平成20(行コ)78 地方自治法による住民訴訟控訴事件(原審・千葉地方裁判所平成16年(行ウ)第30号)

裁判年月日・裁判所
平成20年6月25日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文20,661 文字)

- 1 -主文 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 被控訴人の予備的請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨主文同旨第2事案の概要(略語等は,原則として,原判決に従う)。 本件事案は,船橋市の住民である被控訴人が,平成14年度に,船橋市立B中学校の校長Aが,同中学校の学校行事の参加者から受領した合計37万2595円の本件祝い金を市の会計に計上しないまま支出し,市に損害を与えたとして,主位的に,地方自治法242条の2第1項4号ただし書により,控訴人に対し,Aに賠償の命令をすることを,予備的に地方自治法242条の2第1項4号本文により,控訴人に対し,Aに不当利得返還の請求をすることを求めている住民訴訟である。 原審は,主位的請求を棄却し,予備的請求については,本件祝い金はB中学校に対する寄附金であり,船橋市の収入に当たるとして,本件各支出費目の性質,内容を検討し,一部の支出(合計8万3134円)を船橋市の損失に当たるとして,その限りで,控訴人に対し,Aに不当利得返還の請求をすることを認めたため,控訴人は,その敗訴部分について控訴した。 したがって,当審の審理の対象は,予備的請求に係る控訴人の敗訴部分の当否にある。 ,,「」 前提事実争点及びこれに関する当事者の主張は原判決の事実及び理由第2の1及び2に摘示されたとおりであるから,これを引用する。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,本件祝い金が船橋市の歳入に編入する意思の下に交付されたも- 2 -のとは認められず,本件祝い金を船橋市に対する寄附と認めることはできないから,船橋市との関係でAに不当利得を認めることはできず,控訴人に対してAへの不当利得返還請求を行使するよう求める本件請求も理由がない 認められず,本件祝い金を船橋市に対する寄附と認めることはできないから,船橋市との関係でAに不当利得を認めることはできず,控訴人に対してAへの不当利得返還請求を行使するよう求める本件請求も理由がない,と判断する。その理由は,次のとおりである。 (1)寄附とは,義務によらず地方自治体へ納入される収入であり,民法に定める契約では贈与の性質を有するものであり,寄附金は,当該地方自治体の収入として,これを歳入歳出予算に編入しなければならない(地方自治法210条。そして,使途が限定された寄附にあっては使途に応じた行為(負)担)が求められることから,それを受けることにつき,地方議会の議決が必要とされる(同法96条1項9号。したがって,このような寄附というた)めには,上記のような地方自治体への納入金とする意思をもって,当該財貨を提供することが必要となる。そして,このような金銭の交付を受けた公務員は,当該金員を収納,調定する権限のある者に交付すべき義務を負うものというべきである。 (2)前提事実及び証拠(乙9,乙12の1ないし15,証人Cの証言)によれば,次の事実が認められる。 ア本件祝い金は,B中学校の平成14年度の入学式,体育祭,卒業式に参加した者から,校長であるA個人に対して,交付されたものであり,一人の拠出金額の多くは3000円又は5000円であった。 イそして,本件祝い金を拠出した者の意思は,その使途を,授業,教師間の交流,その他学校運営をより適切に行うために必要な経費として支出すべきとするものであった。すなわち,B中学校の行事への参加者は,町会や商店街の役員,PTA役員のOB,医師,市の体育指導員や民生委員など,学区内に居住する地元の住民が多く,地元の子弟が通う中学校のために使用してほしいという趣旨で,同中学校の校長の職にある者 ,町会や商店街の役員,PTA役員のOB,医師,市の体育指導員や民生委員など,学区内に居住する地元の住民が多く,地元の子弟が通う中学校のために使用してほしいという趣旨で,同中学校の校長の職にある者個人に対し本件祝い金を交付したものであった。 - 3 -ウ本件祝い金の使途は上記のとおり,B中学校の学校運営に資する支出に,,限定されるが何がB中学校の学校運営に資する支出であるかについては同中学校の校長の職にある者の裁量にゆだねる趣旨であった。 (3)上記のとおり,本件祝い金を拠出した者の意思は,これを船橋市の一般会計に計上して,市の予算として市議会の承認等の手続を経て支出されるべきものとする趣旨を含むものであったということはできない。 したがって,本件祝い金をもって,船橋市への寄附金と解することはできない。なお,被控訴人が援用する浦和地判昭和53年3月6日とその控訴審である東京高判昭和55年3月31日(判時963号17頁)は,市の施設である浄水場の落成式の際に招待客が持参した市長に対する祝い金を市に対する寄附金であるから公金として処理すべきであると判断したものであるが,この事案においては,浄水場の運営は別途予算措置を講ずべきものであり,祝い金の受領主体は水道企業管理者ではあるものの当該浄水場の現実の運営に携わる者ではなく,祝い金の使途の限定はなく,祝い金の金額は昭和44年当時の39万円余であったものであり(公表されている平成19年版国民生活白書によれば,2005年を100とした1969年の消費者物価指数は,31.5程度である,B中学校の運営に資する支出との使途を予。)定し,その判断を校長職にある者の判断にゆだね,社会的にも一般儀礼の範囲内の金額をもって拠出された本件祝い金とは,招待客と市長との関係等から見て,事例を異にするも 運営に資する支出との使途を予。)定し,その判断を校長職にある者の判断にゆだね,社会的にも一般儀礼の範囲内の金額をもって拠出された本件祝い金とは,招待客と市長との関係等から見て,事例を異にするものである。 (4)以上によれば,本件祝い金の法的性質を論ずるまでもなく,本件祝い金は船橋市の公金の性質を有しないということができるが,本件事案にかんがみ,本件祝い金の法的性質を検討する。 