令和4(わ)546 建造物侵入、窃盗、邸宅侵入幇助、住居侵入幇助、窃盗幇助

裁判年月日・裁判所
令和4年12月14日 大阪地方裁判所
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判決文本文9,573 文字)

令和4年12月14日宣告令和4年第546号 主文 被告人は無罪。 理由 第1 本件各公訴事実の要旨及び争点等について 1 本件各公訴事実の要旨は、「被告人は、⑴A、B及びCと共謀の上、金品窃取の目的で、令和3年9月29日午後5時頃から同月30日午前7時30分頃までの間に、株式会社D代表取締役Eが看守する奈良県生駒郡a町内の同社事務所に侵入し、その頃、同所において、同人管理の現金約13万円等在中の据置金庫1台(時価約4万円相当)を窃取し(以下「第1事件」という。)、⑵A及びBが共謀の上、正当な理由がないのに、同年12月1日午前0時13分頃から同日午前0時31分頃までの間に、Fらが看守する大阪市b区内の3階建て住宅に、2階ベランダ掃き出し窓から侵入した際、その情を知りながら、さらに、A及びBが共謀の上、金品窃取の目的で同区内のG方に侵入し、強盗殺人の犯行に及んだ際(Bは住居侵入及び窃盗の犯意を有するにとどまっていた)、AらがG方に侵入し、金品を窃取するものと認識しながら、同日午前0時12分頃、同区内の路上において、侵入に用いる脚立をAに渡し、もって同人らの各犯行を容易にしたが、邸宅侵入幇助、住居侵入幇助及び窃盗幇助の犯意を有するにとどまっていた(以下「第2事件」という。)」というものである。 2 弁護人は、第1事件につき、被告人には、実行犯であるAやその他の共犯者らが侵入盗に及ぶとの認識は全くなく、第2事件についても、Aらが邸宅侵入や侵入盗に及ぶ可能性があるとは全く考えていなかったから、被告人は各事件につきいずれも無罪である旨主張し、被告人も同様の供述をしている。 第2 第1事件について 1 関係証拠によると、被告人は、令和元年10月、Aと婚姻し、第1、第2事 人は各事件につきいずれも無罪である旨主張し、被告人も同様の供述をしている。 第2 第1事件について 1 関係証拠によると、被告人は、令和元年10月、Aと婚姻し、第1、第2事件当時は、同人が経営し、Bらが従業員として稼働していた建築・解体・内装作業等を業とする株式会社Hにおいて、Aから依頼を受けた際に、大阪府八尾市内の同社の資材置場から車で資材や工具を送り届けたり、作業現場から残土や廃棄物等を車で資材置場に搬送したり、Aや従業員を現場等に車で搬送したりしていた事実が明らかである。 また、関係証拠によれば、第1事件の現場付近は農村地帯に位置し、周囲には雑木林や畑が広がっていたところ、Aが第1事件の日時場所において、侵入盗を実行した事実は明らかである。 さらに、関係証拠のほか、被告人の述べるところによっても、被告人は、令和3年9月29日の夜間から翌30日(以下の月日は特に断りのない限り、令和3年のそれを指す。)の未明頃にかけて、A、B及びCらと共に前記資材置場に集合した後、Aらと2台の車に分乗して第1事件の現場付近まで出向き、Aが侵入盗を実行している間、被告人は、ヴェルファイアに乗車して犯行現場から南方に少し離れた場所で、Bは、ワゴンRに乗車し、犯行現場から北方に少し離れた場所でそれぞれ待機し、Cは、犯行現場である事務所西側を南北に走る道路と東西方向に走る道路の交差点付近において待機していた事実が明らかである。 また、関係証拠によると、被告人は、9月29日午後11時44分から午後11時50分にかけて、Bに対し、「二人おろして50分くらい経ってます」「だいぶ時間かかってますね~。嫌なことになってなかったらいいんですけど」「現在地みたらまだ事務所いてるっぽいです!」「12時10分頃にLINEしてみます!腕につ 人おろして50分くらい経ってます」「だいぶ時間かかってますね~。嫌なことになってなかったらいいんですけど」「現在地みたらまだ事務所いてるっぽいです!」「12時10分頃にLINEしてみます!腕についてるやつからでもLINEのメッセージは見れるみたいなんで!」などとLINEメッセージを送信し、Bから、「遅いな。」「大丈夫かな、ちょっと心配やな。」「Cからも何の連絡もないな。」「了解です。」とメッセージを受信していた事実が明らかであって、Aが侵入盗の犯行に及ん でいる間、被告人らが待機していた時間が短くとも50分程度はあったものと認められる。 