平成28(ワ)4167 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年8月31日 大阪地方裁判所
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判決文本文23,477 文字)

- 1 -平成29年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第4167号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成29年6月20日判決原告株式会社MTG 同訴訟代理人弁護士關 健一同訴訟代理人弁理士小林徳夫被告ベノア・ジャパン株式会社同訴訟代理人弁護士横 清貴同冨宅 恵 同西村 啓同補佐人弁理士森田拓生同髙山嘉成 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成28年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「美肌ローラ」とする発明に係る特許権を有する原告が,被告が業として販売するなどするローラーが当該発明の技術的範囲に属するとして,被告に対し,不法行為(特許権侵害)に基づき,被告が得た利益の額に相当する損 害金1億8000万円と弁護士費用相当額1800万円の合計額の一部として損害- 2 -賠償金1億円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年5月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(1) 当事者(争いのない事実) 原告は,美容機器等の企画,製造を目的とする株式会社である。被告は,美容器具,健康器具等の販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権(争い 1) 当事者(争いのない事実) 原告は,美容機器等の企画,製造を目的とする株式会社である。被告は,美容器具,健康器具等の販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権(争いがない)原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である(本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明1」, 請求項2に係る発明を「本件発明2」,請求項3に係る発明を「本件発明3」とそれぞれいい,本件発明1ないし3を併せて「本件各発明」という。)。本件特許の出願願書に添付された明細書及び図面(以下,これらをまとめて「本件明細書」という。)の記載は,別紙「特許公報」のとおりである。 特許番号第5230864号 発明の名称美肌ローラ出願日平成19年12月14日登録日平成25年3月29日特許請求の範囲別紙「特許公報」記載のとおり(3) 構成要件の分説(争いがない) 本件各発明を構成要件に分説すると,それぞれ以下のとおりである。 ア本件発明11A 柄と,1B 前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと,1C 生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と,を備え, 1D 前記ローラの回転軸が,前記柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設け- 3 -られ,1E 前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた,1F 美肌ローラ。 イ本件発明22A 導体によって形成された一対のローラと, 2B 前記一対のローラを支持する把持部と,2C 生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と,を備え,2D 前記ローラの回転軸が,前記把持部の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ,2E 前記一 B 前記一対のローラを支持する把持部と,2C 生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と,を備え,2D 前記ローラの回転軸が,前記把持部の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ,2E 前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた,2F 美肌ローラ。 ウ本件発明33A 前記ローラが金属によって形成されていることを特徴とする,3B 請求項1又は2に記載の美肌ローラ。 (4) 被告の行為アローラーの販売(以下の限度では争いのない事実である。) 被告は,少なくとも,本件特許の登録日である平成25年3月29日以降,別紙「被告製品目録」記載1のローラー(以下「被告製品1」という。)及び同記載2のローラー(以下「被告製品2」といい,被告製品1と併せて「被告各製品」という。)を業として販売していたことがある。 イ被告各製品の構成(争いのない事実) 被告製品1の構成は別紙「被告製品1説明書」,被告製品2の構成は別紙「被告製品2説明書」各記載のとおりである。 被告各製品のローラは,導体ではない樹脂で形を作り上げられているものの,表面に金属メッキを施す(1b,2b参照)ことで導電性を獲得している。また,被告各製品の太陽電池によって生成された電力は,ローラに通電されるだけでなく, ハンドルにも通電される(1c,2c参照)。 - 4 -ウ構成要件の充足(以下の限度では争いがない)(ア) 被告製品1被告製品1は,本件発明1の構成要件1B及び1C以外の構成要件を,本件発明2の構成要件2A及び2C以外の構成要件をそれぞれ充足する。 (イ) 被告製品2 被告製品2は,本件発明1の構成要件1B及び1C以外の構成要件を,本件発明2の構成要件2A及び2 発明2の構成要件2A及び2C以外の構成要件をそれぞれ充足する。 (イ) 被告製品2 被告製品2は,本件発明1の構成要件1B及び1C以外の構成要件を,本件発明2の構成要件2A及び2C以外の構成要件をそれぞれ充足する。 3 争点(1) 技術的範囲の属否(争点1)ア被告各製品が「導体によって形成された…ローラ」(構成要件1B及び 2A)を充足するか(争点1-1)イ被告各製品が「生成された電力が…ローラに通電される」(構成要件1C及び2C)を充足するか(争点1-2)ウ被告各製品が「ローラが金属によって形成されている」(構成要件3A)を充足するか(争点1-3) (2) 無効理由(乙24発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(争点2)本件各発明は,当業者が本件特許の出願日前に頒布された特開2005-66304号公報(以下「乙24公報」という。)に記載された発明(以下「乙24発明」という。)