まず,その法的性質を贈与とする場合,拠出者が船橋市への公金とする意思を有しないことからすれば,受領主体は校長の職にある個人と解することになり,当該金銭をB中学校の運営に資する使途に使用すべき負担の付され- 4 -,,た贈与と解することとなりその使途の違反は債務不履行に当たるとしても船橋市に対する不当利得となるものではない。 ,,(,)また上記の拠出者の意思校長実際にはその監督下にある教頭乙9の管理の下に,校長,教頭らの個人的な用途ではなく,学校関連の備品,事業に関連して支出がされてきた経過を直視すれば,本件祝い金は,B中学校の運営に資する使途に用いるとの目的の下に,その校長の職にある者を受託者として(校長の異動があるきは,受託者の変更を予定したものとして)金銭の使用を託した,信託類似の契約と評することが相当である。この場合,校長がこの金銭を遊興費その他の私的目的で使用すれば,受託義務違反として,拠出者に対して責任を負うことになるが,船橋市の公金を減少させたものということはできないというべきである。 なお,財貨の交付の趣旨,法的性質は贈与者の意思に関する法的判断であり,本件祝い金については,これを拠出した者の意思が船橋市の収入に納入させる意思であったと認められないことは既に説示したところであるが,仮に,本件祝い金の受領主体が船橋市職員で に関する法的判断であり,本件祝い金については,これを拠出した者の意思が船橋市の収入に納入させる意思であったと認められないことは既に説示したところであるが,仮に,本件祝い金の受領主体が船橋市職員であるB中学校の校長の職にある者であったことから,本件祝い金は,校長職にある者の裁量によりB中学校の運営に資する使途に用いるべきものとの限定の付された船橋市への贈与,寄附と解するとしても,このような贈与(寄附)は,校長職にある者の裁量によりB中学校の運営に資する使途に用いるべき歳出を組むべき旨の負担の付されたものであり,受領(収納)の議決がないかぎり拠出者に返還すべき性質のものであって,校長が拠出金を預かったことにより,直ちに船橋市の収入に帰属したものとは解されない。 (5)祝い金なる名目での総計予算主義に反する金銭の移動を認めることは,地方自治体に収納されるべき寄附金の範囲をあいまいにさせ,また,公金取扱いの慎重さを減殺し,公金収支の透明性さを損なうものであるとの被控訴人の指摘は正当なものということができる。しかし,このことから,上記認- 5 -定が左右されるものではなく,既に説示したとおり,本件祝い金を船橋市の収入に計上すべき寄附金であると認めることはできないから,地方自治法242条の2第1項4号本文により,控訴人に対し,Aに不当利得返還の請求をすることを求める本件住民訴訟は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 (6)被控訴人は,当審の弁論終結後に,平成20年5月20日付け意見書を,。 提出しているが同意見書によっても上記の判断が左右されるものではない よって,本件控訴は理由があり,被控訴人の控訴人に対する請求は理由がないから,原判決中,被控訴人の請求を認容した部分を取消し,被控訴人の予備的請求を棄却することとし 判断が左右されるものではない よって,本件控訴は理由があり,被控訴人の控訴人に対する請求は理由がないから,原判決中,被控訴人の請求を認容した部分を取消し,被控訴人の予備的請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官富越和厚裁判官設樂隆一裁判官大寄麻代(原裁判等の表示)主文 原告の主位的請求を棄却する。 原告の予備的請求に基づき,被告は,Aに対し,8万3134円及びこれに対する平成16年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支- 6 -払を請求せよ。 原告のその余の予備的請求を棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,うち1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 主位的請求被告は,Aに対し,金37万2595円及びこれに対する平成16年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償を命令せよ。 予備的請求被告は,Aに対し,金37万2595円及びこれに対する平成16年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。 第2事案の概要本件は船橋市の住民である原告が平成14年度に船橋市立B中学校以,,,(下「B中学校」という)の校長であったAは,B中学校の学校行事の参加者,。 から祝い金として受領した合計37万2595円(以下「本件祝い金」とい,う)を市の会計に計上しないまま支出し,市に損害を与えたとして,主位的。 に,地方自治法242条の2第1項4号ただし書により,被告に対し,Aに賠償の命令をすることを,予備的に,同法242条の2第1項4号本文により,被告に対し,Aに不当利得返還の請求をすることを求めている住民訴訟の事案である。 前提事実(証拠等 より,被告に対し,Aに賠償の命令をすることを,予備的に,同法242条の2第1項4号本文により,被告に対し,Aに不当利得返還の請求をすることを求めている住民訴訟の事案である。 前提事実(証拠等の記載のない事実は,当事者間に争いがないか,明らかに争わない事実である)。 (1)原告は,船橋市の住民であり,被告は,船橋市長である。 Aは,平成14年度に,B中学校の校長であり,収入役の事務を補助する現金出納員を補助する現金分任出納員であった。 - 7 -(2)船橋市教育委員会組織規則12条及び船橋市財務規則30条によると,財務課長は,船橋市立小中学校に対する寄附金を収納して調定し,収入金として徴収する権限を有しており,学校長は,法令上,寄附金を収納する権限を有していない。 (3)船橋市教育委員会は,平成15年度に祝い金の収受を廃止するまで,市立小中学校の行事の参加者が持参した祝い金を市に対する寄附金として取り扱わず,学校長が,それらの祝い金を受領して管理し,裁量により支出していた。 (4)Aは,B中学校の学校行事の参加者から,平成14年4月に入学式祝い金として9万2385円,9月14日に体育祭祝い金として18万4458円,平成15年3月11日に卒業式祝い金として9万5752円の合計37万2595円を,それぞれ受領した。 (5)Aは,本件祝い金合計37万2595円に前年度からの繰越金である15万7751円及びその他の収入4万8000円を加えた合計57万8346円を一括して管理し(以下,これを「本件祝い金等の会計」という,。)平成14年4月17日から平成16年2月16日までの間に,別表記載のとおり,備品購入の費用などに支出した(甲3の1及び2,証人C,弁論の全趣旨。 )(6)原告は,平成16年3月29日,船橋市監査委員に対し 4月17日から平成16年2月16日までの間に,別表記載のとおり,備品購入の費用などに支出した(甲3の1及び2,証人C,弁論の全趣旨。 )(6)原告は,平成16年3月29日,船橋市監査委員に対し「船橋市教育委,員会委員長は,平成14年度船橋市立B中学校における祝儀372,595円は船橋市への寄附金なので,直ちに調定して船橋市の収入にすること」。 を求める監査請求を行った。 船橋市監査委員は,平成16年5月25日,上記監査請求に理由がないとして,棄却した。 原告は,平成16年6月16日,本件訴えを起こした。 争点及びこれに関する当事者の主張- 8 -(1)主位的請求に関する争点及び当事者の主張原告は,主位的に,①本件祝い金は,B中学校に対する寄附金に当たり,②Aは,地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」に当たり,③同法242条1項の「当該行為」に当たる「違法若しくは不法な公金の支出」をしたものであり,④現金分任出納員であったから平成18年法律第53号による改正前の地方自治法243条の2第1項の「収入役の事務を補助する職員」に当たり,⑤「故意又は重大な過失」により「現金を亡失し,船橋」市に損害を負わせたから「同条3項の規定による賠償命令の対象となる者,である」として,地方自治法242条の2第1項4号ただし書により,被告に対し,Aに賠償の命令をすることを求めている。 ,,。 これに対し被告は上記①ないし⑤のいずれの点についても争っているア①本件祝い金は,B中学校に対する寄附金に当たるか。 (原告の主張)本件祝い金の提供は,児童の父母が,無償で自己の財産を「学校長としてのA」に与える意思を表示し,Aがこれを受諾して受領したものであるから「贈与」に当たる。また,Aは,本件祝い金と同様に児童の父母か,ら受領した金 は,児童の父母が,無償で自己の財産を「学校長としてのA」に与える意思を表示し,Aがこれを受諾して受領したものであるから「贈与」に当たる。また,Aは,本件祝い金と同様に児童の父母か,ら受領した金員を,校長を離れた際に新しい校長に引き継いでいた。 これらのことからすると,本件祝い金は,地方自治体の会計上「寄附,金」として扱われるものである。 (被告の主張)本件祝い金は,いずれも3000円ないし1万円と少額であり,これにより提供者の財産の実体が減少するものではなく,また受領者であるAは財産的利益を得てもいないから,この提供は「贈与」に当たらない。 提供の目的からすれば,本件祝い金は,社会的儀礼金として取り扱われるべきものであり,財務規則に定める寄附金には当たらない。学校行事の参加者は,日本の伝統的な慣習に基づき,学校行事に出席するための儀礼- 9 -的なものとして,本件祝い金を持参し,学校行事ないしはその関連行事に使用されることを意図していたのであり,Aも,この意図に沿って,すべての本件祝い金を学校運営に必要な費用に支出した。 イ②Aは,地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」に当たるか。 (原告の主張)Aは,地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」に当たる。 すべての船橋市立小中学校では,平成14年当時,校長が,父母から受領した寄附金を校長の肩書きをつけた自らが名義人である預金口座に管理し,校長が交代したときには,その管理を新しい校長に引き継ぐという取扱いをしていた。このように,各校長は,校長としての地位に基づき,現金分任出納員の業務として,本件祝い金のような寄附金を管理していたのであり,Aも,法令上,寄附金である本件祝い金を受領する権限を与えられていなかったとしても,事実上,寄附金の受領という財務会計上の行為を行う権 の業務として,本件祝い金のような寄附金を管理していたのであり,Aも,法令上,寄附金である本件祝い金を受領する権限を与えられていなかったとしても,事実上,寄附金の受領という財務会計上の行為を行う権限を与えられていたものである。 また,Aは,平成14年当時,学校職員の旅費の支給等に関し,収入役から自らの名義の通帳に振り込まれた金員を払戻し,各職員に支払う権限を有していたから,公金の支出権限も有していた。 (被告の主張)Aは,地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」には当たらない。 学校職員のうち県職員に対する給与は,県から直接各職員の口座に振り込まれるが,旅費は口座振込されないため,校長が,県職員から旅費の受領に関する事務を委任され,受領しているものである。また,就学援助費(),経済的な理由により就学が困難な児童生徒の保護者に対する補助金は市の収入役から校長名義の口座に振り込まれ,学校を経由して保護者に交付されるが,これは,保護者が校長に就学援助費の請求,受領,物品の購- 10 -入等の代金支払及び返納に関する一切の事務を委任していることによるものである。 いずれも事務上の便宜を図るための措置であり,校長が公金の支出権限を有しているとはいえない。 ウ③Aは,地方自治法242条1項の「当該行為」に当たる「違法若しくは不当な公金の支出」をしたか。 (原告の主張)Aは,B中学校に対する寄附金である本件祝い金を,財務課長に引き渡して調定させる義務があったのに,この義務を怠り,財務課長に引き渡さないまま支出したものであり,これは,すべての公金は会計に計上されなければならないとする地方自治法210条の総計予算主義に反する違法又は不当な支出である。また,Aが本件祝い金を支出した行為は,社会儀礼上,必要であったとしても,違法性が阻却され 金は会計に計上されなければならないとする地方自治法210条の総計予算主義に反する違法又は不当な支出である。また,Aが本件祝い金を支出した行為は,社会儀礼上,必要であったとしても,違法性が阻却されることはない。 (被告の主張)Aが本件祝い金を支出したことは「違法に公金の支出を行ったこと」,に当たらない。 本件祝い金は,寄附金ではないから公金ではないし,Aは,持参者の意思に沿い,すべての本件祝い金を学校管理運営のために支出したから,船橋市に財政上の損害を与えていない。 エ④Aは,平成18年法律第53号による改正前の地方自治法243条の2第1項の収入役の事務を補助する職員に当たるかまたAは故「」,,,「意又は重大な過失」により「現金を亡失し」たか。 (原告の主張)Aは,上記イのとおり,事実上,寄附金の受領権限を与えられた者であって,現金分任出納員であったから「収入役の事務を補助する職員」に,当たり,故意又は重大な過失により,違法又は不当に公金を支出し,その- 11 -保管に係る現金を亡失したものである。 (被告の主張)財務課の現金出納員である財務課長が収入役から委任を受けた事務は,入札保証金,契約保証金及び所管に係る電話料金の徴収であり,現金分任出納員であるAが財務課長から委任を受けた事務は,この財務課長が収入役から委任を受けた事務の範囲内にとどまる。そして,学校に契約事務はないから,Aは,実質的には所管に係る電話料金の徴収のみ委任され,寄附金に関する事務を委任されてはいなかったしたがってAは上記収。 ,,「入役の事務を補助する職員」に該当しない。 また,Aは,委任された事務について「故意又は過失」により,現金を亡失してはいない。 ,,。 オ⑤Aは本件祝い金を支出したことにより船橋市に損害を負わせた 役の事務を補助する職員」に該当しない。 また,Aは,委任された事務について「故意又は過失」により,現金を亡失してはいない。 ,,。 オ⑤Aは本件祝い金を支出したことにより船橋市に損害を負わせたか(原告の主張)Aは,寄附金である本件祝い金を会計に計上せず,違法又は不当な支出を行ったことにより,費消された金員について予算の収支を明らかにできなくさせ,議会や住民による監督を不能にし,船橋市に本件祝い金と同額の損害を負わせたものであり,本件祝い金の使途によって,損害が回復されることはない。公金である食糧費から飲食代を支出することができるとしても,それは,予算に計上されているからであって,本件支出とは異なる。 被告が主張する別表40以降の支出については,裏付けとなる証拠類が提出されておらず,被告の主張には疑問がある。 (被告の主張)Aは,本件祝い金を別表のとおり支出したが,これらは本件祝い金の持参者の意思に沿い,すべてをB中学校の運営に必要なことに支出したものであるから,船橋市に損害を負わせてはいない。 - 12 -(ア)備品等の購入(別表1,2,13,14,16,17,20,22ないし25,27ないし29,31ないし34,36ないし38,40ないし45,47ないし53)(原告の主張)別表1,2,16,22,24,25,27,31ないし34,36,,ないし38はいずれも不急品である学校の備品を購入したものであり不適切な支出である。仮に,これらを緊急に購入する必要があったとしても,事前に予算化しておくべきであり,緊急に必要で予算手続が間に合わなかったとしても,立替払いをし,その後に返済を受けるべきであった。 別表1の領収書は「お道具箱」となっているから個人使用の備品である。 別表13の印紙代,別表23のパソコンインク代は,いず に合わなかったとしても,立替払いをし,その後に返済を受けるべきであった。 別表1の領収書は「お道具箱」となっているから個人使用の備品である。 別表13の印紙代,別表23のパソコンインク代は,いずれも個人が支出すべきものである。 別表14,17及び20の文房具費は「教育実習期間中に必要と思,」,(,われる文具代にあてたものとのことであるが甲3の2の領収証⑬⑯,⑳)によると,これらはD社の領収証であるところ,同社による他,,「」,の領収証である<31><36>はただし書が各々画用紙・板目表紙代「ラシャ紙代」と特定されているのに対し,前記⑬,⑯,⑳は単に「文」。 ,,房具代とあいまいに表記されているしかも少額品が多い文房具で短期間に3回も金額がぴったり5000円になっており,同じ文房具店発行の領収書で,9月9日付けの領収書番号がXXX番となっているのに,10月11日付けの領収書番号がYYY番となっているのは,不自然である。これらは,本件訴訟になってから,つじつまを合わせるため作成されたものであり,信用できない。 別表28の花束及び別表29の図書券代は,退職する教師に対するせ- 13 -んべつとして購入したというものであり,不適切な支出である。 別表34は,ポリ容器のふた44個を購入したというものであるが,数が多く,不自然である。 (被告の主張),。 ,,これらはいずれも学校の備品を購入したものである別表22224,25,27,32ないし34,40,49,50は,緊急に必要であったから購入した。 別表13は,教師に専門教科外の授業をさせるため,臨時免許状の交付を受けさせるための費用を支出したものである。 別表14,17及び20の文房具費は,教育実習生の実習に必要な文房具を一式用意するため購入したものであ 師に専門教科外の授業をさせるため,臨時免許状の交付を受けさせるための費用を支出したものである。 別表14,17及び20の文房具費は,教育実習生の実習に必要な文房具を一式用意するため購入したものである。 別表16は,県の教育施策である「1000か所ミニ集会」開催にあたり,案内状の切手代として支出したものである。 別表23は,職員が私物のパソコン及びプリンターを公務で使用したが,配当予算では私物のパソコンのインクを購入することはできなかったので,本件祝い金からその購入費用を支出したものである。 