令和4年5月31日判決言渡 令和3年(行ケ)第10082号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年3月24日判決 原告 住友電気工業株式会社 同訴訟代理人弁理士 長谷川芳樹 黒木義樹 小曳満昭 和田雄二 高木邦夫 寺澤正太郎 同訴訟復代理人弁理士 家根田剛士 被告 特許庁長官 同指定代理人 河本充雄 井上千弥子 山田啓之 主文 1 特許庁が不服2020-6043号事件について令和3年5月26日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 原告は、平成25年5月1日(以下「本件原出願日」という。)に出願された特許出願(特願2013-96607号)の一部を平成27年4月21日に新たな特許出願(特願2015-86737号)とし、更にその一部を平成29年4月21日に新たな特許出願(特願2017-84707号)とし、更にその一部を平成30年11月26日に新たな 21日に新たな特許出願(特願2015-86737号)とし、更にその一部を平 成29年4月21日に新たな特許出願(特願2017-84707号)とし、更にその一部を平成30年11月26日に新たな特許出願(特願2018-220011号)とし、さらに、その一部を分割して、令和元年9月12日、発明の名称を「電気絶縁ケーブル」として、新たな特許出願をした(特願2019-166439号。以下「本件出願」という。)。(甲8) 原告は、令和2年2月5日付けで拒絶査定を受けたため、同年5月1日、拒絶査定不服審判(不服2020-6043号事件)を請求した。(甲9、10)原告は、令和2年12月7日付けで拒絶理由通知書の送付を受けたため、令和3年2月3日、特許請求の範囲を補正する旨の意見書及び手続補正書を 提出した(補正後の請求項の数3。以下「本件補正」という。)。(甲11ないし13) 特許庁は、令和3年5月26日、本件補正を認めた上で、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年6月15日、原告に送達された。 原告は、令和3年7月14日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件補正後の請求項1に係る特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(甲12)。 「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドされてい ないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材と、アンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線と、前記コア電線のみを巻くテープ部材と、前記テープ部材上に形成された被覆層と、 用の2本の第1のコア材と、アンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線と、前記コア電線のみを巻くテープ部材と、前記テープ部材上に形成された被覆層と、 を備え、2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれ、2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれ、 2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成され、2本の前記第1のコア材と前記サブユニットとがそれぞれ接しているとともに、2本の前記第1のコア材及び前記サブユニットは前記テープ部材と接して いる、電気絶縁ケーブル。」 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりであり、要するに、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、甲 1の公開特許公報(特開昭62-122012号。以下「甲1公報」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び以下の甲2ないし甲6の各公報(以下、書証番号に従い「甲2公報」等という。)に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件 出願は拒絶すべきである、というものである。 甲2:公開実用新案公報(実開平5-83940号)甲3:公開特許公報(特開2010-27423号)甲4:公開特許公報(特開2002-352629号)甲5:公開特許公報(特開2002-216549号) 3940号)甲3:公開特許公報(特開2010-27423号)甲4:公開特許公報(特開2002-352629号)甲5:公開特許公報(特開2002-216549号)甲6:公開特許公報(特開2012-238438号) 本件審決が認定した引用発明は、次のとおりである。 「導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心10及び信号用線心20を備えたケーブルにおいて、前記電源用線心10の導電体径を前記信号用線心20の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心20を複数本単位で撚り合わせた撚線とし、電源用線心10と信号用線心20と を束ねてその外周をシース30で覆ったことを特徴とするケーブルであって、2本の電源用線心10と4本の信号用線心20とシース30とを備え、前記電源用線心10は、電圧降下を小さくするために導電体径が信号用線心20の導電体径(直径0.9mm前後)よりも大きな径(直径1.5mm前後)で形成されており、前記信号用線心20は外部の強電電線等からのノ イズの影響を小さくするために2本単位で撚り合わされており、2束の撚線を構成し、前記両線心10、20は、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で一体に撚り合わされ、その外周は円筒状のシ ース30によって覆われている、ケーブル。」本件審決が認定した本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 ア一致点 「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドさ れていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、少なくとも、2本の第1のコア材と、2本の第 一致点 「導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むシールドさ れていないコア材が複数本撚り合されて形成されたコア電線であって、少なくとも、2本の第1のコア材と、2本の第2のコア材と、によって形成されたコア電線と、被覆層と、を備え、 2本の前記第1のコア材の各々の導体の断面積は、1.5~3.0mm2の範囲に含まれ、2本の前記第2のコア材は互いに撚り合されてサブユニットが形成され、前記サブユニットと撚られていない2本の前記第1のコア材とが撚り合されて前記コア電線が形成されている、電気絶縁ケーブル。」 イ相違点 相違点1「第1のコア材について、本願発明では『電動パーキングブレーキ用』であるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。」 相違点2 「第2のコア材について、本願発明では『アンチロックブレーキシステム用』であるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。」相違点3「本願発明は『前記コア電線のみを巻くテープ部材』を有するのに対 し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。」相違点4「被覆層について、本願発明では『前記テープ部材上に形成された』ものであるのに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。」相違点5 「2本の前記第2のコア材について、本願発明では『各々の導体の断 面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれ』ているのに対し、引用発明では、『第2のコア材』に相当する『信号用線心』の導電体径の直径が0.9mm前後であり、断面積は0.6mm2程度である点。」相違点6「本願発明では『2本の前記第1のコア材と前記サブユニット では、『第2のコア材』に相当する『信号用線心』の導電体径の直径が0.9mm前後であり、断面積は0.6mm2程度である点。」相違点6「本願発明では『2本の前記第1のコア材と前記サブユニットとがそ れぞれ接しているとともに、2本の前記第1のコア材及び前記サブユニットは前記テープ部材と接している』のに対し、引用発明は、『両線心10、20は、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で一体に撚り合わされ』ているものの、そのよう な特定はなされていない点。」 4 原告の主張する取消事由本願発明の引用発明に対する進歩性の有無に関する判断の誤り第3 当事者の主張〔原告の主張〕 以下のとおり、本願発明は、引用発明及び甲2公報ないし甲6公報に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件審決の判断には誤りがある。 1 引用発明の認定に誤りがあること本件審決は、甲1公報の第2図に示されている実施例を示す摘記事項を基 に引用発明を認定したが、同摘記事項に記載された構成のうち、電源用線心及び信号用線心に係る「これらの大きさは、電源用線心10がシース30の内面に内接し、かつ、信号用線心20とシース30の内面との間に僅かな間隙23が形成される大きさに形成されている」との部分を認定から除いている。 