- 1 - 主文 被告人を懲役20年に処する。 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、令和3年9月10日、性風俗店を利用してAを指名したことをきっかけにAと出会ったが、その後、連絡を取り合って店を介さずにAと会うようになり、Aに複数回にわたって金銭を渡すこともあった。しかし、被告人自身に経済的余裕があったわけではない上、金銭のやり取りをめぐる自身の発言でAの信頼を失ったかもしれないと思ったことから、次第にAとの関係を続けていけるのか不安に思うようになった。そして、被告人は、同年11月23日、別の性風俗店に勤務する女性に対してAの殺害をほのめかす発言をしたほか、同月27日には、本件で用いたものを含む包丁2本を購入し、Aの殺害を考えるようになった。その後、被告人は、Aと会う時間を楽しみ喜ぶ一方で、Aの住む札幌に赴く際には前記包丁2本の入った鞄を持ち歩くなど、心の根底ではAを殺害する考えを捨てることはなく、かえって更に不安を募らせ、精神的・経済的な限界を感じて全てを終わらせたいと考えるなど、Aに対する殺意を徐々に強めていった。また、被告人は、Aの本当の生活状況を知りたいなどと考えてAの自宅住所や合鍵を手に入れることを画策するようになり、令和4年1月3日には、Aとの旅行中に了解を得ることなくAの運転免許証を撮影して、Aの住所を把握するに至った。そして、被告人は、同月8日、留守中のA方において、Aの通帳を見たところ、Aが複数の男性から送金を受けていることや生活保護を受給していることを知り、Aが被告人だけの援助で生活しているのではないことに深く失望等すると、全てを終わらせるべくAを殺害しようと決意するに至った。 (罪となるべき事実)被告人は とや生活保護を受給していることを知り、Aが被告人だけの援助で生活しているのではないことに深く失望等すると、全てを終わらせるべくAを殺害しようと決意するに至った。 (罪となるべき事実)被告人は、A(当時47歳)を殺害する目的で、令和4年1月10日頃、札幌市a - 2 -区b条c丁目d番e号「f」g号室A方に侵入した上、同日午後4時24分頃から同日午後4時32分頃までの間に、同所において、帰宅したAに対し、殺意をもって、その胸腹部等を包丁(刃体の長さ約21.2センチメートル)で多数回突き刺し、よって、同日午後5時51分頃、同区h条i丁目j番地k病院において、Aを心臓刺創による出血性ショックにより死亡させた。 (証拠の標目)(括弧内は、証拠等関係カードの検察官請求証拠の番号を示す。)被告人の公判供述鑑定人Bの公判供述証人Cの公判供述統合捜査報告書5通(甲40から44)なお、被告人の公判供述には、犯行に至る心情等につき言葉を濁すなど不明確な部分も散見されるが、この点は、被告人がAと会うようになってから随時自身の思い等を書き留めていたメモ(甲44)を基に認定した(なお、同メモは、作成当時の感情に任せて過激に表現したとみられる部分もあるが、そのような誇張を差し引いてみても、当時の心情等を率直に記載したものとして信用できる。)。 また、罪となるべき事実に関し、被告人は、当公判廷において、令和4年1月10日頃にA方に侵入したのは、生活状況等についてAと話すためであり、A方にいたところ窓から帰宅するAが見えたので、一旦A方を出て共用階段部分で待ち、玄関に入ろうとするAに後ろから声をかけたところ、Aに怒鳴られてパニックになってAを刺したのであって、咄嗟の行動であったと思う旨供述する。 しかし、被告人の供述によるも、被告人 共用階段部分で待ち、玄関に入ろうとするAに後ろから声をかけたところ、Aに怒鳴られてパニックになってAを刺したのであって、咄嗟の行動であったと思う旨供述する。 しかし、被告人の供述によるも、被告人が室内にあった包丁を持ち出した状況は判然としない上、玄関で被告人がAを追い抜いて室内に入り、包丁を持ち出して玄関に戻ってくるまでの間、Aが逃げもせずに玄関でとどまっていたというのも不自然である。そもそも被告人は、A方にいる間、Aを辱める旨なども記載された前記メモを破って床上にまき散らしていたのであって、室内はおよそAと話し合うような状況にはなかった。被告人の供述はこのような状況とも整合しないから、信用で - 3 -きない。むしろ、被告人は、Aが帰宅するまでに、前記メモを破り散らし、AとのLINEのトーク履歴を消去したほか、包丁を箱から取り出し、その箱をわざわざ食器棚の天板に置いているのであるから、全てを終わらせるべくAを殺害する準備をしていたと考えるのが自然である。以上より、判示のとおり認定した。 (法令の適用)罰条住居侵入の点刑法130条前段殺人の点刑法199条科刑上一罪の処理刑法54条1項後段、10条(1罪として重い殺人罪の刑で処断する。)刑種の選択有期懲役刑を選択する。 未決勾留日数算入刑法21条訴訟費用(不負担) 刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)犯行に至る経緯に照らすと、本件は根深い殺意に基づく計画的な犯行である。そして、被告人がAの必死の抵抗を意に介さず、非常に強い力でAの左胸部等を包丁で多数回突き刺し、Aに致命傷を負わせた後もその背部を強く刺していることからすれば、被告人は相当強い殺意で本件に及んでいる。被告人は、本件と似たような経緯から令和 、非常に強い力でAの左胸部等を包丁で多数回突き刺し、Aに致命傷を負わせた後もその背部を強く刺していることからすれば、被告人は相当強い殺意で本件に及んでいる。被告人は、本件と似たような経緯から令和3年3月に殺人未遂罪等により執行猶予付きの判決を宣告されたもので、他人の生命を害してはならないことが強く求められていたにもかかわらず、前記執行猶予付き判決からわずか9か月余りで、前回よりもはるかに危険な手段を用いて殺害行為に及んでいることにも照らすと、今回の被告人によるAの殺害行為は一層強い非難に値する。 弁護人は、本件犯行には長年の交際相手を突然失ったことに起因する被告人の人格の歪みが影響していることを酌むべきである旨主張する。しかし、被告人の人格に歪みがあるとしても、それは精神障害に該当するものではない。そもそも被告人 - 4 -は、Aとの関係維持を望んでAに金銭援助をする一方で、Aとの何気ないやり取りから勝手に不安を抱き、そのような不安をAに打ち明けたり話し合ったりせずに不安を増大させた挙げ句、一方的に殺害を決意して実行したのであって、悪い意味でのうがった見方に基づく自己中心的で身勝手な犯行として非難できこそすれ、このような人格の歪みを酌むべき事情と見ることはできない。 以上からすると、本件は殺人事件の量刑傾向の中でも相当重い部類に属する。加えて、被告人が自己の犯した罪から目を背け、当公判廷でも謝罪しないことや、Aの遺族が厳罰を望んでいることも考慮し、主文のとおり刑を量定した。 (求刑-懲役20年、弁護人の科刑意見-懲役17年)令和4年12月15日札幌地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官井戸俊一 裁判官新宅 4年12月15日 札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官井戸俊一 裁判官新宅孝昭 裁判官滝嶌秀輝
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