に,特開2002-65867号公報(以下「乙25公報」という。),昭60-2207号公報(以下「乙26公報」という。)及び昭61-73649 号公報(以下「乙27公報」という。)に各記載された技術,特開平4-231957号公報(以下「乙28公報」という。)に記載された発明(以下「乙28発明」という。)の構成,特開2004-321814号公報(以下「乙29公報」という。)に記載された発明(以下「乙29発明」という。)の構成,大韓民国登録意匠30-0399693号公報(以下「乙30の1公報」という。)に記載された 意匠(以下「乙30意匠」という。)の構成又は中華民国M258730号公報- 5 -(以下「乙31の1公報」という。)に記載された考案(以下「乙31考案」という 」という。)に記載された 意匠(以下「乙30意匠」という。)の構成又は中華民国M258730号公報- 5 -(以下「乙31の1公報」という。)に記載された考案(以下「乙31考案」という。)の構成のいずれかを適用することによって容易に発明をすることができたか。 (3) 本件特許権侵害による損害額(争点3) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1-1(「導体によって形成された…ローラ」〔構成要件1B及び2 A〕の充足性)について(原告の主張)太陽電池により生成した電流をローラに通電することにより,ローラが帯電し,毛穴の汚れを引き出し,さらに美肌効果をもたらすという本件明細書の記載(【0014】,【0018】,【0026】,【0030】)に照らせば,ローラは, 太陽電池により生成した電流が通電でき,ユーザの肌に接触する表面に帯電できればよい。したがって,「導体によって形成された…ローラ」には,導体ではない部材で形を作り上げられていても,表面に金属メッキを施すことで導電性,帯電性を獲得できるローラも含まれる。ローラを導体である金属によって「形成」する場合に選択することが望ましいとして例示されている金属の中に,非常に高価な貴金属 であることからローラの形を作り上げる部材として選択するとは考えられない「プラチナ」が含まれているという本件明細書の記載(【0013】)もまた,上記解釈を基礎付けるものである。 したがって,被告各製品の構成(1b,2b)は,本件発明1の構成要件1B及び本件発明2の構成要件2Aを充足する。 (被告の主張)特許請求の範囲に記載されている「形成」という文言が「形を作り上げる」という意味を有すること(乙18ないし20)に照らせば,「導体によって形成された…ロー を充足する。 (被告の主張)特許請求の範囲に記載されている「形成」という文言が「形を作り上げる」という意味を有すること(乙18ないし20)に照らせば,「導体によって形成された…ローラ」は,形を作り上げている部材が導体であるローラと解すべきである。樹脂という導体ではない部材で形を作り上げられているものの,表面に金属メッキを 施すことで導電性を獲得したローラも,「導体によって形成された…ローラ」に含- 6 -まれると解することができる根拠となる記載は,本件明細書にもない(【0013】,【0025】等参照)。 したがって,被告各製品の構成(1b,2b)は,本件発明1の構成要件1B及び本件発明2の構成要件2Aを充足しない。 (2) 争点1-2(「生成された電力が…ローラに通電される」〔構成要件1C 及び2C〕の充足性)について(原告の主張)太陽電池により生成した電流をローラに通電することにより,ローラが帯電し,毛穴の汚れを引き出すなどするという本件明細書の記載(【0014】,【0018】)に照らせば,「生成された電力が…ローラに通電される」というのは,太陽 電池によって生成された電力がローラに通電されればよい。「生成された電力が…ローラに通電される」とは,太陽電池によって生成された電力が柄等ローラ以外の部分に通電することまで包含されていないと解釈する根拠はない。 したがって,被告各製品の構成(1c,2c)は,本件発明1の構成要件1C及び本件発明2の構成要件2Cを充足する。 (被告の主張)「生成された電力が…ローラに通電される」という特許請求の範囲の記載からは,太陽電池によって生成された電力が柄等ローラ以外の部分にも通電されることまで包含されていると積極的に解釈できるものではない 「生成された電力が…ローラに通電される」という特許請求の範囲の記載からは,太陽電池によって生成された電力が柄等ローラ以外の部分にも通電されることまで包含されていると積極的に解釈できるものではない。そこで,本件明細書の記載を見ると,太陽電池により生成した電流をローラに通電するという記載はあっても (【0014】,【0018】,【0026】,【0030】),これを柄等ローラ以外の部分にも通電することに言及する記載はない。したがって,「生成された電力が…ローラに通電される」とは,太陽電池によって生成された電力が柄等ローラ以外の部分に通電することまで包含されていない。 したがって,被告各製品の構成(1c,2c)は,本件発明1の構成要件1C及 び本件発明2の構成要件2Cを充足しない。 - 7 -(3) 争点1-3(「ローラが金属によって形成されている」〔構成要件3A〕の充足性)について(原告の主張)太陽電池により生成した電流をローラに通電することにより,ローラが帯電し,毛穴の汚れを引き出し,さらに美肌効果をもたらすという本件明細書の記載(【0 014】,【0018】,【0026】,【0030】)に照らせば,ローラは,太陽電池により生成した電流が通電でき,ユーザの肌に接触する表面に帯電できればよい。したがって,「ローラが金属によって形成されている」には,ローラが導体ではない部材で形を作り上げられていても,表面に金属メッキを施すことで導電性,帯電性を獲得している場合も含まれる。 したがって,被告各製品の構成(1b,2b)は,本件発明3の構成要件3Aを充足する。 (被告の主張)特許請求の範囲に記載されている「形成」という文言が「形を作り上げる」という意味を有すること(乙18ないし20)に照らせば,「 2b)は,本件発明3の構成要件3Aを充足する。 (被告の主張)特許請求の範囲に記載されている「形成」という文言が「形を作り上げる」という意味を有すること(乙18ないし20)に照らせば,「ローラが金属によって形 成されている」とは,ローラが金属部材のみで形を作り上げられていることをいうと解すべきである。金属ではない部材で形を作り上げられているローラも,表面に金属メッキが施されていれば「金属によって形成されている」に含まれると解することができる根拠となる記載は,本件明細書にもない。 したがって,被告各製品の構成(1b,2b)は,本件発明3の構成要件3Aを 充足しない。 (4) 争点2(無効理由〔乙24発明を主引例とする進歩性欠如〕の存否)について(被告の主張)ア本件発明1について (ア) 乙24発明との相違点の認定- 8 -a 相違点1A本件発明1は,ローラに通電される電力を太陽電池によって生成させる。これに対し,乙24発明は,ローラに通電される電力を乾電池によって生成させる。 