主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人が控訴人に対して平成8年6月26日付けでした茨城県個人情報保護審議会答申(平成7年3月ないし5月)の非開示決定(但し,控訴人が上記決定の取消しを求めた異議申立てに対し,被控訴人が平成11年2月23日付けの決定で上記決定を取り消した部分を除く。)は,同答申中,本編第3の2,第4及び第5の各部分並びにその余の部分のうち,答申年月日,諮問年月日,事案名,開示請求された文書名,開示請求の年月日,原処分の決定の年月日,開示請求された文書のうち原処分において非開示とされた部分,異議申立年月日,実施機関意見書の受理年月日,異議申立人意見書の受理年月日,審査の各年月日及び第4回審議会から第6回審議会までの実施年度の各記載をそれぞれ非開示とした部分を除き,これを取り消す。 (2) 控訴人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は第1,2審を通じて2分し,その1を控訴人の負担とし,その余は被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が控訴人に対して平成8年6月26日付けでした茨城県個人情報保護審議会答申(平成7年3月ないし5月)の非開示決定(但し,控訴人が上記決定の取消しを求めた異議申立てに対し,被控訴人が平成11年2月23日付けの決定で上記決定を取り消した部分を除く。)を取り消す。 3 訴訟費用は,第一,二審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,茨城県公文書の開示に関する条例(昭和61年3月26日条例第2号。以下「本件条例」という。)5条に基づき,茨城県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の答申(平成7年3月ないし5月,以下「本件文書」という。)の開示の請求をしたところ,被控訴人は,平成8年6月26 本件条例」という。)5条に基づき,茨城県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の答申(平成7年3月ないし5月,以下「本件文書」という。)の開示の請求をしたところ,被控訴人は,平成8年6月26日付けで非開示とする原処分(決定)をし,控訴人からされた行政不服審査法6条に基づく異議申立てについては,平成11年2月23日付けで,上記原処分において本件文書の存否について非開示とした部分を取り消し,異議申立てのその余の部分を棄却するとの決定をしたため,被控訴人に対し,同決定により変更された後の上記原処分の取消しを求めるものである。 2 前提となる事実関係(争いのない事実及び証拠上容易に認定できる事実)(1) 控訴人は,茨城県内に住所を有する者であり,被控訴人は,茨城県知事であり,本件条例2条4項の実施機関である。 (2) 本件条例は,昭和61年10月1日から施行されたものであるが,本件に関する条項は次のとおりである。(甲1,乙3)1条この条例は,県民に対し,公文書の開示を請求する権利を付与するとともに,公文書の開示の手続等に関し必要な事項を定めることにより,開かれた行政を一層推進し,もって地方自治の本旨に即した県行政の進展に寄与することを目的とする。 2条1項この条例において「県民」とは,県内に住所を有する個人並びに県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体をいう。 3条1項実施機関は,県民の公文書の開示を請求する権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し,及び運用するものとする。 2項実施機関は,この条例の解釈及び運用に当たっては,通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに開示されることがないように配慮するものとする。 5条県民は,この条例の定めるところにより,実施機関に対して,公文書の開示を請求することがで は,通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに開示されることがないように配慮するものとする。 5条県民は,この条例の定めるところにより,実施機関に対して,公文書の開示を請求することができる。 6条1項実施機関は,前条の規定による請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは,前条の請求を拒むことができる。 3号個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令(条例,規則等を含む。以下「法令等」という。)の規定により何人でも閲覧することができるとされている情報イ公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報ウ法令等の規定に基づく許可,認可,免許,届出等に際して実施機関が作成し,又は取得した情報であって,開示することが公益上必要であると認められるもの8号県の機関又は国等の機関が行う事務事業について,その検査,監査,取締り,徴税等のための計画及び実施要領,争訟及び交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準,用地買収の計画及び交渉記録その他県の機関又は国等の機関が行う事務事業の実施に関する情報であつて,開示することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるもの2項前条の規定による請求に係る公文書に,前項各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報とが記録されている場合において,前項各号のいずれかに該当する情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,前 されている場合において,前項各号のいずれかに該当する情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,前項の規定にかかわらず,当該それ以外の情報が記録されている部分については,前条の請求を拒むことができない。 (3) 本件文書は,茨城県内のある中学校において教師から誤って体罰を受け,さらに受験差別も受けたとする生徒(異議申立人,以下「本件異議申立人」という。)の保護者が本件異議申立人を代理して,茨城県個人情報の保護に関する条例(平成5年3月26日茨城県条例第2号。以下「本件個人情報保護条例」という。)14条に基づき,茨城県教育委員会(以下「県教委」という。)に対して本件異議申立人の高校受験の際に受験高校に提出された調査書の開示請求をしたが,一部非開示とされたため(以下「本件原決定」という。),異議申立てをした事案について,県教委が,本件個人情報保護条例28条に基づき,審議会に対し諮問をしたことに対する審議会の答申である。 (4) 本件文書の構成及び内容の概要は,次のとおりである。(甲29,乙18,19)ア答申の鑑茨城県個人情報保護審議会委員長から茨城県教育委員会委員長宛のものである。 答申年月日,諮問年月日,文書番号,名宛人である諮問実施機関の委員長の氏名,発信者である個人情報保護審議会の委員長の氏名,表題,本文,事案名及び答申番号が記載されている。 イ答申の本編第1 審議会の結論「第5 審議会の判断」を受けた結論が記載されている。 第2 諮問事案の概要 1 自己情報の開示請求異議申立人が本件個人情報保護条例14条に基づき,実施機関である県教委に対し調査書の開示請求をしたこと及びその年月日が記載されている。 2 実施機関の決定実施 事案の概要 1 自己情報の開示請求異議申立人が本件個人情報保護条例14条に基づき,実施機関である県教委に対し調査書の開示請求をしたこと及びその年月日が記載されている。 2 実施機関の決定実施機関が本件原決定をした年月日,非開示決定をした部分や非開示決定の根拠となった本件個人情報保護条例の条文が記載されている。 3 異議申立て本件異議申立人が行政不服審査法6条に基づき異議申立てを行ったこと及びその年月日が記載されている。 第3 異議申立人の主張の要旨 1 異議申立ての趣旨本件原決定を取り消し,個人情報(調査書)の全部の開示を求めると記載されている。 2 異議申立ての理由異議申立ての理由として本件異議申立人が異議申立書及び異議申立人意見書において主張している内容の要旨が記載され,この中で出身中学校名,受験高校名,教育委員会名等が記載されているほか,異議申立人等の個人のプライバシーに関わる内容が記載されている。 第4 実施機関の主張の要旨教育委員会名が記載されているほか,本件異議申立人の主張に対する反論として,実施機関が個人情報部分開示決定通知書及び実施機関意見書で主張している内容の要旨が記載されている。 第5 審議会の判断 1 本件個人情報に関する事実関係について出身中学校名や受験高校名,受験した年度等が記載されているほか,調査書一般の説明等が記載されている。 2 本件処分に係る具体的判断について審議会の具体的判断が示されている。 3 結論以上により「第1 審議会の結論」のように判断すると記載されている。 第6 審議会の処理状況本件異議申立てに係る審議会の処理経過が記載され,諮問,実施機関意見書の受理,異議申立人意見書の受理,審査の各年月日が記載されている。 (5) 控訴人は,被控訴人に対し,平成8年6月12日付けで 況本件異議申立てに係る審議会の処理経過が記載され,諮問,実施機関意見書の受理,異議申立人意見書の受理,審査の各年月日が記載されている。 (5) 控訴人は,被控訴人に対し,平成8年6月12日付けで,本件条例5条に基づき,本件文書の開示を請求したところ,被控訴人は,同月26日付けで,本件文書については本件条例6条1項3号本文に該当する非開示事由があるとの理由でその存否を含めて非開示とし,審議会の判断に関する部分については同条8号に該当する非開示事由があるとの理由で非開示とする旨の原処分(決定)をした。(甲2)(6) 控訴人は,被控訴人に対し,同年8月19日,上記原処分を不服として,行政不服審査法6条に基づき,異議申立てをしたところ,被控訴人は,平成11年2月23日付けで,上記原処分において本件文書の存否について非開示とした部分を取り消し,その余の部分については異議申立てを棄却するとの決定をしたが,その理由中で,本件文書には本件条例6条1項3号本文に該当する非開示事由があるとしたほか,審議会の判断に関する部分のみならず,本件文書全体について本件条例6条1項8号に該当する非開示事由があるとした。(甲5の1及び2)(7) 本件個人情報保護条例は平成5年10月1日に施行されたが,平成○年○月までにされた茨城県内での調査書の開示請求は,本件異議申立人が平成○年○月及び平成○年○月に同一の調査書について行った2件しかなかった。また,平成○年○月から○月までの審議会の答申は○件しかなかった。(乙2,乙6の1,19)(8) 本件文書に関する新聞報道のうち,平成○年○月○日の記事によれば,本件異議申立人やその母親の実名は記載されていないが,本件異議申立人による異議申立ての事実,異議申立年月日,教育委員会名,受験高校名,受験年度,本件原決定の内容及び 平成○年○月○日の記事によれば,本件異議申立人やその母親の実名は記載されていないが,本件異議申立人による異議申立ての事実,異議申立年月日,教育委員会名,受験高校名,受験年度,本件原決定の内容及び年月,諮問年月日,第1回目の審議の日,本件異議申立人の主張の要旨等が明らかにされている。 また,平成○年○月○日及び同月○日の新聞記事によれば,本件異議申立人やその母親の実名は記載されていないが,審議会が調査書の全面開示の答申をしたこと,答申年月日,諮問事案名,本件異議申立人が本件原決定に係る請求をした年月,本件異議申立人が調査書の開示請求をした事実,本件原決定の年月,開示ないしは非開示とされた調査書の項目等が明らかにされている。 さらに,本件異議申立人の母親が,平成○年○月にした調査書の開示請求に対する部分開示決定が不服であるとして,平成○年○月に再び同一の調査書の開示請求をしていた当時,その母親から情報提供された新聞社が,7回にわたり,同人が本件異議申立人を代理して調査書の開示請求をするに至った事情等について新聞に連載した。その連載記事においては,本件異議申立人やその母親の実名は記載されていないが,本件異議申立人の出身中学校名,その中学校の当時の校長及び教頭が実名により特定され,当時の中学校の担当教師,級友及び本件異議申立人本人もイニシアルにより特定され,また本件異議申立人の母親において本件異議申立人が上記担当教師から誤認体罰を受けたと知ったことを発端として,中学校との間で紛争状態となり,本件異議申立人の中学校卒業後も中学校の調査書の開示請求や異議申立てをしたこと等が極めて具体的かつ詳細に記載されているほか,当時の中学校の教師や生徒のインタビュー内容が記載されている。 (甲18の2から8まで,19の4から8まで,甲35の2,乙6の1から3 議申立てをしたこと等が極めて具体的かつ詳細に記載されているほか,当時の中学校の教師や生徒のインタビュー内容が記載されている。 (甲18の2から8まで,19の4から8まで,甲35の2,乙6の1から3まで,7の1から4まで) 3 本件訴訟における争点(1) 本件条例6条1項3号本文の該当性(控訴人)ア行政機関の保有する情報の公開に関する法律,平成11年5月14日法律第42号(以下「情報公開法」という。)1条は,情報公開制度が憲法上の原理である国民主権主義に基づくことを明らかにし,情報公開法41条は,同法1条を踏まえて,地方公共団体は,情報公開法の趣旨にのっとり情報公開条例を策定し実施するよう努めなければならないことを明らかにしている。