- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人私市大介の上告受理申立て理由(ただし、排除されたものを除く。)について 1 本件は、第1審判決別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)を所有する上告人が、大阪市長により決定され家屋課税台帳に登録された本件家屋の平成30年度の価格を不服として大阪市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ、これを棄却する決定(以下「本件審査決定」という。)を受けたため、被上告人を相手に、本件審査決定の取消しを求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ア地方税法は、家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を、当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(341条5号により適正な時価をいうものとされている。)で家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に登録されたもの(以下、これらの台帳に登録された価格を「登録価格」という。)とし(349条1項)、市町村長は、388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない(403条1項)旨を規定する。なお、平成30年度は上記の基準年度に当たる。 イ固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成30年総務省告示第229号による改正前のもの。以下「評価基準」という。)は、家屋の評価について、木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点1点当たりの価額令和5年(行ヒ)第177号固定資産価格審査決定取消請求事件令和7年2月17日第二小法廷判決 造家屋」という。)の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点1点当たりの価額令和5年(行ヒ)第177号固定資産価格審査決定取消請求事件令和7年2月17日第二小法廷判決- 2 -を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとし(第2章第1節一)、非木造家屋の評点数は、当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎として、これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとする(同章第3節一1)旨を定めている。評価基準は、非木造家屋の損耗の状況による減点補正率については、原則として経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。)によるものとし、経年減点補正率は、通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであって、非木造家屋の構造区分に従い、非木造家屋経年減点補正率基準表(別表第13。以下「本件基準表」という。)に示されている当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとする旨を定めている(同節五1⑴)。 本件基準表は、家屋の用途の別に従い、①鉄骨鉄筋コンクリート造(以下「SRC造」という。)及び鉄筋コンクリート造(以下「RC造」といい、SRC造と併せて「SRC造等」という。)、②煉瓦造、コンクリートブロック造及び石造、③鉄骨造(以下「S造」という。)(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)、④S造(骨格材の肉厚が3㎜を超え4㎜以下のもの)、⑤S造(骨格材の肉厚が3㎜以下のもの)の五つの構造別区分ごとに、それぞれ経過年数に応じた経年減点補正率を定めている。経年減点補正率は、いずれの構造別区分においても、一定の数値(0.2000)に達するまでは、経過年数の増加に伴い減少するが、上記数値に達した後は、経過年数が増加しても変わらないものとされている いる。経年減点補正率は、いずれの構造別区分においても、一定の数値(0.2000)に達するまでは、経過年数の増加に伴い減少するが、上記数値に達した後は、経過年数が増加しても変わらないものとされている(以下、本件基準表において経年減点補正率が上記数値に達する経過年数を「所定経過年数」という。)。 評価基準には、複数の構造により建築されている家屋(以下「複合構造家屋」という。)に本件基準表をどのように適用するかについての具体的な定めはない。 ⑵ 本件家屋は、平成2年2月19日に新築された地下2階、地上18階建ての非木造家屋であり、地下2階がRC造、地下1階及び地上1階がSRC造、地上2階から18階までがS造で構成されている。