平成11刑(わ)3255 窃盗、電気通信事業法違反被告

裁判年月日・裁判所
平成14年4月30日 東京地方裁判所
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判決文本文15,205 文字)

平成一一年刑(わ)第三二五五号窃盗、電気通信事業法違反被告事件判決 主文 一被告人Aを懲役二年四月に、被告人Bを懲役一年八月に処する。 二被告人両名に対し、未決勾留日数中各五〇〇日を、それぞれその刑に算入する。 三被告人両名に対し、この裁判確定の日からいずれも五年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 四押収してある「加入者データ読出・結果出力画面」と題する文書三通(平成一二年押第三四二号の51ないし56)を被害者C株式会社に、「基本情報照会」と題する文書七通及び「料金基本情報」と題する文書一通の合計八通の文書(同号の57の二枚目ないし九枚目)を被害者D株式会社の承継人であるE株式会社にそれぞれ還付する。 五訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 六本件公訴事実のうち、電気通信事業者であるD株式会社の取扱中に係る通信の秘密を侵したとの点については、被告人両名は無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、電気通信事業者であるC株式会社のFセンターに勤務し、また、被告人Bは、電気通信事業者であるD株式会社のYセンタに勤務し、それぞれ電気通信事業に従事する者であり、いずれも革マル派に所属する者であるが、対立する中核派に所属する者らの電話情報を入手して同派の動向を調査することを企て、第一被告人両名は、ほか数名と共謀の上、平成九年一二月二四日午後零時一一分ころから同日午後零時一七分ころまでの間、東京都目黒区a町b丁目c番d号所在のD株式会社Z支店Yセンタ(所長G)の電話受付席において、被告人Bが、同所に設置されたD株式会社の顧客データを管理するコンピューターシステムの端末機から、Hら七名名義の加入電話合計七 c番d号所在のD株式会社Z支店Yセンタ(所長G)の電話受付席において、被告人Bが、同所に設置されたD株式会社の顧客データを管理するコンピューターシステムの端末機から、Hら七名名義の加入電話合計七台に関する電話番号、契約者氏名、設置場所、連絡先などを記録したデータ七件及びH名義の加入電話一台に関する電話料金の請求書送付先、支払状況などを記録したデータ一件をそれぞれ出力印字した上、右印字に係る所長G管理の「基本情報照会」と題する文書七通及び「料金基本情報」と題する文書一通の合計八通の文書(平成一二年押第三四二号の57の二枚目ないし九枚目)を窃取し、第二被告人Aは、ほか数名と共謀の上、一同日午後三時二七分ころから同日午後三時二八分ころまでの間、東京都中央区e、f丁目g番h号iビル新館j階所在のC株式会社Fセンター(所長I)の機械室において、被告人Aが、同所に設置された移動通信制御装置の端末機から、J名義一台、K名義二台、以上合計三台の携帯電話に関する通話中か否かの通話中情報や位置情報などを記録したデータ三件をそれぞれ出力印字した上、右印字に係る所長I管理の「加入者データ読出・結果出力画面」と題する文書三通(平成一二年押第三四二号の51ないし56)を窃取し、二前記日時場所において、C株式会社のFセンターに勤務する被告人Aが、前記のとおり、前記三台の携帯電話に関する通話中か否かの通話中情報や位置情報などを記録したデータ三件をそれぞれ出力したが、たまたまいずれの携帯電話も通話中でなかったため、前記データ三件のいずれにも電気通信事業者であるC株式会社の取扱中に係る通信の秘密に当たるものは含まれず、通信の秘密を侵すには至らなかったものである。 (違法収集証拠の主張について)弁護人は、検察官請求の本件各証拠物 るC株式会社の取扱中に係る通信の秘密に当たるものは含まれず、通信の秘密を侵すには至らなかったものである。 (違法収集証拠の主張について)弁護人は、検察官請求の本件各証拠物についてその押収手続には重大な違法があるから、その証拠能力は否定されるべきであり、ひいては犯罪の立証がないことになるから、被告人は無罪である旨主張する。 しかしながら、本件各証拠物がいずれも証拠能力を有することはさきの証拠採用決定において詳細に認定したとおりである。 (事実認定の補足説明)-窃盗の各公訴事実について被告人らは、窃盗の各公訴事実のいずれについても黙秘しているので、以下、判示のとおり、右各公訴事実について被告人両名を有罪と認定した理由について説明する。 一まず、D株式会社からの窃盗の事実(判示第一)に関する被告人Bの犯人性につき、関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。すなわち、 1 被告人Bは、昭和六三年三月にLを退職し、同年四月にD株式会社に入社し、平成九年一二月二四日時点においては、Z支店Yセンタに勤務していた。 2 D株式会社においては、電話番号、契約者名、電話の設置場所、連絡先、電話料金の請求書の送付先、電話料金の支払状況といった顧客データをCUSTOMという名称のコンピュータシステムによって管理していた。同システムにおいては、「基本情報照会」や「料金基本情報」という標題で、顧客データ中の特定の事項について出力し、印字することができる。なお、顧客データをフロッピーディスクに保存して持ち出すことはできないようにされていた。 3 平成一〇年一月七日から同月八日にかけて、警視庁公安部所属の警察官らが、革マル派の非公然アジトである東京都練馬区所在のkビルl号室を捜索したところ、八畳和室に敷かれた布団の上に「パラソ た。 3 平成一〇年一月七日から同月八日にかけて、警視庁公安部所属の警察官らが、革マル派の非公然アジトである東京都練馬区所在のkビルl号室を捜索したところ、八畳和室に敷かれた布団の上に「パラソル資料」と書かれた封筒(甲九)を発見し、これを差し押さえた。その中には、「加入者データ読出・結果出力画面」と題する二枚一組の文書三通(甲一〇ないし一五、以下、本件「加入者データ読出・結果出力画面」という。)のほか、「M」と記載されたメモ紙一枚、「基本情報照会」と題する文書七通(以下、本件「基本情報照会」という。)及び「料金基本情報」と題する文書一通(以下、本件「料金基本情報」という。)の合計九枚の紙片が一綴りとなった資料(甲一六)が入っていた。 4 本件「基本情報照会」七通は、各見出しの電話番号につき、その契約者名、設置場所、連絡先などを記載したものであり、体裁は、CUSTOMから印字されたものと同一である。そして、そのうちの一通の見出し欄には、前記のメモ紙に記載の「M」と同一と認められる「M」の電話番号が記載されており、これを先頭として、七通の間には、順次、前の「基本情報照会」の連絡先欄に記載の電話番号がその後ろの「基本情報照会」の見出し欄に記載の電話番号と一致するというつながりのあることが認められ、これによれば、メモ紙に記載の電話番号を出発点として「基本情報照会」を出力し、以後出力結果から新たな情報を得ながら順次出力を重ねていったことがうかがえる。 また、本件「料金基本情報」一通は、上記の「M」をその見出しの電話番号とするものであり、電話料金の請求書の送付先や支払状況などが記載されており、体裁は、やはりCUSTOMから印字されたものと同一である。 本件「基本情報照会」七通と本件「料金基本情報」一通には、そのいずれにも、右 話料金の請求書の送付先や支払状況などが記載されており、体裁は、やはりCUSTOMから印字されたものと同一である。 本件「基本情報照会」七通と本件「料金基本情報」一通には、そのいずれにも、右上に、平成九年一二月二四日午後零時一一分から一七分までの間の日時を意味すると認められる記載がある。 5 CUSTOMにおいては、どの端末からどのような情報にアクセスしたかが、監査ログとして記録されるシステムになっている。そこで、監査ログの中から、日時が平成九年一二月二四日、アクセス対象の電話番号が本件「基本情報照会」七通及び本件「料金基本情報」一通の各見出し欄に記載された電話番号という条件を満たすアクセスを検索すると、該当するアクセスがあることが判明した。これらのアクセスの日時は、前記七通の「基本情報照会」及び前記一通の「料金基本情報」のそれぞれに記載された日時とほぼ一致した。 そして、これらのアクセスは、いずれも、処理端末番号が「TK四一三二〇二」の端末から、ユーザーIDが「E二三〇二一五」、氏名コードも「E二三〇二一五」、操作者氏名が「料貸出七」の者によってなされたものであることが判明した。処理端末番号が「TK四一三二〇二」の端末は、D株式会社Z支店Yセンタにおいて電話料金に関する問い合わせや苦情を処理するいわゆる「五〇〇番電話受付」の業務を行なっていた派遣社員のNの席に設置されていた。