- 1 -令和3年11月9日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第3646号商標権侵害差止等請求事件口頭弁論終結の日令和3年9月28日判決 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告の製造販売する別紙商品目録記載の商品を販売するに際し,「ハンドレールステッキ」なる商標を付してはならない。 2 被告らは,原告に対し,連帯して300万円及びこれに対する令和2年4月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え第2 事案の概要 1 原告は,車輪付き杖である別紙商品目録記載の商品(以下「本件商品」という。)の製造元として,本件商品を「ローラーステッカー」の商品名(以下「原告標章」という。)により販売していたところ,本件商品を原告より直接又は間接に仕入れた被告らは,「ハンドレールステッキ」の商品名(以下「被告ら標章」という。)により,本件商品の卸売り又は小売りを行った。 原告は,原告標章について商標登録を得たものであるが(以下これに基づく権利を「本件商標権」という。),原告が被告フジホームに対し取引の停止を通告してから本件商標権に係る公報が発行された令和2年1月7日までの期間については,被告らが共同して,未登録である原告標章に化体する信用や出所表示機能を毀損する不法行為を行ったと主張し,前記公報発行日以降は,登録商標の出所表示機能を 毀損することで,本件商標権を共同で侵害したと主張して,被告ら標章の使用の差- 2 -止めを求めると 機能を毀損する不法行為を行ったと主張し,前記公報発行日以降は,登録商標の出所表示機能を 毀損することで,本件商標権を共同で侵害したと主張して,被告ら標章の使用の差- 2 -止めを求めると共に,不法行為又は商標権侵害による損害賠償金300万円及びこれに対する共同不法行為後の令和2年4月1日から平成29年法律第44号による改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実) (1) 当事者等ア原告は,京都市内において,「P2」との屋号で,健康維持を目的とした運動器具,福祉用具等を開発・商品化し,自ら消費者に販売するとともに,第三者に卸売りもする個人である。 イ原告は,平成10年ころ,本件商品となる車輪付き杖を発明し,台湾のメー カーに委託して製造をした本件商品を,原告標章(ローラーステッカー)の商品名で,直接又は卸売業者を介して販売している。 (2) 被告フジホームへの販売ア被告フジホームは,介護用品の開発・販売等を目的とする株式会社である。 被告フジホームは,平成26年9月,原告に対し,本件商品を卸売りしてほしい 旨申し入れ,平成27年2月23日,両者は,取引基本契約(以下「本件基本契約」といい,本件基本契約に係る契約書(甲11)を「本件契約書」という。)を締結した。 イ被告フジホームは,平成27年2月末以降,原告から納入された本件商品について,梱包箱の原告の屋号が記載された箇所の上に,「ハンドレールステッキ 発売元フジホーム株式会社」と印字されたシールを貼り付け,原告が商品本体と同梱した「ローラーステッカー使用説明書」(以下「原告説明書」という。)を,被告フジホー に,「ハンドレールステッキ 発売元フジホーム株式会社」と印字されたシールを貼り付け,原告が商品本体と同梱した「ローラーステッカー使用説明書」(以下「原告説明書」という。)を,被告フジホームが作成した「ハンドレールステッキ取扱説明書」(以下「被告ら説明書」という。)に差し替えて販売した。 ウ被告サンリビングは,健康器具等の卸売りを目的とする株式会社である。 被告サンビリングは,遅くとも平成29年以降,被告フジホームより前記イの仕- 3 -様の本件商品を仕入れ,これを株式会社ダイワ(以下「ダイワ」という。)に卸売りし,ダイワは主として通信販売の方法によりこれを販売した。 (3) 本件商標権原告は,平成31年2月21日,指定商品を第18類「つえ」として,原告標章「ローラーステッカー(標準文字)」について商標登録の出願を行い,令和元年1 2月6日に本件商標権の登録がなされ,令和2年1月7日にこれに係る公報が発行された。 (4) 取引の停止等ア原告は,令和元年8月以降,被告フジホームに対し,本件商品の出荷の停止,取引の停止を通告し,被告フジホームは,同月以降,原告より本件商品の納入を受 けられなくなった。 イ被告フジホームは,前記取引停止以前に原告より納入されていた本件商品の在庫を,同年8月から11月にかけて,被告サンリビングに納入し,被告サンリビングは,これをダイワに卸売りした。 ウ被告フジホームは,令和2年3月ころまで,前記在庫の残余を,自社のオン ラインショップにおいて,アウトレット品として廉価で販売した。 (5) 被告サンリビングへの販売ア被告サンリビングは,令和元年8月以降,被告フジホームを介しての本件商品の仕入れが困難となり,ダイワへの卸売事業に支障をきたすことから として廉価で販売した。 (5) 被告サンリビングへの販売ア被告サンリビングは,令和元年8月以降,被告フジホームを介しての本件商品の仕入れが困難となり,ダイワへの卸売事業に支障をきたすことから,同年8月又は9月,原告に直接の取引を申し入れ、以後,原告から本件商品の納入を受ける ようになった。 イ被告サンリビングは,原告から納入された本件商品の梱包箱の外側に,被告ら標章を商品名として印字したシールを貼り付けてこれをダイワに納品し,ダイワはこれを被告ら標章の商品名で販売した(なお,被告サンリビングが,本件商品に同梱された原告説明書を,被告ら説明書に差し替えたかについては争いがある。) ウ原告は,令和2年3月をもって,被告サンリビングとの本件商品の取引を終- 4 -了した。 (6) まとめア原告は,令和元年8月以降の,被告フジホームに取引の停止を通告し,被告サンリビングに対し直接の販売を開始した以降の被告らの販売行為を問題として,その期間を本件商標権の登録に係る公報が発行された令和2年1月7日により区分 している(以下「前半期間」,「後半期間」という。)。 イ原告と被告フジホームとの取引が終了した時点で,被告フジホームが在庫として保有していた本件商品は,前記⑵イで特定した仕様のもの(梱包箱に被告ら標章を印字したシールを貼り付け,原告説明書を被告ら説明書に差し替えたもの)であったことになり,それらについての被告フジホームから被告サンリビングへの納 入,被告サンリビングからダイワへの納入は,令和元年11月に終了し,後半期間には及んでいない(以下この部分の被告らの行為を「被告ら行為①」という。)。 