平成15(行ウ)24 違法公金支出損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年2月9日 那覇地方裁判所
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判決文本文16,456 文字)

平成15年(行ウ)第24号違法公金支出損害賠償請求事件判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告は,仲宗根正和(以下「仲宗根」という。)に対し,1383万7089円の損害賠償を請求せよ。 第2 事案の概要本件は,沖縄市の住民である原告らにおいて,遊園施設「沖縄こどもの国」(以下「こどもの国」という。)を経営管理する財団法人沖縄こどもの国(以下「沖縄こどもの国」という。)が被告からこどもの国の運営育成補助のために交付を受けた補助金が,当該補助金の交付目的に反し,杜撰な運営計画により開設後短期間で閉鎖された「ノンタン工房」に関する負債1383万7089円の弁済に充てられたことから,沖縄市長である仲宗根は,沖縄こどもの国に対し当該金員の返還を求めるべきであったのに,同人がこれを怠った結果,沖縄市に同額の損害を与えたとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,沖縄市の執行機関である被告に対し,仲宗根個人に対する損害賠償請求をするよう求めたものである。 1 前提事実(証拠掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告らは,沖縄市の住民である。 被告は,沖縄市の執行機関たる市長である。 (2) 沖縄こどもの国の概要ア沖縄こどもの国は,昭和47年4月19日に設立された財団法人であり,動物園,水族館,爬虫類園等を中心とする遊園施設であるこどもの国を運営していた。 イ沖縄こどもの国は,沖縄県及び沖縄市から,敷地の無償貸与,施設整備・運営管理等のための財政支援を受け,その運営管 園,水族館,爬虫類園等を中心とする遊園施設であるこどもの国を運営していた。 イ沖縄こどもの国は,沖縄県及び沖縄市から,敷地の無償貸与,施設整備・運営管理等のための財政支援を受け,その運営管理費は,沖縄県及び沖縄市からの補助金等の財政支援金のほか,入園料,売店売上等の営業収入,寄付金等により賄われていた。また,財団設立時から沖縄市長及び助役が理事長及び副理事長に就任し,園長その他の職員も,同市職員が派遣されるなどしてきた。(甲2)ウ沖縄こどもの国は,平成15年3月に解散し,こどもの国の遊園施設等の資産,職員等は,新たに設立された財団法人沖縄こども未来ゾーンに引き継がれた。(甲2,証人A)(3) ノンタン工房の設置,閉鎖及び赤字の発生ア被告は,平成12年3月1日付けで,Bとの間で,同人が著作し著作権を有する「ノンタン」(白い子猫をモチーフにした絵本キャラクターで,平成4年から平成6年にかけて民放でアニメーション化もされており,幼児や小学生に人気があった。)に関し,要旨次のような契約を締結した(以下「使用承諾契約」という。)。 (ア) Bは,同人の著作によるノンタンのキャラクターを,同人の承認のもとに沖縄市が使用することを承諾する。 (イ) Bは,沖縄市の上記使用について,同市がこどもの国内に設置される「ノンタン工房」で代行させることを承諾するものとする。 (ウ) ノンタン工房は,沖縄こどもの国に管理運営させ,その経費も沖縄こどもの国に負担させるものとする。 イ被告は,上記アの契約をもとに,平成12年6月28日,沖縄こどもの国との間で,要旨次のような契約を締結した(以下「代行使用許諾契約」という。)。 (ア) 被告は,被告の使用契約しているノンタンキャラクター使用を,沖縄こどもの国が代行使用することを承諾する。 もの国との間で,要旨次のような契約を締結した(以下「代行使用許諾契約」という。)。 (ア) 被告は,被告の使用契約しているノンタンキャラクター使用を,沖縄こどもの国が代行使用することを承諾する。 (イ) 被告は,上記(ア)の使用場所を,沖縄こどもの国が所有する旧レストハウス建物内に設置されるノンタン工房とすることを承諾する。 (ウ) ノンタン工房は,沖縄こどもの国が管理運営し,その経費は沖縄こどもの国の負担とするが,ノンタン工房の売上で経費を補えない場合は,被告の支援を要請することができる。((ウ)について甲1)ウ沖縄こどもの国は,平成12年4月,こどもの国の園内にノンタン工房を開設し,ノンタンのキャラクター商品等の販売を行っていた。しかし,経営不振,事業計画の頓挫等の理由により,ノンタン工房は,同年9月に閉鎖された。 