また、本件家屋の構造別の床面積割合- 3 -は、S造の部分が約87%、その余の部分(RC造又はSRC造の部分)が約13%である。 ⑶ 大阪市長は、平成30年3月26日、本件家屋の平成30年度の価格を24億7011万2000円(以下「本件登録価格」という。)と決定し、同月30日、これを家屋課税台帳に登録した。大阪市長が本件登録価格を決定するに当たり本件家屋に適用した経年減点補正率は、本件基準表の定める経年減点補正率のうち構造別区分をSRC造等とするもの(以下「SRC造等経年減点補正率」という。)である。 上告人は、平成30年7月1日、本件登録価格を不服として審査の申出をしたところ、大阪市固定資産評価審査委員会は、平成31年4月22日、これを棄却する決定(本件審査決定)をした。 3 所論は、複合構造家屋における経年減点補正率の適用につき、地下階又は低層階(以下、併せて「低層階」という。)を構成する構造のうち所定経過年数の最も長いものをその主たる構造として、当該構造に応じた経年減点補正率を適用する方法(以下「低層階方 の適用につき、地下階又は低層階(以下、併せて「低層階」という。)を構成する構造のうち所定経過年数の最も長いものをその主たる構造として、当該構造に応じた経年減点補正率を適用する方法(以下「低層階方式」という。)は合理性を欠くから、本件家屋に低層階方式に従って求められたSRC造等経年減点補正率を適用して決定された本件登録価格が、評価基準によって決定されたものといえるとした原審の判断には、評価基準の解釈適用の誤りがあるというものである。 4⑴ 家屋の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には、その登録価格の決定は違法となるところ(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)、評価基準は、非木造家屋の評価に当たり適用すべき経年減点補正率につき、当該非木造家屋の構造区分に従い、本件基準表に示されている当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとするが、非木造家屋が複合構造家屋である場合に適用すべき経年減点補正率の具体的な求め方を定めていない。 ⑵ そこで、本件登録価格の決定に当たり、複合構造家屋である本件家屋にSR- 4 -C造等経年減点補正率を適用したことが評価基準に反するか否かについて検討すると、本件基準表の定める経年減点補正率は、通常の維持管理を行うものとした場合においてその年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定められたものであり、非木造家屋の構造区分に応じた、構造耐力の減少や損傷による劣化等の物理的要因により定まる耐用年数(家屋が使用に耐えなくなるまでの年数をいう。以下同じ。)を基礎として、機能的要因や経済的要因により定まる耐用年数などをも考慮して定められたものと解される。 ⑶ 前記事実関係等によれば、本件家屋は、地下2 用に耐えなくなるまでの年数をいう。以下同じ。)を基礎として、機能的要因や経済的要因により定まる耐用年数などをも考慮して定められたものと解される。 ⑶ 前記事実関係等によれば、本件家屋は、地下2階、地上18階建ての非木造家屋であり、地下2階がRC造、地下1階及び地上1階がSRC造、地上2階から18階までがS造で構成され、構造別の床面積割合は、S造の部分が約87%、その余の部分が約13%であるところ、このような複合構造家屋であっても、使用に耐えなくなったものとしてこれを取り壊すかどうかについては、基本的に一棟単位で判断されることになるものと考えられる。 そして、家屋に作用する荷重や外力が、最終的には低層階を構成する構造によって負担されることになることからすれば、上記のような構造の本件家屋については、その低層階を構成する構造の耐用年数が経過しない限り、その余の構造の部分の補修等によってなおその建物としての効用の維持を図ることができるものと考えられるのであり、上記の取壊しに係る判断が、低層階を構成する構造に着目してされるものとみることも、不合理とはいえない。 そうすると、本件家屋について、その低層階を構成する構造に応じた経年減点補正率をもってその評価に当たり適用すべき経年減点補正率とすることも、上記⑵の評価基準の定める経年減点補正率の趣旨に照らして合理性を欠くものとはいえず、評価基準上許容されるものというべきである。 ⑷ 以上によれば、本件登録価格を決定するに当たり、本件家屋について、その低層階を構成する構造に応じたSRC造等経年減点補正率を適用したことが、評価基準に反するものということはできない。 - 5 - 5 所論の点に関する原審の判断は、以上の趣旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。なお、その余 用したことが、評価基準に反するものということはできない。 - 5 - 5 所論の点に関する原審の判断は、以上の趣旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。なお、その余の上告受理申立て理由は、上告受理の決定において排除された。 