平成29年6月22日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(ワ)第37209号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年4月20日判決 原告株式会社第一ホテル 原告有限会社ラフィーネ 上記両名訴訟代理人弁護士牧山美香同訴訟代理人弁理士佐藤英昭 被告株式会社ボディワークホールディングス 同訴訟代理人弁護士森一生同訴訟代理人弁理士岡村信一 主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,アロマオイルを用いた美容施術の営業上の活動及び営業表示(看板,パンフレット,広告物その他)について,別紙被告表示目録1~3記載の各表示(以下「被告各表示」と総称する。)を使用してはならない。 2 被告は,アロマオイルを用いた美容施術の営業上の活動及び営業表示(看板,パンフレット,広告物その他)から被告各表示を抹消せよ。 3 被告は,原告らに対し,それぞれ50万円及びこれに対する平成28年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,「アロマテラピーサロンラフィーネ」(以下「原告ら表示」という。)の表示を使用してアロマテラピーサロンの運営等を行っている原告らが,被告各表示を使用してリラクゼーション業務を行っている被告に対し,原告ら表示は周知の商品等表示であり,被告がアロマオイルを用いた施術に 表示を使用してアロマテラピーサロンの運営等を行っている原告らが,被告各表示を使用してリラクゼーション業務を行っている被告に対し,原告ら表示は周知の商品等表示であり,被告がアロマオイルを用いた施術に原告ら表示と類似する被告各表示を使用することは不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当すると主張して,同法3条1項及び2項に基づき被告各表示の使用の差止め及び抹消を求めるとともに,同法4条及び5条2項に基づき原告らそれぞれにつき損害金各50万円(一部請求)並びに訴状送達の日の翌日である平成28年11月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 当事者等ア原告株式会社第一ホテル(以下「原告第一ホテル」という。)は,温泉旅館業等を目的とする株式会社であり,北海道河東郡A町Bにおいて甲ホテル及び同ホテルの別館乙(以下「乙」という。)を運営している。 イ原告有限会社ラフィーネ(以下「原告ラフィーネ」という。)は,アロマテラピー店の経営等を目的とする有限会社である。 ウ被告は,リラクゼーション業等を目的とする株式会社である。 原告らの営業等ア原告第一ホテルは,平成13年2月に甲ホテルに「アロマテラピーサロ ンラフィーネ」(以下「原告らサロン甲ホテル店」という。)を,平成16年1月に乙に「アロマテラピーサロンラフィーネ乙店」(以下「原告らサロン乙店」という。)をそれぞれ開設し,いずれもその頃上記各店舗におけるアロマテラピーの提供を開始した。(甲1~3)イ原告第一ホテルは,平成18年9月頃,株式会社丙ホテルとの間の業務委託契約 乙店」という。)をそれぞれ開設し,いずれもその頃上記各店舗におけるアロマテラピーの提供を開始した。(甲1~3)イ原告第一ホテルは,平成18年9月頃,株式会社丙ホテルとの間の業務委託契約に基づき,同社が運営する北海道帯広市所在の丙ホテル内に「アロマテラピーサロンラフィーネ丙ホテル店」を開設し,アロマテラピーの提供を開始した。(甲6)ウ原告ラフィーネは,上記3店舗(以下「原告らサロン」と総称する。)の運営のための人材育成等を行っている(以下,原告らサロンに係る原告らの営業を「原告ら営業」という。)。 エ原告らは,原告ら営業を示すものとして原告ら表示を使用しており,原告第一ホテルは,原告ら表示を使用して情報誌に原告らサロンの広告を掲載するなどしている。(甲8~20,22) 被告の行為ア被告は,遅くとも平成22年頃までには,被告が経営するリラクゼーションサロン等において,被告各表示を使用し,アロマオイルを用いたマッサージの提供(以下「被告営業」という。)を開始した。 イ被告は全国にリラクゼーションサロン等を展開しているが,北海道では旭川,釧路,札幌,小樽,千歳及び苫小牧に店舗があるのみであり,十勝地方には店舗を設置していない。(乙8) 2 争点原告ら表示が不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に該当すること及び原告ら表示と被告各表示が要部を共通にしていることについては,当事者間に争いがない。したがって,争点は次の4点である。 