主文 1 原告の訴えのうち,原告が,被告の環境森林部,清掃工場の技術員の地位を有することの確認を求める部分(後記第1請求1(1))を却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 (選択的請求)(1) 原告が,被告の環境森林部,清掃工場の技術員の地位を有することを確認する。 (2) 被告が平成19年10月31日にした原告を免職するとの懲戒処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,150万円及びこれに対する平成20年4月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告が,平成19年10月31日,当時,被告の清掃工場の技術員であった原告に対し,原告が平成19年9月6日午前4時30分ころ宮崎県都城市内で酒気帯び運転をした(以下「本件酒気帯び運転」という。)ことを理由に,地方公務員法(以下「地公法」という。)29条1項1号及び3号により懲戒免職処分(以下「本件処分」という。)を行ったという事実関係の下で,原告が,本件処分が法令に基づかない違法なものである,裁量を逸脱している違法なものであるなどとして,被告に対し,労働契約上の地位の確認又は本件処分の取消しを選択的に求めるとともに,本件処分等により精神的苦痛を被ったとして国家賠償法1条1項に基づき損害賠償150万円(慰謝料100万円及び弁護士費用50万円)及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成 20年4月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 基本的事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実。なお,認定に用いた証拠等は括弧内で個別に掲げる。) まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 基本的事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実。なお,認定に用いた証拠等は括弧内で個別に掲げる。)(1) 原告の地位等原告は,平成10年4月,地公法57条の単純な労務に雇用される者(以下「現業職員」という。)として被告に採用され,平成18年7月から,被告の環境森林部の清掃工場に技術員として勤務していた。(甲2,甲8,乙40・23頁,弁論の全趣旨)(2) 原告の酒気帯び運転等ア原告は,平成19年9月6日午前零時30分ころから同日午前4時ころまでの間,宮崎県都城市α町内の飲食店において焼酎(ロック)を6杯程度飲んで,帰宅のため軽四輪乗用自動車(宮崎○○ほ○○○○)を運転中,同日午前4時30分ころ,同市<以下略>付近道路において,警察官から職務質問を受け,飲酒検知の結果,呼気1リットルにつき約0.35ミリグラムのアルコールを身体に保有する状態にあったことが判明した(本件酒気帯び運転)。(甲2,乙26,乙40・17頁,乙41,証人A・21項,原告本人・5,9,81,93ないし95項)イ原告は,同年10月22日,道路交通法違反(酒気帯び運転)により都城簡易裁判所に略式命令請求され,同裁判所から罰金20万円に処する旨の略式命令を受けた。(甲2)(3) 原告に対する本件処分被告は,平成19年10月31日,原告が本件酒気帯び運転により略式命令を受けるなどしたことは,被告の名誉をはなはだしく毀損させ,全体の奉仕者である公務員としての信用を著しく失墜させる非違行為であるなどとして,地公法29条1項1号及び3号に基づき,原告を免職する旨の懲戒処分 をし(本件処分),原告に対し,辞令及び懲戒処 の奉仕者である公務員としての信用を著しく失墜させる非違行為であるなどとして,地公法29条1項1号及び3号に基づき,原告を免職する旨の懲戒処分 をし(本件処分),原告に対し,辞令及び懲戒処分説明書(甲1,以下「本件説明書」という。)を交付して本件処分を告知した。(甲1,弁論の全趣旨) 2 争点(1) 本件処分の違法性ア本件処分に根拠がないか。 イ本件処分の懲戒事由がないか。 ウ本件処分は,裁量を逸脱する違法なものか。 エ本件処分は,手続上の瑕疵がある違法なものか。 (2) 本件処分に関し被告市長に違法行為があったか。 (3) 原告の損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)ア(本件処分の根拠)(原告の主張)本件処分は,根拠のない違法なものである。 現業職員の労働関係については,就業規則に関する労働基準法(以下「労基法」という。)の規定が適用されるから,地公法29条の適用はない。労基法によれば,使用者である被告は,同法89条,90条所定の手続に従って懲戒の種類及び程度に関する事項を就業規則に定め,その適用を受ける労働者である原告にこれを周知(同法106条1項)する手続をとっていなければ,労働者を懲戒することはできない。しかるに,被告は,就業規則に解雇及び懲戒に関する定めがないにもかかわらず本件処分を行った。 (被告の主張)原告の主張は争う。本件処分は,地公法29条に基づくもので適法である。 (2) 争点(1)イ(懲戒事由の該当性) (原告の主張)本件酒気帯び運転は,本件処分における懲戒事由に該当しない。 ア本件酒気帯び運転は,地公法29条1項1号の法令違反行為には当たらない。 被告は,本件酒気帯び運転が地公法33条に違反する信用失墜行為に当 び運転は,本件処分における懲戒事由に該当しない。 ア本件酒気帯び運転は,地公法29条1項1号の法令違反行為には当たらない。 被告は,本件酒気帯び運転が地公法33条に違反する信用失墜行為に当たると主張するが,服務外の行為である本件酒気帯び運転に対し,服務規律である同条を処分の根拠とすることはできない。 また,被告は,本件酒気帯び運転が上司の職務命令違反行為(地公法32条)に当たるとも主張するが,被告市長は,職員に対し飲酒運転の撲滅を呼びかけていたにとどまり,これを職務命令として発したことはないから,地公法32条は処分の根拠とはならない。 イ本件酒気帯び運転は,地公法29条1項3号の非違行為には当たらない。 原告が役職を有しない現業職員にすぎず,交通事故を起こしたわけでもないことから,本件酒気帯び運転が全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であるとはいえない。 (被告の主張)争う。 近時,飲酒運転が大きな社会問題となり,厳罰化が行われたことに照らせば,酒気帯び運転が,役職に関係なく公務員の信用を著しく失墜させる行為(地公法33条,29条1項1号)であり,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行(同項3号)であることは明らかである。 また,本件酒気帯び運転は,職員の飲酒運転を禁止する被告市長の呼びかけに反するものであるから,上司の職務命令に違反する行為(同法32条,29条1項1号)にも当たる。 (3) 争点(1)ウ(裁量逸脱の有無) (原告の主張)本件処分は,裁量を逸脱しており,違法である。 ア免職処分については,他の懲戒処分と比較してより厳格な妥当性及び相当性(いわゆる比例原則)が要求されること,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の改正により義務付け訴訟の規定が新設され,裁判所に 職処分については,他の懲戒処分と比較してより厳格な妥当性及び相当性(いわゆる比例原則)が要求されること,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の改正により義務付け訴訟の規定が新設され,裁判所による積極的な行政判断が正当化されたこと,現業職員に対する懲戒免職処分は団体交渉及び労働協約の対象とされ,その性質は,他の公務員に対するものと異なり,通常の雇用契約関係における懲戒解雇に近いものと解されることなどに照らすと,本件処分において,その内容が客観的に社会観念上妥当を欠くのであれば,その程度が著しくなくても,裁量を逸脱した違法なものと判断されるべきである。 イ被告が定めた懲戒処分の指針の妥当性について被告が定めた懲戒処分の指針(甲3,乙2,以下「本件指針」という。)は,職員が行った修正等について被告市長の決裁を得ないまま作成されたものであり,酒気帯び運転とこれより刑事罰の重い酒酔い運転とを等しく免職又は停職とし,あるいは,措置義務違反をした場合に停職より軽い処分を設けるなど,比例原則に照らして不合理な内容を含んでいることから,懲戒基準たり得ない。 