- 1 -主文 1 第1審原告らの控訴をいずれも棄却する。 2 第1審被告の控訴に基づき,原判決中,第1審被告の敗訴部分を取り消す。 3 前項の部分につき,第1審原告らの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審とも,第1審原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 第1審原告ら(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 第1 審原告らが社員就業規則(郵人事第1-5号平成19年10月1日施行)別表第2の「深夜勤」勤務(ただし,社員就業規則に基づく「社員勤務時間・休暇手続」(郵人事第3-4号同日施行)の別記2の例によるもの)に従事する義務のないことを確認する。 (3) 第1審被告は第1審原告らに対し前項記載の「深夜勤」勤務を指定してはならない。 (4) 第1審被告は,第1審原告Aに対し,505万円及び平成20年9月3日以降上記(2)項記載の「深夜勤」勤務に従事させるごとに1回につき5万円の割合による金員を支払え。 (5) 第1審被告は,第1審原告Bに対し,250万円及び平成20年9月3日以降上記(2)項記載の「深夜勤」勤務に従事させるごとに1回につき5万円の割合による金員を支払え。 2 第1審被告主文と同旨- 2 -第2 事案の概要 1 概要(1) 本件は,第1審被告の設置する支店(郵便局)に勤務している第1審原告らが,第1審被告に対し,社員就業規則(乙141)別表第2の「深夜勤」勤務(ただし,社員就業規則に基づく「社員勤務時間・休暇手続」〔乙142〕の別記2の例によるもの。以下,総称して『連続「深夜勤」勤務』という。)について,(ア) 第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定を認める内容の労働協約 基づく「社員勤務時間・休暇手続」〔乙142〕の別記2の例によるもの。以下,総称して『連続「深夜勤」勤務』という。)について,(ア) 第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定を認める内容の労働協約は無効であり,連続「深夜勤」勤務の指定を可能とする第1審被告の就業規則等の規定は憲法13条,18条,25条及び国際人権規約に違反し無効であるなどと主張して,第1審原告らが連続「深夜勤」勤務に従事する義務のないことの確認を求めるとともに,(イ) 連続「深夜勤」勤務の指定の差止めを求め,さらに,(ウ) 第1審被告がこれまで第1審原告らに対し連続「深夜勤」勤務を指定したことが安全配慮義務に違反し又は不法行為を構成し,第1審原告らは連続「深夜勤」勤務に従事したことによりうつ病又はうつ状態(以下,併せて「うつ病等」という。)に罹患するなどの損害を被ったと主張して,債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為(人格権の侵害)に基づく損害賠償(慰謝料)として,本訴状送達の日の翌日である平成16年10月19日以降の各第1審原告に対する連続「深夜勤」勤務の指定1回あたり5万円(平成20年9月2日までに,第1審原告Aは101回,同Bは50回それぞれ指定された。)の支払を求める事案である。 なお,本件訴えは,日本郵政公社(以下「公社」という。)を被告として提起されたものであったが,平成19年10月1日に公社が解散し,その訴訟上の地位を第1審被告が承継した。 (2) 原審は,第1審原告らの本件請求のうち,(ア) 連続「深夜勤」勤務に従事する義務のないことの確認請求を棄却し,(イ) 連続「深夜勤」勤務の指- 3 -定差止請求を棄却し,(ウ) 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求については,第1審原告Aにつき80万円,第1審原告Bにつき50万円の支払を求める 却し,(イ) 連続「深夜勤」勤務の指- 3 -定差止請求を棄却し,(ウ) 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求については,第1審原告Aにつき80万円,第1審原告Bにつき50万円の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した。 これに対し,第1審原告ら及び第1審被告の双方がそれぞれ敗訴部分を不服として控訴した。 2 前提となる事実前提となる事実は,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1に記載のとおり(原判決3頁3行目から11頁3行目まで)であるから,これを引用する。 3 争点及び当事者の主張(1) 争点及び当事者の原審における主張は,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2及び3に記載のとおり(原判決11頁4行目から16頁6行目まで)であるから,これを引用する。 