平成27(行ウ)311 一時金申請却下処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年9月27日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文15,957 文字)

平成29年9月27日判決言渡平成27年(行ウ)第311号一時金申請却下処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求厚生労働大臣が平成27年3月24日付けで原告に対してした中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律13条3項に基づく一時金の支給申請却下処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,厚生労働大臣に対して,中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(以下「法」という。)13条3項に規定する一時金(以下「一時金」という。)の支給を申請したところ,厚生労働大臣から,原告は法2条の「中国残留邦人等」に該当するとは認められないとして,平成27年3月24日付けで同申請を却下する処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,原告は法2条の「中国残留邦人等」に該当すると主張して,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め⑴ 法の定めア法1条は,法は,今次の大戦に起因して生じた混乱等により,本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた中国残留邦人等の置かれている事情に鑑み,これらの者の円滑な帰国を促進するとともに,永住帰国した者の自立の支援を行うことを目的と する旨規定する。 イ法2条1項1号は,①中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦 2条1項1号は,①中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの(以下「類型A」という。)及び②これらの者(類型Aに該当する者)を両親として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(以下「類型B」という。)並びに③これらの者(類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者)に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者(以下「類型C」という。)が「中国残留邦人等」に該当する旨規定する。 ウ法13条は,一時金支給制度につき,概要,次のとおり規定する。 (ア) 1項は,一定の要件を満たす永住帰国した中国残留邦人等については,昭和36年4月1日から初めて永住帰国した日の前日までの期間であって政令で定めるものを旧被保険者期間(昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法による被保険者期間をいう。以下同じ。)又は新被保険者期間(国民年金法7条1項1号に規定する第1号被保険者としての国民年金の被保険者期間をいう。以下同じ。)とみなす旨規定する。 (イ) 2項は,上記(ア)に規定する永住帰国した中国残留邦人等(60歳以上の者に限る。)であって昭和36年4月1日以後に初めて永住帰国したもの(以下「特定中国残留邦人等」という。)は,旧被保険者期間又は新被保険者期間に係る保険料を納付することができる旨規定する。 (ウ) 3項は,国は,特定中国残留邦人等に対し,当該特定中国残留邦人等の旧被保険者期間及び昭和60年法律第34号附則8条2項に掲げる期間並びに国民年金法による被保険者期間に応じ,政令で定める額の一時金を支給する旨規定する。 (エ) 4項は,国は,上 等の旧被保険者期間及び昭和60年法律第34号附則8条2項に掲げる期間並びに国民年金法による被保険者期間に応じ,政令で定める額の一時金を支給する旨規定する。 (エ) 4項は,国は,上記(ウ)の一時金の支給に当たっては,特定中国残留邦人等が満額の老齢基礎年金等の支給を受けるために納付する旧被保険者期間又は新被保険者期間に係る保険料に相当する額として政令で定める額を当該一時金から控除し,当該特定中国残留邦人等に代わって当該保険料を納付するものとする旨規定する。 ⑵ 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律施行規則(以下「規則」という。)1条の定め法2条1項1号の委任を受けた規則1条は,前記⑴イ(法2条1項1号)の「厚生労働省令で定める者」(類型C)について,次のとおり規定する。 