よって、裁判官草野耕一の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 裁判官草野耕一の反対意見は、次のとおりである。 私は、多数意見とは異なり、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却すべきであると思料する。本件登録価格を是認した本件審査決定を取り消すことは、上告人の納税者としての正当な利益を擁護するためにはもちろんのこと、豊かで公正な社会の形成に資する税制度を構築する上においても避けてはならない司法判断であると考えるからであるが、そう考える理由を明らかにすべく、以下においては租税法の解釈のあり方に関する一般的な考察から論を進めることにしたい。 1 租税法は、形式的には行政法の一分野にすぎないが、①税収という国家の主要かつ恒久的な財源を生み出す制度として国家の死命を制する重要性を有しており、その一方において、②国民の経済活動に対して重大な影響を及ぼす制度として(正しくこれを用いれば)豊かな社会の形成を促し得る反面、(その運用を誤れば)これを妨げるおそれを内包している。さらに、③租税の徴収は納税者たる国民にとっては財産の喪失という不利益を甘受することを意味する事態であり、憲法は、国民が「法律の定めるところにより」納税の義務を負う(30条)と定める一方において、租税の根拠となる規範の制定・変更は国会が定める法律(あるいは法律の定める条件)によることを明示的に要求している(84条)。 このうち、租税法の上記②の性格からは、立法論・解釈論の双方において、「税制度の内 となる規範の制定・変更は国会が定める法律(あるいは法律の定める条件)によることを明示的に要求している(84条)。 このうち、租税法の上記②の性格からは、立法論・解釈論の双方において、「税制度の内容が不明確であることによって社会の生産活動に不測の損害や委縮効果をもたらさないように課税要件を明確なものとする」という理念(以下、この理念を「課税要件の明確性」という。)の可及的実現が求められ(上記③の憲法上の要請も、こうした課税要件の明確性の要請を内包しているものと解される。)、財産税- 6 -である固定資産税についても、課税標準を明確なものとすることによって、課税要件の明確性を可及的に満足させることは可能である。そして、課税要件の明確性を可及的に満足させることは、現代社会においてもなお主要な生産財である固定資産を課税対象とする固定資産税を有意義な税制度として存続せしめる上で焦眉の課題であり、そうである以上、固定資産税に係る法令を解釈するに当たっては、できる限り規定の文理に忠実な解釈を行うことをもって原則とすべきである。その上で、文理からだけでは一義的な解釈を行い得ない場合には、文理から推認し得る立法趣旨や精緻な論理分析に依拠しつつできる限り合理的な解釈を試みるとともに、解釈の結果導き出された準則が納税者において容易には予測することのできないものであるときは、税務当局の責任において、当該準則を納税者に対してあらかじめ公表し、もって納税者に不測の損害が発生することがないようにしなければならないと解すべきである。 2 本件の核心的争点は、本件登録価格を決定するに際して用いた経年減点補正率の算定方式が評価基準の解釈を誤った違法なものであったか否かであるが、評価基準は、非木造家屋に適用すべき経年減点補正率をその「構造区分に従い」求めるものとする を決定するに際して用いた経年減点補正率の算定方式が評価基準の解釈を誤った違法なものであったか否かであるが、評価基準は、非木造家屋に適用すべき経年減点補正率をその「構造区分に従い」求めるものとするのみで(第2章第3節五)、複合構造家屋たる非木造家屋(以下、単に「複合構造家屋」という。)に適用すべき経年減点補正率の具体的な算定方式(以下、単に「算定方式」という。)を明示していない。しかしながら、地方税法は、市町村長は「固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない」としているのであるから(403条1項)、上記の点を根拠として算定方式の選択が税務当局の自由な選択に委ねられていると解することはできず、複合構造家屋に適用する経年減点補正率の算定方式を決定するに当たっては、評価基準の関連規定の文理と文理から推認し得る立法趣旨や精緻な論理分析に依拠しつつできる限り合理的な解釈を試みなければならないというべきである。 以下では、考え得るいくつかの算定方式について検討を加えた上で本件で用いられた算定方式について法的評価を述べることとする。 - 7 -3⑴ まず考えられる算定方式として、構造別方式(対象となる複合構造家屋を構造ごとに区分し、それぞれの構造部分の評点数を当該構造部分に対応する経年減点補正率を用いて計算する算定方式)がある。同方式は、①「構造区分に従い」経年減点補正率を求めるものとする評価基準の前記規定の趣旨に合致する上、②経年減点補正率を乗ずることとなる再建築費評点数については、複合構造家屋の場合にそれぞれの構造に応じた非木造家屋評点基準表を用いて算定することを明示的に要求している評価基準の規定(第2章第3節二1⑶)に整合する点で合理性を有する。