平成16(ワ)17501 債務不存在確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月29日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-9953.txt

キーワード

判決文本文5,929 文字)

平成16年(ワ)第17501号債務不存在確認請求事件口頭弁論終結日平成16年9月13日判決原告呉羽化学工業株式会社訴訟代理人弁護士辻居幸一同相良由里子補佐人弁理士佐藤英二同井野砂里被告甲 主文 1 原告による別紙物件目録1ないし3記載の包装用箱を使用したラップフィルム製品の製造,販売につき,被告が意匠第1154249号の意匠権に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有しないことを確認する。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,ラップフィルム製品を製造販売している原告が,後記意匠権を有する被告に対し,原告の上記製造販売につき被告が当該意匠権に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有しないことの確認を求めた事案である。 1 争いのない事実等(争いのない事実以外は証拠を末尾に記載する。)(1) 当事者原告は,合成樹脂,高機能材料,樹脂製品,医薬品,農薬,基礎化学品等の製造,販売を業とする会社である。 (2) 被告の有する意匠権被告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)を有する。 登録番号意匠登録第1154249号出願日平成13年12月6日登録 といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)を有する。 登録番号意匠登録第1154249号出願日平成13年12月6日登録日平成14年8月9日意匠に係る物品ラップフィルム摘み具登録意匠別紙意匠公報の該当欄記載のとおり(3) 原告の行為原告は,従来から「NEWクレラップ」との商品名でラップフィルム製品を製造販売していたが,平成16年3月22日から,その改良製品の製造販売を開始した。当該改良製品は,商品名を従来と同じ「NEWクレラップ」とするラップフィルム製品であり,サイズが「レギュラー」,「ミニ」及び「ミニミニ」の3種類あり,別紙物件目録1ないし3記載のラップフィルム用包装用箱(以下,まとめて「原告包装用箱」という。)及びラップフィルムロールから構成されている(以下,原告包装用箱を使用した商品名「NEWクレラップ」のラップフィルム製品を,まとめて「原告製品」という。)。(甲3)(4) 被告の警告と原告の回答等ア被告は,原告に対し,平成16年5月26日付け通告書により,原告による原告製品の製造販売が本件意匠権の侵害となるとして,原告製品の製造販売の中止等を求めた。 イこれに対し,原告は,平成16年6月11日付け回答書により,原告包装用箱の意匠は本件意匠に類似しないなどとして,原告包装用箱を使用した原告製品の販売等は本件意匠権の侵害とはならず,被告の要求には応じられない旨回答した。(甲5)ウ被告は,その後も現在に至るまで,原告による原告製品の製造販売が本件意匠権を侵害する旨主張している。(甲6,9。枝番号の記載は省略する。以下同じ。) じられない旨回答した。(甲5)ウ被告は,その後も現在に至るまで,原告による原告製品の製造販売が本件意匠権を侵害する旨主張している。(甲6,9。枝番号の記載は省略する。以下同じ。) 2 争点原告包装用箱を使用した原告製品の製造販売が本件意匠権の侵害となるかどうか。 第3 争点に関する当事者の主張(被告の主張) 1 物品の類似性「原告包装用箱」と本件意匠権に係る「ラップフィルム摘み具」とは,包装用箱本体とその部品であるから,物品としては非類似である。 しかし,原告包装用箱は,単に,旧型のクレラップの包装用箱に「つまめるフラップ」を付けただけのものではなく,包装用箱の前壁裏側に,箱の長さ分の「横長矩形部」(台座)を設けて「つまめるフラップ」を連結させたものである。 すなわち,原告包装用箱は,「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」(乙17の2)を包装用箱に一体的に付けたものである。この部品の意匠と本件意匠とを対比すれば,両者は類似する。 2 本件意匠の利用原告包装用箱の前壁裏側には「横長矩形部」があり,これは「つまめるフラップ」に連結しているから,「つまめるフラップと横長矩形部」は一体をなし,「つまめるフラップと横長矩形部」からなる部分は,原告包装用箱本体から独立している。 ところで,本件意匠は,横長矩形部(台座)と台形部材(摘み片)とから構成されるが,その要部は,台形部材である。これに対して,原告製品において,消費者が使用段階でミシン目から切り離して浮かせた状態においた「つまめるフラップ」部分が,注意を引く部分である。