さらに、被告人の公判供述を含む関係各証拠によると、Aは、侵入盗を終えた後、Bの運転するワゴンRを被害会社事務所近くまで移動させて窃取した金庫を車内に積み込んでBと一緒に前記資材置場まで戻ったところ、被告人も、Aが侵入盗の犯行に及んだ直後、同人からの電話による指示を受けてヴェルファイアを運転してCを拾って前記資材置場まで戻り、A、Bらと合流した事実が明らかである。 2⑴ Aは、公判において、「車の通り道で見張りをしてもらうため、C、B、被告人を誘い、資材置場から第1事件の現場に移動した。被告人には集金に行くと言ったと思う。C以外のメンバーとは過去に4人で2台の車に分乗して夜間集金に行くことが何度かあった。第1事件の現場近くの自動販売機がある場所で、Cに対し、見張りをするよう頼み、4人でBに見張りをしてもらう場所まで移動し、その場にB1人を残し、警察官やセコムの車が通ったらCに連絡するよう指示した。その後、Cや被告人とヴェルファイアで被告人に見張りをしてもらおうと思っていたDの事務所の南方まで走り、到着後、被告人に対してパトカーや警備会社の車が来たらCに連絡するよう伝えたと思う。 指示した。その後、Cや被告人とヴェルファイアで被告人に見張りをしてもらおうと思っていたDの事務所の南方まで走り、到着後、被告人に対してパトカーや警備会社の車が来たらCに連絡するよう伝えたと思う。」と供述している。 ⑵ Aが侵入盗とは無関係に深夜、被告人ら3名を農村地帯に位置する第1事件の事務所付近にまで同行させ、自らが侵入盗の犯行に及んでいる間、短くとも50分程度もの長時間にわたり周囲で待機させたとは考え難く、Aの上記供述中、自らが実行する侵入盗に際して見張役が必要と考え、被告人ら3名を誘ったという部分は合理的な内容である。そして、このように見張りをさせようと考えていたのであれば、被告人に対してもその役割を告げておかなければ目的を達成できないのは明らかであるから、Aの上記供述中、侵入盗に先立ち、被告人に対してパトカーや警備会社の車両が通ったら知らせる ように告げていた旨いう部分は、自然で極めて合理的な内容というべきであるし、自らも警察とかセキュリティー会社が来たら連絡するように指示された旨いうCの公判供述とも整合している。しかも、Aは、被告人とは夫婦であり、「集金に行く」としか告げておらず、侵入盗を行う旨明言していなかったことや、犯行後、資材置場に戻って金庫を破壊した際には被告人はその場にいなかったことなど、Aが侵入盗に及ぶことは知らなかった旨いう被告人の供述にも沿う有利な事情もありのままに供述しているのであるから、殊更に記憶に反して被告人に不利益な虚偽の供述をしているとは考えにくい。以上によれば、Aの上記供述は信用性を備えたものといえる。 ⑶ 弁護人は、Aは、本件と別件を混同している可能性があるほか、実行犯という重要な役割を一人で担いながら、関係者への指示も担っていることから、関係者への指示や事実経過の を備えたものといえる。 ⑶ 弁護人は、Aは、本件と別件を混同している可能性があるほか、実行犯という重要な役割を一人で担いながら、関係者への指示も担っていることから、関係者への指示や事実経過の記憶が曖昧になっている可能性があるため、上記供述は信用性に欠けると主張している。たしかに、Aの供述中、自動販売機のある場所でCと共に降車する前に、一旦、ヴェルファイアで被告人の待機場所まで移動し、その場で被告人に見張りを指示したという部分は、自動販売機のある場所でAとCが降車する以前に、車内でAが被告人に「右の方で見張りしといて」と指示し、その後、被告人一人がベルファイアを運転して待機場所まで向かった旨いうCの供述と整合しない内容となっている。しかしながら、第1事件からAの逮捕時までに相当期間が経過していたことなどを踏まえると、被告人に見張りを指示した場所等の細部において記憶があいまいであること自体は不自然ではなく、これをもって他の事件と混同しているということは到底できないのであって、被告人に指示を与えたという部分の供述の信用性に直ちに消長を来すほどの事情とはいえない。また、Aが見張りをさせるために他の者を同行させておきながら、見張りの指示をCやBだけに与えて被告人には指示しなかった理由は全く見当たらない。仮に、Aから被告人への指示が漏れていた場合には、被告人の側からAに対し、深 夜、農村地帯に位置する場所において、他の者から離れて待機しなければならない理由や自己の役割について尋ねるはずである。ところが、そのような形跡が全くうかがわれないことに照らすと、Aが被告人に対して見張りの指示をしていたというのは動かし難く、Aの供述の信用性を論難する弁護人の主張は採用できない。 