エノンタン工房に係る売上及び経費は,平成12年度(同年4月1日から平成13年3月31日まで)の決算において,売上249万6396円は預り金として,経費1674万5100円は仮払金として,それぞれ計上され,平成13年度(同年4月1日から平成14年3月31日まで)の決算において,平成12年度から繰り越した上記仮払金のうち,備品パソコン1台36万2775円及び電話加入権4万8840円が経費として計上されたため,仮払金の残高が1633万3485円となり,結局,ノンタン工房に係る収支は,1383万7089円の赤字となった(上記1633万3485円からノンタン商品売上249万6396円を引いたもの。以下,当該赤字を「本件負債」という。)。(甲7,8)(4) 本件補助金の交付被告は,仲宗根が理事長を務める沖縄こどもの国に対し,平成14年度運営育成補助金として,同年4月25日に1億円,同年10月25日に6169万円の合計 。)。(甲7,8)(4) 本件補助金の交付被告は,仲宗根が理事長を務める沖縄こどもの国に対し,平成14年度運営育成補助金として,同年4月25日に1億円,同年10月25日に6169万円の合計1億6169万円を,沖縄市議会の議決を経て,同市の公金から交付した(以下,当該補助金を「本件補助金」という。)。 (5) 沖縄こどもの国は,平成14年度(同年4月1日から平成15年3月31日まで)の補正予算及び決算において,本件負債に充当する財源が確保できたとして,預り金249万6396円を歳入に,仮払金1633万3485円を歳出に計上処理し,本件負債の処理を終了させた。(甲1) 2 争点被告が,沖縄こどもの国に対し,本件補助金の返還請求権を有しており,かつ,仲宗根がこれを行使しないことが違法であるか否か。 (原告らの主張)(1) 沖縄こどもの国は,本件補助金のうち1383万7089円を本件負債に充当した。 しかしながら,本件補助金は,沖縄こどもの国の本来の運営育成補助金として交付されたものであり,ノンタン工房の運営及び債務処理に充てることは認められない。 したがって,被告は,沖縄こどもの国に対し,本件補助金のうち本件負債に充当した1383万7089円の返還を求めるべき義務があった。 (2) 被告が沖縄こどもの国に対し上記補助金の返還を求めるべき法的根拠は,以下のとおりである。 ア本件補助金は,要旨次のような沖縄市補助金交付規程(以下「補助金交付規程」という。)に基づいて支出されている。 第1条市長は,本市の産業,経済,文化等の発展及び市民の福利増進に資するため,団体及び組合の育成指導奨励等事業に要する経費に対し,公益上必要がある場合においてこの規程により,毎年度予算の範囲内において補助 市長は,本市の産業,経済,文化等の発展及び市民の福利増進に資するため,団体及び組合の育成指導奨励等事業に要する経費に対し,公益上必要がある場合においてこの規程により,毎年度予算の範囲内において補助金を交付する。 第5条市長は,補助金を交付した団体に対し,当該事業又は補助金の使途に関し,必要な指示をなすことができる。 2 交付金は,交付の対象となった経費以外に使用してはならない。 第6条補助金の交付を受けた団体は,当該事業年度の事業経過報告及び収支決算書を翌年5月末までに,市長に提出しなければならない。 第7条市長は,次の各号の一に該当するときは,補助金の全部又は一部を交付せず又はその返還を命ずることができる。 (1) 当該団体がこの規定に基づく指示に従わないとき。 (2) 当該団体の事業成績が良好でないとき。 (3) 収支決算額が収支予算額に比し,著しく減少したとき。 (4) その他不正の行為があると認めたとき。 イ杜撰な事業計画沖縄こどもの国が計画したノンタン工房の事業は,杜撰な計画であったためにわずか4か月で閉鎖された。このことは,補助金交付規程7条2号に該当する。 ウ不正収支操作沖縄こどもの国は,平成12年9月30日にノンタン工房を閉鎖したが,その時点でノンタン工房は1383万7089円の赤字であった。 沖縄こどもの国の理事会は,ノンタン工房の収支を,平成12年度及び平成13年度の収支決算書に計上すべきであったにもかかわらず,それを計上すると平成13年度及び平成14年度の補助金交付について,沖縄市議会での承認が得られないおそれが極めて大きかったので,ノンタン工房の収支を「仮払い」という不明な項目で隠 たにもかかわらず,それを計上すると平成13年度及び平成14年度の補助金交付について,沖縄市議会での承認が得られないおそれが極めて大きかったので,ノンタン工房の収支を「仮払い」という不明な項目で隠ぺいし,平成14年度の補助金交付申請の積算には含めずに補助金の申請をした。その際,沖縄こどもの国は,平成14年度の当初予算において,同年度入園見込み数を4万3000人と意図的に過少に見積もっていた。 その後,沖縄こどもの国は,平成14年9月19日開催の第112回理事会において,補助金交付申請時に予測入園者数を4万3000人としていたのを,実績見込み入園者数として4万9500人増の9万2500人に修正して,予算補正を行い,その増加分の収入をノンタン工房の赤字清算に充てた。