昭和38(う)528 関税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和39年9月29日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。          理    由  本件各控訴の趣意は、弁護人前堀政幸、同三木今二共同名義、及び名古屋地方検 察庁検察官検事上田朋臣名義の各控訴趣意書に記

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主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、弁護人前堀政幸、同三木今二共同名義、及び名古屋地方検察庁検察官検事上田朋臣名義の各控訴趣意書に記載する通りであり、検察官の控訴趣意に対する答弁は、右弁護人等共同名義の答弁書に記載する通りであるから、ここに引用するが、当裁判所は之に対し次の通り判断する。 一、 弁護人の控訴趣意第一点(全被告人に関し)について(一) 所論は、原判決は、原判示のいわゆるスリカエ輸出において、輸出申告時から輸出許可時までの間、貨物の検査場所として申告された保税上屋に、被告人等が当初から実際に輸出する意思であり、事実輸出した貨物(原判決の用語に従い以下「船積用貨物」と略称する)のみが在庫し、被告人等が当初から単に輸出申告をなし、輸出許可を受けた上、国内に引取る意思であり、事実国内に引取つた貨物(原判決の用語に従い以下「国内引取用貨物」と略称する)は在庫しなかつた場合について、右輸出許可が、保税上屋に在庫しなかつた国内引取用貨物について行われたものと認定したのは、行政行為である輸出許可の効力について最高裁判所の判例に違背した解釈を為した結果事実を誤認したものであり、従つて右輸出許可を前提として、国内引取用貨物を国内に引取つた行為を密輸入、船積用貨物を輸出した行為を密輸出と認定したのは、重ねて事実を誤認したものである。けだし税関長が輸出許可を行う為には輸出申告されて保税上屋に在庫する貨物について検査を行わなければならないのであり、右輸出許可は特定の貸物についての申告に基づいて与えられるべきであることは原判示の通りであるけれども、貨物が特定するためには、その貨物が保税上屋に搬入されて在庫していなければならない。そして本件の場合被告人等が右船積用貨物を実際に輸出する いて与えられるべきであることは原判示の通りであるけれども、貨物が特定するためには、その貨物が保税上屋に搬入されて在庫していなければならない。そして本件の場合被告人等が右船積用貨物を実際に輸出する意思で保税上屋に在庫させていることは原判決も之を認めているところであつて、被告人等が右貨物について輸出申告したことは明らかであり、従つて輸出許可も右貨物についてなされたと認めるべきだからである。もつとも右輸出申告にかかる船積用貨物は、その輸出申告書に記載して申告されている貨物と別個のそれであつたことは(申告書に記載して申告されているのは国内引取用貨物)、証拠上明白であるけれども、右船積用貨物について神戸税関係員が内規により現品検査を省略し、申告書に基づく、いわゆる書類検査のみを行つたことも証拠上明白であるし、逆に申告書と在庫貨物を照合点検した事実は証拠上認めることができないから、被告人等は申告貨物の検査を受けるに当り、在庫貨物の所在場所において検査係員に対し具体的に詐術を用いて検査を誤まらしめたものではなく、従つて被告人等の所為は関税法第一一一条の密輸出罪に当らず改正前の同法第一一四条第二号(改正後の同法第一一三条の二)の虚偽申告の罪が成立するに過ぎない。なお右在庫貨物(船積用貨物)に対する輸出許可は、右貨物が輸出申告書に記載された貨物と異なる点で重大な瑕疵があるけれども、右瑕疵は、右貨物の検査時から輸出許可時までの間に、行政庁である神戸税関長において明白でなかつたのであるから、右許可は無効でなく、有効であると解すべきことは最高裁判所判例の明示するところである(判例集第一五巻第三号、三八一頁)。 して見ると、前記事案においては、輸出許可があつたのは船積用貨物であつて、国内引取用貨物ではなかつたのであるから、前者についての密輸出罪、後者について ころである(判例集第一五巻第三号、三八一頁)。 して見ると、前記事案においては、輸出許可があつたのは船積用貨物であつて、国内引取用貨物ではなかつたのであるから、前者についての密輸出罪、後者についての密輸入罪は、いずれも成立せず、もとより、いわゆるスリカエ輸出の起る余地は存しない。以上の様に主張する。 <要旨第一>然しながら、税関の輸出許可は、特定の貨物についての輸出申告に基づき与えられるのであるから、右輸出許</要旨第一>可がどの貨物について与えられたかは、その前提をなす輸出申告が、どの貨物について為されたかによつて決つて来るのであり、そしてその輸出申告が、どの貨物について為されたかは、輸出申告者が、どの貨物について輸出「申告」する意思であつたか(どの貨物を「輸出」する意思であつたかではない)、及び右輸出申告の表示が即輸出申告書の輸出貨物の品目の記載がどの貨物を対象としていたか、によつて決せられること、本件証拠によれば被告人等は右事案において国内引取用貨物について輸出申告する意思であり、その意思の表示も右貨物を対象としていたことが明らかであることは原判決の説示する通りである。このように輸出許可は申告者が、どの貨物を「輸出」する意思であつたかによつて決せられると解すべきではないから、その輸出するつもりの貨物即ち船積用貨物が、輸出申告時から輸出許可時まで保税上屋に在庫していても、このことは輸出許可が、どの貨物について与えられたかには関係のないことである。もつとも本事案において右輸出許可が与えられた国内引取用貨物が、税関の検査時及び輸出許可時に輸出申告書記載の申請検査場所たる保税上屋に在庫しなかつたことが、税関の通関事務における正常な手続に反することは所論の通りである。然しながら本件証拠によれば輸出許可当時、輸出申告書の記載に合致した国内 申告書記載の申請検査場所たる保税上屋に在庫しなかつたことが、税関の通関事務における正常な手続に反することは所論の通りである。然しながら本件証拠によれば輸出許可当時、輸出申告書の記載に合致した国内引取用貨物が用意されていなかつたわけではなく、右貨物が輸出許可時までに当該保税上屋に入庫したか、輸出許可後数日内に当該保税上屋に入庫したか、輸出申告時から輸出許可時までの間、当該保税上屋には在庫しなかつたが、当該保税上屋を保有する同一会社が保有し、かつ右保税上屋に隣接する保税上屋に終始在庫していたかの何れかであり、然も輸出申告書記載の品目は、国内引取用貨物に合致しており、申告貨物の特定に困難を来すような事情はなく、税関の通関手続上の取扱いとしても輸出申告をなすには予め申告の対象たる貨物を検査場所である保税上屋に搬入しておくべきものとされてはいたが、事情によつては輸出申告後搬入される見込が確実である限り未搬入のままで輸出申告をなし、通関手続を進めることも許されていたことが認められることは原判示の通りであつて、これらの事情を考え、又税関の行なう輸出貨物の検査は書類検査が比較的多い関係上、税関の監督、検査にとつて貨物の未搬入が及ぼす支障は少ないことに鑑みると、前記の税関の通関事務における正常な手続に反する点は、輸出許可についての重大な瑕疵と言うに当らないことも原判決説示の通りである。従つて国内引取用貨物に対する前記の輸出許可は有効であり、右貨物を許可なく国内に引取つた行為については密輸入罪が成立し、船積用貨物に対しては輸出許可がなかつたのであるから、之を輸出した行為については密輸出罪が成立すると言わねばならない。 所論は船積用貨物の輸出については虚偽申告罪が成立するに過ぎないと言うけれども、右は船積用貨物について輸出申告が行われたことを前提としての した行為については密輸出罪が成立すると言わねばならない。 所論は船積用貨物の輸出については虚偽申告罪が成立するに過ぎないと言うけれども、右は船積用貨物について輸出申告が行われたことを前提としての議論であつて、その前提が欠けていることは前述の通りである。 (二) 所論は、原判決は、輸出申告時から輸出許可時までの間貨物の検査場所として申請された保税上屋に国内引取用貨物も船積用貨物も共に在庫しなかつた(他の保税上屋に在庫していた)場合について、船積用貨物について密輸出、国内引取用貨物について密輸入の事実を認定したが、船積用貨物について密輸出罪が成立することは争わないけれども、国内引取用貨物について密輸入の事実を認定したのは前記最高裁判所判例に違反して事実を誤認したものである。何となれば、右国内引取用貨物は輸出許可の前提である書類検査の時並びに輸出許可時に申請の検査場所たる保税上屋に在庫しなかつたのであるから、輸出許可書に記載された右貨物に対する輸出許可の要件の存否の認定について許可当時に重大かつ明白な瑕疵があると認められ、従つて右輸出許可は無効であり、国内引取用貨物については輸出許可がなかつたことになるから、之を国内に引取つても輸入許可を受けないで外国貨物を国内に輸入したことにならない。このように主張する。 然しながら輸出許可が与えられた国内引取用貨物が税関の検査時及び輸出許可時に輸出申告書記載の申請検査場所たる保税上屋に在庫しなかつたことが、右輸出許可についての重大な瑕疵と言うに当らず、従つて右輸出許可が有効であることは(一)に述べた通りであるから、本事案の場合国内引取用貨物について密輸入罪は成立すると言うべきである。 (三) 所論は、原判決は、輸出申告時から輸出許可時に至るまでの間、輸出申告書記載の申請検査場所たる保税上屋には、輸 るから、本事案の場合国内引取用貨物について密輸入罪は成立すると言うべきである。 (三) 所論は、原判決は、輸出申告時から輸出許可時に至るまでの間、輸出申告書記載の申請検査場所たる保税上屋には、輸出申告書記載の品目の貨物も、船積用貨物も共に在庫していたが、輸出申告書記載の品目の貨物は、当該輸出申告に際し新たに搬入されたものでなく、すでに、それ以前のスリカエ輸出の際に、国内引取用貨物として使用し輸出許可を受け外国貨物となつたものを引き取らずに、そのまま保税上屋内に残置しておき、新たな密輸出の際税関係官の現品検査が行われた場合には係官に之を示してスリカエ輸出の発覚を防ぐ用意のため再使用していた関係にあるもので、貨物に附せられた記号番号が輸出申告書記載のそれに一致するのは船積用貨物の方であつて、国内引取用貨物には記号番号が附せられていなかつた場合において、船積用貨物について密輸出の事実を認定しているのは、前記判例に違反して事実を誤認したものである。けだし右船積用貨物には記号番号が附せられていて、外観上客観的に輸出申告書の貨物と一致しており、かつ右貨物は、貨物の書類検査時並びに輸出許可時に申請の検査場所たる保税上屋に在庫していたのであるから、被告人等は右船積用貨物を輸出申告の対象とする意思であり、之を特定していたことが認められ、税関係官が現物検査をしないで書類検査に止めた場合には、船積用貨物の現物検査を免れさせるような事実の存在は同係官に知られる機会はなく、通関手続上は船積用貨物が、そのまま検査せられた効果即貨物特定の効果を有するのであるから、外観上客観的に許可の要件たる「申告貨物が在庫した事実は」認定せられ、輸出許可は船積用貨物について有効に成立するからである。もつとも、その輸出許可には、品目相異という重大な瑕疵が認められるが、その瑕疵は 客観的に許可の要件たる「申告貨物が在庫した事実は」認定せられ、輸出許可は船積用貨物について有効に成立するからである。もつとも、その輸出許可には、品目相異という重大な瑕疵が認められるが、その瑕疵は許可当時には明白でなかつたから、右輸出許可は無効ではない。以上の様に主張する。 然しながら、輸出許可が、どの貨物について与えられたかを決するものは、輸出申告者がどの貨物について輸出申告する意思であつたか、及び輸出申告書の輸出貨物の品目の記載がどの貨物を対象としていたかであつて、輸出申告者がどの貨物を輸出する意思であつたかではないことは、(一)に述べた通りであつて、本事案の場合、被告人等は船積用貨物について輸出申告をする意思はなく、また輸出申告書の輸出貨物の品目の記載も、国内引取用貨物(ただし、以前に輸出許可を受けていたもの)を対象としていたことが明らかであるから、輸出許可は船積用貨物に対して与えられたと言うことはできない。船積用貨物に附せられた記号番号のみか輸出申告書に記載された記号番号に一致していたことは、本件証拠によれば被告人等が右貨物について輸出申告する意思であつたことを示すものではなく、反対に右は、右輸出申告書の品目の記載が右国内引取用貨物を対象としていたことと相まつて、被告人等が船積用貨物についての書類検査及び現物検査を不正に免れる手段として執られたものであることが明らかであり、被告人等は右船積用貨物について輸出申告をする意思はなかつたことが認められる。即ち本事案の場合においては、船積用貨物については輸出の申告がなく、従つて輸出の許可もなかつたのであるから、密輸出罪が成立すると言わねばならない。 (四) 所論は、原判決は輸出申告から輸出許可までの間、貨物の検査場所として申請の保税上屋に国内引取用貨物も船積用貨物も共に在庫した場合に つたのであるから、密輸出罪が成立すると言わねばならない。 (四) 所論は、原判決は輸出申告から輸出許可までの間、貨物の検査場所として申請の保税上屋に国内引取用貨物も船積用貨物も共に在庫した場合において、輸出許可が為されたのは国内引取用貨物についてであるとして、右貨物については密輸入、船積用貨物については密輸出の事実を認定しているのは事実を誤認したものである。けだし被告人等が船積用貨物を輸出する意思で、すべての手続を為し、国内引取用貨物を輸出する意思はなかつたこと及び国内引取用貨物が共に在庫せしめられたのは万一の現物検査が行われるときに不正輸出が露見することを免れるためであつたことは原判決も認めているところであるから、被告人等が輸出申告せんとして特定した貨物は船積用貨物であり、税関係官は右輸出申告に対して現物検査を省略し、書類検査のみを行つて外形的に輸出許可という行政処分の要件たる事実認定を行つたのであるから、その事実認定は船積用貨物と国内引取用貨物との何れに対してなされたか、従つて輸出許可は何れの貨物について為されたかは外形的には明らかでなく、従つて又右要件の認定に基づいて為された輸出許可は、船積用貨物及び国内引取用貨物の双方について有効に成立するからである。仮に原判示の如く輸出許可は国内引取用貨物に対してのみ有効に成立したとしても、被告人等の意思は輸出申告についても、輸出についても、その対象たる貨物として船積用貨物を特定していたのであるから輸出許可が申告にかかる船積用貨物に対して為されたのであると信ずべき相当な理由があり、かつ之を輸出することが適法であると信ずべき理由があるから、被告人等は密輸出の犯意を欠いている。