被告フジホームが上記在庫の残余を(前記⑵イで特定した仕様のもの),自社のオンラインショップで販売したのは 了し,後半期間には及んでいない(以下この部分の被告らの行為を「被告ら行為①」という。)。 被告フジホームが上記在庫の残余を(前記⑵イで特定した仕様のもの),自社のオンラインショップで販売したのは,前半期間,後半期間の双方にわたる(被告サンリビングはこれに関与していないが,この部分に係る被告フジホームの行為を, 便宜「被告ら行為②」という。)。 被告サンリビングが,令和元年8月か9月以降,令和2年3月までの間,原告から本件商品の納入を受け,前記⑸イで特定した仕様(少なくとも梱包箱に被告ら商標を印字したシールを貼り付けたもの)としてダイワに納品したのは,前半期間,後半期間の双方にわたる(原告説明書が被告ら説明書に差し替えられた事実が認め られなければ,被告フジホームはこれに関与しないことになるが,この部分に係る被告サンリビングの行為を,便宜「被告ら行為③」という。)。 ウ総合して,公報発行までの前半期間の被告らの行為として問題となるのは,被告ら行為①,②及び③であり,公報発行後の後半期間の被告らの行為として問題となるのは,被告ら行為②及び③ということになる。 3 争点- 5 -(1) 前半期間における共同不法行為の成否(被告らの行為①,②及び③)(争点1)(2) 後半期間における商標権侵害の成否(被告らの行為②及び③)(争点2)(3) 損害の発生及び額(争点3) 4 当事者の主張 (1) 前半期間における共同不法行為の成否(被告らの行為①,②及び③)(争点1)(原告の主張)ア被告フジホームについて(ア) 原告は,被告フジホームに対し,遅くとも平成31年2月に,本件商品に 被告ら標章を付すことを受け入れられない旨の通知をした。 被告フジホームは,遅くともその時点で, ームについて(ア) 原告は,被告フジホームに対し,遅くとも平成31年2月に,本件商品に 被告ら標章を付すことを受け入れられない旨の通知をした。 被告フジホームは,遅くともその時点で,原告の承諾なく,本件商品に被告ら標章を付して販売等することができないことを理解した。 (イ) 原告標章である「ローラーステッカー」は,原告が実際に本件商品に使用しているものであり,本件商品を仕入販売する被告フジホームは,商取引の常識と して,このような原告標章を抹消して他の標章を付すことを許容する原告の明確な意思が認められるような特段の事情がない限り,原告標章を,商品の流通過程において尊重すべきである。 そもそも,他者が使用する標章は,使用されることでこれに信用が化体するものであり,知的財産としての価値が増していく。このような観点からも,ある商品に 標章が適正に付されれば,その商品の同一性が害されない形で流通する限り,当該標章がそのまま使用され続ける(棄損されない)ことは,商標登録の前後を問わず,法的に保護されるべき利益である。当該標章が付された商品を業として扱う者は,当然これを配慮するべきであり,これを商取引上要求しても,取引者に過剰な負担を課すことにはならない。 (ウ) 上記(ア)のように,原告が本件商品に被告ら標章を付して販売等することを- 6 -許容しないことを明確に伝えた後も,これを継続した被告フジホームの行為は(被告ら行為①及び②),同一の商品に別の標章を付して取引者・需要者に販売等をする行為であって,実質的に原告の標章を剥離する行為と同視することができ,原告標章の出所表示機能を棄損する不法行為である。 被告フジホームは,本件商品に原告標章が付されていることを認識しており,そ の棄損行為には故意 に原告の標章を剥離する行為と同視することができ,原告標章の出所表示機能を棄損する不法行為である。 被告フジホームは,本件商品に原告標章が付されていることを認識しており,そ の棄損行為には故意又は重大な過失があった。 イ被告サンリビングについて(ア) 原告は,被告サンリビングとの取引を開始する際に,原告が被告フジホームとの取引を停止した理由は,被告フジホームが本件商品を原告標章ではなく,被告ら標章により販売等したことが原因である旨を伝えた。 原告と被告サンリビングは,本件商品の商品名に関して何らの取り決めもしなかったが,被告サンリビングは,上記のとおり本件商品に被告ら標章を付すことを原告が許容していないことを認識していた。 (イ) それにもかかわらず,被告サンリビングは,被告フジホームより,被告ら標章を貼付し,取扱説明書を差し替えた本件商品の納入を受け,これをそのままダ イワに卸売りするのみならず(被告らの行為①),原告から直接納入を受けた本件商品についても,被告ら標章を貼付し,説明書を差し替えた上で,これをダイワに卸売りしたのであるから(被告らの行為③),原告が適正に付した標章が継続して使用されるという,原告の法的保護された利益を,故意又は重大な過失により棄損する行為であり,実質的に原告の標章を剥離する不法行為に該当する。 ウ被告ら標章についての承諾の不存在(ア) 原告は,被告フジホームと取引を開始するにあたり,同社から,本件商品に別の商品名を付す旨の申出を受けたことはなく,承諾もしなかった。本件基本契約書をはじめ,そのような合意を記載した書面は一切存在しない。 (イ) 原告は,本件契約書に記載のとおり,被告フジホームとの間で本件商品を 「ローラーステッカー」として受注し,発送して 本契約書をはじめ,そのような合意を記載した書面は一切存在しない。 (イ) 原告は,本件契約書に記載のとおり,被告フジホームとの間で本件商品を 「ローラーステッカー」として受注し,発送していたことなどから,被告フジホー- 7 -ムが本件商品に被告ら標章を付して販売等しているとは想定しておらず,同事実を明確に認識していなかった。 原告は,平成31年2月上旬頃,被告フジホームがインターネット上で本件商品に被告ら標章を付して販売していることを知った。 したがって,原告は,本件被告フジホームの行為について相当な期間苦情の申立 てや是正要請をしていなったものの,同行為を黙示に承諾していたものではない。 (ウ) 前記イ(ア)のとおり,原告は,被告サンリビングに対しても,本件商品に被告ら標章を付すことは許容しない旨を伝えており,被告サンリビングはこれを認識していた。 エ共同不法行為を構成すること 被告らは,原告標章を付して納入した本件商品について,梱包箱に被告ら標章を貼付し,同梱した原告説明書を被告ら説明書に差し替えて卸売りし,あるいは販売したのであるから,被告らの行為には関連共同性がある。 (被告フジホームの主張)ア原告の主張のうち,被告フジホームが本件商品に別の商品名を付して販売す ることについての合意を記載した書面が存在しない事実は認め,その余は否認ないし争う。 