平成25年3月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年第611号保険金請求事件口頭弁論終結日平成25年1月29日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,6430万円及びこれに対する平成20年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告との間で,その所有する建物につき火災保険契約を締結した原告が,火災により当該建物が焼損したとして被告に対し保険金の支払を求めたところ,損害発生について原告に故意又は重過失があるなどとしてその支払を拒絶されたことから,被告に対し,保険契約に基づき,6430万円の保険金及びこれに対する前記請求の日から保険約款上の調査期間30日を経過した日の翌日である平成20年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提となる事実(証拠を記載したもの以外は当事者間に争いがない。) 当事者被告は,火災保険,海上保険及び自動車保険の引受け並びに損害保険業に係る業務の代理及び事務の代行等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 保険契約の締結等ア原告は,平成19年9月20日,競売により,別紙物件目録記載1の土地(以 下「本件土地」という。)並びに同2及び3の建物(以下,前者を「物件2」,後者を「物件3」といい,両者を総称して「本件建物」という。)を取得した。 イ原告は,被告との間で,同年12月25日,以下の内容の保険契約を締結した(以下「本件保険契約」という。)。 物件3」といい,両者を総称して「本件建物」という。)を取得した。 イ原告は,被告との間で,同年12月25日,以下の内容の保険契約を締結した(以下「本件保険契約」という。)。 証券番号 5848937381-0個人財産総合保険普通保険火災による滅失の場合に保険金を支払う。 保険期間同日から平成24年12月25日までの5年間 保険の目的本件建物 保険料一括払9万3400円 建物評価額 6430万円 支払限度額 1億円ウ本件保険契約に係る保険約款及び特約条項には,保険契約者,被保険者またはこれらの者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反に該当する事由によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の規定が設けられていた(甲3)。 保険金の支払請求等平成20年3月18日午前2時15分ころ,本件建物において火災が発生し,本件建物は床面積224.33平方メートルを焼損する半焼の状態となった(以下「本件火災」という。)。 原告は,同年4月ころ,被告に対して,本件保険契約に基づく保険金の支払を求めたが,被告は,平成21年7月24日,調査の結果,本件火災が放火であること,本件建物の取得経緯に関する関係者の供述に一貫性がなく,居住を目的として取得したとは考え難いこと,競売手続によって取得した建物について発生した火災であることなどから,本件火災が偶然に発生したものとは到底考え難く,「保険契約者,被保険者,またはこれらの者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反」によって損害が生じた場合に当たるとして,保険金の支払 を拒絶した。(甲4,乙1,弁論の全趣旨) 2 争点及び争点に関する たはこれらの者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反」によって損害が生じた場合に当たるとして,保険金の支払 を拒絶した。(甲4,乙1,弁論の全趣旨) 2 争点及び争点に関する当事者の主張 本件火災は原告ないし原告と意を通じた第三者が故意に惹起したものか(被告の主張)本件火災には,以下のとおり各種の不自然・不合理な事情が多数散見され,保険契約者である原告又は原告と意を通じたXことA(以下「X」という。)の意思に基づき招致された火災であることを優に推認できるので,被告は,本件保険契約に基づく保険金の支払義務を免責される。 ア火災の原因が放火であること 出火日時,出火場所及び出火態様本件建物は,北側1階の外周部の焼けの度合が強く,建物内部においては,1階北西部の部屋の焼けが著しく強くて,2階及び3階には独立燃焼を推定できる各階床面からの立ち上がり燃焼は確認されていない。また,1階北西部の部屋においては,押入れのある東側の石膏ボードが全て脱落し,東隣の和室側の石膏ボードも所々脱落しているのに対し,外に面した西側の石膏ボードは所々残っていること,1階北西部の部屋の南側押入れ上部を中心として天井が焼失していること,押入れ部分の柱,敷居,地板等の亀甲模様が強く炭化深度も深いこと等から,1階北西部の部屋の南側押入れが本件火災の出火場所であると考えられる。 そして,同部屋の焼け細りが認められた南側押入れの敷居,焼け切れが認められた南側押入れ内の壁体のヌキ(下地板),同部屋の北側押入れにて焼き込みの見られた幅木の近傍から,酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトン(シンナー,ラッカー等に使われる有機溶剤で,いずれも消防法の危険物第4類に該当する引火性の高い化学 ),同部屋の北側押入れにて焼き込みの見られた幅木の近傍から,酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトン(シンナー,ラッカー等に使われる有機溶剤で,いずれも消防法の危険物第4類に該当する引火性の高い化学物質)に相当する油性成分が検出されている。このことは,本件火災にこれらの油分が助燃剤として使用されたことを端的に示すものである。 本件火災は,深夜,人気のない無人の居室から出火したものであること,出火場所付近から油性反応が検出されており,助燃剤として酢酸ブチル等を含有する有機溶剤様のものが散布された可能性が高いこと,居住者であるBが保有していたシンナーや溶剤は同人以外には分からない場所に保管されており,助燃剤として使用された有機溶剤様のものは何者かによって持ち込まれたものであること,出火当時,上記居室には火元となるものは置かれていなかったことなどの事実は,本件火災の原因が人為的なもの,すなわち,放火であることを強く推認させるものである。 原告は,①消防の実施したガス検知管による調査によって油性反応が認められなかったのは不自然である,②助燃剤が散布されたのであれば布団から油性成分が検出されないのは不自然である,③押入れの木材のニス等に含まれる油性成分が検出された可能性も否定できないと主張する。しかし,①ガスクロマトグラフ質量分析法の精度は北側式ガス検知管のそれをはるかに凌ぐものであるところ(ガス検知管の1万5000倍を超える精度を有する),本件で現場から検出された酢酸ブチル等の量は0.1ないし0.6マイクログラム/グラムであるため,消防のガス検知管では到底検出することはできず,消防の調査では検出されなかった油性成分が,ガスクロマトグラフ質量分析法を用いた株式会社C(以下「C社」という。)の試料検査によって検 ラムであるため,消防のガス検知管では到底検出することはできず,消防の調査では検出されなかった油性成分が,ガスクロマトグラフ質量分析法を用いた株式会社C(以下「C社」という。)の試料検査によって検出されたことは何ら不自然ではない。また,②押入れ内部は火源と推認される場所であり,酢酸ブチル等は揮発性の高い化合物であるため,火源に直近した部位の布団からは油性成分が燃焼によって焼失し,あるいは高熱によっては揮発したものと考えられる。他方,押入れの敷居やヌキ等はいずれも木材であり,木材が炭化すると,内部の小さな孔に入った科学物質が抜け出しにくくなるため,散布された油剤や揮発した油性成分がこれらの内部に浸透・保持されたことで激しい焼損の後にも油性成分が残存したと考えられる。したがって,押入れ内の布団に油性成分が残存せず,押入れの周りの 木材から油性成分が検出されたことは何ら油性成分が助燃剤として使用されたことの推認を妨げるものではない。③については,人目に付かない押入れ内部にニスを塗布することは常識的にあり得ない上,揮発性の高いこれらの油性成分が塗布して幾月もの間,炭化していない木材に残存し続けることは考え難い。 他の出火原因の不存在本件建物台所の西側の壁及び家具の上部に煤や焼けが見られるものの,東側の焼けは少なく,天井もクロスの焼け落ちが見られないため,台所の火気が出火原因となった形跡は認められない。また,火災原因判定書には,「出火見分状況及び,関係者の供述から暖房器具及び電気用品の使用等は認められ」ないとの判断が示されている。 したがって,本件火災は失火ではなく,何者かによって意図的に放火されたものであることが優に推認される。 イ原告の放火への関与 原告関係者でなければ 示されている。 したがって,本件火災は失火ではなく,何者かによって意図的に放火されたものであることが優に推認される。 イ原告の放火への関与 原告関係者でなければ本件建物への侵入が困難であること本件建物の鍵は,玄関の鍵を含め全てBが保有していたものであるが,出火当時,出火場所である本件建物1階北西側の部屋の北側掃き出し窓は開いており,同居室の外は人気のない畑に面しているから,放火犯人は夜陰に身を隠して容易に同居室まで到達することができる。本件建物はBが占有,使用していたため,各居室の使用状況やBの在室場所を把握できなければ放火する前にBに発見される可能性が高いが,原告関係者であるXは,本件火災の1週間前に行われた強制執行の事前調査に立会し,このとき,出火場所居室に普段人気がないこと,Bの仕事場が3階南側であることを了知したはずであるから,Xと意を通ずる者であれば,本件建物に容易に侵入し得たといえる。 本件建物の購入動機の不自然性 原告は,本件建物の購入動機について,中国にいる母を日本に呼び寄せて一緒に住むこと,本件建物の一部を賃貸すれば家賃収入が得られること,転売することの3点を挙げている。 