主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が,中労委平成8年(不再)第28号事件(初審・神奈川地方労働委員会平成7年(不)第3号事件)について,平成11年2月17日付けで発した命令を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,別法人の経営する旧病院の施設,業務等を引き継いで新病院を開設した際に,旧病院の職員であった被告補助参加人所属組合員2名を採用しなかったため,被告補助参加人がこれを不当労働行為であるとして,地方労働委員会に救済命令を申し立てたところ,同労働委員会が原告の行為が不当労働行為であると認めて救済命令を発し,被告も原告のした再審査申立てを棄却したため,原告がその取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は,末尾に証拠を摘示した。)(1) 医療法人社団仁和会(以下「仁和会」という。)は,昭和46年4月,神奈川県秦野市〈以下略〉において,精神科,神経科等を診療科目とする上秦野病院を開設して経営し,平成2年6月,これを越川記念病院と改称した。(上秦野病院の開設時期,越川記念病院への改称時期につき,乙13)(2)ア被告補助参加人は,上秦野病院当時から同病院の職員により組織されていた労働組合であり,越川記念病院における唯一の労働組合であった。 イ Aは,昭和58年,上秦野病院に看護助手として採用され,以来,越川記念病院となった後も引き続き看護助手として同病院に勤務してきた。 ウ Bは,昭和59年,上秦野病院に准看護婦として採用され,以来,越川記念病院となった後も引き続き准看護婦として同病院に勤務してきた。 エ A及びBは,被告補助参加人に所属する組合員である。 (3) 原告は,平成6年12月 上秦野病院に准看護婦として採用され,以来,越川記念病院となった後も引き続き准看護婦として同病院に勤務してきた。 エ A及びBは,被告補助参加人に所属する組合員である。 (3) 原告は,平成6年12月中旬ころ,仁和会との間で,原告が平成7年1月1日から越川記念病院の施設,業務等を引き継ぎ,その経営を行う旨を合意し,平成7年1月1日以降これを青山会みくるべ病院(以下「みくるべ病院」という。)として開設し,その経営を行っている。 (4) 仁和会は,平成6年12月31日をもって,A及びBを含む越川記念病院の全職員に対し,解雇する旨を通告した。 (5) A及びBは,みくるべ病院への雇用を希望したが,原告は,みくるべ病院の開設に際し,両名を採用しなかった(以下「本件不採用」という。)。 (6)ア被告補助参加人は,平成7年2月15日,本件不採用は,不当労働行為であるとして,神奈川県地方労働委員会(以下「神奈川地労委」という。)に対し,救済の申立てをした(神奈川地労委平成7年(不)第3号事件)。 神奈川地労委は,平成8年7月31日,本件不採用は不当労働行為であるとして,原告に対し,①A及びBの2名の採用並びに平成7年1月1日以降同人らが採用されるまでの間の賃金相当額の支払,②組合活動を理由に採用しないなどの差別的取扱いによる支配介入の禁止,③文書手交,を命じる別紙1を主文とする命令(以下「初審命令」という。)を発した。 イ原告は,初審命令を不服として,平成8年8月12日,被告に対し,同命令の取消しと救済申立ての棄却を求めて,再審査を申し立てた(中労委平成8年(不再)第28号事件)が,被告は,平成11年2月17日付けで,原告の再審査申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発し,原告は,同年3月9日その命令書の写しの交付を受けた。 2 争点 不再)第28号事件)が,被告は,平成11年2月17日付けで,原告の再審査申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発し,原告は,同年3月9日その命令書の写しの交付を受けた。 2 争点(1) 労働者が労働組合の組合員であることや組合活動をしたことを理由として労働者の採用を拒否することについて,労働組合法(以下「労組法」という。)7条1号,3号の適用があるか。 (2) 本件不採用が不当労働行為(労組法7条1号,3号)に当たるか。 3 争点に関する当事者の主張(原告)(1) 争点(1)(採用拒否への労組法7条1号,3号の適用の有無)についてア不当労働行為は,使用者と被用者との関係が成立した後における使用者の行為を対象とするものであるが,原告とA及びBとの間には,未だ労働契約関係が成立したことはないから,そのような当事者間においては不当労働行為の成否を論じる余地はない。 すなわち,労組法7条各号の規定は,雇入れの差別には適用がない。このことは,労働者の均等待遇を規定する労働基準法(以下「労基法」という。)3条も雇入れそのものについては差別的取扱を禁止していないこと,最高裁判所大法廷昭和48年12月12日判決・民集27巻11号1536頁(以下「48年最高裁判決」という。)が思想信条による採用差別が直ちに公序良俗違反を構成するものではない旨判示していることから明らかである。 イ仮に雇入れについて労組法7条の適用があるとしても,次のとおり,適用されるのは,「労働者が労働組合に加入せず,若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とする」場合(同法7条1号本文後段。いわゆる黄犬契約)に限られると解すべきである。 (ア) 48年最高裁判決が,使用者の採用の自由を比較的広く認める反面,雇入れ後の労使関係については,使用者の労働契約の解約 場合(同法7条1号本文後段。いわゆる黄犬契約)に限られると解すべきである。 (ア) 48年最高裁判決が,使用者の採用の自由を比較的広く認める反面,雇入れ後の労使関係については,使用者の労働契約の解約の自由を制約するのが現行法制の趣旨であるとの解釈に立っていることを前提とすれば,労組法7条についても,労働契約締結前と締結後との段階を区別して解釈することが合理的であり,労働契約締結の前後により,締結前は1号本文後段の黄犬契約禁止部分だけが適用され,1号のその余の規定及び2ないし4号は締結後について適用されるものと解釈すべきである。 労組法は,採用差別一般の中から,特に黄犬契約による採用差別だけを取り上げて規定したものであり,そうでなければ,黄犬契約による採用差別をことさらに独立の類型として労組法7条1号本文に規定した根拠,必要性が疑問である。 (イ) 労組法7条の文理解釈上も,労組法7条1号後段の黄犬契約のみが採用前に適用され,その余の規定は採用後の労使関係に適用される規定であると解釈するのが正しい解釈である。 (ウ) 立法当時から今日の労組法に至るまで,現労組法7条1号の文言が変わっておらず,採用についての差別的取扱いについて一貫して言及していないことも,以上の解釈が立法者の意思に沿うことを裏付けるものである。 (エ) 米国の全国労働関係法(NLRA)は,その8条a3号において,「雇入れ,雇用継続,雇用期間,その他の雇用条件に関して差別を設けることにより,労働組合の組合員たることを奨励し,又は妨害すること」を使用者の不当労働行為として明示的に規定しているが,労組法7条1号は,ことさらに「雇入れ」を明文規定から外しており,このことは,労組法7条1号が雇入れには適用されないことを明確にするためである。 (オ) ILO98号条約は,黄犬契約以外の ているが,労組法7条1号は,ことさらに「雇入れ」を明文規定から外しており,このことは,労組法7条1号が雇入れには適用されないことを明確にするためである。 (オ) ILO98号条約は,黄犬契約以外の採用差別については何ら言及していないし,同87号条約も,条約加盟国が団結権行使の自由を確保するために必要かつ適当な措置をとるべきことを規定しているにすぎず,これらの条約の規定を本件に援用することは筋違いである。 (2) 争点(2)(本件不採用の不当労働行為性)についてア原告は,仁和会との間で,入院患者の関係を除けば,リース物件のリース契約を除いては仁和会の債権債務を一切承継せず,労働者は仁和会において全員解雇した上,退職金を含む労働債権の清算をすること,原告が解雇された労働者を雇用するか否かは原告が専権的に決定し,仁和会は一切関与しないことを合意して,それを実行した。このような契約も適法・有効であるから,入院患者以外の第三者には越川記念病院とみくるべ病院との間には事業の継続性はなく,仁和会と原告との間に経営者の継続性・同一性は皆無であり,越川記念病院職員の側にも当然に原告に採用されるはずであると期待し,不採用は解雇に等しいと感じる根拠はなかった。 原告に採用された職員については,全く新しい経営者の指揮・命令を受けて,全く新しい職場秩序の下に,かつ,全く新しい労働条件において,労務提供をすることになったもので,これを実質的な労働契約の承継とみる余地は全くない。 イ原告は,越川記念病院の職員をみくるべ病院の職員として採用するに当たり,越川記念病院にまつわるダーティー・イメージを払拭するため,当初から採用する意思のない者とは面接せず,そうでない者とは面接の上,原告側の労働条件を提示して,これを受け入れた者を採用したもので,主体的にその採否を決定 つわるダーティー・イメージを払拭するため,当初から採用する意思のない者とは面接せず,そうでない者とは面接の上,原告側の労働条件を提示して,これを受け入れた者を採用したもので,主体的にその採否を決定した。原告は,A及びBについては,その勤務態度や行状から面接の対象者としなかったもので,社会通念上特に不合理な点はない。本件不採用は,その採用実態からして,解雇に等しいとはいえないし,これが不当労働行為に当たるとはいえないから,被告が本件不採用を不当労働行為としたのは誤りである。 (被告及び被告補助参加人)(1) 争点(1)(採用拒否への労組法7条1号,3号の適用の有無)についてア労組法7条は,次のとおり,採用に際しても,組合員であることあるいは正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱を禁止している。 (ア) 労組法7条1号本文前段は,「労働者が労働組合の組合員であること・・・の故をもって,その労働者・・・に対して不利益な取扱をすること」を禁止しているのであって,不利益取扱いから不採用を除外する旨の明示の文言がないことはもちろん,同条2号のように,明文で「雇用する労働者」と限定していないから,同条1号本文前段を労働契約締結後の段階に限ると解釈することは,文理からしても許されない。 (イ) 労組法の労働組合には,使用者による雇入れ後に労働者が加入する企業別組合のみならず,雇入れ以前から労働者が加入している職業別組合等すべての形態の労働組合を含むが,労働組合の組合員であることや労働組合の結成・加入活動を保護の対象とする労組法7条1号は,解雇のみならず,雇入れ段階における差別的取扱いを禁止しているものと解さなければ,使用者による団結権に対する侵害行為を直接是正し,排除するという立法目的は達成できない。 わが国の憲法の人権規定や不当労働行 ならず,雇入れ段階における差別的取扱いを禁止しているものと解さなければ,使用者による団結権に対する侵害行為を直接是正し,排除するという立法目的は達成できない。 わが国の憲法の人権規定や不当労働行為救済制度が範をとった米国においては,全国労働関係法(NLRA)が,その8条a3号において,「雇入れ,雇用継続,雇用期間,その他の雇用条件に関して差別を設けることにより,労働組合の組合員たることを奨励し,又は妨害すること」を使用者の不当労働行為としており,連邦最高裁は,採用における差別的取扱いは不当労働行為であるとし,不当労働行為の禁止が採用の自由に対する制限法理であることを明らかにしている。