すなわち,沖縄こどもの国の行為は,①意図的に,平成14年度の予測入園者数を4万3000人と過少見積りをして,被告から1億6169万円の補助金交付を受けたこと,②ノンタン工房の収支を平成12年度の決算収支に計上すべきところ仮払金として不当な会計処理をし,平成14年度の沖縄市からの補助金によって本件負債を処理したこと,の2点において,補助金交付規程7条4号に該当する。 (3) 上記のとおり,沖縄市長である仲宗根は,沖縄こどもの国に対し,本件補助金のうち本件負債に充当した1383万7089円の返還を求めるべきであるのに,これを怠り,沖縄市に同額の損害を与えたので,仲宗根は沖縄市に対してこれによる損害を賠償する責任を負う。 (被告の主張)(1) 原告らは,ノンタン工房の経営上の負債(本件負債)が,本件補助金で処理されたと主張するが,これは事実に反する。沖縄こどもの国は,ノンタン工房に関する本件負債1383万7089円を,自らの収入から充当したのであって,本件負債の処 の負債(本件負債)が,本件補助金で処理されたと主張するが,これは事実に反する。沖縄こどもの国は,ノンタン工房に関する本件負債1383万7089円を,自らの収入から充当したのであって,本件負債の処理のために本件補助金を充当,支出したことはない。 (2) 本件負債の発生及びその処理の経緯は次のとおりである。 アこどもの国の有料入園者数は,開園以来年間約25万人程度を維持していたが,平成11年度になって19万人台に減少し,その後も,12万人(平成12年度),11万人(平成14年度)と減少傾向にあった。その主たる原因は,動物園を含めた施設の老朽化,経済不況,沖縄県総合運動公園や倉敷ダム等の無料大型施設の整備拡充等と思われる。ノンタン工房は,平成11年度以降の入園者減少に歯止めをかけようと計画導入されたものであったが,予想に反して売上が伸びず,原告らの主張する負債(赤字)を出したところで閉鎖された。 イ沖縄こどもの国は,平成12年7月に,ノンタン工房関連の赤字補填のため,被告に補助金交付の要請を行い,同年8月ころ,沖縄市への支援要請の準備のため,経費1674万5000円を仮払金,売上高249万6000円を預り金とする経理処理を行った。被告は,沖縄こどもの国の上記要請を受けて,同年9月及び12月,平成13年2月の議会において,上記赤字補填のための補助金予算案の提出を検討したが,議会から補助金で支出するのは適切でないとの指摘を受け,いずれの予算案も審議する前に取り下げられた。以来,沖縄こどもの国は,被告に対して当該赤字補填のために補助金交付を要請することはせず,平成13年度の会計処理においても,本件負債について,仮払い等による経理処理を行った。かかる仮払いによる処理は,財団法人の会計処理上認められる正当なものである。 ウ沖縄 を要請することはせず,平成13年度の会計処理においても,本件負債について,仮払い等による経理処理を行った。かかる仮払いによる処理は,財団法人の会計処理上認められる正当なものである。 ウ沖縄こどもの国は,「こども未来ゾーン」(仮称)の施設建設工事のため,平成13年3月1日から平成14年5月に至るまで休園していたが,1年以上の休園に対する苦情と根強い開園要望があって,同年5月1日から一部開園したところ,「こどもの日」等の5月の連休期間中の一部開園であったにもかかわらず,予想を3倍も超える入園者を迎え入れることができた。ちなみに,その入園者数は,平成14年5月3日が8335人,同月4日が1万4511人,同月5日が1万7959人,同月6日が9774人の合計5万0579人となり,有料入園者数は3万0706人であった。 エ沖縄こどもの国は,平成14年7月10日開催の理事会において,「ノンタン工房の予算措置について」の議案を審議し,ノンタン工房関連の赤字1383万7089円を平成14年度の入園料及び営業収入等の歳入で充当することを決定し,この決定に従って同赤字を処理するに至った。 (3) 以上のとおり,沖縄こどもの国による本件負債の処理は適法であって,本件補助金の返還を求めるべき事由はないから,仲宗根に,原告らの主張するような損害賠償義務はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の1の事実に加えて,証拠(甲1~13,乙1~3,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 沖縄こどもの国の設立から解散までアこどもの国は,沖縄県の本土復帰以前,沖縄の子供たちに,楽しい遊び場と社会教育の場としての施設を提供する目的で,日本政府によって設立された特殊法人南方同胞援護会(以下「南方同胞援護 散までアこどもの国は,沖縄県の本土復帰以前,沖縄の子供たちに,楽しい遊び場と社会教育の場としての施設を提供する目的で,日本政府によって設立された特殊法人南方同胞援護会(以下「南方同胞援護会」という。)