しかし,居住の用に供すべく土地建物を購入するのであれば,当該建物の外観や間取り等のみならず,建物内部の状況,手入れの必要性とそれにかかる費用,隣接地所有者の属性,占有者の有無等を調査検討するのが通常であるが,原告はこれらについて事前に検討した形跡がうかがわれない。 競落当時,本件建物は,Bや同人が代表者を務める株式会社D(以下「D社」という。)によって占有されており,Bについて強制退去させることが可能であるといっても,退去の際に器物損壊等が行われることもあるし, 当時,本件建物は,Bや同人が代表者を務める株式会社D(以下「D社」という。)によって占有されており,Bについて強制退去させることが可能であるといっても,退去の際に器物損壊等が行われることもあるし,占有者の属性によっては退去後の嫌がらせ等の不安も付きまとうのであるから,競売に不慣れな素人が手を出すにはあまりにも危険が多い物件である。 また,本件建物には上下水道及びガスが通っておらず,井戸もBの管理に係るものであるから,Bから給水設備を借り受けるか,南東方50メートルの地点にある市の水道管から引き工事をしなければ水道の利用もできない状況であり,これらの敷設には,水道管の設置やメーターの設置等総額200万円の負担を要する。さらに,本件建物の電気配線は工場用の200ボルトであるから,低電力を使用する部分については工事が必要となり,前記上下水道の施設費用にこの電気工事等の費用が加わるとかなりの費用負担になるのであって,本件建物購入のためにお金を全部使ってしまった旨を述べる原告がその費用を支払うことは極めて困難と思われる。 また,本件建物を取り囲む土地は道路敷の部分も含めてBの私有地であるから,Bの許可がなければ建物に出入りすることすらも困難な状況にある。 これらの事情は現況調査報告書によって入札前に知り得るものであるところ,母との同居の目的を有する原告が,かかる不便な条件の建物をわざわざ購入するのは極めて不自然かつ不合理である。 また,原告は,本件建物を購入したことを夫であるEに全く伝えていなかった。Eと原告の現在の自宅は,Eが平成17年1月25日に購入したもので,本件火災発生当時,購入からまだ3年しか経過していない。居宅を手放しても住宅ローンの支払はかなり残るものと思われるから,このようなほぼ 原告の現在の自宅は,Eが平成17年1月25日に購入したもので,本件火災発生当時,購入からまだ3年しか経過していない。居宅を手放しても住宅ローンの支払はかなり残るものと思われるから,このようなほぼ新築の建物を手放して,水道もガスも通っていない本件建物を取得することは常軌を逸している。原告がEに事前に相談せずに本件建物を購入したのは,それがEに何ら影響を及ぼさないこと,つまり,その購入目的が保険金の獲得にあったことを合理的に推認させるものというべきである。 原告は,本件火災以前に中国の母を呼び寄せるためビザの申請を行って一度頓挫しているが,それが中国国内の事情によるものとすれば,母を呼び寄せることができるかどうかは微妙な事案であり,かかる不確実な状況の下で本件建物の購入を先行させることもまた極めて不可解であるといわざるを得ない。 以上のとおり,中国の母親との同居という目的は本件建物の購入動機としては極めて不自然かつ不合理である。 賃貸目的についても,本件建物の所在地は甲府市街まで車で約30分を要し,農地の合間に住宅地が点在するような郊外であるから,このような辺鄙な土地の物件に借り手が付くか,極めて疑問である。 また,転売目的についても,同目的を有するのであれば通常有しているであろう,できる限り当該建物を廉価で購入しようとする観点に原告が腐心していないことからすれば,到底措信し得ない。 上記を総合すると,原告は,当初から上記3つのいずれの購入目的も持たず,保険金取得目的で本件建物を購入したと評さざるを得ない。 本件建物の購入資金の不自然性原告は,本件建物の購入代金として700万円を350万円ずつ2回に分けてXに支払ったとしている。しかし,本件建物の 入したと評さざるを得ない。 本件建物の購入資金の不自然性原告は,本件建物の購入代金として700万円を350万円ずつ2回に分けてXに支払ったとしている。しかし,本件建物の競売手続に係る買受申出 書には原告自筆の記入や押印等があるから,原告が本件建物の購入価格を知らないはずはなく,買受価格のほぼ2倍の金員をXに渡したというのは不自然である。 原告が金銭を預けていたというFの銀行預金通帳の出金記録では,平成19年8月16日に100万円,翌17日に180万円の引き出しがあるのみで,Xに対する最初の支払日である同年7月30日の直前には7万円以上の金額を引き出した履歴はないから,原告の供述と出金記録との間には齟齬がある。そもそも,親しい友人とはいえ,預かり証の発行も求めず,預けた金額がいくらかについて自分の記憶以外に確認する術も有せずにFの口座に金銭を預けるというのは不自然であるし,オーバーステイによる口座開設の障害は遅くとも本件火災の1年前には消滅していたはずである。原告は,上記以外の金銭は自宅の箪笥預金等で保管していた分から工面したとするが,400万円余りの大きい金額を自宅で保管していたというのも措信し難い。 原告の所得証明書によれば,平成18年の収入は310万8000円(月平均26万円程度)であるから,月40から50万円の収入があった旨の原告の供述とはほど遠く,原告が700万円もの資金を作ることが可能だったとは到底認められない。なお,平成19年の収入は202万円とされているが,わずか2か月足らずで202万円(月100万円以上)の収入を得ていたというのはあまりに不合理であり,原告の供述とも矛盾する。 中国語で会話をする原告とXが,わざわざ日本語で領収証を作成しているのも,当該領収証が,金銭授 02万円(月100万円以上)の収入を得ていたというのはあまりに不合理であり,原告の供述とも矛盾する。 中国語で会話をする原告とXが,わざわざ日本語で領収証を作成しているのも,当該領収証が,金銭授受の外形を示すものとして被告関係者の閲覧に供することを念頭に置いて作成されたかのごときである。 したがって,原告とXの間に金銭の授受はなく,原告はXに名義を貸しただけであり,本件建物は,Xの計算において,Xが購入したものとみるほかないのである。 保険契約締結経緯の不自然性 原告は,本件建物を競落した時には火災保険に加入せず,平成19年12月上旬に,突然,被告甲府支社の窓口に来店し,火災保険契約の申込みをしているが,本件火災が発生したのは,そのわずか3か月足らず経過後の平成20年3月18日である。保険契約締結と近接した時期に保険事故が発生したことは,当該事故の偶然性を否定する重要な間接事実である。 原告は,Xから,Bがそろそろ出て行くと聞いたので保険の加入を思い立ったと述べているが,Bが本件建物を占拠していることを理由に保険契約をせずにいた者が,何らの家財も搬入し得ていないにもかかわらず,突然保険に入ることを思い立つこと自体不可解である。 また,原告は,いわゆる飛び込みで被告甲府支社に来店したものであるが,損害保険契約は保険代理店を介して加入するのが普通であり,保険会社の支社に直接来店して加入するというのは常態ではない。 台風や洪水の被害が絶えない我が国においては,火災を遙かに上回る蓋然性をもって発生する風水害への対処が不可欠であるにもかかわらず,原告が本件保険契約の内容を火災,落雷等の最小限度の補償に限定していることも,あたかも保険金支払の対象となる事故の発生をあらかじ る蓋然性をもって発生する風水害への対処が不可欠であるにもかかわらず,原告が本件保険契約の内容を火災,落雷等の最小限度の補償に限定していることも,あたかも保険金支払の対象となる事故の発生をあらかじめ予見していたがごときである。 また,原告は,保険加入に当たって金銭的余裕がなかったことを自認しているが,そうであれば,5年契約ではなく1年契約として当座の負担を軽減することもできたはずである。それにもかかわらず,あえて5年契約を選択した合理的理由を探るならば,短期の契約によって契約直後に火災が発生した場合に放火を疑われるのを避ける狙いがあったものと推測せざるを得ない。 上記のとおり,本件保険契約の締結経緯にも不自然,不可解な事情が多数散見され,そのことは原告関係者の本件火災への関与を推認させる重要な間接事実である。 原告に本件建物の所有を維持する意思及び資力がないこと原告は税金を滞納し,これによって山梨県及び南アルプス市が相次いで本件建物を差し押さえているが,原告は,当該処分の取消し等に向けた相応の努力をしていない。原告には,本件建物所有の意思があるものとは到底言い難く,この事実も原告の本件火災の関与を推認させるというべきである。 Xの属性についてXと原告は,原告の勤めていたスナックで知り合ったとされているが,700万円もの大金を委ねるに足るだけの信頼関係や経済的利害関係については何ら言及されていない。 本件建物の特別売却手続においては,平成19年8月20日が代金納付期限とされていたが,Xによって納付期限の延期申請がなされている。原告の主張によれば,8月20日の納付期限には既に350万円がXに支払われていたのであるから,残額261万円を前記期限に 日が代金納付期限とされていたが,Xによって納付期限の延期申請がなされている。原告の主張によれば,8月20日の納付期限には既に350万円がXに支払われていたのであるから,残額261万円を前記期限に容易に納付できたはずであるにもかかわらず,上記のような延期がなされたことは,原告からXに金銭の支払がなされていなかったことを強く推認させる。 本件建物は,北側部分と南側部分が構造的・機能的に分離されており,本件火災によって北側は著しく焼損したものの,南側はほとんど損傷を被っていない。南側部分2階には,被告による調査時において,中国人と思われる男性10名ほどの居住が確認されているが,Xの説明によれば,本件建物を管理しているのは原告ではなくXであり,同建物の南側部分には「小林」(下の名前は分からない)という名の日本人を住まわせているとのことである。 