この考え方は,わが国の憲法,労組法の解釈・適用においても,その沿革,法律構造に照らし,十分に参考とすべきものである。 (ウ) 労組法は,7条1号本文後段において,「労働者が労働組合に加入せず,若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」(黄犬契約)を禁止しており,労働者の採用(ないし雇用の継続)に当たって,労働組合への不加入・脱退を雇用(ないし雇用の継続)の条件とすることを不当労働行為として禁じている。 企業が採用の過程において,応募した労働組合の組合員の一部について組合所属ないし組合活動を理由として不採用の決定をした場合には,これを黄犬契約に該当すると解するのは困難である。しかし,このような不利益取扱いを認めることは,企業者は,労働組合に所属していることや労働組合の正当な活動を行ったことなどを理由にこれらの者を雇入れにおいて差別し得ることとなり,労働組合に所属し,その活動を行う者は容易に企業から排除される結果をも招来することになって,憲法及び労組法の団結権保障の趣旨に照らし,到底容認されるものではない。したがって,労組法7条1項本文前段は, 組合に所属し,その活動を行う者は容易に企業から排除される結果をも招来することになって,憲法及び労組法の団結権保障の趣旨に照らし,到底容認されるものではない。したがって,労組法7条1項本文前段は,このような行為を不利益取扱いとして禁止したものと解すべきである。 (エ) 労組法7条1号本文が前段と後段を分けて規定したのは,禁止しようとする使用者の行為の態様,性質が異なることによるものである。すなわち,前段は不利益取扱いを,後段は,黄犬契約が労働運動の歴史に照らし組合活動を圧迫する効果が甚だしいことに鑑み,必ずしも不利益取扱いとはいえない黄犬契約の締結そのものを禁止するために設けられたものである。 原告主張のように,労組法7条1号を労働契約の締結前と後に分け,労働契約締結前については後段の黄犬契約禁止のみが適用となり,前段は労働契約締結後についてのみを規律すると解釈するのが誤りであることは,黄犬契約の禁止が,既に存在している労働契約について,労働組合への不加入ないし脱退を雇用契約の条件とする場合をも含むことからも明らかである。 (オ) 48年最高裁判決は,採用の自由といえども「法律その他による特別の制限」に服するものとしており,この特別の制限から不当労働行為制度を除外すべき理由はない。労組法7条1号本文が特別の制限に当たることは,従前からの労働組合活動等に対する採用差別阻止に向けられた法規制,近時の「採用の自由」に対する制限的法政策の展開とその進展,労組法7条1号の文理,立法趣旨・目的,沿革,立法者意思から,明らかである。 48年最高裁判決が,「私人間の関係において,一方の他方に対する侵害の態様,程度が社会的に許容しうる一定の限度を超える場合,法がこれに介入し,その間の調整を図るという建前がとられている」としていることからすれば,同判決 「私人間の関係において,一方の他方に対する侵害の態様,程度が社会的に許容しうる一定の限度を超える場合,法がこれに介入し,その間の調整を図るという建前がとられている」としていることからすれば,同判決の趣旨からしても,労組法は,労働組合所属や労働組合の正当な活動を行ったことを理由とする雇入れ拒否を不当労働行為として禁止していると解すべきである。 イ労働者の雇入れに際して行われる組合所属等を理由とする差別的取扱い(採用拒否)は,組合員ないし組合活動家の就職を著しく困難にするものであり,これが禁止されていないとすれば,労働組合の組合員はその生活の基盤たる収入を得る途を閉ざされることになるが,このような事態が肯認されれば,労働組合の組織や活動などに重大な萎縮効果をもたらす。したがって,採用拒否は,労組法7条1号本文前段の不利益取扱いに当たるのと同様に,労働組合の結成への妨害や労働組合の弱体化を図ることを禁ずる労組法7条3号に該当する。 (2) 争点(2)(本件不採用の不当労働行為性)についてア原告は,みくるべ病院の職員採用について,少なくとも越川記念病院の看護科職員については,当人が採用を希望し,賃金等の条件が折り合う者は採用するとの方針で臨み,現実にもそのように運用した。 また,原告は,仁和会の行っていた病院事業をそのまま継続して行っており,仁和会との越川記念病院の土地建物等の売買契約は,有機的な組織の包括的譲渡であり,商法上の営業譲渡に類似するものである。 原告がしたみくるべ病院の看護職員の採用は,入院患者をそのまま承継すること,そのため越川記念病院で入院患者の状況を知悉,理解している看護職員の配備が必要であったことといった同病院の業務の特殊性及び必要性から,越川記念病院の看護科職員で同病院への採用を希望する者は採用して引き続き看護業務 念病院で入院患者の状況を知悉,理解している看護職員の配備が必要であったことといった同病院の業務の特殊性及び必要性から,越川記念病院の看護科職員で同病院への採用を希望する者は採用して引き続き看護業務に従事させる方針の下で行われたものであり,この実態に照らせば,通常の新規採用とはいえず,譲渡先企業への採用の法理が類推されるべきである。 イ原告は,A及びBが採用を希望していることを十分承知しながら,両名が組合に所属し,組合活動を行っていたことを嫌悪し,これを排除しようとして,当初から意図的に全く採用面接も行わず,採用しなかったもので,実質的に解雇に等しく,両名が不利益を受けたことは明白であり,組合が壊滅的な打撃を受けたことも明らかであって,本件不採用は,両名が組合活動を行っていたことを理由とした不利益な取扱いであるとともに,本件不採用によって組合を壊滅させようとする意図に基づく組合の運営に対する支配,介入である。 (被告補助参加人の付加主張)(1) 争点(1)(採用拒否への労組法7条1号,3号の適用の有無)について本件は,純然たる新規採用の場合ではなく,解雇に等しい実体を有する不採用=採用差別事件であるが,不採用=採用差別一般も,労組法7条1号の「不利益取扱」に該当する。 労組法7条1号本文が,前段後段を分けて規定したのは,禁止しようとする使用者の行為類型が異なることによるものである。同号前段は,不利益取扱い一般を禁止してその最も典型的な例である解雇を例示し,他の態様の不利益取扱いを全て「その他」で括ったものであるから,不採用・採用差別も「その他不利益な取扱」に含まれる。これに対し,後段は,黄犬契約の締結そのものは労働者が合意して締結したのであるから直ちにその労働者に対する不利益取扱いとはいえないが,その契約の害悪・著しい団結権侵害と 他不利益な取扱」に含まれる。これに対し,後段は,黄犬契約の締結そのものは労働者が合意して締結したのであるから直ちにその労働者に対する不利益取扱いとはいえないが,その契約の害悪・著しい団結権侵害という側面を重視してこれを禁止するとともに,歴史的にも黄犬契約が初期の,かつ典型的な不当労働行為として広く行われていたという経緯から,黄犬契約という形式による不当労働行為を明白に禁じる必要があったために規定されたものである。 このことは,採用の自由と団結権の保障の比較考量による解釈,わが国が批准し,わが国の国内法に優先して適用されるILO98号条約及び87号条約が採用差別を禁止していること,職業安定法3条,労働基準法3条,22条,男女雇用機会均等法といったわが国の法体系が労働能力に関わりのない要因を理由とする差別を禁止するとしていることや,旧労組法作成の諮問を受けた労務法制審議委員会(昭和20年10月31日開催)において説明された「企業主は組合に加入したるの故を以て解雇し,その他不利益を課することを得ず,組合員たるの故をもって雇入れを拒否し得ざること」との意見について,何ら委員から異論は出ず,これを受けて同委員会が現7条1号とほぼ同旨の規定を答申し,昭和20年旧労組法が制定され,その後の昭和24年の改正で現7条1号に移されたとの,労組法の立法過程からも明らかである。 (2) 争点(2)(本件不採用の不当労働行為性)について原告は,病院としての事業をほぼ完全に仁和会からそのまま引き継いでおり,その実態は営業譲渡であるから,原告は,仁和会と越川記念病院従業員との雇用関係を承継したものである。 原告は,解雇事件を巡って原告と激しい対立関係にある原告の労働組合と,同じく解雇事件を巡って仁和会と激しい対立関係にある被告補助参加人とが同じ上部団体を 従業員との雇用関係を承継したものである。 原告は,解雇事件を巡って原告と激しい対立関係にある原告の労働組合と,同じく解雇事件を巡って仁和会と激しい対立関係にある被告補助参加人とが同じ上部団体を戴くこと,両組合がそれぞれの争議を互いに支援し合っていることを平成6年夏ころまでには十分知っており,そのため,越川記念病院の引き継ぎに当たっても,当初から被告補助参加人の組合員は排除することを決め,A及びBの面会要求,他の職員との同一条件で就労する意思がある旨の通知書の受領をいずれも拒否し,両名の採用面接すら行わなかった。原告は,「被告補助参加人に所属する組合員は採用しない」旨の意思をあらかじめ明確に表示して採用行為を行ったものであり,仁和会看護職員は,希望者のほぼ全員が原告に雇用を承継されているから,本件不採用は,実質的には両名を解雇したもので,被告補助参加人に対する激しい嫌悪・敵意に基づく不当労働行為であることは明らかである。 そして,A及びBの両名はみくるべ病院職員としての採用を強く希望しており,両名及び被告補助参加人の被った不利益を回復し,救済するためには,新事業者である原告に対する具体的な採用命令が不可欠であり,本件命令は,不当労働行為救済制度の趣旨目的に適った正当なものである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実第2の1(1)ないし(5)の事実及び証拠(甲1,乙2,13,15,16,19ないし31,35ないし38,44ないし47,51ないし55,60,61,76ないし87,92ないし94,96,97,105ないし111,113,115,117ないし120)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる(争いのない事実を含む。なお,争いのない事実であっても,主要な書証は末尾に摘示した。)。 (1) 当事者等ア原告は,精 ,117ないし120)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる(争いのない事実を含む。なお,争いのない事実であっても,主要な書証は末尾に摘示した。)。 (1) 当事者等ア原告は,精神科,神経科等を診療科目とする福井記念病院及び老人保健施設なのはな苑を経営するほか,平成7年1月1日からは越川記念病院の施設,業務等を引き継いで新たにみくるべ病院として経営を行っている。 従業員数は,原告全体で約330名であり,このうち,みくるべ病院には看護科の47名を含め,栄養科,医局,管理課などを合わせて76名が在籍している。 イ被告補助参加人は,上秦野病院時代の昭和56年2月に同病院の従業員で結成された労働組合であり,平成2年3月に仁和会が越川記念病院の経営を開始した後,同病院における唯一の労働組合であった。 被告補助参加人は,昭和62年ころは約50名の組合員を擁していたが,その後減少し,平成8年2月22日当時(本件初審結審時)の組合員は,A及びBの2名のみである。 被告補助参加人は,平成3年10月,全労協全国一般東京労働組合(以下「東京労組」という。)及びその下部組織である全国一般・全労働者組合(以下「全労」という。)に加盟した。 