ア原判決11頁7行目を次のとおり改める。 「(3) 安全配慮義務違反又は不法行為の成否」イ原判決11頁12行目の「いずれも」の次に「原告らの所属する」を加える。 ウ原判決14頁7行目及び8行目を次のとおり改める。 「(3) 争点(3)(安全配慮義務違反又は不法行為の成否)について」エ原判決14頁9行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「 被告が原告らに対して連続「深夜勤」勤務を指定してこれに従事させたことは,原告らに過重な負担を負わせその心身の健康を害する行為であって,原告らに対する安全配慮義務に違反し又は不法行為を構成する。」オ原判決15頁の冒頭に次のとおり加える。 「 原告らが従事した連続「深夜勤」勤務は過重な負担というようなものではなく,安全配慮義務違反又は不法行為は成立しない。また,連続「深- 4 -夜勤」勤務と原告 頭に次のとおり加える。 「 原告らが従事した連続「深夜勤」勤務は過重な負担というようなものではなく,安全配慮義務違反又は不法行為は成立しない。また,連続「深- 4 -夜勤」勤務と原告らのうつ病等との間に因果関係はない。」カ原判決15頁23行目の「必死」を「必至」に改める。 (2) 当審における当事者の補充の主張ア第1審原告らの主張規則性や周期性のない不規則交替制勤務における連続「深夜勤」勤務は,概日リズムの乱れ,睡眠不足,疲労の蓄積によるダメージを回復する機会を完全に奪うものである。また,「深夜勤」勤務においては十分な仮眠の機会が与えられていないこと,夜間に取り扱う郵便物の量は昼間の倍ほど多く,郵便物の区分作業等には神経を使う上,郵便物の中には20~30kg程度の重量のものもあり,そのような郵便物を抱え上げてパレット等に乗せるなどの第1審原告らが従事する作業は心身ともに負担の大きいものであること,などの作業実態をも勘案すれば,第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定は過労死をもたらしかねない危険なものであって,違憲,違法というべきである。 したがって,第1審原告らの連続「深夜勤」勤務に従事する義務のないことの確認請求及び連続「深夜勤」勤務の指定の差止請求を棄却した原審の判断には誤りがある。 イ第1審被告の主張第1審原告らについて,うつ病等と診断される前の6か月間の勤務状態(超過勤務や休日労働等の勤務状況)に照らしても,また,作業内容や深夜帯の勤務回数等を他の職員らと比較しても,何ら業務の過重性はなかった。第1審原告らのうつ病等については公務起因性ないし業務起因性が認められる余地はない。 また,一般に,深夜帯の勤務とうつ病等の発生その他健 の職員らと比較しても,何ら業務の過重性はなかった。第1審原告らのうつ病等については公務起因性ないし業務起因性が認められる余地はない。 また,一般に,深夜帯の勤務とうつ病等の発生その他健康上の悪影響との関係は明確ではなく,第1審原告らの職場で第1審原告ら以外に連続「深夜勤」勤務によりうつ病等を発症した職員はいなかったのであるから,第- 5 -1審被告において,第1審原告らを連続「深夜勤」勤務に従事させることにより第1審原告らがうつ病等を発症することをあらかじめ客観的に予測できたはずがなく,第1審被告に安全配慮義務違反ないし不法行為上の過失はない。 したがって,第1審被告に安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を認めた原審の判断には誤りがある。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,第1審原告らの本件請求はいずれも理由がないものと判断する。 その理由は,次に述べるとおりである。 1 認定事実認定事実については,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおり(原判決16頁9行目から62頁9行目まで)であるから,これを引用する。 (1) 原判決36頁8行目の「②」を削る。 (2) 原判決57頁19行目の末尾に「ただし,同数値の根拠資料は明らかでない。」を加え,同20行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「 他方で,交替勤務者に不安,抑うつが多くみられることについて交替勤務そのものの影響か否かは明らかでないとする見解や(乙164),深夜帯勤務が月6~7回以下であれば健康に影響はないとする報告もある(乙114の49頁)。」(3) 原判決58頁7行目の「可能性が高まるとされている。」から8行目末尾までを「可能性が高まるとする見 勤務が月6~7回以下であれば健康に影響はないとする報告もある(乙114の49頁)。」