しかし,Xの供述は前記占有状況と大きく異なるし,下の名前すら分からないような他人を本件建物に住まわせるというのも極めて不可解である。本件建物1階には「G國際株式社」と書かれた看板が取り付けられており,同社の設立登記によると,取締役には「H」なる人物が登記されているが,同人の住所地の土地建物はXが競落し,所有するものであって,同社とXとの 密接な関係が推測される。 上記のように,本件建物は,Xが自らの利益のために占有し,独占しようしているものと言わざるを得ないところである。 山梨県甲斐市所在の建物がXの所有となった8か月後に焼失し,閉鎖登記となっているが,この時の火災も床全体に灯油を播いた放火とみられている。 Xが複数の放火物件に関与していること自体,極めて不可解である。 高額な利得の収受Xないし原告が本件建物を取得するのに要した費用は348 に灯油を播いた放火とみられている。 Xが複数の放火物件に関与していること自体,極めて不可解である。 高額な利得の収受Xないし原告が本件建物を取得するのに要した費用は348万円であるところ,本件保険契約に基づく保険金が支払われれば原告は6430万円の保険金を手にすることになる。火災保険金額が建物の構造や床面積を基準にした再調達価格で協定されていることから,自己使用等の必要性がないのに競売等で土地建物を格安で取得した上,火災保険を付して放火し,もって多額の保険金を不正取得しようと企てる事案が多発しており,本件もその一例である。 Bの放火の可能性Bは,本件火災発生時,火事に気付いて消火活動をしており,本件建物にいたBの友人であるIもその様子を目撃している。Bが嫌がらせのために火を付けたのであれば,自ら消火活動を行うのは不自然であるし,まして,友人が宿泊している夜を選んで火を放つとは考え難い。Bには保険利得等の経済的動機がないばかりでなく,火勢によっては自らの居住場所を失うことになるという危険を冒すものとは考え難い点を考慮すれば尚更である。 他方,本件火災は本件建物の北側を焼損したのみで,南側にはほとんど延焼していない。そして,Bとその友人は,出火当時,3階南側の事務所及び寝室にいたため,災禍から免れている。原告が指摘するように,実際に人が内部にいることを知りながら建物に放火すれば,放火罪だけでなく殺人罪にも問われかねないのであり,通常は想定し難いケースということになるが, Bらがいる本件建物南側への延焼が及ばないことを知っている者であれば,かかるリスクに対する抵抗なく北側に放火することが可能である。このような特殊な構造を理解している者は原告とXをおいて他にいない。 Bらがいる本件建物南側への延焼が及ばないことを知っている者であれば,かかるリスクに対する抵抗なく北側に放火することが可能である。このような特殊な構造を理解している者は原告とXをおいて他にいない。 これらの諸事情に照らすと,本件火災は,原告がXと共謀して火災保険金を取得しようと企て放火したもの,すなわち,原告の故意によって引き起こされたものである。 (原告の主張)本件火災の原因が放火であると認めることはできない。 仮に放火であったとしても,原告の関与は認められない。原告が関与して本件放火を発生させることが困難な事情が複数あり,むしろ,強制執行による立ち退きを余儀なくされたBが,嫌がらせのために火を付けたと考える方が本件火災の発生を矛盾なく説明できるのである。これに加えて,原告の本件保険契約締結に特に不自然な点はなく,原告に本件建物を放火するほどの動機がないばかりか,むしろ原告に本件建物を使用する目的があることからすれば,原告が放火に関与したものとは認められない。 したがって,被告の保険金支払債務は免責されない。 ア火災の原因が放火によるものと認めることはできないこと 助燃剤が散布されたとみることは不自然であること押入れ内部に助燃剤を散布し,放火しようとするのであれば,容易に燃える布団を媒介物とし,これに助燃剤を散布して放火しようと考えるのが自然であるが,押入れ内部に残存していた布団の残焼物からは油性成分が検出されていない。また,押入れ敷居の残焼物は押入れ内部の比較的高い位置から採取されているが,仮に,これが押入れ内部に助燃剤を散布した際に付着したものであれば,相当程度の助燃剤を押入れ内部全体に放散して付着させたと考えるのが自然であり,そうであれば,やはり,布 い位置から採取されているが,仮に,これが押入れ内部に助燃剤を散布した際に付着したものであれば,相当程度の助燃剤を押入れ内部全体に放散して付着させたと考えるのが自然であり,そうであれば,やはり,布団から助燃剤が検出されていないのは不自然である。放火のため相当程度の助燃剤が散布されてい たのであれば,消防の実施したガス検知器による測定においても油性反応が認められて然るべきである。 したがって,助燃剤を散布して本件建物を放火したとみるのは不自然である。 検出された酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンは,木材を保護するための塗料,壁紙,ニス等にも含有される成分である。本件で検出されたこれらの成分も,もともと押入れの木材に当該成分を含む何らかの薬品が塗布されており,それが今回の試験で検出された可能性が十分にある。 本件建物の状況から侵入が困難であること本件火災の出火場所は,本件建物北側部分の一番奥にあり,当該建物は1階をD社が事務所として使用し,2階及び3階をBが居宅として使用していた。そして,BがD社の代表取締役であることからすると,当該建物全体をBが事実上管理使用していたといえる。このように,人が管理し使用している建物に侵入するということは,発見されるリスクがあることから通常は避けようと考えるものである。 また,本件建物の鍵を保有していたのはBのみであるから,同人以外の者が本件建物に侵入したとすれば,施錠されていなかった1階北西の部屋の北側掃き出し窓から侵入したことになる。しかしながら,窓が開いているかも分からない状況で本件建物の正面からわざわざ北側に回り込むとは考え難いし,本件建物の北側は畑に面していて通路もないため,畑を通り,又は壁伝いで本件建物まで来るとい 。しかしながら,窓が開いているかも分からない状況で本件建物の正面からわざわざ北側に回り込むとは考え難いし,本件建物の北側は畑に面していて通路もないため,畑を通り,又は壁伝いで本件建物まで来るということも通常考えられない。 失火の可能性を否定できないこと暖房器具及び電化製品の使用等が認められない旨の消防の判断はBの証言を前提とするところ,Bは本件建物の居住者としてその失火等を疑われる立場にあるから,これを前提とした判断は信用できない。 Bが本件建物を管理し使用していた以上,出火場所である居室をおよそ火 気のない無人の状態であったということはできない。 以上のように,本件火災で助燃剤が散布されたとみることは不自然であり,失火と考える余地も排斥できない以上,本件火災を放火であるということはできない。 イ原告が本件火災へ関与したと認めることはできないこと 本件建物を購入する動機があること原告は,本件建物競落以前から中国にいる母親と日本で一緒に住みたいという希望を有していた。そのような折りに,原告は,友人が競売で安価に建物を購入したことを知って羨ましく思い,競売によって自らも不動産を取得し,母親を呼んで同居したいと考えるに至った。 原告がXに不動産取得について相談したところ,同人から,当時Xが目を付けていた本件建物を競落することを勧められた。本件建物は北側と南側が独立した二世帯構造であり,3階建てで居住スペースも十分にあるから,現在同居している家族と,中国から呼び寄せる母親を合わせた7人が同居していくのに構造,広さ,内装ともまさに最適な物件である。 原告は,すぐに母親と同居しようと考えていたわけではなく,まずは夫と子供を含めた4人で る家族と,中国から呼び寄せる母親を合わせた7人が同居していくのに構造,広さ,内装ともまさに最適な物件である。 原告は,すぐに母親と同居しようと考えていたわけではなく,まずは夫と子供を含めた4人で生活し,その後母親を呼ぶこともできたらよいと考えていた。母親を呼び寄せるためのビザ申請が一度頓挫しているとしても,これが不可能になったわけではなく,原告にとって最適の物件が700万円という破格の安い値段で手に入るせっかくの機会なのであるから,母親を呼び寄せる前に先に日本での居住の基盤を確保しておこうと考えることは自然な流れであり,建物の購入を先行させたことは何ら不自然ではない。 本件建物に水道,ガスが通っていなかった点については,原告は競売資料を読むことができず,Xに一切を任せており,同人が,原告が居住できる状態にし,その費用も原告が支払う700万円に含まれていると認識していたため,何ら懸念していなかった。また,Bが本件建物を不法占有していたこ とについても,最終的には強制退去が可能であるし,これによって価格が低廉になるから,原告が金銭面で得であることを重視して本件建物を購入しようと考えることも十分合理的選択の範囲内である。本件建物の周囲の土地がBの所有地であることも,その南側には道路が存在するから,原告が本件土地を使用することの妨げになることはない。 本件建物の購入をEに伝えていなかったのは,原告が元々自分で勝手に決めてやる性格である上,本件建物の競落資金にはEから援助された金銭も相当程度含まれており,これをEとの家庭生活ではなく,母親と暮らしたいという自己の希望のために消費するのであるから,Eに対し,多少なりとも後ろめたい気持ちがあったためである。また,原告はすぐに母親を呼び寄せて引っ越すことを考えてい 家庭生活ではなく,母親と暮らしたいという自己の希望のために消費するのであるから,Eに対し,多少なりとも後ろめたい気持ちがあったためである。また,原告はすぐに母親を呼び寄せて引っ越すことを考えていたわけでもないから,本件建物の取得をEに伝えていなかったことをもって不自然とはいえない。 Xに競売手続を委任した点についてXは,原告と同じ中国人であり,原告が来日してすぐに勤め始めたスナックで知り合って以来,友人関係にある。