平成22(ネ)794 配転命令無効確認等請求控訴事件(通称 オリンパス配転)

裁判年月日・裁判所
平成23年8月31日 東京高等裁判所
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判決文本文54,591 文字)

平成23年8月31日判決言渡平成22年(ネ)第794号配転命令無効確認等請求控訴事件 主文 1 本件控訴及び当審における訴えの変更に基づき,原判決中,被控訴人オリンパス株式会社及び被控訴人P1に関する部分を次のとおり変更する。 (1) 控訴人が,被控訴人オリンパス株式会社ライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部システム品質グループにおいて勤務する雇用契約上の義務がないことを確認する。 (2) 被控訴人オリンパス株式会社及び被控訴人P1は,控訴人に対し,連帯して220万円及びこれに対する平成20年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 控訴人の被控訴人オリンパス株式会社及び被控訴人P1に対するその余の請求を棄却する。 2 控訴人の被控訴人P2に対する控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,控訴人と被控訴人オリンパス株式会社及び被控訴人P1との間では,1・2審を通じ,これを5分し,その2を控訴人の,その余を被控訴人オリンパス株式会社及び被控訴人P1の負担とし,控訴人と被控訴人P2との間では,控訴費用のすべてを控訴人の負担とする。 4 この判決は,第1項(2)に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 主文第1項(1)と同旨。  3 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して1000万円及びこれに対する平成20年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 被控訴人オリンパス株式会社(以下「被控訴人会社」という。)は,デジタルカメラ,医療用内視鏡,顕微鏡,非破壊検査機器(以下「NDT」という。)等の製造販売を主たる業とする株式会社であり,控訴人は,昭和60年1月から被控 会社(以下「被控訴人会社」という。)は,デジタルカメラ,医療用内視鏡,顕微鏡,非破壊検査機器(以下「NDT」という。)等の製造販売を主たる業とする株式会社であり,控訴人は,昭和60年1月から被控訴人会社に勤務している。被控訴人P1は,被控訴人会社のIMS事業部事業部長であり,被控訴人P2は,IMS事業部の一部門であるIMS国内販売部の部長である。 2 控訴人は,平成18年11月から,日本法人であるオリンパスNDT株式会社(以下,「ONDT」といい,被控訴人会社を「OT」ということがある。)においてNDTシステムの営業に携わっていたが,翌19年4月1日,ONDTが被控訴人会社に吸収合併されたため,同日から,被控訴人会社IMS事業部のIMS国内販売部NDTシステムグループ営業チームリーダーの職についた。 被控訴人会社は,控訴人に対し,平成19年10月1日付けで,IMS事業部IMS企画営業部部長付への配置転換を命じた(以下「第1配転命令」という。)。 3 本件は,控訴人が,控訴人に対する第1配転命令は,控訴人が被控訴人P1や被控訴人P2らによる取引先企業の従業員の雇入れについて被控訴人会社のコンプライアンス室(以下「コンプライアンス室」という。)に通報したことなどに対する報復としてされたもので無効であるなどと主張して,控訴人が被控訴人会社IMS企画営業部部長付として勤務する雇用契約上の義務がないことを確認することを求め(以下「第1の訴え」という。),また,違法な第1配転命令と,その後の上司による業務上の嫌がらせ(パワーハラスメント)等により控訴人の人格的利益が傷付けられたなどと主張して,被控訴人らに対し,民法709条,715条,719条に基づく損害賠償請求として,賞与の減額分23万9100円,慰謝料876万0900円 より控訴人の人格的利益が傷付けられたなどと主張して,被控訴人らに対し,民法709条,715条,719条に基づく損害賠償請求として,賞与の減額分23万9100円,慰謝料876万0900円及び弁護士費用100万円の合計1000万円並びに平成20年2月28日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払を求めた事案である。 被控訴人らは,第1配転命令には業務上の必要性があり,不当な動機・目的はなく,また控訴人には第1配転命令による不利益はなく,第1配転命令後に控訴人がパワーハラスメント等を受けたことはない旨主張して争った。 4 原審は, 第1配転命令には業務上の必要性があり,また,同命令が,控訴人が取引先企業従業員の雇入れについて被控訴人P1に意見を述べたりコンプライアンス室に通報したことを理由にされたものとは認められず,被控訴人らが第1配転命令後に控訴人を精神的に追い詰め退職に追い込もうとした事実は認められないなどとして,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴した。 被控訴人会社は,控訴人に対し,原審口頭弁論終結後の平成22年1月1日付けで,被控訴人会社ライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部部長付への異動を命じ(以下「第2配転命令」という。),さらに,当審係属中の同年10月1日付けで,同品質保証部システム品質グループへの異動を命じた(以下「第3配転命令」という。)。このため,控訴人は,当審において,まず,第1の訴えを「控訴人が,被控訴人会社ライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部部長付として勤務する雇用契約上の義務がないことを確認する。」と変更し(以下「第2の訴え」という。),次いで,第2の訴えを主文第1項(1)記載のとおりに変更した(以下「第3の訴え 統括本部品質保証部部長付として勤務する雇用契約上の義務がないことを確認する。」と変更し(以下「第2の訴え」という。),次いで,第2の訴えを主文第1項(1)記載のとおりに変更した(以下「第3の訴え」という。)。 第3 前提事実(当事者間に争いのない事実及び各項目末尾の証拠によって認定することができる事実) 1 当事者等(1) 被控訴人会社は,デジタルカメラ,医療用内視鏡,顕微鏡,NDT等の製造販売を主たる業とする株式会社である。 (2) 被控訴人P1は,被控訴人会社のIMS事業部事業部長で,IMS事業部を統轄する権限を有する。被控訴人P2は,IMS事業部の一部門であるIMS国内販売部の部長で,被控訴人P1のすぐ下の職位にあり,同じくIMS事業部の一部門であるIMS企画営業部に控訴人が異動になる前は,控訴人の直属の上司であった。 (3) 控訴人は,昭和60年1月から被控訴人会社に正社員として勤務しているが,被控訴人会社においては,職能ゾーン資格制度を採用し,従業員をE(エグゼクティブ),P(プロフェッショナル)及びS(スタッフ)の三つのゾーンに分けており(甲201),控訴人の資格はP2(係長各相当)であった。 2 NDTシステムの概要及び控訴人の職歴(1) NDTシステムの概要NDTとは,Non-destructiveTesting の略で,超音波探傷技術及び渦流探傷技術を利用し非破壊的に鉄鋼製品等の傷を探知する検査機器をいい,NDTシステムとは,NDT機器の中でもフェイズドアレイという高度技術を使う特に高度な技術レベル装置をいい,主に鉄鋼会社の製造ラインにインラインで設置し,約20年間,24時間稼働で使用するものである。NDTシステムは,取引先の注文に応じて設計製造され,検査規模や検査対象により金額が異 レベル装置をいい,主に鉄鋼会社の製造ラインにインラインで設置し,約20年間,24時間稼働で使用するものである。NDTシステムは,取引先の注文に応じて設計製造され,検査規模や検査対象により金額が異なるが,大型であれば1機あたり2億円前後で取引され,その商談には最低でも半年程度の綿密な打合せが必要となる。実際に納品するには,約1か月から2か月を要し,被控訴人会社担当者は,取引先工場において,ほぼ連日常駐して作業を行う。納品後も被控訴人会社による継続的な保守管理及びサポート体制を必要とする。 被控訴人会社に吸収合併された日本法人ONDTは,NDTシステムを販売するビジネスを行なっていた。P3株式会社(以下「P3」という。)は,上記合併前にONDTによって買収された会社であり,鉄鋼製品のうち丸棒鋼を製造するP4株式会社(以下「P4」という。)から大型NDTシステム国内第1号機を受注し,平成16年に第1号機を納入し,平成18年8月に第2号機を備え付けた。そのため,P4はP3の最重要顧客であった。 (2) 控訴人の職歴控訴人は,昭和60年から平成4年まで,被控訴人会社の技術開発センター及び辰野事業場においてカメラの研究開発業務に従事した。 控訴人は,平成6年,希望して営業職に転換し,国内販売部門,海外営業部門,ニューヨーク駐在,関連会社であるP5株式会社のデジタルカメラ開発企画部門に順次配属された。 平成17年10月1日,控訴人は,被控訴人会社IMS事業部に異動し,1年間IMS事業部IMS企画営業部工業用内視鏡販売部門に配属され,販売部門チームリーダー及びマーケティング部門チームリーダーの職に就いた。 控訴人は,平成18年11月から日本法人であるONDTにおいてNDTシステムの販売に携わることになった。被控訴人P1は,同年 売部門チームリーダー及びマーケティング部門チームリーダーの職に就いた。 控訴人は,平成18年11月から日本法人であるONDTにおいてNDTシステムの販売に携わることになった。被控訴人P1は,同年10月12日に上記ONDTへの異動を内示する際,控訴人に対し,P3の副社長であったP6が有するNDTシステムに関する知識,業界人脈,ケベックとの人脈などを早く吸収し,NDTシステム事業を成功させることが控訴人の最優先事項である旨述べた。 ONDTが平成19年4月1日に被控訴人会社に吸収合併されたため,控訴人は,同日から,被控訴人会社のIMS事業部IMS国内販売部NDTシステムグループ営業チームリーダーの職につき,NDTシステム営業販売業務の統括責任者として業務に従事することとなった。 3 第1配転命令ないし第3配転命令(1) 被控訴人会社は,控訴人に対し,平成19年10月1日付けで,IMS事業部IMS企画営業部部長付への配置転換(以下,「第1配転」という。)を命じた。第1配転によって,控訴人は,新事業創生探索活動として,主としてSHM(構造ヘルスモニタリング,StructuralHealthMonitoring 以下,「SHM」という。)のビジネス化に関する調査研究を行う業務を担当することになった。SHMは,一定期間にわたって時間軸上で対象物(構造物)の健全性を監視するシステムであり,航空機のメンテナンス等の場面において注目されている。 (2) その後,被控訴人会社は,控訴人に対し,平成22年1月1日付けでライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部部長付への配置転換(以下「第2配転」という。)を命じ,さらに同年10月1日付けで,同品質保証部システム品質グループへの配置転換(以下「第3配転」という。)を命じた。 カンパニー統括本部品質保証部部長付への配置転換(以下「第2配転」という。)を命じ,さらに同年10月1日付けで,同品質保証部システム品質グループへの配置転換(以下「第3配転」という。)を命じた。 4 被控訴人会社の就業規則及び労働協約の規定被控訴人会社の就業規則(以下,単に「就業規則」という。)33条には,「業務の都合により従業員に対し,同一事業場内の所属変更および職種の変更を命ずることがある。」との定めがあり,34条には,「前2条の場合,従業員は正当な理由がなければ,これを拒むことができない。」との定めがある。 被控訴人会社と控訴人が加入するP7労働組合との間の労働協約(以下,単に「労働協約」という。)40条は,「会社は,職務の任免にあたっては,組織の必要性と効率性の観点から最も合理的に行う。」とし,41条(1)には,「会社は業務の都合により,組合員に事業場間の派遣,転勤,転籍または社外勤務を命ずることができる。」との定めがあり,同条(3)は,「会社は異動にあたり,人材の適材適所を狙いとしたチャレンジシステムを有効に活用する。」と規定する(甲137)。 5 被控訴人会社の企業行動憲章及びコンプライアンスヘルプライン運用規定被控訴人会社は,オリンパスグループ企業行動憲章を定め,その前文で「法令遵守はもとより,高い倫理観を持って企業活動を行う」とし,社員に徹底させていた(甲2,3,6,7,192)。オリンパスグループ行動規範は,企業行動憲章を実現するための役員・社員に対する行動指針であり,「第1章総則」,「第2章行動規範」,「第3章運用体制」から構成され,第3章では,行動規範の実効性を確保するためヘルプラインを設置したこと,ヘルプラインへの通報は秘密が厳守され,通報したことにより何らの不利益を課されるものでは 」,「第3章運用体制」から構成され,第3章では,行動規範の実効性を確保するためヘルプラインを設置したこと,ヘルプラインへの通報は秘密が厳守され,通報したことにより何らの不利益を課されるものではないことが明記されている(甲193)。 被控訴人会社のコンプライアンスヘルプライン運用規定(以下「運用規定」という。)は次のように定めている(甲4,5)。 (利用対象事項)第4条従業員等は,従業員等が関与する以下の事項について,上長または専門部署への相談・報告が困難である場合,ヘルプラインを利用して通報することができる。 (1) 組織的または個人による,法令,社規則,企業行動憲章・行動規範に反する,または反する可能性があると感じる行為(以下,法令違反等)(2) 業務において生じた法令違反等や企業倫理上の疑問や相談(通報要領)第8条従業員等は,ヘルプラインを利用して法令違反等の通報をする際,次の事項に留意する。 (1) 通報内容は,法令違反等に関して客観的で合理的根拠に基づいた誠意あるものに限られるものとし,個人的利益を図る目的,個人に対する私怨,誹謗中傷する目的,個人の不平不満や意見を表明する目的で通報をしてはならない。 (2) 通報する際は,客観的な合理的根拠とそれに基づく推測とを区別して述べ,噂を含む曖昧な事実を客観的事実として断言 したり,誤解を与えるような表現をしたりすることは避けなければならず,付表の連絡シートの内容に従って,「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」をできる限り明確にし,原則として所属部署及び氏名を明らかにしなければならない。 (通報者への連絡)第13条コンプライアンス室は,通報者に対して,通報内容に関する事実調査及び是正措置の結果について連絡する。 (守秘義務)第1 及び氏名を明らかにしなければならない。 (通報者への連絡)第13条コンプライアンス室は,通報者に対して,通報内容に関する事実調査及び是正措置の結果について連絡する。 (守秘義務)第14条ヘルプライン宛てに送信された電子メール・書面・電話は,原則としてコンプライアンス室長及び限定されたコンプライアンス室の担当者のみが受信するものとする。 2 コンプライアンス室の担当者は,通報者本人の承諾を得た場合を除き,通報者の氏名等,個人の特定されうる情報を他に開示してはならない。 3 コンプライアンス室及び調査・対応チーム等,通報された事案に関与した全ての者は,調査・対応上必要な場合を除き,通報内容及び調査内容を他(自らの所属長を含む。)に一切開示してはならない。 (通報者の保護)第16条国内オリンパスグループは,通報者に対して,ヘルプラインを利用したという事実により不利益な処遇を行ってはならない。 不利益な処遇とは,解雇,降格,減給等の懲戒処分や不利益な配置転換等の人事上の措置のほか,業務に従事させない,専ら雑務に従事させる等の事実上の措置を含む。 第4 争点及び争点に関する当事者の主張 1 訴えの変更の可否(控訴人)平成22年1月1日付けの第2配転命令及び同年10月1日付けの第3配転命令は,いずれも平成19年10月1日付けの第1配転命令の不当な目的を継続する意図の下にされたものであって,業務上の必要性はなく,労務環境や業務実態は変わっていないから,3つの配転命令は,一体として控訴人に対する人事権が濫用されたものである。したがって,各訴えには請求の基礎の同一性がある。 (被控訴人ら)第1の訴え,第2の訴え及び第3の訴えには請求の基礎の同一性がなく,また第2の訴え及び第3の訴えへの変更は訴訟手続 たものである。したがって,各訴えには請求の基礎の同一性がある。 (被控訴人ら)第1の訴え,第2の訴え及び第3の訴えには請求の基礎の同一性がなく,また第2の訴え及び第3の訴えへの変更は訴訟手続を著しく遅滞させるから不適法であり,いずれも却下されるべきである。 2 第1ないし第3配転命令は,それぞれ被控訴人会社が配転命令権を濫用したものか(1) 被控訴人会社は,従業員に対し,キャリアプランの結果に基づき適材適所の人事配置をすることを労働契約上義務づけられているか(控訴人)就業規則及び労働協約によれば,被控訴人会社は,労働契約上,控訴人を適材適所に配置すること,また,それを確保する上で説明と納得のための手続を履行すべき義務を負う。 特に,能力成果主義処遇制度の下における異なる職種への配置転換は,それが過去のキャリア形成や専門能力を無にするような場合には,従業員の昇格や昇給に多大な負の影響を及ぼすから,個々の従業員の年齢や適性,それまでの経験を踏まえたものであることが必要である。すなわち,相当年数以上被控訴人会社に在籍する従業員については従来の蓄積が重視されるべきで,異なる職種における能力開発が,当該従業員にとって「1からの出直し」となってはならないことは,配転命令権を画する重要な要素である。 そして,被控訴人会社は,能力主義について「能力開発ガイドライン」を基礎とする職能ゾーン資格制度を導入し,昇格は能力開発ガイドラインによる専門能力評価と昇格試験によっているところ,その土台となるのがキャリアプランである。すなわち,キャリアプランとは,従業員のラインに立つ上司が当該従業員との話合いを通じて将来性を評価した上で決定承認するもので,当該従業員が「能力開発ガイドライン」の示す水準を達成し,昇格するための重要なツ ,キャリアプランとは,従業員のラインに立つ上司が当該従業員との話合いを通じて将来性を評価した上で決定承認するもので,当該従業員が「能力開発ガイドライン」の示す水準を達成し,昇格するための重要なツールである(甲137,129の2,130)。したがって,被控訴人会社は,従業員に対し,キャリアプランの結果に基づき適材適所の人事配置をすることを労働契約上義務づけられている。 平成19年8月当時,控訴人のキャリアプランが被控訴人P2によって承認された結果,控訴人と被控訴人会社の間で,控訴人は,所属していたIMS国内販売部NDTシステムグループにおいてNDTシステムの取引先への定着及び同システムの市場開拓をもってキャリア形成を図ることが合意されていた。 よって,控訴人に対し営業職からSHMを主とする新事業創生探索活動という全く異なる職種への異動を命じる第1配転命令は,控訴人のキャリアプランを無視し,適材適所の人事配置をする労働契約上の義務に違反するもので,債務不履行を構成し,就業規則34条の配転命令を拒否できる「正当な理由」に該当する。品質保証という営業職とは全く異なる職種への異動を命じる第2及び第3配転命令についても同様である。 (被控訴人ら)控訴人の主張は争う。労働協約・就業規則にキャリアプランに関する規定はなく,キャリアプランは職能ゾーン制度や賃金体系とは別個の制度である。 すなわち,キャリアプランは,上司と本人とのコミュニケーションツールに過ぎず(甲130,196),キャリアプランに対する上司のコメントは次の人事異動がないことを約束するものではない。 また,被控訴人会社においては,職種変更を伴う配転は珍しいものではなく,異動後の職種の経験がないことが人事評価上の不利益にならないように配慮されている(甲129の2)。 とを約束するものではない。 また,被控訴人会社においては,職種変更を伴う配転は珍しいものではなく,異動後の職種の経験がないことが人事評価上の不利益にならないように配慮されている(甲129の2)。 (2) 業務上の必要性の有無(控訴人)以下のように本件第1ないし第3配転命令には業務上の必要性がない。 aSHM業務の位置づけ及び第1配転命令後の状況についてSHM業務は,平成17年からIMS事業部IMS企画営業部マーケティンググループが担当していたが,同グループリーダーや担当者は,SHMについて「実用化は10年先」あるいは「ほど遠い」などと評価し,その実用化はかなり先のことと判断していたのであり,同業務は実用化された技術の販売戦略を検証する段階にはなかった。被控訴人らは,IMS事業部の方針(乙4の2)の記載をもってSHMが重要視されていた旨主張するが,これはIMS事業部全体の基本方針の一つとして掲げられていたに過ぎない。140PB期(平成19年10月~平成20年3月)におけるSHM業務は,IMS企画営業部マーケティンググループの業務からはずされ(甲51,52),SHMの知識が全くない控訴人が,チームやグループに属さない部長付として孤立させられた上,SHM業務に従事させられ,控訴人の直属の上司も「部長の委任を受けた定年後の再雇用者」であるP8担当部長であり,そのP8もSHMとは別のマーケティンググループ関連業務に従事しているという状況であった。このように,被控訴人P1らは,SHMの実用化についての上記の低評価を踏まえ,控訴人に無為な時間を過ごさせることを目的として第1配転命令をした。 また,控訴人は,P8らから成果を上げるための援助も受けられず,むしろ逆に社外人脈との接触禁止その他のパワーハラスメントによって成果 時間を過ごさせることを目的として第1配転命令をした。 また,控訴人は,P8らから成果を上げるための援助も受けられず,むしろ逆に社外人脈との接触禁止その他のパワーハラスメントによって成果を上げることを阻害された。 b 第1配転命令には人選の合理性がないことについて控訴人が新たに担当することになった新事業創生探索活動とは,主にSHMのビジネス化に関する調査研究を行う業務である。このSHMは,非常に技術的専門性が高く,配転命令を受けるまで15年以上営業職であった控訴人に適任の業務とはいえない。控訴人の技術者としての経験は研究開発に携わったものではなく,控訴人の積んできた経験と技能にはSHM担当としての汎用性が全くない。「あと1年,ターゲットを絞った活動の結果で方向性を見極める」(甲83)という専門性の高いSHM探査業務に控訴人は不向きである。また,控訴人の英語能力も,営業活動に有用なビジネス英語についてのもので,技術的専門性の高い専門英語についてのものではない。 c 第2及び第3配転命令についても,控訴人をこれまで経験したことがない品質保証業務に選任したことに合理性はなく,控訴人に無為な時間を過ごさせることを目的としてしたものである。 (被控訴人ら)第1配転命令は,業務上の必要性に基づくものである。 a 控訴人の主張のaにつき,被控訴人会社は,SHMビジネスが被控訴人会社の非破壊検査ビジネスの拡大に寄与することを期待して平成17年から取組を開始し,IMS事業部は,平成19年度及び平成20年度の事業部方針において,SHM技術のフィージビリティー(実現可能性)と事業性の検討を継続推進することを重点施策とした(乙4の1,4の2)。このように,SHMに関する新事業創生探索は,毎期毎に活動項目の一つとされ,地道に活動が継 術のフィージビリティー(実現可能性)と事業性の検討を継続推進することを重点施策とした(乙4の1,4の2)。このように,SHMに関する新事業創生探索は,毎期毎に活動項目の一つとされ,地道に活動が継続されてきたのである。控訴人主張の141PA期のIMS企画営業部マーケティンググループのGL方針(甲52)にSHMに関する新事業創生探索の記載がないのは,控訴人がグループに属さない専任者として新事業創生探索活動に従事するようになったからに過ぎず,その重要性が低下したためではない。控訴人の前任者であるP9は他の業務と掛け持ちで同活動に従事していたのに対し,第1配転命令によって控訴人が同活動の専任として配置されたのであるから,SHMに関する新事業創生探索の活動体制が従来から後退したものではない。 b 控訴人の主張のbにつき,控訴人は,米国駐在経験があり英会話にたん能であること,工業高等専門学校出身であること及びNDT機器の販売業務に従事し営業職の経験があることから,SHMのような新事業創生探索活動の担当者として適任であった。控訴人は,研究開発に携わったことはない旨主張するが,新事業創生探索活動は,自らが新技術の研究・開発をするものではないから,控訴人が適任であったことに変わりはない。 (3) 不当な動機・目的の有無(控訴人)ア内部通報前後の経過a 平成18年12月,P4の従業員であるP10がONDTに入社した。 同人は,被控訴人会社がONDTを吸収合併した平成19年4月1日付けで被控訴人会社のIMS事業部IMS国内販売部NDTシステムグループ技術チームリーダーに任命された。 控訴人は,同年2月15日,P4のP11取締役から,ONDT,特にP10とP4の現場技術担当者とが直接接触しないように厳しく要求され,同年3月3日 ステムグループ技術チームリーダーに任命された。 控訴人は,同年2月15日,P4のP11取締役から,ONDT,特にP10とP4の現場技術担当者とが直接接触しないように厳しく要求され,同年3月3日にはP10を同社だけでなく競業他社の担当からも外すことを要求された(甲199)。 b 控訴人は,平成19年4月上旬,NDTシステムグループ技術チームに入ることになったP12から,P10が,「P4からP10の後輩が入社することになっている,3号機の受注をおみやげとして持ってくる」と言っていたと聞いた。 c 控訴人は,上記aのP11取締役の要求等から,P4から1度ならず2度も社員を引き抜くことは,企業倫理上・道義上問題があると考えた。 また,被控訴人会社の他の取引先ないし商談先は,丸棒鋼及び特殊製鋼の製造面でP4と競合する会社がほとんどであるから,NDT導入や保守管理及びサポートのためにP10のようなP4退職直後の者が他の取引先に常駐することになれば,一方で,P4にとってNDTシステム検査ノウハウ等の同社の営業秘密が競合他社に漏洩される虞があり,他方で,競合他社にとっては,P10を通じて自社の営業秘密がP4に漏洩される虞があるなどの懸念が生じ,被控訴人会社のビジネスに支障が生じるとともに,不正競争防止法に違反する虞があると考えた。 d そのため,控訴人は,同年4月12日,被控訴人P1に対し,上記bの,P4から二人目の転職者が転職とともにNDTシステム3号機の受注のおみやげを持ってくるとP10が言っていたという話を通報し,P4からの二人目の転職希望者の採用はとりやめるべき旨を述べた。これは,控訴人が,P10及び被控訴人P2が,二人目の転職候補者をそそのかし,その在職中に正当に取得できるP4内の営業秘密を,転職後に不正使用,開示す の転職希望者の採用はとりやめるべき旨を述べた。これは,控訴人が,P10及び被控訴人P2が,二人目の転職候補者をそそのかし,その在職中に正当に取得できるP4内の営業秘密を,転職後に不正使用,開示することを約束させて転職の便宜を図る,すなわち刑事罰の対象となる不正競争防止法21条1項5号関連の共犯行為がまさに生じようとしていると考えたことに基づくものであった。同年5月15日,被控訴人P1及び同P2がP4を訪れて,同社のP11取締役に対し,二人目の転職候補者であるP13の転職についての了解を求めたが,翌16日,控訴人はP11取締役から怒りの電話を受けた。 e 被控訴人P1及び同P2は,同年5月21日,P10とともに控訴人を被控訴人会社新宿本社(P14)25階応接室に呼び出し,ホワイトボードで入り口を封鎖し控訴人が容易に出られないようにした上,被控訴人P1は,控訴人に対し,手に持っている紙をペンでたたきながら,「なにをがたがたやっているんだ」,「あれほど口を出すなといったじゃないか」とどう喝して威圧し,口封じと責任追及をしようとした。控訴人は,被控訴人P1の形相に恐怖を感じ,たまたま控訴人の携帯電話に電話がかかってきたことを理由に大急ぎでホワイトボードの下を何とかくぐり抜け,応接室から脱出した。 f 控訴人は,同年6月11日,コンプライアンス室に電話をし,ONDTの経理部に所属していたP15に伴われて同室長P16とP17に会って,P4からの従業員引抜きの件を説明し,顧客からの信用失墜を防ぎたいと考えている等との相談をした(以下「本件内部通報」という。)。 gP16は,同年7月3日,控訴人に対し,相談に対する回答として,「重要取引先から続けて二人を採用することについては,たとえ本人の意思による転職であっても,先方に対する 件内部通報」という。)。 gP16は,同年7月3日,控訴人に対し,相談に対する回答として,「重要取引先から続けて二人を採用することについては,たとえ本人の意思による転職であっても,先方に対する配慮を欠いていたといわざるを得ない。」という内容を含む電子メールを送信したが(甲12。以下「本件回答」という。),当該電子メールは,被控訴人P1,被控訴人会社人事部長P18(P18人事部長)にも同時に送信され,さらにあて先には控訴人のほかP12も含まれていた。被控訴人P1は,同年7月ころから控訴人の配置転換を検討し始めた。 なお,控訴人がコンプライアンス室の担当者に対し,控訴人が通報者であること及び通報内容が関係者に知られることになることを承諾したことはない。 h 上記gのメールによって,控訴人がコンプライアンス室に本件内部通報をした事実が被控訴人P1に判明したため,P16の提案により,同月12日に関係修復の会が開かれ,控訴人,被控訴人P1,同P2,P12,IMS事業担当役員であるP19取締役及びP16が参加した。 しかし,P16は,2,3分で退席し,P19取締役は,被控訴人P1及び同P2に「厳重注意」と述べ,まもなく秘書が呼びに来て退席し,その後,被控訴人P1は,本件内部通報をしたことについて「覚悟して言っているのか」などと強い口調で控訴人を責め,どう喝した。 i 被控訴人会社は,同年8月末,控訴人が所属していたNDTシステムグループを同年10月1日付けでIMS国内販売部からIMS企画営業部へグループごと異動する組織編成を行うことを決定し,控訴人を除き,当時NDTシステムグループに所属していた社員全員をそのままIMS企画営業部に異動させた。しかし,控訴人は,第1配転命令により,NDTシステムグループから外され,チームにも を決定し,控訴人を除き,当時NDTシステムグループに所属していた社員全員をそのままIMS企画営業部に異動させた。しかし,控訴人は,第1配転命令により,NDTシステムグループから外され,チームにもグループにも所属しないIMS企画営業部部長付に異動させられた。そして,同年8月28日,控訴人は,被控訴人P2から顧客訪問をすべてキャンセルするように指示された。また,同年10月1日の異動前に,異動後に直接の上司となるP8から被控訴人会社が貸与しているパソコンのモバイル用通信カードと携帯電話を返却するように指示されたが,新たに担当することになった新規事業創生探索について何らの引継ぎを受けることがなかった。 j 控訴人は,第1配転命令等について被控訴人会社代表取締役あてに電子メールを送信して異議をとなえたが,被控訴人会社は産業医を受診するように求めるだけであった。 