平成19(行ウ)54 課税処分無効確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年8月28日 名古屋地方裁判所 租税
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判決文本文10,472 文字)

- 1 -主文 本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 美和町長が平成18年度及び平成19年度にα土地改良区β工区及び同γ工区内の土地所有者に対して行った固定資産税の課税処分が無効であることを確認する。 被告美和町長は,Aに対し,平成18年度及び平成19年度においてα土地改良区β工区及び同γ工区内の土地について,農地以外であるにもかかわらず農地として固定資産税の課税処分を行ったことにより美和町が被った損害に対する賠償金及びこれに対する平成19年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。 第2事案の概要 事案の要旨本件は,αの住民である原告が,α土地改良区(理事長B)の地区内にあるβ工区及びγ工区の土地の多くが建物の敷地として利用されているにもかかわらず,美和町長がこれらの土地を公簿上の地目である農地として評価し固定資産税を課したのは違法であるなどと主張して,①被告美和町に対し,地方自治法242条の2第1項2号に基づき,美和町長(処分行政庁)がした平成18年度及び平成19年度の上記各工区内の土地の所有者に対する固定資産税の課税処分(賦課)の無効確認を求める(以下,これを「本件2号請求」という。)とともに,②被告美和町長に対し,同項4号に基づき,平成18年度及び平成19年度において上記各工区内の土地の所有者に固定資産税の課税処分をした前美和町長A(以下「A前町長」という。)に対して同課税処分によって美和町が被った損害の賠償を請求するよう求める(以下,これを「本件4号請求」という。)事案である。 - 2 - 法令等の定め( ) 固定資産税の納税義務者等 固定資産税は,固定資産に対し,当該固定資産所在の市町村において課する(地方税法34 ,これを「本件4号請求」という。)事案である。 - 2 - 法令等の定め( ) 固定資産税の納税義務者等 固定資産税は,固定資産に対し,当該固定資産所在の市町村において課する(地方税法342条1項)。固定資産税は,固定資産の所有者に課するが(同法343条1項),ここにいう所有者とは,土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう(同条2項前段)。 ( ) 土地改良事業の施行に係る土地についての固定資産税の課税方法 土地区画整理法による土地区画整理事業又は土地改良法による土地改良事業の施行に係る土地については,法令若しくは規約等の定めるところによって仮換地,一時利用地その他の仮に使用し,若しくは収益することができる土地(以下「仮換地等」と総称する。)の指定があった場合においては,当該仮換地等について使用し,又は収益することができることとなった日から換地処分の公告がある日又は換地計画の認可の公告がある日までの間は,当該仮換地等に対応する従前の土地について登記簿又は土地補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をもって,当該仮換地等に係る第1項の所有者とみなすことができる(地方税法343条6項。 以下,このような課税方法を「仮換地課税」という。)。 ( ) 美和町税条例(昭和37年美和町条例第4号)における仮換地課税について の定め土地区画整理法による土地区画整理事業又は土地改良法による土地改良事業の施行に係る土地については,仮換地等の指定があった場合においては,当該仮換地等について使用し,又は収益することができることとなった日から換地処分の公告がある日又は換地計画の認可の公告がある日までの間は,当該仮換地等に対応する従前の土地について登記簿又は土地補 ,当該仮換地等について使用し,又は収益することができることとなった日から換地処分の公告がある日又は換地計画の認可の公告がある日までの間は,当該仮換地等に対応する従前の土地について登記簿又は土地補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をもって,当該仮換地等に係る所有者とみなす(美和町税条例52条5項)。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)- 3 -( ) 当事者等 ア原告は,被告美和町の住民である。 イ被告美和町長は,被告美和町の執行機関である。 ウA前町長は,平成7年4月23日から平成19年4月26日まで,美和町長として固定資産の価格を決定し,被告美和町に居住する住民に対し,固定資産税の賦課徴収を行ってきた者である。 エ被告美和町は,固定資産評価員を設置していないが,固定資産評価補助員を設置している。 ( ) α土地改良区による土地改良事業の概要 被告美和町においては,α土地改良区が設立され,β工区(第XX工区)とγ工区(第YY-1工区及び第YY-2工区)のうち第YY-1工区において土地改良事業が行われている(以下,第XX工区と第YY-1工区を併せて「本件各工区」という。)。 β工区においては,昭和29年ころから土地改良事業の施行が始まり,昭和31年ころ一時利用地の指定が行われたが,昭和38年ころ換地処分ができなくなって中断した後,昭和47年ころ工事が再開され,昭和50年ころ一時利用地の指定が行われたが,その後30年以上にわたって換地処分が行われていない。 γ工区(第YY-1工区)においては,平成15年に一時利用地の指定が行われたが,いまだ換地処分は行われていない。なお,第YY-2工区は,未着手である。 本件各工区の土地改良の対象となっている土地は,現在,その一部が宅地や工場として利用されている。 時利用地の指定が行われたが,いまだ換地処分は行われていない。なお,第YY-2工区は,未着手である。 本件各工区の土地改良の対象となっている土地は,現在,その一部が宅地や工場として利用されている。 ( ) 被告美和町における本件各工区における固定資産の評価 被告美和町は,本件各工区内の一時利用地について,α土地改良区から一時利用地の図面その他の客観的な資料の提出を受けていない。そのため,被告美和町では,平成18年度及び平成19年度において,本件各工区内の一時利用地について,土地の現況に従った仮換地課税を行わず,従前の土地に対して課税する方式(以下- 4 -「従前地課税」という。)により,公簿上の地目に従い農地として固定資産の価額等を決定し,固定資産税の課税処分(賦課)をした(以下,これらの課税処分を「本件各課税処分」という。)。 ( ) 住民監査請求及び本訴の提起等 原告は,平成19年3月30日,美和町監査委員に対し,A前町長がα土地改良区β工区及び同γ工区の土地について現況調査を行わず農地として固定資産評価を行う従前地課税をしていることが,被告美和町の税収を減少させて被告美和町に損害を与えていると主張し,被告美和町において現況調査を行った上で固定資産評価を行うこと,不適切な固定資産税賦課決定をしたA前町長に対する損害賠償請求を行うことなど必要な措置を求める措置請求を行った。 これに対し,美和町監査委員は,同年5月21日,上記措置請求を棄却し,翌22日,同監査結果が原告に通知された。 原告は,同年6月20日,本訴を提起した。 本件の争点( ) 本案前の主張 ア本件2号請求に係る訴えの適否(争点( )) イ本件4号請求に係る訴えの適否(争点( )) ( ) 本案の主張 本件各課税処分の違法性の有無(争点( )) ( ) 本案前の主張 ア本件2号請求に係る訴えの適否(争点( )) イ本件4号請求に係る訴えの適否(争点( )) ( ) 本案の主張 本件各課税処分の違法性の有無(争点( )) 争点に関する当事者の主張( ) 争点( )について (被告美和町の主張)ア地方自治法242条1項の「財産」は,住民の負担に係る公租公課等によって形成された地方公共団体の公金及び営造物以外の財産を意味し,地方税の賦課徴収権のごときはこれに含まれず,税の賦課については,既に賦課処分が行われて納税義務が具体的に発生していない限り,同項の「財産の管理」には当たらない。 - 5 -A前町長が従前地課税を選択したことは,課税処分によって具体的に租税債権が発生する前の抽象的租税債権の管理の問題であるから「財産の管理」には当たらず,本件各課税処分について無効確認を求める訴えを提起することはできない。 イ固定資産に係る課税処分は,個々の土地についてされるものであるところ,本件各工区内の土地については,仮に,宅地や工場として利用されているものがあるとしても,それは一部に限られ,公簿上のとおり農地として利用されている土地がほとんどであって,当該土地については公平な評価がされており,原告が無効を主張する対象となる課税処分についての特定を欠く。 (原告の主張)ア原告が本件2号請求において無効確認請求の対象としているのは,平成18年度及び平成19年度において具体化・現実化された固定資産税の課税処分である。地方公共団体が有する抽象的な地方税賦課徴収権そのものは,地方公共団体の行政権能であり,それ自体を住民訴訟の対象とすることはできないが,具体化・現実化された固定資産税の課税処分は,それ自体が処分の無効確認の対象となることは明らかである。 イ固定資産に 地方公共団体の行政権能であり,それ自体を住民訴訟の対象とすることはできないが,具体化・現実化された固定資産税の課税処分は,それ自体が処分の無効確認の対象となることは明らかである。 イ固定資産に係る課税処分は,個々の土地についてされるものであり,仮に一部に限られるとしても,その土地について現況に基づく課税が行われず,農地のまま固定資産の評価が行われ,公平な評価がされていないとすれば,その課税処分自体違法であることは明らかである上,被告美和町は法が求める固定資産評価員の設置(地方税法404条1項,美和町税条例69条),固定資産評価員又は固定資産評価補助員による年1回の実地調査(地方税法408条)をいずれも行っていないのであるから,β工区及びγ工区におけるすべての土地についての固定資産税賦課決定は無効である。 