ア中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって出生の届出をすることができなかったために同日において日本国民として本邦に本籍を有していなかったもの(その出生の日において日本国民として本邦に本籍を有していた者を両親とするものに限る。)(1号。以下「類型a」という。)イ中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたものを母親とし,かつ,同日において日本国民として本邦に本籍を有していた者(同日以前から引き続き中国の地域に居住しているものを除く。)を父親として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(2号。以 において日本国民として本邦に本籍を有していた者(同日以前から引き続き中国の地域に居住しているものを除く。)を父親として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(2号。以下「類型b」という。)ウ中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたも の(類型Aに該当する者)及びこれらの者を両親として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(類型Bに該当する者)に準ずる事情にあるもの(以下「類型c」という。)として厚生労働大臣が認める者(3号)⑶ 「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律施行事務の取扱いについて」(平成6年9月30日社援発第665号厚生省社会援護局長通知。以下「本件通知」という。)第2の1は,前記⑵ウの類型cに該当する者として厚生労働大臣が認める者としては,次に掲げる者等が考えられるとしている。 ア中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたものを父親とし,かつ,同日以前から中国の地域に居住していた者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたものを母親として,同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(その出生の日以後引き続き中国の地域に居住している者を母親とするものを除く。)(第2の1⑴。以下「類型ⅰ」という。)イ中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の している者(その出生の日以後引き続き中国の地域に居住している者を母親とするものを除く。)(第2の1⑴。以下「類型ⅰ」という。)イ中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたものを母親とし,かつ,同日において日本国民として本邦に本籍を有していたものを父親(同日以前から引き続き中国の地域に居住しているものを除く。)として,同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(その出生の日以後引き続き中国の地域に居住している者を母親とするものを除く。)(第2の1⑵。以下「類型ⅱ」という。)ウ規則1条1号に規定する者を両親として,昭和20年9月3日以後中国 の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(第2の1⑶。以下「類型ⅲ」という。) 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 原告は,昭和22年▲月▲日,現在の中華人民共和国(以下,昭和24年10月1日の同国の成立の前後を通じて「中国」という。)吉林省図們市において,P1を母として出生した男性である。 ⑵ P1は,大正13年▲月▲日生まれの日本国民として本邦に本籍を有している女性である。P1は,昭和20年4月,満州(中国東北部)に渡り,朝鮮人男性との間に原告をもうけた。(甲10)⑶ P1は,原告を中国人のP2及びP3に託し,昭和28年5月8日,中国で結婚した日本人男性と共に日本に帰国した。(甲10,乙2)⑷ 原告は,平成25年1月22日,〇家庭裁判所に対し,就籍許可審判の申立てをした。(乙6)⑸ 〇家庭裁判所は, 28年5月8日,中国で結婚した日本人男性と共に日本に帰国した。(甲10,乙2)⑷ 原告は,平成25年1月22日,〇家庭裁判所に対し,就籍許可審判の申立てをした。