同端末は、IDカードを差し込み、パスワードを打ち込むことにより作動するのであるが、前記ユーザーID及び氏名コードは、Nに貸し出されたIDカードに与えられたものであった。なお、同端末にはドットインパクト方式のプリンタが接続されていたところ、本件「基本情報照会」七通及び本件「料金基本情報」一通もすべてドットインパクト方式のプリンタにより打ち出され たものであった。なお、同端末にはドットインパクト方式のプリンタが接続されていたところ、本件「基本情報照会」七通及び本件「料金基本情報」一通もすべてドットインパクト方式のプリンタにより打ち出されたものであり、コピー機などによって複写されたものではない。 6 平成九年一二月二四日、派遣社員のNは午後零時から午後一時まで昼休みのため席をはずしており、処理端末番号「TK四一三二〇二」の端末を操作していなかった。その際、Nは、貸与されたIDカードを右端末に差したままにしていたので、誰でも右端末からCUSTOMにアクセスできる状態にあった。従前から、昼休みに五〇〇番電話受付を行う当番に当たっていたD株式会社の正社員が、CUSTOMにすぐにアクセスできる状態にある派遣社員の端末を操作して業務を行うことがあった。 同日午後零時から午後一時までの時間帯の五〇〇番電話受付の当番に当たっていたのは、被告人Bら六名のD株式会社正社員であった。前述のごとく、CUSTOMにアクセスすると、アクセスした者のユーザーIDが記録されるところ、右の時間帯において、被告人B以外の五名については、それぞれ自分に貸与されたユーザーIDを使用してCUSTOMにアクセスしていることが記録されているが、被告人Bについては、自分に貸与されたユーザーIDを使用してCUSTOMにアクセスした記録はなかった。他方、Nの席に設置された端末からは、本件「基本情報照会」及び本件「料金基本情報」以外にも複数回にわたるCUSTOMへのアクセスがあったことが記録されていた。 7 前記の九枚の紙片が一綴となった資料(甲一六)のうち、一枚目のメモ紙から被告人Bの掌紋が、九枚目の「基本情報照会」から被告人Bの指紋がそれぞれ検出された。 二以上の各事実に、後記三記載の被告人Bの革マル派との 紙片が一綴となった資料(甲一六)のうち、一枚目のメモ紙から被告人Bの掌紋が、九枚目の「基本情報照会」から被告人Bの指紋がそれぞれ検出された。 二以上の各事実に、後記三記載の被告人Bの革マル派との関わりを示す事実を併せ考慮すれば、本件「基本情報照会」七通及び本件「料金基本情報」一通は、被告人Bが、昼休み中、Nの席に座り、その席に設置された端末を使って、五〇〇番電話受付の当番の仕事を行いながら、CUSTOMにアクセスして出力印字し、その上でこれを窃取したものであると優に認定することができる。 三そこで、次に、被告人Aに関し、D株式会社からの窃盗事件についての犯人性とC株式会社からの窃盗事件についての犯人性とを一括して検討する。 関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。 1 被告人Aは、昭和六三年三月にLを退職し、同年四月にD株式会社に入社し、その後、平成八年三月C株式会社に入社し、平成九年一二月二四日の時点においては、東京都江東区所在のmビル内のFセンターにおいて交換サービス担当として勤務していた。 2 平成一一年一一月二日、被告人Aが勤務先で使用する机の引出しの中から、「前回の感想」と題する文章が記載されたノート(甲四一)が押収された。この文章中のKKとは、革マル派の創始者であるOのことを指すと認められ、この文章は、被告人AがOの思想についての学習会の感想を記載したものと認められる。そして、そのコピー(甲四五)が、同日、被告人Bの勤務先のロッカーから押収されている。 一方、被告人Bの勤務先のロッカーからは、表紙に「KJK」と記載のあるノート(甲四四)が押収された。同ノートには、「ON」名義の「前回の感想」と題する文章が手書きで書かれているが、この文章は、被告人Bが前記被告人Aが参加したのと同じ学習会の感想を記 K」と記載のあるノート(甲四四)が押収された。同ノートには、「ON」名義の「前回の感想」と題する文章が手書きで書かれているが、この文章は、被告人Bが前記被告人Aが参加したのと同じ学習会の感想を記載したものと認められる。そして、そのコピー(甲四〇)が被告人Aの勤務先の机の引出しから押収されている。 以上のほか、同日、被告人A及び被告人Bの各自宅から、機関紙などの革マル派に関する資料や書籍が多数押収された。 