原告は日本での生活や日本語に不慣れな状態であったのに対し,Xは不動産業や人材派遣といった複数の事業を営み,競売手続にも精通していたため,原告はXを強く信頼し,本件建物の競売手続についても全てをXに任せていた。 被告は,原告が本件建物の詳細について調査しなかったことが不自然であると主張するが,本件建物はBが不法占拠していたため,建物内部に入らずに調査できるのであればそれを希望するのが自然であったといえ,内部を写真で調査するにとどまったことは本件の特別な事情のもとでは何ら不自然ではない。また,原告は,信頼するXに代わりに調査させていたのであるから,原告自身が建物内部に入らなかったことは何ら不可解ではないし,原告は日本語を十分に理解していなかったため,専門用語が多く用いられている競売資料に自ら目を通さなかったことも何ら不自然ではない。 Xに対し,競落代金として700万円が支払われたこと原告は,Xに対し,本件建物を取得する代金として合計700万円を支払った。本件建物を実際に取得しようとする者だからこそ代金を支払うのであり,被告が主張するように,保険金取得目的で本件建物を競落したのであれば事前に代金を支払う必要はないのであるから,この事実からも原告が保険 建物を実際に取得しようとする者だからこそ代金を支払うのであり,被告が主張するように,保険金取得目的で本件建物を競落したのであれば事前に代金を支払う必要はないのであるから,この事実からも原告が保険金取得目的で本件建物を競落したのではないことが推認される。 原告の支払については,Xが平成19年7月30日と同年9月1日にそれぞれ350万円ずつ受け取った旨の領収証が2通存在する。2枚の領収証はそれぞれ記載内容が異なっており,異なるペンで作成されたことがうかがわれることからすれば,これらは異なる機会に作成されたものといえ,原告が2回に渡って350万円ずつ支払ったことが強く推認できる。実際はXが競落資金を用意したのであれば,700万円を一括で支払った旨の領収証1枚で足りるのであり,2枚の領収証を別の機会に渡って作成する必要はないし,そもそも,700万円という実際の入札金額と乖離した金額にする必要もないのである。Xが日本でビジネスを行っている者であることからすれば,日本製の領収証を,日本語を用いて作成することも何ら不自然ではない。 原告は,スナックで2年程働いており,その間の収入は月40ないし50万円,少ないときでも30万円以上あった上,Eから金銭の贈与も受けており,無駄な出費も極力抑えて倹約していたから,本件建物の購入資金を十分に調達することができた。被告は,原告の供述が所得証明書と整合しない旨を主張するが,原告は,スナックで働いていた際,客からチップをもらっており,これは個人的な贈与であって所得証明書には反映されていないから何ら齟齬はない。 原告がXに支払った700万円は,原告の友人であるFの口座で保管していた分と原告が自宅で保管していた分を合わせて工面したものである。原告は,当時オーバーステイの状態で ら齟齬はない。 原告がXに支払った700万円は,原告の友人であるFの口座で保管していた分と原告が自宅で保管していた分を合わせて工面したものである。原告は,当時オーバーステイの状態であったことから自分の口座を作れず,やむ を得ずFの口座に一緒に預金していたのであって,それ自体不自然とまではいえない。原告は,Fの口座から,平成19年8月16日及び翌17日に合計285万円を引き出してXへの支払に充てた。通帳からの引出金額と支払金額が一致していないのは,原告が一部の資金を自宅で保管していた金銭から調達したためであり,むしろ当然である。原告が金銭をFの口座と自宅とで分散して保管していたのは,他人に自分の財産を把握されることを極度に嫌だと感じていたことと盗難のリスク等を避けるためである。ビザ取得後もこのような保管方法を変えなかったのは,上記のような保管方法に特段問題が生じず,あえて自分名義の口座を開設しようと考えなかったためであるから,何ら不自然ではない。 支払金額が700万円とされたのは,本件建物の落札価格に加えて,明渡手続費用,設備費用及びXの手数料を考慮したものであるから,落札価格である348万円と齟齬があることも何ら不自然ではないのである。 火災保険への加入が不自然ではないこと原告は,本件建物購入後3か月間火災保険に加入しなかったのであるが,これはBの占有によって原告自身が本件建物に居住できておらず,自分のものになったという認識が薄かったこととその購入時には金銭的余裕がなく,子供も小さかったことで火災保険の締結まで意識が及ばなかったためである。しかし,原告は,建物明渡の強制執行によるBの退去が近いことをXから告げられ,客観的には2000万円以上の価値のある原告の財産を保全す 小さかったことで火災保険の締結まで意識が及ばなかったためである。しかし,原告は,建物明渡の強制執行によるBの退去が近いことをXから告げられ,客観的には2000万円以上の価値のある原告の財産を保全する必要があると考えて,自らの意思で保険に加入したのであって,本件保険契約締結の経緯は自然である。 保険会社として被告を選んだのは,被告店舗前をよく通り,その存在を認識していて,大手保険会社として信用が高かったためである。Eと同じ保険会社を選ばなかったのも,原告はEに本件建物の購入を知られたくないと考えていたのであるから,別段不思議はない。本件保険契約の保険料は一括で 9万円程度であるから,これに加入する経済的余裕も有していた。 本件建物は鉄骨造りで強固であり,台風や洪水による損壊は通常考えられないのに対し,火災については,建物全体が全焼することもあり,しかも,放火も含めてその頻度も決して少なくないから,原告は火災保険に加入したのであって,原告が特に台風や洪水による損害を契約に含めなかったとしても不自然ではない。 本件保険契約の保険金額については,被告従業員がマニュアル通りに案内し,原告がそれに従う形で決定された。原告は,本件建物が6000万円と評価されたことに対して,こんなに高いのかと尋ねたが,被告側がマニュアル通りに算定を行っていることから特段異議を述べなかったのである。しかし,その分保険料が高額になってしまうことから,原告は,補償内容を決定する際,「より安いものはないか。」と要望している。このことから,本件保険契約について,原告に特段積極性は認められず,保険金支払を意図して締結したものとは認められない。 本件火災後の本件建物の管理をXに任せている点について原告は,本件火災後 険契約について,原告に特段積極性は認められず,保険金支払を意図して締結したものとは認められない。 本件火災後の本件建物の管理をXに任せている点について原告は,本件火災後に本件建物の管理をXに任せているが,これは,不幸な火災に遭ったにもかかわらず,火災保険金すら支払われないという二重の災難に遭い,もう建物を見たくないと思ったためである。このような心情の原告が本件建物の管理をXに任せるのは自然な経緯である。管理を任せた時期が被告から保険金の支払を拒絶された時点より後であることもこれを裏付けている。 XについてXが本件建物に外国人を住まわせたり,会社の看板を掲げるなどの事実はいずれも本件火災後の事情にすぎない。本件火災により,本件建物は北側が全焼し,原告が使用できる状態ではなくなったため,Xがこれを有効利用しているにすぎないものと考えられる。これをもって,本件建物が実質的にX によって競落されたということはできない。 Xの所有していた建物が放火とみられる火災で焼失したことはあるが,これはXが家族旅行に行った日の翌々日に生じたものであり,Xはこの建物に火災保険をかけていなかった。そのほか,Xが放火された物件に関わっている事実や損害保険会社と訴訟をしたという事実はない。 本件火災の発生時期について本件火災は平成20年3月18日に発生しているが,同年4月9日には強制執行が実施される予定になっていたのであるから,居住者であるBに発見されるリスクや鍵を管理していないことによる侵入の困難性があるにもかかわらず,あえて強制執行前に原告が放火するというのは極めて不自然である。仮に,放火してまで火災保険金を入手しようと計画するならば,原告が占有を得てか 理していないことによる侵入の困難性があるにもかかわらず,あえて強制執行前に原告が放火するというのは極めて不自然である。仮に,放火してまで火災保険金を入手しようと計画するならば,原告が占有を得てからの方が容易であり,Bに気付かれて鎮火されてしまう可能性のある時期に行うことは不自然である。 もし,B以外の人物が放火したとしたら,実際に他人が建物内に在住している建物への放火となるケースであって,殺人罪ともなりかねないケースであるから,これを知りながら放火するとは通常考えられない。 以上より,原告及びXの本件火災への関与を推認させるという間接事実はいずれも合理的理由により説明がつくものであって,原告が本件火災に関与していないことは明らかである。 原告の被保険利益ないし本件保険契約の解除の可否(被告の主張)ア前記のとおり,本件においては,本件建物の購入資金を原告が保有していたとは考え難く,競落資金の出所はXと見ざるを得ないこと,原告の本件建物の購入経緯が不自然であること,原告が本件建物の占有状況等について調査し,あるいは確認するなどの行動をとった形跡が全くうかがわれないこと等の事実を挙げることができる。 これに加えて,Eが被告の調査員に対して「誰かに名義を貸したものであり,自ら購入したものではない」旨説明していたこと,Xの属性に照らし,同人が本件建物を競落するには危険が大きく,他に名義を借りて保険契約を締結した方が実現可能性が高いこと,本件建物は複雑な占有関係等を反映して低額であり,Xの不正な目的を達成するのに格好な物件であったこと,Xが本件土地の周囲の土地を自身の名義で取得していることを考慮すると,原告はXに名義を貸したものにすぎず,真実の競落人,すなわち実質的所有者はXで Xの不正な目的を達成するのに格好な物件であったこと,Xが本件土地の周囲の土地を自身の名義で取得していることを考慮すると,原告はXに名義を貸したものにすぎず,真実の競落人,すなわち実質的所有者はXであって,原告に被保険利益はない。 