昭和52(ネ)266 破産債権確定請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和54年11月1日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      一 原判決を次のとおり変更する。      被控訴人が、破産者昭和重工株式会社に対し、長崎地方裁判所昭和二九 年(フ)第四号破産事件につき、約束手形金元本債権一、八五〇万円及び

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主文 一原判決を次のとおり変更する。 被控訴人が、破産者昭和重工株式会社に対し、長崎地方裁判所昭和二九年(フ)第四号破産事件につき、約束手形金元本債権一、八五〇万円及びこれに対する利息金債権二五万五、九六四円の破産債権を有することを確定する。 二被控訴人その余の請求を棄却する。 三訴訟費用は、第一、二審を通じこれを一〇分し、その一を被控訴人の負担、その余を控訴人らの負担とする。 事実 控訴人ら訴訟代理人は、「原判決中、控訴人ら勝訴の部分を除きこれを取消す。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「本件各控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。 当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。 一控訴人らの主張(但し、5については控訴人Aの主張) 1 消滅時効の抗弁に関する補足的主張破産手続参加による時効中断の効力は、管財人もしくは他の債権者から異議が述べられず、債権表に記載されることを条件として生ずるのであつて、異議によつて確定しなかつた場合は、時効中断の効力は生ぜず、届出は裁判上の催告として暫定的中断の効力があるにすぎないから、本件各小切手債権については、異議が述べられた昭和四七年四月二七日の翌日から起算して六か月を経過した時点において消滅時効が完成し、右各債権は消滅した。 2 本件各手形及び各小切手の振出に対する取締役会承認の欠缺及び双方代理の抗弁(一) 被控訴人は、本件各手形及び本件小切手を期限後裏書によつて取得したものである。即ち、被控訴人は、かつて大韓民国居留民団横浜支部の婦人会の役員の地位にあり、昭和四三年頃から 双方代理の抗弁(一) 被控訴人は、本件各手形及び本件小切手を期限後裏書によつて取得したものである。即ち、被控訴人は、かつて大韓民国居留民団横浜支部の婦人会の役員の地位にあり、昭和四三年頃から会員のBの懇望により、自ら保証人となつて、右婦人会の会員の積立金をBを介して大栄興業に貸付けていたところ、昭和四五年半ば頃までは順調にその返済を受けたが、その後同年々末頃から、Bからの支払が滞るようになつた。本件各手形及び各小切手のうち、原判決添付別表(一)ないし(四)、同(六)ないし(九)の各手形、同(一)の小切手は、被控訴人において、昭和四六年六月二二日、Bから引渡を受けて裏書したものの、不渡となつたので価値のないものと考えてBに戻していた。その後、同年九月頃、Bから、やがて昭和重工に巨額な金が入る予定なので、その時まで待てば手形額面どおり決済されると言われ、被控訴人は、思い直してその余の手形、小切手を含め、既に不渡になつていた本件各手形及び各小切手を、自己の大栄興業に対する債権の支払確保のために一括して引渡を受けたのである。 そして、期限後裏書の場合、その裏書の効力は制限されて、単に指名債権譲渡の効力のみを有し、手形上の権利移転についても一般裏書のように人的抗弁遮断の効力はない。 (二) ところで、本件各手形及び各小切手は、Cが、昭和重工の代表取締役Dから包括的に付与された代理権に基づいて、自己がその業務執行につき代理権を有する大栄興業に対して振出したものである。 右振出は、商法二六五条の取締役が第三者のために会社と取引をするとき、いわゆる間接取引に該当するから、振出人である昭和重工の取締役会の承認を必要とする。 