(乙6)⑸ 〇家庭裁判所は,平成26年3月31日,原告の母は日本人であるP1であると認められ父は不明であるから,旧国籍法(昭和25年法律第147号による廃止前のもの)3条の規定(「父カ知レサル場合又ハ国籍ヲ有セサル場合ニ於テ母カ日本人ナルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス」)により原告は日本国籍を取得したものというべきであるとし,「本籍大阪府大阪市〇区α×番」,「氏名 P4」,「生年月日昭和22年▲月▲日」,「父の氏名不詳」,「母の氏名 P1」,「父母との続柄長男」として就籍することを許可する旨の審判をした。(甲1)⑹ 原告は,平成27年2月25日,厚生労働大臣に対し,法13条3項に基づく一時金の支給を申請した。(乙11)⑺ 厚生労働大臣は,上記⑹の申請に対し,平成27年3月24日付けで,原告が法2条に定める「中国残留邦人等」とは認められないとして,同申請を 却下する旨の処分(本件処分)をした。 ⑻ 原告は,平成27年5月25日,本件処分を不服として,厚生労働大臣に対し,異議申立てを行った。(乙12)⑼ 厚生労働大臣は,平成27年7月8日,上記⑻の異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲3)⑽ 原告は,平成27年9月18日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 3 争点⑴ 原告が法2条の「中国残留邦人等」に該当するか。(争点1)⑵ 法2条が憲法14条に反するか。(争点2) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(原告が法2条の「中国残留邦人等」に該当するか。)(原告の主張)ア我が国の法体系上,親とは法律上 ⑵ 法2条が憲法14条に反するか。(争点2) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(原告が法2条の「中国残留邦人等」に該当するか。)(原告の主張)ア我が国の法体系上,親とは法律上の親をいうのであるから,法的安定性の観点からして,法2条の「両親」は,法律上の両親をいうと解すべきである。 イ原告は,昭和22年▲月▲日に生まれた者であり,法律上の父は不明であるから,類型A及び類型B並びに類型Cを具体化した類型a及び類型bには該当しない。しかしながら,法は,第2次世界大戦終盤に当時のソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「ソ連」という。)が対日参戦したことにより,多くの邦人が中国に残留することを余儀なくされ,これらの邦人は,長期間にわたって日本に帰国することができず,日本に帰国した後も言語や生活習慣の違いから日常生活に多くの支障が生ずるとともに老後の生活の安定を得ることができない状況にあることなどから,これらの邦人を支援しようとするものである。そうであるところ,前記のような中国に残留することを余儀なくされた邦人に対する支援の必要性は,類型Aに該当する者を両親とする類型Bに該当する者と父が不明であり類型Aに該当 する者を母とする者とで異なるものではない。また,規則1条3号も類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に「準ずる事情にあるもの」と規定しているにすぎず,父が不明であり類型Aに該当する者を母とする場合を排除していない。さらに,両親が不明である中国残留日本人孤児(以下「孤児」ということがある。)も「中国残留邦人等」と認められており,これとの均衡上も,父が不明であり類型Aに該当する者を母とする者を法による支援の対象とするのが相当である。 ウ以上によれば,父が不明であり類型Aに該当する者を母として同 」と認められており,これとの均衡上も,父が不明であり類型Aに該当する者を母とする者を法による支援の対象とするのが相当である。 ウ以上によれば,父が不明であり類型Aに該当する者を母として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者も,類型cに該当し,規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当するというべきである。そして,原告は,法律上の父は不明であるが類型Aに該当するP1を母として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者であるから,類型cに該当し,「中国残留邦人等」に該当するというべきである。 (被告の主張)ア法2条1項1号は「両親として…出生した」としており,「出生」とは胎児が生まれ出ることを意味するから,同号の「両親」は法律上の両親ではなく,生物学上の両親をいうものと解される。また,同号は,類型Bに該当する者の要件として,両親が,単に日本国籍を有するのみならず,戸籍法に基づき本邦に本籍を有していたことをも求めていることからすると,同号の「両親」は法律上の両親ではなく,生物学上の両親をいうものと解するのが自然である。