令和5(う)158 強盗致死、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月23日 仙台高等裁判所 破棄自判 仙台地方裁判所
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判決文本文8,693 文字)

令和5年(う)第158号強盗致死、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件令和6年5月23日仙台高等裁判所第1刑事部判決 主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役28年に処する。 原審における未決勾留日数中210日をその刑に算入する。 理由 第1 本件事案(原判決が認定した罪となるべき事実)と控訴の趣意本件は、被告人が、①金品強取の目的で、被害者方玄関前付近において、被害者(当時64歳)に対し、黒い目出し帽をかぶり、黒いサングラスをかけて、右手に包丁(刃体の長さ約18.2cm)を持って立ち、被害者を脅迫し、さらに、地面に座っている被害者の背後からその頸部に左腕を回して締めながら、右手に持った同包丁の刃先を被害者の顔面付近に突き付けるなどの暴行・脅迫を加えて、現金を要求したが、その目的を遂げず、その際、被害者から転倒させられるなどしたとき、右手に持った同包丁の刃先を被害者に向けていたことから、同包丁を被害者の左脇下に刺したことなどにより、被害者に左腋窩動静脈切断等の傷害を負わせて死亡させ(原判示第1)、②業務その他正当な理由による場合でないのに、上記①の犯行日時頃、同所において、上記包丁1本を携帯した(原判示第2)とされる事案である。 本件控訴の趣意は、弁護人土井浩之作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり、論旨は、強盗致死(原判示第1)に関する事実誤認及び量刑不当の主張である(なお、原審では強盗致死罪の成否が争われたが、当審においては強盗致死罪の成否に関する事実誤認の主張はなされておらず、後記のとおり、強盗致死罪が成立することを前提として、その行為態様に関する事実の誤認が主張されている。)。 第2 事実誤認の主張につ いては強盗致死罪の成否に関する事実誤認の主張はなされておらず、後記のとおり、強盗致死罪が成立することを前提として、その行為態様に関する事実の誤認が主張されている。)。 第2 事実誤認の主張について 1 論旨は、強盗致死(以下、第2項では、強盗致死の事実について「本件」という。)の行為態様について、被告人は被害者を包丁で刺したと評価されるような行為を行っていないのに、被告人が包丁を被害者の左脇下に刺したとの事実を認定した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というのである。 2 原判決の判断原判決は、罪となるべき事実の項において、前記第1の①記載のとおり、包丁を被害者の左脇下に刺したとの事実を認定した(なお、公判前整理手続における争点整理の結果として、被告人が持っていた包丁が被害者に刺さって、被害者は原判示の傷害を負い、その傷害に基づき死亡したことは争いがない事実とされ、被告人が包丁を被害者に刺したかどうかは争点とされていなかった。)。 そして、その理由について、事実認定の補足説明の項のうち、争点②の被害者死亡の結果と強盗との密接関連性(強盗の機会性の有無)の説示としては、被害者が致命傷となった左腋窩動静脈切断の傷害(以下「本件傷害」という。)を負ったのが、被害者が(被告人に)タックルした際であるか被告人ともみ合いになった際であるか特定することはできないと説示する一方で、量刑の理由の項においては、被告人は、殺傷能力の高い包丁を手に持ち、被害者にタックルされたり被害者ともみ合いになった際にも包丁を離さなかった上、包丁の刃先を被害者の顔面付近に突き付けたと認定した上で、これら被告人の一連の行為は、容易に被害者の生命を奪う結果になりかねない、非常に危険な犯行態様であると指摘し、被告人は包丁の 