したがって,既存の情報公開条例についても,非公開条項によって例外的に非公開とされる情報の範囲は,情報公開法の趣旨にのっとり法律上の不開示情報の範囲と同等あるいはそれより狭く解釈適用することが求められる。 本件条例1条は,公文書の開示を請求する権利を付与するとともに,開かれた行政を一層推進し,もって地方自治の本旨に即した県行政の進展に寄与することを目的とする旨規定している。これは,憲法21条の表現の自由の派生原理として導かれる知る権利と共に,国民主権の理念から制度化された情報公開法の趣旨にのっとり,これを地方自治の本旨に即したものとして,解釈運用することを明らかにしたものであり,この観点から本件条例の文言及び趣旨に即して合理的に解釈すべきことが求められているのである。 すなわち,情報公開法1条及び41条の趣旨にのっとり国民主権の理念及び憲法21条の趣旨(表現の自由とその派生原理としての知る権利)を踏まえて,本件条例によってひとたび実定法上の根拠を持った情報公開請求権を制限する本件条例6条1項各号の非開 のっとり国民主権の理念及び憲法21条の趣旨(表現の自由とその派生原理としての知る権利)を踏まえて,本件条例によってひとたび実定法上の根拠を持った情報公開請求権を制限する本件条例6条1項各号の非開示事由については,憲法の趣旨に従って非開示情報が最小限となるように厳格に解釈しなければならない。 イ本件条例6条1項3号本文は,個人のプライバシーの範囲を一律に決定することは困難であるので,明らかに個人のプライバシーと考えられるものはもとより,個人識別情報を一切非開示としたものである。他方で同号ただし書アからウまでは,明らかに個人のプライバシーを侵害しないと考えられる情報及び開示する公益上の必要があると認められる情報を開示できるものとしている。 本件条例は,「実施機関は,県民の公文書の開示を請求する権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し,及び運用するものとする。」(同条例3条1項)として,公文書の「原則開示」の基本理念を明示したうえで,「公文書の開示を請求する権利」(同条例5条)として情報公開請求権を実定法上具体化したものであるから,その趣旨を踏まえて,非開示情報は必要最小限となるように解釈されなければならない。他方,同条例3条2項は,「実施機関は,この条例の解釈及び運用に当たつては,通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに開示されることがないように配慮するものとする。」とし,プライバシーの保護を図っていることから,同条例6条1項3号は知る権利とプライバシーの権利の調整規定であり,プライバシーの権利の保護のために必要な限りでのみ知る権利の保障に優先して情報を非開示とすることができると解釈されなければならず,プライバシーの権利に影響を及ぼさない情報についてまで非開示とすることはできない。したがって,同号に規定する「個人に関する 利の保障に優先して情報を非開示とすることができると解釈されなければならず,プライバシーの権利に影響を及ぼさない情報についてまで非開示とすることはできない。したがって,同号に規定する「個人に関する情報」に該当するか否かは,終局的には本件文書に記載されている情報がプライバシーの権利を侵害する種類の情報に該当するか否かという観点から限定的に解釈されるべきである。 ところで,個人のプライバシーとは,私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれがあり,一般人の感受性を基準として当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められ,一般の人々に未だ知られていないことがらであると解されるところ,本件文書には単に異議申立人と記載されているだけで,異議申立人の住所及び氏名は記載されていないし,出身中学校名,受験高校名等はいずれも既に本件異議申立人が自らプライバシーを放棄して記者会見で公表し,また新聞に記載された内容であり,一般の人々に未だ知られていないことがらとはいえず,プライバシーとしての要保護性を欠いている。また,本件異議申立人等の個人のプライバシーに関わる内容や出身中学校名,受験高校名等の個人情報に関する事実関係も,上記記者会見で本件異議申立人が述べた以上のものではないと推定することができる。また,本件異議申立人の主張に対する実施機関の反論及び審議会の本件原決定に係る具体的判断は,本件個人情報保護条例中の非開示事由の解釈をめぐるものであるから,一般の人々に未だ知られていないことがらであるとは解されない。よって,本件文書にはなんらプライバシーに関わる記載はされていない。 そして「個人に関する情報」の中には,保護の程度に相違のあるものが存在するから,「個人に関する情報」に該当するというだけで同号本文を一律適用すべきではない。 バシーに関わる記載はされていない。 そして「個人に関する情報」の中には,保護の程度に相違のあるものが存在するから,「個人に関する情報」に該当するというだけで同号本文を一律適用すべきではない。 ウ本件文書は,本件異議申立人が,本件個人情報保護条例に基づき調査書の開示請求をしたところ県教委が部分開示決定をしたため,さらに異議申立てをしたのに対して,審議会が調査書の全面開示の答申をした答申書である。 このような異議申立ての場合に,関係者として想定されるのは,①調査書の対象となる本人とその近親者,②調査書の作成中学校及び受験高校の関係者,③当該異議申立てに係る県教委及び審議会の関係者,④調査書の対象者本人の近隣住民であるが,本件条例6条1項3号本文の「識別され得るもの」について,本件条例の解釈及び運用に関する通達(昭和61年7月10日付け総第247号総務部長依命通達。以下「本件通達」という。)は,「特定個人に関する情報から又は他の情報と結びつけることにより,当該個人が識別され得る可能性がある情報をいう。」としていることからすると,上記①から③までの者は,当該異議申立てという情報から特定個人を識別することが可能であるから,「他の情報」にこれらの者の有する特別の情報を含むとして,同号の該当性を判断することは相当でない。したがって,同号本文の該当性の判断に当たっては,上記①から③までの特別の情報を有している関係者以外の者,すなわち一般人からみて,通常入手し得る他の情報と照合することにより,新たに個人を識別できるか否かを判断すべきである。また,④についても当該個人に関する情報の性質や内容に応じて個別に判断する必要があり,特別の事情により新たに公にされる情報に基づいて相当広範な地域住民が特定個人を識別することとなる場合は格別,そうでない場合には① ても当該個人に関する情報の性質や内容に応じて個別に判断する必要があり,特別の事情により新たに公にされる情報に基づいて相当広範な地域住民が特定個人を識別することとなる場合は格別,そうでない場合には①から③までと同様に解すべきである。 特に本件では,異議申立てに至った経過,背景について,新聞が詳細な報道をしており,とりわけ新いばらき新聞の連載は詳細で,これらの記事を読み込んだ関係者は本件異議申立人を識別できることは当然であるが,本件異議申立人に関わる関係者は,もともと識別できたにすぎず,本件文書の開示により,新たな情報を獲得する可能性がほとんどない。このような者が識別できることを理由に開示を制限すれば,情報開示制度が機能しなくなるから,識別できるかどうかは,一般の第三者を基準にして決定すべきである。 そこで,本件文書について,一般人からみて通常入手し得る他の情報と照合することにより新たに個人を識別できるか否かを判断するに,本件文書には,「第3異議申立人の主張の要旨」の一部分と「第5 審議会の判断」の「1 本件個人情報に関する事実関係について」において,出身中学校名と受験高校名が記載されているが,その他の部分においては当該異議申立人の氏名,生年月日,住所等は何ら記載されておらず,上記2か所の出身中学校名と受験高校名を新たに開示したとしても,新たに当該異議申立人を識別できることにはならない。また,本件文書の作成年月日,諮問年月日,開示請求文書名,審議会の結論,本件異議申立人による調査書の開示請求日,調査書の項目名,異議申立年月日,本件異議申立人の氏名を明示しないままで,本件異議申立人の主張の要旨及び審議会の判断を開示したとしても,一般人において新たに本件異議申立人の氏名が識別されるものではない。よって,本件文書を開示しても,新たに本件異 氏名を明示しないままで,本件異議申立人の主張の要旨及び審議会の判断を開示したとしても,一般人において新たに本件異議申立人の氏名が識別されるものではない。よって,本件文書を開示しても,新たに本件異議申立人の氏名が識別され得るものではないから,同号本文に該当する非開示事由はない。 エまた,本件個人情報保護条例33条は「知事は,毎年,各実施機関に係るこの条例の運用状況を取りまとめ,公表するものとする。」と規定し,また本件条例15条にも全く同一の文言の規定があるところ,本件文書は,同条に基づく運用状況を取りまとめた本来公表されるべきものであるから,本件条例6条1項3号ただし書イに該当するものとして公表されるべきである。 次に,茨城県においては,審議会の答申書である答申1号が本件条例に基づいて全部開示されている。答申1号からは,異議申立人が平成6年度茨城県立土浦第一高等学校の受験生であることが分かり,また,同答申の事案においても異議申立てについて新聞報道がされていたが,同答申は異議申立人の個人名を特定しないものであったため,「特定の個人が識別され,又は識別され得る」部分を欠くものとして,本件条例6条1項3号本文には該当せず,同号ただし書イに該当するものとして,本件条例6条2項の適用を判断するまでもなく全部開示されたのである。よって,本件文書も,答申1号と同種であるから,仮に特定の個人の住所及び氏名が記載されていたとしても,その住所及び氏名を除いた部分については,答申1号と同様に開示されるべきである。 また,本件条例は,本件個人情報保護条例と全く同じ文言により,個人識別可能な文書の開示を制限しているが,日立女子高等学校教員組合が異議申立人である茨城県公文書開示審査答申37号について,開示を認めた。異議申立人は,個人ではないが,関係者個人につ 文言により,個人識別可能な文書の開示を制限しているが,日立女子高等学校教員組合が異議申立人である茨城県公文書開示審査答申37号について,開示を認めた。異議申立人は,個人ではないが,関係者個人についての識別可能性が問題となる。同答申自体には,個人識別情報は見当たらないが,背景にある日立女子高校における校長の地位保全,労使紛争,控訴人をはじめとする授業持ち時間差別,控訴人への懲戒解雇などの問題をめぐって,一連の新聞報道がされており,異議申立てについても,新聞報道で時期,執行委員長名が明らかにされている。したがって,異議申立ての年月日を見ただけで,執行委員長である控訴人が異議申立てを行ったことの特定が可能となる。 控訴人が異議申立人である茨城県公文書開示審査答申42号は,本件文書の非開示についての異議申立てに関する審査会答申であるが,新聞報道により,異議の申立ての日,異議申立てをした控訴人の氏名,年齢,職業,居住地,開示を求める情報の性質などが明らかにされている。したがって,この答申が開示されれば,事情を知る関係者にとって,個人識別は可能であるが,答申は開示されている。 したがって,本件文書も開示されるべきである。 (被控訴人)ア本件条例1条の情報公開請求権は,知る権利を具体化したものではなく,あくまで本件条例で付与したものである。したがって,本件条例の解釈は,個々の条文及び条例の趣旨に照らして行うべきであり,憲法を拠り所に本件条例の適用除外事項(非開示事由)の解釈を限定的にすべきものではない。すなわち,公文書開示請求権は,憲法から直接導き出されるものではなく,本件条例によって創設されたものであり,適用除外事項(非開示事由)の解釈も本件条例の制定された趣旨,目的等を踏まえ条文に従って解釈すべきである。 イ本件条例6条1項は,「実施機関 れるものではなく,本件条例によって創設されたものであり,適用除外事項(非開示事由)の解釈も本件条例の制定された趣旨,目的等を踏まえ条文に従って解釈すべきである。 イ本件条例6条1項は,「実施機関は,前条の規定による請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは,前条の請求を拒むことができる。」とし,同項3号本文は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であつて,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。」(以下,本件条例6条1項3号に該当する情報を「個人識別情報」という。)としているところ,本件通達は,同号の趣旨及び解釈について,「個人のプライバシーの権利は,憲法上の基本的人権の一つであり,この条例の下においても最大限保護する必要がある。しかし,保護すべき個人のプライバシーの範囲を一律に決定することは極めて困難であるので,本号では,明らかに個人のプライバシーに関する情報と考えられるものはもとより,特定個人が識別され,又は識別され得る情報を原則として一切非開示とすることとした。」としている。 ウ本件条例6条1項3号本文は「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。」とし,「特定個人が識別され得るもののうち,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」(大阪府の改正前の公文書公開等条例9条1号)とはしていないから,同号本文に該当する情報は,個人情報として保護すべき程度にあるか否かや,プライバシーの対象となる本人がこれを放棄したか否かを考慮する必要はない。 