原告が主張する本件商標の登録前(本件商標の公報発行前)の原告の利益は,商標権の保護利益とほぼ同じである。以下のイ,ウ及び後記(2)(被告フジホームの主張)のとおり,被告フジホームが原告の権利利益を侵害したことはない。また, 被告フジホームが原告に損害を与える目的で本件商品を販売したことはなく,被告フジホームには故意がない。 イ ームの主張)のとおり,被告フジホームが原告の権利利益を侵害したことはない。また, 被告フジホームが原告に損害を与える目的で本件商品を販売したことはなく,被告フジホームには故意がない。 イ被告フジホームの販売状況等被告フジホームは,本件商品を原告から仕入れた状態のまま,すなわち商品本体前部に大きな金文字の「RollerSticker」の英語表記があるままで販売等しており, 本件商品から原告標章を剥離したことはない。 - 8 -被告フジホームは,下記ウのとおり原告の了承を得て本件商品を自社製品として販売していたため,エンドユーザー等からの問い合わせ等に対応するため,被告フジホームが作成した被告ら説明書を同封して本件商品を販売していた。 ウ被告ら標章の使用の許容(ア) 合意の不存在 原告と被告フジホームとの間において,被告フジホームが本件商品を販売する際に,原告標章を使用することを義務付けるような合意が存在しない以上,被告フジホームが原告標章以外の標章を使用したとしても,不法行為は成立しない。 (イ) 明示の承諾被告フジホームは,平成26年9月18日に原告を訪問し,本件商品を被告フジ ホームが購入し,被告フジホームの商品として販売したい旨申し出た。 被告フジホームの代表者は,原告が被告の申出を了承した際,原告に対し,口頭で,①本件商品を自社製品として販売すること及び②原告の販売価格より高い販売予定価格とするため本件商標に独自の名称を用いて販売することを申入れ,原告はこれを了承した。 (ウ) 黙示の承諾被告フジホームは,平成27年2月末より被告ら標章を付した本件商品の販売を開始し,その後約4年間,原告から,令和元年8月に取引停止の通告を受けるまでの間,被告ら標章の使用に (ウ) 黙示の承諾被告フジホームは,平成27年2月末より被告ら標章を付した本件商品の販売を開始し,その後約4年間,原告から,令和元年8月に取引停止の通告を受けるまでの間,被告ら標章の使用について指摘を受けたことは一度もなかった。 被告フジホームは,平成26年11月以降,原告に対し,本件商品に関する疑問 点等を記載した書面の送付,被告フジホーム作成のカタログの送付,本件商品に関するインターネット上の市場評価等を取りまとめた書面の送付等を通じて,被告フジホームが本件商品に被告ら標章を付して販売していることを明示していた。そのほか,原告は,平成27年に東京都内で開催された介護用品の展示会を訪れ,被告フジホームのブースを訪問した。かかる経緯の中で,原告は,被告フジホームが本 件商標に被告ら標章を付して販売等していることについて,何らの苦情や是正要請- 9 -をしなかった。 このような事情に照らせば,原告は,遅くとも平成29年2月7日までに,被告フジホームに対し,本件商品に被告ら標章を付して販売することを黙示に承諾したといえる。 (被告サンリビングの主張) ア原告と被告サンリビングとの間で本件商品の商品名に関して何らの取り決めもしなかったことは認め,その余は否認ないし争う。 被告サンリビングは,被告フジホームから本件商品を購入していた期間,同社から仕入れた本件商品をそのままダイワへ卸売りしていたため(被告ら行為①),当該期間に仕入れた本件商品に,被告ら説明書が封入されていた可能性はある。 イ被告サンリビングは,本件商品について,被告ら標章を付加的に表示して,いわばダブルネームでの販売を行っており,本件商標を棄損又は抹消した事実はない。このように,製造メーカーが製造者商標を付した商品について,卸売業 グは,本件商品について,被告ら標章を付加的に表示して,いわばダブルネームでの販売を行っており,本件商標を棄損又は抹消した事実はない。このように,製造メーカーが製造者商標を付した商品について,卸売業者や小売業者が独自の商標や表示を付して販売することは各種業界において一般的に行われている。 原告と被告サンリビングとの間で,本件商品の取引が開始されるに際して,本件商品の名称について特段の合意は存在せず,被告サンリビングが原告からローラーステッカーの名称のみを使用するよう指示を受けた事実はない。 ウ原告の元を訪れた被告サンリビング東京支店長のP3は,被告フジホームへの供給停止の原因について,同社の卸売先のインターネット販売業者がメーカー希 望小売価格よりも安価で販売しているためとの説明を受けたのみであり,本件商品を原告標章ではなく被告ら標章により販売したためとの説明は受けていない。 (2) 後半期間における商標権侵害の成否(被告らの行為②及び③)(争点2)(原告の主張)ア原告標章である「ローラーステッカー」は,設定登録により商標法の保護の 対象となり,法的に保護されるべき確固たる権利となった。 - 10 -イ被告フジホームについて被告フジホームは,後半期間においても被告ら標章を貼付し,取扱説明書の差替えを行って,本件商品を販売した(被告ら行為②)。 このような被告フジホームの行為は,上記(1) (原告の主張)アのとおり,原告が本件商品に付した本件商標を剥離するのと同等の行為であるといえ,本件商標の 出所表示機能を故意又は重大な過失により棄損し侵害する行為であり,本件商標権の侵害を構成する。 ウ被告サンリビングについて被告サンリビングは,後半期間においても,被告ら標章を貼付し,取扱説明 出所表示機能を故意又は重大な過失により棄損し侵害する行為であり,本件商標権の侵害を構成する。 ウ被告サンリビングについて被告サンリビングは,後半期間においても,被告ら標章を貼付し,取扱説明書の差し替えを行って本件商品を販売した(被告ら行為③)。 このような被告サンリビングの行為は,上記(1)(原告の主張)イのとおり原告の商標を剥離するのと同等の行為であるといえ,上記イと同様に,本件商標権の侵害を構成する。 エ被告らに共同不法行為が成立することは,上記(1)(原告の主張)エのとおりである。 (被告フジホームの主張)商標法は,他人の登録商標をその指定商品等について使用する行為(同法25条)や,他人の登録商標の類似範囲において使用する行為(同法37条)を商標権の侵害行為として禁止している。これらの規定の趣旨は,登録商標や類似商標を他の製品に用いる行為を禁止することにより,品質の粗悪な模倣品やコピー商品の流通を 阻止し,もって商標権者の商品イメージや信用を保護することにある。 このような同法25条及び37条の趣旨及び各文言からすれば,商標を剥離する行為は,上記のいずれの行為にも該当しない。 