別表28及び29は,年度途中で解任される講師のために購入したものである。 別表31は,年度末に生徒を表彰するためのものであるが,年度によって受賞者数が一定でなく,予算化が難しかったので,本件祝い金から支出したものである。 ,,別表41は学校図書予算では購入しにくいガイドブック等を購入し保管場所は図書室としたものである。 別表52は,卒業証書や各賞状の押印が確実にできるように購入したが,学校備品としては購入できないものである。 (イ)協議会等の費用(別表3及び11の歓送迎会費等,別表4の車代,- 14 -別表6,10及び21の生徒指導部会費,別表8の教務主任研修会費,別表15の生徒指導連絡会会費,別表18のミニ集会実行委員会費)(原告の主張)別表3,10,21は,職員の飲食代金を半額負担したものであり,別表6,8も会議の費用だけではなく,懇親会の費用も含んだものであって,別表18も,職員や父母の飲食代金を全額負担したものであり,寄附金から飲食代金を支出したことに合理性は全くない。 別表4の車代及び別表15の生徒指導連絡会会費は,いずれも個人が支出すべきものであり,不適切な支出である。 別表11は,部活指導に対する謝礼に当たり,不適切な支出である。 したことに合理性は全くない。 別表4の車代及び別表15の生徒指導連絡会会費は,いずれも個人が支出すべきものであり,不適切な支出である。 別表11は,部活指導に対する謝礼に当たり,不適切な支出である。 (被告の主張)別表3は,職員が参加した船橋市小中学校体育連盟の歓送迎会の費用の半額を補助したものである。 別表4は,非常勤講師と事前に打ち合わせをするため,学校の都合で急な日時に合わせてもらった上,学校の交通の便が良くないことから支出したものであるが,学校の都合で来てもらったので,交通費の公費支給はなかった。 別表6,10及び21は,生徒指導担当職員が参加した会議の会費の半額を補助したものである。 別表8は,教務主任が参加した教務主任会の会費5000円及び教務主任会懇親会費7000円の半額6000円を補助したものである。 別表11は,職員が参加した船橋市小中学校体育連盟の年会費の半額を補助したものである。 別表15は,生徒指導担当の教師に市の青少年補導委員を依頼していたから,青少年補導委員連絡協議会年会費を支払ったものである。 別表18は,千葉県の教育施策である「1000か所ミニ集会」を実- 15 -施するにあたり,実行委員会の会議を開いたときのお茶代である。 (ウ)茶菓子代(別表5,9,12,19,26,35,39,46)(原告の主張)いずれも飲食代であり,不適切な支出である。 (被告の主張)別表5は,学校での心電図検査の作業に従事した職員,別表9及び39は,学校が借りている畑の所有者,別表12及び46は,学校が校外学習などでバスを利用する際に私有地を借りている会社,別表19は,,,,,,学校近くの交番別表26は学校への来客用別表35は学校医にそれぞれ提供するための茶菓子を購入したものであり,いずれも適切な支出である 私有地を借りている会社,別表19は,,,,,,学校近くの交番別表26は学校への来客用別表35は学校医にそれぞれ提供するための茶菓子を購入したものであり,いずれも適切な支出である。 (エ)学年運営費(別表7)(原告の主張)これは「夜の生徒指導や休日の生徒指導などで保護者との教育相談,や家庭訪問などにおける通信費などにあてたり,学年行事などにおける予定外の経費にあてるように事前に渡した」とされているが「教育相。 ,談や家庭訪問などにおける通信費」なるものは全く意味不明である。 電話をかけるのであれば,学校の電話を使用すればよく,個別に職員に通信費を渡す必要はないし,通信費がこれほど多く必要であるとも考えられないから,学校行事に関連して支出されたものではない使途不明金である。しかも,一切,清算を予定しておらず,いわゆる「掴み金」であって,許されない支出である。 (被告の主張)生徒指導を校内で実施するときは,保護者などへの連絡に学校の電話を使うことは当然であるが,夜間はいかい,家出,無断外泊などがあったときには,夜間,休日に生徒指導が必要となり,保護者等に連絡を取- 16 -る場合にも,学校外から公衆電話や個人の携帯電話を利用するときがあるから,そのための通信費として支出したものである。 また,配当予算で対応できない緊急時など,予定外の経費にもあてるため,各学年に3万円ずつ支出した。 (オ)卒業証書代書料(別表30)(原告の主張)支出そのものが不適切である。 (被告の主張)学校の交流教室の講師に,卒業証書書きを依頼した謝金として支出したものである。 (カ)樹木剪定業務代金(別表54)(被告の主張)樹木の枝が建物壁面まで伸び,折れた枝葉が雨樋を詰まらせ,雨漏りの原因となるため,学校予算や職員の手ではやりき た謝金として支出したものである。 (カ)樹木剪定業務代金(別表54)(被告の主張)樹木の枝が建物壁面まで伸び,折れた枝葉が雨樋を詰まらせ,雨漏りの原因となるため,学校予算や職員の手ではやりきれないものについて業者に依頼したものである。 (2)予備的請求原告は,予備的に,Aが,①寄附金である本件祝い金を受領して保管していたところ,平成14年4月17日から平成16年2月16日までの間,みだりに費消し,②法律上の原因なく本件祝い金相当額の利益を不当に得て,③本件祝い金相当額の損害を船橋市に負わせたから,船橋市に対し本件祝い金相当額の不当利得返還義務を負っており,④被告には,地方自治法243条の2第1項4号の「怠る事実」があるとして,同号本文により,被告に対し,Aに不当利得返還の請求をすることを求めている。 ア①本件祝い金は,B中学校に対する寄附金に当たるか。 上記(1)アに同じ。 イ②Aは,法律上の原因なく本件祝い金相当額の利益を得たか。 - 17 -(原告の主張)Aは,船橋市の収入である本件祝い金を,平成14年4月17日から同16年2月16日までの間,みだりに費消し,本件祝い金相当額の利益を得た。 (被告の主張)Aは,祝い金の意図するところを理解し,これらをすべてB中学校の運営のために利用したから,みだりに支出したものではなく,利益を得てもいない。 ウ③Aは,船橋市に対し,損失を及ぼしたか。 上記(1)オに同じ。 