また,本件通達は,「識別され得るもの」とは,「特定個人に関する情報から又は他の情報と結びつけることにより,当該個人が識別され得る可能性がある情報をいう。」としている。そして,「他の情報」の範囲については, 件通達は,「識別され得るもの」とは,「特定個人に関する情報から又は他の情報と結びつけることにより,当該個人が識別され得る可能性がある情報をいう。」としている。そして,「他の情報」の範囲については,昭和62年11月2日付けの福岡県情報公開審査会答申は,「入手可能な他の公的機関の情報及び信ぴょう性の高い入手容易な私的情報」としているのに対し,他の事例について本件条例を解釈した平成元年1月26日付けの茨城県公文書開示審査会答申は,公的機関の情報等に限定せず,級友やその他学校関係者等特別の情報を有している者も含めて個人識別性を認めている。なお,平成12年3月28日に公布され,同年10月1日に施行された現行の茨城県情報公開条例7条2号においては,「他の情報と照合することにより,特定の個人が識別できることとなるもの」を非開示事由と規定し,「他の情報」について,「広く一般に入手可能な情報のほか,当該事案に関し,特定の関係者など一部の者のみが知り得る情報も含まれる」としていることからしても,「他の情報」の範囲については限定して解すべきではない。 エ本件文書は,自己に関する個人情報(以下,「自己情報」という。)の開示請求に係る異議申立事案に関し,本件個人情報保護条例28条の規定に基づき,実施機関である県教委から諮問を受けた審議会の答申である。本件文書の内容は,本件個人情報保護条例の趣旨及び解釈をめぐる審議会の判断ではあるが,当該事案の一方当事者である本件個人情報保護条例に基づき開示請求を行った本件異議申立人に向けられたものでもあることから,「個人に関する情報」の側面を有する。また,本件文書は,本件異議申立人の自己情報の開示請求に関するものであることから,本件異議申立人の「個人に関する情報」である。 控訴人が請求した平成○年○月から○月までの期間には, の側面を有する。また,本件文書は,本件異議申立人の自己情報の開示請求に関するものであることから,本件異議申立人の「個人に関する情報」である。 控訴人が請求した平成○年○月から○月までの期間には,審議会の答申は○件しかなく,当該答申について何らかの情報を有している関係者にとっては,当該答申に係る事案の当事者を容易に識別できる可能性がある。すなわち,控訴人が開示を請求していたのは,結局,特定の1つの答申であり,控訴人の主張によれば,それは,教育現場における体罰に関わり,受験差別を受けたとする保護者からの事実解明を求めての自己情報の開示に関わるものである。そして,平成○年○月には,本件異議申立人が,調査書の開示請求に関して,県教委の部分開示決定に対し異議申立てをしたことが,平成○年○月には,上記期間(○月○日と特定しているものもある。)に調査書の全面開示の答申が出されたことがそれぞれ複数の新聞により報道されている。そうすると,本件文書は,まさにこれらの新聞により報道された答申に他ならないことは明らかである。 茨城県において,本件個人情報保護条例が施行されたのは,平成5年10月1日であるが,同条例施行後,調査書の開示請求は極めて数が少なく,平成○年○月の新聞報道時までにされたのは,本件異議申立人による○件しかない。このことは,同月○日付けの新聞においても明らかにされている。 このような本件個人情報保護条例に基づく調査書の開示請求が極めて少ない状況下にあって,調査書に関する一連の新聞報道も全て本件異議申立人に関わるものに限られていることを考慮すると,本件異議申立人が開示請求を行うに至った事情や背景について何らかの情報を有している関係者,具体的には本件異議申立人の出身中学校の当時の教師,生徒及びその父兄の中には,本件文書とこれらの新聞報道と ,本件異議申立人が開示請求を行うに至った事情や背景について何らかの情報を有している関係者,具体的には本件異議申立人の出身中学校の当時の教師,生徒及びその父兄の中には,本件文書とこれらの新聞報道とを結びつけることにより,本件異議申立人が誰であるかを知る者がいると考えられることから,特定の個人が識別され得るものと考えられるのである。 したがって,本件文書に記載されていると思われる対象者氏名,受験高校名などを伏せたとしても,上記のとおり,控訴人の開示請求の内容に該当する審議会の答申は1件しかなく,一連の新聞報道により特定の個人(本件異議申立人)が識別され得るから,開示が可能となるとはいえない。 オなお,本件文書は本件個人情報保護条例33条に基づく運用状況をとりまとめた文書ではないから,本件条例6条1項3号ただし書イには該当しない。 また,答申1号については,同答申の記載内容によれば,「異議申立人の子が平成6年度に茨城県立土浦第一高等学校受験生である」ことはわかるが,それ以外に「特定の個人が識別され,又は識別され得る」情報は記載されていない。また,同答申と新聞情報とを結びつけたとしても,これらの新聞の記事には,異議申立人の年齢及び職業が記載されているのみであることから,当時の土浦第一高等学校受験関係者,具体的には,同校の教職員,受験生及びその父兄等が同答申書とあわせて当該新聞記事を読んでも,当該異議申立人について人物を特定し,又は特定し得る程度に至るものではない。 答申37号(学校法人○○○○高等学校に係る「平成6年度決算報告書」非開示決定にかかる事案)及び同42号(「個人情報保護審議会答申(平成7年3月から5月)」非開示決定にかかる事案)については,特定の個人を識別し,又は識別され得る情報を伏せ字として,それ以外の部分の開示・非開示を判 る事案)及び同42号(「個人情報保護審議会答申(平成7年3月から5月)」非開示決定にかかる事案)については,特定の個人を識別し,又は識別され得る情報を伏せ字として,それ以外の部分の開示・非開示を判断した結果,本件条例各号に掲げる非開示情報のいずれにも該当しないと判断されたものである。 (2) 本件条例6条1項8号の該当性(控訴人)(1)で指摘したとおり,情報公開法1条及び41条の趣旨にのっとり国民主権の理念及び憲法21条の趣旨(表現の自由とその派生原理としての知る権利)を踏まえて,本件条例によってひとたび実定法上の根拠を持った情報公開請求権を制限する本件条例6条1項各号の非開示事由は,憲法の趣旨に従って非開示情報が最小限となるように厳格に解釈しなければならない。 本件条例6条1項8号は,県又は国等の機関が行う事務事業の目的達成及びその公正かつ円滑な実施を確保する観点から定めたものであるところ,あくまでも本件条例の運用の基本方針は「県民の公文書の開示を請求する権利が十分に尊重される」(本件条例3条1項)ところにあり,「開かれた行政を一層推進し,もつて地方自治の本旨に即した県行政の進展に寄与することを目的とする」(本件条例1条)ものであるから,実施機関は本号で定める非開示事項に該当するかどうかを判断する場合には,主観的,恣意的,あるいは従来の慣行だけを基準に判断するようなことがあってはならず,公文書開示制度の趣旨,目的を尊重し,客観的合理的な判断をすることが要求されている。 本件条例6条1項8号後段は「開示することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」と規定しており,法律効果の発生要件として規範的評価を 将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」と規定しており,法律効果の発生要件として規範的評価を要する抽象的概念を取り込んだ条文になっている。そしていわゆる規範的要件については,その法律効果を主張する側が,その規範的評価の成立を根拠づけるのに必要な個別具体的な,社会的経験的事実の主張,立証を要する。したがって,「目的が達成できなくなるおそれ」,「事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれ」は,いずれもその個別具体的な事実の存在を客観的合理的に判断しなければならないのであって,その具体的な危険が存在することが客観的に明白である場合にはじめて当該公文書を非開示とすることができると解すべきである。また,当該目的が達成できなくなる「おそれ」は,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が当然に要求されるし,また,「支障」は,名目的なものでは足りず,実質的なものが要求されるというべきである。 しかし,本件文書においてはそのような危険は存在しない。 また,茨城県においては,本件文書と同種の答申1号が本件条例に基づいて全部開示されているが,これによって審議会の目的が達成できなくなったり,事務事業の公正・円滑な実施に著しい支障はなんら生じていない。 したがって,本件文書には本件条例6条1項8号に該当する事実は何ら記載されていないから,本件文書は開示されるべきである。 (被控訴人)ア本件条例6条1項8号は,「県の機関又は国等の機関が行う事務事業について,その検査,監査,取締り,徴税等のための計画及び実施要領,争訟及び交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準,用地買収の計画及び交渉記録その他県の機関又は国等の機関が 行う事務事業について,その検査,監査,取締り,徴税等のための計画及び実施要領,争訟及び交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準,用地買収の計画及び交渉記録その他県の機関又は国等の機関が行う事務事業の実施に関する情報であつて,開示することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」と規定しているところ,本件通達は,同号の趣旨及び解釈について,「本号では,開示することにより,「当該事務事業」の目的が達成できなくなるおそれのある情報又はその公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのある情報のほか,「当該事務事業」の目的達成後又はその実施後においても,開示することにより,「将来の同種の事務事業」の目的が達成できなくなるおそれのある情報又はその公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのある情報については,開示しないこととしている。」とし,また,「事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの」とは,事務事業の性質又は事務事業の実施の目的からみて,開示することにより,当該事務事業を実施する意味を喪失し,又は減殺することになるおそれのある情報をいう。」としている。 また,本件条例6条1項8号は,「著しい支障が生ずるおそれのあるもの」と規定し,「著しい支障を生ずることが明らかである情報」(埼玉県行政情報公開条例6条1項参照)と規定していないから,後者については「著しい支障を生ずる具体的な危険が存在することが客観的に明白である」と解釈するのが妥当であるとしても,前者については「著しい支障が生ずるおそれのあることだけで足りる」と解釈すべきである。 イ茨城県においては,これまでのところ審議会の答申を公 が客観的に明白である」と解釈するのが妥当であるとしても,前者については「著しい支障が生ずるおそれのあることだけで足りる」と解釈すべきである。 イ茨城県においては,これまでのところ審議会の答申を公にはしておらず,また答申の概要も作成していないが,これは,本件条例に基づく開示請求は,本件条例2条1項に規定する者であれば誰でも可能であるのに対し,本件個人情報保護条例に基づく開示請求は,本人が自己情報についてのみ請求することが可能であり,開示請求に対する非開示決定等に対する異議申立ても本人のみがなし得ることから,審議会の答申は,本人の「個人に関する情報」であるということが大きく影響していること,個人情報保護条例の自己情報の多くは,プライバシー性の高い情報であり,本人のプライバシーに関わる情報が含まれている審議会の答申を公表することによって,特定の個人が識別されることを危惧することによるものである。 このような背景のもとで,控訴人から本件条例に基づく開示請求がされたわけであるが,本件文書に記載されている審議会の判断は,本件個人情報保護条例17条1項により実施機関の行った開示又は非開示の決定について,対象文書である調査書自体を確認し,本件異議申立人,実施機関の両当事者の主張や当該事案の個別具体的事情を勘案した上で,当該決定に係る個人情報の内容,性格に応じ,同条例15条各号の規定に照らし,審議会が当該決定の適否を判断した結果であり,本件異議申立人の本件個人情報保護条例に基づく開示請求に対する実施機関の決定についての審議会の個別の判断であるにもかかわらず,仮に審議会の判断に関する部分のみを開示するとなると,当該事案に係る個別具体的事情が捨象されて,判断内容が一般化され,審議会の判断の趣旨,内容に関し,誤解を生じさせるおそれがあり,審議会における審 仮に審議会の判断に関する部分のみを開示するとなると,当該事案に係る個別具体的事情が捨象されて,判断内容が一般化され,審議会の判断の趣旨,内容に関し,誤解を生じさせるおそれがあり,審議会における審査判断事務の実施に著しい支障が生ずるおそれがあるといえるから,本件文書の判断部分(答申の本編第5 審議会の判断 2 本件処分に係る具体的判断について)は本件条例6条1項8号に該当する。 加えて,本件文書の開示請求があった平成8年6月当時の調査書は,平成6年3月から導入された新入試制度により調査書の記載内容が変更され,観点別学習状況の項目があるなど,平成5年3月に実施された県立高校入試に使用された調査書とは内容が異なっているのであるが,そのような事情を知らない者にとっては,審議会が新入試制度下の調査書について開示すべきとの判断を下したかのような誤ったとらえ方をされるおそれがあり,その結果,審議会における公正円滑な審査判断事務に著しい支障が生ずることとなる。 