- 1 -令和4年11月4日東京地方裁判所刑事第15部宣告令和4年特第1074号不正競争防止法違反被告事件 主文 被告人A株式会社を罰金2500万円に、被告人Bを懲役1年に、被告人Cを懲役1年6月に、被告人Dを懲役1年6月にそれぞれ処する。 この裁判が確定した日から、被告人B、被告人C、被告人Dに対し、3年間それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人A株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都北区ab丁目c番d号に本店を置き、合成樹脂製品の製造及び売買等を目的とする株式会社であり、被告人Bは、被告会社の代表取締役として、同社の業務全般を統括していたもの、被告人Cは、被告会社の執行役員兼経営企画部長として、同社の子会社の業務全般の管理を統括していたもの、被告人Dは、被告会社の総務部付次長を務めるとともに、同社の子会社で、ベトナム社会主義共和国バクニン省に事務所を置き、プラスチック製品部品、金型の製造販売などを目的とするEの代表者であったもの、Fは、ベトナム社会主義共和国バクニン省税関局の通関後検査支局総合チーム長として、前記バクニン省税関局長の命を受け、輸出入品に対する通関後検査の実施、行政違反処分の決定権者に対して報告・提言する権限を有していた外国公務員等であったもの、Gは、同国バクニン省税務局の広報・納税者支援部副部長として、前記バクニン省税務局長の命を受け、税務調査の実施、行政違反決定の決定権者に対して報告・提言する権限を有していた外国公務員等であったものであるが、第1 被告人B、被告人C及び被告人Dは、ほか数名と共謀の上、被告会社の業務に関し、平成29年6月に前記バクニン省税関局がEに対して実施した通関後検査における追徴課税金額等を減免させるなど るが、第1 被告人B、被告人C及び被告人Dは、ほか数名と共謀の上、被告会社の業務に関し、平成29年6月に前記バクニン省税関局がEに対して実施した通関後検査における追徴課税金額等を減免させるなど、被告会社に対し有利な取り計 - 2 -らいを受けたいとの趣旨の下に、同月29日頃、前記バクニン省e地区f町g工業団地h地区所在のE事務所において、前記Fに対し、現金20億ベトナムドン(当時の円換算980万円相当)を供与し第2 被告人C及び被告人Dは、ほか数名と共謀の上、被告会社の業務に関し、令和元年8月に前記バクニン省税務局がEに対して実施した税務調査における追徴課税金額等を減額させるなど、被告会社に対し有利な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、同月31日頃、前記バクニン省i区j通りH所在のIにおいて、前記Gに対し、現金30億ベトナムドン(当時の円換算1380万円相当)を供与しもって、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせることを目的として、金銭を供与した。 (量刑の理由)量刑の中心となる判示第1の犯行(以下「平成29年事件」という。)についてまず検討すると、被告人B、被告人C及び被告人D(以下「被告人3名」という。)は、ベトナム社会主義共和国に所在する被告会社の子会社であるEに対して、ベトナムの税関局から当時の円換算で17億9000万円相当の追徴課税金等が課されようとした際、これを免れようとして、980万円相当の賄賂を、ベトナムの外国公務員に供与したというのである。賄賂金額は多額である上、その後追徴課税等がなされなかったことも考慮すると、被告会社が得た不正な利益は高額で、結果として国際商取引における公正な競争を害した程度は甚だしいと言わざる たというのである。賄賂金額は多額である上、その後追徴課税等がなされなかったことも考慮すると、被告会社が得た不正な利益は高額で、結果として国際商取引における公正な競争を害した程度は甚だしいと言わざるを得ない。その動機や経緯をみても、本件がコンサルティング会社からの助言が契機になったことはうかがわれるものの、その後被告人Cや被告人Dにおいて、税関局関係者らと面会を重ねて賄賂を受領してもらえるか感触を探るなど相応の準備をした上で、被告人らから主体的に賄賂供与を申し出たと評価でき、酌むべき点は見当たらない。 被告人Bは、平成29年事件当時、被告会社の代表取締役の地位にあり、法令遵 - 3 -守を指導し、会社の健全な経営に力を尽くすべきであったのに、賄賂供与の最終決定を下したものと評価でき、平成29年事件単体としては、被告人3名の中で一番責任が重い。 