イコンプライアンス室の対応の問題点a コンプライアンス室の本件内部通報内容についての認識被控訴人らは,コンプライアンス室は,「P4従業員の採用は取引先との関係において配慮を欠く部分はあった可能性はあるものの,法令に抵触するものではない」と判断したと主張する。 しかし,平成19年7月3日のP16の本件回答(甲12)には,P4からの2人目の転職候補者であるP13の引抜き問題に関し,「重要取引先から続けて2人を採用することについては,…,先方に対する配慮を欠いたといわざるを得ない。」,「人事部では,取引先担当者の採用に関する明文化された基準はないが,基本的には道義的な問題があり,採用は控える,というのが原則…。採用する場合には,…取引先と当社との間で機密保持契約を含む同意が成立しない限り行なわないこととしている。」と記載され,被控訴人P1らによるP13の引抜きに企 あり,採用は控える,というのが原則…。採用する場合には,…取引先と当社との間で機密保持契約を含む同意が成立しない限り行なわないこととしている。」と記載され,被控訴人P1らによるP13の引抜きに企業倫理上問題があったことを指摘し,営業秘密の漏洩又は侵害の可能性を示唆する内容となっているから,コンプライアンス室は,不正競争防止法違反の可能性を認識していた。仮にコンプライアンス室が,法令違反ではないと判断したとしても,P4等取引先の機密情報の保護が問題となった本件は,少なくとも企業行動憲章・行動規範(第1章第2項)に関係する。そして,運用規定第4条の「法令違反」には法令,社規則違反に限らず企業行動憲章・行動規範をも含むから(甲5),コンプライアンス室は,本件が運用規定上の「法令違反」に該当すると判断すべきであった。 b 本件内部通報が被控訴人P1らに知れたことによる控訴人の配転運用規定は,コンプライアンス室は調査結果をコンプライアンス担当役員に報告すること,通報者本人の承諾を得た場合を除き,通報者の氏名等を他に開示せず,必要な場合を除き,通報内容及び調査内容を他に開示せず,通報者に関する情報は極秘扱いとすることなどを規定しているところ,P16は,本件の調査結果をコンプライアンス担当役員に報告せず,かえって前記アのgのように控訴人が開示に同意していないにもかかわらず,守秘義務に違反して,被控訴人P1に対し控訴人が通報者であることを告げた上,事情聴取をし,被控訴人P1や人事部のP18に本件回答(甲12)を送付した。その結果,控訴人が本件内部通報によって是正・処分を求めている当の相手方本人である被控訴人P1が本件内部通報を知り,同人によって第1配転命令がされた。 控訴人が開示に同意していないのは次のことから明らかである。  報によって是正・処分を求めている当の相手方本人である被控訴人P1が本件内部通報を知り,同人によって第1配転命令がされた。 控訴人が開示に同意していないのは次のことから明らかである。 ⅰ 控訴人は,自らの通報が露見することをおそれたからこそ,P16らとの面談は社外の喫茶店で行い,調査状況を照会するのも自宅から携帯電話で行なっていた。被控訴人らは,事実確認又は関係者間の関係修復のために控訴人が通報者及び通報内容の開示に同意した旨主張するが,事実確認のために通報者を明らかにする必然性はないし,また控訴人がコンプライアンス室に対し関係者との関係修復を依頼したこともない。 ⅱ P16は,控訴人に対し,控訴人が通報者であること及び通報内容を明らかにしたことについて謝罪した。すなわち,本件回答のあて先にはP12が含まれていたため,P12が直ちにコンプライアンス室に連絡を取ってP16とP17を呼び出し,コーヒー店で控訴人,P12及びP15が同人らと面談し,P15が,通報者は社規則で極秘情報扱いとされているにもかかわらず,上記メールが被控訴人P1及びP18人事部長に配信され通報者が明らかにされたことについて苦情を述べ抗議したところ,P16とP17は口頭で謝罪した。数日後,控訴人は,P16に対し,念のために文書で謝罪してほしい,宛先は通報者でもないのに通報者とされたP12宛でよいが,控訴人に対する謝罪も記載してほしいと要請し,P16は本件回答を通報者以外に送信したことについて控訴人に謝罪するメールを送付した。 ウ第1配転命令が内部通報に対する報復を目的とするものであること以上のように,平成19年6月11日の控訴人による本件内部通報が同年6月27日に被控訴人P1に知れるところとなり,被控訴人P1は同7月ころから控訴人の配置転換 対する報復を目的とするものであること以上のように,平成19年6月11日の控訴人による本件内部通報が同年6月27日に被控訴人P1に知れるところとなり,被控訴人P1は同7月ころから控訴人の配置転換を検討し始めたのであるから,第1配転命令は,控訴人の本件内部通報に対する報復を目的としてされたものである。 また,控訴人をNDTシステム担当等から外すことによってP4とのトラブルを収束させる目的でされた恣意的なものでもある。また,後記3の配転後のパワーハラスメントは,それ自体,不法行為であるが,同時に控訴人を被控訴人会社から排除することを目的とするもので,第1配転命令の動機が本件内部通報に対する報復という違法・不当なものであることを推認させる間接事実でもある。 そして,本件内部通報に対する報復としてされた第1配転命令は,内部通報をしたことを理由として職務,職場配置や賃金などの労働条件について不利益な取扱いをしてはならないとの被控訴人会社の義務にも反するものである。すなわち,公益通報者保護法5条は,公益通報をしたことを理由とする不利益な取扱いを禁止し,当該規定は,強行規定として労働契約関係を規律する。そして,運用規定16条は,ヘルプラインを利用したという事実により不利益な処遇を行ってはならないと規定する。そして,公益通報者保護法3条1号は,労務提供先に対する公益通報については,通報対象事実である犯罪行為が「生じ,又はまさに生じようとしていると思料する場合」と規定し,通報対象事実である犯罪行為が生じ,又は生じる疑いがあることについての認識は通報者である労働者の主観で足りるとしている。さらに,被控訴人会社の運用規定は,ヘルプラインの利用対象事項を,法令違反に加え,社規則,企業行動憲章・行動規範に反する,又は反する可能性があると感じる 通報者である労働者の主観で足りるとしている。さらに,被控訴人会社の運用規定は,ヘルプラインの利用対象事項を,法令違反に加え,社規則,企業行動憲章・行動規範に反する,又は反する可能性があると感じる行為にまで広げ,かつ利用対象事項の認識について従業員らの主観で足りるとしているから,運用規定による不利益取扱禁止の対象範囲は,公益通報者保護法のそれより広いものである。したがって,控訴人の内部通報の内容が客観的なものであった場合はもちろん,主観的な疑いを根拠に法令違反,さらには倫理違反となりかねない行為を通報するものであった場合を含め,被控訴人会社は,控訴人に対し,労働契約上,内部通報をしたことを理由として職務,職場配置や賃金などの労働条件について不利益な取扱いをしてはならない義務を負うから,本件内部通報に対する報復としてされた第1配転命令は,当該義務にも違反する。 エ第2及び第3配転命令も,第1配転命令の延長として本件内部通報に対する報復を目的とするものである。 (被控訴人ら)ア控訴人の主張アについてaの前段は認め,後段は不知。P11取締役はP10の転職を了承していた(乙16)。同取締役の苦情や懸念については,控訴人の陳述書やP20,P21の陳述書以外の客観的証拠がない。 bは知らない。 c及びdのうち,平成19年4月12日,控訴人が被控訴人P1に対し,「P4からの二人目の転職希望者の採用はとりやめるべきである」旨述べたことは認め,その余は知らない。控訴人は,被控訴人P1に対し,「重要案件を漏らしたP10氏を処分するべきである」とも述べた。 eのうち,平成19年5月21日に控訴人,被控訴人P1,被控訴人P2及びP10の4人が,被控訴人会社新宿本社25階応接室において会議を行ったことは認め,その余は否認する。 きである」とも述べた。 eのうち,平成19年5月21日に控訴人,被控訴人P1,被控訴人P2及びP10の4人が,被控訴人会社新宿本社25階応接室において会議を行ったことは認め,その余は否認する。 fは認める。 gの1文は認める。 hのうち平成19年7月12日に被控訴人P1らと控訴人及びP12との間の関係修復の会合が持たれたこと,その会合に控訴人,被控訴人P1,被控訴人P2,P12,P19取締役及びP16室長が参加したことは認め,その余は否認する。P16は「コンプライアンス室が直接何かしなければならない問題ではないため,ここから先はP19取締役にお願いし,退席したい」旨断って退席したもので,P19取締役は,1時間程度,話合いに同席し,被控訴人P1らと控訴人の双方に注意をした上,事業部全体を良くするために前向きに進んでほしいなどという話をした。 iのうち,NDTシステムチームがIMS企画営業部の所属となったこと,控訴人が平成19年10月1日付けでチームにもグループにも所属しないIMS企画営業部部長付きとなったこと,同年8月28日,被控訴人P2が控訴人に対し顧客訪問をすべてキャンセルするように指示したこと,控訴人の新たな直属の上司となったP8が控訴人に対し被控訴人会社が貸与しているパソコンのモバイル用通信カードと携帯電話を返却するように指示したことは認め,その余は否認する。 jは認める。 イ控訴人の主張イについてaは争う。 bのうち,P16が本件の調査結果をコンプライアンス担当役員に報告しなかったことが運用規定に反することは争い,控訴人が開示に同意していなかったこと,P16が,本件回答を被控訴人P1とP18人事部長に同時に送信したことによって控訴人が本件内部通報の通報者であること及びその通報内容が明らかになっ ことは争い,控訴人が開示に同意していなかったこと,P16が,本件回答を被控訴人P1とP18人事部長に同時に送信したことによって控訴人が本件内部通報の通報者であること及びその通報内容が明らかになったことについて控訴人に謝罪したこと,及び被控訴人P1によってされた第1配転命令が本件内部通報の結果であることは否認し,その余は認める。 コンプライアンス室は,以下のように,関係者間の関係修復をするために控訴人の承諾を得た上で,被控訴人P1らに本件回答を同時に送信した。 すなわち,控訴人は,平成19年6月11日の面談の際,P16が,「一連の状況を関係者に確認する必要があり,その場合には通報者及び通報内容が関係者にわかることになるが,それでもよいか」と質問したのに対し,情報開示を明確に許可しなかったが,同月26日,P17が電話で,「コンプライアンス室が関係者の間に入って関係修復の対応をすることはできるが,関係者に通報者及び通報内容が明らかになってもよいか」と重ねて質問したところ,「かまわないからお願いしたい。」と回答し,開示を承諾した。 P16は,控訴人からP4の従業員の採用についての情報源はP12であると聞いたことなどから,P12をも通報者と誤解して本件回答のあて先に入れて送信したため,P12に謝罪したのであり,控訴人に謝罪したのではない。 ウ控訴人の主張ウについて本件内部通報については,本件回答(甲12)記載のとおりの判断及び対処がされており,既に社内の正規の手続にのっとった対応が完了しているから,被控訴人会社が,かかる過去の通報に対して報復などする理由がない。また,本件内部通報は,公益性や正当性が認められる内部告発でも正当な権利行使でもない。すなわち,P4のP13の転職情報を拡散させたのは控訴人であり,P4のP11 通報に対して報復などする理由がない。また,本件内部通報は,公益性や正当性が認められる内部告発でも正当な権利行使でもない。すなわち,P4のP13の転職情報を拡散させたのは控訴人であり,P4のP11取締役にまで転職情報を漏洩した。また,控訴人はP10に対してライバル意識を抱き,P10の職場における地位を下げることを意図して通報したものである。そうでないとしても,控訴人の通報の目的は,控訴人自身のメール(甲18)にあるように,P4とのビジネス関係,IMS事業部内の人間関係の正常化についての相談であった。 エ控訴人の主張エについて否認ないし争う。 (4) 第1ないし第3配転命令によって被る不利益・不合理性(控訴人)営業職からSHM業務に異動する第1配転命令は,次のように控訴人に著しい不利益を与えるもので,かつ被控訴人会社の労働契約上の義務に反する著しく不合理なものである。 ア控訴人の営業職におけるキャリヤプラン(従来の蓄積)を無視するもので,被控訴人会社の人事制度における待遇決定の不可欠な基盤である職能形成の可能性が否定される。 昇格の適否については職場(職種)毎に作成した「能力開発ガイドライン」による評価が重視されるから,異なる職種への異動は昇格の機会を喪失させ(甲129の2),ひいては退職金,退職年金の減少をもたらす(制度の改定後,P2とE5では,掛金だけでも208万8000円の差があり,現実の受給額は,確定給付年金では指標利率により,確定拠出年金については運用利率によりさらに差が生じる。)。 また,昇給についても,能力開発ガイドラインに対して専門能力レベルがどの位置にあるか,前年度に比してどの程度向上したかを評価し,昇給に反映させるとされているから,異なる職種への異動は昇給の機会を喪失させるもので いても,能力開発ガイドラインに対して専門能力レベルがどの位置にあるか,前年度に比してどの程度向上したかを評価し,昇給に反映させるとされているから,異なる職種への異動は昇給の機会を喪失させるものである。 イ取引先や社内関係者との接触を包括的に禁止され,仕事を通じて形成された対内的,対外的な人間関係を否定された。 ウ上記のように昇格,昇給する機会を奪われ,また職場内外における労働者としての人格的評価を貶められることによって,退職への無言の圧力を与えられ続けた。このような精神的圧力は配置転換に伴い通常甘受すべき不利益をはるかに超えている。 エ第2配転命令及び第3配転命令による不利益も上記アないしウと同様である。 (被控訴人ら)控訴人の主張は否認する。第1配転命令は,控訴人をIMS事業部内で異動させるものにすぎず,仕事も与えられ,控訴人の勤務地,給与その他の処遇に関して一切変更は生じていない。職種変更を伴う配転があり得ることは人事制度に関する冊子も前提としている。昇格,昇給がなかったのは控訴人の反抗的態度等によるものである。 (5) まとめ(控訴人)以上のように,第1ないし第3配転命令は,被控訴人会社が労働契約上義務づけられているキャリアプランの結果に基づく適材適所の人事配置に反し,業務上の必要性がなく,控訴人による本件内部通報を無化するとの報復の意図・動機に基づくものである。また,内部通報をしたことを理由に職務・職場の配置や賃金などの労働条件について不利益な取扱いをしない運用規定にも反するものである。よって,被控訴人会社が控訴人に第1配転命令に従わせることは,配転命令にかかる権限を濫用するものであり,第1配転命令は違法・無効を免れない。第2及び第3配転命令も同様である。 (被控訴人ら)否認ないし 被控訴人会社が控訴人に第1配転命令に従わせることは,配転命令にかかる権限を濫用するものであり,第1配転命令は違法・無効を免れない。第2及び第3配転命令も同様である。 (被控訴人ら)否認ないし争う。 3 不法行為の成否(1) 被控訴人らの不法行為(控訴人)ア第1ないし第3配転命令の不法行為性控訴人による本件内部通報は,秘密保持契約を結ぶ取引先の基幹従業員を連続して引き抜くという上司(被控訴人P1及び同P2)の問題行為を中止させ,取引先との信頼関係を回復し,被控訴人会社の企業倫理と名誉の維持を目的とするものであったところ,被控訴人P1及び同P2は,本件内部通報に対する報復・制裁を目的とし,業務上の必要性のないことを認識した上で,第1配転命令をし,その延長として第2配転命令及び第3配転命令をした。