が設置し,昭和43年5月5日に仮開園した。その後,沖縄県の本土復帰に伴って南方同胞援護会が解散することになり,昭和47年4月19日に設立された沖縄こどもの国が,南方同胞援護会からこどもの国の遊園施設等の資産等を引き継ぎ,その運営する遊園であるこどもの国において,動物園,水族館,爬虫類園等の施設を運営することになった。 イ沖縄こどもの国は,その運営管理費を,入園料,売店・乗物の売上等の営業収入のほか,寄付金や,沖縄県及び沖縄市からの補助金等の財政支援により賄ってきており,昭和47年から平成14年までの間,沖縄県から合計10億6141万円,沖縄市から合計17億7215万円の財政支援を受けてきた。 ウこどもの国の有料入園者数は,昭和47年以降,平成2年の約49万6000人をピークとして,概ね25万人から35万人程度で推移してきたが,動物園を含めた施設自体の老朽化のほか,経済不況,沖縄県総合運動公園等他の無料大型施設の整備拡充などを要因として,平成9年ころから減少傾向となり,その概数は,平成9年が約24万6000人,平成10年が約21万8000人,平成11年が約19万4000人であり,平成13年3月1日から平成14年5月までの一時休園前の平成12年度には約12万1000人にまで減少した。なお,上記一時休園後の平成14年の有料入園者数は,約11万6000人であった。 エこどもの国は,「こども未来ゾーン」(仮称)の施設建設工事のため,平成13年3月1日から平成14年5月まで一時休園となった。同工事は,平成14年3月中に 数は,約11万6000人であった。 エこどもの国は,「こども未来ゾーン」(仮称)の施設建設工事のため,平成13年3月1日から平成14年5月まで一時休園となった。同工事は,平成14年3月中には完成予定であったが,計画通り進行しなかった。しかし,1年以上の長期にわたる休園への苦情と開園への根強い要望があったため,平成14年5月1日から動物園など一部施設のみで開園することになった。 沖縄こどもの国では,一部開園後の連休期間中の4日間(平成14年5月3日から同月6日まで)に1万5000人(1日平均3500人)の入園者数を見込んでいたが,実際は,総入園者数5万0579人,有料入園者数3万0706人と,その予想を大きく上回る入園者が来場した。その結果,5月1日から5月6日までの間の売上は約2367万円(入園料収入約1473万円,物販収入等約894万円)となった。 オ沖縄こどもの国は,平成15年3月に解散し,こどもの国の遊園施設等の資産,役職員等は,新たに設立された財団法人沖縄こども未来ゾーンに引き継がれた。 (2) ノンタン工房による赤字の発生アノンタン工房の開設から閉鎖まで上記(1)ウのような平成11年度以降の入園者数の減少に歯止めをかけ,沖縄こどもの国の経営難を解消する転機になればとの思いから,平成12年当時に沖縄こどもの国において計画,検討されたのがノンタン工房の開設であった。 ノンタン工房の開設に当たり,被告は,ノンタンの著作者であるBとの間で,ノンタンキャラクターの使用承諾契約を締結するとともに,沖縄こどもの国との間で,代行使用許諾契約を締結し,Bとの使用承諾契約により沖縄市が取得したノンタンキャラクターの使用権を,沖縄こどもの国に代行使用することを許諾した。 沖縄こども もに,沖縄こどもの国との間で,代行使用許諾契約を締結し,Bとの使用承諾契約により沖縄市が取得したノンタンキャラクターの使用権を,沖縄こどもの国に代行使用することを許諾した。 沖縄こどもの国は,平成12年4月15日,園内に「ノンタン工房」を開設し,その運営を開始したが,当初の予想に反して,グッズ販売等の売上が思いのほか伸びないという経営不振により,ノンタン工房運営のための人件費,仕入れ等の経費負担がグッズ販売等の売上を大幅に上回る事態となった。沖縄こどもの国では,ノンタン工房を開設するに当たり,ノンタン工房に関する事業について,グッズ販売等の売上により,ノンタン工房運営のための人件費,仕入れ等の経費を賄っていくという見通しを持っていたが,上記のような経営不振により,その見通しの実現が困難であることだけでなく,ノンタン工房の運営を継続した場合には,更に赤字が増加するおそれのあることも予想されたため,同年8月23日開催の第99回理事会において,ノンタン工房を同年9月30日で閉鎖することを決定した。 そして,ノンタン工房は,同日,開設から半年足らずで,その売上が249万6396円,経費が1674万5100円と,大幅な赤字を出すという結果を残して,閉鎖されることになった。 また,被告と沖縄こどもの国が交わした代行使用許諾契約契約は,平成12年10月18日に解除され,Bと被告との間の使用承諾契約も平成13年2月21日に解除された。 