したがって,原告が無効を主張する対象となる課税処分は,上記各工区内のすべての土地についてのものであるから,何ら特定を欠くものではない。 ( ) 争点( )について - 6 -(被告美和町長の主張)原告の主張は,違法と主張する行為の特定を欠き,また,損害額についても特定して主張しておらず,不適法である。 (原告の主張)原告は,β工区及びγ工区内のすべての土地についての課税処分が違法であると主張しているのであるから,何ら特定を欠くものではない。また,損害額については,被告らが当事者照会に応じず,α土地改良区も文書送付嘱託に応じなかったため,特定できなかったものである。なお,原告は,損害額を特定するために文書提出命令を申し立てている。 ( ) 争点( )について (原告の主張)地方税法は,市町村長に対し,固定資産の現況の公平,適正な評価を行い,これに基づいて課税すべきことを定めている。土地改良事業の施行に伴う一時利用地に ( ) 争点( )について (原告の主張)地方税法は,市町村長に対し,固定資産の現況の公平,適正な評価を行い,これに基づいて課税すべきことを定めている。土地改良事業の施行に伴う一時利用地について,当該一時利用地に対応する従前の土地について登記簿又は土地補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をもって当該一時利用地に係る所有者とみなすことができる旨規定して仮換地課税を定める同法343条6項は,このことを具体化した規定である。 仮に,仮換地課税をするかどうかが市町村の選択にゆだねられているとしても,被告美和町は,美和町税条例52条5項において,地方税法343条6項と同じ文言を用いながら「所有者とみなすことができる」とはせず「所有者とみなす」と規定して仮換地課税を選択し,市町村長の裁量の範囲をより厳格に定めている。 したがって,A前町長がβ工区及びγ工区内の土地について従前地課税をしたことは,裁量権を逸脱,濫用したものであり違法である。 (被告らの主張)ア固定資産税は,原則として固定資産の所有者として土地登記簿等に登記された者に課税される。土地改良事業施行中の一時利用地については,これに対応す- 7 -る従前地について土地登記簿等に登記されている者を所有者とみなして課税すること(仮換地課税)ができる旨が規定されているが(地方税法343条6項),仮換地課税を行うか否かについての具体的な運用は,実態に即した措置を採ることができるよう市町村の選択にゆだねられている。したがって,市町村長には,土地改良事業施行中の一時利用地について,従前地課税とするか仮換地課税とするかについての裁量権がある。 また,美和町税条例52条5項には,一時利用地については,当該一時利用地に対応する従前の土地について土地登記簿又は土地補充課税台帳等に所有者 地課税とするか仮換地課税とするかについての裁量権がある。 また,美和町税条例52条5項には,一時利用地については,当該一時利用地に対応する従前の土地について土地登記簿又は土地補充課税台帳等に所有者として登記又は登録されている者をもって所有者とみなす旨の規定が置かれているが,これは地方税法343条6項を受けたものであり,実態に即した措置を採るという趣旨は同条項と同趣旨であり,従前地課税とするか仮換地課税とするかについて,市町村長が実態に即して適切な方法を選択することを否定するものではないから,仮換地課税をしなければ直ちに同条例に反するということにはならない。 イA前町長は,以下のような実態に照らすと,本件各工区内の土地について仮換地課税をすることは不可能と判断し,従前地課税を選択したものであって,その判断に裁量権の逸脱・濫用はない。 (ア) β工区は,昭和50年ころ一時利用地の指定を行ったものの,資格者全員の賛同を得られない状態が続き,現在は一時利用地の見直しを行っている段階で未確定な要素が多いため,現況と合致した資料がなく,α土地改良区から一時利用地に関する図面等の客観的資料の提供を受けられない状態にある。また,固定資産評価補助員による実地調査によっても,土地の所在,区画,形状等を正確に把握することはできない状況にある。現況についての客観的資料がない状態で仮換地課税を行うことは適正を欠くし,また,一部の土地のみについて仮換地課税を行うと,二重課税のおそれも生ずる。さらに,土地改良区域内の土地について転用許可等の資料のみで地目認定をした場合には,転用許可等の資料に加えて現況調査を行って地目認定をしている土地改良区域外の土地との公平性を欠くことにもなる。 - 8 -(イ) γ工区のうち第YY-1工区については,平成15年10月1日にすべて ,転用許可等の資料に加えて現況調査を行って地目認定をしている土地改良区域外の土地との公平性を欠くことにもなる。 - 8 -(イ) γ工区のうち第YY-1工区については,平成15年10月1日にすべての土地につき一時利用地を指定し,平成21年3月に換地処分予定であるところ,美和町土地評価事務取扱要領において「土地改良事業施工中の土地については,農地造成が目的であること及び工事期間が短いことを考慮し,原則的には換地処分まで従前地の土地の地目」により課税するものとされている。また,同工区内の農地転用件数は少数であるし,農地転用された土地についても,自己の住宅建築を目的とするため,特例措置により税額が軽減され,換地処分を前提にした課税をしても税収の変動はほとんどないと考えられる。 ウしたがって,本件各課税処分は適法である。 第3当裁判所の判断 争点( )について ( ) 地方自治法242条の2に定める住民訴訟は,①違法な公金の支出,財産の 取得・管理・処分,契約の締結・履行,債務その他の義務の負担(以下「財務会計行為」という。)又は②違法に公金の賦課・徴収又は財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)を是正することによって,地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである。住民訴訟は,行政事件訴訟法5条にいう民衆訴訟であり,「法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができる」ものであるところ(同法42条),地方自治法242条の2第1項は,その類型として,①執行機関又は職員に対する財務会計行為の全部又は一部の差止めの請求(1号請求),②行政処分たる財務会計行為の取消し又は無効確認の請求(2号請求),③執行機関又は職員に対する怠る事実の違法確認の請求(3号請求),④職員又は財務会計行為若しくは怠る事 の差止めの請求(1号請求),②行政処分たる財務会計行為の取消し又は無効確認の請求(2号請求),③執行機関又は職員に対する怠る事実の違法確認の請求(3号請求),④職員又は財務会計行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを執行機関又は職員に対して求める請求(4号請求)を定めているから,上記①~④のいずれの類型にも該当しない場合には,当該訴えは不適法というほかない。 ( ) 原告は,本件2号請求として,被告美和町に対し,本件各課税処分が財務会 - 9 -計行為のうち「財産の管理」(地方自治法242条1項)に当たるとして,その無効確認を求めている。 そこで,検討するに,同項にいう「財産」とは,公有財産,物品及び債権並びに基金をいうところ(同法237条1項),地方税の賦課徴収権については,地方税法が定める課税要件を充足しても,その時点では租税債権は抽象的なものにとどまり,いまだ「財産」に当たるものではなく,納税義務確定手続が行われることによって具体的租税債権となり,初めて「財産」に当たることとなるものと解される。 そうすると,固定資産税の賦課徴収権については,市町村長等の固定資産税賦課決定(納税通知書の作成,交付)によって納税義務が確定し,具体的租税債権となるのであるから(地方税法364条1項,1条1項3号,6号,7号参照),その時点において初めて「財産」となるものと解される。ところが,原告は本件各課税処分である固定資産税賦課決定が「財産の管理」に当たるとして,その無効確認を求めるというのであるから,本件2号請求に係る訴えは,抽象的租税債権の管理を争うものであって,「財産の管理」の無効確認を求めるものではなく,不適法というほかない。 もっとも,本件各課税処分によって被告美和町が具体的租税債権を取得することに る訴えは,抽象的租税債権の管理を争うものであって,「財産の管理」の無効確認を求めるものではなく,不適法というほかない。 もっとも,本件各課税処分によって被告美和町が具体的租税債権を取得することに照らすと,本件課税処分を地方自治法242条1項にいう「財産の取得」に当たると見る余地もあるが,前記の住民訴訟の目的等にかんがみると,それ自体被告美和町に収入を発生させるにとどまる行為にすぎない本件課税処分を住民訴訟の対象とすることはできないと解される(固定資産税の賦課が不十分なために町が損害を被るとすれば,それは適正な賦課決定《再賦課決定》を怠っているためであるから,これについて怠る事実の違法確認の請求を行うべきである。)。 争点( )について ( ) 原告は,本件4号請求として,被告美和町長に対し,A前町長に対する損害 賠償請求をするよう求めるが,損害賠償の具体的な金額を特定しないから,本件4号請求に係る訴えも不適法といわざるを得ない。 - 10 -( ) 原告は,損害額の特定のために必要があるとして,3件の文書提出命令(平 成19年(行ク)第40号,第42号,平成20年(行ク)第3号)を申し立てているが,以下のとおり,本件4号請求は,原告が損害賠償の金額を特定したとしても,理由がないことが明らかであるから,上記各文書提出命令の申立ては,その必要性を欠くものというべきであり,これを却下する。 ア固定資産税の納税義務者は,固定資産の所有者であり(地方税法343条1項),所有者とは,登記簿又は補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう(同条2項)。