ウ本件指針の適用について本件指針に基づき,本件酒気帯び運転のみを理由に原告を免職するとした本件処分は著しく不当である。すなわち,本件指針の文理上は,本件酒気帯び運転は,停職,減給又は戒告とされる「交通法規違反」に該当するにすぎない。また,本件指針によれば,飲酒運転で人身事故を伴わないものは停職又は免職ともされているが,その類型を説明する部分においては,飲酒運転に加え,物損事故を起こし,かつ措置義務違反をした場合に免職とするとだけ記載されており,事故も起こさずに検挙されただけで免 職するとは記載されていない。 人事院が定める「懲戒処分の指針」においては,職員が自ら ,かつ措置義務違反をした場合に免職とするとだけ記載されており,事故も起こさずに検挙されただけで免 職するとは記載されていない。 人事院が定める「懲戒処分の指針」においては,職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たときには処分を軽減できることが定められているところ,原告は,本件酒気帯び運転を自主的に申告している。 宮崎県内の公務員に対する懲戒処分を見ても,本件酒気帯び運転と同等かこれより重い非違行為に対し停職又はこれより軽い処分にとどめた事例が複数ある。 (被告の主張)原告の主張は否認ないし争う。本件処分は,本件指針の内容,策定の経緯,本件酒気帯び運転の態様等からみて,適正,妥当なものである。 ア公務員に対する懲戒処分が違法であるか否かは,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきである。 イ本件指針の相当性について本件指針は,その内容,策定の経緯等から,適正,妥当である。 近時,悪質なドライバーに対する刑事罰の軽さが社会問題化し,飲酒運転に対する厳罰化が進められたにもかかわらず,平成18年8月25日,福岡市の職員が飲酒運転により悲惨な死亡事故を起こし,多大な社会的批判を受けたことから,同市や他の地方公共団体,企業の多くが飲酒運転に対する懲戒処分を免職とする旨改めたことは周知のとおりである。被告においても,その後なお職員による飲酒運転が発覚し,関係者から失望の声が上がるなどしたことから,同年10月20日,被告市長において,本件指針のうち飲酒運転に対する処分を同日から停職又は免職に改め,その旨内外に公表し,その後も,原告を含む被告の職員に対し,繰り返し飲酒運転をしないよう呼びかけるとともに, 0日,被告市長において,本件指針のうち飲酒運転に対する処分を同日から停職又は免職に改め,その旨内外に公表し,その後も,原告を含む被告の職員に対し,繰り返し飲酒運転をしないよう呼びかけるとともに,他の地方公共団体に先駆けて,運転記録証明書を提出させ,被告の職員においても,飲酒運転撲滅宣言を行 い,原告自身もこれに賛同して宣言文に署名した。なお,本件指針において飲酒運転に対する処分に免職のほか停職処分を設けたのは,飲酒後家族の急病により運転を余儀なくされた場合等,なお同情の余地のある事例も想定されたからにすぎない。 ウ本件指針の適用の相当性について本件酒気帯び運転は,被告の飲酒運転撲滅に向けた努力を水泡に帰せしめ,被告の職員の落胆,失望,関係者からの批判を招く行為であったばかりでなく,飲酒した飲食店の近くまで自車で赴いていたことから意図的なものと評価されてもやむを得ないものであり,代行運転を依頼し,あるいは約2.6キロメートルしか離れていない自宅まで徒歩で帰宅するなどの努力をしたとは考え難いこと,原告の呼気から検出されたアルコールの量が呼気1リットルにつき約0.35ミリグラムであり,政令で定める0. 15ミリグラムを大きく上回るものであったことから,その態様は悪質なものといわざるを得ないものであった。また,被告との団体交渉(地方公営企業等の労働関係に関する法律(以下「地公労法」という。)7条参照)又は苦情処理共同調整会議(同法13条参照)の設置要請を通じて原告を救済し得る立場にある被告の市役所職員労働組合現業評議会も,本件処分はやむを得ないとの意見を示していた。 原告が指摘する停職処分の事例は,当該地方公共団体において酒気帯び運転を免職とする懲戒指針が定められていなかった当時のものであり,その後,当該地方公共団体 やむを得ないとの意見を示していた。 