本件意匠の要部である台形部材と原告製品の「つまめるフラップ」部分とを対比すると,両者は,相互に類似する。 したがって,原告包 状態においた「つまめるフラップ」部分が,注意を引く部分である。本件意匠の要部である台形部材と原告製品の「つまめるフラップ」部分とを対比すると,両者は,相互に類似する。 したがって,原告包装用箱は,本体から独立している部分である「つまめるフラップと横長矩形部」が,本件意匠に類似しているので,その本件意匠を利用した製品であるといえる。 (原告の反論) 1 物品の非類似(1) 本件意匠権は,「ラップフィルム摘み具」という物品について成立している。これに対して,原告製品の意匠に係る物品は,ラップフィルム製品ないしその包装用箱である。原告製品の「包装用箱」と「ラップフィルム摘み具」は,物品としての用途・機能が異なっているので,物品において類似しない。 (2) また,意匠の類否は,「ラップフィルム摘み具」に係る本件意匠と原告包装用箱の意匠とを全体的に観察して判断されるべきである。 そこで,本件意匠と原告包装用箱の意匠とを対比すると,本件意匠には原告包装用箱の全体の形態に相当する構成がないのに対して,原告包装用箱の意匠には本件意匠の横長矩形部に相当する構成がなく,両者が全体として類似していないことは一見して明らかである。 2 本件意匠の利用の不存在(1) 対象物件の意匠Bが登録意匠Aを利用する関係に立つというためには,意匠Bがその構成要素中に,登録意匠A(これに類似する意匠を含む)の全部を,その特徴を損なうことなく,意匠Bの他の構成要素と区別し得る態様で包含し,この部分と他の構成要素との結合により全体としては登録意匠Aとは非類似の一個の意匠をなしているが,この意匠Bを実施すると必然的に登録意匠Aを実施する関係になる場合をいう。 (2) 本件において,原告包装用箱の意匠が本件意匠を利用す としては登録意匠Aとは非類似の一個の意匠をなしているが,この意匠Bを実施すると必然的に登録意匠Aを実施する関係になる場合をいう。 (2) 本件において,原告包装用箱の意匠が本件意匠を利用する関係に立つというためには,①原告包装用箱の本件意匠に対応する相当する部分が,外観上,包装用箱本体と截然と区別し得るものでなければならないし,また,②原告包装用箱の意匠が,本件意匠の全部を,その特徴を損なうことなく包含していなければならない。 しかし,①原告包装用箱における「つまめるフラップ」は,包装用箱本体と一体となっており,箱本体の他の構成要素と区別し得る態様にあるとはいえないし,また,②原告包装用箱の意匠には,そもそも本件意匠の横長矩形部に対応する部分が存在せず,本件意匠の全部を包含しているとはいえない。 したがって,原告包装用箱の意匠は,本件意匠を利用したものではない。 第4 当裁判所の判断 1 本件意匠権侵害の有無被告は,原告包装用箱の意匠が本件意匠と類似するとして,原告包装用箱を使用した原告製品を製造販売する原告の行為が本件意匠権の侵害となる旨主張する。 しかし,当裁判所は,以下の理由から,原告の上記行為は本件意匠権の侵害に当たらないと判断する。 (1) 類似性についてア被告は,原告包装用箱は,単に,旧型のクレラップの包装用箱に「つまめるフラップ」を付けただけのものではなく,包装用箱の前壁裏側に,箱の長さ分の「横長矩形部」(台座)を設けて「つまめるフラップ」を連結させたものであり,「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」(乙17の2)を包装用箱に一体的に付けたものであるから,この部品の意匠と本件意匠とを対比すれば,両者は類似している旨主張する。 ものであり,「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」(乙17の2)を包装用箱に一体的に付けたものであるから,この部品の意匠と本件意匠とを対比すれば,両者は類似している旨主張する。 イしかし,被告の上記主張は,採用できない。 すなわち,意匠法における「意匠」とは,いわゆる部分意匠として登録されるような場合を除けば,物品全体の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいうのであるから(意匠法2条1項参照),意匠とこれに基づいて表現された物品とは不可分の関係に立つというべきである。したがって,登録意匠と被告物品に係る意匠とが類似しているというためには,それぞれの「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」が単に類似するというだけでは足りないのであって,登録意匠に係る物品と被告物品とが類似していることも必要である。そして,この場合に,対比の対象とされる当該物品は,流通過程に置かれ,取引の対象とされる独立した物品を指すものというべきであって,単に,当該物品の一部を構成するにすぎない部分を指すと解すべきではない。 