したがって,一時利用地の指定があった場合において,一時利用地を使用収益する者に対しても,換地処分又は換地計画の認可の公告がある日までの間は,市町村長はなお従前地課税を行うことと をいう(同条2項)。したがって,一時利用地の指定があった場合において,一時利用地を使用収益する者に対しても,換地処分又は換地計画の認可の公告がある日までの間は,市町村長はなお従前地課税を行うこととなる。しかし,固定資産税は使用収益税の性格をも有することから,資産の使用収益を享受する者にその実質に着目して課税すべく,一時利用地に対応する従前地の所有者として登記されている者を一時利用地の所有者とみなし,仮換地課税をすることもできるとされている(同条6項)。 上記のような地方税法343条6項の趣旨に照らすと,同条項が一時利用地の指定がされた場合に常に仮換地課税を行わなければならないことまで定めていると解することはできず,従前地課税を行うか仮換地課税を行うかの判断については市町村長の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。 また,美和町税条例52条5項は,固定資産税の使用収益税的な性格を考慮し,資産の使用収益を享受する者に課税することが可能ならば,その実質に着目して仮換地課税を行うべきことを定めたものと解され,仮換地課税を行うについて障害がある場合に被告美和町長の合理的な裁量判断において従前地課税を選択することを禁止したものと解することはできない。美和町が美和町税条例制定後の平成18年3月に作成した美和町土地評価事務取扱要領(乙4の2。以下「本件事務取扱要領」という。)において,「土地改良事業施工中の土地については,農地造成が目的であること及び工事期間が短いことを考慮し,原則的には換地処分まで,従前の- 11 -土地の地目による。」と定めていること(なお,平成13年10月作成の固定資産《土地》評価事務取扱要領《乙4の1》にもほぼ同趣旨の記載がある。)も,上記条例の規定に反するものではない。 イ前記前提事実によれば,美和町は と定めていること(なお,平成13年10月作成の固定資産《土地》評価事務取扱要領《乙4の1》にもほぼ同趣旨の記載がある。)も,上記条例の規定に反するものではない。 イ前記前提事実によれば,美和町は,α土地改良区からβ工区全体にわたる一時利用地に関する図面等の客観的資料の提出を受けておらず,具体的にどの土地が宅地や工場として利用されているかを判断することができなかったというのであるから,このような事情の下において,A前町長が,一部の土地のみに対する仮換地課税が不公平で二重課税のおそれもあると判断して,本件各工区内のすべての土地について従前地課税を行ったことに直ちに裁量権の逸脱・濫用があるとはいえない。 もっとも,固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)において「地目の認定に当たっては,当該土地の現況及び利用目的に重点を置」くとされていること(第1章第1節1)や,本件事務取扱要領が,土地改良事業の工事期間が短いこと等を理由として土地改良事業施行中の土地については原則として換地処分までの間は公簿上の地目によるとしていることにかんがみると,一時利用地の指定から換地処分までが長期間にわたる場合,従前地課税を長期間にわたって行い続けることは,地方公共団体をしてあるべき収入を喪失させるものであり,地方財政を侵害するものとして違法というべき場合があると考えられる。本件各工区のうち,β工区については昭和50年ころ一時利用地の指定が行われた後30年以上にわたって換地処分が行われていないにもかかわらず,A前町長は,本件各工区のうち現況が建物の敷地である土地についても公簿上の地目によって農地として地目認定をし,本件各課税処分をしたのであるから,本件各課税処分のうち一時利用地の現況が農地でない土地に対するものは違法である可能性を否定することはできない 地についても公簿上の地目によって農地として地目認定をし,本件各課税処分をしたのであるから,本件各課税処分のうち一時利用地の現況が農地でない土地に対するものは違法である可能性を否定することはできない。しかしながら,仮に本件各課税処分の一部が違法であるとしても,法定納期限の翌日から起算して5年を経過するまでの間は,被告美和町長において,再度,固定資産税の課税処分(再賦課決定)をすることができるから(地方税法17条の5第3項),- 12 -本件口頭弁論終結時においては,いまだ損害の発生・額が確定したものとはいえない。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えはいずれも不適法として却下すべきであるから,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官前田郁勝裁判官廣瀬達人裁判官

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