ウ昭和46年6月に結成された初声荘病院労働組合は,その後原告の福井記念病院の従業員で組織されるようになったが,同労働組合は,越川記念病院の解雇争議を支援する中で被告補助参加人から東京労組及び全労を紹介され,平成5年3月,被告補助参加人の上部団体と同じ東京労組及び全労に加盟し,名称も全国一般・全労働者組合初声荘病院分会(以下「初労」という。)と改称し,現在に至っている。(乙85)また,原告には,このほかに,全国一般労働組合神奈川地方連合に所属する労働組合がある。 (2) 原告福井記念病院における労使の 院分会(以下「初労」という。)と改称し,現在に至っている。(乙85)また,原告には,このほかに,全国一般労働組合神奈川地方連合に所属する労働組合がある。 (2) 原告福井記念病院における労使の状況ア原告は,病気休養していた初労の組合員Cに対して,平成5年11月10日付けで休職処分とすることを通告した。これに対し,東京労組及び全労は,上記休職処分が不当労働行為に該当するとして,東京都地方労働委員会に救済申立てを行った。 また,Cは,平成7年4月7日,原告を相手に,地位確認及び賃金支払を求める訴訟を横浜地方裁判所横須賀支部に提起した。 イ原告は,初労の執行委員長Mと組合員であるその妻Nを平成6年3月18日付けで懲戒解雇とした。これに対し,東京労組及び全労は,上記懲戒解雇が不当労働行為に該当するとして,東京都地方労働委員会に救済申立てを行い,同委員会は,同9年11月21日原告に対し,懲戒解雇がなかったものとしての取扱い,原職復帰等を命じた。原告は,これを不服として被告に再審査を申し立てた。 また,Mとその妻Nは,平成6年,原告を相手に,上記懲戒解雇は無効であるとして,横浜地方裁判所横須賀支部に,賃金の仮払等を求める仮処分の申立てをし,同支部は,同年5月30日,Mらが原告に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める旨及び賃金の仮払を認める旨の決定をした。両名は,同年同支部にその本案訴訟を提起した。(乙86,87)ウ原告は,平成5年11月,初労が団体交渉と称して多数の組合員を福井記念病院施設内に集め,病院業務の妨害を繰り返しているとして,横浜地方裁判所横須賀支部に,病院業務の妨害禁止等を求める仮処分の申立てを行ったが,同7年2月16日,この申立てを取り下げた。 エ原告と東京労組,全労,初労とは,平成12年3月21日, いるとして,横浜地方裁判所横須賀支部に,病院業務の妨害禁止等を求める仮処分の申立てを行ったが,同7年2月16日,この申立てを取り下げた。 エ原告と東京労組,全労,初労とは,平成12年3月21日,原告と労働組合間の労使紛争について全面和解し,上記ア,イの各事件を含む係争事件は,同月末日までにすべて取り下げられた。(甲1)(3) 仁和会における労使の状況ア被告補助参加人は,平成2年6月15日,仁和会が被告補助参加人組合員に対して被告補助参加人からの脱退を強要したこと,同年5月にBを含む組合員3名を解雇・雇止めとしたことなどが不当労働行為に当たるとして,神奈川地労委に救済申立てをしたが(同地労委平成2年(不)第13号),平成5年1月13日,仁和会が三名に対する解雇・雇止め処分を撤回することなどで和解が成立し,同5年1月20日申立てを取り下げた。(乙105)イしかし,上記和解後も仁和会と被告補助参加人との対立は続き,平成5年7月21日,参加人は,夏季一時金に関する参加人の団体交渉申入れに対して,仁和会が誠実に応じないまま被告補助参加人組合員以外の職員に対してだけ夏季一時金を支給したとして,この問題に関する団体交渉の促進を求めて,神奈川地労委に対しあっせん申請を行った。 あっせん申請が行われた後も,仁和会は,被告補助参加人組合員には夏季一時金を支給しないまま,平成5年12月には,被告補助参加人組合員以外の職員に対して冬季一時金を支給した。このため,被告補助参加人は,同あっせん串請を取り下げ,同6年6月7日,仁和会が同5年の夏期及び冬季一時金を被告補助参加人組合員に対して支給しないことや,一時金に関する団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たるとして,神奈川地労委に対し,救済の申立てを行った。なお,被告補助参加人がこの救済申立てを を被告補助参加人組合員に対して支給しないことや,一時金に関する団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たるとして,神奈川地労委に対し,救済の申立てを行った。なお,被告補助参加人がこの救済申立てを行った時点での組合員は,A及びBの2名となっていた。 同救済申立て事件は,越川記念病院が閉鎖された後の同7年3月2日,仁和会から一時金等の支払がされたことにより,申立てが取り下げられた。 (4) 越川記念病院における不祥事と県の行政処分等ア神奈川県(以下「県」という。)は,平成4年12月2日越川記念病院について医療監視を実施したが,仁和会から医療従事者数について虚偽の報告があった。 (乙13,37)イ被告補助参加人は,以前から,仁和会との団体交渉において,看護職員が不足しているとして,度々増員を求めていたが,要員不足の状態はほとんど改善されなかった。 そこで被告補助参加人は,平成5年春ころから,越川記念病院の監督権限を有する県の担当者に対して直接,同病院における医師や看護職員の数が医療法の基準を満たしていないなど,医療・看護態勢に多くの問題を生じていることを指摘し,そうした事実の確認や問題点の改善のため,同病院を指導することを度々要請した。 さらに,被告補助参加人は,同年10月には,要員不足の問題に加えて,越川記念病院においては,精神保健法に違反する違法な隔離・身体拘束が行われていることなどの具体的事実を指摘した要請書,申入書を県の担当者に提出し,善処を求めた。(乙46,47)仁和会がこうした組合の活動を知ったことにより,仁和会と被告補助参加人との対立は一層激化した。 ウ平成6年4月28日,県は,越川記念病院に対して精神保健法に基づく立入調査を行った。その結果,同病院において,精神保健法に違反して,精神保健指定医の診察によらない違 人との対立は一層激化した。 ウ平成6年4月28日,県は,越川記念病院に対して精神保健法に基づく立入調査を行った。その結果,同病院において,精神保健法に違反して,精神保健指定医の診察によらない違法な隔離及び身体的拘束が行われていたことや,同5年12月5日に病院内で看護助手がピストル型エアガン(玩具)を発射し,その弾が患者の手に当たるという事件が発生したこと,この看護助手はその後退職したものの,同病院の当時の事務長D(同6年4月20日付けで退職)と看護主任Eの指示により,同事件に関する看護記録の書き直しが行われていたことなどが明らかとなった。(乙37)このため,同年6月,県は,仁和会に対して同病院におけるこれら患者の処遇上の問題や医師が不足している問題などについて改善命令を発した。(乙38)エ平成6年7月6日,県は,越川記念病院に対して健康保険法等に基づく立入検査を実施し,これにより5700万余円に及ぶ診療報酬の不正請求などの事実を確認した。そこで,県は,同年10月19日,同病院に対して,同7年1月1日を効力発生日として,健康保険法による保険医療機関の指定取消し,生活保護法による指定医療機関の取消しの行政処分を行い,さらに,同6年11月11日,仁和会の理事長について,上記の医療従事者数に関して虚偽の報告をしていたとして医療法に基づく刑事告発を行った。これを受けた秦野警察署は,同年12月15日,仁和会と,理事長,事務長O,元事務長Dの3名を医療法違反の嫌疑で書類送検した。 (乙13,51ないし53)(5) 仁和会から原告への病院施設等の譲渡ア仁和会は,上記(4)エの行政処分を受けた後も,患者の医療及び職員の雇用の確保を図るために越川記念病院の継続を検討したが,行政処分により保険請求収入が見込めないことなどから,平成7年以降の同病 ア仁和会は,上記(4)エの行政処分を受けた後も,患者の医療及び職員の雇用の確保を図るために越川記念病院の継続を検討したが,行政処分により保険請求収入が見込めないことなどから,平成7年以降の同病院の経営を続けることは不可能であると判断していたところ,原告との間で,原告が同病院の医療設備を使用して患者を引き受けるとの話が持ち上がり,同年11月末ころ,原告と仁和会との間で,同7年1月1日以降,原告が同病院の施設等を使用して,その経営を行うことで合意が成立した。(乙15)イ上記の合意に基づいて,仁和会と原告は,改めて平成6年12月13日,下記の内容を合意し,同日付けで,仁和会を甲とし,原告を乙として,覚書を作成した。(乙107)(ア) 甲及び乙は,現在越川記念病院に入院中の患者を第一義に考え,平成7年1月1日以降乙が所有することとなる病院(新病院)において上記の患者の治療を事実上継続的に行うことを目的として,誠実に協議,合意のうえ仁和会所有の越川記念病院の建物・敷地・借地権及び備品の売買契約を締結するものとする。 (1条)(イ) 甲は従業員に対し,本覚書締結までに解雇予告を行うものとする。なお,甲の従業員を乙において雇用するか否かは乙の専権事項であって,甲は一切関与しないものとする。ただし,甲は乙が新病院を運営するにあたって,必要なスタッフの確保については,最大限の協力をするものとする。(7条)(ウ) 甲は乙に対し,乙が継続的な医療ができるよう,患者の引き継ぎを十分行うものとする。(8条)(エ) 組合員に対して平成6年12月31日までに生じた甲の法律上の債務は,甲において責任をもって清算するものとする。(10条)(オ) 甲及び乙は,新病院が継続的に運営できるよう,相互に最大限の協力をするものとする。(13条)そして,仁和会と原 た甲の法律上の債務は,甲において責任をもって清算するものとする。(10条)(オ) 甲及び乙は,新病院が継続的に運営できるよう,相互に最大限の協力をするものとする。(13条)そして,仁和会と原告とは,同月16日付けで,「仁和会は,原告に対し,越川記念病院の土地・建物に関する権利,動産及び電話加入権を含む同病院内に存する病院運営に必要な一切の什器・備品(同7年1月1日以降使用する医薬品及び給食材料を除く。)を売り渡し,同月31日限り,右土地・建物及び什器・備品を現状有姿のまま引き渡す。現在仁和会がリース中の物件については,原告の意向を尊重し,リース契約の継続あるいは解約手続は仁和会において誠実に行う。」旨及び「本契約記載事項以外の内容については,平成6年12月13日締結の覚書に依るものとする。」旨を合意し,その旨を記載した売買契約書(以下,この売買契約書及び覚書に係る合意を一括して「本件契約」という。)を作成した。(乙55)こうして,仁和会は,同月31日まで同病院の施設等を使用して業務を続けた上,これをそのまま原告に引き渡し,同7年1月1日以降,原告が仁和会に代わって業務を行うことが合意された。 (6) 越川記念病院職員の処遇と被告補助参加人の対応等ア仁和会は,(5)アの原告との合意の成立に伴い,平成6年11月29日から30日にかけて,越川記念病院の全職員に対し,同病院の閉鎖及び原告による引き継ぎに至る経緯を説明した上,仁和会として同病院の経営を行う最終日の同年12月31日をもって,A及びBを含む職員全員を解雇する旨通告した。(乙15)また,仁和会は,これと並行して,原告への採用希望の有無等についてA及びBを除く各職員に打診を行った。 イ平成6年11月30日,被告補助参加人は,仁和会と団体交渉を行い,その席上,越川記念病院の また,仁和会は,これと並行して,原告への採用希望の有無等についてA及びBを除く各職員に打診を行った。 イ平成6年11月30日,被告補助参加人は,仁和会と団体交渉を行い,その席上,越川記念病院の全職員を引き続き雇用することを原告に確認するよう求めるとともに,組合員であるA及びBについても引き続き原告に雇用されることを希望する旨を申し入れた。 