- 1 -平成21年11月26日宣告平成21年(わ)第312号等強盗致死,死体遺棄被告事件判決主文被告人を懲役24年に処する。 未決勾留日数中110日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1貴金属の売買取引を仮装して取引相手であるAらから金員を強取しようと企て,B及びCと共謀の上,平成19年6月29日午後10時20分ころ,静岡県a市b番地所在の貸別荘において,A(当時52歳)に対し,被告人が改造空気銃により金属球を1回発射してAの後頸部に命中させ,その後,Cが仰向けに倒れたAの頸部を右手で強く圧迫する暴行を加え,同人の反抗を抑圧した上,同人らが所有又は管理する現金1900万円在中のショルダーバッグ1個を強取し,上記頸部圧迫の暴行により,そのころ,同所において,同人を死亡させ,第2Cと共謀の上,同年6月29日午後10時20分ころから翌30日午前2時ころまでの間,Aの死体を普通貨物自動車に載せて前記貸別荘から同県c町d番地先道路上まで運搬した上,同所において,上記死体を崖下に投棄し,もって,死体を遺棄したものである。 (証拠の標目)省略(確定裁判)被告人は,平成20年11月12日静岡地方裁判所沼津支部で傷害罪により懲役2年(4年間執行猶予)に処せられ,その裁判は同年11月27日確定したもので- 2 -あって,この事実は検察事務官作成の捜査報告書によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法60条,240条後段に,判示第2の所為は同法60条,190条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,以上の各罪と前記確定裁判があった傷害罪とは同法45条後段により併合罪の関係にあるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示各罪について更に処断するこ 罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,以上の各罪と前記確定裁判があった傷害罪とは同法45条後段により併合罪の関係にあるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし,なお,判示各罪もまた同法45条前段により併合罪の関係にあるが,判示第1の罪について無期懲役刑を選択したので,同法46条2項本文により他の刑を科さないこととし,なお後記の犯情を考慮し,同法66条,71条,68条2号,14条1項を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役24年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中110日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の事情)本件は,強盗致死・死体遺棄という凶悪重大事件である。暴力団組長を中心に,その配下の組員や関係者が集まり,貴金属の売買だとうそを言って被害者らをおびき出し,用意した買付代金を強奪しようと計画した上,実行役や被害者らの案内役等の役割を分担したり,貸別荘の手配や改造空気銃等の用意を行ったものであって,組織的かつ計画的犯行といえる。 そして,被害者ら二人を貸別荘に連れてくるや,実行役である被告人らが,被害者らに対し,威力の相当強い空気銃により金属球を発射し,更に逃げる被害者らに対して執ように暴行を加えている。特に被害者に対しては,その首をのど輪の形で片手で圧迫し,しかもその手に体重を集中させたというのであるから,強盗の態様は危険で凶暴というほかない。 その結果,被害者は死亡するに至っている。被害者は,買い付ける時計を鑑定するために韓国から来日したところ,異国の地で突然絶命したのであって,その無念- 3 -さは察して余りある。しかも,被告人らは,被害者の死体を山中の崖下に投棄して証拠隠滅を図っており,死者の 鑑定するために韓国から来日したところ,異国の地で突然絶命したのであって,その無念- 3 -さは察して余りある。しかも,被告人らは,被害者の死体を山中の崖下に投棄して証拠隠滅を図っており,死者の尊厳を冒とくする行為である。死体は白骨化し約2年間にわたり発見されなかったのである。その間,夫の安否を気遣っていた妻をはじめ家族の精神的苦痛は多大なものがあり,妻が当公判廷で厳しい被害感情を表明しているのは当然である。 また,被告人らは,被害者らが持参した多額の現金を強奪したのであって,この財産的被害も大きい。 以上を見ると,本件行為は極めて悪質であり,結果は重大である。 そこで,被告人の行為等について具体的に見ると,被告人は,暴力団の正式組員ではないものの,その組長のいわば叔父貴格として関わり,本件犯行に及んでいる。 まず,計画段階では,空気銃の使用にとどまらず,被害者らの抵抗を排除するためのロープ等の準備のほか,相当手荒な暴行に発展した場合に備えて出血した被害者らを移動させるための道具としてブルーシートの準備も提案している(この点,検察官は,被告人がシートの準備を提案したのは死者の出ることを予想していたためであると強調するが,相当ではない。)。次に,実行段階では,売買取引の売主として振る舞い,貸別荘に移動するに当たって被害者ら二人に限定して他の随行者と分離させている。さらに,空気銃の使用を担当し,実際にこれを最初に使用して強盗行為を開始している。このように被告人は,犯行に積極的に参加し,実行行為の中心的役割を果たしたといい得るのである。加えて,被告人は,死体遺棄の実行行為も行っている。 また,被告人は,暴力団組長との間で,強奪した多額の現金の半分を報酬として受け取る約束をしていたのであり,犯行後にその一部として100万円を得ている。 ところが, ,死体遺棄の実行行為も行っている。 また,被告人は,暴力団組長との間で,強奪した多額の現金の半分を報酬として受け取る約束をしていたのであり,犯行後にその一部として100万円を得ている。 ところが,被告人は,犯行後逃亡しており,被害弁償は全くしていない。 なお,被告人は,当公判廷で空気銃の威力は大したものではないと述べるが,実際には,被害者が後頸部への一発で前に倒れ,その部位から出血するほどの威力があり,被告人が異変に気づいた被害者に対する最初の攻撃手段として空気銃を使用- 4 -していることに照らして,被告人の上記供述は信用できないことを付言しておく。 以上によれば,被告人が法を守ろうとする意識に欠けていたことは明らかであり,その刑事責任は重大というべきである。 他方,被告人が本件の首謀者ではないこと,被害者の死に直結する暴行を加えてはいないこと,被害者の死後,そのズボンのポケットから落ちた財布を元に戻し,これが身元判明の資料となるなど人間らしい一面を見せていること,警察に出頭してからは犯行を認め,反省の言葉を述べていること,弁護人を通じて被害者の妻に対し謝罪の手紙を送っていること,本件により前記確定裁判の執行猶予が取り消され,合わせて服役することが見込まれること,被告人には,妻及び扶養を必要とする子どもがいること,その妻が当公判廷で被告人の帰りを待つと述べていること等の酌むべき事情も認められる。 これらの事情や量刑の動向を考慮すると,被告人について強盗致死罪の法定刑のうち無期懲役刑を選択した上で,酌量減軽をすることが相当である。しかしながら,先に指摘した被告人の本件における役割等に照らすと,暴力団組長が主犯であり,被告人は被害者を死なせる暴行をしていないことを強調して,被告人の果たした役割は大きくないとする弁護人の主張には賛成できない。 に指摘した被告人の本件における役割等に照らすと,暴力団組長が主犯であり,被告人は被害者を死なせる暴行をしていないことを強調して,被告人の果たした役割は大きくないとする弁護人の主張には賛成できない。まして,処断刑の最下限である懲役7年が適切であるとの弁護人の主張には賛成できない。むしろ,被告人の刑事責任の重大性に照らすと,処断刑のうち重い方の刑期に処するのが相当であり,懲役25年という被告人に有利な事情をも考慮した検察官の求刑にかんがみ,主文の量刑を定めたものである。 (求刑懲役25年)平成21年11月26日静岡地方裁判所沼津支部刑事部裁判長裁判官片山隆夫- 5 -裁判官松岡崇裁判官西谷大吾
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