原告が指摘する停職処分の事例は,当該地方公共団体において酒気帯び運転を免職とする懲戒指針が定められていなかった当時のものであり,その後,当該地方公共団体において酒気帯び運転を免職又は停職とする旨懲戒指針が改められ,現に酒気帯び運転をした職員を免職処分とした事例もあるから,原告の主張は当たらない。 むしろ,酒気帯び運転をした職員を免職処分にした事例は他の地方公共団体においてもみられるところであり,他の事例と比較しても,本件処分が著しく均衡を欠いた不当なものということはできない。 (4) 争点(1)エ(手続上の瑕疵)(原告の主張)本件処分は,手続上の瑕疵があり,違法である。 ア懲戒事由たる事実の誤認被告は,本件酒気帯び運転について,酒酔い運転で判決を受けた旨事実を誤認し,本件処分を行った。 イ理由不備被告は,本件処分の根拠規定として地公法29条1項1号を掲げるにとどまり,同号に掲げられた法令のいずれに違反したかを具体的に明示していない。 ウ不十分な告知・聴聞被告は,原告から1回しか事情聴取をせず,原告が受けた刑事処分の内容を確認しないまま本件処分を行った。原告は,本件酒気帯び運転及び本件処分に関し,弁解の機会を与えられていない。 (被告の主張)原告の主張は否認ないし争う。 ア懲戒事由たる事実の誤認に対して被告は,原告が本件酒気帯び運転により検挙されたことは認識し,その上で,本件処分を行っている。本件説明書に「酒酔い運転」と記載したのは,単なる誤記である。 イ理由不備に対して被告は,本件説明書において,本件酒気帯び運転が地公法29条1項1号及び3号の非違行為に該当すること,上司である市長の職務命令に違反し(地 したのは,単なる誤記である。 イ理由不備に対して被告は,本件説明書において,本件酒気帯び運転が地公法29条1項1号及び3号の非違行為に該当すること,上司である市長の職務命令に違反し(地公法32条),被告の信用を傷つけるとともに,被告にとって不名誉となる行為(同法33条)であることを特定し,明示している。 ウ不十分な告知・聴聞に対して 争う。 (5) 争点(2)(被告市長の違法行為)(原告の主張)本件処分に関し被告市長がした以下の行為は,違法である。 ア被告市長は,しかるべき調査を経ることなく,比例原則等の見地から不当といわざるを得ない懲戒指針(本件指針)を定め,現業職員に対する懲戒,免職については労働組合との間で団体交渉を行い,就業規則に記載しなければならないにもかかわらず,これを怠っていた。 イ被告市長は,前記(1)ないし(4)のとおり違法な本件処分を行った。 (被告の主張)原告の主張は争う。 (6) 争点(3)(原告の損害)(原告の主張)原告は,本件処分により職務を失うという重大な危機に立たされるとともに,名誉を毀損され,重大な精神的苦痛を被ったところ,これに対する慰謝料は100万円とするのが相当である。 また,本件訴訟の弁護士費用も本件処分と相当因果関係を有する損害であり,その額は50万円とするのが相当である。 (被告の主張)原告の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の判断現業職員とその使用者である地方公共団体との関係のうち,職員の意に反すると認められる不利益処分に関しては,地公法は,人事委員会又は公平委員会に対してのみ行政不服審査法による不服申立てをすることができ(地公法49条の2),当該不服申立てを経た後でなければ,当該不 反すると認められる不利益処分に関しては,地公法は,人事委員会又は公平委員会に対してのみ行政不服審査法による不服申立てをすることができ(地公法49条の2),当該不服申立てを経た後でなければ,当該不利益処分の取消しの訴 えを提起することができない(同法51条の2)と定め,現業職員に対し,その適用を除外していない(地方公営企業法(以下「地公業法」という。)39条1項参照)。 そうすると,現業職員に対する懲戒処分は,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行訴法3条2項)に当たり,本件処分が違法,無効であることを前提に救済を図るに当たっては,行訴法所定の抗告訴訟によりその処分の取消しを求めるべきであって,これとは別に,原告が被告の職員(技術員)の地位を有することの確認を求める部分は,訴えの利益を欠き違法であるといわざるを得ない。 なお,現業職員の不利益処分に関し,行政不服審査法による不服申立てをすることはできないとされているが(地公業法39条1項),上記懲戒処分の性質を否定していると解すべきものとはいえない。 