これに対し,仁和会は,全員の継続雇用の約束まで取り付けることは困難であるが,職員の継続雇用の希望の有無,採用の際の条件については,各個人に確認した上,原告に伝える旨回答した。この団体交渉の席上,仁和会はA及びBに対する解雇予告通知書を手渡そうとしたが,同人らは,その受領を拒否した。(乙16)ウ被告補助参加人は,平成6年12月1日付けで,原告に対し,平成7年1月1日以降も越川記念病院での雇用を希望する者についての雇用を継続するよう求めるとともに,組合員であるA及びBも他の職員と同様の条件で雇用の係属を希望する旨の文書を内容証明郵便で送付したが,原告は,その受領を拒否した。(乙19,20,21)エ仁和会は,平成6年12月,職員に原告での就労を希望するか否かを確認した結果の一覧表を作成し,原告に交付したが,同一覧表には,原告での就労を希望する者としてA及びBも含まれていた。 オ原告は,F常務理事が責任者となって,仁和会が職員に対して行った原告への採用希望の打診の結果に基づき,平成6年12月2日から,越川記念病院において,原告への採用のための個人面接(以下「採用面接」という。)を開始し,採用希望の有無や雇用の条件等について話し合いを行い,同月25日ころまでに,原告福井記念病院の看護職員も新病院の非常勤職員として組み込むこととして,翌年1月以降の職員の勤務体制を決定した。 原告が採用面接を始めた 雇用の条件等について話し合いを行い,同月25日ころまでに,原告福井記念病院の看護職員も新病院の非常勤職員として組み込むこととして,翌年1月以降の職員の勤務体制を決定した。 原告が採用面接を始めた時点で,越川記念病院には合計55名の職員が在籍していたが(看護科33名,医局科11名,管理課その他11名),看護婦や看護助手などの看護職員が所属していた看護科では,33名の職員うちA及びBのほか,同年12月中に退職することを予定していたG,H及びIの5名(その他にJを含めれば6名)の者が採用面接の対象とならなかった。また,医師の所属する医局科では,11名の医師のうち,5名はK理事長との関係が深かったことから採用面接がされず,管理課その他に属する職員は,K理事長との関係が深いことや,原告の経営方針,勤務状況が不良であることなどを理由に,11名中4名には採用面接がされなかった。(乙44,78,108。なお,乙78,108,115,117は,原告は,勤務状況が不良であると聞いていたJについても採用面接を行わなかったとするが,他方乙44,106,120は,同人についても採用面接が行われたとしており,いずれとも確定するのは困難である。)カ平成6年12月2日,A及びBは,越川記念病院に来院した原告のF常務に対して面会を申し入れたが,同常務は面会を拒否した。 なお,F常務は,当時,A及びBが被告補助参加人の組合員であること,被告補助参加人が初労と上部団体を同じくすることを知っていた。 被告補助参加人は,A及びBが他の職員と同一の条件で就労する意思のある旨を,同月7日付けのはがきにより,さらに,同月13日付けの被告補助参加人代理人の弁護士名による内容証明郵便により,原告に対してそれぞれ通知したが,原告は,いずれについてもその受領を拒否した。(乙22ない 同月7日付けのはがきにより,さらに,同月13日付けの被告補助参加人代理人の弁護士名による内容証明郵便により,原告に対してそれぞれ通知したが,原告は,いずれについてもその受領を拒否した。(乙22ないし25)結局,A及びBに対しては,原告による採用面接は行われなかった。 キ原告は,平成6年12月中旬ころ,新聞折込みの方法により,みくるべ病院の看護職員等を募集する旨の求人広告を行った。(乙26)ク仁和会は,平成6年12月31日付けで,越川記念病院に在籍する全職員を解雇した。これに伴い,A及びBにも仁和会から退職金が支給された。 (7) 原告によるみくるべ病院の開設及び職員の採用状況ア越川記念病院は,平成6年12月31日限り閉鎖され,代わって,原告が病院開設に伴う寄附行為の変更や病院開設等のため県による所要の許可を受け,同7年1月1日,同病院の土地建物,施設等をそのまま使用して,みくるべ病院を開設した。 その際,越川記念病院の入院患者は,一部の退院者を除いて,そのまま,みくるべ病院に引き継がれ,患者に対する医療は中断することなく行われた。 イ原告は,採用面接を始めた時点で越川記念病院に在籍していた全職員55名のうち32名を,みくるべ病院の開設と同時に,平成7年1月1日付けで同病院に採用した。 看護科では,原告が採用面接した28名(Jを除けば27名)のうち,採用を希望しなかった者及び賃金等の条件面で折り合わなかった者を除き,採用を希望しかつ賃金等の条件面で折り合いのついた残りの21名全員が採用された。なお,H及び採用を希望しなかった者のうち1名は,その後改めて原告への採用を希望し,原告に採用された。 医局科では,採用面接を受けた6名は全員採用された。また,管理課その他では,採用面接を受けた7名中,採用を希望しなかった者など2名を除 名は,その後改めて原告への採用を希望し,原告に採用された。 医局科では,採用面接を受けた6名は全員採用された。また,管理課その他では,採用面接を受けた7名中,採用を希望しなかった者など2名を除き,5名が採用された。 なお,原告は,採用面接の際に原告への採用を希望しなかった看護科職員の一部の者に対して,採用面接後みくるべ病院開設までの間に,改めて原告に就職するよう説得し,この説得に応じて採用された者もあった。(乙44,78)上記のとおり,結局,A及びBは,原告への採用を希望しながら採用面接も受けられず,採用されなかったが,本件不採用の理由について,原告からの同人らに対する説明はなかった。被告補助参加人は,平成7年1月1日,原告に対し,改めて,A及びBが他の採用された職員と同様の基準で就労する意思を持っており,その採用・継続的雇用を求める旨を申し入れた。(乙27)ウ原告に採用された職員の中には,ピストル型エアガンの発射事件に関して看護記録の書き直しを指示した当時の看護主任Eや,医療従事者数に関して虚偽の報告を行ったとして医療法違反の嫌疑で書類送検された当時の事務長Oが含まれていた。(乙44,78,108)エ原告は,みくるべ病院開設後の平成7年1月8日,同年11月5日,同8年11月10日及び同年12月15日にも,新聞折込の方法により,同病院の看護職員等を募集する求人広告を行った。(乙29,54,76,77)(8) みくるべ病院開設後における原告の被告補助参加人に対する姿勢ア平成7年1月1日,被告補助参加人のA及びBは,支援者2名とともにみくるべ病院を訪れ,原告職員に原告宛の申入書を手渡した上,同病院前の公道で横断幕を持ち,ハンドマイクで本件不採用への抗議,即時雇用要求などを訴えた。 その後同月11日,Aは,仁和会から原告に もにみくるべ病院を訪れ,原告職員に原告宛の申入書を手渡した上,同病院前の公道で横断幕を持ち,ハンドマイクで本件不採用への抗議,即時雇用要求などを訴えた。 その後同月11日,Aは,仁和会から原告に引き続き雇用されたみくるべ病院の事務職員から,電話で,「A及びBにつき,雇用保険被保険者離職票の本人用を渡すところを,誤って病院用の控えを渡してしまったので差し替えてほしい。」旨の依頼を受けたため,Bとともにみくるべ病院の事務室を訪れたところ,これを見とがめたF常務は,「出て行け。」などと言って,他の職員らとともに,A及びBを事務室から建物の外へ追い出した。 原告は,同日付けでA及びBに対し,「A及びBらがみくるべ病院病棟等の鍵などの備品等を返還せず,平成7年1月1日,同病院敷地内に無断で入り込み集会を行い,同月11日には,同病院総務課に無断で入り込み騒ぎ立てるなどした。」として,原告所有の敷地・建物への立入を禁止し,備品等を返送することを求める旨の通知をした。なお,A及びBは,その後原告に対し,病棟の鍵を返還した。(乙30,31)同年5月26日,A及びBは,支援者とともにみくるべ病院を訪れ,両名の雇用を求める署名を渡そうとしたが,原告職員に拒否され,病院前で原告の対応に抗議し,シュプレヒコールを行った。 同年6月5日,原告は,1月1日,同月11日,5月26日の補助参加人の行為は,原告の業務を妨害するものであるとして,横浜地方裁判所小田原支部に業務妨害禁止等を求める仮処分の申立てをしたが(同支部平成7年(ヨ)第77号),その後同年9月7日,同申立てを取り下げた。(乙79ないし84,109,110)イ平成7年2月,原告がみくるべ病院開設に際して関係者に送付したあいさつ状には,次のような文面が記載されていた。(乙35)「確かに旧越 申立てを取り下げた。(乙79ないし84,109,110)イ平成7年2月,原告がみくるべ病院開設に際して関係者に送付したあいさつ状には,次のような文面が記載されていた。(乙35)「確かに旧越川記念病院は,マスコミ報道にみられるように経営的にも幾多の問題がありながらも,しかし,マスコミの描いた虚像とは異なり,現場の医療従事者はこの間も真摯に業務を全うしておりここに光明を見る思いがします。告発のみに終始し,何ら生産的運動をなしえなかった東京労働組合もその余韻すら残せず消え去りました。心の病にとっても,早期発見・早期治療こそが大切でありながら,旧越川記念病院のもっていたような暗いイメージが逆に,早期発見・早期治療を妨げていることも否定できない事実です。私達は,心の医療機関として,地域に根ざしながら明るいイメージ作りを目指すとともに,新任のP院長を先頭に,医療内容の充実に努めてゆきたいと思います。」(9) A及びBの行動歴等ア Aについて(ア) Aは,昭和58年4月仁和会上秦野病院に看護助手として採用され,以来同病院看護課で勤務し,主に病棟勤務をして,患者の生活介助等に従事していた。 Aは,上秦野病院に採用される以前の昭和53年ころ,成田空港反対闘争に参加して逮捕されたことがあった。 (イ) 昭和58年,県は,厚生省の委託を受け,精神障害者の実態を把握するとして精神衛生実態調査を実施しようとしたが,被告補助参加人は人権侵害であるとしてこれに反対し,患者らを連れて県庁前で集会を開催したり,座り込みをするなどの運動を展開し,Aもこの集会に参加した。(乙93,94,96,97)なお,この調査の実施には,上秦野病院も反対であり,同集会に参加する患者のために看護に当たる職員を配置する等の協力をしており,また,県は,最終的に,厚生省の委託は受 。(乙93,94,96,97)なお,この調査の実施には,上秦野病院も反対であり,同集会に参加する患者のために看護に当たる職員を配置する等の協力をしており,また,県は,最終的に,厚生省の委託は受けられないとしたため,県では精神衛生実態調査は行われなかった。(乙92,97)(ウ) 平成6年3月ころ,川崎市αに所在する医療法人愛成会京浜総合病院に,同法人の経営する京浜学園に合格した越川記念病院の職員につき,同職員はエアガン事件を起こした者で看護士として著しく適性を欠いており,素行,履歴等の再調査を求める旨の被告補助参加人名の要望書が送付された。 平成6年3月7日,越川記念病院の理事長は,職員を集め,「全国一般労組が京浜学園に対し,同学園に合格した同病院の元職員を非難する内容の文書を送付した。全国一般労組とは被告補助参加人の上部団体である。」旨の話をした。 翌日,被告補助参加人は,身に覚えがないとしてこれに抗議する内容の組合ニュースを発行し,また,同月26日付けで,東京労組及び被告補助参加人は,京浜学園に対し,事実経過の確認等を求める申入書を提出した。(乙89ないし91)イ Bについて(ア) Bは,上秦野病院に採用される以前の昭和48年9月ころから同50年6月ころまで,原告の経営する福井記念病院の前身の初声荘病院に事務職員として勤務していたことがあった。 Bは,昭和59年8月准看護婦として仁和会越川記念病院に採用され,診察介助・処置業務等に従事していた。 (イ) (3)アのとおり,Bは,平成2年5月11日付けで仁和会から,医師による処方指示を遵守しなかったなどを理由として,越川記念病院を懲戒解雇されたが,同人は,解雇は無効であるとして,仁和会を相手として,横浜地方裁判所小田原支部に,従業員としての地位保全及び賃金仮払いを求める仮処分の 遵守しなかったなどを理由として,越川記念病院を懲戒解雇されたが,同人は,解雇は無効であるとして,仁和会を相手として,横浜地方裁判所小田原支部に,従業員としての地位保全及び賃金仮払いを求める仮処分の申立てを行った(同支部平成2年ヨ第73号)。 同支部は,同年12月14日,Bが医師による処方指示を遵守しなかった事実はないなどとして,上記解雇は解雇事由がないか解雇権の濫用であって無効であるとして,Bの申立てを認容した(ただし,仮払金は一部に制限)。 Bは,(3)アの和解が成立したことにより,同5年1月13日,原職に復帰した。(乙104,105) 2 本件不採用の性質上記1の認定事実によれば,原告は,仁和会から,同会の経営する越川記念病院から新たに原告が経営することとなるみくるべ病院へ継続的に運営できるよう,越川記念病院の土地建物に関する権利及び病院運営に必要な一切の備品を譲り受けているのであるから(1(5)。以下,この譲り受けを「本件病院譲渡」という。),原告は,病院経営という事業目的のため,組織化され,有機的一体として機能する仁和会の財産の譲渡を受け,これによって仁和会がその財産によって営んでいた事業を受け継いだものということができ,本件病院譲渡は,商法上の営業譲渡に類似するものということができる。 しかしながら,営業譲渡の場合に,譲渡人と被用者との間の雇用関係を譲受人が承継するかどうかは,譲渡にあたり,当事者の合意により決すべき事柄であると解されるところ,本件契約では,仁和会がその従業員に対し,解雇予告を行うとともに,その従業員を原告が雇用するか否かは原告の専権事項であるとされ,また,仁和会は,平成6年12月31日までに生じた組合員についての同会の債務を自己の責任で清算するとされているのであって(1(5)イ),そのような契約も契約 用するか否かは原告の専権事項であるとされ,また,仁和会は,平成6年12月31日までに生じた組合員についての同会の債務を自己の責任で清算するとされているのであって(1(5)イ),そのような契約も契約自由の原則から許されると解されること,現実にも,本件病院譲渡に際し,譲渡人の仁和会は,越川記念病院の従業員を全員解雇する手続をとり,退職金も支払っていること(1(6)ア,イ,ク),他方,譲受人の原告は,仁和会の従業員と採用面接を行った上,採用を希望しなかった者及び賃金等の条件面で折り合いのつかなかった者は採用しなかったこと(1(6)オ,(7)イ)からすれば,本件病院譲渡においては,譲渡当事者間において,仁和会の従業員の雇用契約上の地位を原告が承継することはしないとの合意があったものといわざるを得ず,原告がした仁和会従業員の原告への採用は,原告による新たな従業員の採用の一環としてされたものと認めるのが相当である。本件病院譲渡により仁和会と越川記念病院従業員との雇用関係が原告に承継されたとする被告補助参加人の主張,原告と越川記念病院従業員との雇用関係に譲渡先企業への採用の法理が類推されるべきであるとの被告の主張は,いずれも採用できない。 3 争点(1)(採用拒否への労組法7条1号,3号の適用の有無)について(1) 原告は,雇入れ(新規採用。以下,同一意義で使用する。)については,不当労働行為制度の適用はないし,仮にあるとしても,労組法7条1号本文後段の黄犬契約禁止のみが適用されると解すべきである旨主張するのに対し,被告及び被告補助参加人は,これを争い,雇入れの場合であっても,労組法7条1号本文前段,3号が適用される旨主張するので,以下,まず雇入れについての労組法7条1号の適用の有無について検討する。 ア文理解釈からみた検討労組法7条は,「 雇入れの場合であっても,労組法7条1号本文前段,3号が適用される旨主張するので,以下,まず雇入れについての労組法7条1号の適用の有無について検討する。 ア文理解釈からみた検討労組法7条は,「使用者は,左の各号に掲げる行為をしてはならない。」とし,1号本文において,「労働者が労働組合の組合員であること,労働組合に加入し,若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもってその労働者を解雇し,その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず,若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。」を掲げている。 1号本文前段が,「労働者を解雇し,その他これに対して不利益な取扱をすること」を禁じており,解雇を代表とする不利益取扱いを禁じていること,同号後段が,「労働組合不加入・脱退を雇用条件とすること」を禁じており,雇用条件である以上,通常は採用(雇入れ)の段階で問題となる事柄であることからすれば,1号本文前段は雇用関係にある労働者を対象として規定し,後段は雇用関係にない労働者を対象に規定したようにも解せられる。 しかしながら,他方,労組法にいう「労働者」は,労基法における労働者(労基法9条)とは異なり,「職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」をいう(労組法3条)から,現に雇用されていない者でも,「賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」である限り,労組法の対象となると解されること,したがって,「労働者を解雇し,その他不利益取扱をすること」は,解雇を代表例とするが,「その他不利益取扱」一般を禁じており,その中には未だ雇用関係にない労働者の雇入れにおける不利益取扱いも含まれるとも読めること,1号本文後段は,「労働組合への不加入・脱退を は,解雇を代表例とするが,「その他不利益取扱」一般を禁じており,その中には未だ雇用関係にない労働者の雇入れにおける不利益取扱いも含まれるとも読めること,1号本文後段は,「労働組合への不加入・脱退を雇用条件とすること」を禁じているが,これは,雇用関係にない労働者の採用のみならず,現に雇用関係にある労働者に対しても,労働組合への不加入・脱退を新たな雇用条件とすることも禁じていると解することも可能であるから,後段の規定が存在するからといって,前段は雇用関係にない労働者に適用されないとする根拠にはならないとも解される。 労組法1号は,雇入れの場合にも本文前段が適用されるとの明文の規定を置いておらず,上記のように,「労働者を解雇し,その他不利益取扱をすること」の中に雇入れの場合の不利益取扱いが含まれるか否かは,その文言からして,両用に解釈できる余地があるから,文理解釈上は,雇入れの場合に1号本文前段が適用されるかは必ずしも判然としない。しかしながら,労組法の労働者の定義規定からすれば,1号本文前段は,雇用関係にない者であっても,その者が「賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」である限りは適用があると解されるから,1号本文前段が雇入れの場合を除外したと解するには,この定義規定から見る限り,困難な面があるといわざるを得ない。 イ立法経過(ア) 証拠(丙5,6,8ないし16)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a 昭和20年,政府は,労組法の制定について,労務法制審議会に諮問した。 第2回の労務法制審議会(昭和20年10月31日開催)において,L委員(法学者)は,「労働組合法に関する意見書」を提出し,その中で,労働組合の団結権を保障するために,「(イ)企業主は組合に加入したるの故を以て解雇し,その他不利益を課すること 日開催)において,L委員(法学者)は,「労働組合法に関する意見書」を提出し,その中で,労働組合の団結権を保障するために,「(イ)企業主は組合に加入したるの故を以て解雇し,その他不利益を課することを得ず,組合員たるの故をもって雇入を拒否し得ざること。 (ロ)一定の組合への加入を強要し得ざること」の趣旨の規定を設けることを提案した。 これに対し,委員の間からは,意見書の(ロ)については多少の意見はあったものの,同(イ)については格別意見はなかった。 第3回の労務法制審議会(同年11月15日開催)において,同審議会の下に設けられた整理委員会が全体の意見を取りまとめて審議した労組法案を提出したが,その10条では,「雇傭者ハ労働者ガ労働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ其ノ他不利益ヲ与フルコトヲ得ズ雇傭者ハ労働者ガ労働組合ニ加入セザルコト又ハ組合ヨリ脱退スルコトヲ雇傭条件ト為スコトヲ得ズ」とされた。整理委員会の経過及び結果を報告した同委員会委員長は,同条につき,「法文に認められておる通りであります。」と述べ,L委員は,「10条は従来屡々ありました労働組合に入っているから解雇するとか,労働組合に入らないことを色々な条件にしてはならぬということであります。」と述べた。 第4回の労務法制審議会(同月19日開催)における同法案についての審議では,10条について,雇傭者側の義務を書いているのは一方的であり,組合側の義務も書いて両者を公平に取り扱うべきであるとして,「何人モ労働者ガ組合員タリ,組合員タラヌノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ又ハ雇傭ヲ拒否シ不利益ヲ与フルコトヲ得ズ」とすべきであるとの修正案が出たが,原案どおりとされた。 第5回労務法制審議会(同月21日開催)に提出された労組法案の10条は,「使用者ハ労働者ガ労働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ其 トヲ得ズ」とすべきであるとの修正案が出たが,原案どおりとされた。 第5回労務法制審議会(同月21日開催)に提出された労組法案の10条は,「使用者ハ労働者ガ労働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ其ノ他不利益ヲ与フルコトヲ得ズ使用者ハ労働者ガ労働組合ニ加入セザルコト又ハ組合ヨリ脱退スルコトヲ雇傭条件ト為スコトヲ得ズ」とされ,同法案では,従来の「雇傭者」が「使用者」に変更・統一された。 労務法制審議会は,同月24日政府に対し,労組法案を答申したが,その10条は上記の原案と同一(ただし,「以テ」は「モッテ」とされた。)であった。 b 政府は,同年12月11日,労組法案を帝国議会に提出し(答申案の労組法10条は11条に改められたが,その文言は,「モッテ」を「以テ」と,「其ノ他不利益ヲ」を「其ノ他之ニ対シ不利益ヲ」と改めたほか,答申案と同一であった。),同法案は審議の後可決成立した(昭和22年12月22日法律51号。以下「旧労組法」という。)が,11条については特に取り立てて議論はされなかった。 c 昭和21年,旧労組法は改正され,同法11条のうち,「労働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ」とある部分は,「労働組合ノ組合員ナルコト,労働組合ヲ結成セントシ若ハ之ニ加入セントスルコト又ハ労働組合ノ正当ナル行為ヲ為シタルコトノ故ヲ以テ其ノ労働者ヲ解雇シ」と改められた。 d 政府は,昭和24年4月,旧労組法施行の経験から見て,立法当時予想されなかった不備が現れたなどとして,旧労組法の全部を改正する旨の労組法案を提出したが,その7条は,「使用者は,左の各号に掲げる行為をしてはならない。