離さなかった上、包丁の刃先を被害者の顔面付近に突き付けたと認定した上で、これら被告人の一連の行為は、容易に被害者の生命を奪う結果になりかねない、非常に危険な犯行態様であると指摘し、被告人は包丁の刃先を被害者に意図的に向けていたわけではない旨の原審弁護人の主張に対しては、そもそも包丁を用いなければ、タックルを受けた際のとっさの反応等により包丁の刃先が被害者に向いたりする事態にならなかったのであるから、意図的に刃先を向けていないからといって、犯行態様に対する上記評価が変わるものではないとし、かえって、そのような状態で包丁を持ち続けていたことからは、被害者の左脇下に包丁が刺さった行為 は、罪となるべき事実で認定したように「刺した」と評価されるものである旨説示した(なお、原判決は、その認定した罪となるべき事実の記載ぶりから、被告人が「刺した」行為を強盗の手段としての暴行・脅迫の一部としているものではないと理解できる。)。 3 当裁判所の判断⑴ しかし、被告人が被害者を包丁で刺したとする原判決の認定は、論理則、経験則等に照らして不合理といわざるを得ず、是認することができない。以下、そのように判断した理由を説明する。 ⑵ 前提事実被告人の原審公判供述その他関係証拠によれば、本件の事実経過として、以下の事実が認められる。 ア被告人は、経済的に困窮して強盗を行うことを決意し、被害者方のインターフォンを鳴らし、被害者が出てきた時点で包丁を見せ付け、ひるんだ被害者の手足をガムテープで縛った上でキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、金融機関から現金を引き出すという強盗の計画を立てたが、包丁を犯行に使用することから、被害者が死亡するおそれがあり得ると認識していた。本件当日、被告人は、犯行に使用する包丁やガムテープ等 聞き出し、金融機関から現金を引き出すという強盗の計画を立てたが、包丁を犯行に使用することから、被害者が死亡するおそれがあり得ると認識していた。本件当日、被告人は、犯行に使用する包丁やガムテープ等を購入して被害者方に赴いた。 イ被告人は、被害者方のインターフォンを鳴らしたものの、おじけづき、しばらくした後、再びインターフォンを鳴らし、玄関ドアの陰に隠れたものの、様子を見に玄関ドアを開けた被害者に発見され、玄関先において、包丁を右手に順手の状態で持った被告人が被害者と対峙した途端、被告人は、被害者からタックルを受け、包丁を持ったまま仰向けに転倒した(被告人は、被害者と対峙してからタックルを受けるまでの間は一瞬(1秒あるかないかくらい)で、気付いたら転倒していたと供述しているところ、かかる供述は、被害者は玄関ドアを閉めようとしていたが、その後、ドア が全開すると同時に被害者の姿が見えなくなったとするAの原審公判供述と整合していることからすると、信用できる。)。 転倒後、被告人は被害者から馬乗りになられて殴打されたが(なお、被告人は殴打されている際も包丁を把持していた。)、被害者の上体を押しのけ、地面に座っている被害者の背後からその頸部に左腕を回し、右手に持った同包丁の刃先を被害者の顔面付近に突き付け、現金を要求するなどした。その後、被害者は立ち上がって二、三歩歩いた後、流血した状態で倒れ込んだ。 ウ被害者は、その左脇下に被告人が持っていた包丁が刺入したことにより、本件傷害を負い、出血性ショックにより死亡した。 ⑶ 検討アまず、上記前提事実によれば、①被告人が被害者からタックルを受けて仰向けに転倒した際、あるいは、②その後、被告人が被害者から馬乗りになられ、もみ合いになるなどした過程( ⑶ 検討アまず、上記前提事実によれば、①被告人が被害者からタックルを受けて仰向けに転倒した際、あるいは、②その後、被告人が被害者から馬乗りになられ、もみ合いになるなどした過程(被告人が馬乗りになった被害者から殴られ、その後被害者の上体を押しのけ、その背後から頸部に左腕を回して包丁を被害者の顔面付近に突き付けるといった過程)で、被告人が右手に持っていた包丁が被害者の左脇下に刺入し、被害者に本件傷害を負わせた可能性が考えられるところ、法医学の専門家である証人Bは、原審公判において、司法解剖の所見に基づき、被害者の受傷機転を考察し、被害者の左脇下の創は、犯人が包丁を動かして刺したとしても、被害者が犯人に向かってきて犯人が持った包丁に刺さったとしても形成し得るとした上で、被告人と被害者の身長差や被害者がタックルした際の姿勢に照らすと、①の際に被害者の左脇下に創が生じたとしても矛盾はないとし、また、②の過程においても、包丁の刃先が被害者の脇下に向いている状態であれば創が生じ得ることを供述していることからすれば、被害者の左脇下の創が①②どちらの際に生じたのか特定できないとする原判決の判断は正当であ る。 