さらに,同号が,類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者を「中国残留邦人等」としたのは,日本が降伏文書への調印をした昭和20年9月2日において日本国民として本邦に本籍を有していた者又はこれらの者を両親として出生した者は,ソ連軍が満州への侵攻を開始した同年8月9日以後の混乱等がなければ,自ら若しくは両親の引 揚げに伴って本邦に引き揚げ,又は両親が引き揚げた後に本邦で出生した可能性が高かったことから,これらの者を法による支援の対象とする点にあると解される。このような同号の趣旨に照らせば,同号の「両親」とは,生物学上の親子関係にある父母をいうものと た後に本邦で出生した可能性が高かったことから,これらの者を法による支援の対象とする点にあると解される。このような同号の趣旨に照らせば,同号の「両親」とは,生物学上の親子関係にある父母をいうものと解すべきである。 イまた,前記アのような同号の趣旨に照らせば,両親の一方のみが類型Aに該当するにすぎない場合には,当該両親から出生した者が自ら若しくは両親の引揚げに伴い本邦に引き揚げ,又は両親が引き揚げた後に本邦で出生した可能性が高かったということができないから,類型cには該当せず,規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当するということはできないというべきである。 ウ中国残留日本人孤児については,①戸籍の有無にかかわらず日本人(本邦に本籍を有する日本人)を両親として出生した者であること,②満州などにおいて,昭和20年8月9日(ソ連参戦の日)以降の混乱により,保護者と生別又は死別した者であること,③同日以降の混乱により保護者と生別又は死別した当時の年齢がおおむね13歳未満の者であること,④本人が自己の身元を知らない者であること,⑤同日以降の混乱により保護者と生別又は死別した当時から引き続き中国に残留し,成長した者であることという5つの要件を全て備えた者を中国残留日本人孤児として肉親捜しの対象とし,日本と中国政府の共同調査を行った結果,(a)孤児である確証が得られた者,(b)孤児であるか否かの確証が得られない者,(c)孤児でない確証が得られた者に分類し,日本政府と中国政府とも(a)に該当すると判断した場合のみその者を孤児として認めている。そうすると,(a)に該当すると認められた者は,①及び②の要件を満たすことが確認されていることになり,類型A若しくは類型B,類型Cを具体化した類型a若しくは類型b又は類型cを具体化した類型ⅰ若しくは うすると,(a)に該当すると認められた者は,①及び②の要件を満たすことが確認されていることになり,類型A若しくは類型B,類型Cを具体化した類型a若しくは類型b又は類型cを具体化した類型ⅰ若しくは類型ⅱに該当することになるから,法2条の「中国残留邦人等」に該当することになる。これに対 して,父が不明であり類型Aに該当する者を母として出生した者は前記の各類型のいずれにも該当しないのであるから,その者を中国残留日本人孤児と同様に取り扱わなければならない理由はないというべきである。 エ以上のとおり,法2条の「両親」は生物学上の両親をいうのであり,生物学上の両親の一方のみが類型Aに該当するにすぎない者は「中国残留邦人等」に該当しないというべきである。したがって,父親が朝鮮人の男性である原告は,「中国残留邦人等」に該当するということはできない。 ⑵ 法2条が憲法14条に反するか。(争点2)(原告の主張)原告のような非嫡出子が「中国残留邦人等」に該当しないとする法2条の規定は,非嫡出子と嫡出子を合理的理由なく差別するものであり,憲法14条に反する。 (被告の主張)法2条は,嫡出子か非嫡出子かという観点から「中国残留邦人等」に該当するか否かを区別するものではないから,原告の主張は前提を欠くものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告が法2条の「中国残留邦人等」に該当するか。)について⑴ 法13条は,法2条の「中国残留邦人等」のうち一定の要件を満たす者を「特定中国残留邦人等」として同条3項の一時金の支給の対象としているから,原告が同項の一時金の支給を受けるためには,原告が「中国残留邦人等」に該当することを要するところ,原告は,法律上の父が不明であり類型Aに該当する母から昭和20年9月3日以後中国の 象としているから,原告が同項の一時金の支給を受けるためには,原告が「中国残留邦人等」に該当することを要するところ,原告は,法律上の父が不明であり類型Aに該当する母から昭和20年9月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域で居住している者は,規則1条3号の類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,類型cに該当し,「中国残留邦人等」に該当する旨主張する(原告が類型a及びbに該当しないこと は,当事者間に争いがない。)。