原告ら表示の周知性 誤認混同のおそれの有無 被告各表示についての商標権に基づく正当使用権限の有無 原告らの損害額 3 争点に対する当事者の主張 争点 (原告ら表示の周知性)について(原告らの主張) 被告各表示についての商標権に基づく正当使用権限の有無 原告らの損害額 3 争点に対する当事者の主張 争点 (原告ら表示の周知性)について(原告らの主張)ア原告らサロン甲ホテル店は,アロマテラピー業界では知らない者のいない著名人のプロデュースに係るアロマテラピーサロンであり,平成13年2月の開業の際にはかなりの話題となり,地域の新聞に紹介された。 また,原告第一ホテルが運営する乙は,北海道内の数少ない高級旅館として雑誌や地方テレビ局の取材を多々受け,平成16年度のJTB全国最優秀旅館に選ばれるなどした。 原告らサロンは,平成16年にアロマテラピーに興味を持つ女性に圧倒的な人気を誇るフランス製アロマオイルの正規取次店となり,一般のアロマテラピーサロンとの明確な差別化に成功した。また,原告第一ホテルは,平成20年頃から,近隣の医療機関等による業務提携の申出や講演依頼等に応じ,業務提携やアロマテラピーのセミナーを実施している。 イ原告ら表示を使用した原告ら営業は,上記のような話題性並びに原告らによる営業努力及び宣伝広告活動の結果,多数のメディアに取材され,雑誌,テレビ,書籍等において紹介されている。特に,雑誌「和楽」の平成21年1月号では,美容ジャーナリストが選ぶ名湯番付の1位に乙が選ばれ,原告らサロン乙店が大々的に紹介されるに至っている。 このように,原告ら表示は,アロマオイルを用いた美容施術の分野において,北海道地方のみならず広く全国に知れ渡ることとなり,遅くとも平成21年頃までに,アロマテラピーサロンの需要者,特に美容やア ロマテラピー等に興味を持つ女性の間で広く認識されるに至っている。 (被告の主張)原告らサロンの広告が掲載 とも平成21年頃までに,アロマテラピーサロンの需要者,特に美容やア ロマテラピー等に興味を持つ女性の間で広く認識されるに至っている。 (被告の主張)原告らサロンの広告が掲載されたのは十勝地方の生活情報誌である。雑誌「和楽」でも,原告ら表示は本文中ではなく施設情報及び写真の欄外において触れられているにすぎない。これらの事情に照らせば,原告ら表示は,原告らサロンの所在するA町や帯広市及びその近隣地域以外の需要者に広く知られていたものとは到底認められない。 争点 (誤認混同のおそれの有無)について(原告らの主張)被告各表示は原告ら表示と類似しており,原告ら表示は前記のとおり周知なものであるところ,原告ら営業と被告営業は同一又は類似する役務の提供に係るものであるから,これらの表示に接した需要者は被告営業を原告ら営業と混同するおそれがある。 (被告の主張)原告ら表示に周知性がないことは上記のとおりである一方,被告は被告各表示等を使用して全国で約500もの店舗を運営しており,被告各表示が全国的に周知であることは明らかであるから,原告ら営業と被告営業に混同のおそれがあるとすれば,それは被告各表示が周知であることに起因するものである。 争点 (被告各表示についての商標権に基づく正当使用権限の有無)について(被告の主張)被告は,「Raffine」の文字と「ラフィネ」の文字とを二段に横書きしてなる標章等の「Raffine」,「ラフィネ」の文字を含む標章や「GrandRaffine」の文字を含む標章につき商標権を有している。被告は,被告各表示につき正当な使用権限を有するから,被告 各表示の使用は特段の事情がある場合を除き不正競争に該当しない。 (原告らの主張) 」の文字を含む標章につき商標権を有している。被告は,被告各表示につき正当な使用権限を有するから,被告 各表示の使用は特段の事情がある場合を除き不正競争に該当しない。 (原告らの主張)争う。 争点 (原告らの損害額)について(原告らの主張)被告が,平成22年1月から5年半の間に,被告各表示を使用してアロマオイルを用いた美容施術を行った顧客の数は1万人であり,売上げは一人あたり5000円である。そして,アロマオイルを用いた美容施術の平均的な利益率は50%であるから,原告らは,少なくとも2500万円の損害を被っている(不正競争防止法5条2項)。したがって,原告らはその一部として,原告ら各自につき50万円ずつの支払を求める。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告ら表示の周知性)について 証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア平成13年2月5日付けの十勝毎日新聞に,原告らサロン甲ホテル店の開設を紹介する記事が掲載された。(甲1)イ原告第一ホテルは,平成18年から平成21年までの間に,帯広市内の医療機関との間の業務提携契約に基づき,同医療機関の患者に対してアロマテラピーを紹介したり,アロマテラピーの施術を行ったりした。