b 相違点1B本件発明1は,ローラの回転軸が柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けら れ,一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられている。これに対し,乙24発明は,ローラの回転軸である横軸部が把持部の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラの回転軸である横軸部のなす角が180度である。 c 相違点1C乙24発明も,ローラを備えた肌を美しくする器具に関する発明であるから,美 肌ローラに関する発明である。したがって,原告が主張する相違点1Cは,相違点ではない。 (イ) 相違点に係る構成の容易想到性a 相違点1A健康器具において ら,美 肌ローラに関する発明である。したがって,原告が主張する相違点1Cは,相違点ではない。 (イ) 相違点に係る構成の容易想到性a 相違点1A健康器具において生体に印加する電気エネルギー源として太陽電池を用いること が乙25公報に,歯ブラシの柄の部分に太陽電池を内蔵して電力を印加することが乙26公報及び乙27公報に記載されていることに照らせば,生体に電流を流すための電源として太陽電池を用いることは,当業者にとって周知の技術であった。したがって,このことのみをもってしても,乙24発明における乾電池を太陽電池に置き換えることは,当業者が容易になし得たことである。加えて,乙25公報に, 乙25発明をマッサージ器に適用することについて示唆されていたり,皮膚に太陽電池を用いて生成した微弱電流を流すことにより,生体内の老廃物のスムーズな排出・血流循環の改善という乙24発明と共通する効果が記載されていたりするなど,乙25公報ないし乙27公報には,乙24発明に上記周知技術を適用することの動機付けの記載もある。したがって,乙24発明における乾電池を太陽電池に置き換 えることは,当業者が容易になし得たことは明らかである。 - 9 -仮に,生体に電流を流すための電源として太陽電池を用いることが当業者にとって周知の技術でなかったとしても,乙25公報ないし乙27公報には,この技術が記載されているだけでなく,上記のとおり,この技術を乙24発明に適用することの動機付けの記載がある以上,乙24発明における乾電池を太陽電池に置き換えることはやはり,当業者が容易になし得たことである。 b 相違点1B乙24発明のマッサージ器は,皮膚のマッサージ効果を高めるため,皮膚に与える機械的な刺激を大 陽電池に置き換えることはやはり,当業者が容易になし得たことである。 b 相違点1B乙24発明のマッサージ器は,皮膚のマッサージ効果を高めるため,皮膚に与える機械的な刺激を大きくするべく,ローラ支持部を二股にして一対のローラを回転軸である横軸部に回転可能に取り付けられているものの,横軸部のなす角を必ず180度とすることまで求められているわけではない。また,乙24発明のマッサー ジ器は,ローラが皮膚に接している限りは通電により老廃物を浮き上がらせるから,ローラにより肌をねじ曲げられるという構成は阻害要因にはならない。 そして,以下のとおり,乙24発明に乙28発明,乙29発明,乙30意匠又は乙31考案の構成を適用することの動機付けの記載があることから,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙28発明,乙29発明,乙30意匠又は乙31 考案のそれらに相当する構成に置き換えることは,当業者が容易になし得たことである。 (a) 乙28発明の構成との組合せ乙28発明のマッサージ装置は,ローラの回転軸を取手の長手方向の中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角を120度に設け,ローラを移 動させることで,ローラによる皮膚の転動/ひだよせ作用を生じさせようとしている。このように乙24発明と乙28発明は,技術分野,課題及び効果が同一であるから,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙28発明のローラとその回転軸に置き換えることは,当業者が容易になし得たことである。 (b) 乙29発明の構成との組合せ 乙29発明のマッサージ装置は,ローラの回転軸をボトルの長手方向の中心線と- 10 -それぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角(α)を鈍角(9 b) 乙29発明の構成との組合せ 乙29発明のマッサージ装置は,ローラの回転軸をボトルの長手方向の中心線と- 10 -それぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角(α)を鈍角(90°<α≦140°)に設け,動かしたローラが皮膚を軽く押圧して皮膚上を転がり摩擦しながら摺動することで,皮膚のマッサージ効果を高めようとしている。このように乙24発明と乙29発明は,技術分野,課題及び効果が同一であるから,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙29発明のローラとその回転軸に置き換える ことは,当業者が容易になし得たことである。 (c) 乙30意匠の構成との組合せ乙30意匠のマッサージ器が,人体の部位を押すだけでなく,引っ張るとされていること,乙30の1公報の図面において,軸が球状物を突き抜けるように構成されていることに照らせば,球状物が回転するとしか考えられない。 乙30意匠のマッサージ器は,一対のローラの回転軸を柄の長手方向の中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角を鈍角に設けることで,人体の部位を引っ張り,押して筋肉をほぐしてマッサージ効果を高めようとしている。 このように乙24発明と乙30意匠は,技術分野,課題及び効果が同一であるから,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙30意匠のローラとその回転軸に 置き換えることは,当業者が容易になし得たことである。 (d) 乙31考案の構成との組合せ乙31の1公報に接した当業者が第3図を基準として乙31考案の構成を理解することに照らせば,乙31の1公報の第3図を直接測定して軸ロッドの角度を求めることに何の問題もない。 乙31考案のマッサージ器は,マッサージ球の軸ロッドを柄の長手方向の中心線とそれぞれ鋭角 ることに照らせば,乙31の1公報の第3図を直接測定して軸ロッドの角度を求めることに何の問題もない。 乙31考案のマッサージ器は,マッサージ球の軸ロッドを柄の長手方向の中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のマッサージ球の軸ロッドのなす角を鈍角に設けることで,皮膚のマッサージ効果を高めようとしている。このように乙24発明と乙31考案は,技術分野,課題及び効果が同一であるから,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙31考案のマッサージ球と軸ロッドに置き換えることは,当 業者が容易になし得たことである。 - 11 -イ本件発明2について本件発明2の構成は,把持部を採用している点を除けば,柄を採用している本件発明1と同じ構成であることに照らせば,本件発明2の乙24発明との相違点は,本件発明1と同様,ローラに通電される電力を生成するのが太陽電池か乾電池であるかという点(相違点2A)と,ローラの回転軸が把持部の中心線とそれぞれ鋭角 に設けられ,一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられているか,ローラの回転軸に相当する横軸部が把持部の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラの回転軸に相当する横軸部のなす角が180度であるかという点(相違点2B)である。 そうすると,上記アのとおり,本件発明1が乙24発明に,乙25公報ないし乙 27公報に各記載された技術,乙28公報ないし乙31の1公報に記載されたいずれかの構成を適用することによって容易に発明をすることができたのと同様,本件発明2も,乙24発明に,乙25公報ないし乙27公報に各記載された技術,乙28公報ないし乙31の1公報に記載されたいずれかの構成を適用することによって容易に発明をすることができた。 ウ本件発明3について乙24公報に いし乙27公報に各記載された技術,乙28公報ないし乙31の1公報に記載されたいずれかの構成を適用することによって容易に発明をすることができた。 ウ本件発明3について乙24公報には,ローラを形成する永久磁石としてフェライト磁石が用いられることが記載されているところ,フェライト磁石の主成分が酸化鉄であることは周知である。したがって,乙24発明のローラも,本件発明3のローラと同様,金属によって形成されている。 そして,上記ア及びイのとおり,本件発明1及び2は容易に発明することができるから,その従属請求項である本件発明3も,乙24公報に基づいて容易に発明することができた。 (原告の主張)ア本件発明1について (ア) 相違点の認定- 12 -a 相違点1A及び1B被告が主張する相違点1A及び1Bがあることは認める。 b 相違点1C本件発明1でいうところの「美肌ローラ」とは,毛穴の汚れをローラにより毛穴を開かせることによりその開口部に移動させ,続いてローラにより毛穴を収縮させ ることによりその汚れを押し出させるという一連の機能を有するものをいう。ところが,乙24発明のマッサージ器は,皮膚に含まれている老廃物をローラを介した通電により浮き上がらせる機能は有しているが,上記一連の機能は有していない。 したがって,本件発明1が「美肌ローラ」の発明であるのに対し,乙24発明が「マッサージ器」の発明であるという点も,相違点である。 (イ) 相違点に係る構成の容易想到性a 相違点1A乙24発明は,マッサージ器の発明であり,老廃物を浮き上がらせるために電流を皮膚表面に印加する。 これに対し,乙25発明は,健康器具の発明であり,疲労を軽減 易想到性a 相違点1A乙24発明は,マッサージ器の発明であり,老廃物を浮き上がらせるために電流を皮膚表面に印加する。 これに対し,乙25発明は,健康器具の発明であり,疲労を軽減させるために電 流を人体のいずれかの部位に印加する。乙26発明は,歯ブラシの発明であり,歯磨き能力を向上させるために電流を歯及び歯茎に印加する。乙27発明も,歯ブラシの発明であり,虫歯予防及び歯周疾患の予防治療のために電流を歯及び歯茎に印加する。 このように乙24発明と乙25発明ないし乙27発明は,技術分野,課題及び効 果が異なり,電流を印加する部位も異なる。そして,乙24公報には,電力を生成するために太陽電池を用いることを示唆する記載はなく,乙25公報ないし乙27公報には,太陽電池を用いて生成した電流を老廃物を浮き上がらせるために用いることを示唆する記載はない。したがって,生体に電流を流すための電源として太陽電池を用いることが,当業者にとって周知の技術であったとしても,乙24発明に おける乾電池を太陽電池に置き換える動機付けがない以上,当業者がこれを容易に- 13 -なし得たとはいえない。 b 相違点1B(a) 乙30意匠及び乙31考案の構成乙30の1公報には,球体物が回転する旨の記載がないところ,軸が回転物を貫通することが図示されているだけである。球体物が回転せずとも人体の部位を押す ことができれば,逆に引っ張ることもできる。先端等に回転しない球体が設けられている技術も多数存在する。したがって,乙30の1公報に開示されている球体物が回転すると認めることはできない。 また,被告が主張する乙31考案の構成のうち軸ロッドの角度は,乙31の1公報の第3図を直接測定したものであるが,第3図が設計図で の1公報に開示されている球体物が回転すると認めることはできない。 また,被告が主張する乙31考案の構成のうち軸ロッドの角度は,乙31の1公報の第3図を直接測定したものであるが,第3図が設計図ではないことに照らせば, 軸ロッドの角度が被告の主張するとおりであると認めることはできない。 (b) 乙28発明及び乙29発明,乙30意匠並びに乙31考案の構成との組合せ本件各発明は,ローラによる毛穴への作用と通電による毛穴の汚れを引き出す作用の相乗効果に着目したものである。これに対し,乙24発明には,通電による毛 穴の汚れを引き出すという課題はあっても,ローラによる機械的な刺激を多くするという課題は存在せず,他方,乙28発明ないし乙31考案は,ローラによるマッサージ作用にのみ着目したもので,乙24発明とは異なる課題に着目したものである。したがって,乙24発明に乙28発明,乙29発明,乙30意匠又は乙31考案の構成を適用する動機付けはない。 そればかりか,乙24発明が,老廃物を効率良く浮き上がらせるべく,ローラ支持部の形状を略T字状にし,一対のローラの位置関係を180度離す構成を取って,ローラと肌面との接触面積をできる限り大きくし,通電させる際に肌になるべく負荷を与えない状態にしようとしていることに照らせば,老廃物を効率良く浮き上がらせにくくなる可能性のある構成,すなわちローラにより肌をねじ曲げられる構成 となっている乙28発明及び乙29発明,乙30意匠並びに乙31考案の構成を当- 14 -業者が採用するとは考え難い。そして,乙24公報には,ローラの角度の変更を許容する記載はない。 したがって,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙28発明,乙29発明,乙30意匠又は乙31考案のそれらに相当する構成に置 そして,乙24公報には,ローラの角度の変更を許容する記載はない。 したがって,乙24発明におけるローラとローラ支持部を,乙28発明,乙29発明,乙30意匠又は乙31考案のそれらに相当する構成に置き換えることは,当業者がこれを容易になし得たとはいえない。 c 相違点1Cについてそもそも乙28公報ないし乙31の1公報には,毛穴の汚れをローラにより毛穴を開かせることによりその開口部に移動させ,続いてローラにより毛穴を収縮させることによりその汚れを押し出させるという一連の機能は記載されていない。