しかるに、右取締役会の承認を欠いていたのであるから、昭和重工は、本件各手形及び各小切手の振出の無効をもつて、大栄興業に 間接取引に該当するから、振出人である昭和重工の取締役会の承認を必要とする。 しかるに、右取締役会の承認を欠いていたのであるから、昭和重工は、本件各手形及び各小切手の振出の無効をもつて、大栄興業に対抗できる。 そして、Bは、日本名をEと称し、大栄興業設立当時は代表取締役に就任した経歴をもち、その頃から手形を割引いて資金化することに関与し、昭和四三年一二月九日夫Fと交替したものの、昭和四五年一〇月二一日Fの死亡後は、夫に代つてCとともに大栄興業の業務、つまり手形操作の任に当つていたもので、第三者ではない。仮に同人が第三者に当るとしても、本件各手形及び各小切手取得当時、昭和重工取締役会の承認なしに、Cが恣に振出していたことを知つていたのであるから、昭和重工は、大栄興業に対する右主張をもつてBに対抗できる関係にある。 (三) 仮に本件各手形及び各小切手の振出が商法二六五条違反には当らないとしても、次のとおり民法一〇八条の双方代理禁止の条項に違反しているから無効である。 右振出の頃、大栄興業の登記簿上の代表取締役であるFは既に死亡していたが、Cが事実上同社の業務を主宰し、法的には同社の代理人としての地位にあつた。一方、当時昭和重工の代表取締役はDであつたが、同人は、破防法違反の罪に問われ、昭和四六年三月一七日から翌四七年一月頃まで前橋刑務所に服役中であつた。 同人は、昭和四六年四月二日代表取締役を辞任していたが、収監されるに当り、手形、小切手の振出についてCに包括的に委任していた。そのためCは、券面金額、発行枚数、支払日の決定等振出の実質的決定を行い、手足として昭和重工の従業員のGやHを使つて手形、小切手の作成に当らせ自らこれを受取つていた。 右事実によれば、Cは、本件各手形及び各小切手の振出交付について昭和重工の、受取りについて大栄興業の 、手足として昭和重工の従業員のGやHを使つて手形、小切手の作成に当らせ自らこれを受取つていた。 右事実によれば、Cは、本件各手形及び各小切手の振出交付について昭和重工の、受取りについて大栄興業の、各代理をし、もつて両社双方を代理していたものであるから、右手形、小切手行為は、民法一〇八条により無効である。 よつて、昭和重工は、右主張をもつて大栄興業及びBに対抗できる。仮にBが第三者に当るとしても、同人は右の事実を知つてこれを取得したものであるから、昭和重工は、大栄興業に対する右主張をもつてBに対抗できる。 (四) よつて、期限後裏書によつて本件各手形及び各小切手を取得した被控訴人が、その振出について、昭和重工取締役会の承認を欠いていたことを知らなかつたとしても、また、Cの右双方代理の事実を知らなかつたとしても、昭和重工は、被控訴人に対しても、本件各手形金及び各小切手金の支払義務を負う謂れはない。 3 対価不交付の抗弁(一) 本件各手形及び各小切手は、いずれも昭和重工の代表取締役Dが刑務所に収監される前、または、その収監中の昭和四六年三月一七日から昭和四七年一月一七日までに、同人から作成振出行為を委任されたCが、その作成権限に基づいてこれらを振出し、かつ、同人自ら大栄興業の代理人となつてこれを受取つていたものであるところ、いずれも取引の実態がなく、振出の原因なくして作成交付されたものである。仮に、本件各手形及び各小切手が、昭和重工の資金を得る目的ないし手形割引の目で作成され、大栄興業に交付されたとしても、本件の場合は、いわゆる手形もしくは小手割引金の交付を受けず、あるいは交付を受けたとしても、その金額は券面額の一割にも足らぬ僅少なものであつたと推認できるから、昭和重工は大栄興業に対し、本件各手形金及び各小切手金のうち、少くともその一 手割引金の交付を受けず、あるいは交付を受けたとしても、その金額は券面額の一割にも足らぬ僅少なものであつたと推認できるから、昭和重工は大栄興業に対し、本件各手形金及び各小切手金のうち、少くともその一割を超える部分については支払義務はない。 (二) また、前記2の(二)記載と同様、Bは大栄興業の第三者とはいえず、仮に第三者に当るとしても、右対価不交付の事実を知悉して本件各手形及び各小切手の裏書譲渡を受けたものであるから、昭和重工は、右主張をもつてBに対抗できる関係にある。 (三) よつて、昭和重工は、大栄興業及びBに対し、本件各手形金及び小切手金の一割を超える部分については支払うべき理由はなく、期限後裏書によつて本件各手形及び各小切手を取得してこれを所持する被控訴人に対しても、右同様対価を欠く部分については支払を拒絶し得る筋合である。 4 手形外の特約に基づく抗弁Bは、本件各手形及び各小切手を取得するに当り、近い将来振出人である昭和重工の三菱重工株式会社相手の訴訟が昭和重工に有利に解決し、莫大な金員の入金があれば一括決済される、それまでは本件各手形金及び各小切手金が支払われる目途はないことを知悉し了解していた。 換言すれば、昭和重工と大栄興業の間の手形、小切手授受に際し、右事実が到来するまでは、手形、小切手金の請求はしない旨の特約が存していたのであつて、Bは右特約を知りながら右手形及び小切手を取得したのであるから、昭和重工は、Bに対し本件各手形金及び各小切手金の支払義務はなく、期限後裏書によつて本件各手形及び各小切手を取得してこれを所持する被控訴人に対してもその支払義務はないというべきである。 5 破産法七二条五号に基づく抗弁昭和重工の強制和議の取消申立がされたのは昭和四五年五月二七日、右取消決定がされたのは昭和四六年九月一 る被控訴人に対してもその支払義務はないというべきである。 5 破産法七二条五号に基づく抗弁昭和重工の強制和議の取消申立がされたのは昭和四五年五月二七日、右取消決定がされたのは昭和四六年九月一三日であつて、本件各手形及び各小切手は、実質的に昭和重工の再施破産寸前の危機において、かつ、殆ど対価を得ることなしにD、C及びBらによつてされた手形の乱発であり、債務を増大する行為である。 右行為は、本来破産法七二条五号に該当し否認さるべき行為である。 二被控訴人の答弁 1 消滅時効に関する控訴人らの主張は争う。 2 (一) 被控訴人が本件各手形及び各小切手を期限後裏書によつて取得したことは否認する。 (二) 本件各手形及び各小切手の振出について、昭和重工の取締役会の承認があつたかどうかは知らない。 仮に、右取締役会の承認がなかつたとしても、本件各手形及び各小切手の振出が無効であるとの控訴人らの主張及びこれをもつて被控訴人に対抗できるとの主張は争う。 本件各手形及び各小切手は、Bが大韓民国居留民団横浜支部婦人会の会員から借受け、被控訴人が保証していた借入金の返済のため、被控訴人が譲受けたものである。 (三) 本件各手形及び各小切手が、Dから委任を受けたCによつて振出されたことは否認する。本件各手形及び各小切手は、Dの指示または委任に基づきG及びHらが、その権限の範囲内で作成して振出したものであるから、双方代理の抗弁は理由がない。 3 対価不交付の抗弁は争う。 本件各手形及び各小切手の対価が昭和重工に交付されていないことは否認する。 本件各手形及び各小切手は、昭和重工が新しい資金調達あるいは先に振出した手形の書替のため振出されたものであり、原因関係の存在しないものとはいえない。 仮に、右対価が昭和重工に交付されていないとしても、これ 手形及び各小切手は、昭和重工が新しい資金調達あるいは先に振出した手形の書替のため振出されたものであり、原因関係の存在しないものとはいえない。 仮に、右対価が昭和重工に交付されていないとしても、これをもつて被控訴人に対抗できるとの控訴人らの主張は争う。 4 控訴人ら主張の特約があつたことは否認する。 被控訴人は、Bから三菱重工株式会社との訴訟が解決すれば一転して解決するであろうと話されていたにすぎず、右訴訟の解決まで被控訴人が法律上請求しないと特約をしたわけではないから、控訴人らの抗弁は理由がない。 5 本件各手形及び各小切手の振出は、無償行為またはこれに同視すべき有償でないので破産管財人の破産法七二条に基づく主張は理由がない。 三新たな証拠(省略) 理由 一被控訴人の請求原因並びに控訴人らの通謀虚偽表示及び悪意の抗弁に対する当裁判所の判断は、次のとおり付加し、改めるほか、原判決説示の理由一ないし五と同一であるからこれを引用する。 