イノンタン工房に係る負債(赤字)処理の経緯(ア) 赤字補填のための補助金の交付申請とその取下げ沖縄こどもの国では,沖縄こどもの国と被告との間で締結した代行使用許諾契約において,「ノンタン工房は,沖縄こどもの国が管理運営し,その経費を負担するが,ノンタン工房の売上で経費を補えない場合 沖縄こどもの国では,沖縄こどもの国と被告との間で締結した代行使用許諾契約において,「ノンタン工房は,沖縄こどもの国が管理運営し,その経費を負担するが,ノンタン工房の売上で経費を補えない場合には,被告の支援を要請することができる」旨の約定があったことなどから,ノンタン工房に関する負債(赤字)を補填する方法として,被告に補助金の交付を申請し,その補助金により赤字を処理するという方法を検討していた。そこで,沖縄こどもの国は,ノンタン工房の閉鎖以前である平成12年7月17日,ノンタン工房の経費負担等に充てるための補助金増額要望書を被告に提出したが,同要望書による1億5000万円の補助金増額の要望は,議会の承認を得ることができずに認められなかった。さらに,被告は,沖縄こどもの国からの支援要請を踏まえ,平成12年9月17日,同年12月7日及び平成13年2月5日に,ノンタン工房の経費負担(赤字)を被告が交付する補助金により補填する旨の内容を含む補正予算案の議会提出を検討したが,沖縄市議会議員等から,沖縄市からの補助金により当該赤字を填補するのは適切でないなどの指摘を受けるなど,当該内容では議会の承認を得られる見通しが立たなかったことから,いずれの補正予算案も,議会の審議開始前に提出を取り下げることになった。 (イ) 平成12年度の会計処理上記のような経緯から,沖縄こどもの国では,ノンタン工房に係る負債を被告から補助金の交付を受けることにより補填することは困難であると考え,また,ノンタン工房の運営やこれに関する契約締結手続等に関して問題があるのではないかとの指摘を議会から受けたり,沖縄こどもの国に交付されている通常の運営育成補助金の一部がノンタン工房の経費として流用されているのではないかとの疑問が議会から出されるなどした て問題があるのではないかとの指摘を議会から受けたり,沖縄こどもの国に交付されている通常の運営育成補助金の一部がノンタン工房の経費として流用されているのではないかとの疑問が議会から出されるなどしたことから,ノンタン工房の売上及び経費並びにノンタン工房に係る負債(赤字)の処理を明確にするため,沖縄こどもの国の顧問公認会計士であるCに,その会計処理方法に関する助言を請うなどして,その会計処理方法を検討した。その結果,平成12年度(同年4月1日から平成13年3月31日まで)の決算報告書において,それらの売上及び経費を歳入及び歳出に計上することなく,それぞれ預り金及び仮払金として経理処理するとともに,その「計算書類に対する注記」欄において,「ノンタン工房について (1)当初予算で計上のノンタン工房の売上と経費分を第1回補正予算で削減し,工房売上249万6396円を預り金に,経費の1674万5100円を仮払金へ振替え計上している。(理由)沖縄市議会では,契約内容や手続き,また工房の運営の在り方について問題があるとのことで被告と沖縄こどもの国とのノンタンキャラクターの代行使用契約条項の中にあった「支援」を得ることができなかった。また,市議会では通常の運営費補助金から工房経費に流用しているのではないかとの指摘を受け,ノンタン工房の売上と経費分を予算より削減し,通常の運営費補助金から工房経費に流用していないことを証明する必要があるため。 (2)ノンタン工房の売上(預り金)と経費(仮払金)について,相殺後にその差額1424万8704円を今後の売上等の収入で補填する予定である」旨の記載をすることになった。 (ウ) 平成13年度の会計処理沖縄こどもの国は,平成13年度(同年4月1日から平成14年3月31日まで)の決算において,平成12年 する予定である」旨の記載をすることになった。 (ウ) 平成13年度の会計処理沖縄こどもの国は,平成13年度(同年4月1日から平成14年3月31日まで)の決算において,平成12年度から繰り越したノンタン工房の預り金(売上)249万6396円及び仮払金(経費)1674万5100円について,そのうち,仮払金(経費)で支出された備品のパソコン(1台)36万2775円及び電話加入権4万8840円を平成13年度の予算に経費として計上した。その結果,ノンタン工房の仮払金残高は,1633万3485円となった。 (エ) 平成14年度の会計処理沖縄こどもの国は,平成14年7月10日開催の第111回理事会において,ノンタン工房の予算措置について,「ノンタン工房事業に伴う商品売上及びノンタン工房に対する仮払金について,諸般の事情によりその予算措置ができなかったため,沖縄こどもの国の解散に向けて,平成14年度中に予算措置を行う必要があり,商品売上249万6396円を歳入に,仮払金の1633万3485円を歳出に計上する。