エ④被告に,法242条の2第1項4号の「怠る事実」があるか。 (原告の主張)被告は,Aが不当利得を得たことを知りながら,不当利得返還請求を怠っているから「怠る事実」がある。 ,(被告の主張)Aは,不当利得を得ていないから「怠る事実」はない。 ,第3当裁判所の判断 主位的請求に対する判断(1)争点アに ,不当利得返還請求を怠っているから「怠る事実」がある。 ,(被告の主張)Aは,不当利得を得ていないから「怠る事実」はない。 ,第3当裁判所の判断 主位的請求に対する判断(1)争点アに対する判断地方自治法210条によると,総計予算主義の原則から,一会計年度における一切の収入及び支出は歳入歳出予算に編入されなければならないとされており,上記第2の1(2)のとおり船橋市教育委員会組織規則12条及び船橋市財務規則30条によると,財務課長が,船橋市立小中学校に対する寄附金を,収納して調定し収入金として徴収する権限を有しており,学校長は,寄附金を収納する権限を有していない。 本件祝い金は,学校行事の参加者が,その財産を無償で学校長であるAに- 18 -提供したものであるから,その外形からして,B中学校に対する贈与に当たることは明らかであり,会計上,B中学校に対する寄附金に当たり,受領時から船橋市の収入になったというべきである。 これに対し,被告は,①本件祝い金を提供した学校行事の来賓者は,学校運営に欠かせない人々であり,学校との信頼関係を前提に同祝い金を子どものために利用して欲しいとの意識をもって,役所というよりもむしろ学校に,,,志程度の金額を提供するものであること②本件祝い金は提供を受けた後そのすべてといってよい程,学校行事又はこれに関係する事柄に使用されていることからすれば,本件祝い金は,公金たる寄附金ではなく,学校長に対する社会的儀礼金である旨主張する。 上記①の点については,確かに,本件祝い金を提供する者は,被告主張の来賓者であることが通常であるとみられるが,その提供の意思が被告主張のとおり一律的内容であったことを認めるに足りる証拠はない。むしろ,被告主張の意思を有する場合も少なからずあり得ようが,この点は,提供者 者であることが通常であるとみられるが,その提供の意思が被告主張のとおり一律的内容であったことを認めるに足りる証拠はない。むしろ,被告主張の意思を有する場合も少なからずあり得ようが,この点は,提供者個々人により異なり,ある者は当該学校行事とその際の懇親会費用として使用してもらう趣旨であったり,他の者は,招待を受けたことに謝意を表明する趣旨を含んで,使用目的を限定せず,寄附金として自由に使用してもらってさしつかえないとする意思を抱いていたりするように,様々である可能性が否定できない。 そうすると,提供者個々人の提供金額が低額であることをしんしゃくしたとしても,本件祝い金を寄附金ではなく,学校行事を主催する学校長に対する社会的儀礼金であると認めるのは困難である。 次に上記②の点についてみると,本件祝い金を受領後にその金員をいかなる目的に使用しているかは同祝い金の性格を左右するものではなく,同祝い金の受領時においてその性格は決定されるべきものであるから,この点についての被告の主張は理由がない。 - 19 -以上によれば,本件祝い金は船橋市の収入である寄附金であるといわざるを得ず,この点に関する被告の主張は採用することができない。 (2)争点エに対する判断地方自治法243条の2は,同条1項所定の職員の,職務の特殊性に鑑みて,同項所定の行為に起因する当該地方公共団体の損害に対する当該職員の賠償責任に関しては,民法上の債務不履行又は不法行為による損害賠償責任よりも責任発生の要件及び責任の範囲を限定して,これら職員がその職務を行うにあたり萎縮し消極的となることなく,積極的に職務を遂行することができるよう配慮するとともに,当該職員の行為により地方公共団体が損害を被った場合には,簡便,かつ,迅速にその損害の補てんが図られるように,当該地方公共団体を ることなく,積極的に職務を遂行することができるよう配慮するとともに,当該職員の行為により地方公共団体が損害を被った場合には,簡便,かつ,迅速にその損害の補てんが図られるように,当該地方公共団体を統轄する長に対し,賠償命令の権限を付与したものである。そうすると,上記改正前の地方自治法243条の2第1項の「出納長若しくは収入役の事務を補助する職員」とは,副出納長又は副収入役のほか,地方自治法171条1項の規定により置かれる出納員その他の会計職員をいい,宿日直中の職員,出納員その他の会計職員でない滞納整理に当たる職員など,長の補助職員で,単に事実上出納長又は収入役の事務を補助執行している職員は含まれないというべきである。 Aは,地方自治法171条1項及び4項並びに船橋市財務規則135条により,平成14年度の現金出納員を補助する現金分任出納員に任じられていた者であるから「収入役の事務を補助する職員」に当たる。 ,他方において,上記地方自治法243条の2の趣旨に照らすと,同条1項の「その保管に係る現金」とは,法令の規定により保管し又は使用するものに限られ,事実上保管又は使用するものは含まれないというべきである。 Aは,現金分任出納員として,財務課の現金出納員である財務課長から事務の委任を受けていたが,その事務は財務課長が収入役から委任を受けた入札保証金,契約保証金及び所管に係る電話料金の徴収の事務にとどまってい- 20 -た。そして,学校に契約事務はないから,Aは,実際には所管に係る電話料金の徴収のみ委任されていたものであり,寄附金に関する事務及び本件祝い金の支出に関する事務は委任されていなかったものである。 そうすると,Aは,本件祝い金を法令の規定により保管し又は使用していたものではなく,事実上保管又は使用していたにすぎないから「その保管 件祝い金の支出に関する事務は委任されていなかったものである。 そうすると,Aは,本件祝い金を法令の規定により保管し又は使用していたものではなく,事実上保管又は使用していたにすぎないから「その保管,に係る現金」を「亡失し」たとは認められない。 よって,Aは,地方自治法242条の2第1項4号ただし書の「同条3項に基づく賠償命令の対象となる者」には当たらないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の主位的請求には理由がない。 