なお、被告人Bの弁護人は、被告人Bは調整金名下に現金を支払うことを了承したに過ぎず違法性の認識に乏しかった一面もうかがえるなどと主張し、被告人Bに検察官の求刑を下回る懲役刑を求めるなどとも主張する。しかしながら、前記のような追徴課税額と供与する現金額との関係に照らせば、名目はどうあれ容易に賄賂供与を想起できるものである上、被告人Bが、被告人Cからの上申内容を当時の名誉会長に伝えたところ、「袖の下だろ」などと言われたというのであり、被告人Bが違法性の認識に乏しかったなどとは到底いえない。そうすると、被告人Bの犯情は芳しくなく、検察官の求刑を下回る刑期の懲役刑とする余地はない。 次に、被告人Cと被告人Dの犯情を検討するために、両名が関与した判示第2の犯行(以下「令和元年事件」という。)について検討すると、被告人両名は、ベトナムの税関局から当時の円換算で8280万円相当の追徴課税金等が課されよう Dの犯情を検討するために、両名が関与した判示第2の犯行(以下「令和元年事件」という。)について検討すると、被告人両名は、ベトナムの税関局から当時の円換算で8280万円相当の追徴課税金等が課されようとした際、これを2760万円相当まで減額させようとして、1380万円相当の賄賂を、ベトナムの外国公務員に供与したというのである。賄賂金額は判示第1よりも多額であるが、実際に減額された税金額は判示第1に比べると規模は小さく、結果として国際商取引における公正な競争を害した程度は判示第1よりは小さいものといわざるを得ない。また、その動機や経緯をみると、本件は外国公務員側から賄賂の要求がされ、供与の判断も相当に急かされていたこと、そもそも税務調査の相当性に疑問を抱く余地もあることなどからすると、判示第1の犯行と比較すると酌むべき点がないとはいえない。そうすると、令和元年事件の犯情は、平成29年事件の犯情と比較すると、より悪質であるとまではいえない。 そこで、各被告人ごとにさらに検討すると、被告人Cは、本件各犯行当時、被告会社執行役員兼経営企画部長としてEを含む子会社の業務全般を統括する立場にありながら、本件各犯行の意思決定について重要な役割を果たしている。もっとも、 - 4 -被告人Cは、判示第1の犯行については、被告人Bに次ぐ立場に過ぎない上、判示第2の犯行については最終判断を下した形にはなっているものの、判示第1の犯行の経緯から本社の了解が得られるものと考えたというのであって、強く非難することまではできない。そうすると、両犯行を行っている点で、被告人Bの懲役期間よりも長期とする必要はあるが、相応の刑にとどめるべきである。 被告人Dは、本件各犯行当時、Eの社長として法令を遵守すべき立場にあったにも関わらず、被告人Bや被告人Cの了解が得られる 人Bの懲役期間よりも長期とする必要はあるが、相応の刑にとどめるべきである。 被告人Dは、本件各犯行当時、Eの社長として法令を遵守すべき立場にあったにも関わらず、被告人Bや被告人Cの了解が得られるや、現場での全体的な指揮にあたったもので、本件各犯行に不可欠かつ重要な役割を果たしている。もっとも、子会社の社長という地位に照らすと、被告人Cを通じて本社の意向を確認することは当然であって、その犯情としては、被告人Cのそれを超えるものとはいえないから、同様に相応の刑にとどめるべきである。 以上に加えて、被告人3名のその他の情状、すなわち、被告人3名はいずれも当時の会社での地位を追われることとなって一定の社会的制裁を受けていると評価できること、いずれも当公判廷で反省の弁を述べていること、いずれも前科前歴がないこと等のそれぞれの被告人のために酌むべき事情などを考慮すると、被告人3名に対しては、それぞれ主文の刑に処するものの、その刑の執行を猶予するのが相当である。 また、被告会社については、その得た不正な利益が上記のとおり高額で、結果として国際商取引における公正な競争を害した程度も甚だしいことからすると、その責任は軽いものとは言えない。しかしながら、被告会社は本件各犯行について第三者委員会を設置した上、検察庁に自主申告をして事案解明に協力しているほか、コンプライアンス体制を見直して再発防止の手段を講じたというのである。そうすると、被告会社に対しては、主文掲記程度の罰金額が相当であると判断した。 (求刑-被告会社につき罰金3000万円、被告人Bにつき懲役1年、被告人C及び被告人Dにつき懲役1年6月)令和4年11月4日 - 5 -東京地方裁判所刑事第15部 裁判長裁判官香川徹也 裁判官 年、被告人C及び被告人Dにつき懲役1年6月)令和4年11月4日 東京地方裁判所刑事第15部 裁判長裁判官 香川徹也 裁判官 賀嶋敦 裁判官 竹田美波
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