しかしながら、上記摘記事項に記載された各構成は、相互に密接不可分の 関係にあり、一まとまりの技術的思想として把握すべきであるから、引用発明については、上記部分も含めて認定すべきである。 以上のとおり、本件審決における引用発明の認定には誤りがあり、この誤りが、 にあり、一まとまりの技術的思想として把握すべきであるから、引用発明については、上記部分も含めて認定すべきである。 以上のとおり、本件審決における引用発明の認定には誤りがあり、この誤りが、相違点3及び4に係る容易想到性の判断の誤りにつながったものである。 2 相違点1、2及び5に係る容易想到性に関する判断に誤りがあること相違点1及び2についてア甲1公報には、引用発明のケーブルの具体的な用途は「家庭内の配線に用いられるバスケーブル」であると記載されており、同公報における「工業用としてもよい」との記載は抽象的なものにすぎない。また、バスケー ブルは、車両用ケーブルのように振動下で使用されることはなく、高い取り回し性や細径化が要請されることもない。さらに、甲6公報及び甲7(特開2004-111178号公報。以下「甲7公報」という。)に記載されているケーブルは、いずれも引用発明とは仕様及び構造が大きく異なる。 そうすると、甲1公報に接した当業者が、引用発明のケーブルを電動パー キングブレーキ用及びアンチロックブレーキシステム用として用いることを動機付けられるものではない。 イ電動パーキングブレーキ用のコア材とアンチロックブレーキシステム用のコア材とを一つのケーブルで構成することが周知技術又は技術常識であったとはいえないから、このようなケーブルを構成する技術が当然に存 在するものとして引用発明に適用することはできず、仮に、この技術を引用発明に適用した場合に、各ケーブルの導体径を定めることは当業者が適宜なし得る設計的事項であるということもできない。 相違点5についてア一般に、電線の導体の断面積は、電線の用途のみによって決定されるも のではなく、ケーブルの構造を踏まえて決定されるものである る設計的事項であるということもできない。 相違点5についてア一般に、電線の導体の断面積は、電線の用途のみによって決定されるも のではなく、ケーブルの構造を踏まえて決定されるものであるから、引用 発明における信号用線心の導体の断面積のみを、甲6公報記載のケーブルにおける導体の断面積に変えるなどということは到底考えられない。したがって、引用発明に対して甲6公報に記載された技術的事項を適用することが容易想到であるとはいえない。 イ引用発明のケーブルにおいては、シースに丸く納まるように電源用線心 及び信号用線心の配置及びサイズが選択されているところ、仮に、引用発明に対して甲6公報記載のケーブルに係る数値範囲を適用した場合には、引用発明における信号用線心の導電体の断面積のみが変更され、ひいては互いに撚り合わされた2本の信号用線心の外径のみが変更されることとなる結果、引用発明のケーブルの外形が円形を呈さなくなってしまうと考 えられる。そうすると、甲1公報に接した当業者がそのような変更をする動機付けは存しないといえる上、引用発明の「電源用線心10と信号用線心20とがシース30内に丸く納まり、曲げ方向が規制されず取り扱い易い」という作用・機能を減却することにもなるから、阻害要因があるといえる。 3 相違点3及び4に係る容易想到性に関する判断に誤りがあること 本件審決における引用発明の認定に誤りがあることを前提とする主張ア上記1で主張したとおり、引用発明は、電源用線心がシースの内面に内接し、かつ、信号用線心とシースの内面との間にわずかな間隙が生じるような大きさに形成されている点にも特徴を有する。そうすると、引用発明 に対して甲2公報ないし甲5公報に記載された周知技術を適用し、両線 つ、信号用線心とシースの内面との間にわずかな間隙が生じるような大きさに形成されている点にも特徴を有する。そうすると、引用発明 に対して甲2公報ないし甲5公報に記載された周知技術を適用し、両線心の外周にテープ部材を巻くこととした場合、テープ部材の厚みの分、シースの内径寸法を大きく設定して上記の間隙が形成されるように構成されるはずである。 これに対し、本願発明は、被覆層がテープ部材上に密着して外周全体を 覆うように形成される構成、すなわち、テープ部材と被覆層との間に間隙 が形成されずに密着した構成を備えるものである。 したがって、引用発明に対して上記周知技術を適用しても、相違点4に係る本願発明の構成には至らない。 イ引用発明においては、信号用線心とシースの内面との間に間隙が形成されて何も存在しない状態を作り出すという技術思想により、シースが切除 しやすくなり、線心を傷つけることなく容易に取り出すことができるという作用効果がより顕著に奏されるといえるところ、仮に、引用発明に対して甲2公報ないし甲5公報に記載された周知技術を適用した場合、信号用線心とシースの内面との間にテープ部材が介在することとなり、上記技術思想と逆行することとなる。 また、信号用線心とシースの内面との間にテープ部材を介在させると、線心を取り出そうとする際にシース及びテープ部材を別々に切除しなければならなくなって手間が増えてしまい、容易に線心を取り出すことができるという引用発明の作用効果が奏されなくなる上、シース及び信号用線心がテープ部材を介して密着した状態となって相対的な移動が困難とな り、ケーブルの曲げ方向が規制されないという作用効果も奏されなくなる。 したがって、引用発明に対して上記周知技術を適用する動機付けは存 プ部材を介して密着した状態となって相対的な移動が困難とな り、ケーブルの曲げ方向が規制されないという作用効果も奏されなくなる。 したがって、引用発明に対して上記周知技術を適用する動機付けは存しないばかりか、阻害要因があるというべきである。 本件審決のとおり引用発明を認定した場合における主張ア本願発明においては、テープ部材によって巻かれているものはコア電線 のみであり、コア電線以外のものが介在するものは除外されているところ、甲2公報ないし甲5公報にはコア電線のみを巻くテープ部材が開示されているとまではいえないから、引用発明に対して同各公報に記載されている周知技術を適用しても、相違点3に係る本願発明の構成には至らない。 イ仮に、甲2公報ないし甲5公報にコア電線のみを巻くテープ部材が開示 されているとしても、引用発明における電源用線心及び信号用線心にテー プ部材を巻き、その上に円筒状のシースを被覆すると、シースの内面とテープ部材との間に間隙が形成されることとなる。 これに対し、本願発明は、被覆層がテープ部材上に密着して外周全体を覆うように形成される構成、すなわち、テープ部材と被覆層との間に隙間が形成されず密着した構成を備えるものである。 したがって、引用発明に対して甲2公報ないし甲5公報に記載された周知技術を適用しても、相違点4に係る本願発明の構成には至らない。 ウ甲2公報ないし甲5公報には、それぞれの解決課題及び解決方法が全く異なる技術が記載されているのみであり、ケーブルの用途や目的を問わずに用いられる周知技術は記載されていない。 そして、引用発明において、ケーブルの用途として具体的に想定されているのは家庭内の配線に用いられるバスケーブルであり、その課題は、外部からの わずに用いられる周知技術は記載されていない。 そして、引用発明において、ケーブルの用途として具体的に想定されているのは家庭内の配線に用いられるバスケーブルであり、その課題は、外部からのノイズを拾いやすいという問題及び外皮を切除する際に線心を傷つけやすいという問題を解決することであるところ、甲2公報ないし甲5公報に記載されたケーブルは、いずれも引用発明とは技術分野及び課題 が共通しない。また、引用発明は、そもそもテープ部材を有しないから、甲2公報ないし甲5公報に記載されたケーブルとは作用・機能も共通しない。 したがって、引用発明に対して甲2公報ないし甲5公報に記載された周知技術を適用する動機付けは存しない。 エ仮に、甲2公報ないし甲5公報から、本件審決が認定するとおりの周知技術が認定されるとしても、引用発明は、電源用線心及び信号用線心とが一体に撚り合わされて、その外周をシースで覆うのみの簡素な構成を課題解決手段としたものであると解される。 したがって、引用発明において、敢えて両線心とシースとの間にテープ 部材を介在させて構成を複雑にし、両線心の取り出しが容易に行えるとい う引用発明の作用・機能が奏されなくなるようにすることについては、動機付けが存在しないばかりか、阻害要因があるというべきである。 オ引用発明は、電源用線心及び信号用線心がシースで覆われているのみの構成をとり、両線心にテープ部材が巻かれる場合を排除しているから、甲2公報ないし甲5公報に記載されているような耐熱のためのテープや撚 り合わされた線心を押さえるためのテープを必要としておらず、耐熱性や線心の押さえ等の課題が当然に内在するものではない。 また、仮に、引用発明において上記のような課題が想定され得るとして プや撚 り合わされた線心を押さえるためのテープを必要としておらず、耐熱性や線心の押さえ等の課題が当然に内在するものではない。 また、仮に、引用発明において上記のような課題が想定され得るとしても、課題解決のためにはテープを用いない様々な手段が存在するのであるから、前記の阻害要因を凌駕してまで、引用発明に甲2公報ないし甲5公 報に記載されたテープ部材を採用する理由はない。 4 相違点6に係る容易想到性に関する判断に誤りがあること 引用発明のケーブルにおいては、シースに丸く納まるように電源用線心及び信号用線心の配置及びサイズが選択されているところ、各線心の対称性を崩してまで、敢えて2束の撚線を1束にする動機付けは存しない。また、対 称性が崩れることにより、各線心がシース内に丸く納まりにくくなり、曲げ方向が規制されず取り扱いやすいという引用発明の作用・機能を減却することになるから、2束の撚線を1束にすることについては阻害要因がある。 