よって,原告の訴えのうち上記部分(前記第1の1(1))は,却下を免れない。 2 争点(1)ア(本件処分の根拠)について(1) 地方公務員においては,地公法29条1項が懲戒処分について定めており,現業職員である原告においても,同条項が適用除外とされていないのであるから,懲戒処分にあたっては,これに基づいて処分がされる必要があり,かつそれで足りるというべきである。 被告は,地公法29条1項1号及び3号により,本件処分を行っているのであり,本件処分が根拠を欠く違法なものはいえない。 (2) 原告は,地方公務員においても労基法が適用されるのであり,地公法29条は適用が排除される旨主張する。 しかし,地 分を行っているのであり,本件処分が根拠を欠く違法なものはいえない。 (2) 原告は,地方公務員においても労基法が適用されるのであり,地公法29条は適用が排除される旨主張する。 しかし,地公法は,地方公務員の特殊性に鑑み,労基法の一部の条項について除外規定を設けているのであり(地公法58条),当然に労基法の適用があるとの主張は採用しがたい。そして,地公労法は,附則5条において, 単純な労務に雇用される者の労働関係その他身分取扱については特別の法律が制定施行されるまでの間は地公業法39条を準用する旨規定しているけれども,同条1項により適用を受ける労基法89条以下の規定によって地公法29条が排除されるものとは解しがたい。すなわち,地公労法附則5条は,地公法29条に関する「第57条に規定する特例を定めた法律」が定められるまでの間は,就業規則に定められた事由をもって懲戒処分等ができるものというに過ぎず,地公法29条を前提とするものであって,同条を排除するものとはいえないのである。 3 争点(1)イ(懲戒事由の該当性)(1) 本件処分は,本件説明書のとおり,地公法29条1項1号及び3号の規定に基づき行われたものであるところ,本件酒気帯び運転が,地公法29条1項1号及び3号に該当するかをみると,一般に,公務員は法令を遵守すべきであってその違反行為により公務員の職全体の名誉が害され得るが,証拠によれば,被告の職員が平成18年11月1日に飲酒運転撲滅宣言を行い(乙24),本件酒気帯び運転の5日前である平成19年9月1日には同月19日から飲酒運転に関連する罰則が強化されることが新聞で報道され(乙4),原告が本件酒気帯び運転に及んだ前後において地方公務員による酒気帯び運転が新聞報道される(甲5,乙15,乙36,乙37)などの社会 から飲酒運転に関連する罰則が強化されることが新聞で報道され(乙4),原告が本件酒気帯び運転に及んだ前後において地方公務員による酒気帯び運転が新聞報道される(甲5,乙15,乙36,乙37)などの社会情勢の下,本件酒気帯び運転も新聞報道されたこと(乙29)が認められ,酒気帯び運転の危険性,すなわち重大かつ悲惨な人身事故を引き起こす危険性があることに照らすと,酒気帯び運転は,社会通念上,地方公務員の職全体の不名誉となる行為(地公法33条)であり,また,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行(地公法29条1項3号)に該当するということができる。 (2) なお,被告は,本件酒気帯び運転が職務命令にも違反していると主張するが,被告市長を含めた原告の上司が,原告の職務について,通達又は口頭 により職務外における飲酒運転を禁ずる職務命令を発したと認めるに足りる証拠はなく,本件酒気帯び運転が,地公法32条に違反する行為ということはできない。 (3) 原告は,本件酒気帯び運転は,私的な行為であって,現業職員である原告の立場からすれば,地公法29条1項1号及び3号の規定する行為には該当しないと主張する。 しかしながら,私生活上の行為であるからといって公務員に対する信用と無関係であるとはいうことはできず,上記(1)の事実経過を踏まえると,本件酒気帯び運転が公務員の信用を失墜させるものというのが相当であり,また,原告が現業職員であるからといってそれが妨げられるものとはいえない。 