したがって,本件被告フジホームの行為が本件商標を剥離する行為と同等であるとして,本件商標権の侵害に当たるとする原告の主張は理由がない。 (被告サンリビングの主張)- 11 -被告サンリビングが,後半期間において,本件商品に被告ら標章を貼付したものの,取扱説明書の差替えを行っていないことは既に述べたとおりである。被告サンリビングが原告標章を毀損した事実はなく,本件商標権の侵害は成立しない。 (3) 損害の発生及び額(争点3)ア原告の主張 (ア) 前半期間における被告らの行為は,継続的供給契約 告サンリビングが原告標章を毀損した事実はなく,本件商標権の侵害は成立しない。 (3) 損害の発生及び額(争点3)ア原告の主張 (ア) 前半期間における被告らの行為は,継続的供給契約の契約当事者としての信義則に悖る極めて悪質な行為であり,これにより,原告は損害を被ったが,このような侵害行為から生じた損害を立証することは,損害の性質上極めて困難であるから,相当な損害額の賠償を求める(民事訴訟法248条)。 また,後半期間における被告らの行為により,本件商標権の出所表示機能は直接 阻害され,積極的に侵害されたが,このような侵害行為に起因する損害賠償額の算定は,損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるため,相当な損害額の賠償を求める(商標法39条,特許法105条の3)。 前半期間及び後半期間を合算して算定される損害額は,200万円を下らない。 (イ) 原告は,本訴提起に先立ち,東京地方裁判所へ知的財産権専門調停を申立てたが,被告フジホームが管轄合意をしなかった。 同調停申立てや,本件提訴に要する弁護士費用は,いずれも被告らの共同不法行為がなければ原告が負担することを要しなかった費用である。その額は100万円を下らない。 (被告らの主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2「2前提事実」,文中掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事 実を認定することができる。 - 12 -(1) 原告と被告フジホームとの取引経緯等ア取引の開始等(ア) 被告フジホームの代表者は,出張先で本件商品の存在を知り,平成26年9月18日,本件商品を被告フジホームへ卸売りをしてもらうよう商談するため,京都市内の原告の事務所を訪問し,原 引の開始等(ア) 被告フジホームの代表者は,出張先で本件商品の存在を知り,平成26年9月18日,本件商品を被告フジホームへ卸売りをしてもらうよう商談するため,京都市内の原告の事務所を訪問し,原告は,同日,被告フジホームに本件商品を販 売することを承諾した(原告本人,被告フジホーム代表者)。 (イ) 被告フジホームは,同年11月12日,原告に対し,「◎ハンドレールステッキ(ローラーステッカー)Q&A について」の題名で,本件商品の使用方法や類似品との違い等についての質問を複数記載した書面を送付し,原告は,同月15日,被告フジホームに対し,「ローラーステッカーQ&A」と題し,上記各質問に 対する回答を記載した書面を返送した(乙2,乙3)。 イ本件基本契約の締結等(ア) 被告フジホームは,本件契約書の文案を作成し,平成27年2月24日,原告へ送付した。原告が,本件契約書「第9条(支払)」について一部修正を求めた以外は,被告フジホームが作成した文案が本件契約書となり,原告と被告フジホ ームは,本件契約書を同月23日付で作成した。被告フジホームは,その頃,原告に対し本件商品を正式に注文した(被告フジホーム代表者,甲11,乙4)。 (イ) 本件契約書は,「取引基本契約書」との表題の下に,「P2(以下「甲」という)とフジホーム株式会社(以下「乙」という)とは,下記製品又は部品の売買取引に関し,次の通り取引基本契約(以下「本契約」という)を締結する。」と の記載がある。 また本件契約書には,「第2条(本製品の内容)」として,「本製品とは以下のアイテムとする。/(改行を意味する。以下同様)①ローラーステッカー(S・M)/②歩行補助及び関連商品他」,「第7条(価格)」として「乙が購入する本製品の価格は乙の発注に先だ て,「本製品とは以下のアイテムとする。/(改行を意味する。以下同様)①ローラーステッカー(S・M)/②歩行補助及び関連商品他」,「第7条(価格)」として「乙が購入する本製品の価格は乙の発注に先だって甲が乙に提出する見積書に基づき,甲乙協議の上決定 する。」,「第13条(所有権移転)」として,「本製品の所有権は,第8条に規- 13 -定する受入検査の合格をもって甲から乙に移転するものとする。」,「第16条(販売終息)」として,「乙が本製品の販売を終息する場合,甲へ1ヶ月前までに書面で通知する。甲は,乙に速やかに専用の残存資材の報告を行ない,最終時点で資材在庫がなくなるように協議を行う。」,「第21条(協議事項)」として「本契約に定めない事項及び本契約の解釈に疑義を生じた事項については,甲及び乙は 誠意をもって協議の上,これを解決する。」との記載がある。 (ウ) 原告と被告フジホームとの間の受発注は,月に1~2回ファックス等を用いて行われ,原告が発行する請求書には,「ローラーステッカー」と記載されていた。原告は,当初,被告フジホームに対する本件商品の卸売価格を1台5333円(税抜き),原告の販売価格を1万2800円(税込み)と定めた。被告フジホー ムは,小売及び卸売りを含め,本件商品を年間約1700台~2000台程度販売した(原告本人,被告フジホーム代表者,乙8,18,19)。 (エ) 被告フジホームは,本件商品を販売するにあたり,前記第2「2前提事実」(2)イのとおり,被告ら標章を本件商品の商品名として自社のホームページに掲載し,梱包箱の原告屋号が記載された箇所の上に「ハンドレールステッキ発売元フ ジホーム株式会社」と印字されたシールを張り付け,同箱内に入っていた原告説明書を被告ら説明書に差し替えて販売した( し,梱包箱の原告屋号が記載された箇所の上に「ハンドレールステッキ発売元フ ジホーム株式会社」と印字されたシールを張り付け,同箱内に入っていた原告説明書を被告ら説明書に差し替えて販売した(原告本人,被告フジホーム代表者,甲10,乙20)。 ウ平成27年の事情等(ア) 被告フジホームは,平成27年6月15日,原告に対し,入庫した商品の 梱包箱の一部がつぶれており,卸先からクレームがあったとして,「至急改善をお願いします。/添付の写真をご確認ください。」と記載した文書と,梱包箱がつぶれた様子が撮影された画像を印刷した紙面をファックスで送信した。 