また,本件原決定においては,本件文書の判断部分のみが本件条例6条1項8号に該当すると判断したが,異議申立てに対する決定においては,茨城県公文書開示審査会の答申を受けて,本件異議申立人を含め,今後本件個人情報保護条例に基づく開示請求をし,それに続く異議申立てをしようとする者のプライバシーを保護するため,本件文書全体が本号に該当するとした。なぜなら,本件個人情報保護条例における自己情報の開示請求は本人のみ行うことができ,当該開示請求及び異議申立てに関する事実や経過等は,通常は他人に知られたくない自己のプライバシーであり,そのプライバシーが侵害されることをおそれ,安心して開示請求や不服申立てができなくなるという懸念を自己情報の開示請求をしようとする者が抱くことも考えられるためであり,その結果, プライバシーであり,そのプライバシーが侵害されることをおそれ,安心して開示請求や不服申立てができなくなるという懸念を自己情報の開示請求をしようとする者が抱くことも考えられるためであり,その結果,本件個人情報保護条例に基づく自己情報の保護制度を推進している茨城県の業務の目的が達成できなくなるおそれがあると考えられるためである。特に本件文書の場合は,「答申の本編第3 異議申立人の主張の要旨 2 異議申立ての理由」において異議申立ての理由として,異議申立人が異議申立書及び異議申立人意見書において主張している内容の要旨が記載されており,出身中学校名,受験高校名,出身中学校所在市町村の教育委員会名(以下,「教育委員会名」という。)等が記載されているほか,本件異議申立人等の個人のプライバシーに関わる内容が記載されているため,当該部分に記載されている情報を開示すると,新聞報道と結びつけることにより,当時の学校関係者には当該答申に係る異議申立人が識別され得るという特殊なケースであった。 (3) 部分開示の可否(控訴人)ア本件条例6条2項の規定は,開示請求に係る公文書に非開示事由に該当する情報が部分的に記録されている場合であつて,当該情報が記録されている部分とそれ以外とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,当該情報が記録されている部分を分離して,それ以外の残りの部分については開示しなければならないことを定めたものである。そして同項に基づく部分開示の方法として,開示できる部分と非開示とする部分とが同一のペ一ジにある場合,非開示とする部分を何らかの方法で覆って複写し,その複写物をもって,又は該当するペ一ジのすべてを複写したうえで,非開示とする部分をマジック等で消し,それを更にもう一度複写し,その複写物をもっ 場合,非開示とする部分を何らかの方法で覆って複写し,その複写物をもって,又は該当するペ一ジのすべてを複写したうえで,非開示とする部分をマジック等で消し,それを更にもう一度複写し,その複写物をもって開示することが義務づけられている。「請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるとき」とは,開示情報に基づいて情報開示請求者の求めの全部又は一部を充足するものと同請求者の主観において認められるものであれば,それで足りると解すべきである。 また,個人に関する情報が記録された公文書の部分開示の取扱いにおいては,特に「特定の個人が識別される要素は,通常,住所及び氏名であるので,住所及び氏名が記録されている公文書は,6条1項3号本文に該当するものと考えられる。しかし,住所及び氏名を削除することにより,特定の個人が識別され得ることがなくなる場合において,これらを容易に,かつ,請求の趣旨が損なわれない程度に合理的に削除することができる場合には,6条2項の規定により,当該住所及び氏名を削除したその他の部分を開示するものとする」ことが義務づけられ,できる限り部分開示義務を尽くすことが特に明定されているのである(本件通達の第6条第1項第3号関係の運用の3)から,本件文書のような場合には,個人識別情報を含む公文書全体を独立した一体的な情報として取り扱うのではなく,その項目ごとにさらに細分化して,そのうち個人識別情報の一部を非開示とすることがあるとしても,その余の部分は非開示情報が記録されていないとして,開示することが実施機関に義務づけられているのである(情報公開法6条2項参照)。 イ本件文書には,上記(1)(控訴人)ウで述べた2か所において,出身中学校名と受験高校名が記載されているが,その他の部分においては本件文書の一対象者を特定する情報は何ら記 報公開法6条2項参照)。 イ本件文書には,上記(1)(控訴人)ウで述べた2か所において,出身中学校名と受験高校名が記載されているが,その他の部分においては本件文書の一対象者を特定する情報は何ら記載されておらず,上記2か所の記載だけでは本件文書の対象者氏名を何ら特定することはできない。またこれらの記載だけでは,特別の情報を有している関係者以外の者,すなわち一般人からみて,通常入手し得る他の情報と照合しても個人を識別できるとはいえないから,本件文書には何ら「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」は含まれない。 したがって,本件文書は,全部開示されるべきである。 ウ審議会の答申書である答申1号が本件条例に基づいて全部開示されている。答申1号からは,異議申立人が平成6年度茨城県立土浦第一高等学校の受験生であることが分かり,また答申1号の事案においても異議申立てについて新聞報道がされていたが,答申1号は異議申立人の個人名を特定しないものであったため,「特定の個人が識別され,又は識別され得る」部分を欠くものとして,本件条例6条1項3号本文には該当せず,同号ただし書イに該当するものとして,本件条例6条2項の適用を判断するまでもなく全部開示されたのである。本件文書は,答申1号と同種のものであるから,答申1号と同様に全部開示されるべきである。 (被控訴人)ア本件条例6条2項は,「前条の規定による請求に係る公文書に,前項各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報とが記録されている場合において,前項各号のいずれかに該当する情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,前項の規定にかかわらず,当該それ以外の情報が記録されている部分については,前条の請 以外の情報が記録されている部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,前項の規定にかかわらず,当該それ以外の情報が記録されている部分については,前条の請求を拒むことができない。」と規定しているところ,本件通達によれば,同項の趣旨及び解釈は,「本項は,開示請求に係る公文書に,適用除外事項に該当する情報が部分的に記録されている場合であって,当該情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,当該情報が記録されている部分を分離して,それ以外の残りの部分については開示しなければならないことを定めたものである。」とし,また,「請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離できるとき」とは,「分離した残りの部分の開示によって,請求者の求めの全部又は一部を充足し,かつ,情報の内容について誤解を生ずるおそれがない場合をいう。」としている。 イ本件文書は,全体が本件条例6条1項3号本文及び8号に該当するものであるが,本件文書に記載されている情報を細分化すればするほど,当該部分のみでは非開示事由に該当しないものも当然あり得るが,部分開示をするに当たっては,非開示情報とそれ以外の部分とが請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離できること,分離した残りの部分の開示によって請求者の求めの全部又は一部を充足し,かつ,情報の内容について誤解を生ずるおそれがない場合であることが必要であるため,その部分を開示することができるとは限らない。 ところで,請求者の求めの全部又は一部を充足するか否かの判断に当たっては,開示請求書の「請求の目的」欄の内容や開示請求の際に開示請求者から口頭で示された請求の目的や内容を総合して判断するものであるが,本件において控訴人が求 全部又は一部を充足するか否かの判断に当たっては,開示請求書の「請求の目的」欄の内容や開示請求の際に開示請求者から口頭で示された請求の目的や内容を総合して判断するものであるが,本件において控訴人が求める内容は,調査書の開示をめぐっての異議申立てに関し,異議申立人と実施機関がいかなる主張をし,それに対して審議会がいかなる判断をしたのかということと推測されるから,これを基準に検討する必要がある。 ウ本件文書の構成にしたがって,部分開示の可能性について検討する。 (ア) 答申の鑑について本件文書の答申の鑑に記載されている情報のうち,答申年月日,事案名の内容については,新聞報道されている。また諮問年月日については,その期日を明らかにしている新聞報道こそないものの,異議申立てが平成○年○月○日までに行われたことが新聞報道されており,なかには同年○月○日に行われたと報道している新聞もあることから,異議申立後それほどの期間をおかずにされる諮問についても,その年月日を明らかにすると,これらの新聞に報道されている事案が本件異議申立人による開示請求であることは容易に推測される。よって,本件文書の答申の鑑を開示することにより本件異議申立人が開示請求を行うに至った事情や背景について何らかの情報を有している関係者,具体的には,本件異議申立人の出身中学校の当時の教師,生徒及びその父兄には本件異議申立人が識別され得る。 それ以外の部分は,文書番号,名宛人である諮問実施機関の委員長の氏名,発信者である審議会の委員長氏名,表題,本文及び答申番号であるが,これら部分の情報を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (イ) 答申の本編第1 審議会の結論について「第1 審議会の結論」は,「第5 審議会の判断 3 結論」を受けたものであるが,これら 示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (イ) 答申の本編第1 審議会の結論について「第1 審議会の結論」は,「第5 審議会の判断 3 結論」を受けたものであるが,これらはいずれも「第5 審議会の判断 2 本件処分に係る具体的判断について」において判断した部分の結論であり,本件異議申立人や実施機関の主張など上記結論の前提となる事実関係が明らかにならない中で,この部分だけを開示したとしても,控訴人の求めを充足するとは考えがたく,仮に控訴人の求めを多少なりとも充足させることになるとしても,情報の内容について誤解を生じさせるおそれがある。 (ウ) 答申の本編第2 諮問事案の概要 1 自己情報の開示請求について本件異議申立人の調査書の開示請求年月日のほか,開示請求の対象が調査書であったことなど,自己情報の開示請求に関する事実が記載されている。 これらの事実は新聞報道されており,この部分に記載されている情報を開示することにより,上記のとおり当時の学校関係者には本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 それ以外の部分は,条例の名称,条例番号,異議申立てをした相手方である実施機関名等であるが,この部分の情報を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (エ) 答申の本編第2 諮問事案の概要 2 実施機関の決定について実施機関が調査書の部分開示の決定をした年月日のほか,その部分開示決定において非開示とした調査書の項目が記載されている。 実施機関が上記年月日に部分開示決定をした事実や非開示とした調査書の項目は新聞報道されており,この部分に記載されている情報を開示することにより,本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 それ以外の部分につい 事実や非開示とした調査書の項目は新聞報道されており,この部分に記載されている情報を開示することにより,本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 それ以外の部分については,本件個人情報保護条例の条文の引用に関する記述であり,この部分の情報を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (オ) 答申の本編第2 諮問事案の概要 3 異議申立てについて異議申立年月日が記載されており,これについては,上記のとおり新聞報道されており,この部分に記載されている情報を開示することにより,当時の学校関係者には本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 それ以外の部分については,行政不服審査法6条の規定により異議申立てをしたことが記載されているにすぎず,この部分の情報を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (カ) 答申の本編第3 異議申立人の主張の要旨 1 異議申立ての趣旨について本件異議申立人による異議申立ての趣旨が簡潔に記載されている。