甲1公報には、ケーブルの用途と各線心の本数及び配置との関係について何も示唆されていないことなどからすれば、甲1公報に接した当業者が各線 心の本数及び配置を用途に応じて適宜定めることはできない。 〔被告の主張〕以下のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件審決の判断に誤りはない。 1 引用発明の認定に誤りはないこと 引用発明においては、課題を解決するための手段として、電源用線心がシ ースの内面に内接していることや、電源用線心及び信号用線心とシースとの間隙について何ら特定されていない上、甲1 公報の特許請求の範囲にも「内接」や「間隙」について何ら特定されていない。また、甲1公報 ースの内面に内接していることや、電源用線心及び信号用線心とシースとの間隙について何ら特定されていない上、甲1 公報の特許請求の範囲にも「内接」や「間隙」について何ら特定されていない。また、甲1公報において、信号用線心とシースとの間隙の効果は、追加の効果にすぎないとされている上、具体的な構成が実施例に限られるものでない旨も記載されている。 したがって、引用発明の認定について原告が主張するような構成は、課題解決手段として必ずしも必要なものではないから、引用発明の内容として認定する必要はない。 2 相違点1、2及び5に係る容易想到性に関する判断に誤りはないこと相違点1及び2について ア引用発明のケーブルの用途が工業用でもあることは明らかである。そして、主に工業用のケーブルを用いる製品である自動車においても、アンチロックブレーキシステム用や電動パーキングブレーキ用のケーブルが用いられていることは、甲6公報や甲7公報、乙1(特表2010-531771号公報)等に記載されているとおり、本件原出願日の時点において 周知の技術である。 また、電気絶縁ケーブルの技術分野において、耐久性、取り回し性及び細径化の課題は一般的な課題であるところ、工業用のケーブルである引用発明においても、耐久性、取り回し性及び細径化が求められることは明らかである。そして、原告の主張する車両用の用途について、引用発明と比 べて耐久性、取り回し性及び細径化がどの程度求められるのかについては何ら主張されておらず、また、その課題が本願発明の構成に反映されているともいえない。 したがって、工業用として用いられる引用発明のケーブルを、車両用とすることには十分な動機付けがあるといえる。 イ引用発明は、電源用線心及び信号用線心を束ね れているともいえない。 したがって、工業用として用いられる引用発明のケーブルを、車両用とすることには十分な動機付けがあるといえる。 イ引用発明は、電源用線心及び信号用線心を束ねたケーブルであるから、 用途の異なる線心を束ねて一つのケーブルとする技術が開示されているといえる。また、乙3(特開平9-218214号公報)にも記載されているとおり、車両用としても異なる用途の複数の配線を一つのケーブルとすることは、技術常識であった。 そして、電動パーキングブレーキ用及びアンチロックブレーキシステム 用という用途は、車両用ケーブルの用途として本件原出願日の時点において周知のものであったから、工業用として用いられる引用発明の線心に対してこれらの用途を適用し、一つのケーブルとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 相違点5について ア引用発明においては、信号用線心の導電体径が電源用線心の導電体径よりも小さな径であるといえ、しかも信号用線心の導電体径は0.9mm前後とされているから、信号用線心の導電体径を、電源用線心の径である1. 5mm前後よりも小さいことを前提に、信号用線心としての機能を損なわない範囲で導電体径を変更してその断面積(0.452×π=0.64m m2前後)を具体的に決定することは、当業者の通常の創作能力の範囲内である。そして、甲6公報には、導体の断面積が0.18mm2以上0.30mm2以下の径であるものが記載されていることからすれば、本願発明の「2本の前記第2のコア材の各々の導体の断面積」である「0.18~0. 40mm2」との数値範囲は、格別なものではない。 イ甲1公報には、原告が主張する「シース30内に丸く納まるように、コア電線(撚線)の 材の各々の導体の断面積」である「0.18~0. 40mm2」との数値範囲は、格別なものではない。 イ甲1公報には、原告が主張する「シース30内に丸く納まるように、コア電線(撚線)の外形は、ケーブルの横断面でみて円筒状のシースの内円とほぼ同径の円形を呈するように、線心10、20の配置及びサイズ」が選択されている旨の記載はない上、絶縁体を含めた線心そのものの径については何ら記載されていないから、引用発明について、シース内に丸く納 まるように線心の配置及びサイズが選択されているということはできな い。 また、引用発明が、ケーブルの外形が円形を呈するように、各線心の配置及びサイズが選択されているものであるとしても、線心の径には、導電体径だけでなく絶縁体の厚みも含まれるものであり、導電体径が変更されたとしても、絶縁体の厚みを調整することにより、シース内に丸く納まる 線心の径とすることは可能であるから、曲げ方向が規制されず取り扱い易いという作用・機能が減却するとはいえない。 3 相違点3及び4に係る容易想到性に関する判断に誤りはないこと 原告の主張3に対してア本願発明における「前記テープ部材上に形成された被覆層」は、被覆層 がテープ部材上に密着して外周全体を覆うことを意味するとはいえないから、これを前提として引用発明に対して周知技術を適用しても相違点4に係る本願発明の構成には至らないという原告の主張は、その前提に誤りがある。 イ甲1公報には、信号用線心とシースの内面との間に間隙が設けられてい るためシースを切除しやすい旨が記載されているが、これは、信号用線心とシースの内面とが接触していなければシースが除去しやすいことを述べているにすぎず、信号用線心とシースの内面 が設けられてい るためシースを切除しやすい旨が記載されているが、これは、信号用線心とシースの内面とが接触していなければシースが除去しやすいことを述べているにすぎず、信号用線心とシースの内面との間にテープ部材を介在させても、信号用線心上のテープ部材とシースの内面との間に間隙があれば、シースを切除しやすいことは明らかである。また、電源用線心及び信 号用線心の取り出しが容易に行えるという作用効果についても、甲1公報に記載された従来例と比較しての記載にすぎない。 そして、引用発明に対して甲2公報ないし甲4公報及び乙4(特開2005-158451号公報。以下「乙4公報」という。)に記載されている周知技術を適用した場合、例えば、押さえ巻きとしてテープ部材を介在さ せた場合には、信号用線心の配置が規制されてシース方向への移動が抑え られ、より安定した間隔が設けられることによってシースを切除しやすくなるといえるから、原告が主張する阻害要因があるとはいえず、むしろ、動機付けが存在するといえる。 原告の主張3に対してア本件出願に係る明細書及び図面(以下「本願明細書等」という。)の記載 からすれば、本願発明について、テープ部材によって巻かれているものはコア電線のみであり、コア電線以外のものが介在するものが除外されているということはできないから、これを前提として引用発明に対して周知技術を適用しても相違点3に係る本願発明の構成には至らないという原告の主張は、前提に誤りがある。 イ本願発明における「前記テープ部材上に形成された被覆層」は、被覆層がテープ部材上に密着して外周全体を覆うことを意味するとはいえないから、これを前提として引用発明に対して周知技術を適用しても相違点4に係る本願発明 る「前記テープ部材上に形成された被覆層」は、被覆層がテープ部材上に密着して外周全体を覆うことを意味するとはいえないから、これを前提として引用発明に対して周知技術を適用しても相違点4に係る本願発明の構成には至らないという原告の主張は、前提に誤りがある。 ウ甲2公報ないし甲4公報は、様々な用途に用いられる電気絶縁ケーブルの技術分野において、電線とシースとの間にテープ部材を配置することが周知技術であることを示すものである。また、乙4公報に記載されているように、車両用ケーブルの技術分野においても、撚り合わされて形成されたコア電線とシースとの間にテープ部材を配置することは周知技術であ る。 そして、甲2公報ないし甲4公報及び乙4公報に記載されたケーブルはいずれも工業用であり、引用発明のケーブルは工業用でもあるから、両者は技術分野が共通するといえる上、ケーブルが様々な用途に用いられることは技術常識である。 以上によれば、引用発明に対して上記周知技術を適用する動機付けは十 分にあるといえる。 エ甲1公報には、引用発明が簡素な構成を課題解決手段としたものであることについては何ら記載されてない。また、甲1公報に記載された電源用線心及び信号用線心の取り出しが容易に行えるという作用効果は、従来例と比較しての記載にすぎない上、線心がシース内に埋め込まれている従来 例及び線心をシースで覆う引用発明のいずれが簡素な構成であるかは不明である。さらに、甲1公報に記載された実施例について、電源用線心及び信号用線心の外周がシースで覆われているのみであるとしても、甲1公報には、電源用線心及び信号用線心の上にテープ部材等の部材を介在させることを排除する記載はない。 以上によれば、引用発明にテープ部材 シースで覆われているのみであるとしても、甲1公報には、電源用線心及び信号用線心の上にテープ部材等の部材を介在させることを排除する記載はない。 以上によれば、引用発明にテープ部材を介在させることについて、原告が主張するような阻害要因があるとはいえない。 4 相違点6に係る容易想到性に関する判断に誤りはないこと 甲1公報には、線心の数及び配置は実施例に限られない旨が記載されているから、引用発明において2束の撚線を1束とすることは、当業者が実施に 当たり適宜なし得る設計的事項にすぎない。