【DRY-RUN】主 文 一 原判決を破棄し、第一審判決を次のとおり変更する。 1 上告人は、訴外Dから一三〇〇万円の支払を受けるのと引換えに、 被上告人に対し、第一審判決添付物件目録一記載の
主 文 一 原判決を破棄し、第一審判決を次のとおり変更する。 1 上告人は、訴外Dから一三〇〇万円の支払を受けるのと引換えに、 被上告人に対し、第一審判決添付物件目録一記載の土地上の同二記載の建物を収去 してその敷地を明け渡せ。 2 被上告人のその余の請求を棄却する。 二 訴訟の総費用は、これを三分し、その一を上告人の、その余を被上 告人の各負担とする。 理 由 上告代理人海藤壽夫の上告理由について 一 原審の適法に確定した事実関係は、(一) 上告人は、昭和五八年一〇月一日、 訴外Dから本件造成地の宅地造成工事を代金二三〇〇万円で請け負った、(二) 本 件工事代金は、(1) 契約締結時に三〇〇万円、(2) その後七〇〇万円、(3) 工事完成時に一三〇〇万円を支払うものと定められた、(三) 上告人は、本件造成 地のうち造成工事が完了した部分を順次Dに引き渡した、(四) 第一審判決添付物 件目録一記載の土地(以下「本件土地」という)は、本件造成地の一部で、既に造 成工事が完了しているが、Dに引き渡されることなく、現在、上告人が本件土地上 に同目録二記載の建物(以下「本件建物」という)を所有して占有している、(五) 上告人は、本件工事代金として、Dから前記(二)の(1)及び(2)の合計一〇〇〇 万円の支払を受け、同(3)の残金一三〇〇万円が未払となっている、(六) 本件土 地は、その後、Dから訴外Eに譲渡され、Eから更に被上告人に譲渡されて、現在、 被上告人がこれを所有している、というのである。 二 被上告人の請求は、上告人に対し、本件土地上の本件建物を収去してその敷 地の明渡し等を求めるものであるが、原審は、右事実関係の下において、上告人が - 1 - 本件土地に留置権を行使し得るとした上、その被担 告人の請求は、上告人に対し、本件土地上の本件建物を収去してその敷 地の明渡し等を求めるものであるが、原審は、右事実関係の下において、上告人が - 1 - 本件土地に留置権を行使し得るとした上、その被担保債権の額を本件工事代金二三 〇〇万円に本件造成地中に占める本件土地の面積割合を乗じて得た一九〇万八六二 四円に限定し、被上告人の請求を上告人がDから右金員の支払を受けるのと引換え に本件建物の収去及びその敷地の明渡しを求める限度で認容すべきものとした第一 審判決を正当として、上告人の控訴を棄却している。 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のと おりである。 1 民法二九六条は、留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで留置物の全部に つきその権利を行使し得る旨を規定しているが、留置権者が留置物の一部の占有を 喪失した場合にもなお右規定の適用があるのであって、この場合、留置権者は、占 有喪失部分につき留置権を失うのは格別として、その債権の全部の弁済を受けるま で留置物の残部につき留置権を行使し得るものと解するのが相当である。そして、 この理は、土地の宅地造成工事を請け負った債権者が造成工事の完了した土地部分 を順次債務者に引き渡した場合においても妥当するというべきであって、債権者が 右引渡しに伴い宅地造成工事代金の一部につき留置権による担保を失うことを承認 した等の特段の事情がない限り、債権者は、宅地造成工事残代金の全額の支払を受 けるに至るまで、残余の土地につきその留置権を行使することができるものといわ なければならない。 2 これを本件についてみるのに、前記事実関係によれば、上告人は、本件造成 地の工事残代金の全額の支払を受けるまで、本件造成地の全部につき留置権を行使 し得るところ、本件土地は本件造成地の一部で、上告人はDから本件工事代金 てみるのに、前記事実関係によれば、上告人は、本件造成 地の工事残代金の全額の支払を受けるまで、本件造成地の全部につき留置権を行使 し得るところ、本件土地は本件造成地の一部で、上告人はDから本件工事代金中一 三〇〇万円の支払を受けていないというのであるから、右の特段の事情の存しない 本件において、上告人は、Dから残代金一三〇〇万円全額の支払を受けるに至るま で、本件土地を留置し得るものというべきである。 - 2 - 3 そうすると、被上告人の請求は、上告人がDから一三〇〇万円の支払を受け るのと引換えに本件土地上の本件建物を収去してその敷地の明渡しを求める限度で 認容し、その余を棄却すべきものである。以上と異なる原判決には、民法二九六条 の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らか である。これと同旨をいう論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れ ず、第一審判決は右の趣旨に変更すべきものである。 よって、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条、九二条に 従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 可 部 恒 雄 裁判官 坂 上 壽 夫 裁判官 貞 家 克 己 裁判官 園 部 逸 夫 裁判官 佐 藤 庄 市 郎 - 3 -
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