4 争点(1)ウ(裁量逸脱の有無)について(1) 地方公務員に地公法所定の懲戒事由がある場合において,懲戒処分を行うか否か,懲戒処分を行う場合にいかなる懲戒処分を選択するかは,懲戒権者の裁量に任されており,懲戒権者が裁量権の行使として行った懲戒処分は,それが社 法所定の懲戒事由がある場合において,懲戒処分を行うか否か,懲戒処分を行う場合にいかなる懲戒処分を選択するかは,懲戒権者の裁量に任されており,懲戒権者が裁量権の行使として行った懲戒処分は,それが社会観念上著しく相当性を欠き,裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り,違法であると判断すべきものである(最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁,最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁参照)。 原告は,本件において上記解釈は妥当しない旨主張するが,独自の見解であり,採用できない。 (2) そこで,上記基準によって本件処分が違法であるかをみるに,本件処分は本件指針を基準として行ったというのであるから,まず,本件指針が基準となりうるかを検討することとする。 ア前記基本的事実(第2の1)の他,証拠によれば,以下の事実経過が認められる。 (ア) 近時,飲酒運転による悲惨な交通事故が相次ぎ,社会問題化したことから,危険運転致死傷罪(刑法208条の2)を新設する内容の改正刑法(平成13年法律第138号),刑法211条2項を自動車運転過失致死傷罪に改める内容の改正刑法(平成19年法律第54号),酒気帯び運転の法定刑を引き上げる内容の改正道路交通法(平成19年法律第90号)が施行された。(当裁判所に顕著)(イ) 被告においても,平成18年9月1日,飲酒運転及びこれに伴う交通事故に関する法令上の責任が重大であることなどを説明する冊子(乙10)を作成し,被告市長は,同年10月2日,飲酒運転に対して厳しい処分をもって臨む旨の訓話を行った。(乙10,乙11,乙40・3ないし5,7頁)(ウ) 被告市長は,同月13日被告の職員が酒気帯び運転に及んだことを受けて,飲酒運転に対する 酒運転に対して厳しい処分をもって臨む旨の訓話を行った。(乙10,乙11,乙40・3ないし5,7頁)(ウ) 被告市長は,同月13日被告の職員が酒気帯び運転に及んだことを受けて,飲酒運転に対する懲罰を強化することによって職員の飲酒運転を抑止することとし,同月19日,本件指針のうち,酒酔い運転又は酒気帯び運転をした職員に対する処分を免職又は停職に改める旨決裁し,同月20日,その旨の本件指針の改正を行った。(乙13,乙15,乙40・7ないし11頁,乙42・2頁,証人A・32ないし49項)その際,当初,免職のみが規定されたが,十分な休憩をとったにもかかわらずアルコールが検知されるなどの事案もあることを想定し,情状酌量の余地がある場合の処分として,停職も規定することとされた。 (エ) 原告を含む被告の職員は,同年11月1日,飲酒運転撲滅宣言を行い,被告市長は,同月6日,被告の職員に対し,飲酒運転がもらたす結果,自他に与える影響の重大性を訴えるとともに,飲酒運転の撲滅を誓うよう求める内容の訓話を行った。(乙12,乙24)また,被告の総務部長は,被告の職員に対し,同月17日,自発的に平成18年1月1日以降の運転記録証明書を提出するよう求める通達を 発した。(乙25)イ上記認定事実によれば,本件指針は,社会観念上著しく相当性を欠くとか,裁量権の範囲を逸脱したものということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ原告は,本件指針の作成経過がずさんであること,本件指針に示された処分の内容が刑罰規定の法定刑の重さに必ずしも相応していないことなどから,本件指針は懲戒基準として不相当である旨主張する。 (ア) そこで,まず,作成経緯についてみると,証拠によれば,被告は,平成18年10月19日,本件指針のうち,酒酔い も相応していないことなどから,本件指針は懲戒基準として不相当である旨主張する。 (ア) そこで,まず,作成経緯についてみると,証拠によれば,被告は,平成18年10月19日,本件指針のうち,酒酔い運転又は酒気帯び運転をした職員に対する処分を免職又は停職に改めることとしたこと(前記ア(ウ)),Aは,被告の助役から指示を受けて上記趣旨で起案したものの,「都城市懲戒処分の指針(平成18年10月20日から施行)」と題する書面(乙16の裏面)のとおり,非違行為の類型「飲酒運転での交通事故」のうち「人身事故を伴わないもの」は免職又は停職とする旨記載して作成したこと,被告は,同書面をもって指針である旨発表したこと,その後間もなく,Aは,事務処理上のミスとして,上記記載のうち,非違行為の類型「飲酒運転での交通事故等」のうち「人身事故を伴わないもの(検挙・自損事故等)」と改めて同名の文書を作成し,本件指針の一部としたことが認められる。