また、引用発明においては、2束の撚線を1束とした場合においても、電源用線心及び信号用線心は撚り合わされており、各線心の対称性が崩れるともシースに丸く納まりにくくなるともいえないから、原告の主張する阻害要因があるとはいえない。 甲1公報には、信号用線心の数を1束とした場合の電源用線心及び信号用 線心の具体的な配置は示されていないが、引用発明においては、各線心が撚り合わされるのであるから、信号用線心の数を1束とし、2本の電源用線心と1本の信号用線心とを撚った場合には、両線心が互いに接触した配置となるのが自然である。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明 特許請求の範囲本願発明の特許請求の範囲の記載は、前記第2の2のとおりである。 本願明細書等の記載本願明細書等には、次のとおりの記載がある(甲8。図1ないし3については、別紙本願明細書等図面目録記載のとおりである。)。 ア技術分野「本発明は、テープ部材を含む電気絶縁ケーブルに関するものである。」(段落【0001】)イ背景技術「導体及びこれを覆う絶縁層からなるコア材と、このコア材を覆う ア技術分野「本発明は、テープ部材を含む電気絶縁ケーブルに関するものである。」(段落【0001】)イ背景技術「導体及びこれを覆う絶縁層からなるコア材と、このコア材を覆う被覆 層と、この被覆層を覆うシースとを備えるケーブルが知られている。このケーブルを製造する際に、コア材の外周面にケーブルの長さ方向に沿って間欠的に粉体を塗布しておき、ケーブルの被覆層を簡単に剥がしてコア材を容易に取り出すことを可能とする技術が知られている・・・。」(段落【0002】) ウ発明が解決しようとする課題「しかしながら、上記の・・・ケーブルの構成では、コア材を取り出すためにシースと被覆層に刃を入れて除去する際、コア材の外周面に塗布された粉体が周囲に飛散してしまう場合がある。粉体が作業者の周囲に飛散してしまうと、コア材を取り出す作業の作業性が低下してしまうことがあ った。」(段落【0004】)「本発明は、コア材を取り出す作業の作業性が良い電気絶縁ケーブルを提供することを目的とする。」(段落【0005】)エ課題を解決するための手段「上記の目的を達成するために、本発明の電気絶縁ケーブルは、導体と 前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材が複数本撚り合 されて形成されたコア電線と、前記コア電線を覆うように形成された第1の被覆層と、前記第1の被覆層を覆うように形成された第2の被覆層と、前記コア電線と前記第1の被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材と、を備え、 前記第2の被覆層は、難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され、各々の前記導体の断面積は、0.18~3.0mm2の範囲に含まれる、ものである。」(段落【0006】)オ発明の効果 え、 前記第2の被覆層は、難燃性のポリウレタン系樹脂で形成され、各々の前記導体の断面積は、0.18~3.0mm2の範囲に含まれる、ものである。」(段落【0006】)オ発明の効果「本発明によれば、コア材を取り出す作業の作業性が良い電気絶縁ケー ブルを提供することができる。」(段落【0007】)カ発明を実施するための形態「(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気絶縁ケーブル10の構成を示す断面図である。電気絶縁ケーブル10は、例えば、車両に搭載された 電動パーキングブレーキ(ElectroMechanicalParkingBrake:EPB)に用いられるものであり、ブレーキキャリパーを駆動するモータに電気信号を送信するためのケーブルとして用いることができる。」(段落【0020】)「図1に示すように、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1と、コア電 線1に巻き付けられた紙テープ2(テープ部材の一例)と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2の外周を覆うシース3とを有している。・・・」(段落【0021】)「コア電線1は、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成される。2本の第1の コア材4の各々は、導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層 6とから構成されている。」(段落【0022】)「導体5は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08m(判決注:「0.08mm」の誤記と認める。)の素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体5を構成する素線の本数としては、360~610本程度である。このように構成された導体5の断面積(複数本の 素線の合計断面積 誤記と認める。)の素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体5を構成する素線の本数としては、360~610本程度である。このように構成された導体5の断面積(複数本の 素線の合計断面積)は、1.5~3.0mm2の範囲、好ましくは、1.8~2.5mm2の範囲に含まれるように設定される。・・・」(段落【0023】)「紙テープ2は、コア電線1の外周に螺旋状に巻き付けられ、コア電線1と後述する内部シース7との間に配置される。紙テープ2は、その厚さ が0.02~0.06mmの範囲、好ましくは、0.03~0.05mmの範囲に含まれるものが用いられる。なお、材料としては紙テープに限られず、ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良い。・・・」(段落【0025】)「シース3は、内部シース7(第1の被覆層の一例)と、外部シース8 (第2の被覆層の一例)とからなる二層構造を有しており、紙テープ2が巻き付けられた状態のコア電線1(以下、テープ付きコア電線100とも称する)を覆うように形成される。」(段落【0026】)「次に、電気絶縁ケーブル10を製造する方法について説明する。図2は、電気絶縁ケーブル10を製造する製造装置11の概略構成を示してい る。図2に示すように、製造装置11は、2つのコア材サプライリール12と、撚り合せ部13と、紙テープサプライリール14と、紙テープ巻付部15と、内部シース被覆部16と、外部シース被覆部17と、冷却部18と、ケーブル巻付リール19と、を備えている。」(段落【0029】)「2つのコア材サプライリール12の各々には、第1のコア材4が巻き 付けられており、2本の第1コア材4が撚り合せ部13に供給される。撚 り合せ部13では、供給されてきた2本の 】)「2つのコア材サプライリール12の各々には、第1のコア材4が巻き 付けられており、2本の第1コア材4が撚り合せ部13に供給される。撚 り合せ部13では、供給されてきた2本の第1コア材4が互いに撚り合わされてコア電線1が形成される。このコア電線1は紙テープ巻付部15に送られる。」(段落【0030】)「紙テープ巻付部15では、撚り合せ部13から送られてきたコア電線1と紙テープサプライリール14から供給されてきた紙テープ2とが合 流し、コア電線1の外周に紙テープ2が螺旋状に巻き付けられて、テープ付きコア電線100が形成される。このテープ付きコア電線100は、内部シース被覆部16に送られる。」(段落【0031】)「内部シース被覆部16は、架橋ポリエチレン等の樹脂材料が貯留された貯留部16aと連結されている。内部シース被覆部16では、この貯留 部16aから供給されてきた樹脂材料がテープ付きコア電線100の外周に押し出されて被覆される。このようにして、内部シース7がテープ付きコア電線100の外周を覆うように形成される。内部シース7が被覆されたテープ付きコア電線100は、外部シース被覆部17に送られる。」(段落【0032】) 「外部シース被覆部17は、難燃性の架橋ポリエチレン等の樹脂材料が貯留された貯留部17aと連結されている。外部シース被覆部17では、この貯留部17aから供給されてきた樹脂材料が、内部シース被覆部16により形成された内部シース7の外周に押し出されて被覆される。このようにして、外部シース8が内部シース7の外周を覆うように形成されて、 内部シース7と外部シース8とからなる二層構造のシース3が被覆された電気絶縁ケーブル10が形成される。この電気絶縁ケーブル10は、冷却部18に送 が内部シース7の外周を覆うように形成されて、 内部シース7と外部シース8とからなる二層構造のシース3が被覆された電気絶縁ケーブル10が形成される。この電気絶縁ケーブル10は、冷却部18に送られてシース3が冷却されて硬化された後、ケーブル巻付リール19に送られて巻き付けられる。」(段落【0033】)「以上説明したように、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1を構成す る第1のコア材4の導体5の断面積が1.5~3.0mm2の範囲に含まれ る比較的に細径のケーブルである。また、外部シース8が難燃性のポリウレタン系樹脂で形成されている。このように、電気絶縁ケーブル10は、車両用途の細径のケーブルとして要求される性能である難燃性や絶縁性を満たすのに適しており、車両に搭載される電動パーキングブレーキに用いることができる。また、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1と内部シ ース7との間に紙テープ2が配置され、コア電線1と内部シース7とが分離して配置されている。