そこで,規則1条の授権法である法の趣旨等をみた上で,規則1条3号の類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるもの(類型c)の意義について検討する。 ⑵ 弁論の全趣旨によれば,法の制定経緯,趣旨等として次の事実が認められる。 ア第2次世界大戦前から満州には多くの邦人(日本国民として本邦に本籍を有していた者をいう。以下同じ。)が在住していたが,同大戦の終盤にソ連が対日参戦し,ソ連軍は,昭和20年8月9日,満州への侵攻を開始した。その結果,満州に在住していた多くの邦人が,両親や兄弟姉妹と死別又は生別し,中国人に引き取られたり,生活の手段を得るために中国人の妻になったりするなどして,中国の地域に残留することを余儀なくされた。同大戦の終結に伴い,海外にあった邦人を対象に引揚援護が実施されたが,中国の地域では,我が国との人的交流や文通等が制限されていたため,日本が降伏文書への調印(いわゆるポツダム宣言の受諾)を行った同年9月2日以降においても,引き続き多くの邦人が中国の地域に残されていた。その後,昭和47年9月29日の日中共同声明により日本と中国との国交が正常化し,これを契機として,残留孤児からの身元調査依頼や帰国の希望が寄せられるようになり,残留孤児の肉親捜し 域に残されていた。その後,昭和47年9月29日の日中共同声明により日本と中国との国交が正常化し,これを契機として,残留孤児からの身元調査依頼や帰国の希望が寄せられるようになり,残留孤児の肉親捜し,残留邦人が永住帰国する際の帰国旅費の支給等の帰国援護施策,永住帰国後の生活や就労等の面での定着自立援護施策が予算措置により行われるようになった。このような状況の下,平成6年,関係各省及び地方自治体で講じられた諸施策を法律上明文化し,中国残留邦人等の帰国や自立の一層の推進を図るため,法が成立した。 イ法は,今次の大戦に起因して生じた混乱等により本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた中国残留邦人等の置かれている事情に鑑み,これらの者の円滑な帰国を促 進するとともに,永住帰国した者の自立の支援を行うことを目的とし(1条),国は,その責務として,本邦への帰国を希望する中国残留邦人等の円滑な帰国を促進するため,必要な施策を講ずるものとし(3条),国及び地方公共団体は,永住帰国した中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため,必要な施策を講ずるものとしている(4条)。そして,法は,中国残留邦人等に対する具体的な施策(以下「本件施策」という。)として,①国における,永住帰国する場合の旅費の支給(6条),永住帰国後の自立支援金の支給(7条)等のほか,特定中国残留邦人等への国民年金保険料の追納に必要な保険料に係る一時金の支給(13条。前記第2の1(1)ウ参照),②国及び地方公共団体における,永住帰国した者への生活相談及び日本語の習得援助(8条),公営住宅等の供給の促進(9条),職業訓練の実施及び就職のあっせん(10条)等を定めている。 ⑶ 前記⑵の法の制定経緯,趣旨等に 体における,永住帰国した者への生活相談及び日本語の習得援助(8条),公営住宅等の供給の促進(9条),職業訓練の実施及び就職のあっせん(10条)等を定めている。 ⑶ 前記⑵の法の制定経緯,趣旨等に鑑みると,法2条1項1号が,本件施策の対象となる「中国残留邦人等」として,中国の地域における昭和20年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの(類型A)を規定しているのは,邦人が本邦への引揚援護(前記(2)ア参照)の対象となっていたため,降伏文書への調印がされた同日において日本国民として本邦に本籍を有していた者は,仮にソ連軍が満州に侵攻を開始した同年8月9日以後の混乱等がなければ,本邦に引き揚げていた可能性が高かったといえることから,これらの者を本件施策の対象とする趣旨によるものと解される。また,前記⑵の法の制定経緯,趣旨等に鑑みると,同号が,本件施策の対象となる「中国残留邦人等」として,類型Aに該当する者を両親として同年9月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者(類型B)を規定しているのは, 類型Aに該当する者は,仮にソ連軍が満州に侵攻を開始した同年8月9日以後の混乱等がなければ,同年9月2日以後本邦に引き揚げていた可能性が高かったといえるため,類型Aに該当する者を両親として同月3日以後に中国の地域で出生した者も,仮にソ連軍が満州に侵攻を開始した同年8月9日以後の混乱等がなければ,両親と共に本邦に引き揚げていたか,又は両親の引揚げ後に本邦で出生していた可能性(以下「引揚げ等可能性」ともいう。)が高かったといえることから,これらの者を本件施策の対象とする趣旨によるものと解され 親と共に本邦に引き揚げていたか,又は両親の引揚げ後に本邦で出生していた可能性(以下「引揚げ等可能性」ともいう。)