したがって,当業者は乙24発明を出発点としてこの一連の機能を備えた構成に想到す ることさえできない。 仮に,当業者が上記構成に想到することができ得るとしても,それが容易でなかったことについては,上記bのとおりである。 イ本件発明2について本件発明2も,乙24発明との相違点は,本件発明1と同様,被告が主張する相 違点(相違点2A及び2B)に加えて,「美肌ローラ」の発明であるか「マッサージ器」の発明であるという点(相違点2C)であり,正確には「柄」と「把持部」の相違点もある。 そうすると,上記アのとおり,本件発明2が乙24発明に,乙25公報ないし乙27公報に各記載された技術,乙28公報ないし乙31の1公報に記載された構成 を適用することによって容易に発明をすることができたとはいえないのと同様,本件発明2も,乙24発明に,乙25公報ないし乙27公報に各記載された技術,乙28公報ないし乙31の1公報に記載された構成を適用することによって容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ本件発明3について 上記ア及びイのとおり,本件発明1及び2は容易に発明することができないから,- 15 -そ 適用することによって容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ本件発明3について 上記ア及びイのとおり,本件発明1及び2は容易に発明することができないから,- 15 -その従属請求項である本件発明3も,乙24公報に基づいて容易に発明することができたとはいえない。 (5) 争点3(本件特許権侵害による損害額)について(原告の主張)被告は,被告製品1の販売を平成22年11月頃に,被告製品2の販売を平成2 4年8月頃にそれぞれ開始しているところ,少なくとも,1か月当たり,被告各製品を合計1000本販売し,1製品ごとに5000円の利益を得ている。そうすると,被告は,本件特許の登録日である平成25年3月29日から平成28年3月31日までの間(36か月間)に,被告各製品を販売したことにより,合計1億8000万円の利益を得ている。したがって,原告の被った損害は1億8000万円で ある(特許法102条2項)。また,被告の特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の損害額は,1800万円が相当である。したがって,原告の被った損害の合計額は,1億9800万円である。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,本件各発明はいずれも進歩性を欠くと判断した(争点2)。その理由は,以下のとおりである。 1 本件各発明について本件各発明の技術的構成は,前記第2の2(3)記載のとおりであるが,本件明細 書(甲2)によれば,その意義は次のとおりであると認められる。 本件各発明は,肌に押し付けてころがすことにより毛穴の中の汚れを押し出す美肌ローラに関する発明である(本件明細書の【0001】)。従来の美肌ローラでは,毛穴を開くだけ又は毛穴を閉じるだけのいずれかの作用しかせ は,肌に押し付けてころがすことにより毛穴の中の汚れを押し出す美肌ローラに関する発明である(本件明細書の【0001】)。従来の美肌ローラでは,毛穴を開くだけ又は毛穴を閉じるだけのいずれかの作用しかせず,効率よく毛穴の汚れを取り除けないという課題があった(同【0004】)。そこで,Ⅰ 一 対のローラを角度をつけて柄の一端や把持部に設けるという構成を取ることにより,- 16 -美肌ローラを肌に押し付けると,肌が両脇に引っ張られて毛穴が開いてその奥の汚れが開口部に向けて移動し,逆に押し引くと,肌が一対のローラの間に挟み込まれて毛穴が収縮してその中の汚れが引き出され,この押し引きを繰り返すことによって毛穴の奥の汚れまで効率的に除去することが可能となるという効果を奏するようにする(同【0008】,【0015】ないし【0017】,【0021】,【0 027】ないし【0029】,【0033】)とともに,Ⅱ 太陽電池により生成した電流をローラに通電することにより,ローラが帯電して毛穴の汚れを引き出すという効果を奏するようにした(同【0018】,【0030】)。 2 乙24発明について乙24公報には,別紙「乙24公報の記載」のとおりの記載があり,その要旨は, 次のとおりであると認められる。 乙24公報が目的とする発明は,皮膚の活性化を図るマッサージ器に関する発明である(乙24公報の【0001】)。従来のマッサージ器では,単に皮膚にゲルマニウムを浸透させることによって皮膚の血行を良くするだけであって,皮膚にある油分等の老廃物を取り除くことができないという課題があった(同【000 4】)。そこで,ⅰ 外周面に金薄膜が,さらにその上にゲルマニウム薄膜がそれぞれ被着された略円柱状の永久磁石であるローラと,先端部にローラが回転自在に ができないという課題があった(同【000 4】)。そこで,ⅰ 外周面に金薄膜が,さらにその上にゲルマニウム薄膜がそれぞれ被着された略円柱状の永久磁石であるローラと,先端部にローラが回転自在に取り付けられるとともに当該ローラと電気的に接続された導電性を有するローラ支持部と,このローラ支持部の基端部を保持する一方,当該ローラ支持部と電気的に絶縁された把持部と,この把持部の内部に収納される直流電源である乾電池とを具 備しており,前記把持部は少なくとも外周面が導電性を有した素材で構成されており,前記直流電源の一方の端子又は他方の端子が把持部の外周面に,他方の端子又は一方の端子が前記ローラ支持部を介してローラにそれぞれ電気的に接続可能になっているという構成を取る(同【0007】,【0008】,【0013】)ことにより,直流電源の一方の端子(陽極)をローラに接続し,直流電源の他方の端子 (陰極)を把持部の外周面である肌に接続すると,直流電源から数μA程度の微弱- 17 -な電流をローラに流すことによって,ローラが帯電して皮膚に含まれている油分等の老廃物が皮膚から浮き上がるという効果を奏するようにする(同【0014】,【0032】,【0033】)とともに,ⅱ 二股になったローラ支持部に2つのローラが離れて回転自在に取り付けるという構成を取る(同【0008】,【0013】)ことにより,皮膚に与える機械的な刺激が大きくなるという効果を奏する ようにした(同【0015】)。 以上からすると,乙24公報には,次の発明(乙24発明)が記載されていると認められる。 a 把持部と,b 把持部の一端に導体によって形成された一対のローラと, c 生成された電力がローラに通電される乾電池と,を備え,d ローラの回転軸である横 れていると認められる。 a 把持部と,b 把持部の一端に導体によって形成された一対のローラと, c 生成された電力がローラに通電される乾電池と,を備え,d ローラの回転軸である横軸部が,把持部の中心線とそれぞれ直角に設けられ,e 一対のローラの回転軸である横軸部のなす角が180度である,f マッサージ器。 