(甲3,乙2,乙16,証人A・49ないし80項)そうすると,本件指針が被告市長の意思に基づいて策定されたことは明らかであって,当初発表された書面と異なることをもって,本件指針が無効であるということはできない。 (イ) 次に,本件指針の内容をみると,前記3(1),4(2)ア認定のとおり,悪質な飲酒運転が社会問題化し,飲酒運転に関する刑罰が強化され,その後も公務員による飲酒運転が相次いだことから,被告におい て,本件懲戒指針を改正し,飲酒運転の撲滅に向けた種々の取組みを行ってきたことを勘案すると,被告において,綱紀粛正を更に徹底する見地から,被告の職員の酒気帯び運転に対し厳正な処分をもって臨むことは不合理とはいえない。そして,飲酒運転に対して原則的に免職とし,情状酌量のある場合に停職処分とするとの運用方針 粛正を更に徹底する見地から,被告の職員の酒気帯び運転に対し厳正な処分をもって臨むことは不合理とはいえない。そして,飲酒運転に対して原則的に免職とし,情状酌量のある場合に停職処分とするとの運用方針についても,不当であるとはいえない。 このことは,刑事罰と比較して,重い酒酔い運転と処分を同じくし,あるいは措置義務違反に対して軽い処分を設けていることによって,左右されるものではない。 以上のとおり,本件指針は懲戒基準として不相当であるとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (3) 次に,本件指針に基づいて本件処分を行ったことについて裁量権の逸脱があるかをみると,本件酒気帯び運転について本件指針における情状酌量の余地がある場合に当たるものということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 原告は,種々主張するけれども,証拠(甲2,乙26,乙40・15ないし17頁,乙41,原告本人・17,93ないし95項)によれば,原告が本件酒気帯び運転の直前に飲酒した飲食店付近まで自車で赴いた上,少なくない飲酒に及んでいること,同飲食店と原告の当時の自宅との間の距離が約2.6キロメートルであり,深夜,代行運転やタクシーに乗車することができなくても徒歩で帰宅することが可能な距離であったこと,それにもかかわらず,原告が飲食店を出て30分後に本件酒気帯び運転に及んでいること,その他,必要に迫られて本件酒気帯び運転に及んだような事情は一切窺えないこと,本件酒気帯び運転の際に検知されたアルコールの保有量が呼気1リットルにつき0.35ミリグラムと,道路交通法の酒気帯び運転に関する罰則及び政令に定まる程度(呼気1リットルにつき0.15ミリグラム)に比 して多量であることなどに照らすと,およそ情状酌量の余地あるものということは ムと,道路交通法の酒気帯び運転に関する罰則及び政令に定まる程度(呼気1リットルにつき0.15ミリグラム)に比 して多量であることなどに照らすと,およそ情状酌量の余地あるものということはできない。 したがって,本件処分が,社会観念上著しく相当性を欠くとか,裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したものと認めることはできない。 (4) 上記のとおり,本件指針が無効であるなどとはいえず,本件指針を適用して本件処分を行ったことについても,裁量権の逸脱があるとはいえない。 5 争点(1)エ(手続上の瑕疵)について(1) 懲戒事由たる事実の誤認について被告が,本件酒気帯び運転を酒酔い運転と誤認して本件処分を行ったかをみると,証拠(甲1)によれば,本件説明書において,「酒酔い運転」の記載の直後に,酒気帯び運転の構成要件である呼気1リットルについてのアルコール保有量が記載されていること,罰金20万円の「判決」の記載の直前に「略式命令により」と記載されていることが認められ,これによれば,Aが,被告市長らに対し,本件酒気帯び運転について,呼気1リットルにつき0.35ミリグラムのアルコール保有量であったこと等を説明した上,本件処分の指示を得たとの供述部分(乙40・18ないし23頁,証人A・10ないし16,122項)は,これに符合するもので,採用することができる。 