これらの命令は,人間としての誇りや尊厳という控訴人の人格的利益を傷付けるものであるから,控訴人に対する故意による不法行為となる。仮に故意が認められないとしても過失による不法行為が成立する。 イ第1配転命令後のパワーハラスメント第1配転命令による配置以降,第3配転命令による現在の配置に至るまで,被控訴人P1,同P2及びその関係者は,控訴人に対し,意図的・組織的に不当な業務制限,業務指示,業務評価等のパワーハラスメントを加えており,その人格権侵害の程度は,控訴人に自殺の思いを抱かせるほど重大なもので,被控訴人P1らの故意による不法行為を構成する。仮に,そうでないとしても,これらの嫌がらせを辞めさせるなど適切な措置をとらずに放置した。 ウ被控訴人P1らの上記不法行為は被控訴人会社の事業を執行するにつき行われたものであるから,被控訴人会社は,その使用者として損害賠償義務がある。 (被控訴人ら)控訴人の らずに放置した。 ウ被控訴人P1らの上記不法行為は被控訴人会社の事業を執行するにつき行われたものであるから,被控訴人会社は,その使用者として損害賠償義務がある。 (被控訴人ら)控訴人の主張はいずれも否認ないし争う。 (2) 損害(控訴人)控訴人は,被控訴人らの不法行為により以下の損害を被った。 ア経済的損害控訴人は,本件配転命令後の被控訴人会社の不当な人事評価により,不合格点(100点未満)とされ,平成19年4月から同21年3月まで次のように賞与が減額された。 a 140PA期(平成19年4月から同年9月まで)基本給41万8600円賞与妥結月数 3.7か月合格点とした場合の賞与額 154万8820円総支給額 147万1400円差額 7万7420円b 140PB期(平成19年10月から同20年3月まで)基本給41万8600円賞与妥結月数 3.3か月合格点とした場合の賞与額 138万1380円総支給額 131万2300円差額 6万9080円c 141PA期(平成20年4月から同年9月まで)基本給42万1000円賞与妥結月数 2.8か月合格点とした場合の賞与額 117万8800円総支給額 111万9900円差額 5万8900円d 141PB期(平成20年10月から同21年3月まで)基本給42万1000円賞与妥結月数 1.6か月合格点とした場合の賞与額 67万3600円総支給額 63万9900円差額 3万3700円e 差額の合計 賞与妥結月数 1.6か月合格点とした場合の賞与額 67万3600円総支給額 63万9900円差額 3万3700円e 差額の合計 23万9100円イ慰謝料被控訴人らの不法行為によって控訴人の受けた精神的苦痛を慰謝するための金額は,876万0900円を下らない。 ウ弁護士費用弁護士費用としては100万円が相当因果関係のある損害である。 エまとめ以上のとおり,控訴人が被った損害の合計は1000万円である。 (被控訴人ら)否認する。 第5 当裁判所の判断 1 訴え変更の許否第1配転命令,第2配転命令及び第3配転命令は,配転時期,配転先及び配転後の業務内容をそれぞれ異にするが,第2配転命令は原審口頭弁論終結後に,第3配転命令はその9か月後の当審係属中にされたもので,いずれについても,控訴人を従来経験したことがない職務に配転したことについて,業務上の必要の有無,各配転命令の目的等をめぐり,被控訴人らが人事権を濫用したか否かが争点となり,控訴人は,第2配転命令及び第3配転命令は第1配転命令の延長線上にあると主張しているから,第1配転命令ないし第3配転命令の無効を主張し,各命令に従って就労する義務のないことの確認を求める第1の訴えないし第3の訴えは,いずれもその請求の基礎を同一にするというべきである。 被控訴人らは,第2の訴えへの変更及び第3の訴えへの変更の申立ては,著しく訴訟手続を遅滞させると主張するが,上記のとおり,第2配転命令は原審口頭弁論終結後に,第3配転命令は,控訴人本人尋問が実施された平成22年12月20日の第5回口頭弁論期日の直前である同年10月1日にされたものであり,各訴えの変更は,被控訴人会社によるこ 命令は原審口頭弁論終結後に,第3配転命令は,控訴人本人尋問が実施された平成22年12月20日の第5回口頭弁論期日の直前である同年10月1日にされたものであり,各訴えの変更は,被控訴人会社によるこれらの配転命令に対応してされたものであるから,これらの申立てが著しく訴訟手続を遅滞させるものということはできない。 よって,第1の訴えから第2の訴えに,第2の訴えから第3の訴えにそれぞれ交換的に変更することについて,これを許さない旨の決定はしない。 なお,被控訴人らは,上記各訴えの変更に異議を述べているが,その趣旨は,第2の訴え及び第3の訴えの追加に異議を述べるもので,交換的変更に伴う第1の訴え及び第2の訴えの取下げについて異議を述べるものではなく,交換的変更が認められる場合には,これらの取下げに同意するものと認められる。 2 第3配転命令は被控訴人会社が配転命令権を濫用したものであるか否か(その前提として第1配転命令及び第2配転命令は被控訴人会社が配転命令権を濫用したものであるか)について(1) 被控訴人会社は,従業員に対し,キャリアプランの結果に基づき適材適所の人事配置をすることを労働契約上義務づけられているかア控訴人は,被控訴人会社は「能力開発ガイドライン」を基礎とする資格制度を導入しており,その土台となるのがキャリアプランであるから,被控訴人会社は,従業員に対し,キャリアプランの結果に基づき適材適所の人事配置をすることを労働契約上義務づけられており,その観点からすると従業員が蓄積してきたキャリアを無にするような場合には,異職種への配転は許されないと主張するので,まずこの点につき判断する。 イ証拠(甲25,129の2,130,135,137,196,201,乙1,7,原審における被控訴人P1)及び弁論の全趣旨 ,異職種への配転は許されないと主張するので,まずこの点につき判断する。 イ証拠(甲25,129の2,130,135,137,196,201,乙1,7,原審における被控訴人P1)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 被控訴人会社におけるキャリアプランデータベースとは,各PA期(各年の4月から9月)の期初の育成面接において,労働組合員全員が自らのキャリアプランを登録するものである。人事部はこれを活用して,より職場ニーズや従業員本人のニーズにあった人事異動を実現できるよう尽力するものとされ,職制もこのデータベースを活用して,常に部下のキャリアプランを意識した育成を実施するように求められている。キャリアプランデータベースの登録内容としては,現職について感じていること,現在までの担当業務と達成目標,これまでに経験した職種,今後就きたい職種,能力開発テーマ,本人への育成コメント等がある。 しかし,被控訴人会社の就業規則及び労働協約にはキャリアプランに関して被控訴人会社の義務を定める規定はなく,被控訴人会社作成の「活力ある人と組織を目指してオリンパスの人事制度」及び「オリンパス『職場マネジメント』ハンドブック」(甲129の2,196)によってもキャリアプラン自体の位置づけあるいはキャリアプランについての上司の承認と配転との関係は,必ずしも明確ではない。そして,本件において控訴人の140Pキャリアプランである「IMS国内販売部NDTシステムグループにおけるNDTシステムの取引先への定着等」(最終更新日平成19年8月20日付け。甲135)を承認したのは第3階層(BM)である国内販売部長の被控訴人P2であり,本件第1配転を決定した被控訴人P1は第2階層(HM)であり,同プランに目を通していない。 このようにキャリア 付け。甲135)を承認したのは第3階層(BM)である国内販売部長の被控訴人P2であり,本件第1配転を決定した被控訴人P1は第2階層(HM)であり,同プランに目を通していない。 このようにキャリアプラン自体は原則的に従業員が作成するもので,上司の承認も単なるコメントの色彩が強く,人事部は,人事異動の際,従業員の希望に沿った人事異動を実現できるよう尽力するにすぎない。 ウ以上の諸点を総合すると,キャリアプランの記載自体を根拠として従業員の配置についての被控訴人会社の労働契約上の義務を認めることはできない。したがって,被控訴人会社は,労働契約において職種が限定されていない限り,業務上の必要に応じ,その裁量により労働者の勤務内容を決定することができるものと解され,控訴人と被控訴人会社との間に営業職,開発(技術)職というような職種の限定に関する明確な合意があったことを認めるに足りる証拠はない。 (2) 就業規則34条の「正当な理由」他方,使用者は,業務上の必要に応じ,その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが,転勤,特に転居を伴う転勤は,一般に,労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから,使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく,これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ,当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合でない限りは,当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである(最高裁判所昭和61年7月14日判決)。そ しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合でない限りは,当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである(最高裁判所昭和61年7月14日判決)。そして,業務上の必要性については,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといつた高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである(上記最高裁判所判決)。 本件における就業規則34条の「正当な理由がなければ,これ(配置転換)を拒むことはできない」との規定も,上記の観点から判断をすべきである。 (3) 不当な動機・目的の有無についてア証拠(甲1,9,12ないし23,28ないし35,37ないし39,41,43,44,61,74,78,96,101,129,130,134ないし136,143,155,186,192,193,198,199,乙1ないし17,原審における証人P18,証人P16,証人P22,控訴人本人及び被控訴人P1本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。なお,個別の事実の認定に関する主要な証拠は括弧内に掲記した。 (ア) 第1配転命令前の状況控訴人は,平成17年10月1日付けで,P5株式会社デジタルカメラ部門から被控訴人会社IMS事業部へ異動し,平成18年2月1日,同事業部のIMS企画営業部IMS東京グループのチームリーダーとなった(甲39)。控訴人は,同年5月16日,自らの「139Pキャリアプラン」に,担当業務の内容として顧客密着型(国内セールス,開発と協業)のスペシャルオーダーの受注及び販売拡大と記載し,被控訴人P1は,同年6月1 控訴人は,同年5月16日,自らの「139Pキャリアプラン」に,担当業務の内容として顧客密着型(国内セールス,開発と協業)のスペシャルオーダーの受注及び販売拡大と記載し,被控訴人P1は,同年6月1日,その育成者コメント欄に,「卓越した推進力と,困難な利害対立の場面もその障害を取り除き,正しい方向に導く交渉能力を有する。一方で,あまりにも率直な為,時として仕事の繋がり・目的・計画性が見えづらくなったり,強引になってしまうことがあり,問題意識を当事者意識としてより強く意識し取り組んでいってもらうことを期待する。」と記載した(甲134)。 同年7月1日,控訴人は,IMS企画営業部IMSマーケティンググループアプリケーションチームのチームリーダーとなった(甲39)。 被控訴人会社は,控訴人について「2007年度Eゾーン昇格候補者推薦書」(Eゾーンは経営職層としての最上位資格である)を作成し,推薦機能として「営業販促」とし,被推薦者の今後の課題として,上記「139Pキャリアプラン」の育成コメントとほぼ同様の記載がされたが(甲143),同年10月ころ作成された「2007年度Eゾーン昇格検討業務最終分科会用評定集計表」は,控訴人について,「フィージビリティー(実現可能性)のある具体的な戦略の策定において指導力を発揮し具体的な提案としての成果が必要」と指摘し,昇格はなかった(乙15)。 同年10月12日,被控訴人P1は,控訴人に対し,ONDTへの異動を内示した。このころ,被控訴人P2は,控訴人に対し,取引先の従業員が中途採用によりONDTに入社する予定があることを伝えた。 同年11月,控訴人は,ONDTにおいてNDTシステムの営業を担当することとなり,同年12月,P4からP10がONDTに入社した。 平成19年2月15日,控訴人 に入社する予定があることを伝えた。 同年11月,控訴人は,ONDTにおいてNDTシステムの営業を担当することとなり,同年12月,P4からP10がONDTに入社した。 平成19年2月15日,控訴人は,P4を訪問した際に,P4のP11取締役からP10にP4の従業員との連絡を取らせないように言われ,被控訴人P2にその旨を伝えた。 同年3月28日,被控訴人P2は,控訴人の139PB期の評価表を作成し,第1次評価として116点とし,「課題としては,NDTシステムG統括として,技術,営業をしっかりとマネジメントし,且つ顧客の信頼を維持向上させながらも,Quebecを巻き込んだ新体制構築をできるだけ早期実現させる事に向かっての取り組みである」と記載した(甲32)。 同年4月1日付けで,ONDTは,被控訴人会社に吸収合併され,同日付で,控訴人はIMS事業部のIMS国内販売部NDTシステムグループ営業チームリーダーに(甲39),P10は同グループ技術チームリーダーにそれぞれ任命された。控訴人の名刺には,「部長付NDTシステム統括」との肩書が付された(原審における控訴人本人)。 同月上旬,控訴人は,同グループ技術チームに入ったP12から,P10が,「P4からP10の後輩が入社することになっている,3号機の受注をおみやげとして持ってくる,P23には内緒にしておくように。」と言っていたことを聞かされ,同月12日,被控訴人P1に対し,P4からの二人目の転職希望者の採用はとりやめるべきであるなどと述べた。 翌13日,控訴人は,被控訴人P2に対し,上記のP12から聞き取ったP10の発言内容及びP10の発言は社内機密事項の漏洩であり厳しい措置と指導が必要という意見を記した電子メールを送り,被控訴人P2は,同P1に上記電子メールを転送して相談した のP12から聞き取ったP10の発言内容及びP10の発言は社内機密事項の漏洩であり厳しい措置と指導が必要という意見を記した電子メールを送り,被控訴人P2は,同P1に上記電子メールを転送して相談したが,同P1は,同P2に対し,「P23にはあまり大騒ぎするなと言ってください,他に大事なことはたくさんあります」などという電子メールを送信した(乙13)。 そして,同月16日9時56分,被控訴人P1は,控訴人に対し,「控訴人が被控訴人P1に提言しに来たのは大間違い,控訴人のボスは被控訴人P2だ,すべてのことはP1-P2-控訴人-メンバー(顧問であるP6。元P3社の副社長)の指揮命令系統で動くことだ,被控訴人P2がP4のことは任せろと控訴人に指示したにもかかわらずP6のコメントを伝えるのも大間違い」などという内容の電子メールを送信した(甲9)。同日11時28分,被控訴人P2は,控訴人に対し,「P10君にはP2より口頭にて厳重に注意する,当日の参加者及び他のメンバーへのアクションは起こさない」などという内容の電子メールを送信した(乙13の2)。 