このため、電気絶縁ケーブル10の端末をコネクタや基板に接続するためにシース3を除去してコア電線1を露出させる際に、紙テープ2を除去することによって容易にコア電線1と内部シース7とを分離して露出した状態にすることができる。また、コア電線1に粉 体等が付着されていないため、シース3を除去する際に粉体等が飛散することが無い。このため、例えば、作業者の手や着衣が飛散した粉体で汚れてしまうことを防いだり、飛散した粉体が作業者の視界を妨げてしまうことを防ぐことができる。このように、上記の構成の電気絶縁ケーブル10によれば、コア電線1(各コア材4)を取り出す作業の作業性を向上させ ることができる。」(段落【0034】)「(第2の実施形態)次に、本発明の 上記の構成の電気絶縁ケーブル10によれば、コア電線1(各コア材4)を取り出す作業の作業性を向上させ ることができる。」(段落【0034】)「(第2の実施形態)次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一構成の部分には同一符号を付すことで説明を省略する。図3は、第2の実施形態に係る電気絶縁ケーブル30の断面を示し ている。本例の電気絶縁ケーブル30は、電動パーキングブレーキの電気信号を送信する用途に加えて、アンチロックブレーキシステム(AntilockBrakeSystem:ABS)の動作を制御する電気信号を送信するのに用いることができる。」(段落【0036】)「図3に示すように、本例の電気絶縁ケーブル30は、コア電線1Aが、 2本の第1のコア材4に加えて、ABS用の信号を送信するためのサブユ ニット31を有する点で第1の実施形態と異なっている。」(段落【0037】)「サブユニット31は、第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成されている。2本の第2のコア材32の各々は、導体 33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成されている。」(段落【0038】)「導体33は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08m(判決注:「0.08mm」の誤記と認める。)の素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体33を構成する素線の本数は、50~7 0本、好ましくは、60本程度である。このように構成された導体33の断面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれるように、好ましくは、0.3mm2程度に設定される。・・・」( 、50~7 0本、好ましくは、60本程度である。このように構成された導体33の断面積は、0.18~0.40mm2の範囲に含まれるように、好ましくは、0.3mm2程度に設定される。・・・」(段落【0039】)「上記のように構成されたサブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されてコア電線1Aが形成される。このコア電線1A に対して、外周に紙テープ2が巻き付けられ、さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成されて電気絶縁ケーブル30が形成される。」(段落【0041】)「以上説明したように、電気絶縁ケーブル30はABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有し、このサブユニット31は、その導体 33の断面積が0.18~0.40mm2の範囲に含まれる第2のコア材32が2本撚り合わせて形成されている。そして、このサブユニット31が2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成されている。このコア電線1Aを有する電気絶縁ケーブル30は、車両に搭載される電動パーキングブレーキのための電気信号だけでなく、アンチロックブレーキ システムのための電気信号を送信することができる。このように1つのケ ーブルで2種類のシステムを動作させる電気信号を送信できるため、ケーブルの利便性が向上する。」(段落【0042】)本願発明の技術的意義上記及びによれば、本願発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。 ア本願発明は、テープ部材を含む電気絶縁ケーブルに関する発明である。 (段落【0001】)イ従来、導体及びこれを覆う絶縁層からなるコア材と、このコア材を覆う被覆層と、この被覆層を覆うシースとを備えるケーブルを製造する際に、コア材の外周面にケーブルの長さ方 る。 (段落【0001】)イ従来、導体及びこれを覆う絶縁層からなるコア材と、このコア材を覆う被覆層と、この被覆層を覆うシースとを備えるケーブルを製造する際に、コア材の外周面にケーブルの長さ方向に沿って間欠的に粉体を塗布して おき、ケーブルの被覆層を簡単に剥がしてコア材を容易に取り出すことを可能とする技術が知られていた。(段落【0002】)ウしかしながら、上記のケーブルの構成では、コア材を取り出すためにシース及び被覆層に刃を入れて除去する際に、コア材の外周面に塗布された粉体が周囲に飛散してしまう場合があり、コア材を取り出す作業の作業性 が低下してしまうという課題があった。(段落【0004】)エそこで、本願発明の電気絶縁ケーブルは、導体と前記導体を覆うように形成された絶縁層とを含むコア材が複数本撚り合わされて形成されたコア電線と、前記コア電線を覆うように形成された被覆層と、前記コア電線と前記被覆層との間に、前記コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ 部材とを備えることにより、上記の課題を解決しようとするものである。 (段落【0005】及び【0006】)オ本願発明の電気絶縁ケーブルは、被覆層を除去してコア電線を露出させる作業をする際に、テープ部材を除去することによって容易にコア電線と被覆層とを分離することができ、また、粉体等が飛散することがないこと から、上記作業の作業性を向上させることができるという効果を奏する。 (段落【0034】) 2 引用発明甲1公報の記載甲1公報には、発明の名称を「ケーブル」とする発明に関し、次のとおりの記載がある(甲1。第1図、第2図及び第4図については、別紙甲1公報 図面目録記載のとおりである。)。 ア特許請求の範囲 の名称を「ケーブル」とする発明に関し、次のとおりの記載がある(甲1。第1図、第2図及び第4図については、別紙甲1公報 図面目録記載のとおりである。)。 ア特許請求の範囲「導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心及び信号用線心を備えたケーブルにおいて、前記電源用線心の導電体径を前記信号用線心の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心を複数本単位で撚 り合わせた撚線とし、電源用線心と信号用線心とを束ねてその外周をシースで覆ったことを特徴とするケーブル。」イ発明の詳細な説明 産業上の利用分野「本発明は、電源に接続される電源用線心と、電気機械あるいは電子 機器等に接線される信号用線心と、を備えたケーブルに関する。」(1頁左下欄14行ないし16行) 従来の技術「従来ケーブルは、接続箇所に応じてそれぞれの接続箇所に適した線心を構成するという配慮が成されておらず、同径の導電体を有する線心 が複数本束ねられて構成されたものであった。 一般的には、複数の線心が同一面上に並列に配列され、紙テープ等により束ねられたものが知られているが、このようなケーブルは曲げ方向が規制されて配線作業が行ない難いし、梱包も不便であった。 そこで、線心を丸く束ねることが行なわれたが、紙テープをところど ころ巻きつけて束ねただけのものはまとまりが悪く扱い難いために、第 4図に示されているようなものが考案された。 この従来のケーブルは、線心01を束ねてその線心束の外周に樹脂による外皮02を線心埋め込み状態で被覆させたものである。」(1頁左下欄18行ないし右下欄13行)発明が解決しようとする問題点 「しかしながら、このような従来のケーブルにあっては に樹脂による外皮02を線心埋め込み状態で被覆させたものである。」(1頁左下欄18行ないし右下欄13行)発明が解決しようとする問題点 「しかしながら、このような従来のケーブルにあっては、複数の同径の線心が外皮内に平行に埋め込まれていたために、信号用に用いた場合には外部からノイズを拾い易く、また、外皮を切除する際に線心を傷つけ易いという問題点があった。」(1頁右下欄15行ないし20行)問題点を解決するための手段 「本発明は上述のような問題点を解決することを目的としてなされたもので、この目的達成のために本発明では、導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心及び信号用線心を備えたケーブルにおいて、前記電源用線心の導電体径を前記信号用線心の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線とし、電源 用線心と信号用線心とを束ねてその外周をシースで覆った。」(2頁左上欄2行ないし10行)作用「従って、本発明のケーブルでは、上述のように、電源用線心の導電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成させたことにより、電源 用線心を電源に接続した場合には電圧降下を小さくすることができるし、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線としたことにより、信号用線心を電気機械あるいは電子機器に接続した場合には外部からのノイズの影響を少なくすることもできる。 