3 kビルから押収された連絡ノート等を分析すると、革マル派では、D株式会社ないしC株式会社内の革マル派活動家と革マル派非公然組織構成員との間の会議を「パラソル」という暗号名で呼んでいたことがうかがわれる。そして、kビルから押収された「スコア」と題するファイル帳(甲二七)には、一九九二年二月一一日(革マル派の非公然組織の文書については、実際の日付より五年三か月遡った日付が記載されている。したがって、一九九二年二月一一日の記載は、平成九年五月一一日を表す。以下、かっこ内に実際の日付を記載する。)欄、三月二九日(平成九年六月二九日)欄、四月二七日(平成九年七月二七日)欄、六月七日(平成九年九月七日)欄、七月一〇日(平成九年一〇月一〇日)欄に、それぞれ「パラソル」という言葉とともに、時刻や複数の革マル派構成員の名前などが記載されており、このことから、革マル派では、「パラソル」と呼ばれる会議を定期的に開催していたことが認められる。 4 被告人Bの自宅から押収された平成九年の手帳(甲五三)には、三月九日、四月一三日、五月一一日、六月二九日及び九月七日の欄に、「PRS」、「PS」あるいは「PR」との記載があり、これによれば、同人が「パラソル」と呼ばれる会議に定期的に出席していたことが認められる。 5 また、kビルから押収された 日及び九月七日の欄に、「PRS」、「PS」あるいは「PR」との記載があり、これによれば、同人が「パラソル」と呼ばれる会議に定期的に出席していたことが認められる。 5 また、kビルから押収された連絡ノート(甲一五五)の一一月一六日(平成九年二月一六日)欄には、「P 13:50 Qさんが親せきの葬式があってこれないというので来ていない。」「S 13:53 パラソルは主賓のQさんが欠席」という記載があるところ、被告人Aの親せきであるRは平成九年二月一四日に死亡し、平成九年二月一六日に葬式が行われ、被告人Aは、右葬式に出席しているとの事実が認められ、その他の関係証拠をも併せ考慮すると、Qとは被告人Aのことを指しており、被告人Aも「パラソル」と呼ばれる会議に定期的に出席していたことが認められる。 6 ところで、kビルから押収された連絡ノート(甲二六)の一九九二年三月二九日(平成九年六月二九日)欄には、「P パラソル(次回)七月二七日、一七時五〇分、ドラフトの位置を調べるコマンド、実験してみる、七月三日にQさんからドラフト借りて、七月四日に実験する、七月七日にドラフトを返す」との記載がある。「ドラフト」とは、携帯電話のことを表す暗号であると認められるので、これによれば、この日にパラソル会議が開かれたこと、次回は七月二七日に開催されること、携帯電話の発信位置を調べる実験をするために、七月三日に被告人Aから携帯電話を借りて、七月四日に実験をし、七月七日にその携帯電話を返すこととなっていることが認められる。そして、右の記載を受けて、一九九二年四月四日(平成九年七月四日)欄には、同日、革マル派の非公然組織構成員のSという者がQこと被告人Aと協力して携帯電話の発信位置を調べる実験をしたことが記載されていることが認められる。 7 また、kビルから 成九年七月四日)欄には、同日、革マル派の非公然組織構成員のSという者がQこと被告人Aと協力して携帯電話の発信位置を調べる実験をしたことが記載されていることが認められる。 7 また、kビルから押収された連絡ノート(甲二五)の一九九二年八月二九日(平成九年一一月二九日)欄には、「S 11:48、プロに頼む件、今連絡取れて、今日14:00に会うことにした」という記載があるところ、関係証拠を併せ考慮すると、「プロ」とはここでは被告人Aを表しており、右の記載は、盗聴によって知った中核派幹部のT使用の携帯電話Uの発信先の調査をC株式会社職員の被告人Aに依頼するため、連絡を取って会うことにしたとの趣旨であることが認められる。 8 そして、kビルからは、T使用の携帯電話UがV及びWの二つの携帯電話と通話した事実を記載した「課金監査情報」(甲二一)、右のWがさらにXと通話した事実を記載した「課金監査情報」(甲二三)、右三つの携帯電話の一二月五日から同月二五日までの所在エリアを一覧表形式で記載した用紙(甲二二)、右三つの携帯電話の一二月二四日の日における所在エリアに関するデータを記載した本件「加入者データ読出・結果出力画面」(甲一〇ないし一五)、右のXを出発点として芋づる式に新たな電話番号を調べていったことを示す本件「基本情報照会」七通、本件「料金基本情報」一通、以上の各証拠物が発見押収されている。