イ真実の所有者であるXが保険金の取得を容易にするため,原告の名義を借りて競落し,かつ,本件保険契約の締結を企図したものと強く疑われる事情が存在するため,本件保険契約は,保険法30条が定める「保険契約者又は被保険者が,保険者に当該損害保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として損害を生じさせ,又は生じさせようとした」場合に該当する。 したがって,被告は本件保険契約を解除する。 (原告の主張)いずれも争う。 ア前記のとおり,原告は競落資金の700万円を調達することが可能であったし,本件建物競落の動機もあるから,原告に被保険利益がないとする被告の主張は認められない。 イ原告は本件建物の真実の所有者であり,保険金支払目的で放火したものとも認められないため,保険法30条の定める重大事由は存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提となる事実に下記証拠及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。 本件建物の占有状況等ア本件建物は,物件2及び3の建物が一体となって一棟の建物を構成している が,南側に位置する物件2と北側に位置する物件3はALC(オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート)によって区画されており,機能的には分離した構造となっている(以下,物件2を「本件建物南側部分」,物件3を「本件建物北側部分」ということがある。)。 本件建物の競売手続開始決定時の不動産登記事項証明書上の所有名義人はJであった。 執行官 ている(以下,物件2を「本件建物南側部分」,物件3を「本件建物北側部分」ということがある。)。 本件建物の競売手続開始決定時の不動産登記事項証明書上の所有名義人はJであった。 執行官による現況調査の時点において,本件建物は,物件2の全部と物件3の1階部分をD社が占有しており,物件3の2階及び3階部分をBが個人で占有していた。同人らの占有権原については,所有名義人であるJは使用借権である旨を,Bは所有権を主張しており,執行官の意見として,占有権原は不明であるとされていた。 本件建物にはガス及び下水道の供給処理施設がなく,上水道についても,占有者であるBが井戸を使用して水を汲み上げている状況であった。当該井戸や汲み上げ用のポンプ等の設備はBの所有物であるため,競落者が上水道を使用する場合には,本件建物の南東方約50メートルの地点にある市の水道管からの引込工事を行う必要があった。また,本件建物の電気設備は低圧電力(200ボルト)用の配線になっているため,低圧電力を使用している部分については,競落者が配線を改修する必要があった。株式会社K鑑定事務所は,本件建物への居住開始のために必要となる住宅設備引込工事費について,上水道の引込工事及び負担金等合計約180万円並びに電柱からの電線引込工事約20万円を併せて少なくとも200万円程度を要すると見積もっており,ガス及び下水道についても,実際の状況次第で整備を要する可能性があるとしている。 本件土地は,西側が水路に面しており,北及び東側は隣地に面していた。北側隣地は畑であり,東側隣地はD社の所有地であった。本件土地の南側は市道に面しており,本件土地の南側端の幅0.7から0.8メートルにかかる部分がその市道と一体となった道路敷になっていたが,当該市道には残土等が不法 ,東側隣地はD社の所有地であった。本件土地の南側は市道に面しており,本件土地の南側端の幅0.7から0.8メートルにかかる部分がその市道と一体となった道路敷になっていたが,当該市道には残土等が不法 に存置されていて自動車の通り抜けができない状況であった。(乙2・89ないし121丁,17)イ本件土地及び建物の当初の売却基準価額は1113万円であったが,2回の期間入札に付しても買受申出人が現れなかったため,3回目の売却基準価額の決定により,その価額は435万円(買受可能価額は348万円,買受申出保証額は87万円)と定められた。(乙2・166ないし172丁) 本件建物の取得等ア原告は,本件建物の競売手続をXに委任していたところ,Xは,本件建物が特別売却に付されたことから,その実施期間内に348万円で買受申出をした。 その買受申出書の買受申出人の欄の氏名及び住所等は原告が記載し,348万円という買受申出額はXが記載した。 平成19年6月28日,本件土地及び建物を348万円で原告に売却する旨の売却許可決定がなされ,その代金納付期限が同年8月20日午前10時と設定された。Xは,原告が中国に帰国するため同年9月20日まで納付期限を延期することを求める旨の申請をし,これが認められて,最終的に同月19日に保証金を控除した261万円の代金納付をした。 なお,原告は,平成18年9月21日にEと婚姻し,同人との間に一子をもうけているところ,本件建物を購入したことをEに説明していなかったため,Eは,本件火災後に被告の調査員から聞き及んで初めて原告が競売によって本件建物を購入し,それが火災にあったことを知るに至った。(甲2,乙2・243丁・254丁・259ないし267丁・275丁,3,10,証人X)イ本 員から聞き及んで初めて原告が競売によって本件建物を購入し,それが火災にあったことを知るに至った。(甲2,乙2・243丁・254丁・259ないし267丁・275丁,3,10,証人X)イ本件建物の取得に関して,Xは原告に対して2枚の領収証を交付した。そのうちの1枚は,領収日付が平成19年7月30日,金額が350万円,名目が不動産購入預かり金とされており,もう1枚は,領収日付が平成19年9月1日,金額が350万円,名目が不動産購入金とされていた。いずれの領収証も日本の書式に基づいて日本語で作成されており,200円の収入印紙が貼り付 けられていた。(乙3)ウ F名義の銀行預金口座からは,平成19年8月16日に100万0105円,同月17日に185万円の出金がなされた。同年7月から9月までの出金は,前記合計285万0105円のほか,同年7月20日の7万円,同年8月6日の1万円,同月22日の10万円のみであった。(乙3) 引渡命令の実施原告は,平成19年9月19日,本件建物について,Bを相手方とする不動産引渡命令の申立てをし,同月25日,その引渡命令が発令された。 執行官は,平成20年3月10日,Bに対する前記引渡命令を執行し,同年4月6日までに建物を明け渡すよう催告するとともに,同期限までに明け渡さないときは,同月9日午前9時に強制執行を実施する旨を告知した。その引渡命令の執行には,債権者の代理人としてXが立ち会っていた。(甲8,9,乙2・300ないし304丁) 本件保険契約締結の経緯原告は,平成19年12月上旬ころ,被告の甲府支社を訪れ,競売によって新たに住宅を購入したため,火災保険の手当をしたい旨申し入れた。その際,原告は,知人等の紹介で被告甲府支社に来店したもの 原告は,平成19年12月上旬ころ,被告の甲府支社を訪れ,競売によって新たに住宅を購入したため,火災保険の手当をしたい旨申し入れた。その際,原告は,知人等の紹介で被告甲府支社に来店したものではなく,飛び込みで来た旨を述べていた。 被告の担当者が,原告に対し,各種保険契約の保険金額や補償内容等のプランを説明したところ,原告は「より安いものはないか。」という要望を述べていた。 被告の担当者は,具体的な保険料の提示等は実際に物件を確認した後に行うこととし,同月19日に本件建物を訪問して検分した。 同月25日,原告が再び被告甲府支社を訪れたため,被告の担当者は,マニュアルに基づいて本件建物の保険金額を6430万円と設定し,原告との間で本件保険契約を締結した。(甲3,乙11) 本件火災発生時の状況等 ア平成20年3月18日午前2時30分ころ,本件建物付近を自動車で走行した通行人が本件火災の発生に気付き,消防に通報した。 本件火災が発生した際,Bは,本件建物南側部分の3階の居室にいたところ,火災の発生に気付いたため,本件建物の外に非難して,消防隊が到着するまでの間,本件土地内にある水道にホースを繋ぎ,炎が勢いよく吹き出していた1階北西側の部屋の掃き出し窓から部屋内に水を散布するなどの消火活動を行った。 また,Bの友人であるIも,本件火災発生時,本件建物南側部分の3階の居室におり,火災の発生に気付いて本件建物の外へ避難した。その際,同人はBが消火活動を行っているのを目撃した。(乙13の1,19)イ本件火災発生の通報を受け,平成20年3月18日午前2時39分に消防隊が火災現場に到着すると,本件建物1階南西の階段東側の隙間から炎と黒煙が吹き出している状況であった。また,1階南側の玄関ドア イ本件火災発生の通報を受け,平成20年3月18日午前2時39分に消防隊が火災現場に到着すると,本件建物1階南西の階段東側の隙間から炎と黒煙が吹き出している状況であった。また,1階南側の玄関ドアの隙間からも炎が確認されたが,南面の2階及び3階の窓ガラスは閉まっていた。 消防隊が本件建物内に突入すると,本件建物南側部分の2階及び3階は煙が充満していたものの,炎は確認されなかった。北側部分の2階の部屋及び3階廊下,居室には火煙が確認された。(乙1) 本件火災発生後の本件建物の損傷状況等ア平成20年3月19日午前9時30分ころから午後1時ころまで,本件建物において,消防による現場見分が実施された。 本件建物外周部の状況本件建物の外周部は,南側には焼損等が確認されず,東側は,南東側は焼損等が確認できないものの,3階北東側のベランダの壁等が変色していた。 西側外周部は,南西側は焼損等が確認できないものの,北西側は窓の破損及び外壁への煤の付着が確認された。北側外周部は,1階北西側の部屋の掃き出し窓の全てのガラスが割れ落ち,アルミ製のサッシ枠も溶解していた上, 窓から噴出した火炎により,3階まで外壁が変色していた。北側の2階及び3階については,窓ガラスが割れ落ちている箇所はあったものの,アルミサッシの溶解は確認されなかった。 本件建物内部の状況本件建物南側部分の内部には焼損が確認されなかった。 北側部分の内部は,1階北西側の部屋において,天井の石膏ボードが落下し,各柱には亀甲模様が強く確認された。