3 以上に対し、被告人は、公判において、「資材置場に れないことに照らすと、Aが被告人に対して見張りの指示をしていたというのは動かし難く、Aの供述の信用性を論難する弁護人の主張は採用できない。 3 以上に対し、被告人は、公判において、「資材置場において、Aから仕事の話をしに行くのでaに連れて行ってほしいと言われた。道中のヴェルファイアの車内で、Aから、『解体現場を請け負った後の廃棄物をEさんのところに受けてもらうから、EさんにCを紹介する』と言われた。山を越えた後、BがAに電話で腹痛を訴えてトイレに行くなどと言ったため、CがBの運転するワゴンRから降車してヴェルファイアに乗り込み、自動販売機のある場所まで移動し、CとAをその場で降ろした。Aからは、どこかに車を駐車して待機しておくように言われたため、四、五百メートルほど車を走らせて駐車し、仮眠したり、テレビを見たりして待機していた。」などと供述し、Aから見張りの指示を受けた事実を否定している。 しかしながら、Aが、深夜、幼い子の面倒を看ていた被告人を現場まで同行させた理由は、見張りをさせること以外に見出し難いのであって、被告人の供述中、Aが被告人に見張りを一切頼まなかったという点は極めて不合理な内容である。また、被告人の供述中、Bが腹痛を訴えるなどして別れた旨いう部分は、BのみならずAやCの供述とも反しているし、Aから何らの指示もないにもかかわらず、同人らの降車場所から四、五百メートルも離れた場所まで自動車を走行させて待機していたというのも不自然である。このように、被告人の上記供述は不合理な点や不自然な点が目立ち信用性に欠けるというほかない。 4 信用性を肯定できるAの上記2の公判供述によると、被告人は、Aが深夜に、農村地帯に位置する第1事件の会社事務所に入ることを前提に、同人から、離れた場所に駐車した自動車内で待機し、 ほかない。 4 信用性を肯定できるAの上記2の公判供述によると、被告人は、Aが深夜に、農村地帯に位置する第1事件の会社事務所に入ることを前提に、同人から、離れた場所に駐車した自動車内で待機し、警備会社や警察の車両が近くを通過す れば連絡するように指示を受けていた事実が認められる。 そして、人の通常活動しない深夜の時間帯に、集合場所から離れていて農村地帯に位置する場所まで、被告人を含む3名を同行させ、しかも2台の車に分乗して移動するなど、集金に行くにしては不自然な行動をとる中で、上記のような指示がなされた場合、通常であれば、「集金に行く」としか告げられていなかったとしても、Aが事務所内において集金等の適法な活動ではなく、侵入盗等の警備会社や警察に通報され、発見されれば逮捕されかねないような犯罪を企てていることを容易に察知できるはずであるようにも思われ、かかる事実が侵入盗を行う点につき、Aらと被告人との間での共謀が成立していたことをうかがわせる点は検察官が主張するとおりである。 5⑴ しかしながら、Aは、公判において、「本件までに、被告人やBとはC以外のメンバーと併せた4人で夜間、2台の車に分乗して集金に行くことが何度かあり、集金先には暴力団構成員等の反社会的な者らも存在し、集金先で警察沙汰になるなどトラブルになったこともあった。本件当日は、被告人には、そのような集金トラブルが起きて相手がパトカーを呼ぶなどした際に知らせてほしいと捉えることもできるようなニュアンスで見張りをするよう頼んだ」とも供述している。被告人との間には幼い子がおり、被告人を余り巻き込みたくなかった旨いうAの心情からすると、被告人に対して、見張りが窃盗のためではなく、集金先とのトラブルが生じて先方が警察に通報等することに備えるためのものと偽 には幼い子がおり、被告人を余り巻き込みたくなかった旨いうAの心情からすると、被告人に対して、見張りが窃盗のためではなく、集金先とのトラブルが生じて先方が警察に通報等することに備えるためのものと偽った旨いうAの供述が不合理な内容とまでは言い難く、Aの同供述を排斥するに足りるような主張・立証も検察官からは全くなされていない。このようなAの供述を前提にすると、被告人の置かれた状況からは、4人で深夜に2台の車に分乗して集金に赴くこともさほど不自然な出来事ではなかったと考える余地も生じる上、被告人は、Aから指示された見張りの目的につき、同人が集金先との間でトラブルとなった場合に集金先が警察に通報等したことをAに知らせるためのものと考えており、 Aが侵入盗に及ぼうとしている事実についてまでは認識していなかったという合理的な疑いを差し挟む余地が残るといわなければならない。 ⑵ 検察官は、Aらが金庫をバールでこじ開けていた際、被告人もその様子を目撃し、それを手伝う旨申し出たことを前提に、かかる事実は被告人もAが窃盗に及ぶことを認識・容認していたことを推認させる旨主張している。しかしながら、検察官の主張のうち、被告人がAに対し、金庫を開披するのを手伝う旨申し出たとする部分は、Aの公判供述に依拠するものと思われるところ、同人は、被告人が金庫を開披する場にはおらず、金庫が見えない場所で「何してんの、何か手伝うことある」などと言ったとしか供述していないのであって、Aの公判供述によっても、かかる被告人の発言が検察官の主張するような趣旨でなされたものとまでみて取るのは困難である。また、たしかに、Cは、公判において、Aから被告人もメンバーとなっていたグループラインで金庫を盗んだのでBに来るよう指示する連絡が入ったことや、犯行後、資材置場まで移 とまでみて取るのは困難である。また、たしかに、Cは、公判において、Aから被告人もメンバーとなっていたグループラインで金庫を盗んだのでBに来るよう指示する連絡が入ったことや、犯行後、資材置場まで移動する際、被告人との間で金庫の中に何が入っているか会話したことのほか、Aが資材置場で被告人を含む3人に窃盗の犯行状況を話し、金庫をこじ開ける様子を被告人も見ていて在中品である現金の一部を受け取っていた旨供述している。しかしながら、Cは、自らの裁判では、資材置場までの帰路で被告人と金庫の話をしたか余り記憶がないと述べたり、捜査段階においては当初、被告人が現金を受領したかは分からないと述べたりしていたというのであり、その供述には合理的な説明がつかない変遷がみられる上、被告人はもとより、BやAのいずれも、資材置場でAが窃盗の犯行状況を話したとは述べておらず、Aからグループラインで金庫を盗んだことを知らせてBにワゴンRを移動させるように指示があった事実を否定し(なお、このようなグループラインが存在したこと自体についての客観的証拠による裏付けもない)、金庫をこじ開けるなどしていた際、周囲に被告人は存在しなかったと供述していること(資材置場には万能塀が設置されてい て、金庫をその内側で開披した旨言うAの公判供述等に照らし、それらの供述が不合理なものともいい難い。)に照らしてみても、Cの上記供述は信用性に欠けるといわざるを得ない。そうすると、被告人は、侵入盗の現場付近に同行した者の中で唯一、Aが窃取した金庫から在中品を取り出す場面に立ち会っていなかったと認定せざるを得ない。このような事実は、かえって、被告人が窃取された金品につき関心を有していなかったことをうかがわせるものである。当時、株式会社Hの経営状況が悪化し、Aから渡される生活費も かったと認定せざるを得ない。このような事実は、かえって、被告人が窃取された金品につき関心を有していなかったことをうかがわせるものである。当時、株式会社Hの経営状況が悪化し、Aから渡される生活費も減少していた中、被告人において、夫であるAが侵入盗に及ぼうとしていることを知って見張りなどの役割を果たしていながら、利得に関心を示さないとは考えにくいのであって、このように被告人が利得に関心を有していなかったことをうかがわせる事実の存在は、そもそも、被告人がAらとの間で侵入盗に及ぶことを共謀していなかった旨の合理的な疑いを強めるものといわなければならない。 ⑶ さらに、検察官は、前記1の被告人とBの間でのLINEメッセージのやりとりがAによる窃盗の成否が心配になって交わされたものと推認できる旨主張している。しかしながら、被告人はもとより、Bも検察官の主張するような趣旨でこのようなやりとりをしたことを否定している上、これらのメッセージは、被告人において、Aが集金先との間でトラブルになっていないかを心配してなされたものと解することも可能であって、このようなやりとりが交わされた事実をもってしても、被告人がAらとの間で侵入盗を行うことにつき意思を相通じていたと推認するのは困難である。 