が高かったといえることから,これらの者を本件施策の対象とする趣旨によるものと解される。 他方,法2条1項1号は,昭和20年9月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者の中には,その両親の一方のみが類型Aに該当するものも想定されるにもかかわらず,①当該者のうち,類型Aに該当する者を「父又は母」とするものを「中国残留邦人等」とする旨を規定することはせず,類型Aに該当する者を「両親」としているもののみを類型Bとして明定するにとどめるとともに,②類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者についても,「中国残留邦人等」として規定する。このような同号の規定内容や,前記のとおりの法の制定経緯,趣旨等並びに類型A及び類型Bが設けられた趣旨等に加えて,その両親が,日本国民として本邦に本籍を有していなくても,当該両親につき,出生の届出をすることができなかったため当該本籍を有していないものの,仮に出生の届出をしていれば当該本籍を有していることとなっていた事情が存する場合には,当該両親が日本国民として本邦に本籍を有する場合との間で,引揚げ等可能性の程度に大きな相違はないと考えられることに鑑みると,同号の趣旨は,Ⓐその両親が日本国民として本邦に本籍を有している(出生の届出をすることができなかったため当該本籍を有していないものの,仮に出生の届出をしていれば当該本籍を有していることとなった場合を含む。以下,特段の記載のない限り同じ。)者については,類 型A又は類型Bに該当しない場合であっても,引揚げ等可能性が高かったと考えられることから,類型Aに該当する者及び類型Bに た場合を含む。以下,特段の記載のない限り同じ。)者については,類 型A又は類型Bに該当しない場合であっても,引揚げ等可能性が高かったと考えられることから,類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,「中国残留邦人等」に含むこととし,その具体的な範囲の指定を厚生労働省令に委任する一方,Ⓑその両親の一方のみが日本国民として本邦に本籍を有していた者に関しては,他方の親(日本国民として本邦に本籍を有していない者)は本邦に引き揚げない可能性が少なくないため,その親と共に子も本邦に引き揚げない可能性もまた少なくないことから,仮にソ連軍が満州に侵攻を開始した同年8月9日以後の混乱等がなければ,親と共に本邦に引き揚げていたか,又は親の引揚げ後に本邦で出生していた可能性が高かったとはいうことができないとして,本件施策の対象としないこととしたものであると解される。 ⑷ そして,規則1条は,前記のような法2条1項1号の委任の趣旨に基づき,類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,1号及び2号において,日本国民として本邦に本籍を有する(出生の届出をすることができなかったため当該本籍を有していないものの,仮に出生の届出をしていれば当該本籍を有していることとなった場合を含まない。)者を両親として出生したことにより,引揚げ等可能性が高かったといえる者につき,一定の類型(類型a及び類型b)を定めた上,1号及び2号に定められた類型以外にも,引揚げ等可能性が高かったといえる者が想定されることから,3号において,類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものを「中国残留邦人等」に含めた上,その範囲を厚生労働大臣に委任したものと解される。 このような規則1条3号の趣旨に加えて いて,類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものを「中国残留邦人等」に含めた上,その範囲を厚生労働大臣に委任したものと解される。 このような規則1条3号の趣旨に加えて,前記(3)のとおりの法2条1項1号の趣旨に鑑みれば,規則1条3号の類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,類型cに該当し,「中国残留邦人等」に該当するといえるためには,その両親の一方のみが日本国民として本 邦に本籍を有していた者であるだけでは足りず,その両親が日本国民として本邦に本籍を有していた者であることを要するというべきである(なお,本件通知第2の1は,規則1条3号に該当する者の類型を列挙しているところ,そこに列挙された類型は前記⑶の法2条1項1号の趣旨に合致するものであり,その類型に該当する者は規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当すると考えられるものの,本件通知は法令の委任に基づいて定められたものではない上,本件通知第2の1の頭書も「中国残留邦人等のうち,省令第1条第3号に規定する厚生大臣が認める者としては,『次に掲げる者等が考えられる。』」