特に,同部屋の東側の壁は全ての石膏ボードが脱落し,北東の柱も焼け細り焼失しており,東側押入れ部分の柱,敷居,地板等については,亀甲模様が強く,炭化深度も深くて焼 ,各柱には亀甲模様が強く確認された。特に,同部屋の東側の壁は全ての石膏ボードが脱落し,北東の柱も焼け細り焼失しており,東側押入れ部分の柱,敷居,地板等については,亀甲模様が強く,炭化深度も深くて焼失していることが確認された。1階北東側の部屋においても,天井板の焼け落ち,鉄骨の変色等が確認されたが,1階東側の部屋においては,壁の変色等が確認されたほかは,亀甲模様は確認されなかった。 階段室は,全ての階段が焼け落ちて焼失しており,1階の壁の石膏ボードが全て落下していたが,2階は所々石膏ボードが残っており,3階はほぼ残存していた。2階の台所は,西側の壁及び天井等に煤の付着が確認されたが,クロスの焼け落ちは確認されなかった。2階及び3階のその他の部屋については,2階玄関,3階南東側の部屋で天井板の焼失等が確認されたものの,1階に比して炭化深度は浅かった。 1階北西側の部屋の北側掃き出し窓のサッシは開いた状態であった。 イ消防の作成した火災原因判定書では,本件建物の外周部のうち,北側1階外周部の焼けの度合が強いこと,2階及び3階については階段室から燃え広がっていること,1階北西側の部屋の焼損状況が他の部屋よりも著しいことなどから,1階北西側の部屋が出火箇所であると判定された。 出火原因については,関係者の供述から暖房器具及び電気用品の使用は確認されなかったこと,1階北西の部屋をガス検知器によって測定したものの反応が見られなかったこと,1階北西の部屋の北側掃き出し窓が開いていたことか ら,放火の可能性があるものの,原因は不明であるとされていた。(以上乙1,13の2) C社の試験結果等ア平成20年4月1日,神奈川県警科学捜査研究所で火災原因の調査等を行っていた経験を有するL及びC社の調 ,原因は不明であるとされていた。(以上乙1,13の2) C社の試験結果等ア平成20年4月1日,神奈川県警科学捜査研究所で火災原因の調査等を行っていた経験を有するL及びC社の調査員らが本件建物を訪れ,同建物の焼損状況の確認及び残焼物からの油性成分の検出調査などを行った。 Lは,本件建物の構造上3階から1階に延焼するとは考えられないこと,2階及び3階の焼損状態に独立した焼損痕跡が見られないこと,1階北西側の部屋の天井とその野縁が押入れ上部を中心として焼失していることなどから,同部屋の押入れが出火場所であり,階段室を経路として2階及び3階に延焼したものと推定されるとした。 C社の調査員が,1階北西側の部屋を調査対象として,同室から採取した6個の検体の焼損物について油性成分調査を実施したところ,同室の押入れの敷居,ヌキ(壁の横木)及び幅木焼け込み痕近傍の床板から,酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンが検出された。同押入れ内の布団中綿炭化物,同室南西寄りと北東側の床板残焼物からは油性成分が検出されなかった。なお,前記油性成分は,いずれも可燃性の液体で,薬品抽出剤,樹脂溶剤,塗料の溶剤,ラッカーシンナー等の有機溶剤に用いられるものである。(乙8,9)イ C社で火災残焼物の油性成分分析を行っているMは,酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンが一般家庭内に存在するとは想定されないため消防がそのガス検知管を常備していないと推察されることやC社の用いるガスクロマトグラム質量分析法が消防のガス検知管の1万5000倍以上の感度を有することなどから,消防のガス検知で油性成分が検出されなかったにもかかわらず,C社の調査で前記油性成分が検出されたことは何ら不自然な結果ではない旨の意見を述べている。 ま 以上の感度を有することなどから,消防のガス検知で油性成分が検出されなかったにもかかわらず,C社の調査で前記油性成分が検出されたことは何ら不自然な結果ではない旨の意見を述べている。 また,Mは,酢酸ブチル等が炭化物から検出されたことについて,木材など が炭になることによって内部の小さな孔が多くなり,その孔に化学成分が入り込むことによって抜け出し難くなるため,燃焼や揮発を免れた油性成分が火災後の常温状態になった後も残留することは不自然ではないとしている。布団の残焼物から酢酸ブチル等が検出されなかったことについては,当該布団内部が炭化しておらず,本件火災後,14日間に亘って本件建物が警察の管理下にあってC社の調査が入ることができなかったため,その間に化学物質を保持し難い材質の布団内部に酢酸ブチル等が残留し続けられなかった可能性がある旨の意見を述べている。 検出された酢酸ブチル等が押入れ内部の木材に塗布されたニス等に由来する可能性については,ニスがツヤ出しを目的とした塗料であることから,人目に触れない押入れ内部に塗布することはなく,また,塗装して年月を経過したにもかかわらず,揮発し易い酢酸ブチル等が炭化していない木材に残存するとは考え難いとしている。(乙14) 本件火災発生後の本件建物の使用状況等ア本件火災発生後,本件建物はXが管理しており,平成21年6月11日に調査員のNが訪問した際には,本件建物の入り口にG國際株式会社と記載された看板が掲げられ,罹災を免れた南側部分2階の一室に中国人男性が10名程居住していた。また,本件建物の外にはG國際株式会社と記載された軽自動車が駐車されていた。 なお,商業登記記録上,株式会社Gインターナショナルという会社が登記されており,当該会社は, 程居住していた。また,本件建物の外にはG國際株式会社と記載された軽自動車が駐車されていた。 なお,商業登記記録上,株式会社Gインターナショナルという会社が登記されており,当該会社は,設立年月日が平成20年8月1日,代表取締役がHとされている。Hの住所として登記されている甲府市a町α番地の不動産登記事項証明書上の所有名義人はXである。(乙3,4,18)イ本件土地の東側隣接地及び水路を隔てた西側隣接地について,平成20年4月25日の売買を原因として,D社からXに対する所有権移転登記がなされている(乙27)。 ウ本件土地及び建物について,平成21年7月31日に山梨県が,本件土地について,同年8月27日に南アルプス市が,それぞれ滞納処分に基づく差押えをした(甲1,2,乙18)。 D社の登記内容D社はBが代表者を務める会社であったが,平成20年7月9日をもってBの代表取締役の退任登記がなされており,同日,A(X)が同年6月15日に代表取締役に就任した旨の登記がなされている。また,同社の本店所在地である南アルプス市bβ番地の1の不動産登記記録上の名義人は,同年4月25日売買を原因としてD社からXに移転している。(乙4) 2 争点(本件火災は原告ないし原告と意を通じた第三者が故意に惹起したものか)について 本件火災の原因が放火か否かア出火場所及び出火態様本件火災の出火態様及び本件建物の焼損状況は前記1及びで見たとおりであるが,本件建物北側の外周部が,1階北西側の部屋の掃き出し窓の全てのガラスが割れ落ち,アルミ製サッシ枠が溶解していた上,窓から噴出した火炎により3階まで外壁が変色するなど,他の外周部に比して激しく焼損していたこと,本件建物内 ,1階北西側の部屋の掃き出し窓の全てのガラスが割れ落ち,アルミ製サッシ枠が溶解していた上,窓から噴出した火炎により3階まで外壁が変色するなど,他の外周部に比して激しく焼損していたこと,本件建物内部についても,1階北西側の部屋において,天井石膏ボードが落下し,各柱に亀甲模様が強く確認され,特に押入れ部分の柱及び敷居等の炭化深度が深いこと,上階に行くにつれてその焼損状況が弱まっていることなどにかんがみると,1階北西側の部屋の押入れが本件火災の出火場所であり,階段室を通じて2階及び3階に延焼したものとみられる。これは,消防の作成した出火原因判定書及び出火場所に関するLの意見書にも概ね沿うものといえる。 前記1のとおり,本件火災発生時に本件建物内に在室していたB及びIは同建物南側部分の3階におり,本件建物が,区分所有建物で北側と南側の区画 が分離した構造となっていることからすると,その当時,出火場所の1階北西側の部屋は無人であったということができる。 イ残焼物の状況本件建物の残焼物からは,前記1のとおり,C社の検査において,1階北西側の部屋で採取した,押入れの敷居,ヌキ及び幅木焼け込み痕近傍の床板の焼損物から可燃性の液体である酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンが検出されている。原告は,酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンが押入れの木材に塗布された塗料ないしニス等の薬品に含まれており,それが検出されたにすぎない旨を主張するが,前記1のとおり,木材等の表面に光沢ある皮膜を作るニス等を押入れ内部に塗布すること自体通常想定し難い上,仮にこれらが塗布されたとしても,揮発しやすいこれらの成分が本件建物が建築された平成2年から本件火災まで相当年月を経て残存し続けるとは考え難いため,検出された油性成分が元 こと自体通常想定し難い上,仮にこれらが塗布されたとしても,揮発しやすいこれらの成分が本件建物が建築された平成2年から本件火災まで相当年月を経て残存し続けるとは考え難いため,検出された油性成分が元々木材に塗布されていたものと考えるのは困難である。酢酸ブチル等を含む薬品類が,本件火災発生の前に,出火場所近傍に存置されていたこともうかがわれないから(なお,Bは,建築業や産業廃棄物処理業を営んでいるためペンキやシンナー等を保有していたものと認められるが,それらの薬品類はいずれも本件建物に隣接する工場内に保管されていたのであって(乙18),本件建物内には存置されていなかった。),前記残焼物から検出された酢酸ブチル等は,本件火災の際に散布されたものと考えるのが合理的である。 なお,C社は民間の会社であるものの,各種化学分析等を専門に行う機関であり,過去にも,種々の公的機関等からの依頼を受けて分析を行った実績を有している(乙16の1・2)。