主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人村田左文の上告理由について。株式会社の業務執行に関する内部的意思決定は、法令または定款をもつて株主総会の権限とされているものを除いて、取締役会の権限に属する。しかし、株式会社は、取締役会に属する右権限のうち、法令が特に取締役会において決議すべき事項であると定めたものを除いては、定款をもつて、代表取締役に委任することができるものと解すべきである。これを本件についてみるに、訴外D株式会社の定款に、所論のとおり、会社の業務の方針その他重要なる事項は取締役会においてこれを定める旨規定されているのは、業務執行に関する内部的意思決定権限のうち、法令および右定款の規定により特に取締役会の決議事項とされているものを除いては、代表取締役に委任する趣旨を含むものと解するのが相当である。したがつて、右訴外会社の代表取締役が取締役会の決議に基づかないでした個々の業務執行行為をもつて内部的に適法な意思決定を欠くものというためには、当該行為が、右定款をもつて代表取締役に委任された事項にあたらず、定款上取締役会の決議を要するものと定められている重要事項に該当するものと認められる場合でなければならない。ところで、株式会社の代表取締役がした対外的な個々的取引行為が内部的に適法な意思決定を欠く場合でも、右取引行為は原則として有効であつて、ただ、行為の相手方が内部的意思決定における瑕疵の存在を知りまたは知りうべかりしときに限つて、右瑕疵を理由に行為の無効を主張することが許されるものと解すべきであるから、本件建物の売買に対して訴外会社の代表取締役Eがした追認につき、右の趣- 1 -旨で無効を主張する上告人としては、その主張をもつて被上告 行為の無効を主張することが許されるものと解すべきであるから、本件建物の売買に対して訴外会社の代表取締役Eがした追認につき、右の趣- 1 -旨で無効を主張する上告人としては、その主張をもつて被上告人に対抗する前提として、まず、右売買の追認が取締役会の決議に基づいてすることを要する定款所定の重要事項にあたり、それ故、右追認について取締役会の決議を経ていないことが適法な内部的意思決定を欠くこととなることを、事実関係について明らかにする必要があるものというべく、右追認が前記重要事項に該当することが認められない限り、その主張は前提を欠くものとして排斥を免れないことが明らかであるといわれなければならない。 抗する前提として、まず、右売買の追認が取締役会の決議に基づいてすることを要する定款所定の重要事項にあたり、それ故、右追認について取締役会の決議を経ていないことが適法な内部的意思決定を欠くこととなることを、事実関係について明らかにする必要があるものというべく、右追認が前記重要事項に該当することが認められない限り、その主張は前提を欠くものとして排斥を免れないことが明らかであるといわれなければならない。原判決は、その措辞がやや簡に失する嫌いはあるが、結局、叙上と同趣旨において上告人の無効の主張を排斥したものと解することができるから、原判決に所論の違法は存しない。論旨は、訴外会社の業務執行に属する対外的な個々的取引行為はすべて取締役会の決議に基づいてすることを要するという誤つた前提に立つて、原判決の違法をいうものであり、採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官関根小郷裁判官田中二郎裁判官下村三郎裁判官松本正雄裁判官飯村義美- 2 - 飯村義美
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