収支差額1383万7089円の財源については,平成14年度の入園料収入及び営業収入等の歳入で充当する。なお,予算補正については,今後の収入状況を見ながら9月までには実施する」との決議がされた。 そして,その後の平成14年9月19日に開催された第112回理事会において,平成14年度の第1回補正予算(案)について,「5月1日のオープン以来当初の予想以上の入園者により,年間予想収入を達成することができたので,今後の収入見込み等の補正と,去る7月10日の理事会で議決したノンタン工房の経費処理について,予算の確保ができたので,ノンタン商品売上249万6396円を歳入に,仮払金の1633万3485円を歳出に計 後の収入見込み等の補正と,去る7月10日の理事会で議決したノンタン工房の経費処理について,予算の確保ができたので,ノンタン商品売上249万6396円を歳入に,仮払金の1633万3485円を歳出に計上処理する。なお,収支差額1383万7089円の財源については,平成14年度の入園料収入及び営業収入等の歳入で充当する。」との決議がされた。なお,平成14年度補正予算(案)において,入園料収入は3570万円,営業収入は3160万1000円とされている。 以上のような経緯を経て,ノンタン工房に係る売上及び経費は,平成14年度の歳入及び歳出にそれぞれ計上されることになり,本件負債は,平成14年度の予算及び決算において処理されることになった。 (3) 本件補助金の交付等ア平成14年3月の沖縄市議会予算委員会で,同市のD福祉部長は,沖縄こどもの国に対する補助金1億6169万円には,ノンタン工房の経費が含まれていないことを答弁した。 イ沖縄こどもの国は,被告から,平成14年度運営育成補助金として,同年4月25日に1億円,同年10月25日に6169万円の合計1億6169万円(本件補助金)の交付を受けた。本件補助金は,沖縄こどもの国が動物と子供たちとの交流や遊園施設の提供を通して,子供たちの健全な育成を図るための公共的使命を担ってきたものであることに鑑み,沖縄こどもの国の運営育成補助のために交付されているものである。 ウ沖縄こどもの国は,平成14年度の運営育成補助金(本件補助金)の交付申請に当たり,同年度の有料予測入園者数を4万3000人として申請をした。 沖縄こどもの国が上記のように入園者数を見込んだのは,「こども未来ゾーン」(仮称)の開園に向けた工事を行う中での動物園等一部施設のみの開園であり,例年のようなイベント 万3000人として申請をした。 沖縄こどもの国が上記のように入園者数を見込んだのは,「こども未来ゾーン」(仮称)の開園に向けた工事を行う中での動物園等一部施設のみの開園であり,例年のようなイベントの開催ができないこと,「こども未来ゾーン」の開園に向けた工事の実施により駐車場スペースも半分程度しか使用できない状況であったこと,休園前の平成12年度まで有料入園者数が減少傾向にあり同年度の有料入園者数も約12万1000人であったことに加えて,1年以上の休園期間を経た後の一部開園であったことなどの諸事情を勘案してのことであった。 エところが,平成14年5月1日の一部開園後の連休期間中,総入園者数が5万0579人,有料入園者数が3万0706人となるなど,沖縄こどもの国の当初予測(連休4日間で1万5000人)を大幅に上回る入園者が来場することになった。 このような事情を受けて,沖縄こどもの国は,平成14年9月19日開催の第112回理事会で決議した平成14年度の第1回補正予算(案)において,実績見込み入園者数を,本件補助金の交付申請時における予測入園者数(4万3000人)から4万9500人増加した9万2500人と増加修正することになった。 2 争点に対する判断(1) 原告らは,本件補助金は,沖縄こどもの国の本来の運営育成補助金として交付されたものであり,ノンタン工房の運営及び債務処理に充てることは認められないのに,沖縄こどもの国が,本件補助金のうち1383万7089円を本件負債に充当したことを前提として,前記第2の2(原告らの主張)(2)のとおり,①沖縄こどもの国によるノンタン工房に関する事業計画が杜撰であった,②沖縄こどもの国が不正な収支操作を行ったことを理由に,沖縄市長である仲宗根は,沖縄こどもの国に対し,本件補助金のう 2)のとおり,①沖縄こどもの国によるノンタン工房に関する事業計画が杜撰であった,②沖縄こどもの国が不正な収支操作を行ったことを理由に,沖縄市長である仲宗根は,沖縄こどもの国に対し,本件補助金のうち本件負債に充当された分の返還を求めるべきである旨主張する。 (2) そこで,そもそも,原告らが主張するように,本件補助金が本件負債の処理に充当されたと認められるのかどうかについて検討する。 