そして,本件火災の残焼物検査を行うに際して,特定の結果を導くために試料の採取や検査について作為的な操作が行われたことをうかがわせる事情は証拠上認められない。本件試験結果について,原告は,消防のガス検知器では反応が認められなかったこと,押入れ内の布団中綿炭化物からは油性成分が検出されなかったことなどの不自然性を指摘してい るが,前記1のとおり,前者については,C社の用いるガスクロマトグラム質量分析法が消防の検知管より遙かに高い精度を有していること,後者については,C社の調査がなされるまでの間に,炭化していない布団から酢酸ブチル等の成分が揮発してしまった可能性があることなど,いずれも合理的な説明が可能であって,前記試験結果の信用性が否定されるものではない。 ウ放火以外の出火原因の可能性 ていない布団から酢酸ブチル等の成分が揮発してしまった可能性があることなど,いずれも合理的な説明が可能であって,前記試験結果の信用性が否定されるものではない。 ウ放火以外の出火原因の可能性前記アのとおり,本件火災の出火場所は本件建物北側部分1階北西側の部屋の押入れと推認されるところ,前記1アのとおり,本件建物の台所は2階に設けられていたから,出火場所の部屋が日常的に火気を使用する場所でないことは明らかである。そして,同出火場所に石油ストーブ等その余の火気となりうるものが設置されていたことはうかがわれず,そのほか,本件火災が電気配線のショート等の事情によって生じたことを認めるに足りる証拠もない。 エ結論前記ア及びイのとおり,本件火災が人目に付きにくい深夜の午前2時15分ころに発生したものであること,出火当時,出火場所が無人であったこと,そして,出火場所近傍に可燃性の液体である酢酸ブチル等が散布されていたことは,本件火災が放火によるものであることを強く推認させる事情といえる。このような本件火災の出火場所,出火態様及び残存物の状況に加え,失火等この推認を妨げる事情が存在しないことも総合すると,本件火災は,放火によって生じたものと認めるのが相当である。 なお,消防の作成した火災原因判定書(乙1)では本件火災の原因は不明とされているが,「放火の可能性があるが,決定的な証言証拠が無いため,不明と判定する。」と記載されていることから明らかなとおり,放火の可能性を殊更排斥したものではないから,前記認定と相反するものではなく,これを左右するに足りない。 放火について,原告ないし原告と意を通じた第三者の関与の有無 ア本件建物の取得目的について本件建物は,前記1アのとおり,不動産登記 を左右するに足りない。 放火について,原告ないし原告と意を通じた第三者の関与の有無 ア本件建物の取得目的について本件建物は,前記1アのとおり,不動産登記事項証明書上Jが所有名義人とされていたが,現況調査の時点において,Bないし同人が代表者を務めるD社が占有しており,占有権原についてJとBの主張が相互に矛盾するなど,その占有関係等は極めて複雑であったといえる。 そして,本件建物にはガス及び下水道の供給処理施設が整備されておらず,上水道についても競落者が新たに市の水道管からの引込工事を行う必要があるなど,ライフラインの整備が不十分であって,これらの整備には,上水道及び電線引込工事だけでも少なくとも200万円を要し,ガス及び下水道についても条件次第では更なる整備費を要する可能性のあるものであった。 さらに,道路条件についても,本件土地の南側が市道に面しており,その土地の一部が当該市道と一体となった道路敷となっていたものの,その市道には残土等が不法に存置されて自動車の通り抜けができない状況であって,十分な機能を果たせるものではなかった。 このように,本件建物は,競落人がそのまま居住するには種々の障害があり,競落後の明渡しまでトラブルの発生が予想されることやライフライン整備のための多額の出費が余儀なくされることなど多くの危険性,不確実性が伴う物件といえる。本件土地及び建物を2回の期間入札に付しても買受申出人が現れず,売却基準価額が当初の1113万円から435万円にまで減価されたのもこのような事情によるものと推察される。 他方で,原告は,平成18年9月21日にEと婚姻し,本件建物を取得した平成19年当時は同人及びその子供らと同居していたところ,Eの自宅の土地 のもこのような事情によるものと推察される。 他方で,原告は,平成18年9月21日にEと婚姻し,本件建物を取得した平成19年当時は同人及びその子供らと同居していたところ,Eの自宅の土地は平成17年1月25日に購入されたもので,自宅建物は同年5月5日に建築されたものであった。そして,当該土地建物に対し,保証委託契約に基づく求償債権を被担保債権とし,O株式会社を抵当権者とする債権額2100万円の抵当権が設定されていた(乙4)。 原告は,本件建物取得の動機について,家族及び中国から呼び寄せる母親との同居並びに第三者への賃貸等の目的でこれを取得した旨を供述しているが,Eの上記自宅は,平成19年の時点では,新築後2年しか経過しておらず,住宅ローンも相当額残っており,当該不動産を処分して,利用するのに多くの障害のある本件建物を取得するというのは,上記障害が除去される見込みがうかがわれない本件においては不自然といえる。殊に,家族と同居するなどの目的で不動産を取得するのであれば,通常,家族に対する事前相談等がなされてしかるべきであるが,前記1アのとおり,原告は,本件建物を取得したことをEに一切説明しておらず,同人は本件火災後に初めてこれを知るに至ったこと,中国に居住する母親を呼び寄せる点についても,一度同女に対する査証の発給が瀋陽総領事館において拒絶されており,再度の査証の申請及び発給が早期に実現する見込みもなかったこと,原告は本件建物の買受価額さえ正確に把握していなかったことに加えて,これらの点に関する原告の供述が曖昧で,到底合理的なものと評価できないことなど,原告が真に居住等の利用目的で本件建物を取得したとするには不自然な点が多々存するというべきである。 イ原告のXに対する700万円の支払について本 到底合理的なものと評価できないことなど,原告が真に居住等の利用目的で本件建物を取得したとするには不自然な点が多々存するというべきである。 イ原告のXに対する700万円の支払について本件建物の取得に係る金銭の支払についての原告の主張は,原告がXに合計700万円を支払い,その際にXから原告に対して前記1イで見た2枚の領収証が交付されたというものであり,原告及びXもその旨供述する。 しかしながら,その金銭の移動を裏付ける証拠として提出されているのは,F名義の預金口座からの出金記録のみである。預託金額等について一切書面による記録を作成せずに双方の記憶のみに依拠して他人名義の預金口座に金銭を預託するという方法自体不自然なものであり,実際にFも原告が預託していた金員の正確な金額を記憶していない(乙3)。原告が,オーバーステイという口座開設の障害が消滅した後においても,預金口座を開設しなかったということからしても(乙2・244丁,10),F名義の預金口座に自身の金銭を 預託していたという原告の供述は不自然でにわかに信じ難い。また,前記1ウのとおり,同口座からの高額な出金は,平成19年8月16日の100万0105円と同月17日の185万円のみであって,同年7月30日及び9月1日に350万円ずつ支払った旨の領収証とは金額及び日付のいずれとも整合しない。さらに,原告はFの口座に預けていた分と自宅で保管していた金員を合わせて700万円を工面したと供述するが,上記出金が原告のものとしても,自宅にあと400万円以上もの多額の現金を保管していたというのは,それ自体不自然である上,そのことを認めるに足りる証拠は何ら存在しない。以上によると,原告からXへの700万円の金銭の移動を裏付けるに足りる客観的証拠に欠けるといわざるを得ない。加えて というのは,それ自体不自然である上,そのことを認めるに足りる証拠は何ら存在しない。以上によると,原告からXへの700万円の金銭の移動を裏付けるに足りる客観的証拠に欠けるといわざるを得ない。加えて,原告の所得証明書上の収入金額は,平成19年度(平成18年分)が310万8000円,平成20年度(平成19年分)が202万円に過ぎないから(乙5,6),原告が夫であるEから金銭的・物的援助を受けていたことや申告していない収入があったことなどを考慮に入れても,原告が果たして700万円もの金銭を調達できたのかについては多分に疑念の存するところである。 かえって,前記1アのとおり,Xは平成19年8月20日とされていた本件建物の代金納付期限を同年9月20日まで延期するよう求める旨の申請をしているところ,前記領収証記載のとおり,同年7月30日に350万円が支払われていたのであれば,買受申出保証額を控除した261万円を同年8月20日までに納付するのに何らの障害もなかったはずであるから,このような経緯からは,7月30日に実際には350万円が支払われていないことが推認される。 また,原告は,前記領収書の体裁について,記載内容や使用されたペンの差異などから別々の機会に作成されたものであると主張するが,現実に700万円が支払われたように装うため,あえて350万円毎の2枚の領収証を作成し,別々の機会に作成されたように記載内容を変えたとも考えられるから,このよ うな体裁から,直ちにそれが別々の機会に作成されたものと推認することはできない。むしろ,本件建物の取得手続をXに委任することなどについて,その報酬の額や支払時期なども含めて何ら書面を作成していない原告とXが,700万円の代金支払についてのみ領収証を作成し,しかも,収入印紙を貼るなど細か 建物の取得手続をXに委任することなどについて,その報酬の額や支払時期なども含めて何ら書面を作成していない原告とXが,700万円の代金支払についてのみ領収証を作成し,しかも,収入印紙を貼るなど細かく体裁を整えている点はむしろ作為性を感じさせ,不自然とみるべきであって,Xに対して金銭の支払がなされたかのような外形を整えるために作成された可能性が高いといえる。 