3 本件発明1について (1) 本件発明1と乙24発明の対比ア以上によれば,乙24発明の「把持部」は本件発明1の「柄」に相当し,乙24の「ローラ」は本件発明1の「ローラ」に相当すると認められるから,本件発明1と乙24発明との一致点及び相違点は,次のとおりであると認められる。 イ一致点 柄(把持部)と,前記柄(把持部)の一端に導体によって形成された一対のローラ(ローラ)と,生成された電力が前記ローラ(ローラ)に通電される点。 ウ相違点(ア) 相違点1(争いがない)本件発明1は,ローラに通電される電力を太陽電池によって生成させる。これに 対し,乙24発明は,ローラに通電される電力を乾電池によって生成させる。 - 18 -(イ) 相違点2(争いがない)本件発明1は,ローラの回転軸が柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ,一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられている。これに対し,乙24発明は,ローラの回転軸である横軸部が把持部の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラの回転軸に相当する横軸部のなす角が180度に設けられている。 (ウ) 相違点3本件発明1は,美肌ローラに関する発明である。これに対し,乙24発明は,マッサージ器に関する発明である。 (2) 相違点に係る容易想到性ア相違点1 相違点3本件発明1は,美肌ローラに関する発明である。これに対し,乙24発明は,マッサージ器に関する発明である。 (2) 相違点に係る容易想到性ア相違点1 (ア) 乙25公報,乙26公報及び乙27公報には,別紙「乙25公報の記載」,別紙「乙26公報の記載」,別紙「乙27公報の記載」のとおりの記載があると認められる。 その記載のとおり,①生体に外部から電気エネルギーを印加する健康器具に関する発明の公報である乙25公報に,皮膚などの生体に印加する電圧の直流電源に一 次電池,二次電池,太陽電池を使用することができる旨が記載されていること,②歯牙に外部から電気エネルギーを印加するエレキ歯ブラシに関する発明の公報である乙26公報には,生体の一部である歯牙に印加する電圧の電源に太陽電池を使用することができる旨が記載されていること,③歯牙等に外部から電気エネルギーを印加する電気歯刷子に関する発明(当該発明の発明者は,乙26公報に記載されて いる発明の発明者と異なる。)の公報である乙27公報にも,生体の一部である歯牙等に印加する電圧の電源に太陽電池を使用する旨が記載されていることからすると,生体に印加する電圧の直流電源に太陽電池を用いることは,本件特許の出願前の周知技術であったと認められる。そして,生体に印加する電圧の直流電源としては,乙25公報(【0030】)及び乙26公報において,太陽電池がボタン型電 池や乾電池と選択可能なものとして掲げられていることが認められ,太陽電池を用- 19 -いる場合,乾電池を用いるのと比べて,電池を交換する手間が省けることは周知の利点である。 そうすると,乙24発明における乾電池も,その直流電流を皮膚に印加することを目的とするものであるから,上記の周知技 合,乾電池を用いるのと比べて,電池を交換する手間が省けることは周知の利点である。 そうすると,乙24発明における乾電池も,その直流電流を皮膚に印加することを目的とするものであるから,上記の周知技術である太陽電池を乙24発明に適用して,ローラに通電される電力を太陽電池によって生成されるものとすることには 動機があり,当業者が容易に想到することができたと認めるのが相当である。 (イ) この点について,原告は,①乙24発明と乙25発明ないし乙27発明は,技術分野,課題及び効果が異なり,電流を印加する部位も異なること,②乙24公報には,電力を生成するために太陽電池を用いることを示唆する記載はなく,乙25公報ないし乙27公報には,太陽電池を用いて生成した電流を老廃物を 浮き上がらせるために用いることを示唆する記載はないことから,乙24発明における乾電池を太陽電池に置き換える動機付けがないと主張する。 しかし,乙24発明において,乾電池は,「直流電源400からの数μA程度の微弱な電流」(乙24公報の【0033】)を得るための直流電源として使用されているにとどまり,それ以上に,乾電池であることによって皮膚から老廃物を浮き 上がらせるための特有の作用効果が得られる旨の記載は乙24公報にはなく,そのような技術常識を認めるに足りる証拠もない。そして,乙24発明において乾電池を用いることの技術的意義がこのようなものであることに加え,前記のとおり,生体に印加する電圧の直流電源に太陽電池を用いることが周知技術であり,その場合に太陽電池がボタン型電池や乾電池と選択可能なものとして認識され,太陽電池を 用いる場合に電池を交換する手間が省けることは周知の利点であることからすると,原告の上記主張を前提としても,上記の周知技術である太陽電池を乙2 乾電池と選択可能なものとして認識され,太陽電池を 用いる場合に電池を交換する手間が省けることは周知の利点であることからすると,原告の上記主張を前提としても,上記の周知技術である太陽電池を乙24発明に適用して,ローラに通電される電力を太陽電池によって生成されるものとすることは,当業者が容易に想到することができたと認めるのが相当であり,原告の主張は採用できない。 イ相違点2- 20 -(ア) 乙29公報には,別紙「乙29公報の記載」のとおりの記載があると認められる。 それによれば,乙29公報では,皮膚をマッサージするための装置を備えた,製品のパッケージ及びアプリケータユニットに関する発明に関して(乙29公報の【0001】),マッサージ装置について,ローラの回転軸をボトルの長手方向の 中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角(α)を鈍角(90°<α≦140°)に設けるという構成(同【0006】,【0018】,【0019】)が記載されていると認められる(乙29発明)。そして,乙29発明では,ローラを皮膚にあてがって動かすと,ローラが皮膚上を転がり摩擦しながら摺動することにより,皮膚が最初はローラ間の大きい開きによって画定される領域に曝さ れ,次いでローラ間の小さい開きによって画定される領域に曝されることから押し曲げられることによって,マッサージ動作により皮膚の張りが向上し,皮膚表面の水分と皮脂が大幅に減少するという効果を奏する旨が記載されている(同【0020】)。 (イ) このように,乙29公報においては,ローラの回転軸を柄の長軸方向 の中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角を鈍角に設けることにより,マッサージ動作によって皮膚の張りが向上し,皮膚表 うに,乙29公報においては,ローラの回転軸を柄の長軸方向 の中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角を鈍角に設けることにより,マッサージ動作によって皮膚の張りが向上し,皮膚表面の水分と皮脂が大幅に減少するとの技術的意義が開示されている。 