この部分を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (キ) 答申の本編第3 異議申立人の主張の要旨 2 異議申立ての理由について異議申立ての理由として本件異議申立人が異議申立書及び異議申立人意見書において主張している内容の要旨が記載されており,出身中学校名,受験高校名,教育委員会名等が記載されているほか,本件異議申立人等の個人のプライバシーに関わる事項が記載されているため,この部分に記載されている情報を開示すると,新聞報道と結びつけることにより,上記のとおり当時の学校関係者には本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 また,上記部分に記載されている情報 ている情報を開示すると,新聞報道と結びつけることにより,上記のとおり当時の学校関係者には本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 また,上記部分に記載されている情報を開示することとなれば,自己の主張が公になることをおそれて,自己情報の開示請求をしようとする者が開示請求することをちゅうちょすることも考えられ,その結果,本件個人情報保護条例に基づく自己情報の開示制度自体が成り立たなくなるおそれがあり,ひいては個人情報の保護制度を推進している茨城県の業務の目的が達成できなくなるおそれがあることから,本件条例6条1項8号にも該当する。 (ク) 答申の本編第4 実施機関の主張の要旨について教育委員会名が記載されているほか,本件異議申立人の主張に対する反論として,実施機関が個人情報部分開示決定通知書及び実施機関意見書において反論している内容の要旨が記載されている。その内容は,調査書の開示をめぐる本件異議申立人の主張に対応する形での実施機関の反論であり,本件異議申立人の主張を前提としているから,この部分に記載されている情報を開示すると,本件異議申立人の主張が推測され,その結果,新聞報道と結びつけることにより,上記のとおり当時の学校関係者には本件異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 また,上記部分に記載されている情報を開示することとなれば,自己の主張が公になることをおそれて,自己情報を開示請求しようとする者が開示請求することをちゅうちょすることも考えられ,その結果本件個人情報保護条例に基づく自己情報の開示制度自体が成り立たなくなるおそれがあり,ひいては個人情報の保護制度を推進している茨城県の業務の目的が達成できなくなるおそれがあることから,本件条例6条1項8号にも該当する。 (ケ) 己情報の開示制度自体が成り立たなくなるおそれがあり,ひいては個人情報の保護制度を推進している茨城県の業務の目的が達成できなくなるおそれがあることから,本件条例6条1項8号にも該当する。 (ケ) 答申の本編第5 審議会の判断 1 本件個人情報に関する事実関係について本件異議申立人の出身中学校名,受験高校名,受験年度など本件文書に記載されている内容に関する事実関係が記載されており,ここに記載されている情報を開示すると,新聞報道と結びつけることにより,上記のとおり当時の学校関係者には本件文書に係る異議申立人が識別され得るから,本件条例6条1項3号本文に該当する。 それ以外の部分については,法令の引用に関する記述であり,この部分を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものとはいえない。 (コ) 答申の本編第5 審議会の判断 2 本件処分に係る具体的判断について本件文書に記載されている情報が本件個人情報保護条例の非開示事由に該当するとする実施機関の主張について,理由があるか否かを審議会が具体的に判断している。 本件異議申立人や実施機関の主張や本件文書の前提となる事実関係が明らかにならない中で,上記部分のみを開示すると,当該事案に係る個別具体的な事情が捨象されて,抽象的な判断が一人歩きするおそれがあり,個人情報保護制度を推進している茨城県の業務の目的が達成できなくなるおそれがある。 また,上記部分が非開示情報に該当しないとしても,本件異議申立人や実施機関の主張など本件文書の前提となる事実関係が明らかにならない中で,上記部分のみを開示した場合には,その内容について誤解を生じさせるおそれがある。 (サ) 答申の本編第5 審議会の判断 3 結論についてここには,「以上により「第1 審議会の結論」のように判断する。」と記載されて した場合には,その内容について誤解を生じさせるおそれがある。 (サ) 答申の本編第5 審議会の判断 3 結論についてここには,「以上により「第1 審議会の結論」のように判断する。」と記載されているだけである。 この部分は非開示事由に該当しないと判断したが,この部分を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨を充たすものではない。 (シ) 答申の本編第6 審議会の処理状況異議申立てに係る審議会の処理経過が記載されており,諮問,実施機関意見書の受理,異議申立人意見書の受理及び審査の各年月日が記載されている。 諮問から審査までの年月日が明らかになると,最終審査の年月日からおおよその答申の時期を推測し得るし,また答申の年月日を明らかにしている新聞報道もあることから,この部分に記載されている情報を開示することにより本件異議申立人が識別され得る。 (ス) 特に,「答申の本編第5 審議会の判断」は,対象公文書である調査書自体を確認し,異議申立人,実施機関の両当事者の主張や具体的な事情を勘案した上で,審議会が当該決定の適否を判断した結果であり,異議申立人の個人情報保護条例に基づく開示請求に対する実施機関の決定についての審議会の個別の判断であるにもかかわらず,仮に審議会の判断に関する部分のみを開示するとなると,当該事案に係る個別具体的事情が捨象されて,判断内容が一般化され,審議会の判断の趣旨,内容に関し,関係者に対し,誤解を生じさせるおそれがあるので,本件文書に本件条例6条2項を適用することはできない。 エ答申1号が,本件条例に基づいて全面開示されているが,答申1号によれば,「異議申立人の子が平成6年に茨城県土浦第一高等学校の受験生である」こと以外には,個人識別情報は記載されていない。また,答申1号についての新聞報道には個人識別情報としては,異議 ,答申1号によれば,「異議申立人の子が平成6年に茨城県土浦第一高等学校の受験生である」こと以外には,個人識別情報は記載されていない。また,答申1号についての新聞報道には個人識別情報としては,異議申立人の年齢及び職業のみであるから,当時の土浦第一高等学校の受験関係者,具体的には同校の教職員,受験生及びその父兄等が答申1号と合わせて当該新聞記事を読んでも,当該異議申立人につき人物を特定し,又は特定し得る程度に至るものとは到底考えられず,いわんや一般県民に至っては当該異議申立人が誰であるかを識別し,又は識別し得る可能性はないと考えられることから,答申1号は本件条例6条1項3号本文に該当しない。さらに同号に該当しない答申1号は,同項8号にも該当しない。 そのため,同答申書は開示されたものと考えられるのである。 第3 当裁判所の判断 1 本件条例6条1項3号本文の該当性(1) 本件条例に基づく公文書開示請求権の性質民主主義国家においては,国民が自由な意思を形成し,それを表現するためには,情報に接し,これを摂取する自由が必要不可欠であることから,憲法21条は,派生原理として,いわゆる知る権利を認めているというべきである。しかし,この権利は抽象的な権利にとどまり,具体的な情報公開請求権は,地方公共団体が保有する情報については,当該地方公共団体が定める条例によって創設されるものであって,その地方公共団体の立法政策により権利内容が決定されるものである。 したがって,本件条例に基づく公文書開示請求権の内容,範囲については,本件条例の制定に当たって採用された立法政策を,本件条例の内容に即して考察することにより解釈し決定するのが相当である。 もっとも,一般に,条例が対象とする事象の全てについて一義的で明確な規定を置くことは立法技術的に事実上不可能であり 法政策を,本件条例の内容に即して考察することにより解釈し決定するのが相当である。 もっとも,一般に,条例が対象とする事象の全てについて一義的で明確な規定を置くことは立法技術的に事実上不可能であり,その規定はある程度抽象的にならざるを得ないので,公平な行政を行う必要から,地方公共団体内部での解釈,運用を統一するために通達を定めるのが通常であって,本件条例と本件通達も同様の関係にある。本件通達は,茨城県の内部的取扱基準にすぎず,行政訴訟等において法源としての効力を有しないが,本件条例が制定された際に採用された立法政策を考察するに当たり,本件条例の立法政策を明らかにし,その内容をより具体化した本件通達を参照することは当然のことである。 ところで,控訴人は,情報公開法1条及び41条の趣旨にのっとり,本件条例6条1項各号の非開示事由を,憲法の趣旨に従って非開示情報が最小限となるように厳格に解釈すべきであると主張する。しかし,情報公開法41条は,訓示規定であって,直ちに地方公共団体を拘束するものではない。また,本件条例は,昭和61年10月1日から施行されたものであり,これに対して,情報公開法は,平成13年4月1日から施行されたものである。本件条例に基づき創設された公文書開示請求権の内容,範囲について,それより後に成立した情報公開法により当然に内容が変更されたということはできないが,地方公共団体は,同法の趣旨を尊重して,本件条例上認められた裁量権を行使するよう要請されていると解するのが相当である。したがって,情報公開法1条及び41条が設けられたからといって,直ちに,控訴人の主張のように解釈すべきであるということにはならない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。 (2) 本件条例6条1項3号の要件本件条例は,1条において,本件 て,直ちに,控訴人の主張のように解釈すべきであるということにはならない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。 (2) 本件条例6条1項3号の要件本件条例は,1条において,本件条例が県民に公文書開示請求権を付与するが,その内容については本件条例に定めるところによることを明らかにしたうえ,3条において,公文書開示請求権を十分尊重し,他方で,個人のプライバシーに配慮することを定め,いずれかが他方に優先するという関係にあるというものではないことを示し,それらの権利の調整を6条に委ねている。同条例5条は,県民が公文書開示請求権を行使できるのを原則と定め,同条例6条1項において,実施機関が公文書を開示しないことができる事由を定め,その立証責任を実施機関に負わせた。 そして,同条1項3号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」については,それによって「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」であれば,同号ただし書のアからウまでに該当する場合を除き,これを非開示とすることを定めている。 その趣旨は,個人のプライバシーの概念が未だ必ずしも明確になっていないため,個人のプライバシーの範囲を一律に決定することは困難であるので,明らかに個人のプライバシーと考えられるものはもとより含める意図で,広く「特定の個人が識別され,又は識別され得る」情報を一切非開示とし,さらに,その中から明らかに個人のプライバシーを侵害しないと考えられる情報及び開示する公益上の必要があると認められる情報の類型を非開示事由の除外事由として列挙しているのである。したがって,本件条例の規定上,当該の「個人に関する情報」が「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」である場合には,非開示事由の除外事由として列挙された類型に該当しなけれ 挙しているのである。したがって,本件条例の規定上,当該の「個人に関する情報」が「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」である場合には,非開示事由の除外事由として列挙された類型に該当しなければ,実質的にプライバシーに影響を及ぼさない情報であるという理由があっても,これを開示することはできないというほかない。 乙3によれば,本件条例の立法趣旨を示した本件通達は,本件条例6条1項3号本文の趣旨について,「個人のプライバシーの権利は,憲法上の基本的人権の一つであり,この条例の下においても最大限保護する必要がある。しかし,保護すべき個人のプライバシーの範囲を一律に決定することは極めて困難であるので,本号では,明らかに個人のプライバシーに関する情報と考えられるものはもとより,特定個人が識別され,又は識別され得る情報を原則として一切非開示とすることとした」としていることが認められ,上記のことはこうしたことからも明らかである。 これに対し,控訴人は,本件条例について,同条例3条1項及び5条の趣旨を踏まえ,同条例6条1項3号については,知る権利と個人のプライバシーとの調整規定であって,個人のプライバシーの保護のために必要な限りでのみ知る権利の保障に優先して情報を非開示とすることができると解釈されなければならず,個人のプライバシーに影響を及ぼさない情報についてまで非開示とすることはできないから,同号に規定する「個人に関する情報」に該当するか否かは,終局的には本件文書に記載されている情報が個人のプライバシーを侵害する種類の情報に該当するか否かという観点から限定的に解釈されるべきであると主張するが,上記のとおりの理由で,これを採用することができない。 (3) 個人に関する情報本件条例6条1項3号本文は,「個人に関する情報」について,規定上「事業を 限定的に解釈されるべきであると主張するが,上記のとおりの理由で,これを採用することができない。 (3) 個人に関する情報本件条例6条1項3号本文は,「個人に関する情報」について,規定上「事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。」ということ以外に限定を設けていないから,個人に関する一切の情報をいうものと解するのが相当である。 乙3によれば,この点について,本件通達は,「識別され得るもの」とは,「特定個人に関する情報から又は他の情報と結びつけることにより,当該個人が識別され得る可能性がある情報をいう。」とし,「個人に関する情報」とは,思想,信条等個人の内心に関する情報,健康状態,病歴等個人の心身の状況に関する情報,学生・生徒の学業成績,各種試験の成績等個人の能力に関する情報,職業,職歴等個人の社会的地位・活動に関する情報,親族関係,生活記録等個人の家庭生活に関する情報,収入,資産等個人の財産状況に関する情報その他一切の個人に関する情報をいうと規定している。これらの定めは,本件条例6条1項3号本文にいう「個人に関する情報」を本件条例の趣旨に添って明らかにしたものというべきである。 本件文書には,本件原決定に対する本件異議申立人の主張及びこれを受けての審議会の判断内容が記載されているから,本件文書に記載された内容は,本件異議申立人に向けられたものという側面において「個人に関する情報」であるというべきである。 これに対し,控訴人は,本件文書には単に異議申立人と記載されているだけで,本件異議申立人の住所及び氏名は記載されていないし,出身中学校名,受験高校名等はいずれも既に本件異議申立人が自らプライバシーを放棄して記者会見で公表し,また新聞に記載された内容であり,一般の人々に未だ知られていないことがらとはいえず,プライバシーとしての要保護 受験高校名等はいずれも既に本件異議申立人が自らプライバシーを放棄して記者会見で公表し,また新聞に記載された内容であり,一般の人々に未だ知られていないことがらとはいえず,プライバシーとしての要保護性を欠いており,また,本件異議申立人等の個人のプライバシーに関わる内容や出身中学校名,受験高校名等の自己情報に関する事実関係も,上記記者会見で本件異議申立人が述べた以上のものではないと推定することができるから,プライバシーの保護の要件を充足しないのであって,本件文書には,本件条例6条1項3号本文の非公開事由が存在しないと主張する。 しかし,本件条例6条1項3号は,非開示事由を,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」であって,「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」とし,同号ただし書をその除外事由としているだけで,プライバシーの放棄を除外事由として文言上規定してはいないし,本件において,会見者(本件異議申立人の保護者)が報道機関に対し記者会見をしたことをもって,会見内容について,本件異議申立人個人のプライバシーを放棄したといえるか,保護されるべき権利利益を失ったかは一つの問題であって,このような事情が同号ただし書のとは別の除外事由となるとはいえないから,控訴人の上記主張を採用することはできない。 (4) 個人識別性ア本件条例6条1項3号本文にいう「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」については,規定上,当該公文書に記載された情報のみによって特定の個人が現に識別できる情報にとどまらず,当該公文書に記載された情報に他の情報を結びつけることによって,特定の個人が識別できる情報を含むものであると解するのが相当である。このように解した場合には,当該公文書に記載された情報に結びつける「他の情報」の範囲が問題と 報に他の情報を結びつけることによって,特定の個人が識別できる情報を含むものであると解するのが相当である。このように解した場合には,当該公文書に記載された情報に結びつける「他の情報」の範囲が問題となる。 「他の情報」の範囲については,当該文書の性質,内容に照らし,個別的に決定すべきものであるが,個人が属する社会や地域での当該個人の権利利益の保護を考えると,特別の情報を得ることが法律上当然に予想される範囲にある関係者の情報については,このような情報までも含めると,本件条例に基づく公文書開示請求権が機能し得なくなるので,これを除くのが相当である。 これを本件についてみると,本件個人情報保護条例に基づく開示請求者からの中学校の作成した調査書の開示請求について県教委がした部分開示決定に対して,同開示請求者(本件異議申立人)が異議申立てをしたが,この異議申立てについての審議会の答申が本件文書であることからすれば,本件異議申立人本人及び近親者,出身中学校の当局者,当該異議申立ての処理に当たる県教委及び審議会の担当者並びにこれに準じる者が有していた特別の情報については,上記「他の情報」に含めるとすれば,公文書開示請求権が機能し得なくなることに照らし,これを含めることはできないというべきである。これに対し,出身中学校の職員であっても,特別の情報を得ることが法律上当然に予想されるとはいえない者,同中学校の在校生とその保護者,近隣の住民などとの関係では,個人のプライバシーの保護が問題となり得る場面であるから,こうした者が得ていた特別の情報は,「他の情報」に含まれるというべきである。 控訴人は,上記「他の情報」について,一般人からみて,通常入手し得る他の情報と照合することにより,新たに個人を識別できるか否かを判断すべきであると主張し,甲32(国立病院, れるというべきである。 控訴人は,上記「他の情報」について,一般人からみて,通常入手し得る他の情報と照合することにより,新たに個人を識別できるか否かを判断すべきであると主張し,甲32(国立病院,国立療養所,国立高度専門医療センターにおける医療事故の報告(平成12年度)の一部不開示決定に関する件についての平成14年1月9日付け答申書)及び42を提出する。しかし,甲32及び42は,医療事故に関する情報についての情報公開法5条1号の該当性の問題を扱ったものであり,本件とは事案を異にするから,これを根拠として本件について同様に解するのは相当でないので,控訴人の主張は採用できない。 イ甲29,乙19及び弁論の全趣旨によれば,本件文書には,本件異議申立人の氏名及び住所が記載されておらず,単に「異議申立人」と記載されていることが認められる。 前記認定のとおり,本件異議申立人が調査書の開示請求をした当時,茨城県においては,調査書の開示請求がされたのは,本件異議申立人からの同一文書に係る○件のみであり,異議申立てについては,本件異議申立人からの異議申立てしかなかったこと,異議申立人とその母親は,中学校と誤認体罰問題をめぐり数年間にわたり紛争状態となり,調査書の開示請求に至ったこと,異議申立人が調査書の開示請求等をした背景事情等が新聞で詳細に報道され,当時の中学校の教師や生徒の中には取材を受けた者もいたこと等の事実が認められるのであって,このような事実に照らせば,異議申立人の出身中学校の職員,生徒又はその保護者,もしくは近隣住民の中には,本件異議申立人がある時期に調査書の開示請求をしたことを知った者がいたと推認するのが相当である。そのような者は,本件文書が全部開示された場合には,本件文書の内容と自己の有する特別な情報から,本件原決定に対して異議申立 時期に調査書の開示請求をしたことを知った者がいたと推認するのが相当である。そのような者は,本件文書が全部開示された場合には,本件文書の内容と自己の有する特別な情報から,本件原決定に対して異議申立てをした本件異議申立人を識別し得るというべきである。 (5) 本件条例6条1項3号ただし書イの除外事由ア本件文書には,本件条例6条1項3号本文の非公開事由が存在するというべきであり,甲29,乙19及び弁論の全趣旨によれば,同号ただし書に該当する事由は存在しないと認められる。 イこれに対し,控訴人は,本件文書が,本件個人情報保護条例33条に基づく運用状況を取りまとめた本来公表されるべきものであるから,本件条例6条1項3号ただし書イに該当するものとして公表されるべきであると主張する。 しかし,本件個人情報保護条例33条に基づく運用状況の公表については,茨城県個人情報の保護に関する条例施行規則18条に基づき行われるもので,本件文書は,その運用状況をとりまとめた文書ではないから,本件条例6条1項3号ただし書イには該当しない。 ウまた,控訴人は,答申1号が本件条例に基づいて全部開示されているが,同答申からは,異議申立人が平成6年度茨城県立土浦第一高等学校の受験生であることが分かり,またその事案においても異議申立てについて新聞報道がされていたが,答申1号が異議申立人の個人名を特定しないものであったため,「特定の個人が識別され,又は識別され得る」部分を欠き,本件条例6条1項3号本文に該当せず,かつ,同号ただし書イに該当するものとして,本件条例6条2項の適用を判断するまでもなく全部開示されたのであるから,これと同種の本件文書も,答申1号と同様に開示されるべきであると主張する。 甲19の2,19の4から8までによれば,答申1号には,異議申立人の子が平成6 するまでもなく全部開示されたのであるから,これと同種の本件文書も,答申1号と同様に開示されるべきであると主張する。 甲19の2,19の4から8までによれば,答申1号には,異議申立人の子が平成6年度に茨城県立土浦第一高等学校入学者選抜試験の受験生であったことが記載されているが,それ以外に「特定の個人が識別され,又は識別され得る」情報は記載されていないこと,異議申立人が記者会見を行い,これを踏まえて,新聞各紙が異議申立人による開示請求,異議申立ての経緯を報道しているが,新聞記事には,異議申立人を識別する要素として,異議申立人の年齢及び職業が記載されているのみであることが認められる。そして,本件全証拠によっても,当時法律上当然に特別の情報を得ると予想される範囲の外にある土浦第一高等学校の教職員,受験生及びその保護者等が,同答申書によって当該異議申立人を識別することはできたとか,同答申書と当該新聞記事による情報とから,当該異議申立人を識別し得たことが立証されていたと認めることができない。このように非開示事由が認められなかったという点で,本件と事案が異なるというべきである。 また,控訴人は,日立女子高等学校教員組合(代表者執行委員長控訴人)が異議申立人である茨城県公文書開示審査答申37号の答申及び控訴人が異議申立人である42号の答申が開示を認められたのであるから,本件文書も開示されるべきであると主張する。 しかし,甲34の4及び6によれば,これらの答申は,本件条例に基づく諮問に対する茨城県公文書開示審査会の答申であり,37号答申は,控訴人が代表者となっている日立女子高等学校教員組合が学校法人の決算報告書の開示を求めた事案についてのものであり,42号答申は,控訴人が,被控訴人に対し,平成8年6月12日付けの本件文書の開示を求めた事案に関する なっている日立女子高等学校教員組合が学校法人の決算報告書の開示を求めた事案についてのものであり,42号答申は,控訴人が,被控訴人に対し,平成8年6月12日付けの本件文書の開示を求めた事案に関するものであって,いずれも本件と事案が異なるので,これらが開示されたからといって,本件文書が同様に扱われるべきであるということにはならない。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 2 本件条例6条1項8号の該当性(1) 本件条例6条1項8号の要件ア行政機関の保有する情報を開示することにより,行政機関が行う事務事業の目的の達成が損なわれるおそれがあったり,その公正もしくは円滑な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあると,本件条例1条に定める目的に反する結果を招きかねないことになるので,そのような情報については,非開示とする合理的な理由がある。そこで,本件条例6条1項8号により,これらの情報を保護しているものと解される。 イ本件条例6条1項8号は,非開示事由の要件として,①県の機関又は国等の機関の行う事務事業の実施に関する情報であることに加え,②開示することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの,又は③開示することにより,これらの事務事業の公正もしくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるものと規定している。上記の本件条例6条1項8号の文言及び趣旨に照らせば,①は,県の機関又は国等の機関の行う一切の事務事業の実施に関する情報をいうと解される。②は,事務事業の性質又は実施の目的からみて,開示することにより当該事務事業を実施する意味が全く失われたり,大幅に減少したりするおそれのある情報をいうが,「事務事業の目的が達成できなくなるおそれ」には行政機関のある程度の評価的要素が含まれており,また,文 により当該事務事業を実施する意味が全く失われたり,大幅に減少したりするおそれのある情報をいうが,「事務事業の目的が達成できなくなるおそれ」には行政機関のある程度の評価的要素が含まれており,また,文言上,目的不達成の高度な蓋然性や明白なおそれが要求されてはいないから,著しい支障を生じるおそれがある程度具体的に,かつ,ある程度の蓋然性をもって予想される状態であれば足りると解される。③は,事務事業を進めるに当たって必要な情報の収集や関係者の理解,協力を得ることができなくなる等,事務事業の円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのある情報をいうものと解される。また,本件条例6条1項8号は,「著しい支障を生ずるおそれ」と規定しており,「著しい支障を生ずることが明らかであるもの」(埼玉県行政情報公開条例6条1項参照)とは規定していないから,著しい支障を生ずる具体的な危険が存在することが客観的に明白であることまで要求されてはおらず,著しい支障を生ずるおそれについて,ある程度具体的に,かつ,ある程度の蓋然性をもって予想される状態であれば足りると解される。 