また、被告人Bの窃取に係る本件「基本情報照会」七通と本件「料金基本情報」一通とをその一部として含む九枚綴りの資料(甲一六)の一枚目の「X」という記載のあるメモ紙からは、被告人Bの掌紋のほかに被告人Aの指紋が検出されている。 以上の各事実のほか、同じくkビルから押収された連絡ノート(甲二四)の一九九二年九月二八日(平成九年一二月二八日)欄の モ紙からは、被告人Bの掌紋のほかに被告人Aの指紋が検出されている。 以上の各事実のほか、同じくkビルから押収された連絡ノート(甲二四)の一九九二年九月二八日(平成九年一二月二八日)欄の「S、Qさんと別れた。(中略)天がかけたところ、これもTと同じエリアで動いている、これはY、Z、○○印刷に・・してる、芋ヅル式に4~5人のtelNOが分かった、自己mして調べている」などの記載、さらには、その他の関係証拠をも総合して検討するときは、右同日、革マル派非公然組織構成員は、Qすなわち被告人Aから、本件「基本情報照会」、本件「料金基本情報」、本件「加入者データ読出・結果出力画面」さらには所在エリアを示す一覧表(甲二二)を受け取ったとの事実を認めることができる。 9 ところで、C株式会社は、携帯電話に関する電話番号、留守番電話サービス用暗証番号、位置情報、通話中か否かの通話中情報などの加入者データをコンピューターシステムで管理していた。ある携帯電話に関する加入者データは、特定の収容局の特定の移動通信制御装置(MSCP)に保存されていた。もっとも、MSCPは、C株式会社が使用しているネットワークでつながれていたため、加入者データは、そのデータが収容されているMSCPからだけでなく、他のMSCPからでも、また、ネットワークに接続されている遠隔OP端末からでも出力することができた。ただし、MSCPからでなく遠隔OP端末から加入者データを出力する場合には、いったんどこかのMSCPに登録する必要があった。 10 加入者データは、「加入者データ読出・結果出力画面」という標題で出力し、印字することができる。その場合、「加入者データ読出・結果出力画面」という標題に続いて、「《PKeーK》」といった特定のMSCPを示す略号も印字されるようになって 結果出力画面」という標題で出力し、印字することができる。その場合、「加入者データ読出・結果出力画面」という標題に続いて、「《PKeーK》」といった特定のMSCPを示す略号も印字されるようになっていた。そこに印字されるのは、直接MSCPを操作して加入者データを出力した場合には、その操作したMSCPの略号であり、遠隔OP端末から加入者データを出力した場合には、その際に登録したMSCPの略号であった。 なお、加入者データは、フロッピーディスクに保存することはできないようになっていた。 11 kビルで押収された本件「加入者データ読出・結果出力画面」は、体裁及び記載項目が、C株式会社のコンピューターシステムで印字した「加入者データ読出・結果出力画面」と題する書面と同一である。そして、三通とも、標題に続いて「《PKeーK》」(iビルに設置されたK番目のMSCPを指す略号)の記載があり、出力の日時を示す欄には、平成九年一二月二四日の午後三時二七分から二八分までの日時が記載されている。また、六枚中の一枚(甲一三)の裏面にはアスタリスクなどが印字されており、一度使用した用紙を再利用したことがうかがえる。 12 当時、C株式会社では、用紙節約のため、一度使用した用紙を再利用していた。 13 本件「加入者データ読出・結果出力画面」(甲一〇ないし一五)のうち、甲一〇から被告人Aの指紋が検出された。また、甲一〇、一二及び一四には、いずれも「#移動機情報#」という大項目の中の「在圏RN」という項目の隣に手書きの書き込みがあるが、少なくとも甲一二の書き込みは、被告人Aの筆跡に似ていると認められる。 14 被告人Aは、故障修理や定期点検を行う交換サービス担当者としてセキュリティカードや暗証番号を与えられており、mビルのほかiビルにも自由に出入り みは、被告人Aの筆跡に似ていると認められる。 14 被告人Aは、故障修理や定期点検を行う交換サービス担当者としてセキュリティカードや暗証番号を与えられており、mビルのほかiビルにも自由に出入りできた。そして、被告人Aは、本件「加入者データ読出・結果出力画面」の出力日である平成九年一二月二四日の日は、プログラムの修正作業のためにiビルに出張していた。