また,平成20年及び平成21年には,同市内の専門学校等において,原告ら表示を使用してアロマテラピーに関するセミナーを実施した。(甲25~34)ウ原告らは,平成20年2月から平成24年5月までの間に,十勝地方で配布されている無料の生活情報誌「月刊旬(しゅん)」の主に広告のみが 掲載される頁に合計13回にわたり原告らサロンの広告を掲載した。上記生活情報誌における原告らサロンの広告は,1頁分のスペース内に他 ている無料の生活情報誌「月刊旬(しゅん)」の主に広告のみが 掲載される頁に合計13回にわたり原告らサロンの広告を掲載した。上記生活情報誌における原告らサロンの広告は,1頁分のスペース内に他の美容サロン等の広告とともに掲載されており,その掲載スペースは大きいものでも半頁分程度であった。上記生活情報誌の発行部数は約12万6600部で,帯広市内やA地区等に約9万部が配布され,その他は他の十勝地方に配布されるなどしていた。(甲8~20,乙4)エ全国誌である雑誌「和楽」平成21年2月号には,原告第一ホテルが運営する乙の記事が2頁にわたり掲載された。同記事の本文は,専ら乙に設けられている温泉の入浴効果等を紹介するものであり,記事の本文の横に記事本文より小さな活字で,乙の所在地や宿泊料金,アクセス方法等に関する記載とともに,「アロマテラピーサロンラフィーネ」という名称,その受付時間及び料金といった原告らサロン乙店に関する記載がある。また,同記事の2頁目では,乙の館内等を紹介する写真5枚のうちの1枚に同サロンの写真が使用され,同サロンのプロデューサー等に関する説明が付されている。その写真及び説明中に原告ら表示はない。(甲21)オ十勝地方で配布されている無料の生活情報誌「Chai」(発行部数約13万5700部)の平成28年4月号に,原告らサロンのプロデューサーと地域の医療機関の院長との対談及び原告らサロンの広告が掲載された。 (甲22,乙5)カ平成28年8月1日の時点において,旅行会社JTBが運営する旅館及びホテルの予約サイト上には,乙のフォトギャラリーとして83枚の写真が掲載されている。そのうち2枚が原告らサロン乙に関する写真であり,1枚目の写真の下に「アロマテラピーサロン「ラフィーネ」」という文字が表示 予約サイト上には,乙のフォトギャラリーとして83枚の写真が掲載されている。そのうち2枚が原告らサロン乙に関する写真であり,1枚目の写真の下に「アロマテラピーサロン「ラフィーネ」」という文字が表示されている。(甲24の2) 原告らは,アロマテラピーサロンの需要者の間では原告ら表示が全国的に周知である旨主張する。 しかし,前記前提となる事実及び並びに前記の各認定事実によれば,原告ら営業が行われている範囲は帯広市及び帯広市に隣接するA町にとどまり,原告第一ホテルによるアロマテラピーに関する施術等の提供先やセミナーの実施先も帯広市内に所在するものであること,原告らサロン甲ホテル店の開業に関する記事は十勝地方の地方紙に掲載されたのみであること,原告らサロンに関する広告が掲載された媒体は十勝地方,その中でも帯広市及びA町に多く配布されている生活情報誌であり,全国的に配布されているものでないこと,原告らサロンに関する記事が全国誌に掲載されたのは1誌に1回であること,上記全国誌や旅行会社のウェブサイトにおける原告らサロンについての記載は付随的なものにすぎないことが明らかである。なお,原告らは,原告ら表示の周知性を基礎付ける事実として,原告らサロンのプロデューサーが著名であることや乙が多くの取材を受けたことなども主張しているが,これらは原告らサロンや原告ら表示の周知性に直ちに結びつくものではないから,この点に関する原告らの主張は失当である。 これらの事情に照らせば,原告ら表示は,十勝地方以外の地域のアロマテラピーサロンの利用者に広く知られていたとは認められない。そして,被告は全国に店舗を展開して営業を行っているものの,十勝地方においては営業を行っておらず(前記前提となる事実イ),十勝地方に店舗を設ける具体的な予定 者に広く知られていたとは認められない。そして,被告は全国に店舗を展開して営業を行っているものの,十勝地方においては営業を行っておらず(前記前提となる事実イ),十勝地方に店舗を設ける具体的な予定があるといった事情もうかがわれない。そうすると,原告ら表示が十勝地方において周知であるかについて検討するまでもなく,被告が原告らとの関係において不正競争防止法2条1項1号に該当する不正競争を行っているとは認められない。 2 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官林雅子 裁判官大下良仁
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