イその上で、原判決は、包丁が被害者の左脇下に刺入した事態について、前記のとおり「刺した」という表現で評価し、その旨認定しているが、それは、被告人の意図的な行為、すなわち、被告人の意思に基づく行為と評価したと解さざるを得ない(原判決は、「刺した」と同視し得るほどに本件の態様が危険であったなどと説示するものではない。)。ところで、意思に基づく行為というためには、所論も指摘するように、被告人が、(ⅰ)その意思に基づき包丁の刃先を被害者に向け刺入行為に出たか、あるいは、(ⅱ)被害者が向かってきたり被害者ともみ合いに ところで、意思に基づく行為というためには、所論も指摘するように、被告人が、(ⅰ)その意思に基づき包丁の刃先を被害者に向け刺入行為に出たか、あるいは、(ⅱ)被害者が向かってきたり被害者ともみ合いになったりしている状況を認識した上であえて(刺入することを認容して)包丁の刃先を被害者に向けて握持し続けたか、のいずれかが想定される。そこで、包丁が被害者の左脇下に刺入した事態について、以下、(ⅰ)ないし(ⅱ)のいずれかに該当するものなのかを検討する。 ①の際に包丁が刺入した場合まず、㋐被告人が予め計画していた強盗の内容(前記3⑵ア)からすると、被告人は、被害者と玄関先で対峙した際、被害者を刺すためではなく、脅すのに使用する目的で包丁を持っていたものと認められる。次に、㋑前記3⑵イのとおり、被告人は被害者と対峙した途端に同人からタックルを受けて転倒させられており、その客観的状況からは、被告人が、被害者がタックル等の反撃をしてくることを認識しながら、包丁の刃先を被害者の身体に向けた状態にしていたということはできない(さらに言えば、被告人が考えていた強盗の計画内容からみても、被告人は、被害者に包丁を示せば同人がひるむと思っていたのであって(そのように考えることが常識に照らして不合理ということもない。)、突如タックル等の反撃を受けることは想定していなかったものと認められる。そうすると、被告人が、被害者がタックル等の反撃をしてくることを予見 しながら、包丁の刃先を被害者の身体に向けた状態にしていたということもできない。)。加えて、㋒証人Bが、左脇下の創の形状からは、包丁が被害者に刺さって抜かれるまでの間、加害側が手に力を入れ、刃を上にした状態で包丁を保持していたと考えるべきであると述べる一方で、加害側が仰向けに倒される際に、自身の受傷 脇下の創の形状からは、包丁が被害者に刺さって抜かれるまでの間、加害側が手に力を入れ、刃を上にした状態で包丁を保持していたと考えるべきであると述べる一方で、加害側が仰向けに倒される際に、自身の受傷を予期して包丁を強く握りしめるといった防衛行動を取る可能性はあると述べるとともに、被害者は当然傷を負ったときには意識があるから、通常刃物を脇の下に置いておくということはなく、ある程度短い時間で包丁の抜き差しが行われたと思う、刃物が刺さった後一瞬で抜かれた可能性がある旨供述していることからすれば、被告人が、被害者からタックルを受けて転倒する際、意識的に包丁を離さず、手に力を入れ、刃先を被害者の左脇下に向けた状態で包丁を保持し続けていたと認定することも困難といわざるを得ない。以上のような前記㋐ないし㋒の事情からすると、①の際に、被告人の意思に基づいて被害者に刃先を向けた包丁が左脇下に刺入したと認めることはできず、包丁が刺入したことには、被告人が想定していなかった被害者の行為が介在したことが大きな要因となった可能性が十分考えられる。以上によれば、①の際に被告人の持った包丁が被害者の左脇下に刺入した事態をもって「刺した」と評価することはできない。 ②の際に包丁が刺入した場合 の場合には、の場合と異なり、被告人は、被害者ともみ合いになっている状況、すなわち身近な被害者に包丁の刃先が向けばその身体に重篤な危害を加えかねないことを認識できていたといえる上、そのようなもみ合いの中で包丁を意識的に離さなかったといえる(被告人は、包丁を被害者に奪われると自分が危ないと思って包丁を離さなかった旨供述するが、それを前提としても、包丁を離さなかったことには、被告人の意思が介在しているといえる。)