のみならず、三台の携帯電話の一二月五日から同月二五日までの所在エリアを一覧表形式で記載した用紙(甲二二)には、一二月二四日のほか、一二月五日深夜、同月六日未明、同月一三日未明及び早朝、同月一六日未明に調査した結果も記載され、一五日、一六日の調査結果のところには、手書きで「n」と記載されているところ、被告人Aは、同月五日深夜、同月六日未明、同月一三日未明及び早朝、同月一六日未明にいずれも深夜勤務についており、同月一五日及び一六日にはnに出張していた。 四以上の各事実を総合すると、第一に、被告人Aは、革マル派非公然組織構成員から中核派幹部の携帯電話につき発信先調査を依頼され、その延長線上のものとして、メモ紙に記載された加入電話の電話番号につき、同じ革マル派に所属し、「パラソル会議」と呼ばれる革マル派の定期連絡会議にも共に出席している間柄にあるD株式会社職員の被告人Bに調査を依頼し、被告人Bにおいては、その調査結果として、本件「基本情報照会」及び本件「料金基本情報」を被告人Aに渡し、被告人Aは、これらを革マル派非公然組織構成員に渡したとの事実を認めることができるのであって、これによれば、D株式会社からの窃盗について、被告人Aと実行犯である被告人Bとの間に共謀があったことは明らかである。第二に、被告人AがC株式会社からの窃盗について自らその実行行為に及んだものと優に認定することができるという らの窃盗について、被告人Aと実行犯である被告人Bとの間に共謀があったことは明らかである。第二に、被告人AがC株式会社からの窃盗について自らその実行行為に及んだものと優に認定することができるというべきである。 (一部無罪等の理由)-電気通信事業法違反の各公訴事実について電気通信事業法違反の各公訴事実のうち、D株式会社関係のものについて無罪を言い渡し、C株式会社関係のものについて未遂罪の成立を認めるにとどめた理由について以下説明する。 一電気通信事業法一〇四条にいう「通信の秘密」には、通信の内容のほか、通信当事者の住所・氏名・電話番号、発受信場所、通信の日時・時間・回数なども含まれると解すべきである。けだし、通信の秘密を保障する趣旨は個人のプライバシーの保護、ひいては個人の思想、表現の自由の保障を実効あらしめることにあるところ、通信の相手方の住所・氏名・電話番号などを人に知られることによっても、個人の思想、表現の自由が抑圧されるおそれがあるからである。 なお、例えば電話番号については、通信履歴(利用者が電気通信を利用した日時、当該通信の相手方その他の利用者の通信に係る情報であって通信内容以外のものをいう)や利用明細(利用者が電気通信を利用した日時、当該通信の着信先、これらに対応した課金情報その他利用者の電気通信に関する情報を記載した書面)におけるそれのように、個々の通信を取り扱った電気通信事業者のもとで、当該個々の通信に関係するものであることが分かる形で保管されている場合には、「通信の秘密」として保護されるが、電話番号情報(電気通信事業者が電話加入契約締結に伴い知り得た加入者名又は加入者が掲載、案内を希望する名称及びこれに対応した電話番号その他の加入者に関する情報をいう)におけるそれのように、個々の通信とは無関係に蓄積されたも が電話加入契約締結に伴い知り得た加入者名又は加入者が掲載、案内を希望する名称及びこれに対応した電話番号その他の加入者に関する情報をいう)におけるそれのように、個々の通信とは無関係に蓄積されたものである場合には、たとい電気通信事業者のもとで管理されていても、また、個人情報として保護する実際上の必要性の高いものであっても、「通信の秘密」の保護の対象外である。けだし、それは「『通信の』秘密」には当たらないからである。 二そこで、本件の電気通信事業法違反の各公訴事実について検討する。 1 D株式会社関係の電気通信事業法違反の公訴事実について公訴事実の要旨は、「C株式会社のFセンターに勤務する被告人A及びD株式会社のYセンタに勤務する被告人Bの両名は、ほか数名と共謀の上、電気通信事業者であるD株式会社のコンピューターシステムから、Hら七名名義の加入電話七台に関する契約者氏名、設置場所等を記録したデータ七件及びH名義の加入電話一台に関する料金支払情報を記録したデータ一件をそれぞれ出力し、これらを印字した「基本情報照会」と題する文書七通及び「料金基本情報」と題する文書一通の合計八通の文書を社外に持ち出し、もって、電気通信事業に従事する者が電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵した」というものである。 ここにおいては、「基本情報照会」という標題のデータと「料金基本情報」という標題のデータがそれぞれ「通信の秘密」に当たるとして主張されている。 