これに対し,乙24発明も,皮膚の活性化を図るマッサージ器に関するもので,皮膚にある油分等の老廃物を取り除くという課題を有しており,相違点2に係る 「ローラの回転軸である横軸部が把持部の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラの回転軸に相当する横軸部のなす角が180度に設けられている」との構成は,「2つのローラが離れて支持されていると,皮膚に与える機械的な刺激が大きくなるというメリットがある。」(乙24公報の【0015】),「ローラ100は2つあるので,ローラが1つのタイプのものより皮膚に与える機械的刺激が多 くなるというメリットがある。」(同【0036】)として,ローラが二つあるこ- 21 -との機械的刺激により皮膚の活性化に寄与する技術的意義を有するものとされていると認められる。 このような一対のローラの技術的意義の共通性に照らすと,乙29公報に接した当業者が,皮膚へのマッサージ効果を向上させ,皮膚の油脂を取り除く観点から,乙24発明における「ローラの回転軸である横軸部が把持部の中心線とそれぞれ直 角に設けられ,一対のローラの回転軸に相当する横軸部のなす角が180度に設けられている」という構成に代えて,乙29発明の構成を適用して,ローラの回転軸を柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角を鈍角に設ける構成を採用する動機があったというべきであり,容易に想到することができたと認めるのが相当である。 (ウ) これに対 中心線とそれぞれ鋭角に設け,一対のローラの回転軸のなす角を鈍角に設ける構成を採用する動機があったというべきであり,容易に想到することができたと認めるのが相当である。 (ウ) これに対し,原告は,①本件各発明は,ローラによる毛穴への作用と通電による毛穴の汚れを引き出す作用の相乗効果に着目したものであるのに対し,乙24発明は通電による毛穴の汚れを引き出すという課題のみを有し,乙29発明はローラによるマッサージ作用にのみ着目したものであり,乙24発明と乙29発明は異なる課題に着目したものであるから,乙24発明に乙29発明の構成を適用 する動機付けはない,②乙24発明が,老廃物を効率良く浮き上がらせるべく,ローラ支持部の形状を略T字状にし,一対のローラの位置関係を180度離す構成を取って,ローラと肌面との接触面積をできる限り大きくし,通電させる際に肌になるべく負荷を与えない状態にしようとしていることに照らせば,老廃物を効率良く浮き上がらせにくくなる可能性のある構成,すなわちローラにより肌をねじ曲げら れる構成となっている乙29発明の構成を当業者が採用するとは考え難いと主張する。 しかし,①について見ると,前記のとおり,乙24公報には,「本発明は,皮膚の活性化を図るマッサージ器に関する。」(乙24公報の【0001】),「2つのローラが離れて支持されていると,皮膚に与える機械的な刺激が大きくなるとい うメリットがある。」(同【0015】)との記載があり,請求項2として「ロー- 22 -ラ支持部は二股になっており,2つのローラが離れて支持されていることを特徴とする」発明も定立しているから,乙24発明は,通電による毛穴の汚れを引き出すという課題と並び,ローラの機械的刺激,すなわちマッサージ作用による皮膚の活性化の ローラが離れて支持されていることを特徴とする」発明も定立しているから,乙24発明は,通電による毛穴の汚れを引き出すという課題と並び,ローラの機械的刺激,すなわちマッサージ作用による皮膚の活性化の向上も課題としていると認められる。したがって,乙24発明と乙29発明には課題の共通性があるから,原告の主張はその前提において採用できない。また, 原告が主張する本件発明1の効果についても,確かに,本件発明1では,ローラによる毛穴への作用と通電による毛穴の汚れを引き出す作用の二つの作用が存するが,その作用機序はそれぞれ独立しており,本件発明1はそれらの独立した作用が並存するものにすぎないから,二つの作用を組み合わせたこと自体をもって想到容易でないことの根拠とすることはできない。 次に,②について見ると,この主張は,乙29発明の構成を乙24発明に適用することの阻害事由を主張するものと解されるが,まず,乙24公報には,ローラ支持部の形状を略T字状にし,一対のローラの位置関係を180度離す構成について,原告が主張するような,ローラと肌面との接触面積をできる限り大きくし,通電させる際に肌になるべく負荷を与えない状態にして,老廃物を効率良く浮き上がらせ るとの技術的意義を有する旨の記載はなく,他にも,一対のローラの回転軸のなす角度を180度とすることに特段限定する記載は見られない。そして,乙24発明においても,通電による毛穴の汚れを引き出す作用とローラの機械的刺激による皮膚の活性化の作用とは,独立の作用機序を有する独立の作用として並存しており,ローラが皮膚に接している限り,通電による毛穴の汚れを引き出すという作用は奏 するから,乙29発明の構成を乙24発明に適用することに阻害事由があるとはいえない。 ウ相違点3本件発明1に ローラが皮膚に接している限り,通電による毛穴の汚れを引き出すという作用は奏 するから,乙29発明の構成を乙24発明に適用することに阻害事由があるとはいえない。 ウ相違点3本件発明1における「美肌ローラ」の意義については,特許請求の範囲の請求項1の記載は,「美肌ローラ」のうちで構成要件AからEまでの構成を備えるものと いう趣旨に理解することができること,本件明細書において,従来技術としても,- 23 -「特許文献1には,複数の円盤を,角度をつけてローラに取り付けた美肌ローラが提案されている。」(本件明細書の【0002】)との記載があることからすると,原告が主張するような,毛穴の汚れをローラにより毛穴を開かせることによりその開口部に移動させ,続いてローラにより毛穴を収縮させることによりその汚れを押し出させるという一連の機能を有するものに限定されるものではなく,単に肌を美 しくする用途ないし作用を有するローラ器具を意味すると解するのが相当である。 他方,乙24発明の「マッサージ器」も,前記のとおり一対のローラを有しており,「本発明は,皮膚の活性化を図るマッサージ器に関する。」とあることから,肌を美しくする用途ないし作用を有するものである。 したがって,相違点3は実質的な相違点とはいえない。 (3) 小括以上のとおり,本件発明1は,乙24発明に,乙25公報ないし乙27公報に記載された周知技術,乙29発明の構成を適用することによって容易に発明をすることができたから,進歩性を欠く無効理由を有する。 4 本件発明2について (1) 乙24発明との相違点本件発明2は,把持部を採用している点を除けば,柄を採用している本件発明1と同じ構成である。ところで,本件発明2の「把持部」とは,本件明細書【 2について (1) 乙24発明との相違点本件発明2は,把持部を採用している点を除けば,柄を採用している本件発明1と同じ構成である。ところで,本件発明2の「把持部」とは,本件明細書【0033】の「本実施形態の美肌ローラは一対のローラ40を角度をつけて把持部42に設けた。