本件意匠に係る物品は「ラップフィルム摘み具」であるのに対し,原告が製造販売している物品は原告包装用箱を使用した原告製品であるから,両者は用途,機能等を異にし,物品として同一性又は類似性がない。 被告の主張に係る前記「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」は,被告において,原告包装用箱の特定の部分(フラップ部分と包装用箱の前壁裏側部分)のみを,恣意的に,ハサミで切り離して,分離させたものにすぎないのであって(検甲1ないし3,乙17の1~3),それ自体が経済的に独立した商品として流通過程に置かれた物品ではないことは明らかであ 部分)のみを,恣意的に,ハサミで切り離して,分離させたものにすぎないのであって(検甲1ないし3,乙17の1~3),それ自体が経済的に独立した商品として流通過程に置かれた物品ではないことは明らかである。したがって,上記「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」をもって,本件意匠に係る物品である「ラップフィルム摘み具」に当たるとすることはできないから,両者の意匠が類似するかどうかを検討するまでもなく,被告の上記主張は理由がない。 (2) 本件意匠の利用についてア被告は,原告包装用箱には,「つまめるフラップ」があり,これは箱の前壁裏側の「横長矩形部」に連結し,「つまめるフラップと横長矩形部」からなる部分は一体をなして箱本体と独立しているから,原告包装用箱の意匠は本件意匠を利用したものである旨主張する。 イしかし,被告のこの点の主張も,採用できない。 原告包装用箱の意匠が,本件意匠を利用する関係に立つというためには,少なくとも,①原告包装用箱のうちで本件意匠に対応する部分が,原告包装用箱の他の部分と截然と区別して看取できることを要し,かつ,②原告包装用箱の区別して看取できる部分が,本件意匠と同一又は類似であることを要すると解すべきである。 (ア) 「つまめるフラップ」部分原告包装用箱には,箱前面の中央上端に,あらかじめミシン目及び切り込みを入れて,同ミシン目部分を指などで押して切り離すことによって,箱の折り曲げ部から下方に向けておおむね先細となるフラップ状部分(「つまめるフラップ」)を形成させているが,同部分は,原告包装用箱本体と一体に形成されており,原告包装用箱の他の部分と截然と区別して看取できるということはできない。 また, 分(「つまめるフラップ」)を形成させているが,同部分は,原告包装用箱本体と一体に形成されており,原告包装用箱の他の部分と截然と区別して看取できるということはできない。 また,仮に,原告包装用箱の「つまめるフラップ」を本件意匠(本件意匠は,平板な横長矩形部材と平板な台形部材とを上側折り曲げ部で連結し,台形部材は上側折り曲げ部から下方に向けて先細となるとの構成を有する。)における「台形部材」に対応させて対比してみても,原告包装用箱には,本件意匠における「横長矩形部材」に相当する部分が存在しないので,本件意匠と同一又は類似であるとすることもできない。 さらに,仮に,原告包装用箱の「つまめるフラップ」部分と本件意匠「台形部材」部分を対比したとしてみても,前者は,台形の斜辺に対応する線が,上端折り曲げ部から下方に向けて,上側から約4分の1まで一旦広がり,そこから先細となる曲線から構成され,下側の2つの角部は,丸められた鈍角で構成されているのに対して,後者は,縦長の台形形状であり,斜辺は直線で,4つの角部は,上側の2つが尖った鋭角で構成され,下側の2つが尖った鈍角で構成されていることからすれば,両者は看者に与える美感を異にし,類似しない。 (イ) 「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」部分原告包装用箱の「つまめるフラップと横長矩形部で構成された部品」部分は,原告において,台紙を折って形成された原告包装用箱の完成品を展開して,特定の部分のみを,恣意的にハサミで切り離して,分離させたものにすぎないのであって,原告包装用箱の他の部分と截然と区別して看取できるということはできない。したがって,原告包装用箱の前記部分については,本件意匠との類否を判断するまでもなく,本 ,分離させたものにすぎないのであって,原告包装用箱の他の部分と截然と区別して看取できるということはできない。したがって,原告包装用箱の前記部分については,本件意匠との類否を判断するまでもなく,本件意匠の利用と解する余地はない。 2 結語以上の次第で,原告による原告製品の製造販売は,本件意匠権の侵害とはならない。よって,原告の請求は理由がある。 東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官飯村敏明裁判官榎戸道也裁判官山田真紀(別紙)物件目録1写真1写真2写真3写真4写真5物件目録2写真1写真2写真3写真4写真5物件目録3写真1写真2写真3写真4写真5

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る