予備的請求に対する判断(1)争点アに対する判断上記1(1)のとおり,本件祝い金は,B中学校に対する寄附金であり,船橋市の収入に当たる。 (2)争点イに対する判断上記1(1)のとおり,本件祝い金は,当然に船橋市の財産として同市に帰属すべき金員であるから,民法703条に規定する「他人の財産」に当たるものと認められる。 そして,Aは,上記第2の1(5)のとおり,本件祝い金等の会計として,本件祝い金を含む金員を裁量により支出できる金員として一括して管理し,それらすべてを支出したものである。 そうすると,原告が主張するとおり,Aは,船橋市の財産である本件祝い金を支出に充てたことにより,本来それらの支出に充てるべき自己の財産の減少を免れ,本件祝い金相当額の消極的財産の増加を得たものとみることができるから,Aは,法律上の原因なく,船橋市の財産である本件祝い金から本件祝い金相当額の利益を受けたものと認められる。 (3)争点ウに対する判断- 21 -アまず,上記第2の1(5)のとおり,本件祝い金等の会計は,本件祝い金とその他の金員とが混和したものであるところ,その他の金員からの支出分は本件不当利得返還請求の対象とはされていないのみならず,その他の金員の法的性格については,何ら主張立証がされていないから,その他の その他の金員とが混和したものであるところ,その他の金員からの支出分は本件不当利得返還請求の対象とはされていないのみならず,その他の金員の法的性格については,何ら主張立証がされていないから,その他の金員の支出について不当利得返還請求権の発生を問題とする余地がない。 そうすると,船橋市の損失は,原則として本件祝い金の支出分に限定されるべきところ,本件祝い金等の会計に含まれる本件祝い金とその他の金員のうち,いずれの金員から別表記載の各支出がされたかを特定することは不可能である。したがって,本件祝い金から別表記載の各支出に支出された金額を算定するに当たっては,公平の観点から,その他の金員と案分比例した割合で支出されたものとして計算するのが相当であり,その計算結果は,別表記載のとおりである。 ,,,イ次に上記アのとおり本件祝い金による支出分が限定されるとしても支出費目の性質の内容等に照らせば,その支出によりB中学校が財産上の利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしたと認められるようなものについては,たとえ公金支出に係る諸手続が講じられていないとしても,船橋市に実質的損失は発生していないというべきである。なぜなら,そのような支出に該当するような場合は,本件祝い金を提供した者の総意に適うものであり,支出が実質的には正当視され,本質的に不当利得制度の基礎にある正義,公平の観念に反することはないというべきだからである。しかしながら,このような場合に当たるかどうかの判断は,客観的見地から慎重に行われるべきであり,いやしくも支出者であるAにおいて,自己がB中学校の運営に資すると考えた支出分についても,それが本件当時の社会通念に照らし,一般的に首肯されるものでない限り,安易に船橋市の損失から除外すべきではないというべきである。 そこで,こ て,自己がB中学校の運営に資すると考えた支出分についても,それが本件当時の社会通念に照らし,一般的に首肯されるものでない限り,安易に船橋市の損失から除外すべきではないというべきである。 そこで,このような観点に立って,次に本件各支出費目の性質・内容等- 22 -について検討する。 (ア)備品の購入まず,別表2,16,22,24,25,27,32,33,36ないし38,40,42ないし45,47ないし51,53の備品についてみると,証人Cの証言及び弁論の全趣旨によれば,いずれも学校の備,,,,,,,品を購入したものでありこのうち別表2 32,33,40,49,50は緊急に必要であったこと,予算の限度があるとはいえ,これらを予算により購入すること自体は可能であったことが認められる。 次に,原告は,別表1について,個人が使用するためのものであったと主張しており,確かに甲3の2の領収書(①番)をみると,スーパーマーケットで購入したことが認められ,その可能性もあながち否定できない。しかし,それ以外に個人的使用を窺わせる証拠がない一方,証人Cは,コンビニエンスストアー等で本件祝い金等の中から物品を購入したこともあると証言しているのみならず,別表1の購入については甲3の2の帳簿に記載があり,被告準備書面(10)の別紙に購入の具体的必要性が記載されていることが弁論の全趣旨より明らかであることから,別表1の支出は備品の購入であったと認めるのが相当である。さらに,別表14,17及び20の文房具代に関する甲3の2の領収書は,領収書番号と作成日付の記載等の関係から,本件訴訟に合わせて作成されたものである疑いもあるが,甲3の2の帳簿に記載があり,別表34についても,ポリ容器のふた44個を購入したことを裏付ける甲3 書は,領収書番号と作成日付の記載等の関係から,本件訴訟に合わせて作成されたものである疑いもあるが,甲3の2の帳簿に記載があり,別表34についても,ポリ容器のふた44個を購入したことを裏付ける甲3の2の帳簿及び領収書の記載があることからすると,これらについては,そのような支出がされたものと認めるのが相当である。 そして,これらの備品を購入するための費用は,本件祝い金から支出されなければ,B中学校が予算の限度内で支出することのできたもので- 23 -あるから,これらの備品購入により,購入にかかった費用相当額の財産上の利益を得たものと認められる。確かに,原告が主張するとおり,これらの支出は,立替払いをした後に清算することができたとしても,そのような手続がとられていなかったからといって,B中学校が利益を得たことに変わりはない。 また,別表41及び52は,被告の主張によっても,学校の備品としては購入することができなかったものであるというのであるが,B中学校において,備品として現に使用されている(弁論の全趣旨)ものである。そうすると,B中学校が,予算からこれらの費用を支出することができなかったとしても,本件祝い金からこれらの支出がされたことにより,支出額相当額の財産上の利益を得たものと認められる。 