もっとも、評価基準は、部分別に求めた再建築費評点数を「合計して」当該家屋 家屋評点基準表を用いて算定することを明示的に要求している評価基準の規定(第2章第3節二1⑶)に整合する点で合理性を有する。もっとも、評価基準は、部分別に求めた再建築費評点数を「合計して」当該家屋自体の再建築費評点数を求めるものとしており(第2章第3節二6)、複合構造家屋については、構造ごとの再建築費評点数を合計して求められた家屋全体の再建築費評点数に一つの経年減点補正率を乗じて家屋全体の評点数を求める算定方式(以下、かかる算定方式を総称して「一棟方式」という。)の方が、評価基準の文理により適合しているともいえる。 ⑵ そこで、いかなる一棟方式が評価基準の諸規定に照らして合理的な算定方式といえるか検討するに、各構造に対応する経年減点補正率を構造ごとの床面積の大きさに応じて加重平均した値をもって家屋全体に適用されるべき経年減点補正率とするもの(以下、この算定方式を「平均一棟方式」という。)が、上記⑴①、②の評価基準の規定やその趣旨に合致し、最も合理的な一棟方式であると考えられる。 他方、これまでの課税実務において多く用いられてきた一棟方式は、家屋全体の中で最も大きな床面積を占める構造(以下「最大床面積構造」という。)に対応した経年減点補正率を家屋全体の経年減点補正率とするというもの(以下、この算定方式を「床面積方式」という。)であることがうかがわれる。そして、床面積方式を正当化する根拠としてしばしば喧伝されてきた論理は、①複合構造家屋であっても、家屋の取壊しは基本的には一棟を単位として判断されることから、経年減点補正率の適用は一棟単位で判断すべきであり、そうである以上、②複合構造家屋における経年減点補正率の適用は、主たる構造により一棟単位で構造種別を定めた上で- 8 -行うことが望ましいところ、③複合構造家屋については、最大床面積構造 きであり、そうである以上、②複合構造家屋における経年減点補正率の適用は、主たる構造により一棟単位で構造種別を定めた上で- 8 -行うことが望ましいところ、③複合構造家屋については、最大床面積構造について、その部分が傷んだ場合、当該家屋を建て替える場合が比較的多いといえるというものである(以上の論理のうち①及び②の部分を、以下においては「主たる構造論」という。)。 しかしながら、評価基準の解釈論として主たる構造論に合理性があるとは考え難い。なぜならば、①評価基準上、所定経過年数が満了しても経年減点補正率は20%の値を保持し、以後この値は減少しないものとされていることに鑑みるならば、所定経過年数の満了以前における経年減点補正率の算定は対象家屋が当該期間中に取り壊されることはないことを前提として定められていると解すべきであり、そうである以上、複合構造家屋に適用すべき経年減点補正率を考えるに当たって家屋の取壊しの問題を考慮要素とすることに合理性があるとはいい難く、加えて、②「主たる構造」という概念は外延のみならず内包そのものが曖昧であり、このように曖昧な概念を解釈論の中核に据えることは、説得力のある解釈論を導き出す上で有効でないばかりか、恣意的・詭弁的な解釈を正当化する温床ともなりかねないからである。 ⑶ では、主たる構造論に依拠することなくして、平均一棟方式以外の一棟方式(以下「他の一棟方式」という。)に合理性を見いだし得る根拠はあるだろうか。 思うに、他の一棟方式の合理性を根拠付け得る唯一の理由は、構造別方式や平均一棟方式は計算が複雑すぎて地方団体の評価事務が煩雑になってしまうという実務上のものであろう。コンピュータによる数理計算が普及した現代においてこの実務上の理由にいかほどの説得力があるのか疑問なしとしないが、少なくとも本件家屋に 方団体の評価事務が煩雑になってしまうという実務上のものであろう。コンピュータによる数理計算が普及した現代においてこの実務上の理由にいかほどの説得力があるのか疑問なしとしないが、少なくとも本件家屋に関して最初に登録価格が決定された当時においては、構造別方式や平均一棟方式を用いた計算は、地方団体にとって少なからぬ負担であったかもしれない。 そこで、計算の簡素化を根拠として合理性を肯定し得る他の一棟方式にはいかなるものがあり得るのか検討するに、他の一棟方式としては、低層階方式のほか、①最短方式(最も所定経過年数の短い構造に対応する経年減点補正率をもって家屋全- 9 -体の経年減点補正率とする方式)、②床面積方式、③最長方式(最も所定経過年数の長い構造に対応する経年減点補正率をもって家屋全体の経年減点補正率とする方式)などが考えられる。 このうち、最短方式は、納税者に最も有利な算定方式であり、不合理な算定方式と評価すべき理由はない。また、床面積方式を用いた場合には、概して、同方式により算定される経年減点補正率は平均一棟方式により算出される経年減点補正率からさほどかい離するものではなく、生じ得るかい離が納税者にとって必ずしも不利に働くとも限らない。したがって、主たる構造論により床面積方式を正当化することはできないとしても、計算の簡素化という実務的理由をもって他の一棟方式の採用を正当化する理由となると考える限り、床面積方式は合理的な算定方式といい得るだろう。 他方、最長方式によれば、最も所定経過年数の長い構造に対応する経年減点補正率(納税者にとって最も不利な経年減点補正率)が、当該構造の占める割合がいかに小さくても、家屋全体に適用されることになる。