又被告人等が国内引取用貨物について輸出許可が与えられ、それが外国貨物となつたとの認識を欠くことも明らかであるから、同 ことが適法であると信ずべき理由があるから、被告人等は密輸出の犯意を欠いている。又被告人等が国内引取用貨物について輸出許可が与えられ、それが外国貨物となつたとの認識を欠くことも明らかであるから、同人等が国内引取用貨物を国内に引取るについては、外国貨物を輸入許可を受けないで輸入するという認識を欠いており、従つて密輸入の犯意も欠いている。以上のように主張する。 然しながら輸出許可がどの貨物について与えられたかを決する要件については(一)に述べた通りであつて、本件証拠によれば本事案の場合、被告人等は船積貨物について輸出申告をする意思はなく、国内引取用貨物について輸出申告をする意思であり輸出申告書の輸出貨物についての記載も国内引取用貨物を対象としていたことが明らかであるから、輸出許可は船積用貨物に対して与えられたものでなく、国内引取用貨物について与えられたものと言わねばならない。そして被告人等は、このことを認識していたことも、本件証拠により明らかであるから、密輸出及び密輸入の犯意がなかつたということはできない。結局所論は、いずれも独自の見解であつて論旨は採用できない。 二、 弁護人の控訴趣意第二点(被告人Aを除く各被告人に関し)について所論は、仮に原判示の国内引取用貨物の全部につき神戸税関長の輸出許可がなされたものであるとしても、従つて被告人等が保税地域から引取つた国内引取用貨物が外国貨物であつたとしても、本件の如く未だ船積されないまま保税上屋から本邦に引取る場合は、本件当時の神戸税関の通関事務上の取扱としては輸入許可を必要とせず、単に輸出許可取消によつて処理されていた。そして輸出許可の取消行為があれば、その貨物は当然内国貨物に還元するのであり、内国貨物の国内引取には、そもそも輸入許可を必要としないのであるから、前記国内引取用貨物の国内へ 消によつて処理されていた。そして輸出許可の取消行為があれば、その貨物は当然内国貨物に還元するのであり、内国貨物の国内引取には、そもそも輸入許可を必要としないのであるから、前記国内引取用貨物の国内への引取について被告人等が輸入の許可を受けなかつたことは関税法第一一一条の密輸入に当らないのに、これを密輸入と認定した原判決は事実を誤認したものである。以上のように主張する。 然しながら関税法第二条第一号によれば、輸出の許可を受けた貨物を本邦に引取ることは輸入に当り、このことは右貨物が船積前であつても同様であつて(昭和三六年一二月二七日最高裁判所判決、判決集第一五巻第一二号、二〇九八頁)、従つて、この場合にも同法第六七条により輸入許可を必要とするのである。もつとも本件当時神戸税関の通関事務上の取扱として輸出取消願書を税関に提出させ、あるいは輸入申告書を提出させ、税関係官は之に輸出取消というスタンプを押す手続がなされていたことは所論の通りであるけれども、之は右貨物が未だ船積前であるという特殊性に鑑み、輸入許可手続を通常の輸入の場合よりも簡略に行う趣旨で、輸出取消という用語を使つたに過ぎず、実質はやはり輸入許可の手続と解すべきである。そして被告人等は本件において右手続を全然履行していないのであるから、許可なくして外国貨物である国内引取用貨物を輸入したものであり、密輸入罪の成立は免れず、論旨は採用できない。 三、 弁護人の控訴趣意第三点(全被告人に関し)について所論は、本件全公訴事実に対する訴訟要件たる名古屋税関長の告発は、右公訴事実たる犯則行為が行われた場所が、大蔵省設置法第二四条によつて名古屋税関の管轄区域外とされている神戸市であるから、権限なくして行われたもので無効である、又本件犯則事件の端緒は、愛知県警察官の適法な内偵によつて名古屋税関 れた場所が、大蔵省設置法第二四条によつて名古屋税関の管轄区域外とされている神戸市であるから、権限なくして行われたもので無効である、又本件犯則事件の端緒は、愛知県警察官の適法な内偵によつて名古屋税関の管轄区域である一宮市内において把握されたのであり、その内偵の結果本件犯則事件の発生地即犯罪場所が神戸税関の管轄区域であることが早期に判明しているのであるから、同警察職員は関税法第一三六条により直ちに神戸税関長に通知すべきであつたのに、之を怠り、引続き自ら捜査を遂行してしまい、名古屋地方検察庁検察官に犯則事件の通知をなし、同検察官は、そのまま捜査を完了し、いよいよ公訴提起という時に至つて漸く急遽名古屋税関長に、その通知をして、同税関長の告発処分を見るに至つたという経過をたどつているのであつて、関税法第一四〇条の規定は全く無視されているから、この点においても右告発は適法でなく無効である、と主張する。 <要旨第二>然しながら大蔵省設置法第二四条は、各税関の管轄区域を定めており、各税関の扱う事務は原則として、こ</要旨第二>の管轄区域内に限られることは所論の通りであるけれども、右事務の内税関職員の犯則事件の調査に関するそれは、他の事務と違つて、犯則事件の性質上広範囲の地域にわたり、かつ敏速な処置が要請される場合が多いことに鑑み、右管轄区域に拘束されず、必要に応じて管轄区域外においても職務の執行が許されることは関税法第一三五条の規定により明らかである。そして税関職員が犯則事件の調査の為に管轄区域外において職務を執行することができる以上、税関長は、税関職員の右管轄区域外での犯則事件の調査により犯則の心証を得たときでも、同法第一三八条により右犯則事件について告発する権限を有すると解すべきであるから、本件において名古屋税関長の為した告発は有効であると言 右管轄区域外での犯則事件の調査により犯則の心証を得たときでも、同法第一三八条により右犯則事件について告発する権限を有すると解すべきであるから、本件において名古屋税関長の為した告発は有効であると言わねばならない。又本件犯則事件について名古屋税関の職員及び税関長が調査、処分の権限を有する以上、愛知県警察官は本件について神戸税関に通知しなければならないものではなく、名古屋税関に通知すれば足るのであり、原審証人Bの供述記載によれば、愛知県警察職員は関税法第一三六条に従い、本件について名古屋税関に通知している事実が認められ、右通知後も警察職員は本件につき捜査を続行することは差支えないと解すべきであるから、何ら同条に違反した点はなく、その他同条第一四〇条を無視した行為も認められないから、本件告発は有効である。論旨は採用できない。 四、 弁護人の控訴趣意第四点(被告人Aを除く各被告人に関し)について所論は、本件公訴事実の行為地は神戸市であつて愛知県警察の管轄区域外に属し、然も本件は愛知県警察が警察法第六一条により管轄区域外に権限を及ぼし得る場合にも当らないから、同県警察が、本件の被疑事実を捜査し、被告人Cを除く他の六名の被告人を逮捕したのは違法であり、右逮捕に基づく勾留も違法であり、右被告人等六名が本件について起訴された当時、右違法勾留により名古屋地方裁判所の管轄区域内に現在していても、右被告人等六名に対する本件の審判について名古屋地方裁判所に土地管轄を生ずることはなく、他に右被告人等六名に対し本件について名古屋地方裁判所が土地管轄を有すべき理由もないと主張する。 然しながら本件証拠によれば、愛知県警察は被告人等の逮捕に先立つ数ケ月前から愛知県一宮市所在の倉庫に本件犯則物件が運びこまれて来ていることを探知し、右貨物について関税賍物犯を含む関税 と主張する。 然しながら本件証拠によれば、愛知県警察は被告人等の逮捕に先立つ数ケ月前から愛知県一宮市所在の倉庫に本件犯則物件が運びこまれて来ていることを探知し、右貨物について関税賍物犯を含む関税法違反の犯罪の有無を内偵していた事実が認められること、右貨物の搬入につき関税法違反の関税駐物犯の嫌疑が存するので、右一宮市内を管轄区域内に有する愛知県警察は右賍物犯の嫌疑について捜査するに当つて、右犯罪の本犯となるものと考えられ、従つて之と関連する関税法違反事件の捜査をすることが必要であることは明らかであるから、右捜査の必要上前記被告人等六名について関税法違反事件の容疑で逮捕状を請求し、右逮捕状により被告人Aを除く右各被告人を大阪府、京都市、兵庫県の各現在地におい逮捕して愛知県警察本部に連行し、被告人Aを名古屋市に出向いた際、同地で逮捕したのは、警察法第六一条所定の管轄区域内における犯罪の捜査に関連して必要のある限度で、その管轄区域外に権限を及ぼした場合であるから適法であり右逮捕に基づく同被告人等に対する勾留手続も、適法なこと、従つて被告人等は何れも本件起訴当時適法な強制により原裁判所の管轄区域に現在したものであるから、刑事訴訟法第二条第一項により、右被告人等に対する本件公訴につき原裁判所が管轄権を有すること、以上は何れも原判決説示の通りである。 所論は原判決は刑事訴訟法第一八九条第二項に「犯罪があると思料するとき」とあるのを、単なる脳裡での想定だけで足るのであり、その想定が捜査記録中に、いささかも具現されておらず、如何なる犯罪について捜査に着手していたかが客観的に判明していなくてもよいという見解を判示しているように思われるのであるが、もし、そうであるとすれば、右規定の解釈を誤つていると主張する。 然しながら、原判決の説示によれば、原判決が いたかが客観的に判明していなくてもよいという見解を判示しているように思われるのであるが、もし、そうであるとすれば、右規定の解釈を誤つていると主張する。 然しながら、原判決の説示によれば、原判決が同規定の「犯罪があると思料するとき」とは単なる脳裡での規定だけで足るとはせず、特定の犯罪の成立を疑わしめるような客観的事情の存在を必要とすると解していると認められ、証拠によれば、このような客観的事情が存在したことが明らかであるし、この犯罪の嫌疑の存在については必ずしも、それが捜査記録に具現されていることは必要ではない。