他方,別表13,23,28,29,31は,証人Cの証言及び弁論の全趣旨によると,いずれもB中学校が予算から支出することはできないものである上,当該支出により直接利益を受ける個人等が支出するべきものであったことが認められるから,B中学校が財産上の利益を得たとは認められない。したがって,これらの支出については,B中学校が利益を得,支出を免れたことによって利得をしたとはいえないから,Aは,船橋市にこれらの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められ とは認められない。したがって,これらの支出については,B中学校が利益を得,支出を免れたことによって利得をしたとはいえないから,Aは,船橋市にこれらの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 (イ)協議会等の費用弁論の全趣旨及び甲3の2の領収書等によると,別表3,6,8,10,11,18,21は,会合後の懇親会等の費用を補助したものであり,別表4も,交通費の公費支給がないのに,これを支出したことが認められるから,別表15も含め,いずれも当該支出により支出を免れた個人が負担するべきものであったものといえる。 確かに,被告の主張するとおり,Aは,学校の運営上必要な費用であ- 24 -るとして,これらの費用を支出したものであり,飲食費についても,そのことから一概に公金から支出することが許されないともいえない。しかしながら,食糧費として予算に計上されなければ,そこから飲食費を支出することはできないのであり,本件祝い金から支出されなければ,食糧費等の予算から支出されたと認めるに足りる証拠もない。 したがって,本件祝い金からこれらの費用が支出されたことにより,B中学校が財産上の利益を得,支出を免れたことによって利得をしたとはいえないから,Aは船橋市にこれらの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 (ウ)茶菓子代上記(イ)と同様に,Aは,学校の運営上必要な費用であるとして,これらの費用を支出したものであり,飲食費についても,そのことから一概に公金から支出することが許されないともいえないが,本件祝い金か,,らこれらの費用が支出されたことによりB中学校が財産上の利益を得支出を免れたことによって利得をしたとはいえないから,Aは船橋市にこれらの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 (エ)学年運営費これは, 出されたことによりB中学校が財産上の利益を得支出を免れたことによって利得をしたとはいえないから,Aは船橋市にこれらの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 (エ)学年運営費これは,使途を定めずに支出され,清算もされず,B中学校が本件祝い金の性質を有する金員を提供者から受け取らなくなった現在,自己負担になっていること(証人C)からすれば,本件祝い金からこれらの費用が支出されたことにより,B中学校が財産上の利益を得,支出を免れたことによって利得をしたとはいえないから,Aは船橋市にこの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 (オ)卒業証書代書料これについても,B中学校が,予算から支出することができたと認めるに足りる証拠はなく,財産上の利益を得,支出を免れたことによって- 25 -利得をしたとはいえないから,Aは船橋市にこの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 (カ)樹木剪定業務代金これは学校予算ではまかない切れないものについて支出したものであるというのであるが,B中学校は,この支出の対価として労務の提供を受けており,これは財産上の利益に当たるから,Aは,船橋市にこの支出に相当する額の損失を及ぼしたとは認められない。 以上のことからすると,Aは,別表3ないし13,15,18,19,21,23,26,28ないし31,35,39,46の支出により,船橋市に対し,これらの支出に相当する額の損失を及ぼしたものと認められる。 ウAが,船橋市に対し損失を及ぼしたものと認められる上記イの各支出のうち,本件祝い金から支出された金額(別表の「(5)からの支出」欄中,これらの支出に対応する金額)を別表に基づいて計算すると,その合計は8万3134円となる。 したがって,Aは,船橋市に対し,本件祝い金を支出したことに 支出された金額(別表の「(5)からの支出」欄中,これらの支出に対応する金額)を別表に基づいて計算すると,その合計は8万3134円となる。 したがって,Aは,船橋市に対し,本件祝い金を支出したことにより,合計8万3134円の損失を及ぼしたものと認められる。 これらの事情からすると,Aは,本件で,船橋市に対し,同額の不当利得返還義務を負うものと認められる。 (4)争点エに対する判断地方自治法240条2項によると,普通地方公共団体の長は,債権について,政令の定めるところにより,その督促,強制執行その他その保全及び取り立てに関し必要な措置を採らなければならず,地方自治法施行令171条等がその具体的手続を定めている。 そうすると,普通地方公共団体の長が,地方自治体の有する金銭債権の請求を怠ることは,特段の事情がない限り,上記各規定に反して違法であり,本件で,被告が,Aに不当利得返還の請求を怠ることに,特段の事情がある- 26 -と認めるに足りる証拠はない。 よって,被告には,地方自治法242条の2第1項4号の違法な「怠る事実」があると認められる。 結論 以上によれば,原告の主位的請求は理由がないから棄却し,予備的請求は主文2項の限度で理由があるから認容し,その余の予備的請求については理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第3部裁判長裁判官堀内明裁判官上田哲裁判官西田昌吾

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