また、電源用線心と信号用線心とはその外周がシースで覆われている のみであるため、配線工事の時、線心を傷つけることなくシースが切除 でき、両線心の取り出しが容易に行なえる。」(2頁左上欄12行ないし右上欄4行)実施例a 「以下、本発明の実施例を図面により詳述する。尚、この実施例を述べるにあたって、家 除 でき、両線心の取り出しが容易に行なえる。」(2頁左上欄12行ないし右上欄4行)実施例a 「以下、本発明の実施例を図面により詳述する。尚、この実施例を述べるにあたって、家庭内の配線に用いられるバスケーブルを例にと って説明する。 まず、第1図~第3図に示す実施例についてその構成を説明する。 ・・・このバスケーブルAは、2本の電源用線心10と4本の信号用線心20とシース30とを備えている。 ・・・前記電源用線心10は、電圧降下を小さくするために導電体径が信号用線心20の導電体径(直径0.9mm前後)よりも大きな径(直径1.5mm前後)で形成されており、前記信号用線心20は外部の強電電線等からのノイズの影響を小さくするために2本単位で撚り合 わされており、2束の撚線を構成している。」(2頁右上欄6行ないし左下欄20行)b 「前記両線心10、20は、第2図に示すように、信号用線心20の2束の撚線が互いに接すると共に、2本の電源用線心10がそれぞれ信号用線心20による2束の撚線に接するように配置された状態で 一体に撚り合わされ、その外周は円筒状のシース30によって覆われており、これらの大きさは、電源用線心10がシース30の内面に内接し、かつ、信号用線心20とシース30の内面との間に僅かな間隙23が形成される大きさに形成されている。」(2頁右下欄13行ないし3頁左上欄2行) c 「従って、本発明実施例のケーブルにあっては、電源用線心10と 信号用線心20とがシース10(判決注:「シース30」の誤記と認める。)内に丸く納まり、曲げ方向が規制されず扱い易い。 また、信号用線心20とシース30の内面との間には間隙23が設けられているため 信号用線心20とがシース10(判決注:「シース30」の誤記と認める。)内に丸く納まり、曲げ方向が規制されず扱い易い。 また、信号用線心20とシース30の内面との間には間隙23が設けられているために、シース30を切除し易い。 以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成 はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても本発明に含まれる。 例えば、実施例では、家庭内の配線に用いられるバスケーブルを示したが、用途は限られず、工業用としてもよい。 また、実施例では、電源用線心を2本とし、信号用線心を2本単位 で撚り合わせた2束の撚線で構成したが、それぞれの線心数は実施例に限られないし、また、その配置も実施例に限られない。」(3頁左上欄8行ないし右上欄6行)発明の効果「以上説明してきたように本発明のケーブルにあっては、線心がそれ ぞれの接続箇所に適した構成になるように配慮し、電源用線心の導電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成させ、かつ、信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線としたために、電圧降下を小さくでき、かつ、外部からのノイズの影響を少なくすることができるという効果が得られる。 また、電源用線心と信号用線心とを束ねてその外周をシースで覆ったために、扱い易く、しかも線心を傷つけることなく容易に線心を取り出すことができるという効果が得られる。 また、実施例にあっては、上述の効果に加えて、電源用線心及び信号用線心を、両線心が円筒状のシース内に丸く納まり、しかも信号用線心 とシース内面との間には僅かな間隙が設けられる大きさ及び配置とし たために、ケーブルの曲げ方向が規制されず、配線作業が行い易いと共に梱包も行 シース内に丸く納まり、しかも信号用線心 とシース内面との間には僅かな間隙が設けられる大きさ及び配置とし たために、ケーブルの曲げ方向が規制されず、配線作業が行い易いと共に梱包も行ない易い。」(3頁右上欄12行ないし左下欄10行)引用発明の内容上記によれば、引用発明の内容は、本件審決が認定したとおり(前記第2の3)であると認められる。 原告の主張に対する判断ア原告は、引用発明の電源用線心及び信号用線心に係る認定について、「これらの大きさは、電源用線心10がシース30の内面に内接し、かつ、信号用線心20とシース30の内面との間に僅かな間隙23が形成される大きさに形成されている」との構成は他の構成と相互に密接不可分の関係 にあり、一まとまりの技術的思想として把握すべきであるから、同構成も含めて引用発明を認定すべきである旨主張する(前記第3の〔原告の主張〕1)。 イそこで検討するに、上記によれば、引用発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。 引用発明は、導電体の外周に絶縁体を被覆して形成される電源用線心及び信号用線心を備えた工業用の電気絶縁ケーブルに関する発明である。 従来のケーブルは、複数の同径の線心を束ねた線心束を、樹脂で構成された外皮内に平行に埋め込む形で被覆していたが、外部からノイズを 拾いやすく、また、外皮を切除する際に線心を傷つけやすいという課題があった。 上記の課題を解決するために、引用発明は、上記のケーブルにつき、①電源用線心の導電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成し、かつ、②信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線とするとともに、 ③両線心の外周をシースで覆うのみの形で被覆する構成としたもので 電体径を信号用線心の導電体径よりも大きく形成し、かつ、②信号用線心を複数本単位で撚り合わせた撚線とするとともに、 ③両線心の外周をシースで覆うのみの形で被覆する構成としたもので ある。 上記の各構成は、それぞれ、①電圧降下を小さくすることができる、②外部からのノイズの影響を少なくすることができる、③配線工事の際に線心を傷つけることなくシースを切除することができ、線心の取り出しを容易に行うことができるという効果を奏する。 ウ他方で、上記によれば、原告が指摘する上記構成は、甲1公報において、特許請求の範囲に記載されているものではなく、実施例として記載されているにすぎない上、その効果についても、記載された実施例において奏される効果として付加的に言及されているにすぎないというべきである。 エ上記イ及びウで検討したところによれば、原告が指摘する上記構成は、引用発明における課題解決手段とされているものではないというべきである。そうすると、原告が指摘する上記構成については、他の構成と相互に密接不可分の関係にある一まとまりの技術的思想として把握されるべきものとはいえないから、これを引用発明の内容として認定しなかった本 件審決の判断に誤りがあるとはいえない。 オしたがって、原告の上記主張は採用することができない。 小括以上検討したところによれば、引用発明の認定について、本件審決の判断に誤りはない。 3 本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定について前記1及び2で検討したところによれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、本件審決が認定したとおり(前記第2の3)であると認められる(この点については、原告も争っていない。)。 4 周 前記1及び2で検討したところによれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、本件審決が認定したとおり(前記第2の3)であると認められる(この点については、原告も争っていない。)。 4 周知技術 甲2公報の記載 甲2公報には、考案の名称を「カールケーブル」とする考案に関し、考案の詳細な説明として、次のとおりの記載がある(甲2)。 ア産業上の利用分野「本考案はカールケーブルに関し、更に詳しくは電子機器等の装置内、機器間伝送または移動体通信機器等に用いられ、同軸ケーブルを構成要素 とするカールケーブルに関する。」(段落【0001】)イ従来の技術「電子機器、例えば移動体通信機器に用いられるカールケーブルとしては、・・・同軸ケーブルと信号ケーブル或は必要に応じ電源ケーブルを加えて構成される複合ケーブル(以下複合ケーブルと略記する)を螺旋状に形 成し、携帯用電話機と車載通信機器との接続、或は携帯用電話機と車載通信機器とバッテリーとの接続に用いるもの等がある。」(段落【0002】)ウ実施例「実施例2.複合カールケーブルの製造複合カールケーブルの製造について図2を用いて説明する。複合カール ケーブルを構成するケーブル心として、前記実施例1で得られた同軸ケーブル心5を2本、導体6(19本/0.08mm錫めっき軟銅線)上に絶縁体7(FEP樹脂0.12mm厚)を設けた信号ケーブル心8を8本、及び導体9(37本/0.08mm錫めっき軟銅線)上に絶縁体10(FEP樹脂0.11mm厚)を設けた電源ケーブル心11を2本、図2に示 す如くの配置に撚り合わせ、次にその外周に絶縁紙テープのセパレータ12をテープ巻きし、更にこの外周にPVCシース13を0.8mm厚さに押出被覆 厚)を設けた電源ケーブル心11を2本、図2に示 す如くの配置に撚り合わせ、次にその外周に絶縁紙テープのセパレータ12をテープ巻きし、更にこの外周にPVCシース13を0.8mm厚さに押出被覆して外径約5.4mmの複合ケーブル14を得た。これを実施例1と同様にしてカール加工し、複合カールケーブル14cを製造した。」(段落【0013】) 甲3公報の記載 甲3公報には、発明の名称を「高速伝送用耐熱ケーブル」とする発明に関し、発明の詳細な説明として、次のとおりの記載がある(甲3)。 