同月下旬,控訴人は,P12に誘われ,P10からP4から入社することになっているのは同社設備部所属のP13であり,内定していることを聞き出したところ,被控訴人P1から再度,P4のことは被控訴人P2に任せろという内容の電話がかかってきた(甲96)。 同年5月15日,被控訴人P1は,P4を訪れて同社のP11取締役と面談し,P13の転職につき了解を得ようとしたが,同取締役がP13の件を既に知っており不快感を示したため,話を進めるのを断念した。 控訴人は,翌日,立腹したP11取締役から電話を受けた。 同月21日,控訴人,被控訴人P1,被控訴人P2及びP10が,被控訴人会社新宿本社の25階応接室で 快感を示したため,話を進めるのを断念した。 控訴人は,翌日,立腹したP11取締役から電話を受けた。 同月21日,控訴人,被控訴人P1,被控訴人P2及びP10が,被控訴人会社新宿本社の25階応接室で会合し,応接室にはホワイトボードが置かれた。控訴人は,携帯電話に電話がかかってきたのを機に自ら応接室を退出した。 同年6月11日ころ,控訴人は,被控訴人会社のコンプライアンスヘルプラインに電話をかけ,コンプライアンス室長のP16とその部下であるP17が,控訴人及び控訴人に付き添ったP15と会い,控訴人及びP15は,P16及びP17に,P4からの従業員(P10)転職の件を説明し,P4からの第2,第3の従業員引抜きが発生する可能性を否定できない,顧客であるP4からの信頼失墜を招くことを防ぎたいと考えている等と相談した。 同月27日,P16とP17が,通報者が控訴人であることを告げた上,被控訴人P1から事情を聴取した(乙9,原審における被控訴人P1本人,弁論の全趣旨)。 同年7月3日14時36分,P16が,控訴人に対し,コンプライアンス室への相談に対する回答として電子メールを送信した(以下「本件回答」という。)。その内容は,P10の採用については「取引先担当者を採用することは,取引先との良好な関係を維持・継続するうえで十分な注意が必要である。」,その後の採用については「OT人事部から慎重な対応を求めるなど,注意を促すなかで本件が発生し,中止されている。…重要取引先から続けて2人を採用することについては,たとえ本人の意思による転職であっても,先方に対する配慮を欠いたといわざるを得ない。…先方への事前調整等があってしかるべきであった。」,本件に対する処置については「取引先担当者の採用に関する注意喚起採用に関しては人事部がチェッ ても,先方に対する配慮を欠いたといわざるを得ない。…先方への事前調整等があってしかるべきであった。」,本件に対する処置については「取引先担当者の採用に関する注意喚起採用に関しては人事部がチェックし,問題があれば個々に注意しており,改めて注意喚起を行うかどうかは人事部に一任する。人事部では,取引先担当者の採用に関する明文化された基準はないが,基本的には道義的な問題があり,”採用は控える”というのが原則だと考えている。採用する場合には,当事者が当社への転職を希望し,取引先と当社との間で機密保持誓約を含む同意が成立しない限り行わないこととしている。」,などというものであった。そして,この電子メールは,控訴人に加えP12をも宛先としており,被控訴人P1,P18人事部長へも同時に送信された(甲12)。そのため,同日,P15,P12,控訴人,P16,P17の5名が会合を持ち,P16は,控訴人及びP12に対し,P12を通報者として扱ったことについて謝罪した(控訴人に対して機密保持の約束を守らなかったことについて謝罪したか否かについては,後記イの(イ)において判断する)。 同日20時58分,P16は,被控訴人P1に対し,控訴人及びP12らに深く謝罪したこと,被控訴人P1にも直接事情を説明したい旨の電子メールを送信し,控訴人にも同時に送信した(甲13)。 P16は,翌4日9時49分,控訴人に対し,「昨日は大変ご迷惑をお掛けしました。重ねてお詫び申し上げます。」との電子メールを送信し,同日12時23分,P12に対し,本件回答の宛先に「(控訴人の名前と共に)P12様のお名前を記載しましたが,本件ヘルプラインにP12様は関係しておらず,誤って記載・配信してしまいました。また,本件に関し,機密保持の約束を守らずにP12様およびP1HM, 人の名前と共に)P12様のお名前を記載しましたが,本件ヘルプラインにP12様は関係しておらず,誤って記載・配信してしまいました。また,本件に関し,機密保持の約束を守らずにP12様およびP1HM,P18BMにメールを配信してしまいました。上記2点,訂正させていただくとともに,重ねて深くお詫び申し上げます。」との電子メールを送信し,控訴人にも同時に送信し(乙6),さらに同日13時10分,P12に対し,直前の上記電子メールの「本件に関し,機密保持の約束を守らずに」の部分を「本件に関し,P23様との機密保持の約束を守らずに」と訂正した電子メールを再度送信し,控訴人にも同時に送信した(甲14)。 同月9日15時38分,P16は,控訴人に対し,「P19取締役も入ってもらって,被控訴人P1,被控訴人P2,控訴人,P12及びP16とで関係正常化への打合せを設定したい,7月12日御都合はつくでしょうか」などと記載した電子メールを送信し(甲16),同日16時17分,控訴人は,P16に対し,「1.日時 7月12日(木)PM1:30以降なら何時でもOKです。2.メンバーあくまで,業務及び人間関係両側面の正常化が狙いである事の軸は振れておりませんので,P2BMは勿論入って頂き,以下のメンバーでお願いします。P19取締役,P1HM,P2BM,P16BM,P12,P23」などと記載した電子メールを返信した(甲18)。 同月12日,P19取締役,被控訴人P1,被控訴人P2,P16,P12及び控訴人との関係修復の会合が持たれた。 被控訴人P1は,同月ころ,控訴人の第1配転命令について検討を始めた(原審における被控訴人P1)。 同年8月8日,P19取締役,被控訴人P2及び控訴人が姫路のP4を訪問し,P19取締役は,P4のP11取締役に対し,同 第1配転命令について検討を始めた(原審における被控訴人P1)。 同年8月8日,P19取締役,被控訴人P2及び控訴人が姫路のP4を訪問し,P19取締役は,P4のP11取締役に対し,同社からP10に続きP13の採用を予定していたことについて謝罪した。 同年8月18日,控訴人は,被控訴人会社に対し,具体的な異動希望について,短期的,中期的及び長期的のいずれも,「事業部や商品分野」としては「NDTシステム」,「希望部署名」としては「IMS国内販売部NDTシステムグループ」と記載した「140Pキャリアプラン」を提出し,同月20日,被控訴人P2は,上記プランの育成コメント欄に「非破壊分野とは言え,IMS事業部に取って全く新しいビジネスとなるシステム製品の販売を担当している。従来組織からの世代交代を押し進めつつ新販売体制構築に取り組んでいる。今までに蓄積した知識と経験をフルに活用し事業拡大に尽力することを期待する。」と記載した(甲135)。 (イ) 第1配転命令控訴人は,平成19年8月27日,被控訴人P1,被控訴人P2及びIMS企画営業部長であるP22部長と面談し,同年10月1日付けで予定されていた第1配転命令の説明を受けた(甲23)。控訴人は,被控訴人P2及びP22に席を外してもらって被控訴人P1と2人で話をし,さらに同被控訴人とともにP19取締役の部屋を訪れるなどしたが,異動に納得できなかった。翌28日,被控訴人P2は,控訴人に対し,「明日以降のユーザー訪問をキャンセルして,明朝,被控訴人会社の新宿本社に出社」することを指示するメールを送信した(甲20)。 控訴人は,同月29日,被控訴人会社代表取締役社長に対し,P16が作成した平成19年7月3日20時58分の被控訴人P1に対する電子メール(甲13)及び同月4日13時 るメールを送信した(甲20)。 控訴人は,同月29日,被控訴人会社代表取締役社長に対し,P16が作成した平成19年7月3日20時58分の被控訴人P1に対する電子メール(甲13)及び同月4日13時10分のP12に対する電子メール(甲14)を添付して,「オリンパスにとって,高価なシステムの採用を英断して頂いた,P4殿からの信頼が大失墜している中,一歩間違えると会社にとっても本当に大変な事になりかねない,信頼回復に向け,会社として決してマイナスにはならない様,これまでの経緯,状況精査」してほしい旨の電子メールを送信した(甲78)。 控訴人は,第1配転命令の話や外部との接触禁止の指示等に精神的ショックを受け,労働組合の担当者のアドバイスもあって,同月31日から同年9月14日まで,有給休暇と代休を取得した(甲96,186)。 被控訴人P2は,同年9月3日,控訴人に対し,ユーザー訪問キャンセルを指示した理由はユーザー側で混乱が生じているので窓口を一本化することと説明し,同様の理由により,当面,控訴人が全ユーザー,業務委託先,ONDT等担当者へメール,電話等による連絡を取らないことを指示する電子メールを送信した(甲21)。 被控訴人P2とP22は,同年9月24日,控訴人に対し,同年10月1日付けでIMS企画営業部部長付となり,新事業創生探索活動業務に携わるとの人事異動を内示した。異動先において控訴人には部下はおらず,新たな直属の上司は定年後再雇用されたP8であった。同日,控訴人は,正式な異動前であったが,P8から被控訴人会社から貸与されたモバイル通信用カードと携帯電話を返却するように指示された。 同年10月1日,控訴人は,IMS企画営業部部長付に着任した。なお,NDTシステムグループの所属はそれまでのIMS事業部のIMS国内 たモバイル通信用カードと携帯電話を返却するように指示された。 同年10月1日,控訴人は,IMS企画営業部部長付に着任した。なお,NDTシステムグループの所属はそれまでのIMS事業部のIMS国内販売部から同事業部のIMS企画営業部に変更され,国内販売部の部長である被控訴人P2はP4を取引先とするNDTシステムグループを担当しなくなり,また,控訴人の後任として,新事業創生探索活動業務を担当していたP9がグループリーダーに就任した(甲23)。 被控訴人P2は,同年12月5日,控訴人と,140PA期(平成19年4月から同年9月まで)の評価フィードバックを行うための面接をした(甲29,30の1及び2)。その際,交付された「第140PA業務目標設定カード」の「リーダー評価」欄及び対象期140PAの「評価表」の「一次評価」欄のいずれにも,「業務指示違反及び社内情報の顧客への漏洩」との記載があったが,控訴人の抗議により被控訴人P2は後者の「社内情報の顧客への漏洩」を「組織の規律を乱した」に書き換えた(乙7)。 (ウ) 第2配転命令。 控訴人は,被控訴人会社の平成22年1月1日付け第2配転命令によって,被控訴人会社ライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部部長付への異動を命じられた(乙26)。 (エ) 第3配転命令控訴人は,被控訴人会社の平成22年10月1日付け第3配転命令によって,被控訴人会社ライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部システム品質グループへの異動を命じられた(乙26)。 イ以上の認定事実を前提として検討する。 (ア) 控訴人によるコンプライアンス室に対する通報内容及びコンプライアンス室の認識について控訴人が平成19年6月11日,コンプライアンス室のP16及びP17に対し,P4 討する。 (ア) 控訴人によるコンプライアンス室に対する通報内容及びコンプライアンス室の認識について控訴人が平成19年6月11日,コンプライアンス室のP16及びP17に対し,P4からの従業員引抜きの件を説明し,それが今後も実行されるかもしれないし,顧客からの信頼失墜を招くことを防ぎたいと考えているとの本件内部通報をしたことは前記認定のとおりであるところ,同年7月3日の本件回答は「P4(株)から担当者(技術TP10TL)を採用したこと」などについて回答するものであったこと,同年8月29日に控訴人が被控訴人会社代表取締役社長に送信した電子メールには,P4からの信頼を失墜している中,信頼回復に向けて精査されたいなどと記載されていること等を総合すれば,控訴人の本件内部通報の内容についてのコンプライアンス室の認識も,取引先のP4従業員の被控訴人会社への転職によって生じるおそれのある,同社を始めとする取引先からの信用失墜などのビジネス関係の悪化に関するものであったと認められる。控訴人は,営業秘密の漏洩又は侵害等,不正競争防止法違反の可能性なども通報の内容であった旨主張し,控訴人本人はこれにそう供述をする(原審)が,控訴人の平成19年6月12日付けのP16への転送メール(被控訴人P1及び同P2とのやり取りを転送したもの),同年8月29日の被控訴人会社代表取締役に対する電子メール及び控訴人代理人の同年12月25日の内容証明郵便のいずれにおいても,不正競争防止法についての言及はないことなどに照らすと,上記供述は採用できない。 このように,控訴人の通報内容は取引先からの信用が失墜することを危惧するものであり,P10が入社後の平成19年2月に控訴人がP4を訪れた際,同社のP11取締役が,P10に同社の従業員と連絡をとら このように,控訴人の通報内容は取引先からの信用が失墜することを危惧するものであり,P10が入社後の平成19年2月に控訴人がP4を訪れた際,同社のP11取締役が,P10に同社の従業員と連絡をとらせないよう申し入れるなど,P10の転職について相当の警戒感,不快感を示したこと(甲96,198,199,原審・控訴人本人)などに照らすと,その危惧は相当の根拠を持つものであったというべきであり,現に,同年5月にP4を訪れた被控訴人P1は,「この二人目の方も先方にご相談にいかにゃいかんなということで,私はP4さんのほうに参りまして…,既にP4さんのほうの責任者の方がこの二人目の希望者のことを御存じでありました。大変気分をもう既に害されておられまして,それ以上は私のほうからその話を進めるわけにいかなくなりました」と供述し(原審における被控訴人P1),P19取締役から「人材採用の件はP4との間でも一件落着したと認識している。十分に反省して,二度と取引先との間で問題を起こさないように。」などとの注意を受けた旨陳述し(乙7),P16も「P1事業部長は,『P4の元従業員であるP10氏についてはP4の役員の了解を得た上で採用したが,二人目についてはP4から抗議を受けたため採用を取りやめており,この件に関してP4との関係は既に決着している』と話していました。」と陳述している(乙8)ところである。もっとも,被控訴人P1本人(原審)は,P10の転職についてはP4側も快諾していたと供述し,同人の陳述書(乙7)にも同旨の記載があるが,乙16号証(P10の件に関する被控訴人P1のP4P11取締役宛のメール)に添付された平成18年11月13日付けの同取締役のメールの記載内容(「今後とも貴社とはフェーズドアレイで密接な関係を持つ事になりますが,今回の件 関する被控訴人P1のP4P11取締役宛のメール)に添付された平成18年11月13日付けの同取締役のメールの記載内容(「今後とも貴社とはフェーズドアレイで密接な関係を持つ事になりますが,今回の件に関連してご相談をさせていただく事が出てくると思います。」)や,上記の平成19年2月の同取締役の対応に照らすと,上記供述等は,たやすく採用できない。 また,被控訴人らは,控訴人がP4のP11取締役に二人目の転職情報を漏洩した旨,また,本件内部通報の意図は控訴人がライバル意識を抱いたP10の職場における地位を下げることであった旨主張し,被控訴人P1本人の原審における供述及び陳述書(乙7)にはこれにそう部分がある。