。もっとも、原審記録からは、②の過 害者に奪われると自分が危ないと思って包丁を離さなかった旨供述するが、それを前提としても、包丁を離さなかったことには、被告人の意思が介在しているといえる。)。もっとも、原審記録からは、②の過 程で被告人が持っていた包丁の刃先が被害者の身体に向いた経緯やその際の被告人の主観を認定し得るだけの証拠はなく(被告人が被害者から馬乗りになられ殴られるなどした際に、自己の身体を守るために、反射的に、包丁を持った右手が動いて被害者の身体にその刃先が向いたなどといった可能性がないわけではない。)、被告人が包丁を犯行に使用することで、被害者が死亡するおそれがあり得ると認識していたにしても(前記3⑵ア)、被告人があえて包丁を被害者の身体に向けて握持し続けたと認定することは困難というほかない。結局、②の際に被告人の持った包丁が被害者の左脇下に刺入した事態をもって「刺した」と評価することもできない。 そうすると、被害者からタックルを受けるなどした際に被告人が包丁の刃先を被害者に向けて持ち続けたことのみを指摘して、被害者の左脇下に包丁が刺入した事態を「刺した」と評価できるとする原判決は、被告人の主観や客観的な事実経過を十分検討しなかった結果、これらに整合しない不合理な認定をしたものといわざるを得ない。 そして、後記のとおり、被告人が包丁で被害者を刺したのか、それとも被告人の意思に基づかずに被害者に包丁が刺さったのかという違いは、致死の結果に関する被告人の意思決定に対する非難の程度に大きな影響を与え、犯情において量刑に影響を及ぼすものといえることからすれば、本件行為態様に関する上記の誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認といえる。この点に関し、同旨の指摘をする論旨には理由がある(なお、前記の量刑の理由の項における原 いえることからすれば、本件行為態様に関する上記の誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認といえる。この点に関し、同旨の指摘をする論旨には理由がある(なお、前記の量刑の理由の項における原判決の説示からは、原判決が、①の際に創が形成されたことを前提として量刑判断をしたのか判然としないものの、前述したとおり、①の際に左脇下の創が形成された合理的疑いが残る以上、本件行為態様については、上記冒頭でみたとおり、②よりも犯情面において有利な、①の際に創が形成されたこと を前提とした量刑判断をするのが相当である。)。 第3 破棄自判以上のとおりであるから、その余の弁護人の控訴趣意について検討するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、原判決は、原判示第1及び第2を併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから、刑事訴訟法397条1項、382条により原判決を全部破棄し、同法400条ただし書を適用して、被告事件について、更に次のとおり判決する。 (当裁判所が認定した罪となるべき事実)原判示罪となるべき事実の第1を、「第1 金品強取の目的で、令和▲年▲月▲日、宮城県遠田郡a町字bc番地dC方玄関前付近において、インターフォンによる呼出しに応じて同玄関ドアを開けたC(当時64歳)に対し、黒い目出し帽をかぶり、黒いサングラスをかけて、右手に包丁(刃体の長さ約18.2cm)を持って、その刃先をCの身体に向けた状態で立ち、Cを脅迫し、さらに、被告人を転倒させて馬乗りになったCの上体を左手で押しのけるなどし、その後立ち上がって、地面に座っているCの背後からその頸部に左腕を回し、右手に持った同包丁の刃先をCの顔面付近に突き付けるなどの暴行脅迫を加えて、現金を要求したが、消防署に通報されるなどしたため、その目的を遂げず