その際,被告フジホームは,原告に対し,本件商品の梱包箱に「ハンドレールステッキ S/発売元フジホーム株式会社」と印刷されたシールが貼られているこ とを確認し得る画像を送付したのに対し, 原告は,同日中に,被告フジホームに- 14 -対し,「直ちに電話を入れて注意しました。すみませんでした。」等と記載した書面をファックスで送信した(乙20,21)。 (イ) 被告フジホームは,同年9月,原告に対し,東京都内で開催された福祉機器に関する展示会の案内をし,原告は,本件商品に被告ら標章を付した状態で展示されている被告フジホームのブースを訪れた(原告本人,被告代表者)。 エ平成28年以降の事情等(ア) 原告は,平成28年1月以降,本件商品の被告フジホームへの卸売価格を6210円(税込み),原告の販売価格1万3800円(税抜き)に増額した(乙8)。 (イ) 平成28年6月,被告フジホームが,顧客より本件商品の不具合の指摘が あったとしてこれを原告に伝えたところ,原告は,同月8日,一旦ねじを締めブレーキワイヤの止め位置を調整することで不具合は解消するとして, 月,被告フジホームが,顧客より本件商品の不具合の指摘が あったとしてこれを原告に伝えたところ,原告は,同月8日,一旦ねじを締めブレーキワイヤの止め位置を調整することで不具合は解消するとして,その方法を図面で説明する文書を被告フジホームに送付する共に,同月11日付けで,製造委託先のチェックが不十分であったことを謝罪すると共に,この程度の直しは被告フジホームでやってもらいたいこと,多少の修理技術も習得した方が良いこと,商品名を 変更し,あたかも被告フジホーム独自の商品のように販売を開始しているが,果たして末永く販売を続けていけるか,車輪物は色々問題がある旨を記載した文書を送付した(原告本人,乙22,23)。 (ウ) 被告フジホームは,ネット上の通販サイトで本件商品を購入した者が,レビューとして書き込んだコメントを収集し列挙した平成29年1月31日付け文書 を作成し,「ハンドレールステッキ(ローラーステッカー含む)市場評価」との題名を付して原告に送付した。これに対し,原告は,多くのアンケートを集め整理したことに対する謝礼を述べる同年2月7日付け文書を,原告に送付した(乙6,7)(エ) 原告は,平成30年3月頃,被告フジホームに対し,本件商品の卸売価格を,従前の6210円から7110円プラス運送費900円に変更する旨を連絡し, これに伴い,被告フジホームでは,従前は1万7500円であった販売価格を,同- 15 -年7月より2万円に変更した(乙9,11,13)(オ) 原告は,同年8月24日,被告フジホームに対し,「開脚歩行車その他について」と題する書面を送付し,被告フジホームが,名称を変えて原告の設定した販売価格よりも高く売ることは,年金生活者に対する社会福祉の観点から疑問であること,被告フジホームは,開発者 歩行車その他について」と題する書面を送付し,被告フジホームが,名称を変えて原告の設定した販売価格よりも高く売ることは,年金生活者に対する社会福祉の観点から疑問であること,被告フジホームは,開発者でも製造業者でもなく単純な販売業者であり, 近い将来,急に売れなくなるのではないか心配であること,大阪の業者は鋭くチェックしているようで,価格を統一するようにとの申し出があるが,原告は関与するつもりはないこと等を記載した(乙10)。 オ平成31年(令和元年)の事情等(ア) 被告フジホームは,平成31年2月,「ハンドレールステッキの今後の対 応案について」と題する書面を送付して,原告に対し,前記エ(エ)の価格改定により本件商品の売上げが下がったこと,値上げに伴い通販企画の対象から外されたことが一番の要因であること,価格格改定時に,被告フジホーム以外の販売価格は1万3800円と開きが大きく,現在は1万5800円であるがなお価格差があることがもう一つの要因であることを述べ,いくつかの対応策を考えたいことを述べた (乙11)。 (イ) 原告は,同月21日,原告標章(標準文字)について商標登録の出願をした。 (ウ) 原告は,同年3月5日付けで,被告フジホームに書面を送付し,ローラーステッカーとして長年販売してきた商品名を変えられることはどうしても受け入れ る事ができないこと,今後もローラーステッカーの名を基盤として社会福祉に貢献して行く予定であること,ローラーステッカーで堅実に進めないと商品の寿命が無くなると思っていること,従って,同じ商品について名前を変え,被告フジホームのオリジナルにすることもできないこと,従来から取引している会社より販売価格を統一するよう要望が出ており,1万5800円に統一して欲しいこと,卸売価格 ,同じ商品について名前を変え,被告フジホームのオリジナルにすることもできないこと,従来から取引している会社より販売価格を統一するよう要望が出ており,1万5800円に統一して欲しいこと,卸売価格 を7426円に変更させてもらいたいこと等を書き送った(乙12)。 - 16 -(エ) 被告フジホームは,同月6日付けで,前記書面に対する回答として,被告フジホームは「ハンドレールステッキ」の商品名にて販売しているが,販売価格が「ローラーステッカー」とは異なるので,別の商品名を付けていること,被告フジホームは商社ではなくメーカーポジションなので,責任を持って販売活動及びクレーム修理対応するために,被告フジホームのブランドを付して販売していること, 何か事故が起こった場合は,被告フジホームの責任(PL 保険等)で対応すること,価格を1万5800円に統一すると利益がなくなり,さらに卸売価格が7426円へ値上げされると赤字になると考えられるため,この商品の販売を中止しなくてはならないこと,原告が,卸売価格を改定する共に,市場価格及び商品名の統一を主張するのであれば,被告フジホームは本件商品の販売を中止する旨を述べた文書を 原告に送付した(甲12)。 (オ) 原告は,同月19日付けで,被告フジホームに書面を送付し,被告フジホームがメーカー並みの20パーセントのマージンを必要とする考えは理解できず,取引中止とされてもやむを得ないが,状況が変化しない限り,被告フジホームから注文があれば,本件商品を7100円で納品する旨を書き送った(乙13)。 カ出荷停止の申入れ等(ア) 原告は,令和元年7月,被告フジホームに対し,複数のネット通販サイトにおいて,被告ら商標による本件商品が廉価で販売されているので,そのような通販サイト カ出荷停止の申入れ等(ア) 原告は,令和元年7月,被告フジホームに対し,複数のネット通販サイトにおいて,被告ら商標による本件商品が廉価で販売されているので,そのような通販サイトに対する販売を停止するか,販売価格を是正して欲しい旨を申し入れた(弁論の全趣旨)。 (イ) 被告フジホームは,ネット通販サイトに対し廉価での販売を禁じる立場にはないとして原告の前記申し入れに応じずにいたところ,原告は,同年8月1日,被告フジホームに対し,通販サイトでの販売価格が是正されていないので,被告フジホームへの出荷を同月から停める旨を電話で告げ,これに対し被告フジホームは,出荷を停めるのは止めてほしい旨を伝えると共に,内部で協議する旨を伝えた(乙 14)。 - 17 -(ウ) 原告は,同月8日付けで,被告フジホームに書面を送付して,被告フジホームとの取引停止を提案すること,その理由の一つは,原告の開発商品を被告フジホーム自社の商品とし名称を換えて販売していること,もう一つの理由は,原告の販売価格は1万7064円であるのに,インターネット上及び新聞紙上で2万1600円である旨を表示して一般大衆に報道し,これを大きく割引きしたかのように 1万2800円で販売していること,これによって原告の信用は大きく失墜し,本件商品の商品としての寿命が潰されることである旨を書き送った(甲8)。 (エ) さらに原告は,同月10日付けで,被告フジホームに書面を送付し,原告が研究・開発した商品につけた名称を変えて販売することは認められず,原告標章にて販売すること,諸般の事情により,同年9月1日以降,被告フジホームへの卸 売価格を,やむを得ず1万1850円に送料消費税を加算した1万3662円に変更することを通告した(乙15)。 にて販売すること,諸般の事情により,同年9月1日以降,被告フジホームへの卸 売価格を,やむを得ず1万1850円に送料消費税を加算した1万3662円に変更することを通告した(乙15)。 (オ) 被告フジホームは,同年8月19日付けで,原告に対し,「取引停止のお申し出について」と題する書面を送付し,原告からの取引停止の申し出を受けること,前記(エ)の卸売価格の改定が今後も継続するのであれば,本件商品の販売を継 続することは難しいため,同年10月31日限りの取引停止を受ける旨を回答し,原告は,同年8月1日以降,本件商品を被告フジホームに納入することはなかった(甲9,弁論の全趣旨)キ取引停止前後の事情原告と被告フジホームは,令和元年8月以降,前記イ(イ)のとおり記載された本 件契約書第16条に基づく在庫に関する協議又は同第21条に基づく協議を行わなかった(被告フジホーム代表者,甲5)被告フジホームは,本件商品の在庫を有していたことから,被告サンリビングに卸売りするほか,同月から令和2年3月末頃まで,本件商品を,アウトレット品として自社のオンラインストアで販売した(被告フジホーム代表者,甲7)。 (2) 原告と被告サンリビングとの間の取引経緯等- 18 -ア取引の開始等(ア) 被告サンリビングは,遅くとも平成29年頃から,上記(1)カのとおり原告と被告フジホームとの本件商品に係る取引が停止されるまで,被告フジホームから年間500台ないし1000台程度本件商品を仕入れ,ダイワに卸売りしていた(被告フジホーム代表者)。 被告サンリビングは,本件商品を被告フジホームから仕入れた状態のまま,すなわち上記1(1)イ(エ)のとおり,本件商品の梱包箱に発売元を被告フジホームとし,被告ら標章を商 フジホーム代表者)。 被告サンリビングは,本件商品を被告フジホームから仕入れた状態のまま,すなわち上記1(1)イ(エ)のとおり,本件商品の梱包箱に発売元を被告フジホームとし,被告ら標章を商品名とするシールが貼られ,同梱包箱に被告ら説明書が入った状態のものをダイワに販売し,ダイワは,本件商品を被告ら標章の名称で販売していた(被告フジホーム代表者,丙10,弁論の全趣旨)。 (イ) 被告サンリビングは,令和元年8月頃,被告フジホームと原告との取引が停止されたことを知り,今後,本件商品を同社から購入できなくなるため,原告から直接仕入れる必要があると考え,担当者において原告に電話をかけ,上記経緯を説明し,東京支店長であるP3が,同年9月6日,京都市内の原告の事務所を訪問して, 本件商品を原告から直接購入したい旨の申入れを行った(丙10,丙1 1)。 その際,P3が,被告フジホームとの取引停止の理由を原告に尋ねたところ,原告は,被告フジホームの卸先が通販サイトで不当に廉売していることが問題であると説明し,P3が,被告サンリビングの卸先であるダイワにはそのような問題はない旨を説明したところ,原告は被告サンリビングとの直接取引を開始した。 イ被告サンリビングによる卸売り等(ア) 被告サンリビングは,令和元年9月末から令和2年3月末頃まで,原告から本件商品を仕入れ,ダイワに対し卸売りをした。 被告サンリビングについては,前記第2「2前提事実」(5)イのとおり,ダイワから提供されたシールに被告ら標章を印字し,これを原告から仕入れた本件商品の 梱包箱の上面に張り付けた上でダイワに納品した事実は認められるものの,本件商- 19 -品に同梱された原告説明書を被告ら説明書に差し替えたと認めるべき証拠はない(丙1,弁論 れた本件商品の 梱包箱の上面に張り付けた上でダイワに納品した事実は認められるものの,本件商- 19 -品に同梱された原告説明書を被告ら説明書に差し替えたと認めるべき証拠はない(丙1,弁論の全趣旨)。 (イ) ダイワは,被告サンリビングから納品された本件商品を,被告ら標章の商品名で販売した(丙8,9)。前半期間から後半期間にかけてダイワが販売した本件商品には,被告フジホームが有していた在庫が被告サンリビング経由でダイワに 納入されたものと,被告サンリビングが原告から直接仕入れ,ダイワに納入したものの双方が含まれていたと解され,前記認定したところによれば,取扱説明書の差替えの有無という点で仕様が異なることになる。 (3) 本件商標の登録等令和元年12月6日,本件商標が登録され,令和2年1月7日,本件商標の公報 が発行された。 2 前半期間における共同不法行為の成否(争点1)(1) 判断の枠組みア原告は,原告が被告フジホームに対し取引の停止を通告し,被告サンリビングが原告と独自に取引を行うようになった令和元年8月から本件商標権に係る公報 が発行されるまでの前半期間における被告らの行為は,未登録であるが顧客吸引力,自他識別力を有する原告標章を剥離する不法行為にあたると主張し,具体的には本件商品の梱包箱に被告ら標章の記載のあるシールを貼付し(被告ら行為①,②及び③),また同梱されていた原告説明書を被告ら説明書に差し替えて(被告ら行為①及び②),被告ら標章を商品名として販売したことが問題であるとする。 