1 労働者が労働組合の組合員であること,労働組合に加入し,若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって,その労働者を解雇し,その げる行為をしてはならない。1 労働者が労働組合の組合員であること,労働組合に加入し,若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって,その労働者を解雇し,その他これに対して不利益な取扱をすること又は労働者が労働組合に加入せず,若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること・・・」とされ,旧労組法11条の規定をひらがな書き口語体に改めたものであった。 政府委員は,労組法案の審議に当たった衆議院及び参議院労働委員会において,同法案の提案理由について,7条につき,「第7条においては,使用者が正当な理由なくして団体交渉を拒否することを禁止して団体交渉権を擁護し,その不当労働行為の範囲を拡充して,使用者の労働組合に対する一切の干渉妨害を排除することにより,団結権及び団体交渉権を保障した。」,「7条1号本文は,現行法11条と同じ規定であり,個々の労働者が労働組合に加入をしたり,あるいは労働組合を結成しようとしたり,その他労働組合の正当な行為をしたことを理由として不利益取扱いをすること,及びいわゆるイエロー・ドッグ・コントラクトを禁止したものである。」旨説明したが,委員会では,同条については特に議論はされなかった。 労組法案は,国会において政府原案どおり可決成立し(昭和24年6月1日法律17号),同月10日施行された。これが,現行の労組法である。 (イ) 上記認定した旧労組法,現行労組法の立法経過からすれば,現行労組法7条1号は,旧労組法11条をそのまま引き継いでいるものと解されるところ,旧労組法11条の立案の検討に当たっては,労務法制審議会において,「企業主は組合に加入したるの故を以て解雇し,その他不利益を課することを得ず,組合員たるの故をもって雇入を拒否し得ざること」との意見を含めたL委員の意見書を土 討に当たっては,労務法制審議会において,「企業主は組合に加入したるの故を以て解雇し,その他不利益を課することを得ず,組合員たるの故をもって雇入を拒否し得ざること」との意見を含めたL委員の意見書を土台にして議論がされているが,これについては特段の議論もされていないから,労務法制審議会委員の間では,労働組合の組合員であることを理由とする雇入れ拒否が許されないことは,共通の認識であったということができる。 そして,これを踏まえて旧労組法案が政府に答申され,その10条が11条(「使用者ハ労働者ガ労働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ之ヲ解雇シ其ノ他不利益ヲ与フルコトヲ得ズ使用者ハ労働者ガ労働組合ニ加入セザルコト又ハ組合ヨリ脱退スルコトヲ雇傭条件ト為スコトヲ得ズ」)に移された旧労組法が国会で成立しているのであるし,現行労組法7条1号は,旧労組法11条(昭和21年改正後のもの)をひらがな書き口語体に改めたに止まるから,この立法経過からすれば,現行労組法7条1号は,雇入れについても,労働組合の組合員であること等を理由に不利益取扱いをすることを禁止していると解するほうが自然である。 もっとも,現行労組法7条1号の文理解釈上は,必ずしもそのことは判然としないし,上記認定の立法経過によっても,労務法制審議会におけるL委員の意見書では「組合員たるの故をもって雇入を拒否し得ざること」が明記されていたのに,「其ノ他不利益」の中に当然雇入れ拒否も含まれると考えられていた可能性が高いとはいえ,これを旧労組法ひいて現行労組法の条文に明文化しなかった経緯も明らかではないから,立法経過が雇入れへの労組法7条1号の適用の有無についての決め手となるものとまではいえない。 ウ米国における解釈不当労働行為制度は,歴史的には米国法において生成・発展した制度であり,わが国の不当 法経過が雇入れへの労組法7条1号の適用の有無についての決め手となるものとまではいえない。 ウ米国における解釈不当労働行為制度は,歴史的には米国法において生成・発展した制度であり,わが国の不当労働行為制度もこれに範をとったものであるが,米国の全国労働関係法(NLRA)は,その8条a3号において,「雇入れ,雇用継続,雇用期間,その他の雇用条件に関して差別を設けることにより,労働組合の組合員たることを奨励し,又は妨害すること」を使用者の不当労働行為として明文をもって規定している。したがって,米国においては,雇入れの場合にも不当労働行為の適用があることは明らかである。しかしながら,わが国労組法7条1号がこの点を明示的に規定してないことは上記のとおりであるから,米国における規制があるからといって,直ちに労組法7条1号の解釈において,雇入れにも不当労働行為の適用があるとはいえないが,一つの参考になるものであるということはできる。 エ 48年最高裁判決について(ア) 48年最高裁判決は,企業者が,特定の思想,信条を有することを理由として雇入れを拒否することが許されるか否か等が問題とされた事案について,次のとおり判示している。 「私的支配関係においては,個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり,その態様,程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは,これに対する立法措置によってその是正を図ることが可能であるし,また,場合によっては,私的自治に対する一般的制限規定である民法1条,90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって,一面で私的自治の原則を尊重しながら,他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し,その間の適切な調整を図る方途も存するのである。そして,この場合,個人の基本的な自 ,一面で私的自治の原則を尊重しながら,他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し,その間の適切な調整を図る方途も存するのである。そして,この場合,個人の基本的な自由や平等を極めて重要な法益として尊重すべきことは当然であるが,これを絶対視することも許されず,統治行動の場合と同一の基準や観念によってこれを律することができないことは,論をまたないところである。」「憲法は,思想,信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に,他方,22条,29条等において,財産権の行使,営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ,企業者は,かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し,自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができるのであって,企業者が特定の思想,信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも,それを当然に違法とすることはできないのである。」「労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが,これは,雇入れ後における労働条件についての制限であって,雇入れそのものを制約する規定ではない。また,思想,信条を理由とする雇入れの拒否を直ちに民法上の不法行為とすることができないことは明らかであり,その他これを公序良俗違反と解すべき根拠も見出すことはできない。 右のように,企業者が雇傭の自由を有し,思想,信条を理由として雇入れを拒んでも,これを目して違法とすることができない以上,企業者が,労働者の採否決定にあたり,労働者の思想,信条を調査し,そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求め 条を理由として雇入れを拒んでも,これを目して違法とすることができない以上,企業者が,労働者の採否決定にあたり,労働者の思想,信条を調査し,そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも,これを法律上禁止された行為とすべき理由はない。もとより,企業者は,一般的には個々の労働者に対して社会的に優越した地位にあるから,企業者のこの種の行為が労働者の思想,信条の自由に対して影響を与える可能性がないとはいえないが,法律に別段の定めがない限り,右は企業者の法的に許された行為と解すべきである。また,企業者において,その雇傭する労働者が当該企業の中でその円滑な運営の妨げとなるような行動,態度に出るおそれのある者でないかどうかに大きな関心を抱き,そのために採否決定に先立ってその者の性向,思想等の調査を行うことは,企業における雇傭関係が,単なる物理的労働力の提供の関係を超えて,一種の継続的な人間関係として相互信頼を要請するところが少なくなく,わが国におけるようにいわゆる終身雇傭制が行われている社会では一層そうであることにかんがみるときは,企業活動としての合理性を欠くものということはできない。」「企業者は,労働者の雇入れそのものについては,広い範囲の自由を有するけれども,いったん労働者を雇い入れ,その者に雇傭関係上の一定の地位を与えた後においては,その地位を一方的に奪うことにつき,雇入れの場合のような広い範囲の自由を有するものではない。労働基準法3条は,前記のように,労働者の労働条件について信条による差別的取扱を禁じているが,特定の信条を有することを解雇の理由として定めることも,右にいう労働条件に関する差別的取扱として,右規定に違反するものと解される。 このことは,法が,企業者の雇傭の自由について雇入れの段階と雇入れ後の段階との間 することを解雇の理由として定めることも,右にいう労働条件に関する差別的取扱として,右規定に違反するものと解される。 このことは,法が,企業者の雇傭の自由について雇入れの段階と雇入れ後の段階との間に区別を設け,前者については企業者の自由を広く認める反面,後者については,当該労働者の既得の地位と利益を重視して,その保護のために,一定の限度で企業者の解雇の自由に制約を課すべきであるとする態度をとっていることを示すものといえる。」(イ) 上記のとおり,48年最高裁判決は,企業者が契約締結の自由を有していることから,雇入れについては,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由に決定できるとし,労基法3条は,雇入れ後における労働条件についての制限であって,雇入れそのものを制約する規定ではなく,思想,信条を理由とする雇入れの拒否を違法とする根拠はないとしている。 ところで,労基法にいう労働者とは,「職業の種類を問わず,事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者」をいう(9条)から,使用者の指揮命令下にあって労務を提供し,賃金を得ている者が労基法にいう労働者であり,使用者との間に広い意味での雇用関係がある者がこれに当たるというべきであるが,企業に雇い入れられる前の者は,いなかる意味においても使用者との間に雇用関係があるということはできないから,その者は,労基法3条にいう「労働者」に当たらないと考えられること,また,労基法3条は,使用者が労働者の国籍,信条等を理由として,労働条件について差別的取扱いをすることを禁じているところ,「労働者の労働条件」についての差別的取扱いである以上,これまた使用者と労働者との間に何らかの雇用関係があることが前提であると解されることなどからすれば,同条は,使用者と労働者の雇入れ前の法律関係について規律 労働条件」についての差別的取扱いである以上,これまた使用者と労働者との間に何らかの雇用関係があることが前提であると解されることなどからすれば,同条は,使用者と労働者の雇入れ前の法律関係について規律したものとはいえないのであり,48年最高裁判決も,これらのことを考慮したものと考えられる。 