しかしながら、関係証拠によれば、「基本情報照会」のデータは、特定の加入電話につき、契約者の氏名、電話番号、電話の設置場所、連絡先などの情報を、また、「料金基本情報」のデータは、特定の加入電話につき、電話料金の請求書の送付先や支払状況などに関する情報をそれぞれ記録しているところ、これらはいず 、電話番号、電話の設置場所、連絡先などの情報を、また、「料金基本情報」のデータは、特定の加入電話につき、電話料金の請求書の送付先や支払状況などに関する情報をそれぞれ記録しているところ、これらはいずれも、個々の通信とは無関係なものとして保管されている情報であり、「通信の秘密」には当たらない。したがって、これらの情報を不正に出力しても電気通信事業法一〇四条違反の罪は成立せず、被告人両名はこの公訴事実について無罪である。 なお、本件の七回にわたる「基本情報照会」出力行為のうち、最初のものについては、中核派に所属する者が使用していると目される携帯電話の「課金監査情報」を出力することにより、同電話から平成九年一二月一六日午後零時一一分ころに神奈川県相模原市内の加入電話に電話がかけられていたことをつかみ、その電話番号をもとにしてその契約者の氏名や連絡先を知るために行われたことがうかがわれるが、このことのゆえをもって、「基本情報照会」のデータにつき「通信の秘密」に当たるために必要な個々の通信との関係性の要件が具備されることにはならないというべきである。けだし、前述したように、個々の通信との関係性の要件が具備されるか否かは、当該情報の客観的保管状況いかんによって決せられるものであり、当該情報にアクセスする者のアクセスの動機いかんによって左右されるものではないからである。 以上の次第で、D株式会社関係の電気通信事業法違反の公訴事実については罪とならないことになるから、刑事訴訟法三三六条により被告人両名に対し無罪の言渡しをする。 2 C株式会社関係の電気通信事業法違反の公訴事実について公訴事実の要旨は、「C株式会社のFセンターに勤務する被告人Aは、ほか数名と共謀の上、電気通信事業者であるC株式会社の移動通信制御装置から、Jほか一名名 電気通信事業法違反の公訴事実について公訴事実の要旨は、「C株式会社のFセンターに勤務する被告人Aは、ほか数名と共謀の上、電気通信事業者であるC株式会社の移動通信制御装置から、Jほか一名名義の携帯電話合計三台に関する通話中か否かの通話中情報や位置情報を記録したデータ三件をそれぞれ出力し、これらを印字した「加入者データ読出・結果出力画面」と題する文書三通を社外に持ち出し、もって、電気通信事業に従事する者が電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵した」というものである。 ここにおいては、「加入者データ読出・結果出力画面」という標題のデータが「通信の秘密」に当たるとして主張されている。関係証拠によれば、この「加入者データ読出・結果出力画面」のデータは、特定の携帯電話(電話番号)につき、通話中か否かの通話中情報や位置情報や設定されている留守番電話サービス用暗証番号などを記録している。このうちの、例えば当該携帯電話(電話番号)につき設定されている留守番電話サービス用暗証番号については、個々の通信とは無関係なものとして保管されている情報であり、「通信の秘密」には当たらない。これに対し、例えば、位置情報は、もし現在通話中であれば、個々の通話(通信)の受発信場所を示すことになるから、「通信の秘密」に当たることになる。そして、データを出力する者としても、右の通話中情報によって現在通話中であることを認識することができるから、データ中に「通信の秘密」に当たるものが含まれていることを認識することができるわけである。 このようにして、「加入者データ読出・結果出力画面」を出力する行為は、通信の秘密を侵す危険性のある行為であり、電気通信事業法一〇四条所定の通信の秘密を侵す罪の実行行為に該当する行為といえる(なお、データの出力行為があれば、 ータ読出・結果出力画面」を出力する行為は、通信の秘密を侵す危険性のある行為であり、電気通信事業法一〇四条所定の通信の秘密を侵す罪の実行行為に該当する行為といえる(なお、データの出力行為があれば、その後の印字行為や印字された書類の持ち出し行為をまたずして実行行為は完了するものと解される。)。 しかしながら、関係証拠によれば、本件において「加入者データ読出・結果出力画面」のデータ三件をそれぞれ出力した際、たまたまいずれの携帯電話も通話中でなかったため、前記データ三件のいずれにもC株式会社の取扱中に係る通信の秘密に当たるものは含まれず、結果として、通信の秘密は侵されなかったのであり、未遂罪が成立するにとどまる。 (量刑の理由)本件は、C株式会社の職員である被告人AとD株式会社の職員である被告人Bの両名が、ほか数名と共謀の上、D株式会社のコンピューターシステムから出力印字した顧客データ書類を窃取したという窃盗(判示第一)と、被告人Aが、ほか数名と共謀の上、C株式会社の移動通信制御装置から携帯電話データを出力したが、たまたま通話中でなかったため、通信の秘密に当たるものが含まれず、通信の秘密を侵すに至らなかったという電気通信事業法違反(判示第二の二)及び右出力に係る携帯電話データを印字した書類を窃取したという窃盗(判示第二の一)の事案であり、いずれの犯行も自己が属する革マル派と対立関係にある中核派に属する者らの動向を調査することを目的として行われたものである。 ところで、電気通信事業者が保有する個人情報の中には、通信の秘密や通信の秘密には当たらなくとも位置情報のように高度のプライバシー性を有する情報が含まれている。また、電気通信事業者は、個人特定の鍵となる電話番号情報等を個人に付与し、データベースに蓄積している。このような電気通信事業 らなくとも位置情報のように高度のプライバシー性を有する情報が含まれている。また、電気通信事業者は、個人特定の鍵となる電話番号情報等を個人に付与し、データベースに蓄積している。このような電気通信事業の特殊性にかんがみ、さらにはその公共性にも照らすときは、電気通信事業者の保有する個人情報についてその保護が図られることに対する国民の期待には大なるものがある。 しかるに、被告人両名は、いずれも電気通信事業に従事する者として現代の情報化社会における電気通信分野の個人情報の保護の必要性を十分認識しながら、個人情報にアクセスできるその立場を悪用して本件犯行に及び、D株式会社あるいはC株式会社の信用を著しく失墜させたものである。のみならず、本件犯行の政治的背景や組織犯罪的性格にかんがみると、本件犯行が国民の間に不安感ないし薄気味の悪さを醸成し、電気通信業務一般の適正な運用に対する国民の信頼を傷つけたであろうことは明らかである。さらには、被告人両名はいずれも捜査・公判を通じ一貫して黙秘の態度を貫き、反省の情がうかがわれないこと、被告人Aは、本件以外にも何回かにわたってC株式会社の内部資料を利用した調査活動を行っていたことがうかがわれ、本件各犯行はその一環をなすものであって、犯情は悪質であること、被告人Bは、自己の犯行であることが発覚しにくいようにするため、他人のIDカードを利用して本件犯行に及んでおり、犯行態様は巧妙であることなどの諸事情に照らすと、被告人両名の刑事責任は重いというべきである。 しかしながら他方、被告人両名につき、D株式会社に関する電気通信事業法違反は成立せず無罪であること、被告人Aにつき、C株式会社に関する電気通信事業法違反は未遂にとどまること、被告人両名につき、本件の被疑者として新聞各紙で報じられたことにより社会的制裁を受けたこ 業法違反は成立せず無罪であること、被告人Aにつき、C株式会社に関する電気通信事業法違反は未遂にとどまること、被告人両名につき、本件の被疑者として新聞各紙で報じられたことにより社会的制裁を受けたこと、起訴後、保釈されるまで七〇〇日間以上の長期間にわたって勾留され実質的な制裁を受けたこと、当然の報いとはいえ、本件の有罪判決によりC株式会社あるいはD株式会社を解雇されることになること、これまで前科前歴がないこと、被告人Aにつき実母が、被告人Bにつき実兄が、それぞれ当公判廷に証人として出廷し、被告人らに対して今後とも援助し協力することを誓約していることなど、被告人両名のために斟酌すべき事情も認められる。 以上のほか、本件犯行の実質は電気通信事業に従事する者による電気通信分野における個人情報の漏えいであるところ、その種の個人情報の核心部分である通信の秘密を侵す罪の本件犯行当時の法定刑の上限は懲役二年であったことや、D株式会社法一九条違反(収賄罪)を含めた類似事犯についての量刑傾向などをも考慮して、主文のとおり量刑した。 (検察官中島行博及び同是木誠並びに主任弁護人町田正男、副主任弁護人水永誠二、弁護人渡辺千古及び同西澤圭助各出席)(求刑被告人Aにつき懲役四年及び被告人Bにつき懲役三年)平成一四年四月三〇日東京地方裁判所刑事第三部裁判長裁判官川口政明裁判官加藤学裁判官宮崎かなえ 宮崎かなえ

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