イ原告の主張は,製造元が一定の商品名で流通に置いた商品については,それ以降の卸売業者,小売業者は,それを許容する旨の特段の合意等がない限り,商品名を変更することはできないとするものであり,これに対 原告の主張は,製造元が一定の商品名で流通に置いた商品については,それ以降の卸売業者,小売業者は,それを許容する旨の特段の合意等がない限り,商品名を変更することはできないとするものであり,これに対し被告らは,本件商品を,原告標章の商品名でのみ販売することについての特段の合意は成立しておらず(被告フジホーム),卸売業者,小売業者が製造元とは異なる商品名により流通に置く ことは一般に行われている旨を主張する一方で(被告サンリビング),本件商品を- 20 -被告ら標章で販売することについて,原告の明示又は黙示の承諾がある旨を主張する(被告フジホーム)。 ウそこで検討するに,商品に商品名を付して販売する場合,一般には出所の識別や顧客の吸引を期待してなされるのであり,複数の製造者が類似する商品を製造販売する場合に,類似する商品名が使用されれば商品の出所の混同を招くおそれが あることから,不正競争防止法や商標法は,同一又は類似の標章の使用を規制することで商品の本来の主体の利益を守ろうとしたものと解される。しかしながら,製造者における自他識別や顧客吸引の問題は,製造者から卸売業者あるいは小売業者へ商品が譲渡された段階で一旦目的を達すると考えられるから,卸売業者あるいは小売業者としては,当初の商品名により販売すべき旨の合意や製造者が譲渡する際 に付した条件,あるいは商品の性質上当然そのようにすべき特段の事情や公的規制のない限り,当初の商品名のまま販売することでその顧客吸引力等を生かすこともできれば,より需要者に訴えることのできる商品名に変更したり,あるいはより商品の内容を適切に説明し得る商品名に変更して販売することも許されると解される。 原告は,製造者が一定の商品名を付して流通に置いた商品について,その後の段 階の者が商品 更したり,あるいはより商品の内容を適切に説明し得る商品名に変更して販売することも許されると解される。 原告は,製造者が一定の商品名を付して流通に置いた商品について,その後の段 階の者が商品名を変えることができないのは当然である旨を主張するが,製造者が販売を終えた商品について,以後の者が別の商品名により販売したとしても,直ちに製造者の利益が損なわれることにはならないし,ブランドとしての統一を図る等の必要があれば,販売に際しその旨の合意を得れば足りることであるから,そのような合意等のない場合に,卸売業者や小売業者が,常に当初の商品名によらなけれ ばならないと解すべき理由はない。 また,本件事案において,被告らが本件商品を被告ら標章により販売することにより,原告標章により販売されている本件商品よりも優れたものであることを表示したとすれば,需要者をして品質を誤認させる表示をしたということができるかもしれないが,本件はそのような事案ではなく,原告は,商品名を原告標章から被告 ら標章に変更したことをもって,原告標章を剥離する不法行為にあたるというもの- 21 -であるから,原告の主張は採用できないといわざるを得ない。 エ以上によれば,原告が本件商品を被告らに譲渡した際に,合意や指示等,以後も原告標章を商品名として販売すべき特段の事情が存したにも関わらず,被告らが被告ら標章による販売を行って,これにより原告に損害を生じさせたと認められる場合には,不法行為が成立すると解する余地があるから,以下,このような観点 から検討することとする。 (2) 原告と被告フジホームとの合意の有無ア本件商品を被告らにおいても原告標章により販売すべきことについて,原告と被告フジホームとの間に合意が成立した,あるいは原告がこれを取引の条件と る。 (2) 原告と被告フジホームとの合意の有無ア本件商品を被告らにおいても原告標章により販売すべきことについて,原告と被告フジホームとの間に合意が成立した,あるいは原告がこれを取引の条件とした等の特段の事情が認められるかについては,前記認定した事実によれば,以下の イないしエの点を指摘することができる。 イ本件基本契約平成27年2月に,原告と被告フジホームが締結した本件基本契約において,ローラーステッカーの語が使用されているが,これは契約の対象となる商品の内容を特定する趣旨で記載されているに止まり,原告と被告フジホームにおいて,以後こ れを商品名として使用することを定めた趣旨とは解されない(前記1⑴イ(イ))。 ウ被告フジホームの対応(ア) 被告フジホームは,本件基本契約を締結する前の平成26年11月,本件商品について,被告ら標章と原告標章を並列した質問状を原告に送付し,被告フジホームとしては,本件商品を被告ら標章により呼ぶ予定である旨を示した(前記1 ⑴ア(イ))。 (イ) 被告フジホームは,平成27年6月に梱包箱の損傷についてのクレームがあった際に,被告ら標章を印字したシールを梱包箱に貼付していることを示す写真を原告に送付した(前記1⑴ウ(ア))。 (ウ) 被告フジホームは,同年9月,本件商品に被告ら標章を付して展示されて いる展覧会に原告を招いた(前記1⑴ウ(イ))。 - 22 -(エ) 被告フジホームは,平成29年1月,ネット上の通販サイトにおける購入者のコメントを整理した文書を原告に交付する際に,本件商品が被告ら標章でも販売されていることを前提とする表題を付した(前記1⑴エ(ウ))。 エ原告の対応(ア) 原告は,平成28年6月,被告フジホームからの本件商品の不具合の指摘 付する際に,本件商品が被告ら標章でも販売されていることを前提とする表題を付した(前記1⑴エ(ウ))。 エ原告の対応(ア) 原告は,平成28年6月,被告フジホームからの本件商品の不具合の指摘 に対し,対処方法を指示すると共に,被告フジホームが本件商品の商品名を変更し,あたかも被告フジホーム独自の商品にように販売しているが,永続できるかとの懸念を表明した(前記1⑴エ(イ))。 (イ) 原告は,平成30年8月,被告フジホームが本件商品の名称を変えて高く売っていることに対し,年金生活者に対する社会福祉の観点から疑問であるとした (前記1⑴エ(オ))。 (ウ) 原告は,平成31年3月,被告フジホームへの書面により,商品名を変えられることは,どうしても受け入れることができない旨を告げたが,同時に,被告フジホームに対し,小売価格の統一と,卸売価格の改定をも求めた。 これに対し,被告フジホームが,卸売価格の改定と共に市場価格及び商品名の統 一を原告が主張するのであれば,本件商品の販売を中止せざるを得ないとしたところ,原告は,状況が変化しない限り,被告から注文があれば,本件商品を従前の価格で納品する旨を告げた(前記1⑴オ)。 (エ) 原告は,令和元年7月以降,被告フジホームに対し,ネット通販サイトにおける廉価販売の是正を求めるようになり,同年8月1月,通販サイトの価格が是 正されなかったことを理由に,被告フジホームへの出荷停止を電話で通告したが,同月8日付け書面により,取引停止の理由は,本件商品の名称の変更とネット通販における価格設定の2点である旨を告げた(前記1⑴カ)。 