したがって,48年最高裁判決は,労基法3条の解釈について,法が,企業者の雇傭の自由について雇入れの段階と雇入れ後の段階との間に区別を設け,その規律範囲を異にしていることを明らかにしたものであるにとどまり,それ以上に,48年最高裁判決が,労働関係一般について,雇入れの段階と雇入れ後の段階との間に区別を設け,その規律範囲を異にすべきであることを示したものとまで解するのは相当ではないと考えられる。 (2) 以上によれば,労組法7条1号について,これが雇入れにおける不当労働行為までを規律したものといえるかどうかは,文理解釈,立法経過,米国法における解釈,48年最高裁判決の射程距離からは必ずしも明らかであるとはいえないのであり,結局は,これらも参考としつつ,企業者に認められた採用の自由の保障と,不当労働行為制度が目的とする労働者の団結権の保障とを比較勘案して,同号の解釈を決するほかはないが,次の理由により,雇入れについても労組法7条1号前段の規定の適用があると解するのが相当である。 ア労組法7条1号は,労組法にいう労働者を対象としたものであるが,労組法にいう労働者は,労基法にいう労働者と異なり,「賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」であって,必ずしも雇用関係にある労働者には限られないから,雇用関係にない労働者も,労組法にいう労働者である限り,労組法7条1号の対象となり得る。 イ不当労働行為制度は,使用者に対し,組合活動を抑圧するための経営上の措 関係にある労働者には限られないから,雇用関係にない労働者も,労組法にいう労働者である限り,労組法7条1号の対象となり得る。 イ不当労働行為制度は,使用者に対し,組合活動を抑圧するための経営上の措置をとってはならない義務,そのような措置をとって労働者に不利益を与えてはならない義務を課すものであるところ,仮に雇入れについては労組法7条1号本文前段の適用がないとすれば,企業者は,労働者が労働組合に所属していることや労働組合の正当な活動を行ったことなどを理由にその者を雇入れにおいて差別し得ることとなるが,次のとおり,企業者の採用の自由と労働者の団結権保障とを比較考量した場合,それを容認することが適当であると解するのは相当でない。 すなわち,企業者の採用の自由と思想,信条の自由との比較考量の場合には,48年最高裁判決がいうように,企業における雇傭関係が一種の継続的な人間関係として相互信頼を要請するところが少なくないことからして,ある思想,信条を持つ労働者と,これと異なる思想,信条を持つ企業者とが雇用関係に入るとすれば,相互の信頼関係が保てないおそれがあるので,合理的な企業活動を行うという見地から,思想,信条が異なることを理由に採用しないとすることも許されるということができる。 これに対し,企業者の採用の自由と労働者の団結権保障との比較考量の場合には,仮に雇入れの場合に労組法7条1号本文前段の適用がないとすれば,その限度で労働者の団結権が侵害されることになるが,労働者の団結権が使用者の労働力に関する取引の自由を制限する違法な行為として禁圧されてきた過去の歴史に鑑み,憲法上,労働者保護のためその団結権を保障することとしていること(憲法28条)からすれば,企業者に採用の自由があるからといって,労働者の団結権を侵害することが許されるとは考え難い。 去の歴史に鑑み,憲法上,労働者保護のためその団結権を保障することとしていること(憲法28条)からすれば,企業者に採用の自由があるからといって,労働者の団結権を侵害することが許されるとは考え難い。また,これを肯定するとすれば,労働者は,労働組合の組合員であること,労働組合に加入し,これを結成しようとすること,労働組合の正当な行為をすることをちゅうちょするおそれがあるが,そのような事態が生じることを容認することが適当であるとも考え難い。したがって,雇入れについても労組法7条1号本文前段が適用されると解するほうが,労働者の団結権を保障した憲法の趣旨にかなうものといえる。 雇入れについても労組法7条1号本文前段が適用されるとすれば,逆に,その限度で企業者の採用の自由が制限されることになるが,企業者の採用の自由も無制限のものではないから,労働者の団結権保障の趣旨に鑑みれば,この制限もやむを得ないものと考えることもできる。 このように解した場合,上記のとおり,企業における雇傭関係が一種の継続的な人間関係として相互信頼を要請するところが少なくないことからすれば,労働者が上記の労働組合の組合員であること等を理由にこれを嫌悪する企業者と労働者との間の相互信頼が保てないのではないかも問題となる。しかしながら,労働者の団結権保障の趣旨に鑑みれば,採用の自由と思想,信条の自由との比較考量の場合とは異なり,企業者において,労働者が労働組合の組合員であること等を理由に当該労働者を嫌悪することは合理的な企業活動とはいえないものと解するのが相当であり,企業者としては,労働者が労働組合の組合員であること等を理解しつつ,それを前提として相互信頼を形成すべきである。したがって,この点を理由に,労組法7条1号本文前段が雇入れの場合に適用されないとすることはできない。 ウ 働者が労働組合の組合員であること等を理解しつつ,それを前提として相互信頼を形成すべきである。したがって,この点を理由に,労組法7条1号本文前段が雇入れの場合に適用されないとすることはできない。 ウ労組法7条1号本文前段の文言上,雇入れについての不利益取扱いを禁じる旨の明文の規定はないが,同号本文前段は,「・・・労働者の解雇,その他の不利益取扱をすること」としており,労働者の不利益取扱いの最大のものとして,雇用関係の終了事由である解雇を例示したものであり,「その他の取扱」には解雇以外のすべての不利益取扱が含まれていると解することができる。その場合,アのとおり,同号は,雇用関係にない労組法の労働者についても適用されるし,その者については解雇はあり得ないから,「その他の取扱」の対象となる者を雇用関係のある労働者に限定する根拠に乏しい。 労組法7条1号後段は,「労働者が労働組合に加入せず,若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」を禁じ,いわゆる黄犬契約の禁止を定めたものであるが,「雇入れに際し」などの限定文言はなく,雇入れの場合にこの雇用条件を付することのみならず,既に雇用関係にある労働者について新たに別にこの雇用条件を付することも,同号後段で禁止していると解される。したがって,同号後段が雇入れ後の労働関係を規律したものとはいえず,同号後段の規定があることは,同号前段は雇入れ前の,後段は雇入れ後の,各労働関係を規律したとする根拠とはなり得ない。 このように,労組法7条1号本文前段,後段の文理解釈からして,雇入れについて同号本文前段の適用があるとすることに無理はない。 エ上記(1)イで認定した旧労組法,現行労組法の立法経過からすれば,雇入れも現行労組法7条1号本文前段の「不利益取扱」に含まれると解するほうがむしろ自然である。 適用があるとすることに無理はない。 エ上記(1)イで認定した旧労組法,現行労組法の立法経過からすれば,雇入れも現行労組法7条1号本文前段の「不利益取扱」に含まれると解するほうがむしろ自然である。また,わが国労組法が範をとった米国不当労働行為制度においては,雇入れについても不当労働行為の適用があるとされているが,わが国の労組法がことさらにこれを除外したとする合理的な理由もうかがえない。 オ以上のとおり,雇入れについても,労組法7条1号本文前段の適用があり,雇入れにおいて労働組合の組合員であること等を理由に労働者を不利益に取り扱うことは,同号本文前段により禁止されていると解するのが相当である。したがって,同号本文前段は,法律によって採用の自由を制限したものと解することができるから,このように雇入れについて労働組合法7条1号本文前段の適用があると解しても,48年最高裁判決との間に整合性に欠けるところはないと考えられる。 (3) そして,雇入れにおいて労働組合の組合員であること等を理由に労働者を不利益に取り扱うことは,これにより,労働組合の組合員の就職を著しく困難にすることになり,その生活の基盤である賃金,給料その他これに準ずる収入を得ることを著しく困難にするものであって,他面では,労働組合の結成そのものを妨害する結果となり,また,労働組合の組織,活動の弱体化を招くことになるから,労働者が労働組合を結成し,若しくは運営することを支配し,若しくは介入するものとして,労組法7条3号本文前段の不当労働行為にも当たることがあるというべきである。 4 争点(2)(本件不採用の不当労働行為性)について(1) 原告は,平成7年1月1日付けで,越川記念病院全職員55名のうち,32名を採用しているが,このうち,原告は,医局科では,11名中,K理事長と関係の深 )(本件不採用の不当労働行為性)について(1) 原告は,平成7年1月1日付けで,越川記念病院全職員55名のうち,32名を採用しているが,このうち,原告は,医局科では,11名中,K理事長と関係の深い医師5名については採用面接を行わず,採用面接を受けた6名については全員を採用し,また,管理課その他では,11名中,K理事長との関係などを理由に4名については採用面接を行わず,採用面接を受けた7名中,採用を希望しなかった者など2名を除き,5名を採用している(1(6)オ,(7)イ)。この採用面接不実施の理由からすれば,これら,医局科,管理課その他の職員について,原告が一部の者について採用面接を行わなかったことについては,一応の合理性があるということができる。 しかしながら,原告は,A及びBが属していた看護科の職員については,33名のうち,A及びBと原告への採用を希望していなかった者3名の少なくとも合計5名(Jを加えれば合計6名)については,採用面接を行わず,原告が採用面接した28名(Jを除けば27名)のうち,採用を希望しなかった者及び賃金等の条件面で折り合わなかった者を除き,残りの21名全員を採用していること(1(6)オ,(7)イ),原告は,採用面接の際に採用を希望しなかった看護科職員の一部の者に対しては,その後みくるべ病院の開設時までの間に改めて,原告に就職するよう説得していること(1(7)イ)が認められるのであり,これらのことと,本件病院譲渡に当たっては,患者の医療を中断させることなく引き続きこれを行うことが要請されていたのであるから(1(7)ア),直接患者の世話に当たる看護科職員については,患者の状況を知悉し,理解している者が引き続きその業務に就くことが望ましいと考えられることからすれば,原告は,看護科職員については,当人が採用を希望し ,直接患者の世話に当たる看護科職員については,患者の状況を知悉し,理解している者が引き続きその業務に就くことが望ましいと考えられることからすれば,原告は,看護科職員については,当人が採用を希望し,勤務条件が折り合う限りは従前からの越川記念病院の看護科職員をまず採用し,引き続き患者の看護業務に従事させるという方針で臨んでいたものと推認することができる。 なお,原告が,平成6年12月中も,また同7年1月においても,看護職員等の補充のための公募を行っていること(1(6)キ,(7)エ),原告は,みくるべ病院の発足当初,原告福井記念病院の看護職員を非常勤職員としてみくるべ病院の看護業務に従事させていること(1(6)オ)からすれば,原告が採用した越川記念病院の看護職員のみでは,みくるべ病院において必要とする看護科職員の人数に不足していたことがうかがわれる。