従つて被告人C以外の被告人等に対しては原審は土地管轄を有し、被告人Cに対する本件公訴事実は、その他の被告人等に対する本件公訴事実と関連するものであるから、刑事訴訟法第九条第一項第二号、第六条により被告人Cに対しても原審は土地管轄を有する。論旨は採用できない。 五、 弁護人の控訴趣意第五点(被告人Aに関し)について所論は、被告人Aについての原判示第二の事実について同被告人は、他の共犯者らと具体的に右犯罪の実行について謀議した事実は勿論、自ら本件密輸出を実行することを意図した事実もなく、少くとも、右事実を認めるに足る証拠はない、又同被告人が原判示第二の事実について共犯としての責任を負うためには原判示のようにF等の指揮の下に、抽象的一般的に(一)スリカエ輸出の計画実行の打合のための通信連絡、(二)香港に到着した貨物の売りさばきの仕事を担当したというだけでは足りず、具体的に原判示のD丸とEの両船の積荷の品目の決定が同被告人の通信連絡によつて実行せられ、その積荷が香港到着後、同被告人によつて売りさばかれたことが明白でなければならないのに、このことを認め得る証拠は全くない、従つて原判決には、事実を誤認したか、もしくは証拠によらないで事実 実行せられ、その積荷が香港到着後、同被告人によつて売りさばかれたことが明白でなければならないのに、このことを認め得る証拠は全くない、従つて原判決には、事実を誤認したか、もしくは証拠によらないで事実を認定した違法がある、と主張する。 然しながら原判決挙示の証拠によれば、同被告人は原判示の如く、遅くも昭和二九年八月末にはFを通じて本件スリカエ輸出の方法を知り同人を介して順次G及び他の被告人等と共謀の上、以後主として船積用貨物の決定等スリカエ輸出の計画実行打合のためのH大阪支店に対する通信連絡及び香港に到着した貨物の売さばき等の仕事を担当した事実、及び原判示第二の事実については、同被告人の通信連絡によつて品名数量が決定されて原判示の船積用貨物が香港に送られたことを認めるに十分である。所論の引用する同被告人の昭和三〇年九月二七日付検察官調書は右事実を明らかにするものであつて、所論の如く、その内容が取調官によつて歪曲、捏造されたと認められる節はない。同被告人は原審第四二回公判において所論に沿う供述をしているけれども、前記各証拠と対比し信用しがたい。原審が同被告人について、本件密輸出の内の原判示第二の事実のみを取上げたのは、同被告人の香港滞在中直接スリカエ輸出に関与した期間、同被告人等の記憶、その他によつて同被告人が直接関与したことが確実と認められるもののみを有罪と認定したものと解せられ、もとより、そのために右事実認定の正当性が左右されるものではなく、論旨は採用できない。 六、 検察官の控訴趣意(被告人Aを除く各被告人に関し)について所論は、原判決は、本件公訴事実中「被告人Aを除く各被告人は、G、F等と共謀の上、昭和二九年七月二日頃から昭和三〇年五月二一日頃までの間に前後六二回にわたり、それぞれ神戸税関から輸出許可を受けた外国貨物である綿布 は、本件公訴事実中「被告人Aを除く各被告人は、G、F等と共謀の上、昭和二九年七月二日頃から昭和三〇年五月二一日頃までの間に前後六二回にわたり、それぞれ神戸税関から輸出許可を受けた外国貨物である綿布、毛糸、毛織物等合計八八四ケース及び三、一三三べ―ル価格八億九千三百八十万一千五百三十六円相当を税関の輸入許可を受けないで情を知らない運送業者、従業員等を使用して在庫する保税上屋から本邦内に搬出して引き取り、以て関税合計一億三百六十六万八千七百二十円を逋脱すると共に無許可輸入を為した」との点について、関税法第一一一条第一項の無許可輸入の事実については有罪の認定をしながら、同法第一一〇条第一項第一号の関税逋脱については「関税定率法(以下定率法と略称)第一四条第一〇号(改正前のもの、以下同じ)によれば、本邦から輸出された貨物であつても、その輸出許可の日から二年以内に、その性質、形状が全く同一の状態にて輸入された場合には関税を無条件に免除することとなつている。 その趣旨は、右貨物は、もともと国産品であるか、外国品であるとしても既に関税を賦課徴収された貨物であるから、之を免税としても国内産業保護の面に支障はなく、又、之に再び課税して財政収入を計ることの関税制度上の合理性を欠くからであると解する。この法理からして輸出の許可を受けていながら、船積みせず、保税上屋から国内に秘かに引取る場合であつても同様であつて、仮令その際税関の関税免除処分がなされていなくても、実質的には同一貨物の輸入であり、関税収入を期待し得ない性質の貨物であるから税関の輸入許可の如何によつて免税の有無が左右されるべき理由はない。従つて定率法第一四条第一〇号に当る性質を有する貨物については税関の輸入許可及び関税免除処分を受けることなく本邦内に引き取つたとしても、その行為に対し関税法第一 税の有無が左右されるべき理由はない。