- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が控訴人に対して平成17年4月27日付けでした「平成11年度宮城県警察刑事部,交通部,警備部の報償費支出に関する一切の資料」に係る行政文書の部分開示決定処分についての審査請求に対する裁決のうち,審査請求を棄却した部分を取り消す。 第2事案の概要 本件は控訴人が宮城県情報公開条例以下情報公開条例というに,,(「」。)基づき宮城県警察の報償費支出に関する文書の開示請求をしたところ,宮城県警察本部長が同文書の部分開示決定をしたので,行政不服審査法に基づき,上級行政庁である被控訴人に所属する宮城県公安委員会(以下「公安委員会」というに対し審査請求し同委員会が不開示部分を一部取り消したもののそ。),,(「」。),の余の審査請求を棄却する裁決以下本件裁決というをしたことからそのうち審査請求を棄却した部分の取消しを求めて,被控訴人を被告として訴訟を提起したが,原審が控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した事案である。 双方当事者の主張は,下記2のとおり当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」に記載のとおり,(,「」「」であるからこれを引用するただし原判決5頁7行目の決裁を裁決に改める。 。) 当審における控訴人の主張(1)答申尊重義務違反の瑕疵- 2 -被控訴人に所属する公安委員会は,控訴人の宮城県警察本部長に対する文書一部開示決定に対する不服申立てに伴い,情報公開条例14条1項に従い宮城県情報公開審査会以下審査会というに諮問し審査会から 控訴人に所属する公安委員会は,控訴人の宮城県警察本部長に対する文書一部開示決定に対する不服申立てに伴い,情報公開条例14条1項に従い宮城県情報公開審査会以下審査会というに諮問し審査会から不(「」。),,服申立ての審理における事実調査の内容及び方法に関する答申を受けたのであるから,諮問実施機関である公安委員会としては,答申に示された事実調査実施の可否及び適否につき具体的検討を行い,事実調査の内容及び方法を採用し得ない場合は,情報公開条例16条に関して定められた運用指針に従い,具体的理由を記録に残す義務が課せられている。 しかるに,公安委員会は,答申で示された事実調査の内容及び方法について,実施の可否及び適否について十分に検討した形跡はなく,また,審査会が答申後に示した本件裁決手続及び判断理由等に対する説明要求並びに建議についても,適切な対応をしていないのであって,本件裁決は,情報公開条例16条に定める答申尊重義務に違反しており,本件裁決固有の手続的瑕疵があるというべきである。 (2)その他の手続的瑕疵公安委員会は,審査会の答申を受けた後の審理では,各委員が開示請求対象とされた行政文書を直接見分したり,関係者の説明を求めるなど答申の趣旨に従うような調査を十分に尽くさないままに裁決した。すなわち,①捜査報償費についての会計書類の原本を全く見ていないこと,②捜査報償費を執行したとされる捜査員からの事情聴取を全く行っていないこと,③裁決の僅か2週間前に一度だけ会計課長から簡略な説明を受けたのみであること,④定例会の要旨記載以外に原処分庁職員に説明を求めていないこと,⑤答申において要望されている捜査報償費を支出した事実について直接確認する方策を検討していないこと,⑥裁決の2週間前まで捜査協力者の名前が会計書類に記載さ 外に原処分庁職員に説明を求めていないこと,⑤答申において要望されている捜査報償費を支出した事実について直接確認する方策を検討していないこと,⑥裁決の2週間前まで捜査協力者の名前が会計書類に記載されているか否かにつき認識していなかったこと,⑦捜査費の単価の理解も誤っていたこと,⑧裁決案は公安委員の作成によるものではなく,県- 3 -警県民応接課情報公開係事務吏員が作成していることなど,本件裁決は,ずさんな調査及び審理手続に基づくものであるから,手続的に瑕疵がある。 第3当裁判所の判断,。 当裁判所も控訴人の請求は失当としてこれを棄却すべきであると判断するその理由は,下記2に説示するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1項に記載のとおりであるから,これを引用する(なお,控訴人の主張(2)についての判断は,後記2(2)のとおりである。 