として本件通知に示された類型が例示にすぎない趣旨を明らかにしていることからすると,本件通知第2の1は,規則1条3号の解釈指針を示したものにすぎず,そこに列挙された類型に該当しないことをもって規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当しないということはできない。)。 ⑸ 以上を前提に,原告が,規則1条3号の類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,類型cに該当するということができるか否かについて検討する。 まず,法2条1項1号は,「両親として(中略)出生した」との文言を用いているところ,「出生」とは,胎児が生まれ出るこ 情にあるものとして,類型cに該当するということができるか否かについて検討する。 まず,法2条1項1号は,「両親として(中略)出生した」との文言を用いているところ,「出生」とは,胎児が生まれ出ることを意味することに鑑みると,同号にいう「両親」とは,生物学上の両親を指すものと解するのが相当である。そして,前記前提事実によれば,原告は,朝鮮人である父と日本国民として本邦に本籍を有するP1との間に出生した子であると認められるところ,当該父が,日本国民として本邦に本籍を有することを裏付ける客観的かつ的確な証拠はないから,原告については,その両親が日本国民として本邦に本籍を有していた者であると認めることができない(仮に,原告主張のとおり法2条1項1号の「両親」を法律上の両親をいうものと解したとしても,原告の主張によれば,原告の法律上の父は不明であるというのであ るから,原告については,その両親が日本国民として本邦に本籍を有していた者であると認めることができない。)。 そうすると,原告は,規則1条3号の類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,類型cに該当するということができない。 ⑹ これに対して,原告は,法は,ソ連が対日参戦したことにより多くの邦人が中国に残留することを余儀なくされ,これらの邦人は,長期間にわたって日本に帰国することができず,日本に帰国した後も言語や生活習慣の違いから日常生活に多くの支障が生ずるとともに老後の生活の安定を得ることができない状況にあることなどに鑑み,このような状況にある邦人を支援しようとするものであるところ,類型Aに該当する者を両親とする類型Bに該当する者と父が不明であり類型Aに該当する者を母とする者との間で法による支援の必要性が異なるものではないから,後者について 支援しようとするものであるところ,類型Aに該当する者を両親とする類型Bに該当する者と父が不明であり類型Aに該当する者を母とする者との間で法による支援の必要性が異なるものではないから,後者についても規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当するというべきであると主張する。 しかしながら,法は,今次の大戦に起因して生じた混乱等により本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び自立の支援を行うことを目的とするものではあるものの(1条),そのためにいかなる制度を設けるかは立法政策の問題であり,前記⑶に説示したとおり,法2条1項1号は,ソ連軍が満州に侵攻を開始した昭和20年8月9日以後の混乱等がなかったときの本邦への引揚可能性に着目し,日本国民として本邦に本籍を有している者を両親とする者は両親と共に本邦に引き揚げていたか,又は両親の引き揚げ後に本邦で出生していた可能性が高かったとして法の支援の対象とする一方,両親の一方のみが日本国民として本邦に本籍を有しているにすぎない者はそのような可能性が高かったとはいうことができないとして本件施策の対象としないとする趣旨であると解される。そして,本件規則1条3号は,法2条 1項1号の委任を受けて本件施策の対象となる者の範囲を定めるものである以上,同号の趣旨に合致しない者を「中国残留邦人等」に該当する者とすることはできないというほかない。そうすると,父が不明であり類型Aに該当する者を母とする者も日本国民として本邦に本籍を有する者を両親とする者でない以上,同号の趣旨に合致する者とはいえないから,規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当するとすることはできないというべきである。 したがって,原告の前記主張は,採用する 両親とする者でない以上,同号の趣旨に合致する者とはいえないから,規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当するとすることはできないというべきである。 したがって,原告の前記主張は,採用することができない。 ⑺ また,原告は,両親が不明である中国残留日本人孤児も「中国残留邦人等」と認められているから,これとの均衡上,父が不明であり類型Aに該当する者を母として同月3日以後中国の地域で出生し,引き続き中国の地域に居住している者も法による支援の対象とするのが相当であると主張する。 しかしながら,証拠(乙21)及び弁論の全趣旨によれば,中国残留日本人孤児については,①戸籍の有無にかかわらず日本人(本邦に本籍を有する日本人)を両親として出生した者であること,②満州などにおいて,昭和20年8月9日(ソ連参戦の日)以降の混乱により保護者と生別又は死別した者であること,③昭和20年8月9日以降の混乱により保護者と生別又は死別した当時の年齢がおおむね13歳未満の者であること,④本人が自己の身元を知らない者であること,⑤昭和20年8月9日以降の混乱により保護者と生別又は死別した当時から引き続き中国に残留し,成長した者であることという5つの要件を全て備えた者を,中国残留日本人孤児として肉親捜しの対象とし,日本と中国政府の共同調査を行った結果,孤児である確証が得られた者のみを孤児として認定していることが認められる。そうすると,中国残留日本人孤児と認定された者は,①及び②の要件を満たすものであるということができるから,中国残留日本人孤児は,Ⓐその者が昭和20年9月2日以前に出生した者である場合,(a)出生届がされていたときは類型Aに,(b)出生届がされていないときは類型aに該当することになる。他方,Ⓑそ の者が同月3日以後に出生した者で 年9月2日以前に出生した者である場合,(a)出生届がされていたときは類型Aに,(b)出生届がされていないときは類型aに該当することになる。他方,Ⓑそ の者が同月3日以後に出生した者である場合,(a)その両親が同月2日以前から引き続き中国に居住している者であるときは類型Bに,(b)母親のみが同日以前から引き続き中国に居住しているときは類型bに,(c)父親のみが同日以前から引き続き中国に居住しているときで母親が同日以前から出生までは中国に居住していたものの出生後は中国に居住しなくなったときは類型ⅰに,(d)父親が同日以前から引き続き中国に居住していないときで母親は同日以前から出生までは中国に居住していたものの出生後は中国に居住しなくなったときは類型ⅱに該当することになる。そうだとすると,中国残留日本人孤児は,法2条の「中国残留邦人等」の要件を満たすものであるのに対し(前記⑷で説示したとおり,本件通知第2の1に列挙された類型に該当する者は,規則1条3号により「中国残留邦人等」に該当すると解される。),父が不明であり類型Aに該当する者を母とする者は法2条の「中国残留邦人等」の要件を満たさないのであるから,「中国残留邦人等」に該当するか否かについて両者を同一に取り扱わなければ均衡を失するということはできない。 したがって,原告の前記主張は,採用することができない。 ⑻ 以上のとおり,原告は,規則1条3号により類型Aに該当する者及び類型Bに該当する者に準ずる事情にあるものとして,類型cに該当するということはできず,「中国残留邦人等」に該当するということもできない。 2 争点2(法2条が憲法14条に反するか。)について原告は,原告のような非嫡出子が「中国残留邦人等」に該当しないとする法2条の規定は,非嫡出子と嫡出子を合理的 該当するということもできない。 2 争点2(法2条が憲法14条に反するか。)について原告は,原告のような非嫡出子が「中国残留邦人等」に該当しないとする法2条の規定は,非嫡出子と嫡出子を合理的理由なく差別するものであり,憲法14条に反すると主張する。 しかし,前記⑶のとおり,法2条1項1号は,仮にソ連軍が中国東北部に侵攻を開始した昭和20年8月9日以後の混乱等がなかったときの本邦への引揚可能性という観点から本件施策の対象となる「中国残留邦人等」の範囲を定め るものであり,両親の婚姻の有無にかかわらず,日本国民として本邦に本籍を有している者を両親とする者は両親と共に本邦に引き揚げていたか,又は両親の引き揚げ後に本邦で出生していた可能性が高かったとして法の支援の対象とするものであって,嫡出子か非嫡出子かという観点から「中国残留邦人等」に該当するか否かを区別するものではない。 したがって,原告の主張は,前提を欠き,採用することができない。 3 小括以上によれば,原告は,法2条の「中国残留邦人等」に該当するとは認められないから,法2条の「中国残留邦人等」に該当することを前提とする法13条の「特定中国残留邦人等」に該当するということもできない。したがって,法13条3項に基づく原告の一時金の支給申請を却下した厚生労働大臣の本件処分は,適法というべきである。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官角谷昌毅 裁判官稲岡奈桜 裁判官角谷昌毅 裁判官稲岡奈桜

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