英米の法律家は苛斂誅求なる法律を評してしばしば「ドラコニアン」という言葉を口にするが(「古代ア 最も不利な経年減点補正率)が、当該構造の占める割合がいかに小さくても、家屋全体に適用されることになる。英米の法律家は苛斂誅求なる法律を評してしばしば「ドラコニアン」という言葉を口にするが(「古代アテネのドラコンの法典のように過酷な」という意味である。)、最長方式はまさしくドラコニアンな算定方式であり、これをもって合理的な一棟方式であるとは到底いえない。 ⑷ 以上を踏まえて、低層階方式について検討するに、多数意見は、低層階(地下階又は低層階)を構成する構造のうち所定経過年数の最も長い構造に対応する経年減点補正率を家屋全体に適用する算定方式のことを「低層階方式」と定義している。低層階方式をこのように定義する限り、その帰結はほとんど常に最長方式の帰結と同じであり(最も所定経過年数の長い構造が低層階以外で用いられるのは例外的な場合だけであろう。)、そうである以上低層階方式は最長方式と同様にドラコニアンな算定方式であって、これをもって合理的な算定方式と解することは到底できない。 もっとも、低層階方式は、その適用範囲を限定することによって、これを合理的- 10 -な算定方式とする余地があるように思える。なぜならば、①家屋に作用する重力や外力に対する負担は高層階よりも低層階の方が相対的に大きいであろうから、②家屋の損耗の進行を抑える上においては高層階より低層階の方が重要性が高く、③しかりとすれば、家屋全体に適用すべき経年減点補正率を算定するに当たっても、高層階よりも低層階の構造に対してより大きなウエイトを与えて計算を行うこと自体は合理的であると思えるからである。そこで、計算の簡素化の観点も踏まえた現実的な算定方式として、例えば、「家屋全体の下方から5分の2を占める各階が全て同じ構造である場合には、たとえその構造が最大床面積構造ではなくてもその構 らである。そこで、計算の簡素化の観点も踏まえた現実的な算定方式として、例えば、「家屋全体の下方から5分の2を占める各階が全て同じ構造である場合には、たとえその構造が最大床面積構造ではなくてもその構造に対応する経年減点補正率をもって家屋全体に適用する経年減点補正率とする」ことにすれば、それは床面積方式と比肩し得る程度に合理的な算定方式といえるかもしれない(以下、このように低層階の方が高層階よりも損耗の進行を抑える上で重要であることをしんしゃくした上で計算の簡素化の要請をも満足させている算定方式を総称して「穏やかな低層階方式」といい、これと区別するために、多数意見の定義する低層階方式を「厳しい低層階方式」といい、両者を併せて単に「低層階方式」という。)。しかしながら、穏やかな低層階方式は、その具体的な算定方式が一義的に定まるものではない上、これをいかに定めるかによってその帰結は異なったものとならざるを得ない。例えば、上記に掲げた例における「5分の2」を「3分の1」としたり、あるいは、「各階が全て同じ構造」を「各階の床面積の半分以上が全て同じ構造」としてもなお合理的な算定方式であると評価する余地はあるかもしれないが、その帰結は上記に例示した算定方式の帰結とは明らかに異なる。要するに、穏やかな低層階方式は、具体的な算定方式が示されない限り、納税者はその内容を合理的に予測することができないものであり、この点においてこれまでに述べてきた算定方式とは性格を大きく異にする。したがって、穏やかな低層階方式に基づいてなされた価格の決定が適法といえるためには、前記1のとおり、税務当局がその具体的算定方式をあらかじめ公表していることをもってその必要条件としなければならない。 - 11 - 4 以上の検討を踏まえて本件をみると、原審の認定によれば、大阪市長が 1のとおり、税務当局がその具体的算定方式をあらかじめ公表していることをもってその必要条件としなければならない。 - 11 - 4 以上の検討を踏まえて本件をみると、原審の認定によれば、大阪市長が本件家屋に関して最初に登録価格を決定した際に用いた算定方式は、低層階方式である。しかるところ、被上告人は、当該決定を行うに先立って、複合構造家屋に用いる低層階方式が具体的にいかなるものであるのかを納税者に対して一切公表していない。したがって、大阪市長が実際に採用した低層階方式が厳しい低層階方式であったのであればもちろんのこと、たとえそれが穏やかな低層階方式であったとしても、それによってなされた上記登録価格の決定は違法であり、そうである以上、当初の登録価格の決定の計算に依拠しつつこれと同じ算定方式を用いてなされた本件登録価格の決定もまた違法である。よって、上告人の請求を認容した第1審判決は、結論において相当であるから、同判決を取り消して同請求を棄却した原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却すべきである。 (裁判長裁判官尾島明裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官岡村和美)
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