1 原判決九枚目裏七行目の「特別の事情」を「反証」と改め、同一〇枚目表六行目ないし九行目掲記の証拠に「当審における証人G、同Hの各証言」を加え、同七行目に「同第一七号証の一、七、」とあるのを「同第一一号証の一、七、」と改める。 2 同一四枚目表九、一〇行目掲記の証拠に「当審における証人G、同Hの各証言」を加える。 3 同一七枚目表七行目の「こと、」の次に「尤も、(一)ないし(四)及び(六)ないし(九)の各手形、(一)の小切手は、原告において昭和四六年六月二二日以前にBから譲渡を受けていたものであるが、その後いずれも不渡となつたため、これを同人に預けていたものであること、」を加える。 二次に控訴人らの消滅時効の抗弁につき判断する。 本件各小切手の各支払呈示期間経過後、そ けていたものであるが、その後いずれも不渡となつたため、これを同人に預けていたものであること、」を加える。 二次に控訴人らの消滅時効の抗弁につき判断する。 本件各小切手の各支払呈示期間経過後、それぞれにつき時効完成期間である六か月が経過していることは、前記甲第二〇、第二一号証、乙第一一号証の七に徴し、暦算上明らかであるところ、被控訴人が、右各時効完成期間経過前の昭和四六年一〇月五日、長崎地方裁判所に係属中の昭和重工に対する昭和二九年(フ)第四号破産事件につき、破産債権者として右各小切手債権及びこれに基づく利息債権を届出て、翌昭和四七年四月二七日分債権調査期日において、控訴人らから右各債権につき異議を申立てられたことは、引用にかかる原判決説示の理由に記載のとおりであり、被控訴人は、本訴において、同各債権の確定を求めているものである。 <要旨>ところで、破産債権者は、破産裁判所に対して債権の届出をすることによつて、初めて手続上の破産債権</要旨>者となつて財団からの配当にあずかり、また、債権者集会における議決権をもちうることとなるのであるから、右届出は、まさしく破産手続参加にほかならず、一種の裁判上の請求として時効中断の効力を生じ、届出が撤回されない限り、その効力は破産手続終了まで存続するものというべきである(民法一五二条)。しかしながら、右債権の届出が時効中断の効力を生ずるものとされる所以は、それが破産債権者の破産裁判所に対する権利行使であり、かつ、債権調査期日において破産管財人及び他の債権者から異議がないときは、届出にかかる債権が債権表に記載され、それは破産債権者の全員に対し確定判決と同一の効力をもつに至る(破産法二四二条)ことが予定されているからである。ところが、破産債権者の届出債権について、破産管財人及び他の債権者から異議があつ 載され、それは破産債権者の全員に対し確定判決と同一の効力をもつに至る(破産法二四二条)ことが予定されているからである。ところが、破産債権者の届出債権について、破産管財人及び他の債権者から異議があつた場合には、当該債権者が異議者に対して債権確定の訴を提起し、かつ、配当手続における所定の期間内に右訴の提起を破産管財人に証明しない限り、当該債権者は、当初から債権の届出をしなかつた場合と同様に、配当からも除斥されることとなるのである(破産法二六一条)。 かようにみてくると、破産債権者の届出債権について、債権調査期日において破産管財人及び他の債権者から異議があつた場合には、届出は実質上その効力を失うという意味において、民法一五二条にいう「其請求カ却下セラレタトキ」に該当するものとして、時効中断の効力を失うものと解するのが相当である(なお、破産債権者の提起した債権確定の訴が却下された場合も、同条にいう「其請求カ却下セラレタトキ」に該当することは、言を挨たないところである。)。 