。) 当審における控訴人の主張に対する判断(1)答申尊重義務違反による違法性の成否についてア控訴人は,審査会の答申では,捜査情報関連報償費の支出等が実際に行われているか否か等の実態調査をした上で,文書の公開の適否の判断をすべきであると示されているのに,被控訴人の属する公安委員会が,関係者の説明等の実態調査をすることなく,裁決を行ったことは違法である旨主張するので,まず,情報公開条例における答申制度の性格及び答申の性質について,検討する。 (ア)公安委員会等の行政機関が行った情報開示決定等に関して不服申立てがなされた場合に必要的に諮問を受けるとされている審査会は,情報公開条例22条で「第14条第1項の規定による諮問又は情報の公開に関する事項についての諮問に応じ不服申立て等について調査審議するため宮城県情報公開審査会以下審査会というを置く 審査, 開条例22条で「第14条第1項の規定による諮問又は情報の公開に関する事項についての諮問に応じ不服申立て等について調査審議するため宮城県情報公開審査会以下審査会というを置く 審査,(「」。)。 会は,前項の規定による調査審議のほか,情報の公開に関する重要事項について実施機関に建議することができると定めているのみで設,。」,,,。 ,置目的については情報公開条例では特に規定されていないしかし行政文書の公開の適否の判断に当たっては,個人又は団体の権利利益が害されないよう個人等に関する情報の保護,健全な社会秩序及び取引秩- 4 -序の維持並びに円滑な行政運営の確保の要請等のために非公開とすべき場合もあり,他方,市民の知る権利を保障して,行政運営に対する監視と信頼を確保し,適正な行政運営を発展させるためには,幅広く公開することも必要不可欠であるところ,かかる双方の要素を考慮して情報公開の適否を的確に判断することには困難を伴うこともあり,時には諮問実施機関が判断を誤り情報公開の趣旨を没却することにもなりかねないことから,不服申立てがなされた事案に限って,諮問実施機関から諮問を受けて,諮問実施機関とは距離を置き,より広い視野と高い見識に立って調査審議を行い,開示決定等に関して諮問実施機関に意見を具申することを目的とすることは,情報公開条例の諸規定から酌み取ることができる。そして,諮問機関を設けることにより,行政機関が,個人情報の保護,行政運営の円滑確保の事情のみを重要視したり,県民の批判を受けないために情報開示について消極的な態度を示すことがないよう抑制するとともに,事後的には,答申によって諮問実施機関に対して問題点を指摘し,再検討を促す契機を与えて,行政文書に関する情報開示の弊害的な運営の是 情報開示について消極的な態度を示すことがないよう抑制するとともに,事後的には,答申によって諮問実施機関に対して問題点を指摘し,再検討を促す契機を与えて,行政文書に関する情報開示の弊害的な運営の是正を図ったものとみることができ,諮問機関である審査会には,上記説示のような役割が期待されている。 ,,(イ)ところで審査会の諮問実施機関に対する答申の取扱いについては情報公開条例16条で「諮問実施機関は,第14条第1項の規定による諮問に対する答申があったときは,その答申を尊重して,同項の不服申立てについての決定又は裁決を行わなければならない」と規定し,ま。 た,32条では「審査会は,諮問に対する答申をしたときは,答申書の写しを不服申立人及び参加人に送付するとともに,答申の内容を公表するものとする」と定めている。 。 (ウ)上記審査会及び答申に関する規定内容からすると,答申が行政機関から距離を置き,広い視野と高い見識を持った有識者によって構成され- 5 -た審査会によって行われることから,諮問実施機関としては,情報開示決定等の審査に当たっては,それを尊重すべき義務を課したものと解することができるが,他方,諮問実施機関が答申の内容を尊重せず,その趣旨に配慮しない場合も想定されるところ,かかる場合の措置等に関する定めがないことからすると,諮問実施機関に対して答申の趣旨に配慮すべき法的拘束力までも付与したものとは解し難く,したがって,諮問実施機関が答申の趣旨に配慮しない決定又は裁決をしても,そのことをもって直ちに当該決定又は裁決が違法になるものではないというべきである。 イ審査会の諮問実施機関に対する答申の性質について,上記のように解釈した場合,諮問実施機関がおよそ答申を尊重しない態度に出ると,答申尊重義務の規定は有名無実となり,情報公 ないというべきである。 