しかし,前者については,控訴人の立場上,そのようなことを取引先のP11取締役に伝えることは不合理であって,原審における控訴人本人尋問の結果に照らしても,被控訴人P1の上記供述部分等はたやすく信用できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。後者については,前記認定事実によれば,控訴人は,P10の,P4からの転職情報を被控訴人会社内に漏らしたという言動を問題として指摘したものと認められ,被控訴人ら主張のような意図があったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件内部通報は,少なくとも運用規定第4条(1)の行動規範(第1章第2項「企業活動を展開する上で,企業活動を行なう国や地域の法令や文化,慣習を理解することに努めます。したがって,法令はもとより,倫理に反した活動や,これにより利益を得るような行為はしません。」との規定)に反する,または反する可能性があると感じる行為に該当するし,さらには運用規定第4条(2)の「業務において生じた法令違反等や企業倫理上の疑問や相談」にも該当する。したがって,コンプライアンス室のP1 反する,または反する可能性があると感じる行為に該当するし,さらには運用規定第4条(2)の「業務において生じた法令違反等や企業倫理上の疑問や相談」にも該当する。したがって,コンプライアンス室のP16らは,控訴人の秘密を守りつつ,本件内部通報を適正に処理しなければならなかったというべきである。 (イ) コンプライアンス室の対応及び被控訴人P1が本件内部通報を知ったことについて運用規定第14条2項は,コンプライアンス室の担当者は,通報者本人の承諾を得た場合を除き,通報者の氏名等,個人の特定されうる情報を他に開示してはならないと定めているところ,コンプライアンス室長であるP16は,平成19年7月3日14時36分,控訴人に対し,本件回答として電子メールを送信したが,この電子メールは,控訴人とP12を宛先として,被控訴人P1,人事部長であるP18へも同時に送信したものであった(甲12)。被控訴人らは,P16及びP17は,控訴人の承諾を得た上で被控訴人P1らに同時に送信した旨主張し,それに沿った陳述及び供述をする(乙9,同11。原審における証人P16)。しかし,控訴人本人がこれを明確に否定する供述をしている(原審)ことに加え,P16は,翌4日9時49分,控訴人に対し,「昨日は大変ご迷惑をお掛けしました。重ねてお詫び申し上げます。」との電子メールを送信し(甲15),同日13時10分,控訴人にも同時に送信したP12宛ての電子メールにおいて,「本件に関し,P23様との機密保持の約束を守らずにP12様およびP1HM,P18BMにメールを配信してしまいました。」と記載したこと(甲14。原審証人P16は,「P23様との機密保持の約束を守らずに」の部分は控訴人の要求によって挿入したものである旨供述するが,後記のとおり,虚偽の記載を強いら た。」と記載したこと(甲14。原審証人P16は,「P23様との機密保持の約束を守らずに」の部分は控訴人の要求によって挿入したものである旨供述するが,後記のとおり,虚偽の記載を強いられたという趣旨においては採用できない。)に照らすと,控訴人が自らの氏名等の特定情報及び通報内容の開示を承諾したという上記陳述等は直ちに採用できない。 もっとも,P16は,本件回答の冒頭で「今回の通報は,通報者とその内容を人事部および職制に開示することについて承諾を得た上で,具体的な経過を確認」したと,控訴人の承諾を得たことを前提とした記載をしている(甲12)が,被控訴人らの主張によっても控訴人が承諾した相手はP17であり,同人とP16との間で意思疎通の齟齬があった結果,このような記載になった可能性も否定できないから,この記載をもって控訴人の承諾があったと直ちに認めることはできない。また,秘密保持を守らなかったことについての謝罪文言がある電子メール(乙6,甲14)がともにP12宛とされ,控訴人に対してはカーボンコピー送信(CC)とされたことについて,控訴人本人は,原審において,「私宛にしてくれと言ったら,P16さんがちょっと抵抗するだろうと,やってくれないだろうと,そういうことで,私は,P12君でいいから,私はCCでいいから,事実だけを書いて下さいということで言った」ためであると供述し,開示を承諾していないという控訴人の発言としてはやや不自然であるが,その当時は,通報していないにもかかわらず通報者とされたP12の怒りが強く,控訴人がそのことにも配慮した結果と理解できないものではない。かえって控訴人から氏名等の開示について承諾を得たと主張しているP16が,平成19年7月3日にP12と控訴人に責め立てられてやむなく要求を受け入れ,その翌日に「 した結果と理解できないものではない。かえって控訴人から氏名等の開示について承諾を得たと主張しているP16が,平成19年7月3日にP12と控訴人に責め立てられてやむなく要求を受け入れ,その翌日に「本件に関し,機密保持の約束を守らずに」という謝罪の電子メール(乙6)を送信し,さらにその直後に,控訴人から要求されるままに,当該部分を「本件に関し,P23様との機密保持の約束を守らずに」と訂正した謝罪のメール(甲14)を送信した(乙9,原審証人P16)というのは,虚偽の訂正をしたという趣旨であるとすると,コンプライアンス室の対応として余りに安易であり,不自然極まりない。また,乙6号証の「本件に関し,機密保持の約束を守らずにP12様およびP1HM,P18BMにメールを配信してしまいました。」という内容は,通報者である控訴人以外のP12,被控訴人P1及びP18に電子メールを送信したことを控訴人に謝罪していることを意味すると解するのが自然であるから,結局,同号証と甲14号証の内容は同様である。 以上のとおり,控訴人が自らの氏名等の特定情報及び通報内容の開示を承諾したと認めることはできず,コンプライアンス室の対応は本件規定第14条の守秘義務に違反したものというべきである。 (ウ) 第1配転命令の動機・目的被控訴人P1が,本件内部通報に先立つ平成19年4月12日に控訴人からP4からの二人目の採用は取りやめるべきであると言われたことについて,同月16日,控訴人に対し,被控訴人P2にやり方は任せろと指示したはずで,控訴人は大間違いをしている旨の電子メールを送信したことは前記認定のとおりであるところ,証拠(甲57,乙7,8,13,原審における被控訴人P1本人)によれば,被控訴人P1は,その後同年5月15日に被控訴人P2と共にP13の転 の電子メールを送信したことは前記認定のとおりであるところ,証拠(甲57,乙7,8,13,原審における被控訴人P1本人)によれば,被控訴人P1は,その後同年5月15日に被控訴人P2と共にP13の転籍について了解を得るためにP4を訪問したが,同社のP11取締役が既にP13が転職を希望していることを知り大変気分を害していたため,話の進めようがなかったこと,同月21日に控訴人,被控訴人P1,被控訴人P2,P10の4名が本社25階の会議室で面談したが,被控訴人P1は中途半端な面談であったと感じ,再度控訴人と2人だけで話しをすることを希望したこと,しかし,その後も被控訴人P1と控訴人との面談はされなかったこと,同年6月27日に被控訴人P1がP16とP17からP4からの転職者等について事情聴取され,それを通報したのは控訴人であることを知ったこと,同年7月12日の関係修復の会合でP19取締役からP4からの人材採用の件で注意されたことが認められる。さらに,乙7号証及び原審における被控訴人P1本人の尋問結果によると,被控訴人P1は,上記のとおり平成19年5月15日にP4を訪れた際,同社のP11取締役がP13の被控訴人会社への転職希望を知っていたのは,控訴人が同取締役に告げていたからであると認識しており,P13の採用につきP4の了解を得る話を進めることができず,結局これを断念せざるを得なかったのは,控訴人のこの言動に一因があると考えていたことが認められるが,P4がP10の転職を快諾していたとまではいえないこと及び控訴人がP11取締役にP13の件を告げたことが認められないことは前記のとおりである。 もっとも,P10やP13の被控訴人会社への採用の可否は,対外的,対内的に様々な要素を考慮すべき人事案件として,徒に多くの者が関与して判断す を告げたことが認められないことは前記のとおりである。 もっとも,P10やP13の被控訴人会社への採用の可否は,対外的,対内的に様々な要素を考慮すべき人事案件として,徒に多くの者が関与して判断すべきものではないが,控訴人は,P4を重要な顧客とするNDTシステムグループの営業チームリーダーとして,同社の従業員の被控訴人会社への転職の情報を得た場合,その事情を調査し,取引上の影響が危惧される場合に,上司にその旨を具申するのは当然であって,このことは被控訴人P1も認めるところである(原審・被控訴人P1本人)。 そして,控訴人がP11取締役にP13の件を告げたことなどが認められないことは前記のとおりであり,他に控訴人の言動が,上記の立場を超えるものであったことを認めるに足りる証拠はない。 また,証拠(甲37,96)によれば,平成19年8月8日にP19取締役らがP4に赴きP13の件などについて謝罪した後も,P4側は,被控訴人会社に対する不信感,不快感を抱いており,控訴人も完全に信用されていたわけではないことが認められるから,被控訴人会社としては,「部長付NDTシステム統括」との肩書でP4との取引を担当する控訴人を配転してNDTシステムグループから外すことにより,同社との関係の修復を図るということも考えられるが,そうであれば,P10らの転職に関与していない控訴人に対しては,配転を内示するに当たり,その趣旨を説明すべきところ,このような説明がされたことについては,主張も立証もない。前記のとおり,控訴人は,第1配転の説明を受けた後,組合からアドバイスは受けたこともあって2週間程度有給休暇等をとっているが,その間,被控訴人P2とはメール等で連絡が取れており,また,上記第1配転の説明から配転命令まで1か月以上あったのであるから,控訴人 アドバイスは受けたこともあって2週間程度有給休暇等をとっているが,その間,被控訴人P2とはメール等で連絡が取れており,また,上記第1配転の説明から配転命令まで1か月以上あったのであるから,控訴人の休暇取得のために配転命令の趣旨の説明ができなかったということはできない。 以上の事実を総合すれば,被控訴人P1は,控訴人の言動によってP4からの二人目(P13)の転職を阻止されたと考え,さらにはその後もIMS事業部内における被控訴人P1らと控訴人との人間関係の悪化が解消しなかったことを問題視し,不快の念を抱いたと推認できる。 これに加えて,第1配転命令は,控訴人がNDTシステムグループ営業チームリーダーの職位に就いた僅か半年後にされたものであること,被控訴人P1が第1配転命令を検討し始めたのは控訴人が本件内部通報をしたことを知った直後の平成19年7月であり,第1配転命令の予定が控訴人に説明されたのが同年8月27日であること,及び後記(4)で認定の第1配転命令の内容や,これについての業務上の必要性の程度に鑑みれば,被控訴人P1は,控訴人のP4の従業員転職に関する本件内部通報を含む一連の言動が控訴人の立場上やむを得ずされた正当なものであったにもかかわらず,これを問題視し,業務上の必要性とは無関係に,主として個人的な感情に基づき,いわば制裁的に第1配転命令をしたものと推認できる。そして,控訴人が本件内部通報をしたことをその動機の一つとしている点において,第1配転命令は,通報による不利益取扱を禁止した運用規定にも反するものである。 もっとも,被控訴人P1が,控訴人がP4のP11取締役にP13の件を事前に告げたと認識していたことは前記のとおりであり,これが事実であれば,被控訴人会社の従業員としての控訴人の言動に問題があったといえ とも,被控訴人P1が,控訴人がP4のP11取締役にP13の件を事前に告げたと認識していたことは前記のとおりであり,これが事実であれば,被控訴人会社の従業員としての控訴人の言動に問題があったといえるが,上記事実が認められないことも前記のとおりであって,被控訴人P1は,この点につき,少なくとも過失責任を免れない。 (エ) 第2配転命令及び第3配転命令の動機・目的第2配転命令及び第3配転命令により控訴人が配置されたライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部は,IMS事業部長である被控訴人P1の担当する部署ではないが,第2配転命令が控訴人の本件訴訟提起後に,第3配転命令が第2配転命令の9か月後にされたものであること,後記認定のとおり,各配転命令による配置先における控訴人の担当職務は,第1配転命令前の控訴人の経歴にそぐわないものであること等をしんしゃくすると,第2配転命令及び第3配転命令は,いずれも本来の業務上の必要性や控訴人の適性とは無関係に,第1配転命令の延長としてされたものと推認できる。 (4) 業務上の必要性(人員配置の変更を行う必要性)の有無についてア新事業創生探索活動について(ア) 新事業創生探索活動の内容及び重要性についての認定判断は,原判決37頁23行目から38頁13行目までに説示のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決38頁11行目の「このような」から13行目末尾までを「このような最先端技術の動向を見すえ,常に新規事業の開拓可能性を検討し続けてゆく活動は極めて重要である。」に改める)。 (イ) 被控訴人会社における新事業創生探索活動の取組み及び人員配置の変更を行う業務上の必要性が認められることについては,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決38頁14行目から40頁16行目までに 人会社における新事業創生探索活動の取組み及び人員配置の変更を行う業務上の必要性が認められることについては,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決38頁14行目から40頁16行目までに説示のとおりであるから,これを引用する。 a 原判決39頁1行目の「IMS周辺新事業探索」から3行目末尾までを「IMS事業部方針及び重点施策として,IMS周辺新事業探索-将来成長に向けてという項目があり,その細項目の一つとして,構造物ヘルスモニタリング技術フィージビリティーと事業性検討が掲げられていた(乙4の1)。」に改め,24行目の「(甲51)」を削る。 b 原判決40頁11行目の「乙4。」を「乙4の2。」に,12行目から14行目までを以下のとおりに,それぞれ改める。 「 以上の認定事実を総合すれば,新事業創生探索活動としてのSHMのフィージビリティーと事業性の検証作業は,短期的な成果を期待できないものの,長期的な成果が否定されるものではなく,被告(被控訴人)会社の非破壊検査ビジネスの拡大という観点から検証作業を継続することが必要かつ重要であったことが認められる。」(ウ) 控訴人の新事業創生探索活動の担当者としての適性についてa 証拠(甲39,218,230,乙5,7,原審における被控訴人P1本人,当審における控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 控訴人は,P24高等専門学校で機械工学を専攻し,卒業後はP25株式会社に3年間勤務した後,昭和60年に被控訴人会社に入社し,入社後約9年,技術者としてカメラの研究開発部門に所属したが,その後,営業部門に移り,国内及び米国において営業職の経験をし,被控訴人会社IMS事業部への異動後は,NDT機器の販売営業業務に従事していた。また,控訴人は,上記のとおり,被控訴人 門に所属したが,その後,営業部門に移り,国内及び米国において営業職の経験をし,被控訴人会社IMS事業部への異動後は,NDT機器の販売営業業務に従事していた。また,控訴人は,上記のとおり,被控訴人会社の米国法人において数年間営業職を務めた経験を有しており,いわゆるビジネス英語にたん能である。 