従つて、被控訴人の本件各小切手債権については、控訴人らから異議が述べられた昭和四七年四月二七日の債権調査期日の翌日から起算して六か月以内に訴の提起等他の強力な中断事由に訴えられない限り、右期間の経過により消滅時効が完成するというべきところ、本訴である右債権確定の訴が提起されたのが右期間経過後の昭和四八年三月二〇日であることは本件記録により明らかであり、かつ、右債権につき他の中断事由に訴えられた旨の主張立証のない本件においては、右債権は、同年四月二八日から六か月後の同年一〇月二七日の経過と共に時効により消滅したものというのほかなく、結局、控訴人らのその余の抗弁について判断するまでもなく、被控訴人は、昭和重工に対し、被控訴人主張の小切手金元本債権及びこれに対する利息金債権を の経過と共に時効により消滅したものというのほかなく、結局、控訴人らのその余の抗弁について判断するまでもなく、被控訴人は、昭和重工に対し、被控訴人主張の小切手金元本債権及びこれに対する利息金債権を有しないものというべきである。 三次に、取締役会の承認の欠缺及び双方代理の各抗弁について判断する。 控訴人らの右主張は、要するに、Cが、昭和重工の代表取締役Dから包括的に付与された代理権に基づいて、本件各手形を自己が代理権を有する大栄興業に対して振出したものであることを前提とするところ、Cが右Dから付与された代理権に基づいて本件各手形を振出したと認めるに足る証拠はなく、却つて前記引用の原判決説示の理由二及び五の(一)に記載のとおり、本件各手形は、当時の昭和重工代表取締役Dの指示または委任に基づき、同会社の従業員たるG及びHらが、その権限の範囲内で作成し、右Cがその代表取締役Fから業務執行につき一切の権限を委任されていた大栄興業に対して振出したものであることが明らかであるから、控訴人らの右主張は、その余の点について判断するまでもなく失当である。 四進んで、控訴人らの対価不交付の抗弁について判断する。 控訴人らは、Bが、大栄興業の第三者とはいえず、仮に第三者であるとしても、控訴人ら主張の昭和重工に対する対価不交付の事実を知悉して本件各手形の裏書譲渡を受けたものであるから、昭和重工は、右主張をもつてBに対抗でき、従つてまた、期限後裏書によつて本件各手形を取得した被控訴人に対しても、同様に右対価不交付を理由に支払を拒絶することができる旨主張する。 しかし、前記認定のとおり、本件各手形のうち、(一)ないし(四)、(六)ないし(九)の各手形はその支払期日前に、その余の各手形は不渡となつた後に、いずれも被控訴人がBより譲渡を受けたものであるところ、本 し、前記認定のとおり、本件各手形のうち、(一)ないし(四)、(六)ないし(九)の各手形はその支払期日前に、その余の各手形は不渡となつた後に、いずれも被控訴人がBより譲渡を受けたものであるところ、本件全証拠によつてもBが大栄興業の第三者ではないと目すべき特段の事情を認めるに足りず、また、控訴人ら主張の昭和重工に対する対価不交付の事実が仮にあつたとしても、Bが右事実を知つて本件各手形を取得したと認めるに足りる証拠はなく、却つて、いずれも原審における証人C、同Bの各証言及び被控訴人本人尋問の結果によれば、Bは、大韓民国居留民団横浜支部の婦人会の役員であつた被控訴人を通して同婦人会会員の積立金を借受け、これを大栄興業に対し貸付け、その際、本件各手形をCから受取つたものであるが、Bが、右のように大栄興業に金員を貸与すると共に、大栄興業から振出人昭和重工、受取人大栄興業の約束手形を受取るようになつたのは、大栄興業の社長であつた夫のFが死亡した後、Cに責められてやむをえず大栄興業のため金策したことによるが、Cから金員の使途及び昭和重工振出の手形を大栄興業が受取つた原因等について全然聞かされることもなく、本件各手形を受取つた事実が認められるから、仮に控訴人ら主張の昭和重工に対する対価不交付の事実が仮にあつたとしても、Bは、右対価不交付の事実を知らずに本件各手形を取得したものというべきである。 従つて、控訴人らの右抗弁は失当として採用の限りではない。 五続いて、控訴人らの手形外の特約に基づく抗弁について判断するに、本件全証拠によるも、Bが本件各手形を取得するに当り、昭和重工株式会社相手の訴訟が昭和重工に有利に解決し、莫大な金員の入金があるまで本件各手形金の支払請求をしない旨の特約があつたと認めるに足りないから、その余の点について判断するまでもなく るに当り、昭和重工株式会社相手の訴訟が昭和重工に有利に解決し、莫大な金員の入金があるまで本件各手形金の支払請求をしない旨の特約があつたと認めるに足りないから、その余の点について判断するまでもなく、右抗弁は失当である。 