このため,美肌ローラを大きく構成することが可能となり,この場合ボデ ィーの毛穴の汚れを効率的に除去することが可能となるという効果がある。」との記載並びに図4及び図5からすると,一対のローラを両側から支持する平面状の把持部材を意味するものと解されるのに対し,乙24発明の「把持部」は,本件発明1の「柄」と同様に,一端に一対のローラを形成した棒状の把持部材である点で相違する。したがって,本件発明2と乙24発明との相違点は,前記相違点1ないし 3に加え,次の点となる。 - 24 -相違点4:本件発明2は,一対のローラが平面状の把持部材(把持部)によって両側から支持されているのに対し,乙24発明では,一対のローラが棒状の把持部材(把持部)の一端に形成されている点(2) 相違点の容易想到性ア相違点1及び2については,本件発明2も,本件発明1と同様,乙24 発明に,乙25公報ないし乙27公報に記載された周知技術,乙29発明の構成を適用することによって容易に想到することができたと認められ,相違点3については実質的な相違点とは認められない。 イ相違点4について相違点4は,把持部材の形状とローラを支持する構造に関する相違点であるとこ ろ,手で握って用いる器具の把持部を棒状に形成するか平面状に形成するかは,持ちやすさ等を勘案して適宜選択し得る設計的事項であると解され,また,回転可能なローラを片側から支持するか両側から支持するかに ろ,手で握って用いる器具の把持部を棒状に形成するか平面状に形成するかは,持ちやすさ等を勘案して適宜選択し得る設計的事項であると解され,また,回転可能なローラを片側から支持するか両側から支持するかについても,部材の強度等を勘案して適宜選択し得る設計的事項であると解される。そして,実際にも,乙29公報には,乙29発明に係る「皮膚をマッサージするための装置を備えた,製品のパ ッケージアプリケーションユニット」において,一対のローラが平面状の把持部材(支持体60及びボトル10)によって両側から支持される構成が記載されていると認められ(乙29公報の【0001】,【0012】,【0016】,【0020】,図1,図2),同一の出願人に係る乙28公報には,別紙「乙28公報の記載」のとおり,「皮膚に当てるに適するマッサージ装置」において,棒状の把持部 材(取手320)の一端に,一対のローラ(302,303)を両側から支持する構成が記載されていると認められる(乙28公報の【0001】,【0048】,図6)。そうすると,乙24発明における一対のローラが棒状の把持部材(把持部)の一端に形成される構成を,持ちやすさや強度等の観点から,一対のローラが平面状の把持部材(把持部)によって両側から支持される構成に置換することは,当業 者が容易に想到することができたと認めるのが相当である。 - 25 -(3) 以上によれば,本件発明2は,進歩性を欠く無効理由を有する。 5 本件発明3について本件発明3は,本件発明1及び2の従属請求項であり,本件発明1又は2の構成に「ローラが金属によって形成されている」という構成を追加したものである。そして,本件明細書において,「ローラ20は導体によって形成されることができる。 ローラ20は金属又は金属の 又は2の構成に「ローラが金属によって形成されている」という構成を追加したものである。そして,本件明細書において,「ローラ20は導体によって形成されることができる。 ローラ20は金属又は金属の酸化物によって形成されていてもよい。」(本件明細書の【0013】),「太陽電池30により生成した電流をローラ20に通電することにより,ローラ20が帯電し,毛穴の汚れを引き出し,さらに美肌効果をもたらす。」(同【0018】)と記載されていることからすると,本件発明3の「ローラが金属によって形成されている」とは,ローラの皮膚に接する表面部分を含む 部分が金属から成り,実質的に導体として機能すれば足りると解するのが相当である。 他方,乙24発明のマッサージ器も,「外周面に金薄膜が,さらにその上にゲルマニウム薄膜がそれぞれ被着された略円柱状の永久磁石であるローラと…当該ローラと電気的に接続された導電性を有するローラ支持部…を具備して」いること(乙 24公報の【0007】)に照らせば,皮膚に接する部分を含む部分が,電気を通す金薄膜やゲルマニウム薄膜から成っていると認められるから,そのローラは金属によって形成されているといえる。 したがって,ローラが金属によって形成されている点は,本件発明3と乙24発明で一致するから,本件発明3と乙24発明の相違点は,本件発明1及び2と乙2 4発明の相違点1ないし4と同じであり,本件発明3も,乙24発明に,乙25公報ないし乙27公報に記載された周知技術,乙29発明の構成を適用することによって容易に発明をすることができたから,進歩性を欠く無効理由がある。 6 結論以上の次第で,本件各発明はいずれも進歩性を欠く無効理由があり,本件特許は 特許無効審判により無効にされるべきものである。よって,その とができたから,進歩性を欠く無効理由がある。 6 結論以上の次第で,本件各発明はいずれも進歩性を欠く無効理由があり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 大門宏一郎 (別紙)被告製品目録 1 製品名ベノアプレミアム電子ローラー品番BS-700のうち設計変更前のマイクロカレント通電型のもの 2 製品名ベノアプレミアムジュエルローラー品番BS-710のうち設計変更前のマイクロカレント通電型のもの以上 (別紙)被告製品 1 説明書 1a ユーザが手で把持するハンドルを有している 1b 前記ハンドルは先端が二股に分かれており,当該二股に分かれた部分それぞれに,周面に凹凸が形成された略円筒型の樹脂製部材の表面に金属メッキが施された一対のローラが,長軸方向を回転軸として回転可能に設けられている 1c 分かれており,当該二股に分かれた部分それ ぞれに,周面に凹凸が形成された略円筒型の樹脂製部材の表面に金属メッキが施された一対のローラが,長軸方向を回転軸として回転可能に設けられている1c 太陽電池を有しており,太陽電池によって生成された電力は,各ローラの各支持軸を介して各ローラに通電されるとともに,ハンドルに通電される1d 前記ローラの回転軸は,平面視において,ハンドルの長軸の中心線に対し 鋭角に配置されている1e 前記一対のローラの回転軸の為す角は鈍角である1f 美容ローラ以上 - 29 -(別紙)被告製品 2 説明書 2a ユーザが手で把持するハンドルを有している2b 前記ハンドルは先端が二股に分かれており,当該二股に分かれた部分それ ぞれに,蓋付き略円筒型の樹脂製部材の表面に金属メッキが施された一対のローラが,長軸方向を回転軸として回転可能に設けられている2c 太陽電池を有しており,太陽電池によって生成された電力は,各ローラの各支持軸を介して各ローラに通電されるとともに,ハンドルに通電される2d 前記ローラの回転軸は,平面視において,ハンドルの長軸の中心線に対し 鋭角に配置されている2e 前記一対のローラの回転軸の為す角は鈍角である2f 美容ローラ以上

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