主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、妻であるA(以下「被害者」という。)と二人で生活し、被害者を介護するなどしていたところ、将来に対する不安を増大させ、絶望的な気持ちになって、被害者と心中しようと考え、令和6年11月24日、神奈川県横須賀市ab丁目c番d号被告人方において、被害者(当時81歳)に対し、殺意をもって、その頸部に帯を巻き付けて締め付け、よって、同日、同所において、被害者を絞頸による窒息により死亡させて殺害したが、犯行後自ら110番通報をし、自首したものである。 (量刑の理由)本件で被告人は、被害者の頸部に帯を3重に巻き付けて締め付け、窒息死させている。生き続けることを望んでいた被害者の無念さが察せられるところであり、被害者の生命を奪った結果の重大性はいうまでもない。 また、被告人は、上記のとおり締め付けた後、さらに、二重にしたビニール袋を被害者の頭に被せるなどしている。被告人はそのような行動をとった理由として被害者が生き返るかもしれないと思ったと述べており、被告人が本件の数日前に心中しようと考えて上記の帯を寝室に準備したことも併せ考えると、被告人には被害者を確実に殺そうという強固な意思があったことが認められる。 もっとも、被告人がそうした準備や本件行為に及ぶまでの被告人や被害者の状況を見ると、共に高齢であった被害者及び被告人が、令和6年6月頃以降、心身共に相当に弱ったことは、証拠関係に照らして明らかであり、被告人は、同月12日の被害者の要介護1の認定や同年7月12日からのケアマネージャーらによる相談やデイサービスによる支援にもかかわらず、被告人自ら被害者に対して十分な介護が 係に照らして明らかであり、被告人は、同月12日の被害者の要介護1の認定や同年7月12日からのケアマネージャーらによる相談やデイサービスによる支援にもかかわらず、被告人自ら被害者に対して十分な介護が できないことに悩み、同年11月18日から19日にかけてのショートステイにおける被害者の意識消失やこれに伴う帰宅という事態を踏まえて、他人を頼りにすることはできないという気持ちになるとともに、経済面など将来に対する不安を増大させ、絶望的な気持ちになって、確実に心中しようと決意したものと認められる。 客観的に見て、当時、周囲に全く頼ることができないという状況にあったとは認められず、被告人において周囲に頼ることなく、被害者の生命を奪うという決断をしたことは短絡的であったというほかないが、被告人自身の性格のほか、親族も高齢で遠方に生活していたことや、自治会活動を積極的に行い他者のために活動をしていたという居住地域における被告人の立場などからすると、被告人が周囲に頼ろうとせず、心中という形で事態の解決を図ろうとしたことに致し方のない面があったことは否めない。 以上によれば、被告人の刑事責任は重いというほかないが、本件は、同種事犯の量刑傾向を踏まえても重い部類に属する事案とは言えず、刑の執行を猶予する余地のある事案といえる。 加えて、被告人が本件犯行後自首をした上で、裁判において反省と後悔の言葉を述べていること、被告人はこれまで真面目に生活して、居住地域に一定の貢献をしてきたこともあって、居住地域の住民を含む多数の者から嘆願書が提出されているところ、居住地域の自治会長が社会復帰後の被告人を受け入れて支援する意向を示しており、地域住民による被告人の更生に向けた支援が一定程度期待できること、被害者の妹も情状酌量を望んでいることなど、被告人に有利 、居住地域の自治会長が社会復帰後の被告人を受け入れて支援する意向を示しており、地域住民による被告人の更生に向けた支援が一定程度期待できること、被害者の妹も情状酌量を望んでいることなど、被告人に有利に考えることができる事情がある。 そこで、被告人に対しては、自首減軽をして主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断したが、刑事責任の重さや被告人がこれと向き合う必要性を考えて、猶予期間については法律上最長の期間とした。 (求刑懲役5年) 令和7年7月29日横浜地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官安永健次 裁判官内藤尚子 裁判官柴田康平
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