乙3によれば,本件通達は,本件条例6条1項8号の趣旨について,「本号は,県の機関又は国等の機関が行う事務事業の目的達成及びその公正かつ円滑な実施を確保する観点から定めたものである。」とし,また,「事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの」の意義について,「事務事業の性質又は事務事業の実施の目的からみて,開示することにより,当該事務事業を実施する意味を喪失し,又は減殺することになるおそれのある情報をいう。」とし,「事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれがあるもの」に該当すると考えられる情報の類型を挙げていることが認められるが,同号の立法趣旨を明らかにしたものというべきである 。」とし,「事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれがあるもの」に該当すると考えられる情報の類型を挙げていることが認められるが,同号の立法趣旨を明らかにしたものというべきである。 以上に対し,控訴人は,情報公開法1条及び41条の趣旨にのっとり国民主権の理念及び憲法21条の趣旨(表現の自由とその派生原理としての知る権利)を踏まえて,本件条例によってひとたび実定法上の根拠を持った情報公開請求権を制限する本件条例6条1項各号の非開示事由は,憲法の趣旨に従って非開示情報が最小限となるように厳格に解釈しなければならないとした上,「目的が達成できなくなるおそれ」,「事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれ」が規範的要件であるから,いずれもその個別具体的な事実(評価根拠事実)の存在を客観的合理的に判断しなければならないのであって,その具体的な危険が存在することが客観的に明白である場合にはじめて当該公文書を非開示とすることができると解すべきであるとか,当該目的が達成できなくなる「おそれ」について,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が当然に要求され,また,「支障」は,名目的なものでは足りず,実質的なものが要求されると主張し,甲39(情報公開法制行政改革委員会の意見),40(第143回国会衆議院内閣委員会議録5号)を提出する。 しかし,具体的な情報開示請求権は,地方公共団体が定める条例によって創設されるものであり,その地方公共団体の立法政策により権利内容が決定されるものであって,憲法の趣旨から当然に非開示情報が最小限となるように厳格に解釈しなければならないものではないことは既に1で論じたとおりであるし,「具体的な危険が存在することが客観的に明白である」という条文の文言にない要件を加重する根拠は 示情報が最小限となるように厳格に解釈しなければならないものではないことは既に1で論じたとおりであるし,「具体的な危険が存在することが客観的に明白である」という条文の文言にない要件を加重する根拠はない。また,「目的が達成できなくなるおそれ」,「事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれ」の要件は,評価的要素を含むが,これを規範的要件であると構成することによって当然に「おそれ」の具体性,明白性が必要になるというものではないし,また,理論上規範的要件の評価障害事実については,控訴人が立証責任を負うことになり,それでは,非開示事由の存在の立証責任を行政機関に負わせた意味が減殺されるので,この点についての控訴人の主張も採用できない。ただし,「おそれ」について,単なる確率的な可能性ではなく,法的保護に値する蓋然性が当然に要求され,また,「支障」は,名目的なものでは足りず,実質的なものが要求されるとの控訴人の主張については,前記の趣旨であるとすれば,首肯できる。 なお,証拠(甲6の1及び2,7の1から7まで,8の1から9まで,9の1から5まで,10の1から35まで,11,12の1,2,13の1から13まで,14,15の1から9まで,16の1から22まで,17の1から5まで,19の1,2,27の1,2,乙2,3,4,5の1から3まで,8,9から14までの各1,2,19)によれば,各都道府県により,個人情報保護審議会(審査会)答申を開示するか否か,開示する場合にどのような方法によりどこまで開示するかについては,対応が様々であり,情報公開条例等の運用状況の報告書の一部として,またインターネットや答申集に登載するなどして,全面的に開示している自治体(東京都など)もあれば,そもそも開示した例がないところや,内容を開示していても概要のみに留 の運用状況の報告書の一部として,またインターネットや答申集に登載するなどして,全面的に開示している自治体(東京都など)もあれば,そもそも開示した例がないところや,内容を開示していても概要のみに留める自治体もある(北海道など)こと,神奈川県では,本人の了解を得ず答申を記者発表したため本人から苦情が出たことがあったことから,その後一切記者発表をせず,答申の形式も簡略化され,内容についても,学校名などの具体的な名前を出さないように変化したこと,長野県では,かつて答申書の発表をしていたが,答申を開示すると,開示請求者が不服申立てをちゅうちょしたり,異議申立人の信頼を損ねたり,異議申立人から率直な意見を得られなくなったりして,個人情報保護事務や審査に支障を生ずるおそれがあると判断したことから,発表の形式を概要版に改めたこと,福岡県では,答申のほぼ全文を年次報告書に掲載していたが,個人情報を積極的に出すべきではないとの考えから,年次報告書には,答申年月日,件名,実施機関,諮問年月日のみ掲載する扱いに変えたことが認められる。 上記認定事実によれば,確かに審議会の答申を全面開示している自治体もあるが,他方で,神奈川県,長野県及び福岡県では答申の開示方法を全面開示から概要のみへと変更していることが認められ,このような各県の対応の変化に照らしても,答申の全面開示により,審議会の事務の公正,円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれが生じる場合があり得るといえる。したがって,本件条例6条1項8号該当性の判断に当たっては,開示を求められた答申の内容及び開示請求に至った経緯などに照らし,具体的に検討することが必要である。 (2) 本件文書以上の解釈を前提に,本件文書の内容が本件条例6条1項8号に該当するか否かについて検討する。 ア本件文書は,審議会の答申であ 緯などに照らし,具体的に検討することが必要である。 (2) 本件文書以上の解釈を前提に,本件文書の内容が本件条例6条1項8号に該当するか否かについて検討する。 ア本件文書は,審議会の答申であるが,審議会は,茨城県行政組織条例(昭和38年茨城県条例第45号)22条に基づき,県に設置されている機関である。したがって,審議会の答申は,県の機関が行う事務事業であり,この実施に関する情報に該当する。 イ審議会の役割について考究すると,本件個人情報保護条例17条が個人情報の開示請求に対する決定について,同24条が個人情報の訂正請求に対する決定についてそれぞれ規定し,同28条が,「実施機関は,第17条第1項又は第24条第1項の決定について,行政不服審査法の規定に基づく不服申立てがあった場合は,当該不服申立てを却下するときを除き,茨城県個人情報保護審議会に諮問し,その意見を尊重して,当該不服申立てについての決定又は裁決を行わなければならない。」と規定していることからすれば,本件個人情報保護条例においては,個人情報の開示又は訂正に関する決定に対する行政不服審査法の規定に基づく不服申立てについては,実施機関に対して行い,実施機関が,自己の行った決定に対する不服申立てに対して,決定又は裁決するという手続が採用されているため,同条例28条において,不服申立てに対する決定又は裁決の公平性,客観性を担保するため,実施機関に対し,当該不服申立てを却下する場合を除き,第三者的立場にある審議会に諮問することを義務づけているものと解するのが相当である。このような本件個人情報保護条例の規定及び趣旨に照らせば,審議会の目的は,不服申立てに対する実施機関の決定又は裁決が公平かつ適正に行われるよう第三者的立場から答申するとともに,実施機関による現在ないしは将来の同種の個 情報保護条例の規定及び趣旨に照らせば,審議会の目的は,不服申立てに対する実施機関の決定又は裁決が公平かつ適正に行われるよう第三者的立場から答申するとともに,実施機関による現在ないしは将来の同種の個人情報の開示請求又は訂正請求に対する決定が公正かつ適正に行われるように答申すること,そして,それによって本件個人情報保護条例に基づく個人情報の保護制度の適正な執行に資することにあるというべきである。 本件文書には,個人情報の開示を求める異議申立人の主張やこれに対する実施機関の主張,審議会の判断として,当該異議申立事案における具体的事実に基づいた内容(個人識別情報)が記載されていることは,既に論じたとおりであるところ,仮に審議会の答申が本件条例に基づく開示請求により第三者に開示されることになると,異議申立人は自己が識別されたり,他人に知られたくない情報が開示されるのを恐れて,本件個人情報保護条例上の不服申立手続等において率直な意見を主張しにくくなったり,場合によっては不服申立て自体をちゅうちょする事態が生じるおそれがあると認められる。異議申立人が率直な意見を主張しない場合には,審議会は,実体に即した適正な答申をすることができないから,実施機関に対し不服申立てについての決定又は裁決が公平かつ適正に行われるように第三者的立場から答申することができず,ひいては実施機関による現在ないし将来の同種の個人情報の開示請求又は訂正請求に対する決定が公正かつ適正にされるように答申することも困難となるおそれがある。したがって,開示することにより,審議会の事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるものというべきである。そして,不服申立て自体をちゅうちょする事態が生じたとすれば,本件個人情報保護条例に基づく個人情報の保護制度という事務事業がその しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるものというべきである。そして,不服申立て自体をちゅうちょする事態が生じたとすれば,本件個人情報保護条例に基づく個人情報の保護制度という事務事業がその目的を達成できなくなるおそれがあるというべきである。したがって,審議会の答申のうち個人識別情報の記載のあるものは,前記②の「開示することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるおそれのあるもの」,又は前記③の「開示することにより,これらの事務事業の公正若しくは円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」に該当するというべきである。 なお,控訴人は,本件文書と同種の答申1号が本件条例に基づいて全部開示されているが,これによって審議会の目的が達成できなくなったり,事務事業の公正,円滑な実施に著しい支障はなんら生じていないと主張するが,1(5)で検討したとおり,答申1号は,本件条例6条1項3号本文にいう「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」を含んでいるとは認められず,本件文書をこれと同一に論じることはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 3 部分開示(1) 当事者間に争いのない事実及び証拠(乙3)によれば,以下の事実が認められる。 本件条例6条2項は,「前条の規定による請求に係る公文書に,前項各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報とが記録されている場合において,前項各号のいずれかに該当する情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,前項の規定にかかわらず,当該それ以外の情報が記録されている部分については,前条の請求を拒むことができない。」と規定している。 本件通達は,本件条例6条2項 度に合理的に分離することができるときは,前項の規定にかかわらず,当該それ以外の情報が記録されている部分については,前条の請求を拒むことができない。」と規定している。 本件通達は,本件条例6条2項の趣旨について,「本項は,開示請求に係る公文書に,適用除外事項に該当する情報が部分的に記録されている場合であって,当該情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるときは,当該情報が記録されている部分を分離して,それ以外の残りの部分については開示しなければならないことを定めたものである。」とし,また,「『請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離できるとき』とは,分離した残りの部分の開示によって,請求者の求めの全部又は一部を充足し,かつ,情報の内容について誤解を生ずるおそれがない場合をいう。」としている。 また,本件通達は,個人に関する情報が記録された公文書の部分開示の取扱いについて,「特定の個人が識別される要素は,通常,住所及び氏名であるので,住所及び氏名が記録されている公文書は,6条1項3号本文に該当するものと考えられる。しかし,住所及び氏名を削除することにより,特定の個人が識別され得ることがなくなる場合において,これらを容易に,かつ,請求の趣旨が損なわれない程度に合理的に削除することができる場合には,6条2項の規定により,当該住所及び氏名を削除したその他の部分を開示するものとする。」