六更に、控訴人破産管財人Aの破産法七二条五号に基づく抗弁について判断する。 右控訴人は、本件各手形の振出が実質的に昭和重工の再施破産寸前の危機において、かつ、殆ど対価を得ることなしにされた債務負担行為として破産法七二条五号に該当する旨主張する。 しかし、仮に昭和重工の大栄興業に対する本件各手形の振出が破産法七二条五号に該当するとしても、本件各手形は、大栄興業から更にBを経て被控訴人へと転々譲渡されたものであるから、右控訴人において右振出行為についての否認権行使の効果を転得者である被控訴人に及ぼすには、被控訴人に対し同法八三条一項所定の事由を示して該行為を否認することを要するところ、この点に関して何らの主張立証がない本件においては、所詮右抗弁は、被控訴人の本訴請求を拒絶しうべき法律上の理由たりえないものとして失当というほかはない。 七終りに、本件各手形の呈示及び利息金の発生について判断する。 甲第一ないし第一九号証の各一中の成立に争いがない銀行及び手形交換所印の各部分、原審における証人Bの証言及び被控訴人本人尋問の結果、右各甲号証中の、同証言及び同尋問の結果により真正に成立したと認められる、B、I、被控訴人、横浜商銀信用組合または大韓民国居留民団横浜支部名義の各裏書部分を総合すれば、(一)ないし(四)及び(六)ないし(九)の各手形は、被控訴人から取立委任を受けた銀行により、(五)及び(一〇)ないし(一九)の各手形は、被控訴人の前者であるBから取立委任を受けた銀行等の金融機関により、それぞれ原判決添付別表記載の日 )の各手形は、被控訴人から取立委任を受けた銀行により、(五)及び(一〇)ないし(一九)の各手形は、被控訴人の前者であるBから取立委任を受けた銀行等の金融機関により、それぞれ原判決添付別表記載の日付に手形交換に回され、各手形の支払場所に支払のため呈示された事実が認められ、右認定に反する証拠はない。 右認定事実と、本件各手形の満期日を基準として定まる各支払呈示期間とを比較対照すると、本件各手形のうち(二)ないし(一五)の各手形を除くその余の各手形が、各支払呈示期間内に各支払場所に支払のため呈示されたことが明らかである(なお、甲第一〇号証の一のうちの前掲証拠部分によれば、(一〇)の手形は、手形交換に回された日の翌日即ち同手形の満期日まで支払銀行にとどめられていたことが明らかであるところ、特別の事情も見受けられないので、同日支払のための呈示がされたと認めることができる。また、(三)及び(一六)の各手形は、昭和四六年六月二〇日が日曜日であるから、いずれも支払呈示期間内に呈示されたといえる。)。 以上によると、本件各手形のうち、(二)ないし(一五)の各手形を除くその余の各手形については、各満期日から手形法所定年六分の割合による法定利息が発生したことが認められるが、(二)ないし(一五)の各手形については、法定利息が発生したことを認めるに足りる証拠がないことに帰着する。 そして、法定利息の発生した右各手形につき、それぞれの利息の起算日から、本件債権届をした昭和四六年一〇月五日までの間に発生した利息を計算すると、原判決添付別表記載のとおりであり、その合計は二五万五、九六四円である。 八そうすると、被控訴人の本訴請求は、控訴人らとの間で、昭和重工に対し約束手形金元本債権一、八五〇万円及びこれに対する利息金債権二五万五、九六四円の破産債権の確定を求 二五万五、九六四円である。 八そうすると、被控訴人の本訴請求は、控訴人らとの間で、昭和重工に対し約束手形金元本債権一、八五〇万円及びこれに対する利息金債権二五万五、九六四円の破産債権の確定を求める限度において正当として認容し、その余は失当としてこれを棄却すべきであるから、右結論と異なる原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官斎藤次郎裁判官原政俊裁判官寒竹剛)

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