この点,前記1の認定事実によれば,沖縄こどもの国では,平成12年度に発生したノンタン工房に係る負債(赤字)の処理について,被告から交付を受けている運営育成補助金の一部が同負債の処理のために流用されているのではないかとの疑問が沖縄市議会において出されるなどしたことから,本件負債の処理方法を明確にするために,顧問公認会計士の助言を得るなどした上で,平成14年度までの間は,ノンタン工房に関する売上及び経費を,預り金及び仮払金として経理処理をし,同年度において,歳入及び歳出に計上するという経理処理を行ったことが認められる。すなわち,沖縄こどもの国では,ノンタン工房に関する売上及び経費の処理について,当初,被告からこれを補填するための補助金の交付を受けて充てようと考えていたものの,沖縄市議会の承認を得られる見通しがつかなかったことから,平成12年度及び平成13年度の決算報告書において,歳入及び歳出に計上せずに,預り金及び仮払金として経理処理するとともに,「計算書類に対する注記」欄において,そのような経理処理をした理由を付記するという方法をとっており,そのような処理について,顧問公認会計士からも会計処理上問題ない旨の意見も受けているのである。 そして,かかる事実関係に照らすと,沖縄こどもの国では,ノンタン工房に関する売上及び経費並びにノンタン工房に 理について,顧問公認会計士からも会計処理上問題ない旨の意見も受けているのである。 そして,かかる事実関係に照らすと,沖縄こどもの国では,ノンタン工房に関する売上及び経費並びにノンタン工房に関する負債(本件負債)の処理方法を明確にするために,あえて平成12年度及び平成13年度の決算において預り金及び仮払金に計上し,平成14年度の決算において,歳入及び歳出に計上して処理するという方法をとったというべきであり,少なくとも,本件負債に関する会計処理をみる限り,本件補助金が本件負債の処理に充当されたような形跡は窺えない。また,上記仮払金処理にしても会計上特段違法というべき処理ではない。 かえって,前記認定事実によれば,ノンタン工房に関する負債(本件負債)の処理方法を巡って,沖縄市議会から,被告から交付を受ける補助金によりノンタン工房の赤字を補填するのは適当でないなどの意見が出されたり,通常の運営育成補助金からノンタン工房の運営経費への流用があるのではないかなどの疑問が出されるなどしており,沖縄こどもの国では,被告から交付を受ける補助金以外の原資により,本件負債を処理する必要があることを十分認識した上で,その方法を検討し,その結果,平成14年度の営業収入等により本件負債の処理を終了するに至ったのであって,沖縄こどもの国が本件負債の処理について細心の注意を払っていたという事情が認められるものである。 (3) したがって,そもそも,本件補助金が本件負債の処理に充当されたと認めることはできないから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの主張するように,補助金交付規程を根拠として,沖縄市長である仲宗根が,沖縄こどもの国に対して,本件補助金の全部又は一部の返還を求めることはできず,その返還を求めないことが補助金交付規程に違反すると 主張するように,補助金交付規程を根拠として,沖縄市長である仲宗根が,沖縄こどもの国に対して,本件補助金の全部又は一部の返還を求めることはできず,その返還を求めないことが補助金交付規程に違反するともいえない。 (4)アなお,原告らは,沖縄こどもの国が,意図的に平成14年度の予測入園者数を4万3000人と過少見積りをして,被告から1億6169万円という本件補助金の交付を受け,これを,仮払金として不当な会計処理をしていた本件負債に充当したかのような主張もしているので,念のため,この点についても検討する。 イ確かに,前記認定のとおり,沖縄こどもの国は,第112回理事会で決議した平成14年度の第1回補正予算案において,予測入園者数を4万9500人増加して9万2500人と増加修正しており,また,開園直後の平成14年5月の連休期間中の入園者数の事前予測については,実際に来園した入園者数をかなり下回る有料入園者数(実際の入園者数の半数程度)しか見積もっていなかったこと,平成14年度の実際の有料入園者数は約11万6000人であり,休園前の平成12年度の有料入園者数を下回ったものの,沖縄こどもの国において当初予測していた入園者数(4万3000人)だけでなく,補正予算案における修正後の予測入園者数(9万2500人)をも上回る実績となったことが認められ,これらの予測入園者数及び実際の入園者数の値を見る限り,沖縄こどもの国において当初予測していた入園者数が,実際の入園者数を相当程度下回るものであったことが認められる。 