これによれば,被告は,原告の本件酒気帯び運転が,道路交通法の酒気帯び運転に当たるとして略式命令を受けたことを理由に原告を懲戒したことが明らかであり,上記「酒酔い運転」及び「判決」の記載は,単なる誤記にすぎないということができる。 よって,本件処分に関し,被告が懲戒事由たる事実を誤認した事実は認められない。 (2) 理由不備について本件処分において,違反行 載は,単なる誤記にすぎないということができる。 よって,本件処分に関し,被告が懲戒事由たる事実を誤認した事実は認められない。 (2) 理由不備について本件処分において,違反行為を具体的に明示していないといえるかをみ ると,本件説明書には,本件処分が地公法29条1項1号及び3号に基づくものであることに加え,本件酒気帯び運転が「都城市の名誉をはなはだしく毀損させ」るものであること,及び本件酒気帯び運転が全体の奉仕者である公務員としての信用を著しく失墜させる行為であることが明示されている(甲1)。 これによれば,被告が,地公法33条,29条1項1号及び3号に基づき本件処分をしたものと合理的に解することができ,本件説明書においてその特定,明示に欠けるところはない。 よって,本件処分に関し,理由不備の違法は認められない。 (3) 不十分な告知・聴聞について本件処分に際して,原告に対する告知・聴聞手続が不十分であったかをみる。 ア証拠(乙26,原告本人・105項)によれば,平成19年9月7日午前10時ころ,当時の被告の職員課の課長であるB及び課長補佐であるAは,原告に対し,本件酒気帯び運転に関して,飲酒の概要,動機,運転経路,認識の程度,飲酒検知の状況等の具体的な内容を聴取し,平成18年10月に懲戒処分の指針の見直しが行われたこと,見直し後の指針によれば原告が懲戒免職となり得ることを説明した上,事情聴取書(乙26)を作成し,原告の署名押印を得たことが認められ,同聴取書によれば,詳細で,原告の弁解を踏まえた具体的な聞き取りがなされていることが明らかである。 イそうすると,聴聞手続それ自体は平成18年9月7日の一度のみではあるが,本件酒気帯び運転の事実に加え,動機,態様等の具体的な内容を聴取し, 具体的な聞き取りがなされていることが明らかである。 イそうすると,聴聞手続それ自体は平成18年9月7日の一度のみではあるが,本件酒気帯び運転の事実に加え,動機,態様等の具体的な内容を聴取し,原告が本件酒気帯び運転を理由に懲戒免職処分になり得ることも説明していたのであるから,本件処分に関し,原告に対する告知・聴聞は適正に行われたというべきである。 ウ原告は,上記事情聴取において懲戒免職になり得る旨の説明を受けた記憶はない旨供述するが(甲8・3頁,原告本人・18,19,22項),上記認定事実に沿う内容が記載された書面(乙26)の末尾にその内容に相違がない旨署名,捺印していることからすれば,原告の上記供述部分は採用することができない。 6 小括上記2ないし5のとおり,本件処分及びその根拠となった本件指針の策定過程に違法な点はないから,その違法性を前提とするその余の争点について検討するまでもなく,原告の請求のうち,前記1のとおり却下すべき部分を除く請求,すなわち,本件処分の取消しを求める部分及び被告市長の違法行為を前提として国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等の支払を求める部分は,いずれも理由がない。 第4 結論以上の次第であって,原告の訴えのうち,原告が,被告の環境森林部,清掃工場の技術員の地位を有することの確認を求める部分(前記第1の1(1))については訴えの利益がないからこれを却下し,その余の請求部分については,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 宮崎地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官足立正佳 裁判官宮武芳 裁判官小松秀大 2部 裁判長 裁判官 足立正佳 裁判官 宮武芳 裁判官 小松秀大
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