調査を行うことができなかったことは前記認定のとおりであり,控訴人によれば,本件以前から,待ち受け状態の本件携帯電話が着信していないのに,かすかに振動するなどの誤作動をしたと思われる経験が何度かあったようである。),④コタツの熱による加熱が外部熱源となって本件リチウムイオン電池に作用し,熱暴走を引き起こし異常発熱につながった可能性などを指摘し得るところである。そして,前記のとおり,低温熱傷が問題となるような約44度かそれを上回る程度の温度上昇では上記PTCは作動しない事実が認められ,ほかにこのような事態が発生し,温度上昇が44度程度で持続した場合の対応策が本件携帯電話(本件リチウム電池を含む。)に施されていた形跡はない。 度の温度上昇では上記PTCは作動しない事実が認められ,ほかにこのような事態が発生し,温度上昇が44度程度で持続した場合の対応策が本件携帯電話(本件リチウム電池を含む。)に施されていた形跡はない。 しかしながら,いずれにしても,また,ほかの原因が考えられるとしても,製造物責任法においては,控訴人がその欠陥の部位,具体的原因,異常発生の科学的機序等を主張・立証することまでは必要でないことは,前記のとおりである。 (5)以上によれば,本件携帯電話には製造物責任法2条2項にいう欠陥があったことが認められる。 なお,製造物責任法は,その4条で,製造業者等が,当該製造物をその製造業者等が引き渡したときにおける科学又は技術に関する知見によっては,当該製造物にその欠陥があったことを認識することができなかったこと(同条1号)等を証明したときは,同法3条に規定する賠償の責めに任じない旨規定するところ,本件において,被控訴人は,上記同法4条の免責の主張はしていない。 争点4(損害額)について(1)治療費等 1万2370円ア控訴人は,本件熱傷を負った結果,平成15年6月5日,Eクリニック でF医師の診察を受け,治療費5670円,診断書料2000円の合計7670円を支払った。 イ控訴人は,同様に,平成16年1月14日,F医師の診察を受け,治療費2700円,診断書料2000円の合計4700円を支払った(甲5)。 (2)調査費用 150万円ア証拠によれば,控訴人は,本件熱傷後,代理人弁護士を介して,被控訴人に対し,控訴人が本件熱傷を負ったことを告げ,今後の同種被害防止のために,原因等の調査・分析 150万円ア証拠によれば,控訴人は,本件熱傷後,代理人弁護士を介して,被控訴人に対し,控訴人が本件熱傷を負ったことを告げ,今後の同種被害防止のために,原因等の調査・分析を行った上,控訴人に報告するよう申し入れたところ,被控訴人は,代理人弁護士を介して,控訴人に対し,被控訴人が,本件熱傷に係るのと当該同種同機能の携帯電話機で,本件熱傷が惹起され得るものかにつき,徹底的に調査・分析をした結果,前記携帯電話機で控訴人が負わされたと言われる熱傷が惹起されうる可能性は,皆無であることが判明した旨通知した事実,別途送付された上記調査・分析結果の資料の記載は,被控訴人のN部門において本件携帯電話と本件リチウムイオン電池の解析と温度実験を行ったが異常がなかったことから,本件携帯電話が本件熱傷の原因とは考えられない旨の結論のみを簡単に要約したものにすぎなかった事実が認められるところ,上記調査・分析は,控訴人が株式会社Dに被害を申告した際に,株式会社Lの依頼により被控訴人が実施した解析のことを指し,上記控訴人代理人の申入れ後に改めて調査・分析を行った形跡はなく,仮に,被控訴人において,当該同種同機能の携帯電話機で本件熱傷が惹起され得るものかにつき,調査・分析を行ったことがあるとしても,その内容を開示,報告したものではない。 イ本件熱傷及び被控訴人の上記対応の結果,控訴人は,自ら独自に専門家に依頼して調査をすることを余儀なくされたことが認められ,その費用として150万円を上回る金額を負担した事実が認められる。 ウ以上の事実に,本件訴訟の性質,訴訟経過,相手方の応訴態度等を考慮 すれば,本件製造物の欠陥により生じた損害として,調査費用のうち150万円を被控訴人に負担させるのが相当である。 (3)慰謝料 訟の性質,訴訟経過,相手方の応訴態度等を考慮 すれば,本件製造物の欠陥により生じた損害として,調査費用のうち150万円を被控訴人に負担させるのが相当である。 (3)慰謝料 50万円控訴人は,本件熱傷により左大腿部に熱傷2度の傷害を負い,治療を余儀なくされ,熱傷後色素沈着の状況を残したほか,被控訴人の上記対応等によっても精神的苦痛を被ったものと認められる。本件熱傷に関し,株式会社Dから控訴人指定の口座に3万2000円の振込送金があった事実を考慮しても,控訴人の精神的苦痛を慰謝するには50万円の慰謝料をもって相当と思料する。 (4)弁護士費用 20万円控訴人は,本件訴訟の提起・追行を余儀なくされ,そのため弁護士を代理人として委任する必要性があったものと認められるところ,その内20万円をもって,相当因果関係のある損害と認める。 (5)以上によれば,本件において,製造物責任法3条により認められる損害額は,合計221万2370円となる。 よって,控訴人の本件請求は,被控訴人に対し,221万2370円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成17年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却べきである。 以上の次第であるから,当裁判所の上記判断と一部異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部裁判長裁判官小磯武男 裁判官山口均 文のとおり判決する。 主文 仙台高等裁判所第2民事部裁判長裁判官小磯武男 理由 裁判官山口均裁判官岡田伸太は,転補につき,署名押印することができない。
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