ア技術分野「本発明は、高速伝送用耐熱ケーブル、特に、消防用設備や防火用設備等の小勢力回路に用いられる高速伝送用耐熱ケーブルに関するものであ る。」(段落【0001】)イ背景技術「このような耐熱ケーブルとしては、例えば、図2に示すように、導体1上に絶縁体2を被覆して絶縁心線3を形成し、この絶縁心線3を2本撚り合わせて対撚線4とし、これを複数本(図2では4対)撚り合わせた集 合撚線上に、耐熱性を有するテープを縦添え、或いは螺旋状に巻回した熱遮蔽層11、及びこの熱遮蔽層11の上にポリ塩化ビニルなどからなる一括シース12を形成したものがある。また、この耐熱ケーブルを構成する絶縁体2には、架橋ポリエチレンなどが用いられ、熱遮蔽層11としては紙テープなどが用いられる。」(段落【0004】) 甲4公報の記載甲4公報には、発明の名称を「ポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブル」とする発明に関し、発明の詳細な説明として、次のとおりの記載がある(甲4)。 ア発明の属する技術分野 「本発明はクリーンルーム内で使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブル、特 る発明に関し、発明の詳細な説明として、次のとおりの記載がある(甲4)。 ア発明の属する技術分野 「本発明はクリーンルーム内で使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブル、特に、分子状汚染物質の発生を抑止できるポリ塩化ビニル系樹脂組成物被覆電線・ケーブルに関するものである。」(段落【0001】)イ実施例 「このコンパウンドをスズめっき軟銅線(導体サイズ:24AWG)の 上に、170℃の押出機で厚さ0.45mmに押出被覆して絶縁被覆を形成し、絶縁電線を製造した。この絶縁電線を綿糸介在紐上に6本撚り合わせ、抑え巻紙テープを施した上から前記コンパウンドを170℃の押出機で厚さ0.85mmに押出被覆して保護被覆を形成し、ケーブルを製造した。」(段落【0015】) 甲5公報の記載甲5公報には、発明の名称を「インターフェースケーブル及びその製造方法」とする発明に関し、発明の詳細な説明において、従来の技術として、次のとおりの記載がある(甲5)。 ア 「機器間連絡用ケーブルであるインターフェースケーブルは、コンピュ ータ、パソコン、ワークステーションなどのコンピュータ本体と付随する装置間(例えば、入出力装置-演算装置-記憶装置間)、またはコンピュータ本体と各種端末機器間(例えば、CRT、プリンタなど)の信号伝送に用いられている。」(段落【0002】)イ 「インターフェースケーブルは、伝送する信号の性能上、静電容量、特 性インピーダンスなどの電気特性が問題となる場合があり、その場合、例えば、図2に示すように、導体21をPEなどの絶縁体22で被覆した線心23を対撚りしてなる対撚り線心24を複数本(図2中では4本)撚り合わせた多心のものが使用される。」(段 場合があり、その場合、例えば、図2に示すように、導体21をPEなどの絶縁体22で被覆した線心23を対撚りしてなる対撚り線心24を複数本(図2中では4本)撚り合わせた多心のものが使用される。」(段落【0003】)ウ 「複数本の対撚り線心24を撚り合わせた際、撚り合わせ外周に、紙テ ープ、プラスチックテープ、又は金属箔を貼り合わせたプラスチックテープなどの押え巻きテープ25をテ-ピングする。その後、押え巻きテープ25の外周を、編組シールド26およびシース27で被覆してインフェースケーブル20が得られる。また、複数本の対撚り線心24の撚り合わせ外周と押え巻きテープ25の間の隙間には、ケーブル20の横断面を円状 に保持すべく、綿糸などの介在28が配置される。」(段落【0004】) 認定される周知技術上記ないしによれば、本件原出願日の時点における工業用の電気絶縁ケーブルの技術分野においては、撚り合わせたコア電線を押さえたり、耐熱性を持たせたりすることなどを目的として、コア電線にテープ部材を巻くことは周知技術であり、その結果としてコア電線とシースとの間にテープ部材 が配置されることも周知技術であったと認められる。 5 容易想到性に関する判断相違点1、2及び5についてア相違点1及び2に係る容易想到性前記2イcのとおり、甲1公報において、「実施例では、家庭内の 配線に用いられるバスケーブルを示したが、用途は限られず、工業用としてもよい。」と記載されていることからすれば、引用発明は、工業用として広く用いることが可能な電気絶縁ケーブルであるといえる。そして、工業用として広く用いることができる電気絶縁ケーブルを具体的にどのような用途に用いるかは、当業者が適宜決めることが 発明は、工業用として広く用いることが可能な電気絶縁ケーブルであるといえる。そして、工業用として広く用いることができる電気絶縁ケーブルを具体的にどのような用途に用いるかは、当業者が適宜決めることができる事柄であ るといえる。 そうすると、引用発明における電源用線心(本願発明における第1のコア材)の用途を電気パーキングブレーキ用とすること(相違点1に係る本願発明の構成とすること)及び引用発明における信号用線心(本願発明における第2のコア材)の用途をアンチロックブレーキシステム用 とすること(相違点2に係る本願発明の構成とすること)は、いずれも当業者が適宜決めることができる事柄であるといえる。また、甲1公報をみても、引用発明を車載用のケーブルとして用いることができない旨の記載は見当たらない。 以上によれば、甲1公報に接した本件原出願日当時の当業者が、相違 点1及び2に係る本願発明の構成を想到することは容易であったという べきである。 イ相違点5に係る容易想到性工業用として広く用いることができる電気絶縁ケーブルについて、各コア電線の導体の径又は断面積を所定の範囲に設定することは、当該ケーブルの用途や必要とされる容量等に応じて、当業者が適宜設定するこ とができる設計的事項であるというべきである。 そして、本願明細書等をみても、本願発明における第1のコア材及び第2のコア材の各断面積の数値範囲それ自体に格別の技術的意義が存すると認められるべき記載は見当たらないことに加え、本願発明における第2のコア材の導体の断面積(0.18~0.40mm2)は、甲6公 報に記載されているアンチロックブレーキシステム用のケーブルにおける導電体の断面積(0.18mm2~0.30mm2。甲6)と同程度の ア材の導体の断面積(0.18~0.40mm2)は、甲6公 報に記載されているアンチロックブレーキシステム用のケーブルにおける導電体の断面積(0.18mm2~0.30mm2。甲6)と同程度の範囲にあることからすれば、引用発明における信号用線心の断面積を「0.6mm2程度」から「0.18~0.40mm2」とすること(相違点5に係る本願発明の構成とすること)は、当業者が適宜設定するこ とができる事柄であるといえる。 以上によれば、甲1公報に接した本件原出願日時点の当業者が、相違点5に係る本願発明の構成を想到することは容易であったというべきである。 ウ相違点1、2及び5に係る原告の主張に対する判断 原告は、甲1公報には抽象的に「工業用としてもよい」と記載されているにすぎないことや、甲1公報において具体的な用途として想定されているバスケーブルは車両用のケーブルのように振動下で使用されることはないことなどから、甲1公報に接した当業者が、引用発明の電気絶縁ケーブルを電動パーキングブレーキ用及びアンチロックブレーキ システム用のケーブルとして用いることを動機付けられるものではな い旨主張する(前記第3の〔原告の主張〕2ア)。 しかしながら、本願発明における各コア材は、電動パーキングブレーキ用及びアンチロックブレーキシステム用とされてはいるものの、本願明細書等をみても、これらの用途とするために一般的な工業用ケーブルとは異なる特別な構造を備えているとみるべき記載は見当たらないこと からすれば、上記アで検討したとおり、引用発明における電源用線心及び信号用線心の用途を、それぞれ電動パーキングブレーキ用及びアンチロックブレーキシステム用とすることは、当業者が容易に想到し得た事柄であるというべきであ 検討したとおり、引用発明における電源用線心及び信号用線心の用途を、それぞれ電動パーキングブレーキ用及びアンチロックブレーキシステム用とすることは、当業者が容易に想到し得た事柄であるというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 原告は、周知技術又は技術常識であったとはいえない電動パーキングブレーキ用のコア材とアンチロックブレーキシステム用のコア材とを一つのケーブルで構成する技術を引用発明に適用することはできない旨主張する(前記第3の〔原告の主張〕2イ)。 しかしながら、引用発明は、電源用線心及び信号用線心を束ねた電気 絶縁ケーブルであるから、用途が異なるコア材を束ねて一つのケーブルとする技術は、甲1公報において開示されているといえることからすれば、原告の主張はその前提を欠くというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 原告は、電線の導体の断面積はケーブルの構造を踏まえて決定される ものであり、また、引用発明のケーブルにおいてはシースに丸く納まるように各線心の配置及びサイズが選択されているなどとして、引用発明に対して甲6公報記載のケーブルに係る数値範囲を適用することは容易想到ではなく、仮に適用した場合には引用発明のケーブルの外形が円形を呈さなくなってしまうから、当業者がそのような変更をする動機付 けは存せず、むしろ阻害要因がある旨主張する(前記第3の〔原告の主 張〕2ア及びイ)。 