しかるに,A及びBの2名は,原告への採用を希望しながら採用面接も受けられず,採用されなかったのであるから(1(6)エ,オ,(7)イ。なお,Jについては,原告がJに対して採用面接を行わなかったとする乙115,178によっても,同人が採用を希望していたことはうかがえない。),原告は,両名については,従前からの越川記念病院の看護科職員をまず採用するという方針を適用しなかったものということができる。 (2)ア原告は,この点につき,越川記念病院の職員をみくるべ病院の職員として採用するに当たり,越川記念病院にまつわるダーティー・イメージを払拭するため,当初から採用する意思のない者とは面接せず,そうでない者とは面接の上,原告側の労働条件を提示して,これを受け入れた者を採用したもので,主体的にその採否を決定しており,A及びBについても,その勤務態度,行状からして面接対象者としなかった旨主張し,乙117,11 の上,原告側の労働条件を提示して,これを受け入れた者を採用したもので,主体的にその採否を決定しており,A及びBについても,その勤務態度,行状からして面接対象者としなかった旨主張し,乙117,119(中労委におけるF常務の審問調書)は,Aを採用しなかったのは,Aについては,①精神衛生実態調査の際に,患者を県庁に座り込みさせたり,政治的な集会に参加させたりしていることが原告の方針と合わないこと,②夜勤当直の際,越川記念病院の不祥事についてカルテを写真で取ったり,看護記録をコピーしたりしてマスコミに流したり,政治活動に熱心であること,③学生時代成田空港反対闘争に参加して逮捕され有罪判決を受けたこと,④京浜学園に合格した越川記念病院の職員に関して,同職員を問題視する文書を同学園に提出したことなどを総合的に考慮し,Bについては,①医者の指示なく患者に薬を投与し,解雇されたこと,②患者に対して隔離室で暴力を振るったこと,③初声荘病院時代の勤務状況が不良であったこと,④プライベート面で問題があることなどを考慮して,いずれも採用しなかったとするので,以下,それが両名に対して採用面接を行わなかったことひいて不採用としたことの理由となり得るかについて検討する。 もっとも,使用者には採用の自由があるから,労働者を雇傭するにあたり,いかなる者をいかなる条件で雇い入れるかどうかは,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由に決定することができるもので,本件についていえば,原告は,不当労働行為に当たらない限り,A及びBを採用するか否かを自由に決定することができるというべきである。したがって,以下で検討する両名の不採用の理由は,本件不採用の不当労働行為性の判断の一事情としての観点からのものである。 イ Aについて(ア) ①について精神衛生実態調 できるというべきである。したがって,以下で検討する両名の不採用の理由は,本件不採用の不当労働行為性の判断の一事情としての観点からのものである。 イ Aについて(ア) ①について精神衛生実態調査の際に,Aがこれに反対して,患者と県庁前で座り込みをしたり,反対集会に患者らを連れて参加したことは1(9)ア(イ)のとおりである。 しかしながら,同調査の実施には上秦野病院も反対の態度をとっており,反対集会等に参加する患者のために看護に当たる職員を配置するなどの協力をしていたのであるから(1(9)ア(イ)),Aのとった行動については上秦野病院も容認していたものといえ,当時の同病院においてこれを問題視した形跡もうかがえないから,このことを取り上げて原告の方針と合わないとして不採用としたことに,相当な理由があるとは言い難い。 (イ) ②について②については,裏付けとなる証拠はなく,これを否定する乙120(中労委におけるAの審問調書)に照らし,その事実があったとすることはできない。 (ウ) ③について③の事実が認められることは上記1(9)ア(ア)のとおりであるが,この事実は,Aが上秦野病院に採用される5年ほど前のことであり,本件不採用からすれば17年ほども前の事実であるし,その後のAの行動に特に問題視すべきものがあったことはうかがえないから,Aを不採用とした理由としては,薄弱に過ぎるというべきである。 (エ) ④について京浜学園に合格した越川記念病院の職員に関して,Aないし被告補助参加人が京浜学園に文書を提出したといえないことは上記1(9)ア(ウ)のとおりであり,④の事実を認めることができない。 イ Bについて(ア) ①についてBが仁和会を一旦解雇されたことは上記1(9)イ(イ)のとおりであるが,同人の解雇に関する仮処分事件においては とおりであり,④の事実を認めることができない。 イ Bについて(ア) ①についてBが仁和会を一旦解雇されたことは上記1(9)イ(イ)のとおりであるが,同人の解雇に関する仮処分事件においては解雇が無効とされているのであり,その後仁和会と被告補助参加人との間で,Bの解雇を撤回し,同人の原職復帰等を内容とする和解が成立していること(1(3)ア)からすれば,Bの解雇事由があったとはいえないから,これが同人の不採用の理由となるとすることはできない。 (イ) ②ないし④について②ないし④については,これを裏付ける証拠もなく,Bが昭和59年に上秦野病院に採用され(1(9)イ(ア)),以来その勤務状況について特に問題視された形跡はうかがえないことからすれば,にわかにその事実があったとすることはできない。 ウ他方で,原告は,越川記念病院当時看護記録の書き直しを指示した看護主任や,医療法違反の嫌疑で書類送検された事務長については,その不祥事を承知しながら,採用面接を行った上,みくるべ病院に採用しているのであり(1(7)ウ),このことは,乙117,119(中労委におけるF常務の審問調書)のいうように,これらの者が主体的に関与したものでないとしても,不祥事に関与したことに変わりはなく,原告がこれらの者を採用しながら,A及びBを不採用としたこととの間に均衡がとれているとは到底いえないし,越川記念病院にまつわるダーティー・イメージを払拭するため,採用面接対象者を振り分けたとする原告の主張とも矛盾するものである。 エ以上アないしウによれば,原告がA及びBについて,採用面接もしないまま同人を不採用としたことには,到底合理的な理由はうかがえないというほかない。 (3) (2)のとおり,A及びBの本件不採用について合理的な理由はうかがえないこと,原告は,仁和 て,採用面接もしないまま同人を不採用としたことには,到底合理的な理由はうかがえないというほかない。 (3) (2)のとおり,A及びBの本件不採用について合理的な理由はうかがえないこと,原告は,仁和会からの一覧表を受領し,両名に原告への採用を希望する意思があることを知っていたこと(1(6)エ),原告は,初労と対立状態にあったものであるが,越川記念病院職員との採用面接当時,初労と被告補助参加人とが上部団体を同じくすることや,A及びBが被告補助参加人の組合員であることを知っていたこと(1(2)アないしウ,(6)カ),また,原告は,被告補助参加人が原告に送付した,両名の採用を求める旨の文書の受領を一切拒否し,面会申し入れも拒否していること(1(6)ウ,カ),原告がみくるべ病院の開設に際して関係者に送付したあいさつ状には,「告発のみに終始し,何ら生産的運動をなしえなかった東京労働組合もその余韻すら残せず消え去りました。」との記載があること(1(8)イ。その記載内容からすれば,これが原告において被告補助参加人に関する自由な言論を行使したものとしても,原告の被告補助参加人に対する嫌悪の情が現れているものというべきである。)や,乙119において,F常務が,「A,Bに関しては,総体的な問題としては,面接の対象にもならないという判断である。」,「上秦野病院労働組合と青山会は,いわゆる労組法にいう団体交渉だとか,あるいは交渉する義務は,我々は一切負っていない。一切,そういうやからとは話をしない。」旨述べていることを総合すれば,原告は,A及びBが原告への採用を希望していることを十分承知しながら,両名が被告補助参加人に所属し,組合活動を行っていたことを嫌悪し,そのため当初から意図的に両名に対する採用面接も行わず,不採用としたものと認めるのが相当であり,両名は ていることを十分承知しながら,両名が被告補助参加人に所属し,組合活動を行っていたことを嫌悪し,そのため当初から意図的に両名に対する採用面接も行わず,不採用としたものと認めるのが相当であり,両名は,被告補助参加人の組合員であること,被告補助参加人の正当な行為をしたことの故をもって,本件不採用という不利益取扱いを受けたものというべきである。 また,本件不採用当時,被告補助参加人の組合員がA及びBの2名のみであったこと(1(3)イ)からすれば,本件不採用により,同時に被告補助参加人が壊滅的打撃を受けたことは明らかであるから,原告は,本件不採用により被告補助参加人へ壊滅的打撃を与えることを意図し,A及びBが被告補助参加人を運営することを支配し,これに介入したものということができる。 以上によれば,原告がしたA及びBの本件不採用は,労組法7条1号本文前段,同条3号本文前段に該当し,不当労働行為に当たるというべきである。 (4) なお,本件命令は,A及びBの採用等を命じた初審命令を維持し,原告の再審査申立てを棄却しているのであるが,上記の認定,判断に照らせば,これが,労働委員会に与えられた裁量権の行使の範囲を超え,又は著しく不合理であって濫用にわたるとは認められない。 5 結論以上によれば,本件命令に違法はなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部裁判長裁判官山口幸雄裁判官鈴木拓児裁判官鈴木正紀は,転任につき署名押印できない。 裁判長裁判官山口幸雄(別紙1) 主文 1 被申立人は,申立人組合所属の組合員であるAを被申立人が経営する秦野市〈以下略〉所在の医療法人財団青山会みくるべ病院(以下「みくるべ病院」という。)に看護助手として採用し、かつ、平成7 文 1 被申立人は,申立人組合所属の組合員であるAを被申立人が経営する秦野市〈以下略〉所在の医療法人財団青山会みくるべ病院(以下「みくるべ病院」という。)に看護助手として採用し、かつ、平成7年1月1日以降同人が採用されるまでの間について、被申立人における基準に従い、同人に対し、採用されていたならば支給されたはずの賃金に相当する額に、年率5分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。 2 被申立人は、申立人組合所属の組合員であるBをみくるべ病院に准看護婦として採用し、かつ、平成7年1月1日以降同人が採用されるまでの間について、被申立人における基準に従い、同人に対し、採用されていたならば支給されたはずの賃金に相当する額に、年率5分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。 3 被申立人は、申立人組合所属の組合員に対し、その組合活動を理由にみくるべ病院に採用しないなどの差別的な取扱いをすることによって、申立人組合の運営に介入してはならない。 4 被申立人は、本命令受領後速やかに、下記の文書を申立人組合に手交しなければならない。 記当法人が貴組合所属の組合員であるA及びBをみくるべ病院の看護職員として採用しなかったことは、神奈川県地方労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 平成年月日秦野市〈以下略〉上秦野病院労働組合執行委員長 A殿三浦市〈以下略〉医療法人財団青山会理事長 Q
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