従つて定率法第一四条第一〇号に当る性質を有する貨物については税関の輸入許可及び関税免除処分を受けることなく本邦内に引き取つたとしても、その行為に対し関税法第一一一条第一項の密輸入罪の成立するは格別、同法第一一〇条第一項第一号の『関税を免れた』行為には当らない」と判示して関税逋脱罪の成立を否定した上「無許可輸入の行為と関税逋脱の行為とは観念的競合の関係で起訴されたものと認められるから、後者の事実に対し、特に主文で無罪の言渡をしない」と述べて、結局関税逋脱罪は無罪であるとしたが、之は関税法第一一〇条第一項第一号及び定率法第一四条第一〇号の解釈適用を誤つたものである、と主張する。 関税法第二条第一号によれば、輸入とは輸出の許可を受けた貨物を本邦に引き取ることを言い、このことは本件の如くスリカエ輸出の目的のために輸出の許可を受けた貨物を保税上屋から国内に引取る場合でも異なることはないから(昭和三六年一二月二七日最高裁判所判決、判決集第一五巻第一二号二〇九八頁)関税法第三条によりこの国内に引取られた貨物には関税が課せられる。 ところで定率法第一四条第一〇号によれば「本邦から輸出された貨物でその輸出の許可の日から二年以内に輸入され、その許可の際の性質及び形状が変つていないものについては、関税を免除する」旨が規定されており、「輸出」とは関税法第二条第二号によれば内国貨物を外国に向けて送り出すことを言い、「送り出す」とは、一般には「貨物を外国に向けて船舶又は航空機に積みこむことである」と解されるから、本件貨物のように船積前でまだ保税上屋にあるものは、直接には定率法第一四条第一〇号の「本邦から輸出された貨物」には当らない。 <要旨第三>然しながら船積後の外国貨物(輸出の許可を受けた貨物、関税法第二条第三号)が輸 積前でまだ保税上屋にあるものは、直接には定率法第一四条第一〇号の「本邦から輸出された貨物」には当らない。 <要旨第三>然しながら船積後の外国貨物(輸出の許可を受けた貨物、関税法第二条第三号)が輸入される時でさえ、定率</要旨第三>法第一四条第一〇号所定の要件を満すときは関税の免除が受けられるのに本件貨物のように、それ以前の段階の船積前の外国貨物を輸入するとき、「輸出された貨物」に当らない為、定率法第一四条第一〇号の要件を満していながら関税の免除が受けられないと言うのは、甚しく均衡を失し、不合理であるから、少くとも定率法第一四条第一〇号による関税免除の場合に限り、同号の「本邦から輸出された貨物」の内には、本件貨物の如き、輸出許可を受けたが、まだ船積までに至つていない外国貨物も含まれると解するのが相当であり、之に対しては同条同号を適用すべきであると考える。 次に定率法第一四条は「関税を免除する」と規定しているから、同条所定の貨物は、いずれも本来は関税を課せらるべき物、即ち有税品であり、納税義務者が法定の手続をふみ、之に対して税関の行政行為があつて、初めて関税が免除されるものであることは検察官所論の通りである。 一般的に言つて、「免除」は、行政行為の内で、法令によつて定められた作為、給付、受忍の義務を特定の場合に解除する行為であり、いわゆる命令的行為に属するものであつて、既存の法律事実又は法律関係の存否を確定し、宣言する確認行為ではない。定率法第一四条の「免除」についても、これを異別に解さねばならぬ理由はない。本件について言えば、定率法施行令第一六条に従い、納税義務者が本件貨物について輸入申告を為し、その際右貨物の輸出の許可書又は之に代る税関の証明書を税関に提出し、税関から免税処分を受けて初めて関税が免除されるのであつて、被告人等は全然 六条に従い、納税義務者が本件貨物について輸入申告を為し、その際右貨物の輸出の許可書又は之に代る税関の証明書を税関に提出し、税関から免税処分を受けて初めて関税が免除されるのであつて、被告人等は全然右手続をふまず、従つて関税の免除が為されていないのであるから、被告人等は本件貨物について定率法に定める関税を納付する義務があると言わねばならない。定率法第一四条第一〇号による免税処分の手続においては、税関は同号所定の要件に合致すると認定された輸入貨物については必ず関税の免除をすべきで右認定及び処分について税関の自由裁量の入る余地ないけれども、そのことは、右貨物が本来有税品であつて、税関の免税処分をまつて関税が免除されるという、その実体に消長を<要旨第四>及ぼすものではない。弁護人は定率法施行令第一六条の「法第一四条第一〇号(再輸入貨物の免税)の規定によ</要旨第四>り関税の免除を受けようとする者は、その免除を受けようとする貨物の輸入申告の際に、当該貨物の輸出の許可証又はこれに代る税関の証明書を税関に提出しなければならない。