ウ本件建物の使用状況等前記1アのとおり,本件建物が火災によって焼損した後,Xが本件建物を管理しており,本件建物にはG國際株式会社と記載された看板が掲げられ,罹災を免れた南側部分の一室に中国人男性が10名程度居住している。商業登記記録上,株式会社Gインターナショナルの代表者はHとされているが,同人の住所地の所有名義人はXであるから,同社は実質的にはXの会社とみられ,本件建物はほぼXが利用しているのであって,原告が現実に利用している状況は見受けられない。むしろ,原告は,本件土地及び建物の公租公課を滞納して,平成21年7月及び8月に滞納処分に基づく差押えを受けており,所有者であれば通常払うべき本件建物に対する維持管理等の関心すら全く有していないことがうかがわれる。 このような本件建物の管理に係る状況に加え,前記ア及びイのとおり,原告が真に居住等の利用目的で本件建物を取得したとするには不自然な点が多々存在すること,本件建物の取得に係る金銭の支払について,原告とXが共に述べるような,原告からXに対し700万円が渡された事実はないばかりか,その授受を仮装している様子が見受けられることも併せ考慮すると,原告が居住等の利用目的をもって本件建物を取得したものではなく,その他の何らかの目的を有してこれを取得したことが推認できる。 原告は,建物取得代金の支 が見受けられることも併せ考慮すると,原告が居住等の利用目的をもって本件建物を取得したものではなく,その他の何らかの目的を有してこれを取得したことが推認できる。 原告は,建物取得代金の支払などについて,Xから本件建物の取得価格を7 00万円と提示され,これが700万円で買えるなら安いと思ってXに700万円を払った,買受可能価額が348万円であることは聞かなかった,本件建物の保険金額が約6000万円であることを契約締結後に知ったなどと供述しているが,買受価額や保険金額は,居住等の目的で不動産を取得し,これを保全するために保険契約を締結するのであれば通常最も関心を払うべき事項とみられるから,これに意を留めていなかった旨の原告の供述は,その主要部分が不自然・不合理といえる上,これに関して,曖昧で納得しうる合理的な説明が欠如していることなどにも照らすと,到底信用することができない。 エ本件保険契約と本件火災発生の時期次に,本件保険契約締結に至る経緯や本件火災発生の時期について見ると,前記1ア,及びアのとおり,原告は,平成19年9月19日に本件建物の代金を納付してこれを取得し,同年12月25日に被告との間で本件保険契約を締結した後,平成20年3月18日に本件火災が発生した。そして,前記で検討したとおり,本件火災の原因は放火と認められる。 このように,本件火災が本件保険契約締結からわずか3か月後に発生したものであることに加え,本件火災が放火によるものであること,本件保険契約が火災による滅失の場合に保険金を支払うことを内容とし,それ以外の地震や台風等の災害を対象としていなかったこと,原告と被告は従前取引関係にあったものではなく,原告が被告の甲府支社にいわゆる飛び込みで来店して契約締結に至っ 保険金を支払うことを内容とし,それ以外の地震や台風等の災害を対象としていなかったこと,原告と被告は従前取引関係にあったものではなく,原告が被告の甲府支社にいわゆる飛び込みで来店して契約締結に至ったこと,原告の夫であるEは本件保険契約以前からP損害保険株式会社と保険契約を締結していたにもかかわらず,原告が当該保険会社と保険契約を締結することを考慮したことがうかがえないこと(証人N,弁論の全趣旨),本件保険契約において保険金は6430万円と定められており,当該保険金が支払われれば,建物取得代金348万円を大幅に上回る利益を得られること,本件保険契約が,Bに対する引渡命令が執行される前の,原告にとって保険契約の必要性がそれほど高くない時期に締結されていること,上記ウで見たよう に原告は居住目的以外で本件建物を取得したことが認められることなどに照らすと,本件保険契約が当初から保険金を詐取する目的で締結されたことが強く推認される。 この点,本件建物の保険金額を6430万円と設定したのは被告の担当者であり,原告は,被告の担当者の各種保険契約の内容に関する説明に対して,「より安いものはないか。」という要望を述べているが,原告の発言は,自身が支払うべき保険料についてより安価なものを求める趣旨にも解され,保険金を詐取する目的で本件保険契約を締結したことと何ら矛盾しないから,当該事実は前記推認を妨げる事情にはならないというべきである。 オ原告ないしXの実行可能性前記1イのとおり,本件火災が発生した際,本件建物1階北西側の部屋の北側掃き出し窓が開いており,北側隣地は畑に面していて人目に付きにくい場所であるから,占有者であるB以外の者が本件建物に侵入して放火することも可能であったといえ,Bが本件建物を占有してその鍵を管理し 北側掃き出し窓が開いており,北側隣地は畑に面していて人目に付きにくい場所であるから,占有者であるB以外の者が本件建物に侵入して放火することも可能であったといえ,Bが本件建物を占有してその鍵を管理していたからといって,原告を含むその余の者の本件建物に対する放火の実行可能性が否定されるものではない。 もっとも,Bの占有状況や本件建物内部の様子など,本件建物に関する情報を全く有していない者が本件建物に侵入して放火するのは困難といえる。この観点から原告ないしXの実行可能性について見ると,Xは,原告の委任を受けて本件建物の競売手続を代行しており,これに関する書類も閲覧していたから,本件建物の構造を相当程度認識していたものと推認される。加えて,前記1のとおり,Xが本件建物の引渡命令の執行にも立ち会い,本件建物内を実際に見分していることからすると,Xは,Bの占有状況や本件建物への侵入経路についても十分に通じていたとみることができ,開いていた前記窓から本件建物に侵入してこれを放火することも容易であったというべきである。前記引渡命令が平成20年3月10日に執行され,本件火災の発生がそのわずか8日後で ある同月18日であること,原告ないしXを除き,本件建物の構造等を認識して本件建物を放火することが可能である者がうかがわれないことも併せ考慮すると,原告ないしXは,本件建物への放火が可能であったことにとどまらず,これに関与していたことが相当程度推認されるといえる。 なお,引渡命令の執行時期と本件火災発生時期との関係について,原告は,仮に原告が放火するのであれば,Bが占有していた時点より,原告が占有を得てからの方が容易であるから,あえてBに発見されるリスク等のある時期を選ぶのは不自然である旨主張する。しかしながら,Bが占有している時点で火災が発 であれば,Bが占有していた時点より,原告が占有を得てからの方が容易であるから,あえてBに発見されるリスク等のある時期を選ぶのは不自然である旨主張する。しかしながら,Bが占有している時点で火災が発生すれば第一次的に疑われるのは占有者のBであるから,原告及びXが,Bの占有状況や明渡執行の時期を了知したのを奇貨として,同人に疑惑を向けさせるため,あえて同年4月9日の占有移転の前に本件火災を引き起こしたとみることもできる。そう考えると,本件火災発生の時期に何ら不自然な点はない。 カ Bの放火の可能性原告は,強制執行による立ち退きを余儀なくされたBが嫌がらせのために火を付けたと考えた方が本件火災の発生を矛盾なく説明できる旨を主張する。確かに,Bは個人ないしD社の代表者として本件建物を占有しており,本件火災発生時にもその南側の居室に在室していたので,本件建物を放火するに当たって,最も容易にこれをなし得る立場にあったといえる。 しかしながら,強制執行による立ち退きを余儀なくされたからといって嫌がらせの目的で建物に放火するというのは,およそあり得ないとはいえないまでも,放火の動機としては薄弱であるといえるし,まして,本件火災発生時にはBの友人であるIも在室していたのであるから,同女に危険が及ぶ可能性があるにもかかわらずBがあえて放火するとは考え難い。また,本件火災後のBの行動を見ても,前記1アのとおり,Bは消防隊が到着するまでホースで水をかけるなどの消火活動を行っているところ,これは自ら放火した者の行動とは 矛盾するものである上,Iも,本件火災発生前にBが部屋で仕事をしていたこと,火災発生後に同人が消火活動をしていたことを目撃していて,Bが放火を実行したことをうかがわせる不審な行動などは何ら目撃していない(乙13の る上,Iも,本件火災発生前にBが部屋で仕事をしていたこと,火災発生後に同人が消火活動をしていたことを目撃していて,Bが放火を実行したことをうかがわせる不審な行動などは何ら目撃していない(乙13の1,19)。そのほか,本件火災前にBが家財等を持ち出すなど,本件火災が発生することを事前に予測したことを前提にした行動をとったことは認められず,本件建物を放火することによってBが何らかの利益を得た様子もないことも考慮すると,Bが本件建物を放火したと認めることはできない。 キ結論以上アないしカに述べたとおり,原告は真に居住等の利用目的で本件建物を取得したものではなく,他の目的で取得したことが推測されること,本件保険契約の内容,締結時期や火災発生の時期に照らして,本件火災は保険金詐取目的の放火であることが強く疑われること,原告ないしXには本件建物を放火する機会があり,その実行が容易だったこと,そして,Bが放火を敢行したとは認められず,その他の無関係の第三者によることをうかがわせる事情もないことを総合すると,本件火災は,原告及びこれと意を通じたXが保険金詐取の目的で故意に放火して惹起したものと認めることができる。 したがって,本件火災による本件建物の焼失は,保険契約者の故意によって生じた損害に該当するから,本件保険契約の免責条項により,被告は保険金支払義務を免れる。 3 以上によれば,争点について判断するまでもなく,原告の請求には理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官林 正宏 裁判官三重野 真 人 裁判長 裁判官 林正宏 裁判官 三重野真 裁判官 小川惠輔 別紙物件目録省略
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