第3 第2事件について 1 関係各証拠によれば、Aが第2事件の邸宅侵入、住居侵入、強盗殺人の各犯行に及んだことのほか、Aは、第2事件の住居に多額の現金が存在するとの情報に基づき現場に向かったものの、住居に直接侵入することができず、住居とつながっている邸宅の2階から内部に侵入した後、住居に侵入しよう と考え、被告人に電話して前記資材置場にあった長さが418センチメートルある脚立を持参するように指示し、被告人は 住居とつながっている邸宅の2階から内部に侵入した後、住居に侵入しよう と考え、被告人に電話して前記資材置場にあった長さが418センチメートルある脚立を持参するように指示し、被告人は、これに応じて、12月1日午前0時過ぎ頃、トラックに積んだ脚立を現場から北側に少し離れた道路まで運搬して脚立をAに引き渡した後、トラックを運転して現場から南西に離れた道路上に移動し、Aがこの脚立を用いて邸宅内に侵入した後、午前0時31分頃、見張りなどの役割を担っていたBから上記脚立を受領してトラックで資材置場まで持ち帰った事実が明らかである。 また、Aの公判供述を含む関係証拠によれば、Aは、第2事件の犯行後、被告人に奪取した現金の一部を渡したり、被告人に指示して奪取品である指輪を買取専門店に売却させたりした事実が明らかである。 2 検察官は、⑴被告人が脚立を運搬したのが深夜のことであり、既にAらとともに第1事件を行っていたのであるから、被告人は、脚立を運搬してきた住宅街において同人が侵入盗等を行うために脚立の運搬を指示してきたことを認識していたものと推認できる、⑵被告人は、Aから犯行直後に奪取品である現金の一部を渡されたり、指輪の売却を頼まれて買取専門店に持ち込んで売却したりしたのであるから、これらの前から、Aが家屋の管理者の意思に反して家屋内に侵入し、窃盗に及ぶという認識があったと推認できると主張している。 しかしながら、⑴の点について、被告人が第1事件の前後に、Aが侵入盗に及ぶことを認識していたとは認め難い点はすでに述べたとおりである。しかも、被告人は、「Aからは、『脚立を持ってきてほしい』としか言われておらず、第2事件までにも、株式会社Hでは、内装等の夜間の仕事で脚立が必要になることがあり、Aが 点はすでに述べたとおりである。しかも、被告人は、「Aからは、『脚立を持ってきてほしい』としか言われておらず、第2事件までにも、株式会社Hでは、内装等の夜間の仕事で脚立が必要になることがあり、Aが夜勤で脚立を必要としていると思っていた」と述べているところ、Aも、公判において、「被告人に対しては電話で『置場にダンプがあるんで、ダンプに8尺を載せて、そのままbの方まで走ってきてほしい』と伝えただけで、脚立の用途を説明しておらず、株式会社Hでは 夜間に内装工事を行うこともあったほか、第2事件当時と同様の雨天の深夜に長い脚立を解体現場に持参し、ブルーシートを掛け直すことが過去に三、四回あり、夜間は、トラックの騒音によるクレームを避けるために現場から離れた場所まで車で脚立を運搬してもらっていた」と供述している。被告人の供述と整合するAの供述の信用性に疑いを差し挟まなければならないような事情はうかがわれず、検察官からも同供述を排斥し得るような主張・立証は全くなされていない。このようなAの供述のほか、第2の1で認定したとおり、被告人が本件当時、株式会社Hにおいて、Aの指示を受けて資材や工具を資材置場から現場まで車で運搬する役割を担っていた事実を併せて考えると、被告人は、Aが解体作業や内装工事等の仕事のために脚立を必要としていると考え、同人の依頼に応じて脚立を運搬してAに渡した合理的な疑いを容れる余地がある。また、上記⑵のAが被告人に奪取品の一部を手渡すなどしたのは、犯行後の出来事に過ぎない上、Aは、被告人には第2事件に及んだことを伝えていなかったと述べているのであるから、検察官が挙げるところの被告人による犯行後の利得の受領や処分といった事実を併せてみても、Aに脚立を手渡した時点において、被告人が侵入盗に及ぼうとしているAの意図 いなかったと述べているのであるから、検察官が挙げるところの被告人による犯行後の利得の受領や処分といった事実を併せてみても、Aに脚立を手渡した時点において、被告人が侵入盗に及ぼうとしているAの意図を未必的にも認識していなかったという合理的な疑いを払拭するのは困難である。 第4 結論以上検討してきたように、被告人は、第1事件においては、Aやその他の共犯者が建造物侵入、窃盗の犯行に及ぶことにつき、第2事件においては、本犯者であるAやBが邸宅侵入、住居侵入、窃盗の各犯行に及ぶことにつき、それぞれ認識を有していたと認定するに足りる証拠はない。したがって、第1事件及び第2事件の各公訴事実については、その証明が不十分であって、犯罪の証明がないことに帰着するから、刑事訴訟法336条により無罪の言渡しをする。 (求刑懲役2年6月) 令和4年12月14日大阪地方裁判所第2刑事部 裁判官西川篤志

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