イ審査会の諮問実施機関に対する答申の性質について,上記のように解釈した場合,諮問実施機関がおよそ答申を尊重しない態度に出ると,答申尊重義務の規定は有名無実となり,情報公開の適正な運営を目的とした答申制度が十分に機能しない事態の生じるおそれもないとはいえないが,上記ア(イ)に認定したとおり,審査会が諮問実施機関に答申したときは,答申書の写しを不服申立人及び参加人に交付するとともに,答申の内容を公表するものと定めていることからすると,諮問実施機関の情報公開に関する決定又は裁決の在り方については,答申の内容を広く県民に明らかにした上,最終的には,県民による諮問実施機関の政治的,行政的責任に対する批判,追求等を担保として,その適正な運営を図ったものと理解することができる。 なお,控訴人は「情報公開条例の解釈及び運用基準(甲15)では,,」情報公開条例16条に関して「答申どおり不服申立てに対する決定又は裁決を行わなかった場合は,諮問実施機関は,審査会に対し,その理由を説明しなければならないとして答申尊重義務の実効性を担保する規定を。」,定めているから,単なる道義的義務ではない旨主張するが,かかる説明義務は,情報公開条例において定められたものではなく,情報公開条例の運- 6 -用指針ともいうべき「情報公開条例の解釈及び運用基準」において定められているにすぎないし,その内容自体も,まさに答申尊重義務が法的なものでないことを前提に答申制度の実効性を確保するための規定とみることができるから,上記規定が前記解釈を否定するものではない。 ウ以上のとおり,公安委員会が,審査会の答申をどの程度尊重したかは本件裁決の手続的な適否を左右するものではないから,この点に関する控訴人の主張を採用することはできない。 (2) るものではない。 ウ以上のとおり,公安委員会が,審査会の答申をどの程度尊重したかは本件裁決の手続的な適否を左右するものではないから,この点に関する控訴人の主張を採用することはできない。 (2)その他の手続違反の有無について控訴人が,本件裁決の手続違反として主張する内容は,公安委員会が答申の内容を忠実に実行するような具体的な調査を行った形跡がないこと,調査資料に基づき十分な検討をしていないこと,原処分庁職員が裁決書原案を作成し,その内容を具体的に検討しないままに本件裁決をしたこと等,公安委員会の本件裁決における証拠収集等手続がずさん極まりなく,裁決手続固有の1ないし5,1の瑕疵に当たるというものであるところ,証拠(甲9,16及び乙4)によると,公安委員会は,本1,14,16,17,20ないし23件審査請求に対する裁決を行うに当たり,原処分庁職員から『宮城県警察の会計監査に関する訓令』に基づき実施された会計監査結果の報告を受けたほか,必要な説明を求めるなどの調査を行ったこと,本件裁決に当たっては,15回の審理を重ね,毎回の審理では,他の案件も含めてではあるが概ね1,,時間半から2時間半程度の時間をかけて審議を行ったことが認められまた本件裁決は原処分によって不開示とされた部分の一部を取り消している当,(事者間に争いがないのであって相応の審理を踏まえた上で裁決がされた。),。 ,,,ことが推認できるまた控訴人が原処分庁職員が裁決書の原案を作成し公安委員会においてその具体的内容を検討しないままに本件裁決書が作成さ,,れたこと捜査費の単価の理解を誤っていたこと等を主張する点についてはかかる主張を認めるに足りる証拠はなく,審理の内容につき開示文書の原本- 7 -を十分に時間をかけて見分していないことを主張 ,れたこと捜査費の単価の理解を誤っていたこと等を主張する点についてはかかる主張を認めるに足りる証拠はなく,審理の内容につき開示文書の原本- 7 -を十分に時間をかけて見分していないことを主張する点についても,いかな,,る方法でどの程度の時間をかけて審議するかなど審理の在り方に関しては審査庁である公安委員会に広範な裁量権が与えられているというべきである(行政不服審査法25条ないし30条参照。 )以上のとおりであり,本件裁決には,裁量権を逸脱した審理方法であるこ,,とを認めるべき証拠はないから裁決手続に瑕疵があるということはできずこの点に関する控訴人の主張も採用できない。 結語よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第3民事部裁判長裁判官井上稔裁判官畑一郎裁判官小林直樹
▼ クリックして全文を表示