そして,前記のように新事業創生探索活動の具体的内容は,自らが研究開発をするのではなく,文献や研究者,技術者,ユーザーなどが集うシンポジウム等から情報を収集して,諸外国におけるSHMの研究やビジネス化の動向,市場のSHMに対するニーズの状況等を把握すること,これらをレポートにまとめ情報を共有すること,被控訴人会社内でどのようにビジネス化するかについて関連部門の担当者と議論して協議することにある。 しかし,現在のところ,SHM技術の専門性は著しく高度であり,控訴人の上司であったP8はP26大学工学部の,前任者であるP9はP27大学大学院の出身であるのに対し,工業高等専門学校出身の控訴人がこれを理解するのは多大な努力をもってしても相当に困難であり,控訴人の英語能力も技術的専門性の高い専門英語についてのものではない。また,SHMの実用化は相当先であり,控訴人の営業経験を活かして評価することが可能な段階,すなわち実用化された技術の販売戦略を検証する段階にはなかった。そして,P8及びP9は,いずれも新事業創生探索活動以外の業務も担当していたのに対し,第1配転命令は,控訴人に新事業創生探索活動の業務に専心することを求めるものであった。 b 以上の事実を総合すると,新事業創生探索活動の担当者として控訴人に適性があると判断したことについては,合理性・必要性を全く否定することはできないものの,相当程度の疑問があり,NDTシステムグループ営業 の事実を総合すると,新事業創生探索活動の担当者として控訴人に適性があると判断したことについては,合理性・必要性を全く否定することはできないものの,相当程度の疑問があり,NDTシステムグループ営業チームリーダーの職に就いて僅か半年しか経過していなかった控訴人に新事業創生探索活動の業務に専心させることとしたことについて,業務上の必要性が高かったものとは認め難い。 イ第2配転命令及び第3配転命令による品質保証業務について(ア) 品質保証業務については,被控訴人会社が精密機械等の製造会社である以上,一般論として,当該業務に業務上の必要性が認められることはいうまでもない。 (イ) しかしながら,50歳になろうとする控訴人が第2配転命令及び第3配転命令により担当することとされた業務は,顕微鏡及び品質保証の勉強と月1回のテストであって(甲226~228),この業務は,新入社員と同様であり,上記ア(ウ)の控訴人の能力や経験とも関係がない(甲204,207,208,213,)から,品質保証業務の担当者として控訴人を選択したことには大きな疑問がある。 (5) 第1配転命令ないし第3配転命令によって被る不利益・不合理性について控訴人を,その営業職におけるキャリアプラン(従来の蓄積)とは異なる職種に配転することが,被控訴人会社の労働契約上の義務に反するといえないことは前記(1)のとおりである。 しかし,昇格及び昇給の適否は「能力開発ガイドライン」による評価が重視され,ガイドラインは職場(職種)毎に作成されるから,平成19年当時,47歳であった控訴人を全く未経験の異なる職種に異動させることは,従来のキャリアの蓄積をゼロにして,事実上,昇格及び昇給の機会を失わせる可能性が大きいといえる。実際,第1配転命令後,控訴人の昇格はなく,平成 った控訴人を全く未経験の異なる職種に異動させることは,従来のキャリアの蓄積をゼロにして,事実上,昇格及び昇給の機会を失わせる可能性が大きいといえる。実際,第1配転命令後,控訴人の昇格はなく,平成21年4月及び同22年4月の昇給もなかった(なお,第1配転命令後の平成20年4月に昇給があったが,それは被控訴人会社の昇給制度が各年の10月から翌年9月までの人事考課を翌々年の4月の昇給に反映させるもので(甲115,129の2),平成20年4月の昇給は,第1配転命令前の平成18年10月から同19年9月までの業務に対する評価によるものだったからである。)。そして,昇格の機会の喪失は,退職金の減少(掛金は従業員の資格に応じて被控訴人会社が全額負担する。)をもたらすし(甲222),昇給がないことは賞与の減少をもたらす。 さらに,後記4の(1)のイのように,控訴人にとって著しく達成困難な課題,あるいは全くの新人と同様の課題を設定することは,それ自体不合理であり,いずれも控訴人に屈辱感を与えるなど精神的負担を与えるものと認められる。 (6) まとめ以上のとおり,① 第1配転命令は,被控訴人P1において,P4から転職者の受入れができなかったことにつき控訴人の言動がその一因となっているものと考え,被控訴人会社の信用の失墜を防ぐためにした控訴人の本件内部通報等の行為に反感を抱いて,本来の業務上の必要性とは無関係にしたものであって,その動機において不当なもので,内部通報による不利益取扱を禁止した運用規定にも反するものであり,第2及び第3配転命令も,いわば第1配転命令の延長線上で,同様に業務上の必要性とは無関係にされたものであること,② 第1ないし第3配転命令によって配置された職務の担当者として控訴人を選択したことには疑問があること,③ 第1 わば第1配転命令の延長線上で,同様に業務上の必要性とは無関係にされたものであること,② 第1ないし第3配転命令によって配置された職務の担当者として控訴人を選択したことには疑問があること,③ 第1ないし第3配転命令は控訴人に相当な経済的・精神的不利益を与えるものであることなどの事情が認められるから,第1ないし第3配転命令は,いずれも人事権の濫用であるというべきである。したがって,第3配転命令については,控訴人には就業規則34条の「正当な理由」があり,これを拒絶できるというべきである。 3 不法行為の成否(1) 被控訴人らの不法行為ア第1ないし第3配転命令の不法行為性上記2のように,第1配転命令及び第2配転命令は,いずれも被控訴人P1が人事権を濫用したものであり,第3配転命令もその影響下で行われたものであって,これらにより,控訴人に上記2の(5)のような昇格・昇給の機会を事実上失わせ,人格的評価を貶めるという不利益を課すものであるから,被控訴人P1の上記行為は,不法行為法上も違法というべきである。 これに対し,被控訴人P2は,前記のとおり,平成19年8月20日の時点では,控訴人がNDTシステムグループに残留することを前提とした育成コメントを作成している(甲135)のであって,控訴人に対する第1配転命令の決定に積極的に関与したことを認めるに足りる証拠はなく,後記の業務命令等も,上司である被控訴人P1の決定した方針に従ってしたものであることが窺われるから,これをもって不法行為法上,違法ということはできない。他に,被控訴人P2について,控訴人に対する配転命令に関し,不法行為というべき行為を認めるに足りる証拠はない。 イ第1配転命令後,第2配転命令までのパワーハラスメント(ア) 控訴人は,被控訴人らは,第1配 人P2について,控訴人に対する配転命令に関し,不法行為というべき行為を認めるに足りる証拠はない。 イ第1配転命令後,第2配転命令までのパワーハラスメント(ア) 控訴人は,被控訴人らは,第1配転後,何らのトラブルが生じた事実がないにもかかわらず,控訴人に対し,社外接触禁止という業務命令を行った旨主張するので検討する。 被控訴人会社は,平成19年10月31日,控訴人の140PB期の達成目標とその実施方法を次のように設定した(甲43の1)。 ① 目標「SHMに関わる知識レベルを高める P8SBMレベルに到達している」,実施方法「社内外有識者等による勉強有効な顧客からの勉強」② 目標「ONDT(以下においては,米国に本社をおく外国法人を指す)とのコミュニケーションレベルを高める 1)ONDT情報提供5件以上 2)OT及びONDT共通認識のプロジェクト現実的進捗」,実施方法「Pierre及びONDTSHMメンバーとの定期的打ち合わせ,情報交換会の実施」③ 目標「これまでになかった新しい情報の収集新情報10件以上発掘」,実施方法は「社内外有識者,研究開発機関,部門からの情報収集」④ 達成目標「TechnologyApplicationMapの完成度を高める」,実施方法「ONDT側チームとのコミュニケーションによる確からしさのレビュー実施」これらによれば,平成19年10月の第1配転命令直後は,P22及びP8は,控訴人の業務として社内外有識者等による勉強や顧客からの勉強,ONDTのSHMメンバーとの打ち合わせ等を想定していたが,甲74号証によれば,控訴人が本件訴訟を提起した日の翌日である平成20年2月19日,P8が,控訴人に対し,システムビジネス担当時に知りえた社外企業,その他の社外との接触を禁止し 等を想定していたが,甲74号証によれば,控訴人が本件訴訟を提起した日の翌日である平成20年2月19日,P8が,控訴人に対し,システムビジネス担当時に知りえた社外企業,その他の社外との接触を禁止し,ONDTメンバーとの接触に関しても,P8を通してのコミュニケーションとする旨を指示・命令したことが認められる。このような社外接触禁止命令は,当初,被控訴人会社が設定した控訴人の業務目標の実施方法と相反するものであること,そもそも新事業創生探索活動の具体的内容は,文献調査に加え,研究者,技術者,ユーザーなどが集うシンポジウム等から情報を収集して諸外国におけるSHMの研究やビジネス化の動向,市場のSHMに対するニーズの状況等を把握することを重要な内容とするものであること,第1配転以降,控訴人と社外の人間との間に何ら支障が生じておらず,社外との接触を禁ずることにはせいぜい抽象的なトラブルの予防としての意味しかなかったこと(原審における証人P22),そして控訴人が再三にわたり,その理由の説明を求めたにもかかわらず,同年3月5日に至ってP8がようやくメールで理由を説明したが,その理由も結局はトラブルの予防に過ぎなかったこと(甲74,214,215の1,218)からすると,接触禁止命令はその必要性がなく,控訴人を孤立させて無力感を抱かせることを目的としたものと推認できる(なお,被控訴人らは,控訴人が株式会社P28に対して送ったメール(乙29の5)が軽率な内容であったとして接触禁止命令が正当であった旨主張するが,同メールによってSHM業務を含め被控訴人会社の業務に支障が生じたり,他社に迷惑をかけたと認めることはできない。)。さらに,接触禁止命令によって翌141PA期から,業務目標の実施方法が「Web,文献による勉強」に変更された(甲8 被控訴人会社の業務に支障が生じたり,他社に迷惑をかけたと認めることはできない。)。さらに,接触禁止命令によって翌141PA期から,業務目標の実施方法が「Web,文献による勉強」に変更された(甲85の1)が,上記のように新事業創生探索活動の具体的内容は,研究者,技術者,ユーザーなどが集うシンポジウム等から情報を収集して諸外国におけるSHMの研究やビジネス化の動向,市場のSHMに対するニーズの状況等を把握することを重要な内容とするものであるから,社外接触禁止命令は,それ自体,新事業創生探索活動の実施方法を徒に制限し,ひいては業務目標の達成を困難にするものといえる。 (イ) 控訴人は,P8らは,達成が著しく困難な業務目標を設定し,達成できないことを理由に控訴人に対し低い評価をしたと主張するので以下検討する。 a 業務目標についてⅰ 上記(ア)記載の①の「SHMに関わる知識レベルをP8SBMレベルに到達するまで高める」は,業務目標として余りに抽象的で達成度が確認できる客観的目標とはいえず,また達成したか否かを判断するのは到達目標とされる当のP8自身(甲214,215の19,215の20)という不合理なものであった。同②の「ONDTとのコミュニケーションレベルを高める」は,上記(ア)の接触禁止命令によって業務方法だけでなく業務目標自体が否定された(なお,翌141PA期以降,②の業務目標はなくなった(甲85の1))。同③の「これまでになかった新しい情報の収集新情報10件以上発掘」は,少なくともSHMの基礎知識がなければ困難であり,同④の「TechnologyApplicationMapの完成度を高める」については,情報を正確に理解した上で,市場性や実用性を分析・評価することが要求されるものであるから,より高度の TechnologyApplicationMapの完成度を高める」については,情報を正確に理解した上で,市場性や実用性を分析・評価することが要求されるものであるから,より高度の知識がなければ,達成するのは不可能であった。このことは,P8が,①のSHMに関わる知識レベルが一定程度にならなければ,②から④の目標を達成することは不可能であると述べている(甲214,215の2,218)ことから明らかである。 しかるに,控訴人はそのようなSHMに関する知識を得る研修なども経ないままに社外の人脈とも切り離されほぼ独学でSHMに関する知識を習得することを迫られたのであるから,上記③及び④の目標は達成が極めて困難な目標であったといえる。 ⅱ 情報整理について翌期の141PA期中の平成20年7月18日,控訴人は,P8から,同月末までに過去にIMSが収集した情報の体系的整理(方法としてはアプリケーション・マップへのアドレス付与)を業務目標とする旨指示され(乙19),その後,同21年2月までほぼ毎月ごとに最優先でこれに取り組むように指示された(乙20,24,25)。 この作業について,控訴人は誠実に遂行したと主張するのに対し,被控訴人らは平成20年7月18日に指示したにもかかわらず,翌21年3月になっても作業を完成しなかった旨主張する。この両者の主張の相違は,以下のような情報整理の方法及び整理対象の情報の範囲についての両者の認識の相違により生じたものと思われる。すなわち,控訴人は,① 業務目標とされた「情報整理」の指示された方法はアプリケーション・マップへのアドレス付与であったが,整理対象の資料数が膨大で,かつ各資料毎に複数の情報があるため,控訴人が工夫して作成したマップ(甲223)上に整理することは事実上不可能であった,② リケーション・マップへのアドレス付与であったが,整理対象の資料数が膨大で,かつ各資料毎に複数の情報があるため,控訴人が工夫して作成したマップ(甲223)上に整理することは事実上不可能であった,② アドレス付与のためには,資料内容を正確に理解する高度な知識が必要であるところ,控訴人の知識レベルはそれに達していなかった,③ そのため整理の方法を,含まれる情報を理解しながら資料をフォルダ毎に整理する方法に切り替えて作業を進め,その結果が甲149号証である旨主張する。これに対し,被控訴人らは,「情報整理」の方法はアドレス付与であり,アドレス付与とは,IMS事業部内の既存資料を分類ツールとして用いるアプリケーション・マップの座標軸上に配置していくだけの作業であるので負荷は大きくないにもかかわらず控訴人はこれを完成させなかった旨主張する。 そうすると,業務目標である情報整理について,その方法として被控訴人らが主張するアプリケーション・マップへのアドレス付与しか認められないのか,仮にそうだとするとそれが方法として適当であったのかを検討すべきこととなる。 まず,当初の平成20年7月18日のP8の情報整理方法の指示がアプリケーション・マップへのアドレス付与であることは明らかである(乙19)。これに対し,控訴人は,一旦は情報整理のためのアプリケーション・マップ(甲223)を作成したが,この方法によると膨大な情報を一枚のマップに置ききれず,個別の情報内容もマップ上に表示できないという情報整理として中途半端なものとなるので,同年8月8日,P8に甲223号証を示した上,見やすく使いやすいマップ作成のアイデアを相談したが,良いアイデアは出ず,その結果,同年8月29日付けの「平成20年8月業務報告」(甲106)記載のように「SHM関連でこ に甲223号証を示した上,見やすく使いやすいマップ作成のアイデアを相談したが,良いアイデアは出ず,その結果,同年8月29日付けの「平成20年8月業務報告」(甲106)記載のように「SHM関連でこれまで登録されているレポート中の有益情報を,AE,GW等,順次TAマップ横軸にある技術それぞれについてあてはめていく。