しかしながら、上記イで検討したとおり、本願明細書等をみても、本願発明における第1のコア材及び第2のコア材の各断面積の数値範囲それ自体に格別の技術的意義が存すると認めるべき記載は見当たらない上、甲1公報をみても、シース内に丸く納まるよ 本願明細書等をみても、本願発明における第1のコア材及び第2のコア材の各断面積の数値範囲それ自体に格別の技術的意義が存すると認めるべき記載は見当たらない上、甲1公報をみても、シース内に丸く納まるように各線心の配置及 びサイズが選択されていると認めるべき記載は見当たらない。そして、仮に、引用発明において、原告が主張するように各線心の配置及びサイズが選択されているとしても、導体の断面積の変更に応じて絶縁体の厚みを調整したり、シースの径を変更したりすることによって、各線心がシース内に丸く納まるようにすることは可能であるといえる。そうする と、原告が指摘するところを考慮しても、当業者が相違点5に係る本願発明の構成を想到することは容易であるというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ小括以上検討したところによれば、本件原出願日当時の当業者は、相違点1、 2及び5に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものと認められる。 相違点3、4及び6についてア相違点3に係る容易想到性前記4のとおり、本件原出願日の時点における工業用の電気絶縁ケーブルの技術分野においては、撚り合わせたコア電線を押さえたり、耐熱 性を持たせたりすることなどを目的として、コア電線にテープ部材を巻くことは周知技術であり、その結果としてコア電線とシースとの間にテープ部材が配置されることも周知技術であったと認められる。 そして、上記2で検討したとおり、引用発明は、工業用の電気絶縁ケーブルに関する発明であり、上記周知技術と技術分野を共通にすること からすれば、甲1公報に接した当業者は、複数の線心をシースで覆う構 造である引用発明に対して上記の周知技術を適用し、撚り合わせた複数の線心をテ 記周知技術と技術分野を共通にすること からすれば、甲1公報に接した当業者は、複数の線心をシースで覆う構 造である引用発明に対して上記の周知技術を適用し、撚り合わせた複数の線心をテープ部材で巻き、その結果、コア電線とシースとの間にテープ部材が配置される構成とすることを動機付けられるものといえる。 しかしながら、前記1で検討したとおり、本願発明は、被覆層を除去してコア電線を露出させる作業の作業性に関し、コア材の外周面に粉 体が塗布された従来のケーブルには、コア材を取り出す作業の際に粉体が周囲に飛散し、作業性が低下してしまうという課題があったことから、コア電線と被覆層との間に、コア電線に巻かれた状態で配置されたテープ部材を備える構成とすることにより、テープ部材を除去することによって容易にコア電線と被覆層とを分離することができるようにして、上 記課題を解決しようとする点に技術的意義を有するものである。 他方で、前記2イで検討したとおり、引用発明は、線心の取り出しを容易に行うことができるようにすることを課題の一つとする発明であり、この点で本願発明と課題を共通にするものといえるが、電源用線心及び信号用線心の外周をシースで覆うのみの形で被覆する構成とす ることによって上記課題を解決しようとするものであり、本願発明とは課題を解決する手段を異にするものといえる。 このように、引用発明においては、本願発明と共通する課題が本願発明とは異なる別の手段によって既に解決されているのであるから、当該課題解決手段に加えて、両線心をテープ部材で巻き、その結果、両線心 とシースとの間にテープ部材が配置される構成とする必要はないというべきである。そして、引用発明に上記のような構成を加えると、線心を取り出そ 加えて、両線心をテープ部材で巻き、その結果、両線心 とシースとの間にテープ部材が配置される構成とする必要はないというべきである。そして、引用発明に上記のような構成を加えると、線心を取り出そうとする際に、シースを除去する作業のみでは足りず、更にテープ部材を除去する作業が必要となることから、かえって作業性が損なわれ、引用発明が奏する効果を損なう結果となってしまうものといえる。 加えて、甲1公報をみても、引用発明の効果を犠牲にしてまで両線心を テープ部材で巻くことに何らかの技術的意義があることを示唆するような記載は存しない。 以上によれば、引用発明に上記周知技術を適用することには阻害要因があるというべきであるから、相違点3に係る「前記コア電線のみを巻くテープ部材」という構成の意義について検討するまでもなく、本件原 出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点3に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとはいえない。 イ相違点4に係る容易想到性相違点4に係る本願発明の構成は、相違点3に係る本願発明の構成である「テープ部材」を含むものであるところ、上記アで検討したところによ れば、相違点4に係る「前記テープ部材上に形成された被覆層」という構成の意義について検討するまでもなく、本件原出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点4に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとはいえない。 ウ相違点6に係る容易想到性 相違点6に係る本願発明の構成は、相違点3に係る本願発明の構成である「テープ部材」を含むものであるところ、上記アで検討したところによれば、本件原出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点6に係る本願発明の構成を容易に 係る本願発明の構成である「テープ部材」を含むものであるところ、上記アで検討したところによれば、本件原出願日当時の当業者が、引用発明及び上記周知技術に基づいて、相違点6に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとはいえない。 エ相違点3、4及び6に係る被告の主張に対する判断 被告は、相違点3に関し、①甲1公報には引用発明が簡素な構成を課題解決手段としたものであることについては何も記載されていない、②甲1公報に記載された電源用線心及び信号用線心の取り出しが容易に行えるという効果は従来例と比較しての記載にすぎない上、線心がシース内に埋め込まれている従来例及び線心をシースで覆う引用発明のいずれ が簡素な構成であるかは不明である、③甲1公報に記載された実施例に ついて、両線心の外周がシースで覆われているのみであるとしても、甲1公報には両線心の上に何らかの部材を介在させることを排除する記載はないことを理由に、引用発明にテープ部材を介在させることについて、原告が主張するような阻害要因があるとはいえない旨主張する(前記第3の〔被告の主張〕3エ)。 しかしながら、前記2イで検討したとおり、引用発明は、線心の取り出しを容易に行うことができるようにすることを課題の一つとする発明であり、電源用線心及び信号用線心の外周をシースで覆うのみの形で被覆する構成とすることによってこの課題を解決しようとするものであるといえることからすれば、上記①の主張は理由がないというべきであ る。 また、上記周知技術の適用が引用発明の効果に及ぼす影響については、引用発明の構成を前提に検討すべきものであって、従来例と対比して検討すべきものではないから、上記②の主張は理由がないというべきである。 知技術の適用が引用発明の効果に及ぼす影響については、引用発明の構成を前提に検討すべきものであって、従来例と対比して検討すべきものではないから、上記②の主張は理由がないというべきである。 さらに、甲1公報には、線心上に何らかの部材を介在させることを排除する明示的な記載はないものの、上記アで検討したとおり、引用発明における課題解決手段及びその効果を考慮すれば、引用発明に上記周知技術を適用すると、線心の取り出しを容易に行うことができるようにするという引用発明の効果を損なう結果となってしまうというべきである から、上記③の主張も理由がないというべきである。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 被告は、相違点4及び6に係る容易想到性についても縷々主張するが、これまで検討したとおり、当業者が相違点3に係る本願発明の構成である「テープ部材」を容易に想到し得たものとはいえない以上、相違点4 及び6に係る本願発明の構成も容易に想到し得たものとはいえないから、 いずれの主張も前記の判断を左右するものではないというべきである。 オ小括以上検討したところによれば、本件原出願日当時の当業者は、相違点3、4及び6に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとは認められない。 まとめ 以上によれば、本件原出願日当時の当業者は、相違点1、2及び5に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものと認められるが、相違点3、4及び6に係る本願発明の構成を容易に想到し得たものとは認められない。 したがって、本願発明について、引用発明に対する進歩性を欠くとした本件審決の判断は誤りであるから、原告が主張する取消事由は、理由がある。 6 結論よって、原告の請求は、理由があるから したがって、本願発明について、引用発明に対する進歩性を欠くとした本件審決の判断は誤りであるから、原告が主張する取消事由は、理由がある。 結論 よって、原告の請求は、理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 中平健 裁判官 都野道紀 (別紙)本願明細書等図面目録 【図1】 【図2】 【図3】 (別紙)甲1公報図面目録 【第1図】 【第2図】 【第4図】
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