ただし、当該貨物がこれらの規定に該当することが他の資料に基づき明らかであるときは、この限りでない」という規定の但書を捉えて、定率法第一四条第一〇号所定の貨物は同号の要件を具備することが何等かの資料に基づいて明らかである限りは免税を受けるために別段税関の輸入手続や免除処分を受ける手続をするに及ばないと主張するけれども、同条但書は、定率法第一四条第一〇号所定の貨物について免税処分を受けるには、常に右貨物の輸出の許可証又はこれに代る税関の証明書を税関に提出しなければならないものではなく、他の資料によつて右貨物が同条同号の要件に合致することを税関に証明することによつても関税の免除を受け得ることを定めたもので、税関に対する輸入手続や関 明書を税関に提出しなければならないものではなく、他の資料によつて右貨物が同条同号の要件に合致することを税関に証明することによつても関税の免除を受け得ることを定めたもので、税関に対する輸入手続や関税免除処分を受ける手続を不要としたものではないから、定率法施行令第一六条但書の場合でもやはり、右貨物が定率法第一四条第一〇号所定の貨物であることについての税関の認定及び之に基づく免税処分は必要であると解すべきである。 <要旨第五>このように被告人等は本件貨物について関税納付の義務があり、この義務を怠つているのであるが然し、こ</要旨第五>の義務違反に対して、関税法第一一〇条第一項第一号の、いわゆる「関税を免れた」行為として刑事責任を追及し得るか否かについては問題が自ら別である。けだし同号の関税逋脱罪は、行政犯ではあるけれども同時に刑事犯的性格の極めて強い実質犯であり、他の関税犯則行為中の形式犯と異なり、その構成要件は、保護法益の現実の侵害の発生を内容としていると考えられるからである。 ところで関税法第一一〇条第百写の関税逋脱罪の保護法益は国の財政権、即ち関税収入の確保、及び右関税の徴収による国内産業の保護である。 本件貨物は客観的には定率法第一四条第一〇号所定の要件を備えているが、被告人等は右貨物を税関の許可なくして輸入したため、関税免除の手続も取らず、従つて免税処分も受けていないことは前述の通りである。 然しながら同号所定の要件を備えた貨物について関税が免除されるのは、本邦から輸出された貨物は、もともと国産品であるか、外国製品であつても通常すでに関税を賦課徴収された貨物であるから、かかる品物については、輸出許可を受けた際の性質、形状に変化がなく、かつ輸出許可後長期間を経ていない限り、之に関税を課して財政収入を計ることは関税本来の性質に反 関税を賦課徴収された貨物であるから、かかる品物については、輸出許可を受けた際の性質、形状に変化がなく、かつ輸出許可後長期間を経ていない限り、之に関税を課して財政収入を計ることは関税本来の性質に反するものであるし、又国内産業保護の面からも関税を課する必要がないことによるのであることそして右貨物については、以上のような性格に鑑み、税関は、手続上、同号所定の要件に合致すると認定された輸入貨物については必ず免税処分をなすべきで、右認定及び処分について税関の自由裁量の入る余地がないことは原判決説示の通りである。即ち右貨物については、国家は最初から関税の収入を期待していないし、本来期待すべきでないのである。従つて被告人等は本件貨物の密輸入によつて、形式的には輸入税納付の義務に違背している、けれども右貨物は客観的には定率法第一四条第一〇号所定の要件を満している貨物であるから、実質的には被告人等の所為によつて国家は何ら財政上の損失を受けておらず、又国内産業の保護の面で輸入税を納付しないことによつては何の影響も受けていないのである。即ちこの場合通関秩序が乱されるということ以外に関税逋脱罪の保護法益の現実の侵害はなかつたのであるから、被告人等の本件所為は、関税法第一一〇条第一項の「関税を免れた」行為に当らない、即ち関税逋脱罪の構成要件に該当しないというべきである。 所論は更に、たとい本件貨物が国産品又は再輸入品であり、関税免除の対象となる物品であつても、密輸入行為により内国消費税をも不法に免れるものであつてその点で国家の課税権が阻害され、国内産業に悪影響を及ぼすし、又本件貨物は、たとい、その原料が輸入されたものであつても、無税品であり、従つて全く関税が徴収されていないものであつて、これに輸入税を課しても二重に関税を課したことにはならないから原判決が本 すし、又本件貨物は、たとい、その原料が輸入されたものであつても、無税品であり、従つて全く関税が徴収されていないものであつて、これに輸入税を課しても二重に関税を課したことにはならないから原判決が本件関税逋脱罪の成立を否定した論拠は理由がないと主張するが、本件貨物について物品税逋脱の罪が成立することは当然であつて、そのことと本件について輸入税逋脱の罪が成立するか否かとは別個の問題であり、又本件貨物の原料が輸入の際無税であつたからと言つて、その再輸入に際し関税を課さねばならぬものではないから、形式的に二重課税にならぬことの故に、本件を関税逋脱罪として訴追することが正当化されるものではない。 論旨は採用できない。 以上述べた通り本件各控訴は何れも理由がないので刑事訴訟法第三九六条により之を棄却することとして、主文の通り判決する。 (裁判長判事小林登一判事斎藤寿判事西川力一)

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