としている。 (2) 以上の本件条例6条2項の規定の文言からすれば,同項は,開示請求に係る1個の公文書に非開示情報とそれ以外の情報とが記載されている場合には,①非開示情報の記載部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ,②非開示情報を除いた部分のみを,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に 文書に非開示情報とそれ以外の情報とが記載されている場合には,①非開示情報の記載部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ,②非開示情報を除いた部分のみを,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離することができるという要件を充足する限りは,実施機関は,開示請求に係る文書の一部を部分開示することが義務づけられているものと解される。 本件条例5条が,県民であれば何人であっても公文書の開示を請求できると規定したことからすれば,本件条例に基づく公文書の公開制度は,原則として,請求者が開示請求をする主観的な目的がいかなるものであるかを問わないものであると解される。そうであれば,本件通達にいう「分離した残りの部分の開示によって,請求者の求めの全部又は一部を充足し,かつ,情報の内容について誤解を生ずるおそれがない場合」については,このような本件条例の趣旨に従って慎重に運用すべきである。 また,本件通達のうち,個人に関する情報が記録された公文書の部分開示の取扱いについての定めは,住所及び氏名の記載があることが,特定の個人を識別する要素となる場合が通常であるため,住所,氏名が記載されている場合を例示的に規定しているものであり,それ以外の個人を識別する要素が含まれている場合には公文書そのものを非開示とする趣旨ではないと解されるから,このような公文書については,住所,氏名の他当該記載により特定の個人を識別することが可能となる部分(以下「個人識別部分」という。)を削除することにより,特定の個人が識別され得ることがなくなる場合において,これらを容易に,かつ請求の趣旨が損なわれない程度に合理的に削除することができるときは,個人識別部分を削除したその他の部分を開示するという運用を行うことが,本件通達上実施機関に要請されているものと解するのが相当である。 趣旨が損なわれない程度に合理的に削除することができるときは,個人識別部分を削除したその他の部分を開示するという運用を行うことが,本件通達上実施機関に要請されているものと解するのが相当である。 ところで,本件条例は,部分開示について6条2項の規定を置くが,情報公開法6条2項(開示請求に係る行政文書に前条第一号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する。)に相当する規定を設けていない。したがって,本件条例6条2項は,文言上,非開示事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非開示とし,その余の部分にはもはや非開示事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを開示することまでは実施機関に義務づけていないが,実施機関が裁量判断により,個人情報が含まれている公文書のうち,個人識別部分のみを非開示とし,その余の部分を開示するなど,非開示事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化して部分開示することは許容されていると解するのが相当である(最判平成13年3月27日民集55巻2号530頁)。このように本件条例6条2項は,個人情報が含まれている公文書について,非開示事由に該当する独立した一体的な情報を細分化して,そのうちの個人識別部分のみを非開示とし,その余の部分を開示するということを許容しているところ,本件通達は,行政の適正な実行という観点から,このような部分開示を行うための手続を前記のとおり定めた以上,これに従わない非 分のみを非開示とし,その余の部分を開示するということを許容しているところ,本件通達は,行政の適正な実行という観点から,このような部分開示を行うための手続を前記のとおり定めた以上,これに従わない非開示決定は,適正手続又は平等原則に反し,違法といわなければならない。 (3) 以下,本件文書の個人識別部分について検討する。 前記の認定のとおり,答申の鑑には,答申年月日,諮問年月日,事案名が,答申の本編第2には,文書名,開示請求の年月日,本件原決定の年月日,本件原決定において非開示とした部分,異議申立年月日,同第3には,「1 異議申立ての趣旨」において,異議申立ての理由とは別個独立して,異議申立ての趣旨が記載されており,「2 異議申立ての理由」において,本件異議申立人の主張の要旨,出身中学校名,受験高校名,教育委員会名が,同第4には,教育委員会名が,同第5には,本件異議申立人の出身中学校名,受験高校名,受験年度等が,同第6には,本件異議申立人の異議申立てに係る審議会の処理経過が記載され,諮問,実施機関意見書の受理,異議申立人意見書の受理及び審査の各年月日が記載されていることが認められる。 そして,第2,2(8)のとおり,本件文書に関する新聞報道がされており,開示請求の年月日,本件原決定,異議申立て,答申及び諮問の各年月日,事案名,文書名,本件原決定において非開示とした部分,本件異議申立人の主張の要旨の一部,出身中学校名,受験高校名,受験年度,教育委員会名,第1回目の審議会の審査日についてはいずれも新聞記事に明らかにされている。実施機関意見書の受理,異議申立人意見書の受理,第2回目以降の審査の各年月日については,新聞報道されていないものの,これらの各日付けに近い日である異議申立て,諮問及び答申の各年月日が新聞報道され,また平成○年○月から○ 異議申立人意見書の受理,第2回目以降の審査の各年月日については,新聞報道されていないものの,これらの各日付けに近い日である異議申立て,諮問及び答申の各年月日が新聞報道され,また平成○年○月から○月までの間に出された答申は○件のみであったことから,これらの日付けから平成○年○月から○月までの間に出された答申であることを推認することが可能である。 そうすると,①異議申立人がある時期に調査書の開示請求及び不服申立てをしたこと,②異議申立人が調査書の開示請求に至った背景事情,③異議申立人が不服申立てをしたこと及び調査書の全面開示の答申について報道した新聞に記載された事実について知識を有する者にとっては,答申年月日,諮問年月日,事案名,文書名,開示請求の年月日,本件原決定の年月日,本件原決定において非開示とした部分,異議申立年月日,本件異議申立人の主張の要旨の一部,出身中学校名,受験高校名,教育委員会名並びに受験年度,諮問,実施機関意見書の受理,異議申立人意見書の受理及び審査の各年月日の各記載から,本件異議申立人を識別することが可能であるというべきであるから,これらの記載はいずれも個人識別部分であると認められる。 (4) 以上の個人識別部分を除いた残りの部分について検討する。 個人識別部分を除くと,まず,答申の本編第3の2では新聞報道されていない異議申立人の主張の要旨,同第4では異議申立人の主張に対する実施機関の反論の要旨,同第5では調査書の一般的説明や審議会の判断の各記載が残るが,これらは調査書の一般的説明や調査書の開示請求につきそれぞれの立場から行った主張や判断であるから,特定の名称等の個人識別部分を非開示にしても,調査書の開示請求に係る答申であることを認識し得るし,上記①から③までの知識を有する者であれば異議申立人を識別し得るものと認 行った主張や判断であるから,特定の名称等の個人識別部分を非開示にしても,調査書の開示請求に係る答申であることを認識し得るし,上記①から③までの知識を有する者であれば異議申立人を識別し得るものと認められる。よって,個人識別部分を除いた答申の本編第3の2,第4及び第5の部分は本件条例6条1項3号に該当し,開示することは許されない。 次に,個人識別部分並びに答申の本編第3の2,第4及び第5を除いた場合,答申の鑑では文書番号や名宛人である諮問実施機関の委員長の氏名等,答申の本編第1では審議会の結論,同第2では本件個人情報保護条例の条文や行政不服審査法に基づき異議申立人が異議申立てをしたこと等,同第3の1では申立ての趣旨,同第6では諮問の事実,実施機関意見書の受理の事実等の各記載が残る。 これらの記載のうち,同第3の1の記載は,明確な個性がなく,その他の情報との関連性がそれ自体からは明らかでないし,他の記載は,どの答申にもほぼ共通して記載されるものであり,またその他の情報と結びつけることもできない性質の情報であることから,これらの記載から特定の異議申立人が識別され得ることはないというべきである。 (5) そして,(3)の個人識別部分並びに答申の本編第3の2,第4及び第5を除いた部分のみでは,本件条例6条1項8号に該当しないというべきである。 (6) ところで,被控訴人は,答申の本編第1だけを開示することは,情報の内容について誤解を生じさせるおそれがあると主張し,また,答申の鑑,答申の本編第1,第2及び第3の1については,控訴人の本件文書の開示請求の趣旨が,本件異議申立人及び実施機関の主張を踏まえて,審議会による調査書の全面開示の答申の理由を知ることにあると認められることからすると(甲3),個人識別部分を除いた,どの答申にも共通して記載されるよ が,本件異議申立人及び実施機関の主張を踏まえて,審議会による調査書の全面開示の答申の理由を知ることにあると認められることからすると(甲3),個人識別部分を除いた,どの答申にも共通して記載されるような部分を開示したとしても,控訴人の請求の趣旨が充足されることはないと主張する。 しかし,答申の本編第1だけを開示することにより,情報の内容についてどのような誤解を生じさせるのかの主張立証がない。また,前記(2)の趣旨からは,部分開示をするに当たり,控訴人の開示請求をする主観的な目的がいかなるものかを問わないのが原則であり,個人識別部分並びに答申の本編第3の2,第4及び第5の部分を除いた残余の部分であっても,ある程度まとまりのある一定の情報という外形を保っており,かつ,このような残余の部分をもってするのでは控訴人の請求の趣旨が充足されないことの具体的な立証がされていないので(上記の残余の部分は,個別性のない一般的,定型的記述にとどまり,これだけではほとんど無意味であるとも考えられるが,全く有意ではないともいいきれず,その部分だけの開示では控訴人の請求の趣旨が充足されないと認めることはできない。),同部分を非開示にすることはできないと解するのが相当である。したがって,被控訴人の前記主張は採用することができない。 なお,前記(2)の「非開示事由に該当する独立した一体的な情報」であるかどうかは,個人識別部分とその余の部分とに細分化した場合に,その余の部分のみでは情報として意味のないものになるかどうかが基準となるが(前記最高裁判所判決の元原利文裁判官の補足意見参照),本件においては,すでに論じたとおり,同答申中,本編第3の2,第4及び第5の部分並びにその余の部分のうち,答申年月日,諮問年月日,事案名,開示請求された文書名,開示請求の年月日,原処分の 意見参照),本件においては,すでに論じたとおり,同答申中,本編第3の2,第4及び第5の部分並びにその余の部分のうち,答申年月日,諮問年月日,事案名,開示請求された文書名,開示請求の年月日,原処分の決定の年月日,開示請求された文書のうち原処分において非開示とされた部分,異議申立年月日,実施機関意見書の受理年月日,異議申立人意見書の受理年月日,審査の各年月日,第4回審議会から第6回審議会までの実施年度の各記載を除いた残余の部分は,ある程度のまとまりのある一定の情報という外形を保っており,かつ,それ自体有意でないとは言い切れないから,同部分は本件条例6条2項の文言上義務づけられている部分開示の範囲内にあるというべきである。 また,仮に,このような部分開示が非公開事由に該当する独立した一体的な情報を細分化することになるとしても,(2)に述べたとおり,本件通達が非開示事由に該当する独立した一体的な情報を細分化して,個人識別部分を除いた部分を開示することを定めている以上,実施機関は本件通達の趣旨に基づいた部分開示の手続を執るべきであり,これに従わなかった本件非開示決定には,適正手続又は平等原則に反した違法があるといわなければならない。 したがって,同答申中,本編第3の2,第4及び第5までの部分並びにその余の部分のうち,答申年月日,諮問年月日,事案名,開示請求された文書名,開示請求の年月日,本件原決定の年月日,開示請求された文書のうち原処分において非開示とされた部分,異議申立年月日,実施機関意見書の受理年月日,異議申立人意見書の受理年月日,審査の各年月日,第4回審議会から第6回審議会までの実施年度の各記載をそれぞれ非開示とした部分は正当として是認できるが,その他の部分に係る本件非開示決定は,違法として取り消すほかない。 4 結論よって,控訴人 ,第4回審議会から第6回審議会までの実施年度の各記載をそれぞれ非開示とした部分は正当として是認できるが,その他の部分に係る本件非開示決定は,違法として取り消すほかない。 4 結論よって,控訴人の本訴請求は,上記に説示した限度で認容し,その余を棄却すべきものであるから,これと一部結論を異にする原判決を本件主文1項のとおり変更したうえ,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部裁判長裁判官矢崎秀一裁判官高橋勝男裁判官長秀之
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