って、地面に座っているCの背後からその頸部に左腕を回し、右手に持った同包丁の刃先をCの顔面付近に突き付けるなどの暴行脅迫を加えて、現金を要求したが、消防署に通報されるなどしたため、その目的を遂げず、その際、右手に同包丁を持ったままCから転倒させられ馬乗りになられるなどしたことから、Cに左腋窩動静脈切断等の傷害を負わせ、よって、同日午後8時49分頃、同県大崎市ef丁目g番h号D病院において、Cを前記傷害に基づく出血性ショックにより死亡させ」と改める(なお、本件公訴事実において、犯行時刻は「午後7時45分頃」とされているが、被告人は、罪状認否ではこれを間違いないとする一方で、被告人質問において確認された際には犯行時刻について分からないと供述している上、捜査報告書(原審甲74)には、検察官が認定した犯行時刻が午後7時30分頃とする記載があるものの(公訴事実とも齟齬するものである。)、いかなる証拠に基づいて認定したのか不明であり、一件記録を精査しても犯行時 刻を認定し得るだけの証拠がないことから、当審では犯行時刻は認定しないこととした。)ほかは、原判決と同一である。 (量刑の理由)量刑判断の中心となる強盗致死の事案(判示第1)についてみると、被告人は、殺傷能力の高い包丁を手に持って被害者の前に立ち、その包丁を持ったまま被害者にタックルされるなどしてもみ合いになった後、包丁の刃先を被害者の顔面付近に突き付けるなどしており、こうした被告人の一連の行為は、被害者の生命を奪う結果をもたらすおそれの高い、極めて危険な犯行態様といえる。現に被害者はその包丁が刺さって死亡するに至っており、重大な結果が生じている。被害者の内妻、兄及び二男がいずれも被告人に対する厳重処罰を求めるのは当然である。 被告人は、凶器や顔を隠すための目出し帽等を準備 者はその包丁が刺さって死亡するに至っており、重大な結果が生じている。被害者の内妻、兄及び二男がいずれも被告人に対する厳重処罰を求めるのは当然である。 被告人は、凶器や顔を隠すための目出し帽等を準備し、被害者ともみ合いになって死亡させることになった場合をも想定して知人に被害者を埋めるための穴を掘る依頼までしており、本件は計画的な犯行といえるし、一挙に大金を獲得しようとする利欲的な動機に酌量の余地は全くない。 もっとも、被告人は、あくまでも強盗を遂行する中で被害者を脅迫する手段として包丁を示すことを意図していたものであり、当初から被害者を包丁で刺すなどしてその身体に重大な危害を加える意図があったとまでは認められない。そして、被害者の左脇下に包丁が刺さるという死亡に直結する事態が生じた原因は、その行為を決して責めることはできないものの、被告人が想定していなかった被害者の行為が介在したことによるところが大きいといえることからすれば、前記のとおり、脅迫手段として殺傷能力の高い包丁を被害者に示すという方法自体が被害者を死亡させる危険を含んでいることを踏まえても、致死の結果に対する被告人への非難の程度は、意思に基づいて被害者に包丁を刺した場合のそれとは質的に差があり、後者と比べて高くないといわざるを得ない。 以上のとおり、本件は危険な犯行態様により被害者1名が死亡するという重大な結果が生じた事案ではあるが、致死の結果に対する被告人への非難の程度は強 盗の手段としての暴行・脅迫自体から死の結果が生じた場合に比肩するほどは高くないことからすると、本件は同種事案(被害者が1名の強盗致死の事案)の中で比較的重い部類の事案であると評価されるものの、上記の量刑傾向を参考にすると、被告人に対し無期懲役刑をもって臨むのは重きに過ぎるといわざるを得 と、本件は同種事案(被害者が1名の強盗致死の事案)の中で比較的重い部類の事案であると評価されるものの、上記の量刑傾向を参考にすると、被告人に対し無期懲役刑をもって臨むのは重きに過ぎるといわざるを得ず、酌量減軽をした上で有期懲役刑の上限付近の刑を科すのが相当である。 そこで、上記の犯情等を基礎とした上で、被告人の前科が罰金刑1犯にとどまることや被告人の母親が更生への協力を約束していること、原判決後も被告人が反省と後悔の言葉を述べていることなども踏まえて、主文の刑が相当であると判断した。 (原審における求刑無期懲役)令和6年5月23日仙台高等裁判所第1刑事部 裁判長裁判官渡英敬 裁判官柴田雅司 裁判官鏡味薫

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