オまとめ(ア) 前記⑵によれば,本件基本契約において,被告フジホーム側が原告標章を 使用すべきこととはされておらず,被告フジホームは,被告 格設定の2点である旨を告げた(前記1⑴カ)。 オまとめ(ア) 前記⑵によれば,本件基本契約において,被告フジホーム側が原告標章を 使用すべきこととはされておらず,被告フジホームは,被告ら標章により本件商品- 23 -を販売する予定である旨を,本件基本契約締結以前より示し,原告との取引開始後もこれを明らかにし,特にこの点を秘匿しようとしたとは認められない。 そして原告は,平成28年6月と平成30年8月,被告フジホームが本件商品を被告ら標章による販売していることに言及した上で,これに懸念や疑問を表明するに止まり,原告標章を使用するよう求めたり,原告標章の使用が取引の条件である 旨を述べたりはしていない。 (イ) 原告は,平成31年3月に,被告フジホームに対し,商品名の変更は受け入れられないこと等を述べると共に価格の統一等を求めたが,被告フジホームの拒絶に対し,注文があれば従前の卸売価格で提供するとしており,商品名を原告標章に統一することを,それ以上に求めてはいない。 (ウ) 以上を総合すると,原告が被告フジホームに本件商品を納入した平成27年2月から令和元年7月までの間において,原告と被告フジホームとの間において,本件商品を原告標章により発売することの合意が成立した,あるいは,原告標章により販売することを,原告が本件商品を被告フジホームに納入する条件としたとの事実を認めることはできない。 そして,前半期間において,被告フジホームが被告サンリビングに納入し,被告サンリビングがダイワに卸売した本件商品(被告ら行為①),及び被告フジホームが自社のオンラインストアで販売した本件商品(被告ら行為②)は,すべて令和元年7月以前に原告が被告フジホームに納入したものであるから,これらについて,商品名についての制約は存 ),及び被告フジホームが自社のオンラインストアで販売した本件商品(被告ら行為②)は,すべて令和元年7月以前に原告が被告フジホームに納入したものであるから,これらについて,商品名についての制約は存しないものといわざるを得ない。 (エ) 原告が被告フジホームに対し,令和元年8月8日付けで取引停止を提案した際に,本件商品の名称の変更を理由の一つとはしているものの,前述のとおり,原告の被告フジホームに対する本件商品の納入はそれ以前になされており,商品名についての制約が,遡及的に生じると解することはできない。 (3) 原告と被告サンリビングとの合意の有無 ア前記認定したところによれば,原告が被告フジホームとの取引を停止した後- 24 -に,被告サンリビングが直接の取引を打診した際に原告が問題としたのは,被告フジホームの卸売先において本件商品の廉価販売がされたことであり(前記1(1)カ),この時に,原告と被告サンリビングの間で,原告標章のみを使用するとの合意が成立した,あるいは商品名を変更しないことを原告が被告サンリビングとの取引の条件にしたと認めるべき証拠はない(甲5においても,商品名に関しては何らの話も なかったとされている。)。 イ原告は,被告フジホームとの取引停止の理由が商品名の変更である旨を被告サンリビングに告げたので,被告サンリビングにおいて商品名を変更してはならないとの認識はあったと主張する。しかしながら,既に認定したところによれば,原告が被告フジホームとの取引を停止した主たる理由は,被告フジホームの卸売先の 廉価販売であり,前記アで述べたところによっても,被告サンリビングとの取引開始の時点で,被告サンリビングが商品名の変更に制約がある旨を認識していたとは認められず,原告の主張は採用できない。 廉価販売であり,前記アで述べたところによっても,被告サンリビングとの取引開始の時点で,被告サンリビングが商品名の変更に制約がある旨を認識していたとは認められず,原告の主張は採用できない。 ウ前半期間において,被告サンリビングが原告から直接仕入れ,ダイワに納品した本件商品について(被告ら行為③),原告標章を使用しなければならない,あ るいは原告標章を変更してはならないとの制約が存していたと認めることはできず,原告の主張は採用できない。 (4) 不法行為の成否以上によれば,前半期間において,本件商品を被告ら標章の商品名により販売したことは(被告ら行為①ないし③),原告に対する不法行為にはならないというべ きであり,これに付随する説明書の差替えも(被告ら行為①及び②),同様といわざるを得ない。 3 後半期間における商標権侵害の成否(争点2)原告は,原告標章(標準文字)が商標登録され,これに係る公報が発行された後は,原告標章を使用せず,被告ら標章により本件商品を販売した行為は,登録商標 の出所表示機能を毀損するものとして,商標権侵害が成立する旨を主張する。 - 25 -しかしながら,商標権侵害は,指定商品又は指定役務の同一類似の範囲内で,商標権者以外の者が,登録商標を同一又は類似の商標を使用する場合に成立することがその基本であり(商標法25条,37条),原告が原告標章を付した本件商標を被告らに譲渡した際に,原告標章と同一又は類似の商標を使用する競業者が存在しなかったことをもって,本件商標権はその役割を終えたと見ることができるのであ り,原告から本件商品を譲り受けた被告らが,これを原告標章以外の商品名で販売することができるかは,商標権の問題ではなく,前記検討したとおり,原告と被告らとの合意の存否の問題と とができるのであ り,原告から本件商品を譲り受けた被告らが,これを原告標章以外の商品名で販売することができるかは,商標権の問題ではなく,前記検討したとおり,原告と被告らとの合意の存否の問題と考えざるを得ない。 したがって,後半期間において,被告フジホームが本件商品を被告ら標章により,また取扱説明書を差し替えて自社のオンラインストアで販売したこと(被告ら行為 ②),あるいは被告サンリビングが,原告より直接入手した本件商品を,被告ら標章によりダイワに譲渡したことは(被告ら行為③),いずれも商標権侵害にはあたらないといわざるを得ない。 4 まとめ以上のとおり,被告らに不法行為があったということはできず,商標権侵害 も成立しないから,その余の争点につき検討するまでもなく,差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がないというべきである。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒 - 26 - 裁判官 杉浦一輝 裁判官 布目真利子 布目真利子
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