今回は…GWに限定してレポートからの情報があるか見極める。」こととなった旨陳述及び供述する(甲230,当審における控訴人本人)。しかし,控訴人自身,同年9月11日の面談で,P22及びP8は,GW等のSHM技術の内容の理解はひとまず置き,9月中にIMS企画営業部に存在するSHM関連情報を,後に検索しやすいようにアドレス付与をせよとの業務命令をしたと陳述し(甲230),P8も,控訴人の同年9月25日付けの「平成20年9月業務報告」に対する赤字によるコメントにおいて,「9月11日の8月業務進捗報告会にて作業は完了しておらず,しかもGW技術領域に限定して整理するという指示と反する作業を行なっていたことが判明した。」と記載している(乙24)から,同年8月8日に,P8と控訴人との間で情報整理方法がアプリケーション・マップへのアドレス付与から他の方法に変更することが合意されたと認めることはできない。 そうすると,控訴人は,自己の判断によって情報整理の方法をアプリケーション・マップへのアドレス付与からフォルダ整理に変更したことになり,P8らが情報整理方法をアプリケーション・マップへのアドレス付与としたこととの関係を検討すべきこととなる。 まず,被控訴人らは,アプリケーション・マップへのアドレス付与はIMS事業部内の既存資料をアプリケーション・マップの座標軸上に配置していくだけの作業で負荷は大きくないとして,そのイメージ なる。 まず,被控訴人らは,アプリケーション・マップへのアドレス付与はIMS事業部内の既存資料をアプリケーション・マップの座標軸上に配置していくだけの作業で負荷は大きくないとして,そのイメージを提示し,また整理の対象とした情報は「¥IMS企画営業部¥マーケティングG¥04 NDT関連」の中の「¥SHM」に収納されている情報であって(乙20,甲149),データファイル数(資料数)は67であり,1個の資料に含まれる情報が2個と仮定しても134個に過ぎない旨主張する。 しかし,既存資料をアプリケーション・マップの座標軸上に配置していくだけであっても,そのためには既存資料の中に果たしてどの程度SHMと関係する情報があるかを理解する必要があり,そのためには既存資料中の専門用語等についての知識を始めSHM関連の知識が一定程度は必要であるから,負荷が大きくない作業とはいえない。また,既存資料についてのアドレス付与は,要素技術とアプリケーション毎に行なうとされており(乙19),この観点からすると一つの既存資料に複数の情報が含まれていることが多く,被控訴人らの上記主張によっても情報数は134個であるところ,134個の情報全てを一つのマップに配置することは,4つの資料の情報しか配置されていない被控訴人ら提示にかかるイメージに照らしても,果たして現実に可能かどうか疑問がある。そうすると,情報整理方法を,その趣旨目的を明らかにしないまま,当初からアプリケーション・マップへのアドレス付与に限定することに合理性があるとはいえないから,情報整理との目標達成のために他の方法を検討し,採用することも許容されるべきであるといえる。また,整理対象の資料について,被控訴人らは,上記のように「¥IMS企画営業部¥マーケティングG¥04 NDT関連」の 目標達成のために他の方法を検討し,採用することも許容されるべきであるといえる。また,整理対象の資料について,被控訴人らは,上記のように「¥IMS企画営業部¥マーケティングG¥04 NDT関連」の中の「¥SHM」(乙20)に収納されている情報に限定されていたと主張するが,P8が情報整理を命じた同20年7月18日付けメール(乙19)には「過去にIMSが収集した情報」としか記載されておらず,乙20号証はそれから約6か月後の平成21年1月16日付けのものであり,そもそも控訴人が情報整理を指示された当初から整理対象の範囲が明確に示されていたことを認めるに足りる証拠はない。さらに,控訴人の平成20年11月29日付けの「平成20年11月度業務報告」における「IMS企画営業部内のSHM関連の資料整理をする事という指示(P22からの指示)から,また逆戻りして,SHMDB内の資料の整理並びに,P29TLが…SHMを担当していた当時に作成され,存在しているかも知れない,SHM関連レポート,資料等を捜索する趣旨の業務指示となった10月の業務」との記載は,整理対象の範囲が変更されたことをいう記載と解されるところ,P8は同業務報告の他の記載についてコメントしながら上記記載に対して特にコメントしていないこと(甲106,乙25),P22は現在も情報整理の対象を「IMS事業部内のデータベースに既に存在する様々な情報」と述べていること(乙17)に照らすと,控訴人がIMS企画営業部の「¥SHM」(乙20)のフォルダに加え,IMS事業部全体のSHM関連の資料をも整理対象として,「¥IMS企画営業部¥マーケティングG¥0 4 NDT関連」の中の「SHM資料整理08 一時完了分プラス 09 1-2」フォルダを作成したことをもって,控訴人の独断によるものと評 も整理対象として,「¥IMS企画営業部¥マーケティングG¥0 4 NDT関連」の中の「SHM資料整理08 一時完了分プラス 09 1-2」フォルダを作成したことをもって,控訴人の独断によるものと評価することは相当ではない。そして,このフォルダによれば,控訴人が整理対象としたデータ数(情報数)はP9らにより一覧表化された特許・実用新案情報等を除いても500個弱で,一つの資料中の情報数が2個と仮定しても,情報総数は被控訴人ら主張の情報数の約7.5倍の1000個となり,その全てを一つのマップに配置することは困難ないし不可能と認めるのが相当である。したがって,控訴人が自己の判断によって情報整理の方法をアプリケーション・マップへのアドレス付与からフォルダ整理に変更したのは,形式的にはP8の指示と異なっているものの,情報整理という目標を達成するためには合理的なものであったと認められる。 b 業績評価第1配転命令後,控訴人の140PB期から141PB期までの査定は,第1次評価がそれぞれ58点,55点,51点と低下し,第3次評価はいずれも90点であり(甲44の1及び2,85の1及び2,148の1及び2),142PA期の第1次評価はさらに44.4点に低下し(甲195),142PB期の前半3か月間の評価は60点であった(甲224)(なお,第2配転命令後の142PB期の後半3か月間の評価は93.5点であった(甲225))。 そして,140PB期から141PB期までの3次評価である90点は,少なくとも138PA期(平成17年4月から9月)においては,賞与の評価別支給係数表における最低評価の「E」評価であって,出勤率40パーセント未満の病欠者等や全欠者がこれに該当し,昇給区分において昇給据置きレベルとされるものである(甲86)。また, ては,賞与の評価別支給係数表における最低評価の「E」評価であって,出勤率40パーセント未満の病欠者等や全欠者がこれに該当し,昇給区分において昇給据置きレベルとされるものである(甲86)。また,平成17年作成の被控訴人会社の「職場マネジメント」ハンドブックによれば,「C-評価以下はほとんどいません」とされている(甲87)。 このことに,従前,控訴人は,第1次評価において100点以下の評価を受けたことがなかった(当審における控訴人本人)こと,被控訴人P1も,平成18年6月に,控訴人について,あまりにも率直な面があるとしつつ,「卓越した推進力と,困難な利害対立の場面もその障害を取り除き,正しい方向に導く交渉能力を有する」と評していることを併せ考慮すると,担当業務が異なるとはいえ,控訴人の第1配転後の評価は総じて異例に低いといえる。 そこで,控訴人においてそのように異例な低評価を受ける理由ないし事情があるか否かを検討すると,上記aのように,そもそもP8が設定した業務目標は控訴人にとって著しく達成が困難であったため,目標が維持される限り,これを達成し高い評価を受けることはできなかったこと,140PB期については,社外接触禁止命令が出された平成20年2月までは,控訴人は外部のシンポジウムに参加してレポートを提出しP8もこれを承認していたから(甲45の1ないし5),一応の成果があったといえること,そして,他に控訴人が著しく低い評価を受けるべき事情があったことを認めるに足りる証拠はないこと,以上の諸点を総合すると,前記の,第1次評価において50点台,これを踏まえた第3次評価において90点という控訴人の評価は不当に低いといえる。 次に,141PA期及び141PB期の控訴人の評価が低くなったことについては,前記のように141PA いて50点台,これを踏まえた第3次評価において90点という控訴人の評価は不当に低いといえる。 次に,141PA期及び141PB期の控訴人の評価が低くなったことについては,前記のように141PA期中の平成20年7月に控訴人が情報整理を命ぜられ,それをアドレス付与ではなくフォルダ整理作業の方法によって実施したことが主たる理由となったと認められる(甲214,同215の7~18,乙17)。しかし,前記のようにアドレス付与ではなくフォルダ整理作業の方法の方が情報整理という目標を達成するために合理的なものであったことを勘案すると,本来は,方法の認識の食い違いについてP8らと控訴人が十分協議するなどして相応の評価がされるべきであったにもかかわらず,P8らが質問や相談に応じなかったために,上記食い違いが解消されなかったのであり(甲218,230),ほかに特段の事情も見当たらないから,50点台の第1次評価及びこれを踏まえた90点の第3次評価は不当に低いといえる。 以上のように,第1配転命令以降,第2配転命令前までの間,P8らが,控訴人にとって著しく達成困難な業務目標を設定し,かつ控訴人が目標を達成できないこと,さらにはアドレス付与作業を完成させなかったこと等を理由として著しい低評価をしたことについては,第1配転命令に至る経緯を踏まえ,本来の客観的評価を離れた要素を加えた判断がされたものと推認できる。 (ウ) その他のパワーハラスメント控訴人は,控訴人についてのみ,毎月,P8及びP22の二人がかりによる進ちょく報告と題する面談がされ,暴言が繰り返された旨主張し,証拠(甲214,215の3,218)によれば,控訴人に対し,毎月上記二人による面談がされたことが認められる。そして,担当の上司2名による面談がされたのが控訴人のみであ 暴言が繰り返された旨主張し,証拠(甲214,215の3,218)によれば,控訴人に対し,毎月上記二人による面談がされたことが認められる。そして,担当の上司2名による面談がされたのが控訴人のみであることを認めるに足りる証拠はないが,特定の者に毎月これが実施されることは通常とはいい難い。 また,P8の控訴人に対する発言には,控訴人を「オマエ」と呼ぶなど,随所に侮蔑的表現がみられ,さらに,P8は,対面した座席で仕事をしている控訴人に,質問はメールによらなければ受け付けないと述べるなどもしている(甲215の1~ないし3,7~18,29,甲218)。 ウ第2配転命令後のパワーハラスメント控訴人は,第2配転及び第3配転後の業務の状況は,控訴人を通常の社内業務と人間関係から隔離し,生産的な作業を何もさせないという一種の消極的パワーハラスメントであると主張するところ,証拠(甲213,227,228,230,当審における控訴人本人)によれば次の事実が認められる。 第2配転は品質保証部への配転であるところ,控訴人は同部署を経験したことも希望したこともなかった。配転当初の担当業務は,顕微鏡の規格の和文英訳であったが,控訴人には当該分野の基礎的知識がなく,求められる時間内に遂行することが不可能であったため,上司から取り上げられ,その後は平成22年5月7日に「P23君教育計画」と題する書面を交付され,顕微鏡に関する新人用テキストを読み込んで勉強する,そして時々上司から確認テストを受けるという状態に終始した。第3配転後も,間もなく「P23さん教育計画」と題する書面を交付され,新入社員向けの品質保証業務の初歩のテキストの独習と毎月末の確認テストを受けるという従来と同様の状態が続いている。 以上によれば,第2配転及び第3配転後の控訴人の業務の状況は,顕微 書面を交付され,新入社員向けの品質保証業務の初歩のテキストの独習と毎月末の確認テストを受けるという従来と同様の状態が続いている。 以上によれば,第2配転及び第3配転後の控訴人の業務の状況は,顕微鏡又は品質保証についての基礎知識がないため,新人同様の勉強とテストを受ける以外にないこと,それにもかかわらずそのことを揶揄するような「P23君教育計画」,「P23さん教育計画」などと題する書面を交付されることは,50歳となった控訴人に対する侮辱的な嫌がらせであり,不法行為法上も違法というべきである。 エまとめ(ア) 控訴人に対する第1ないし第3配転命令が不法行為というべきものであり,被控訴人P1がこれにつき責任を負うことは前記アで説示のとおりである。 (イ) また,P22及びP8の前記イの行為は,控訴人に対する不法行為というべきであり,被控訴人P1は,IMS事業部長として両名の上司であったのであり,両名の上記行為は,第1配転命令をした被控訴人P1の意向を受けたものであると推認できる。 (ウ) さらに,前記ウの第2配転後の品質保証部における控訴人に対する処遇も不法行為というべきである(控訴人の本訴提起がその一因となっていたとしても正当化されるものではない。)。 (エ) そして被控訴人P1,P8及び品質保証部の管理職による上記不法行為は,いずれも被控訴人会社の職務を執行するにつき行われたものであるから,被控訴人会社は,その使用者として損害賠償責任がある。 (オ) 他方,被控訴人P2について,控訴人に対する不法行為というべき事実が認められないことは前記のとおりである。 (2) 損害ア控訴人は,前記のとおり第1配転前においては合格点を下回る評価を受けたことはなかったのであるから,被控訴人P1らの前記(1)の不法行為が が認められないことは前記のとおりである。 (2) 損害ア控訴人は,前記のとおり第1配転前においては合格点を下回る評価を受けたことはなかったのであるから,被控訴人P1らの前記(1)の不法行為がなければ,140PA期から141PB期までの賞与において支給額の減額を受けることがなかったものと推認できる。したがって,控訴人は,前記不法行為により,実際に受けた賞与の減額相当分として23万9100円の損害を被った(甲113の1ないし5,174,185)というべきである。 イ前記(1)の被控訴人P1らの行為によって控訴人が受けた精神的苦痛を慰謝すべき金額は,176万0900円を下らないというべきである。そして,控訴人は被控訴人P1らの不法行為による損害賠償を請求するために弁護士に依頼することを余儀なくされたのであるから,控訴人が支払うべき弁護士報酬のうち,上記損害額合計200万円の1割に当たる20万円が相当因果関係のある損害である。 第6 結論以上の次第で,控訴人の当審での訴え変更後の請求(主文第1項(1))は理由があり,被控訴人会社及び被控訴人P1に対する損害賠償請求は,220万円及びこれに対する平成20年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がなく,被控訴人P2に対する請求は,すべて理由がない。 よって,上記判断に従い,本件控訴及び当審における訴えの変更に基づき,原判決中被控訴人会社及び被控訴人P1に関する部分を主文第1項のとおり変更し,被控訴人P2に対する控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官鈴木健太 裁判官髙野伸及び裁判官大沼和子は,いずれも転補のため署名押印する 棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官鈴木健太 裁判官髙野伸及び裁判官大沼和子は,いずれも転補のため署名押印することができない。

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