ウしかしながら,前記1で認定した事実によれば,沖縄こどもの国では,平成14年度の予測入園者数を見積もるに当たって,従前の入園者数の動向,特に,平成13年に閉園する直前の平成11年度,平成12年度の有料入園者数が減少傾向にあり た事実によれば,沖縄こどもの国では,平成14年度の予測入園者数を見積もるに当たって,従前の入園者数の動向,特に,平成13年に閉園する直前の平成11年度,平成12年度の有料入園者数が減少傾向にあり,平成12年度の有料入園者数は約12万1000人であったこと,平成14年度のこどもの国の開園が,「こども未来ゾーン」(仮称)の開園に向けた工事を実施する中で,駐車場が半分程度しか使用できない,広場でのイベント開催ができないなど施設の使用にも一部支障が出る状況における,動物園等の一部施設のみの開園であったこと,1年以上の休園期間を経た後の一部開園であったことなどの諸事情を考慮した上で,年度途中からの開園するこどもの国の有料入園者数を4万3000人と見積もったことが認められる。 このような事情に鑑みれば,結果的に見れば,沖縄こどもの国において,当初の予測入園者数を,実際の入園者数を大きく下回る数として見積もったと評価せざるを得ないものの,それまでの入園者数の減少傾向に加えて,新たな開園に向けた工事実施中の一部施設のみでの開園であったことなどの事情を踏まえて,上記認定のような予測入園者数の見積りを行ったとしても,沖縄こどもの国として無理からぬところがあり,他方,平成14年5月の一部開園による実際の入場者数を沖縄こどもの国において予測することが容易であったような事情は窺えない。そして,その他,本件全証拠によっても,沖縄こどもの国において,ノンタン工房に関する負債(本件負債)の処理に充てる原資として,沖縄市から補助金を必要以上に多額に受領するために,予測入園者数の過少見積りをして,本件補助金の交付申請をしたとの事情は窺えないから,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 (5)アまた,原告らは,沖縄こどもの国が計画したノンタ 測入園者数の過少見積りをして,本件補助金の交付申請をしたとの事情は窺えないから,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 (5)アまた,原告らは,沖縄こどもの国が計画したノンタン工房の事業は杜撰な計画であったためにわずか4か月で閉鎖されているが,このことは,補助金交付規程7条2号に該当する旨主張するので,この点についても付言しておく。 イ確かに,前記1のとおり,ノンタン工房に関する事業は,オープンからわずか5か月余りの期間で1000万円以上の赤字を出して閉鎖に至っており,また,ノンタン工房の開設からわずか3か月後には,沖縄こどもの国から被告に対して,ノンタン工房の経費負担等に充てるための補助金増額の要望を行っていることなど,ノンタン工房に関する事業の収支見通しなど事業の運営計画が十分に検討,吟味の上実施されたものであるとは必ずしもいい難い点があることは否定できない。 ウしかしながら,前記認定のとおり,そもそも,本件補助金は,沖縄こどもの国の運営育成を目的として交付された補助金であって,ノンタン工房に関する事業により生じた負債(本件負債)を処理する目的で交付された補助金ではなく,また実際に,本件負債の処理に充当されたとも認めるに足りない。そして,こどもの国は,沖縄県の本土復帰以前から,沖縄の子供たちに,楽しい遊び場と社会教育の場としての施設を提供する目的で設置された遊園施設であり,沖縄県の本土復帰後も,現在に至るまでの間,沖縄の子供たちに動物園,水族館,爬虫類園等を提供する公共性の高い施設であって,本件補助金も含めて被告から沖縄こどもの国に対して交付される運営育成補助金は,こどもの国が,上記のように動物と子供たちとの交流や遊園施設の提供を通して,子供たちの健全な育成を図るための公共的使命を担った施設で 含めて被告から沖縄こどもの国に対して交付される運営育成補助金は,こどもの国が,上記のように動物と子供たちとの交流や遊園施設の提供を通して,子供たちの健全な育成を図るための公共的使命を担った施設であるからこそ,その運営育成を補助する目的で交付されるものである。かかる本件補助金の性質,交付の目的等に鑑みれば,上記のようなノンタン工房に関する事業計画や収支見通しの甘さ,それによる短期間でのノンタン工房の閉鎖,1000万円を超える赤字の発生というノンタン工房に関する事業計画の頓挫,失敗という事実のみをもって,直ちに,補助金交付規程7条2号の「当該団体の事業成績が良好でないとき」に該当するとして,本件補助金の全額はもちろん,本件負債相当額についても,本件補助金の返還を命ずることは相当でないというべきである。 したがって,この点に関する原告らの主張も,採用することができない。 第4 結論以上の次第で,原告らの被告に対する本件請求は,いずれも理由がないこととなる。 よって,主文のとおり判決する。 那覇地方裁判所民事第1部裁判長裁判官西井和徒裁判官松本明敏裁判官岩崎慎

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