(3) 原判決58頁7行目の「可能性が高まるとされている。」から8行目末尾までを「可能性が高まるとする見解がある(甲23,33,乙115)。その一方で,看護師の深夜勤務中の効果的な仮眠についての研究結果では,深夜勤務時間帯(午前0時~午前8時)のうち午前3時から1時間の休憩時間帯に「仮眠なし」,「仮眠15分」,「仮眠30分」の3条件で比較した実験によると,「仮眠15分」が最も体温や脈拍の変化が通常の概日リズムに- 6 -類似していたことから身体的負担が少なく,勤務時間帯を通じて作業効率が維持可能であり,「仮眠30分」は眠気や疲労感の低減効果が最も優れていたとして,これらの短時間の仮眠により疲労感の低減や作業効率の維持,回復が期待できるとする見解もある(乙162)。」に改める。 2 争点(1)(本件協約の効力)について争点(1)についての判断は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の2(1)に記載のとおり(原判決62頁13行目から64頁20行目まで)であるから,これを引用する。 3 争点(2)(連続「深夜勤」勤務の指定の違法性)について(1) 第1審原告らは,連続「深夜勤」勤務の指定を可能とする労働協約の内容自体が憲法13条,18条,25条,国際人権規約A規約7条に違反し公序良俗に反するものであるから,当該協約に基づく就業規則等,そしてそれに基づく連続「深夜勤」勤務の指定も違法,無効であると主張するので,この点について検討する。 (2) 第1審原告らの主張する健康への悪影響についてア一般に,深夜勤務が人間の本来の生活リズムと異なる生活リズムを強いるものであることから,概日リズムの乱れによる ついて検討する。 (2) 第1審原告らの主張する健康への悪影響についてア一般に,深夜勤務が人間の本来の生活リズムと異なる生活リズムを強いるものであることから,概日リズムの乱れによる睡眠障害や疲労蓄積等,健康に対してよくない影響を及ぼす可能性があることは否定できないところである。 しかし,どのような態様の深夜勤務がどのくらいの頻度にわたりどの程度継続すればどういった悪影響が生ずるかについては,調査研究報告等によっても明らかになっているとはいえず,また,当該労働者の生活習慣(喫煙,飲酒,食物の嗜好,運動,休日の過ごし方,など)も健康状態に重要な影響を及ぼすものであって,深夜勤務それ自体が労働者の健康にもたらす影響の程度及び内容については明確でないというべきである。第1審原告らの主張する連続「深夜勤」勤務の指定が健康に及ぼす一般的な影響に- 7 -ついても,同様に,その程度及び内容が証拠上明らかになっていると認めることはできない。 したがって,連続「深夜勤」勤務の指定が直ちに第1審原告らの健康に重大な悪影響を及ぼし第1審原告らを過労死等に追い込むものであるということはできない。 イ第1審原告ら個々の従業員の深夜勤務の態様は具体的には服務表により定まるものであるところ,第1審原告らに対する「深夜勤」勤務の指定状況をみるに,(ア) 第1審原告Aについては,1勤務指定期間(4週間)のうちに,①2連続深夜勤の勤務指定,②2連続深夜勤と2連続深夜勤の間に解放非番を入れた勤務(深深非深深)及び2連続深夜勤(深深)を組み合わせた勤務指定,③2連続深夜勤と2連続深夜勤の間に解放非番を入れた勤務(深深非深深)及び3連続深夜勤(深深深)を組み合わせた勤務指定であり,(原判決別表1~3),また,(イ) 第1 深深)を組み合わせた勤務指定,③2連続深夜勤と2連続深夜勤の間に解放非番を入れた勤務(深深非深深)及び3連続深夜勤(深深深)を組み合わせた勤務指定であり,(原判決別表1~3),また,(イ) 第1審原告Bについては,1 勤務指定期間(4週間)のうちに,①3連続深夜勤の勤務指定,②2連続深夜勤と3連続深夜勤を組み合わせた勤務指定,③2連続深夜勤と新夜勤を組み合わせた勤務指定,④3連続深夜勤と新夜勤を組み合わせた勤務指定,⑤2連続深夜勤,3連続深夜勤及び新夜勤を組み合わせた勤務指定であって(原判決別表4及び5),第1 審原告らのいずれについても,4週間の期間内に8回までというα国際局及びβ郵便局の回数上限を超えていなかったものである。 ウ深夜交替制勤務を実施している民間事業所においては,1か月当たりの深夜帯勤務時間数は,20時間以上40時間未満とする事業所が最も多く,全体の3割弱を占めていることは,引用した原判決が認定するとおりである。 これに対し,第1審原告らの1勤務指定期間(4週間)あたりの「10深夜勤」の指定回数はおおむね4回ないし6回であり(原判決別表1,4- 8 -の勤務パターン),これに1回の深夜帯勤務の時間数6時間(午後10時から午前5時までの7時間から休憩時間1時間を減じた時間数)を乗じると,第1審原告らの深夜帯勤務の時間数の合計は1勤務指定期間(4週間)あたり24時間~36時間となる(6時間×4ないし6回=24時間ないし36時間)。 エまた,深夜交替制勤務を実施している民間事業所においては,1か月あたりの深夜勤務回数は,10回から14回が最も多く,全体の3割強を占めている。 これに対し,第1審被告は,従業員に対する1勤務指定期間(4週間)中の勤務指定回数について,「10深 か月あたりの深夜勤務回数は,10回から14回が最も多く,全体の3割強を占めている。 これに対し,第1審被告は,従業員に対する1勤務指定期間(4週間)中の勤務指定回数について,「10深夜勤」は8回,「8深夜勤」は8回又は10回との目安を設けている。そして,上記のとおり,少なくとも第1審原告らについてこれを超える勤務指定は行われていない。 オ労働環境調査によれば,深夜業を実施している事務所のうち9割の事業所が深夜業の従事者に対して何らかの配慮を行っているが,その内容は,「休憩時間を2回以上確保」(50.3%),「所定外労働時間数の制限」(42.6%),「深夜勤務回数の制限」(38.4%)というのが主なものである(原判決54頁)。 これに対し,第1審被告は,引用した原判決認定のとおり(原判決第3の1(2)イ(イ)b(b)〔25頁〕),深夜業務従事者の健康保持と作業能率維持のための配慮として,通常の勤務4時間につき15分の休息時間とは別に,「10深夜勤」につき60分(休息時間合計113分),「8深夜勤」につき30分(同合計60分),「10深夜勤」及び「調整深夜勤C」につき38分(同合計76分)の休息時間を付与している。休息時間の過ごし方については各従業員の自由にゆだねられており,短時間とはいえ休憩室で仮眠を取ることもできる。 また,連続する勤務と勤務との間の時間につき,「10深夜勤」の連続- 9 -指定の場合は13時間,新夜勤と調整深夜勤の連続指定の場合は11時間15分,「8深夜勤」の連続指定の場合は15時間15分となるよう勤務の始終業時刻を設定した上,連続する勤務と勤務との間に時間外労働を命ずることを制限するなどして,勤務と勤務との間に一定時間が確保されるようにしているものである。 15時間15分となるよう勤務の始終業時刻を設定した上,連続する勤務と勤務との間に時間外労働を命ずることを制限するなどして,勤務と勤務との間に一定時間が確保されるようにしているものである。 カ第1審原告らの作業内容は,引用した原判決認定のとおり(第1審原告Aにつき原判決第3の1(6)イ(ア)a〔42頁〕及び(イ)a〔44頁〕,第1審原告Bにつき同(7)イ(ア)〔49頁〕),郵便物の区分け作業等であって,深夜帯は日中に比べて取扱量が格段に多くなること,取り扱う郵便物の中には重量20~30kg程度のものもあること,などを勘案しても,過酷な身体的負荷を伴うものとまでは認められない。 キこれらによれば,第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定による負担は,深夜帯の時間数,実施回数,休憩時間という点からみて,我が国の他の民間企業等における深夜業に関する一般的状況に照らし,著しく過重なものであるということはできず,従業員の生命,身体に危険を及ぼす程度のものであるとも認めることはできない。このことは,第1審原告らの従事していた作業内容等をも勘案しても同様である。 なお,第1審原告らは,第1審被告における交替制勤務は不規則であって勤務サイクルに周期性や規則性が全くないから,連続「深夜勤」勤務によるダメージが破滅的な程度にまで悪化すると主張する。しかし,上記イのとおり,第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定は何通りかのパターンに集約されるものであって全く規則性がないとまでいうことはできないし,上記オのとおり,連続する勤務と勤務との間には一定時間が確保され,その間に休養を取って疲労を回復することができるよう配慮されているものであるから,第1審原告らの上記主張は採用することができない。 (3) 「深夜勤」の必要性と合 との間には一定時間が確保され,その間に休養を取って疲労を回復することができるよう配慮されているものであるから,第1審原告らの上記主張は採用することができない。 (3) 「深夜勤」の必要性と合理性- 10 -承継計画に規定されている経営方針等(原判決第3の1(4)ア(ア)〔36頁〕),及び,郵便利用が相対的に減少することが見込まれる一方で民間の新規参入により競争が激化するという第1審被告の郵便事業をとりまく情勢等(同1(4)ア(イ)〔36頁〕)からすれば,公社時代と変わらず,より高いサービスの提供(翌日配達地域の拡大等)が不可欠であり,そのための業務繁忙に対応するために「深夜勤」の継続実施は避けられないものといえる。 また,従前の「新夜勤」のみでは拘束時間も長くなり,従業員の勤務管理という面からしても,「深夜勤」勤務の連続指定を認めることが不合理であるとまではいえない。 (4) まとめ以上を総合すれば,連続「深夜勤」勤務の指定を可能とする労働協約及び就業規則等は,憲法13条,18条,25条,国際人権規約A規約7条の趣旨を考慮しても,その内容が公序良俗に反し又はその他の強行法規に反して無効であるとはいえず(なお,安全配慮義務に反することはそもそも無効原因ではない。),第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定が違法,無効なものとはいえない。 したがって,争点(2)についての第1審原告らの主張は理由がない。 4 争点(3)(安全配慮義務違反又は不法行為の成否)について(1) 安全配慮義務違反について使用者は,労働者の生命や身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っているものと解されるところ(最高裁昭和59年4月10日第三小法廷判決・民集38巻6号 違反について使用者は,労働者の生命や身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っているものと解されるところ(最高裁昭和59年4月10日第三小法廷判決・民集38巻6号557頁),第1審原告らは,連続「深夜勤」勤務が第1審原告ら労働者の健康に害を及ぼし過労死等にも追い込むものであるから,第1審被告による連続「深夜勤」勤務の指定は安全配慮義務に違反すると主張する。 しかし,一般に深夜勤務が概日リズムの乱れを生じさせるなどして健康に- 11 -よくない影響を及ぼす可能性があることは否定できないとしても,上記3に判示したとおり,第1審原告らに対する連続「深夜勤」勤務の指定は,その時間数,実施回数,休憩時間,作業内容,等に照らして,それ自体が第1審原告らの身体的精神的健康を害するなどその生命,身体等に危険を及ぼす程度のものであったとは認められない。また,第1審原告らがうつ病等を発症するまで(平成17年度及び平成18年度)の勤務状況(第1審原告Aにつき原判決第3の1(6)ウ〔46頁〕,第1審原告Bにつき同(7)ウ〔51頁〕を併せ考慮しても,第1審原告らにおいては超過勤務(時間外労働)や休日労働をほとんど行っていなかったのであり,第1審原告らが過重な業務を負担する状況にあってそのために心身の健康を害したものとも認めることができない。なお,第1審原告らが現にうつ病等に罹患しているとしても,深夜勤とうつ病等との間の事実的因果関係は明らかとはいえないから,第1審原告らがうつ病等に罹患していることをもって直ちに深夜勤が第1審原告らの生命,身体等に危険を及ぼすおそれがあったものと推認することはできない。 このことに加えて,第1審被告においては,深夜勤を含む深夜帯の勤務に従事する者については,健康診断等の一般的対策の 1審原告らの生命,身体等に危険を及ぼすおそれがあったものと推認することはできない。 このことに加えて,第1審被告においては,深夜勤を含む深夜帯の勤務に従事する者については,健康診断等の一般的対策のほか,自発的健康診断の経費負担,成人病検診受診の自己負担分の助成をし,その結果に基づいて,必要に応じて時間外労働及び「深夜勤」勤務の指定の制限等の措置を取ってきたものであること(第1審原告らについても,健康診断の結果等に基づき,職場復帰後も深夜帯の勤務を指定していない。),などを勘案すれば,第1審被告に第1審原告らに対する安全配慮義務違反があったということはできないものというべきである。 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,安全配慮義務違反についての第1審原告らの主張は,理由がない。 (2) 不法行為について上記(1)に判示したところによれば,第1審被告において,業務の遂行に伴- 12 -う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して第1審原告らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を怠った過失があったということはできないから,その余の点について判断するまでもなく,不法行為についての第1審原告らの主張も,理由がない。 5 まとめ以上によれば,第1審原告らの本件請求は理由がないからこれをいずれも棄却すべきである。 第4 結語以上の次第で,当審の上記判断と結論を異にする原判決はその限度で不当であり,第1審被告の控訴は理由があるから,第1審被告の控訴に基づき原判決中第1審被告の敗訴部分を取り消して同部分につき第1審原告らの請求をいずれも棄却し,第1審原告らの控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁 消して同部分につき第1審原告らの請求をいずれも棄却し,第1審原告らの控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官原田敏章 裁判官加藤謙一 裁判官増森珠美
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